(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記挿入治具は、前記絶縁筒体の内径範囲より外側の部位に、前記絶縁筒体が前記挿入治具の後端部に近づくことを規制するための規制部を有する請求項1又は請求項2に記載の電力ケーブル接続装置。
前記挿入治具が、少なくとも前記先端部の外径が挿入方向に沿って減少するテーパー状のパイプとされた請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載の電力ケーブル接続装置。
前記受容部に挿入された前記パイプ内に電力ケーブルの接続端部を挿入することで当該接続端部を前記受容部に挿入可能であるとともに、当該接続端部を前記受容部及び前記パイプ内に挿入した状態で、当該パイプを前記受容部から抜去可能である請求項4に記載の電力ケーブル接続装置。
前記受容部に挿入された前記スパイラルコア内に電力ケーブルの接続端部を挿入することで当該接続端部を前記受容部に挿入可能であるとともに、当該接続端部を前記受容部及び前記スパイラルコア内に挿入した状態で、当該スパイラルコアを前記受容部から抜去可能である請求項6に記載の電力ケーブル接続装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術にあっては次のような問題がある。
まず、電力ケーブル同士の導体接続部に装着される絶縁筒体は、施工現場での組立時に電力ケーブルを当該絶縁筒体の中空部に挿通して電力ケーブルに沿って移動できるように、その内径がおおむね2倍以上になるまで拡径される。その外径は、拡径保持時と、縮径装着時とでおおむね1.5倍以上の変化が発生する。
このため、電気的遮蔽処理や保護管組立は、絶縁筒体が電力ケーブルに装着された後にしか行えず、これらの作業を行うための現場施工時間を要した。
また、絶縁筒体の装着、電気的遮蔽処理、保護管組立の順で施工すると、電気的遮蔽層と保護管内面との間にはどうしても隙間が残ってしまう。この隙間は電力ケーブル運転時の温度上昇度に大きく寄与するため、隙間を残さないことが好ましい。そのため、保護管組立後にこの隙間に防水コンパウンド等を注入するという作業をも要した。
以上の絶縁筒体の装着から防水コンパウンド等の注入までの一連の作業を電力ケーブル同士の接続施工現場で行うと、施工現場での作業時間が長くなってしまうという問題がある。
【0005】
電力ケーブル同士の接続施工時間を短縮する方法として、工場で絶縁筒体に対して電気的遮蔽処理、保護管組立及びコンパウンド注入処理を完了した後に出荷する方法が挙げられるが、従来技術による内径を2倍以上に拡径してからケーブルに装着する工法では、工場成形した遮蔽構造等が座屈し機能を果たさなくなってしまう。
また、保護管内に防水コンパウンドを注入した状態で拡径すると、防水コンパウンドによる反発力で絶縁筒体が拡径できない、又はコンパウンドや保護管が破損する危険がある。
絶縁筒体が拡径された状態で防水コンパウンドを注入しておく方法も挙げられるが、ケーブルに装着した後に保護管と防水コンパウンドの間に空隙が発生してしまい、温度上昇を緩和する効果が薄れてしまう。
これらの問題を解決するため、電力ケーブル同士の接続施工現場では、絶縁筒体に電力ケーブルを挿通できる寸法まで内径を拡径(プレ拡径)せず、2つの電力ケーブルの接続端部を絶縁筒体の途中まで互いに逆側から挿入する工法(スリップオン工法)を採用し、工場で電気的遮蔽処理、保護管組立及びコンパウンド注入処理を完了した状態で出荷する方法が挙げられる。
しかし、この方法において、電力ケーブル同士の接続施工現場で電力ケーブルの接続端部を絶縁筒体に挿入する際に、次のような問題がある。
一つには、電力ケーブルの接続端部を絶縁筒体に挿入する時に、作業者が保護管を把持して挿入すると、保護管と絶縁筒体の相対ズレが生じ、正規の装着位置に装着できなくなるという問題がある。
また、スリップオン工法により電気的接続を得るために予め工場生産で絶縁筒体内に両端メス型等の電気接続導体を設置しておく場合、電力ケーブルの接続端部を絶縁筒体に挿入する時に、電気接続導体を押し込んでしまい、電気接続導体と絶縁筒体との相対ズレを生じさせてしまうという問題がある。
