(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高比屈折率差光ファイバの前記光学素子の側の端面は、該高比屈折率差光ファイバの光軸に垂直な面に対して16度以下の角度で斜めに加工されていることを特徴とする請求項1〜10の何れか1つに記載の光学部品。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る光学部品の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係や比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、本明細書においては、カットオフ波長とは、ITU−T(国際電気通信連合)G.650.1で定義する22m法によるカットオフ波長をいう。また、その他、本明細書で特に定義しない用語についてはITU−T G.650.1における定義、測定方法に適宜従うものとする。
【0027】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る光学部品100を模式的に示した図である。
図1に示すように、光学部品100は、光学素子110と光ファイバ120a,120bと固定部材130a,130bと筐体101とを備えている。筐体101は、光学素子110と固定部材130a,130bとを収容し、光ファイバ120a,120bは筐体101から引き出されている。
【0028】
光学素子110は、例えばPLC(Planar Lightwave Circuit)素子であり、光が閉じ込められて導波する領域であるコアと、コアの外周に形成されコアより屈折率が小さいクラッドとを有する。コアとクラッドとの比屈折率差は2.5%以上10%以下である。例えば、このような比屈折率差はPLC素子のコアにZrO
2を添加することによって実現される。また、コアのサイズはたとえば厚さが1.5μm〜6.5μmであり、幅が1.5μm〜6.5μmである。このような光学素子110は、たとえば波長1550nmにおいて1.0μm〜6.5μmのスポットサイズを有する。
【0029】
ここで、スポットサイズは、導波路もしくは光ファイバのコアを伝搬する光のNFP(Near-Field Pattern)において、最大強度の5%の強度となる点の直径とする。なお、スポットサイズが楕円の場合は長径と短径でそれぞれスポットサイズが異なることになる。
【0030】
光学素子110は、例えばマッハツェンダ光干渉計(Mach-Zehnder interferometer:MZI)やアレイ導波路回折格子(Arrayed-Waveguide Grating:AWG)、さらに、偏波多重四値位相変調(DP−QPSK:Dual Polarization Quadrature Phase Shift Keying)方式などのコヒーレント変調方式における復調器に使用されるコヒーレントミキサである。
【0031】
光ファイバ120a,120bは、コアとクラッドとの比屈折率差が大きい光ファイバ121a,121b(以下、これを高Δ光ファイバと略す)と通常のシングルモード光ファイバ122a,122bとを融着接続して構成されている。高Δ光ファイバ121a,121bにおいてコアのクラッドに対する比屈折率差は2.0%以上3.0%以下であり、1550nmにおけるモードフィールド径は例えば3.0μm以上5.0μm以下である。通常のシングルモード光ファイバ122a,122bとは、ITU−T G.652に準拠する、1.3μm帯にゼロ分散波長を持つ光ファイバである。通常のシングルモード光ファイバにおいて、コアのクラッドに対する比屈折率差は約0.3%であり、1550nmにおけるモードフィールド径は10〜11μmである。
【0032】
なお、比屈折率差とは、以下で定まる数値である。
Δ={(n
c1−n
c)/n
c1}×100
ここで、n
c1はコアの最大屈折率、n
cはクラッドの屈折率である。
【0033】
高Δ光ファイバ121a,121bとシングルモード光ファイバ122a,122bとは、融着接続時の加熱条件を工夫することで接続点におけるモードフィールド径の段差を滑らかにし、接続損失を低く抑えるように融着されている。高Δ光ファイバ121a,121bとシングルモード光ファイバ122a,122bとの間の接続損失は、0.1dB以下に低減することが好ましい。
【0034】
光ファイバ120a,120bは、光学素子110に光を入出力するためのものである。光ファイバ120a,120bのうち高Δ光ファイバ121a,121b側の端部が光学素子110に光学結合され、シングルモード光ファイバ122a,122b側の端部は、光学部品100の外部へ導出されている。なお、高Δ光ファイバ121a,121b側の光学素子110側の端面は、端面における光の反射を抑制するために高Δ光ファイバ121a,121bの光軸に垂直な面に対して0度より大きく16度以下の角度で斜めに加工されていることが好ましい。また、高Δ光ファイバ121a,121bおよびシングルモード光ファイバ122a,122bは、偏波面を保持しながら光を伝搬する偏波保持光ファイバとすることができる。
【0035】
固定部材130a,130bは、高Δ光ファイバ121a,121bを高Δ光ファイバ121a,121bのコアと光学素子110のコアとの位置が合うように固定し、光学素子110と高Δ光ファイバ121a,121bとを光学結合させるための部材である。固定部材130a,130bは、石英系のガラスを材料としたガラスブロックであり、光学素子110に対しして不要な応力を加えないように、光学素子110に物性的な特性が近いものを採用している。
【0036】
図2および
図3は、固定部材130bに対する高Δ光ファイバ121bおよびシングルモード光ファイバ122bの配置を示した図である。
図2は、高Δ光ファイバ121bおよびシングルモード光ファイバ122bの光軸を含む垂直方向における固定部材130bの断面図であり、
図3は、光学素子110から見た固定部材130bの接続面の図である。なお、固定部材130aは固定部材130bと同様の構成であるので、ここでは固定部材130bを代表例として取り上げる。
【0037】
図2および
図3に示すように、固定部材130bは、本体部131bと上板132bとを備えている。本体部131bにはV字溝133bが設けられており、V字溝133bに配置された高Δ光ファイバ121bは、V字溝133bと上板132bとの間で挟持される。
【0038】
図2に示されるように、高Δ光ファイバ121bとシングルモード光ファイバ122bとの融着点123bは、V字溝133bの内部に含まれる位置となっている。言い換えると、融着点123bは、V字溝133bと上板132bとの間で挟持されている。V字溝133bと上板132bとの間で挟持される領域の高Δ光ファイバ121bおよびシングルモード光ファイバ122bは、被覆が剥された状態で、高Δ光ファイバ121bおよびシングルモード光ファイバ122bのガラス部分が直接挟持されている。
【0039】
また、高Δ光ファイバ121bおよびシングルモード光ファイバ122bとV字溝133bおよび上板132bとの隙間は、接着剤134bによって充填されている。さらに、V字溝133bと上板132bとの間で挟持されない領域のシングルモード光ファイバ122bは、被覆124bの上から本体部131bに対して接着剤134bで固定されている。
【0040】
上記構成において、融着点123bの外径は、その前後の高Δ光ファイバ121bおよびシングルモード光ファイバ122bの外径よりも細くなるように構成することが好ましい。上述のように、融着点123bがV字溝133bと上板132bとの間で挟持されているので、融着点123bがV字溝133bおよび上板132bから応力を受ける可能性がある。そして、融着点123bが応力を受けると、融着点123bにおける接続損失が悪化してしまう。そこで、前後の高Δ光ファイバ121bおよびシングルモード光ファイバ122bの外径よりも、融着点123bの外径が細くなるように加工することにより、融着点123bがV字溝133bおよび上板132bから受ける応力を緩和する。
【0041】
また、融着点123bが上板132bに接触することで、機械的信頼性が失われるおそれがある。融着点123bの外径をその前後の高Δ光ファイバ121bおよびシングルモード光ファイバ122bの外径よりも細くなるように構成することにより、この機械的信頼性が失われる可能性を低減することができる。
【0042】
融着点123bの外径を制御する方法としては、高Δ光ファイバ121bおよびシングルモード光ファイバ122bを融着接続時に両光ファイバの押し込み量と引き戻り量とを制御する方法や、融着接続後の光ファイバの融着点をエッチングする方法を利用することができる。
【0043】
上記構成の光学部品100は、高Δ光ファイバ121bとシングルモード光ファイバ122bとの融着点123bの外径が、融着点123bの前後の光ファイバの外径よりも細くなるよう加工された状態で、V字溝133bと上板132bとの間に挟持されているので、融着点123bがV字溝133bおよび上板132bから受ける応力を緩和することができる。
【0044】
〔第2実施形態〕
図4は、第2実施形態に係る光学部品200の構成を模式的に示した図である。
図4に示すように、光学部品200は、光学素子210と光ファイバ220a,220bと固定部材230a,230bと筐体201とを備えている。筐体201は、光学素子210と固定部材230a,230bとを収容し、光ファイバ220a,220bは筐体201から引き出されている。
【0045】
第1実施形態と同様に、光学素子210は、コアとクラッドとの比屈折率差が大きい光導波路が形成されている。例えば、光学素子210は、PLC素子のコアにZrO
2を添加することによって、コアとクラッドとの比屈折率差が2.5%以上10%以下となるように構成されている。