さらに、絶縁筒体と電力ケーブルとの間の面圧により、挿入時には過大な摩擦が生じ、人力での挿入はかなり困難となるという問題がある。
【0006】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、電力ケーブル同士の接続施工現場における作業性を向上することができるとともに、電力ケーブル接続部の生産性、信頼性を向上することができる電力ケーブル接続装置及び電力ケーブル接続方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、電力ケーブルの導体同士を接続した導体接続部に装着される絶縁筒体と、
前記絶縁筒体の外周側に施された電気的遮蔽層と、
前記電気的遮蔽層の外周側に施された保護管とを備え、
前記絶縁筒体は、前記絶縁筒体の中空部の一端開口から挿入される一の電力ケーブルの接続端部を受け容れ、他端開口から挿入される他の電力ケーブルの接続端部を受け容れて、当該一の電力ケーブルと他の電力ケーブルの導体同士を中空部内で接続可能に構成され、
挿入治具が付設され、当該挿入治具の先端部が前記絶縁筒体の中空部に形成される前記接続端部を受け容れる受容部に挿入されており、
電力ケーブル接続時の前記接続端部の前記受容部への挿入のために、前記挿入治具の前記受容部から外部に延出した後端部が把持部として機能するとともに前記挿入治具が前記受容部から抜去可能に保持された電力ケーブル接続装置である。
【0008】
請求項2記載の発明は、二つの接続部を有し、電力ケーブルの導体同士を接続する電気接続導体が前記絶縁筒体の中空部に設置され、当該電気接続
導体の一の接続部は、前記一の電力ケーブルの接続端部の導体先端部に装着される接続端子と接続可能で、かつ前記絶縁筒体の中空部の一端開口に向けて配置され、他の接続部は、前記他の電力ケーブルの接続端部の導体先端部に装着される接続端子と接続可能で、かつ前記絶縁筒体の中空部の他端開口に向けて配置された請求項1に記載の電力ケーブル接続装置である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記挿入治具は、前記絶縁筒体の内径範囲より外側の部位に、前記絶縁筒体が前記挿入治具の後端部に近づくことを規制するための規制部を有する請求項1又は請求項2に記載の電力ケーブル接続装置である。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記挿入治具が、少なくとも前記先端部の外径が挿入方向に沿って減少するテーパー状のパイプとされた請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載の電力ケーブル接続装置である。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記受容部に挿入された前記パイプ内に電力ケーブルの接続端部を挿入することで当該接続端部を前記受容部に挿入可能であるとともに、当該接続端部を前記受容部及び前記パイプ内に挿入した状態で、当該パイプを前記受容部から抜去可能である請求項4に記載の電力ケーブル接続装置である。
【0012】
請求項6記載の発明は、前記挿入治具がスパイラルコアとされた請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載の電力ケーブル接続装置である。
【0013】
請求項7記載の発明は、前記受容部に挿入された前記スパイラルコア内に電力ケーブルの接続端部を挿入することで当該接続端部を前記受容部に挿入可能であるとともに、当該接続端部を前記受容部及び前記スパイラルコア内に挿入した状態で、当該スパイラルコアを前記受容部から抜去可能である請求項6に記載の電力ケーブル接続装置である。
【0014】
請求項8記載の発明は、前記電気的遮蔽層と前記保護管との間に緩衝材が設置されてなる請求項1から請求項7のうちいずれか一に記載の電力ケーブル接続装置である。
【0015】
請求項9記載の発明は、前記保護管の外周側に防食層が施された請求項1から請求項8のうちいずれか一に記載の電力ケーブル接続装置である。
【0016】
請求項10記載の発明は、電力ケーブルの導体同士を接続した導体接続部に装着される絶縁筒体と、
前記絶縁筒体の外周側に施された電気的遮蔽層と、
前記電気的遮蔽層の外周側に施された保護管とを備え、
挿入治具が付設され、当該挿入治具の先端部が前記絶縁筒体の中空部に形成され
る接続端部を受け容れる受容部に挿入されている電力ケーブル接続装置を用いて、電力ケーブル同士を接続する電力ケーブル接続方法であって、
前記絶縁筒体に前記電気的遮蔽層及び前記保護管が施され、前記挿入治具が挿入された状態とした後、
前記挿入治具の前記受容部から外部に延出した後端部を把持しつつ、前記絶縁筒体の中空部の一端開口から一の電力ケーブルの接続端部を挿入し、他端開口から他の電力ケーブルの接続端部を挿入して、当該一の電力ケーブルと他の電力ケーブルの導体同士を前記絶縁筒体の中空部内で接続する工程と、
前記挿入治具を前記受容部から抜去する工程とを備える電力ケーブル接続方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電力ケーブル同士の接続前において絶縁筒体に対し電気的遮蔽層、保護管等が既設であるので、これらの部分を工場生産することができ、従って電力ケーブル同士の接続施工現場における作業量、作業時間を削減することができる。
また、工場生産により生産性の向上、品質の向上及び均一化を図ることができる。
さらに、電力ケーブル同士の接続施工現場において作業者が挿入治具の後端部を把持できるので、電力ケーブルの接続端部を挿入する作業性が向上するとともに、保護管と絶縁筒体、電気接続導体と絶縁筒の相対ズレを抑制することができる。
以上の工場生産と電力ケーブル同士の接続施工現場における作業を通して、電力ケーブル接続部の生産性、信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0020】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態における電力ケーブル接続部の軸方向断面図を
図1に示す。また、本発明の第1実施形態に係る電力ケーブル接続装置の軸方向断面図を
図2に示す。すなわち、
図1は電力ケーブル同士の接続施工現場における電力ケーブル接続部の完成形態を示すものであり、
図2は工場生産された電力ケーブル接続装置1の形態を示す。
図2に示す電力ケーブル接続装置1が接続施工現場に供給され適用されることで
図1に示す電力ケーブル接続部が構成される。
図1に示すように電力ケーブル30,30同士を接続する。
【0021】
(1)まず、工場での生産過程に沿いながら説明する。
(a)まず従来と同様に、ゴムブロック絶縁筒体10を成形加工する。
(b)次に、ゴムブロック絶縁筒体10の中空部内の軸方向中央部にマルチコンタクト用のメス型の接続部11a, 11bを両端に有した電気接続導体11を設置する。この電気接続導体11が、ゴムブロック絶縁筒体10に挿入される電力ケーブル30,30の導体同士を電気的に接続する。
(c)次に、ゴムブロック絶縁筒体10の外周側に、従来施工現場で行っているのと同様の電気的遮蔽層12を施す。この電気的遮蔽層12には、電力ケーブル30の電気的遮蔽層31と同等の電流容量にて接続すること(遮蔽ボンド)が求められ、具体的には電力ケーブル30の電気的遮蔽層31と同一断面積以上の銅編組線が適用される。この電気的遮蔽層12の端部には圧着端子13が取り付けられており、施工現場では、電力ケーブル30の電気的遮蔽層31と短時間で接続できるようになっている。
【0022】
(d)次に、電気的遮蔽層12と保護管14(14a,14b)との間に緩衝材15(コンパウンド,シリコーンゲル,非鉄ウールなど)を設置する。本実施形態では比較的長い保護管14aと、比較的短い保護管14bとを軸方向に接続して保護管14全体が構成される。
緩衝材15の設置方法は、コンパウンド、シリコーンゲルといった硬化前に液状である緩衝材の場合には、ゴムブロック絶縁筒体10を保護管14a内に配置してから、保護管14bとの接合部側にある隙間より緩衝材15を注入し、緩衝材15の硬化後に保護管14bを保護管14aに接合して蓋をする要領で実施する。
コンパウンドは従来から接続部保護管内充填用として使われているブタジエンゴム等で良く、本発明に適用するための特別な要求事項はない。シリコーンゲルは、シリコーン油に硬化剤を配合したもので、「低架橋密度による柔らかく小さい荷重、圧力で容易に変形する」、「低弾性率を有し熱膨張などによる応力を緩和する」、「振動吸収性に優れる」といった特徴を有し、市販品(信越シリコーン社KE-1052A/Bや東レ社3-4118Gel A&Bなど)を入手可能である。