【0046】
光ファイバ220a,220bは、高Δ光ファイバ221a,221bとシングルモード光ファイバ222a,222bとを、第1実施形態と同様に、接続点におけるモードフィールド径の段差を滑らかにし、接続損失を低く抑えるように融着して構成されている。高Δ光ファイバ221a,221bにおけるコアのクラッドに対する比屈折率差は2.0%以上3.0%以下である。高Δ光ファイバ221a,221bとシングルモード光ファイバ222a,222bとの間の接続損失は、0.1dB以下に低減することが好ましい。
【0047】
光ファイバ220a,220bは、光学素子210に光を入出力するためのものである。光ファイバ220a,220bのうち高Δ光ファイバ221a,221b側の端部が光学素子210に光学結合され、シングルモード光ファイバ222a,222b側の端部は、光学部品200の外部へ導出されている。なお、高Δ光ファイバ221a,221b側の光学素子210側の端面は、端面における光の反射を抑制するために高Δ光ファイバ221a,221bの光軸に垂直な面に対して0度より大きく16度以下の角度で斜めに加工されていることが好ましい。また、高Δ光ファイバ221a,221bおよびシングルモード光ファイバ222a,222bは、偏波面を保持しながら光を伝搬する偏波保持光ファイバとすることができる。
【0048】
固定部材230a,230bは、高Δ光ファイバ221a,221bを高Δ光ファイバ221a,221bのコアと光学素子210のコアとの位置が合うように固定し、光学素子210と高Δ光ファイバ221a,221bとを光学結合させるための、石英系のガラスを材料とした部材である。
【0049】
図5および
図6は、固定部材230bに対する高Δ光ファイバ221bおよびシングルモード光ファイバ222bの配置を示した図である。
図5は、高Δ光ファイバ221bおよびシングルモード光ファイバ222bの光軸を含む垂直方向における固定部材230bの断面図であり、
図6は、光学素子210からみた固定部材230bの接続面の図である。なお、固定部材230aは固定部材230bと同様の構成であるので、ここでは固定部材230bを代表例として取り上げる。
【0050】
図5および
図6に示すように、固定部材230bは、本体部231bと上板232bとを備えている。本体部231bにはV字溝233bが設けられており、V字溝233bに配置された高Δ光ファイバ221bは、V字溝233bと上板232bとの間で挟持される。
【0051】
図5に示されるように、高Δ光ファイバ221bとシングルモード光ファイバ222bとの融着点223bは、V字溝233bの内部に含まれない位置となっている。すなわち、V字溝233bと上板232bとの間で挟持される領域は、高Δ光ファイバ221bのみとなる。したがって、融着点223bは、V字溝233bおよび上板232bから応力を受けることがない。
【0052】
一方、
図5に示されるように、融着点223bは、いわゆるリコートが施されている。高Δ光ファイバ221bとシングルモード光ファイバ222bとを融着接続する際には、融着点223bの近傍の被覆224bを剥ぐことになる。リコートとは、融着接続後の融着点223bの近傍に、シングルモード光ファイバ222bの被覆と略同径の被覆225bを施すことである。
【0053】
また、高Δ光ファイバ221bとV字溝233bおよび上板232bとの隙間は、接着剤234bによって充填されている。さらに、V字溝233bと上板232bとの間で挟持されない領域の高Δ光ファイバ221bおよびシングルモード光ファイバ222bは被覆224b,225bの上から、本体部231bに対して接着剤234bで固定されている。
【0054】
上記構成の光学部品200は、高Δ光ファイバ221bとシングルモード光ファイバ222bとの融着点223bが、シングルモード光ファイバ222bの被覆と略同径の被覆が施された状態で固定部材230bに固定されているので、実質的に1つの光ファイバとして取り扱うことができる。したがって、融着点223bを取り扱うために、例えば補強スリーブのような別途の部材を必要としない。
【0055】
〔第3実施形態〕
図7は、第3実施形態に係る光学部品300を模式的に示した図である。
図7に示すように、光学部品300は、光学素子310と光ファイバ320a,320bと固定部材330a,330bと筐体301とを備えている。筐体301は、光学素子310と固定部材330a,330bとを収容し、光ファイバ320a,320bは筐体301から引き出されている。
【0056】
第1実施形態と同様に、光学素子310は、コアとクラッドとの比屈折率差が大きい光導波路が形成されている。例えば、光学素子310は、PLC素子のコアにZrO
2を添加することによって、コアとクラッドとの比屈折率差が2.5%以上10%以下となるように構成されている。
【0057】