一方で、非鉄ウールといった変形可能な固体の場合は、電気的遮蔽層12を施したゴムブロック絶縁筒体10に保護管14aの内径より少し大きな外径になるように緩衝材15を巻きつけて、保護管14a内に挿入することで、ゴムブロック絶縁筒体10(電気的遮蔽層12)と、緩衝材15と、保護管14aとの間で十分な密着を確保することができる。
緩衝材15の変形により、電力ケーブルの接続施工中に発生するゴムブロック絶縁筒体10外径の僅かな変動に対応できる。
【0023】
(e)保護管14は、長手方向両端部が電力ケーブル30の外径に近くなるように絞られている。保護管14は、2分割品(保護管14aと保護管14b)であり、以上のように緩衝材15の設置とともに保護管14aと保護管14bとを接続することで、ゴムブロック絶縁筒体10と保護管14とが一体化する。
保護管14の材質はアルミニウムまたは銅の金属で、保護管14により電力ケーブル接続部の遮水性能と耐外傷性機械強度を確保する。保護管14の金属部の断面積が十分確保できている場合には、電気的遮蔽層12による遮蔽ボンドを省略して保護管14にこの機能を代替させることもできる。
保護管14の形状としては、中央部の外径が太い部位から端部の電力ケーブル30と同等の径に変化するために、
図1〜
図3に示すようなテーパー形状(絞り形状)ではなく、
図4に示すようなフランジ構造等により端部を直角に近い構造とすることもできる。この場合は保護管全長を短くできることや、電力ケーブル接続施工現場での組立時にゴムブロック絶縁筒体10の端部の様子を目視確認しやすいなどの利点がある。なお、
図3に示す枠A内に相当する部分につき両端が内フランジ構造の保護管14Fを適用した構造の概略を
図4に示した。
【0024】
(f)なお、電気接続導体11を設置した後において、緩衝材15の設置、保護管14の組立に際しては、電力ケーブル30の接続端部30aに相当する外形を先端部40aに有した挿入治具40,40を
図2に示すようにゴムブロック絶縁筒体10内に挿入した状態とし、ゴムブロック絶縁筒体10が接続部組立最終形態(使用時の形状寸法)となるように矯正する。
【0025】
(g)さらに保護管14の外周側に防食層16a,16bを施す。
図2に示すように挿入治具40,40がゴムブロック絶縁筒体10内に挿入された状態で、電力ケーブル接続装置1を出荷する。
【0026】
(2)次に、電力ケーブルの接続施工現場での作業過程に沿いながら説明する
(a)まず、電力ケーブル30の接続端部30aに対しては、従来のゴムブロック絶縁筒体を使った接続部と同様の処理を行う。具体的には、
図5に示すように電力ケーブル中心層側から、導体,絶縁体,外部半導電層,遮蔽層,遮水層,防食層等の各層を段向き形状に仕上げる。
【0027】
(b)次に、
図6に示すようにマルチコンタクトバンドを有するオス型のスリップオン接続端子33に電力ケーブル30の導体32を挿入し、圧着(油圧ダイスによる圧縮接続など)する。
(c)次に、
図2の工場内で組立てられた電力ケーブル接続装置1のゴムブロック絶縁筒体10から、挿入治具40の片方(ここでは
図2の右側とする)を引抜いて取り去り、そこに(b)で仕上げた電力ケーブル30の接続端部30aを挿入する。
このとき、
図2の左側の依然ゴムブロック絶縁筒体10に挿入されている挿入治具40が挿入作業用の治具として機能する。すなわち、
図2の左側の挿入治具40のゴムブロック絶縁筒体10の受容部10a(開口m1側)から外部に延出した後端部40bが把持部として機能する。作業者は、
図2の左側の挿入治具40の後端部40bを把持して、挿入治具40が抜き去られた
図2の右側の受容部10a(開口m2側)に一つ目の電力ケーブル30の接続端部30aを挿入する。
挿入治具40のゴムブロック絶縁筒体10に挿入されない部分の外周面には規制部40c1や規制部40c2が突設されている。これらの規制部40c1,40c2は、一つ目の電力ケーブル30の挿入により、ゴムブロック絶縁筒体10にゴムブロック絶縁筒体10を挿入治具40の後端部40bに近づける外力を受けた時に、ゴムブロック絶縁筒体10が挿入治具40の後端部40bに近づくことを規制する。そのために、規制部40c1,40c2は、ゴムブロック絶縁筒体10の内径範囲より外側の部位に構成されている。
規制部40c1,40c2がゴムブロック絶縁筒体10や保護管14の端面に当接するとき、電気接続導体11とゴムブロック絶縁筒体10と保護管14との軸方向の相対位置が設計上の正規の位置に規制され、電力ケーブル30,30同士の導体接続部に対し電力ケーブル接続装置1の各部(10,14等)を位置精度よく装着可能である。
続いて
図2の左側でも同様の作業を行い、
図1に示すようにゴムブロック絶縁筒体10の両端部に電力ケーブル30,30が装着された状態にする。この工程により電力ケーブル30の導体32の先端部に圧着しておいたスリップオン接続端子33と、ゴムブロック絶縁筒体内中央に設置しておいた電気接続導体11が所定の寸法で接触して、一の電力ケーブル30の導体32と他の電力ケーブル30の導体32との間に定格電流通電が可能になる。
【0028】
以上のように電力ケーブル接続装置1において絶縁筒体10は、絶縁筒体10の中空部の一端開口m1から挿入される一の電力ケーブル30の接続端部30aを受け容れ、他端開口m2から挿入される他の電力ケーブル30の接続端部30aを受け容れて、当該一の電力ケーブル30と他の電力ケーブル30の導体32,32同士を絶縁筒体10の中空部内で接続可能に構成されたものである。
接続端部30aを絶縁筒体10に挿入する際に、接続端部30aの外周面と絶縁筒体10の内周面との間に摩擦が生じながら挿入され、摩擦嵌め合いにより接続端部30aが絶縁筒体10に固定されることが好ましい。
また、電力ケーブル接続装置1において電気接続導体11の一の接続部11aは、一の電力ケーブル30の接続端部30aの導体先端部に装着される接続端子33と接続可能で、かつ絶縁筒体10の中空部の一端開口m1に向けて配置され、他の接続部11bは、他の電力ケーブル30の接続端部30aの導体先端部に装着される接続端子33と接続可能で、かつ絶縁筒体10の中空部の他端開口m2に向けて配置されたものである。
また、電力ケーブル接続装置1には、電力ケーブル30の接続端部30aに相当する外形を先端部40aに有した挿入治具40が付設されている。挿入治具40の先端部40aは、電力ケーブル30の接続端部30aのうち少なくとも絶縁筒体10に挿入される部位に相当する外形を有し、スリップオン接続端子33に相当する部位をも有していることが好ましい。
また、挿入治具40の先端部40aが絶縁筒体10の中空部に形成される接続端部30aを受け容れる受容部10aに挿入され、電力ケーブル接続時の接続端部30aの受容部10aへの挿入のために挿入治具40が受容部10aから抜去可能に保持されたものである。
【0029】
本実施形態による電力ケーブル接続部においても、電力ケーブル30の絶縁体表面とゴムブロック絶縁筒体10の内面の密着は技術的な重要事項のひとつであるが、これは従来のゴムブロック絶縁筒体を用いた接続部と同様に、ゴムブロック絶縁筒体内径を電力ケーブル30の絶縁体外径より小さくしておくことで、ゴムブロック絶縁筒体10の収縮力による密着効果を得ることができる。
両者間の径差により界面で得られる密着力(面圧)は左右されるが、本発明においては、ゴムブロック絶縁筒体10のプレ拡径を行わないために、ゴムブロック絶縁筒体10を構成するゴム材料の永久変形や応力緩和といった現象があまりおこらないので、両者間の径差を小さくしても高い密着力が得られ、維持される利点がある。
【0030】
ここで、ゴムブロック絶縁筒体10の外径に関し、66kV級電力ケーブルへの適用事例を開示する。表1は、従来のプレ拡径工法及び本発明の挿し込み工法によるゴムブロック絶縁筒体10の成形時(A)、工場出荷時(B)、電力ケーブルへの装着後(C)の各時点における外径を掲載したものである。本発明に関しては2例を示す。
表1に示すように、従来のプレ拡径工法と本発明の挿し込み工法とで、成形時(A)のゴムブロック絶縁筒体10の外径はΦ100mmで共通である。
表1に示すように本発明の挿し込み工法では、従来のプレ拡径工法に比較してゴムブロック絶縁筒体10の外径の変化量が少なく(特に表1中のBとCの差)、上記(1)で述べた工場組立出荷が可能であることがわかる。
【0032】
(d)さて、電力ケーブル30をゴムブロック絶縁筒体10に挿入した後には、電気的遮蔽層12と、電力ケーブル30の電気的遮蔽層31とを圧着端子13で接続する。
(e)最後に熱収縮チューブ17や防食テープ18により保護管14の端部と電力ケーブル30の防食層34との間をつないで遮水性能及び防食性能を確保する(電力ケーブル接続部の端部防食処理)。これには従来の電力ケーブル接続部と同様の技術が適用可能である。
【0033】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態につき
図7を参照して説明する。
本実施形態は、上記第1実施形態に対し挿入治具を
図7に示すテーパーパイプ140としたものである。
図7に示す電力ケーブル接続装置1Aは、挿入治具をテーパーパイプ140としたものであって、その他の構成は上記第1実施形態と同様であり、工場生産過程や接続する電力ケーブル30,30に関しても上記第1実施形態と同様である。
【0034】
テーパーパイプ140は、少なくともその先端部の外径が挿入方向に沿って減少するテーパー状のパイプである。
上記第1実施形態では挿入治具を抜いてから電力ケーブル30を挿入したが、本実施形態では、テーパーパイプ140を抜かずに電力ケーブル30を挿入し、電力ケーブル30を挿入してからテーパーパイプ140を抜き去る。すなわち、ゴムブロック絶縁筒体10の接続端部30aを受け容れる受容部10aに挿入されたテーパーパイプ140内に電力ケーブル30の接続端部30aを挿入することで接続端部30aを受容部10aに挿入可能であるとともに、接続端部30aを受容部10a及びテーパーパイプ140内に挿入した状態で、テーパーパイプ140を受容部10aから抜去可能である。
【0035】
電力ケーブルの接続施工現場での作業手順としては、ゴムブロック絶縁筒体10の両端部にテーパーパイプ140が挿入されている状態で、テーパーパイプ140内に2つの電力ケーブル30,30の接続端部30a,30aをそれぞれ挿入し、接続端部30a,30aの導体先端部をテーパーパイプ140から突出させて電気接続導体11に接続することで電力ケーブル30,30同士の接続を完了する。このとき、ゴムブロック絶縁筒体10の内面からの圧力を受けずに接続端部30aを容易に挿入することができる。また、電気接続導体11がテーパーパイプ140,140により両側から押さえられているので、電気接続導体11のズレも生じない。テーパーパイプ140の内径を電力ケーブル30の外径と同等か若干大きくしておくことで、ケーブル挿入力を大幅に軽減できる。このような挿入力の軽減によっても、電気接続導体11をゴムブロック絶縁筒体10に対して相対ズレさせてしまう問題が解決できる。
電力ケーブル30,30の挿入接続が完了したら、テーパーパイプ140をゴムブロック絶縁筒体10から引抜き、ゴムブロック絶縁筒体10を縮径させて接続端部30aに密着固定する。テーパーパイプ140の外径のテーパー形状によりテーパーパイプ140をゴムブロック絶縁筒体10から引き抜きやすい。
【0036】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態につき
図8を参照して説明する。
本実施形態は、上記第1実施形態に対し挿入治具を
図8に示すスパイラルコア240としたものである。
図8に示す電力ケーブル接続装置1Bは、挿入治具をスパイラルコア240としたものであって、その他の構成は上記第1実施形態と同様であり、工場生産過程や接続する電力ケーブル30,30に関しても上記第1実施形態と同様である。
【0037】
上記第1実施形態では挿入治具を抜いてから電力ケーブル30を挿入したが、本実施形態では、スパイラルコア240を抜かずに電力ケーブル30を挿入し、電力ケーブル30を挿入してからスパイラルコア240を解きながら抜き去る。すなわち、ゴムブロック絶縁筒体10の接続端部30aを受け容れる受容部10aに挿入されたスパイラルコア240内に電力ケーブル30の接続端部30aを挿入することで接続端部30aを受容部10aに挿入可能であるとともに、接続端部30aを受容部10a及びスパイラルコア240内に挿入した状態で、スパイラルコア240を受容部10aから抜去可能である。
【0038】
電力ケーブルの接続施工現場での作業手順としては、ゴムブロック絶縁筒体10の両端部にスパイラルコア240が挿入されている状態で、スパイラルコア240内に2つの電力ケーブル30,30の接続端部30a,30aをそれぞれ挿入し、接続端部30a,30aの導体先端部をスパイラルコア240から突出させて電気接続導体11に接続することで電力ケーブル30,30同士の接続を完了する。このとき、ゴムブロック絶縁筒体10の内面からの圧力を受けずに接続端部30aを容易に挿入することができる。また、電気接続導体11がスパイラルコア240,240により両側から押さえられているので、電気接続導体11のズレも生じない。スパイラルコア240の内径を電力ケーブル30の外径と同等か若干大きくしておくことで、ケーブル挿入力を大幅に軽減できる。このような挿入力の軽減によっても、電気接続導体11をゴムブロック絶縁筒体10に対して相対ズレさせてしまう問題が解決できる。
電力ケーブル30,30の挿入接続が完了したら、スパイラルコア240をゴムブロック絶縁筒体10から解きながら抜き去り、ゴムブロック絶縁筒体10を縮径させて接続端部30aに密着固定する。上記第2実施形態におけるテーパーパイプ140の場合よりも、抜き去る際の引っ張り力を軽減できる。
【0039】
第2、第3実施形態においても、第1実施形態と同様に挿入治具に規制部を設けることが好ましい。
第1〜第3実施形態において、挿入治具の後端部は図示したものに拘泥せず、電力ケーブルの挿入作業時に把持しやすい形状、寸法に適宜構成する。
【0040】
〔実施形態の作用効果のまとめ〕
以上の実施形態の電力ケーブル接続装置によれば、次のような作用効果がある。
(a) 電力ケーブルの接続施工現場では、一の電力ケーブル30の接続端部30aを一端開口m1からゴムブロック絶縁筒体10の中央部まで挿入し、他の電力ケーブル30の接続端部30aを他端開口m2からゴムブロック絶縁筒体10の中央部まで挿入する工法を採用するので、従来のように電力ケーブルを挿通する作業が容易となるようにゴムブロック絶縁筒体10の内径を拡径する必要がなくなる。電力ケーブル30への装着前後でゴムブロック絶縁筒体10の外径に大きな変化は発生せず、電気的遮蔽処理や機械強度強化用の保護管組立を予め工場組立で実施しておくことが可能になる。これにより電力ケーブルの接続施工現場の作業量、作業時間の短縮がもたらされる。
(b) (a)で述べたとおり電力ケーブル30への装着前後でゴムブロック絶縁筒体10の外径に大きな変化は発生しないので、プレ拡径履歴によるゴムブロック絶縁筒体の永久変形や応力緩和の発生度合いが従来に比べて小さくなるので、完成時のゴムブロック装着率([電力ケーブルに装着した外径(表1のC)]の[ゴムブロック絶縁筒体の素管外径(表1のA)]に対する比率)を小さくしても、電力ケーブル30とゴムブロック絶縁筒体10との間に十分な面圧を確保できる。あるいは、従来程度の装着率を適用した場合には、より安定して高い面圧が得られる。
(c) 電気的遮蔽層12や保護管14を工場組立とするので、電力ケーブルの接続施工現場で発生した隙間を埋めるためのコンパウンド注入は不要となる。これによっても電力ケーブルの接続施工現場の作業量、作業時間の短縮がもたらされる。
(d) 電力ケーブル30の接続端部30aの先端位置をゴムブロック絶縁筒体10内の電気接続導体11が設置された中央部で位置規制するので、電力ケーブルの接続施工現場での組立誤差(装着寸法のずれ)は、上述した従来工法に比較して小さく抑えられ、電力ケーブル接続装置1の各部の軸方向寸法公差を小さく設定して理想設計を追求可能である。したがって、素材の無駄を省き、電力ケーブル接続部をよりコンパクトに構成できる。
(e) ゴムブロック絶縁筒体10に遮蔽構造等を形成する際に中空部の支持治具として使用した挿入治具40(140,240)を、ケーブル挿入時に把持して挿入することで、保護管14を把持することなく(従ってゴムブロック絶縁筒体10と保護管14の相対ズレを生じることなく)、電力ケーブル30の挿入が可能となる。また、挿入治具40(140,240)に規制部40c1,40c2を設けておくことで、挿入治具40を正規の位置よりも差し込んでしまい、電気接続導体11をゴムブロック絶縁筒体10に対してずらしてしまう問題も解決できる。