光ファイバ320a,320bは、高Δ光ファイバ321a,321bとシングルモード光ファイバ322a,322bとを、第1実施形態と同様に、接続点におけるモードフィールド径の段差を滑らかにし、接続損失を低く抑えるように融着して構成されている。高Δ光ファイバ321a,321bにおけるコアのクラッドに対する比屈折率差は2.0%以上3.0%以下である。高Δ光ファイバ321a,321bとシングルモード光ファイバ322a,322bとの間の接続損失は、0.1dB以下に低減することが好ましい。
【0058】
光ファイバ320a,320bは、光学素子310に光を入出力するためのものである。光ファイバ320a,320bのうち高Δ光ファイバ321a,321b側の端部が光学素子310に光学結合され、シングルモード光ファイバ322a,322b側の端部は、光学部品300の外部へ導出されている。なお、高Δ光ファイバ321a,321b側の光学素子310側の端面は、端面における光の反射を抑制するために高Δ光ファイバ321a,321bの光軸に垂直な面に対して0度より大きく16度以下の角度で斜めに加工されていることが好ましい。また、高Δ光ファイバ321a,321bおよびシングルモード光ファイバ322a,322bは、偏波面を保持しながら光を伝搬する偏波保持光ファイバとすることができる。
【0059】
固定部材330a,330bは、高Δ光ファイバ321a,321bを光学素子310に対して固定し、光学素子310と高Δ光ファイバ321a,321bとを光学結合させるための、石英系のガラスを材料とした部材である。
【0060】
図7に示すように、高Δ光ファイバ321a,321bとシングルモード光ファイバ322a,322bとを融着した融着点323a,323bは、光学部品300の筐体301の外に配置されている。なお、融着点323a,323bは、融着接続後、シングルモード光ファイバ322a,322bの被覆と略同径の被覆が施されている。
【0061】
本構成であっても、高Δ光ファイバ321a,321bとシングルモード光ファイバ322a,322bとが実質的に1つの光ファイバとして取り扱うことができる。したがって、融着点323a,323bを取り扱うために、例えば補強スリーブのような別途の部材を必要としない。
【0062】
また、高Δ光ファイバ321a,321bは、シングルモード光ファイバ322a,322bと比較して曲げ損失が低いので、光学部品300の筐体301内に高Δ光ファイバ321a,321bのみを収納することにより、筐体301内における光ファイバに許容される曲げ半径が小さくなり、光学部品300の小型化に有効である。
【0063】
また、クラッド径が標準のクラッド径である125μmよりも細径(たとえば、50μm以上125μm未満、好ましくは80μm以下)の高Δ光ファイバ321a,321bを使用することで高Δ光ファイバ321a,321b自体の体積の低減、および高Δ光ファイバ321a,321bに加わる曲げ歪の低減により機械強度信頼性が向上する。このことからも、筐体301内における光ファイバに許容される曲げ半径を小さくできるので、光学部品300の小型化に有効である。
【0064】
上記構成の光学部品300は、高Δ光ファイバ321a,321bとシングルモード光ファイバ322a,322bとの融着点323a,323bが、筐体301の外に配置されているので、光学部品300の小型化に有効である。なお、本実施形態においては、融着点323a,323bが筐体301の外に配置されているが、融着点323a,323bが筐体301の光ファイバ挿入口に近い場所に位置していれば、融着点323a,323bを筐体301内に配置しても同様の効果が得られる。
【0065】
〔第4実施形態〕
図8は、第4実施形態に係る光学部品400を模式的に示した図である。
図8に示すように、光学部品400は、光学素子410とアレイ型光ファイバ420a,420bと固定部材430a,430bと筐体401とを備えている。筐体401は、光学素子410と固定部材430a,430bとを収容し、アレイ型光ファイバ420a,420bは筐体401から引き出されている。
【0066】
光学素子410は、DP−QPSK方式のコヒーレント変調に使用されるコヒーレントミキサとして機能するPLC素子である。PLC素子に形成される光導波路において、コアとクラッドとの比屈折率差は2.5%以上10%以下である。例えば、このような比屈折率差はPLC素子のコアにZrO
2を添加することによって実現される。
【0067】
アレイ型光ファイバ420a,420bは、アレイ状に配列された状態の複数の光ファイバが一括で被覆されて構成されている、いわゆる光ファイバテープ心線と呼ばれるものである。アレイ型光ファイバ420a,420bにおいて、各光ファイバは、高Δ光ファイバ421a,421bとシングルモード光ファイバ422a,422bとが第1実施形態と同様に、接続点におけるモードフィールド径の段差を滑らかにし、接続損失を低く抑えるように融着されて構成されている。アレイ型光ファイバ420a,420bを構成する光ファイバは、光学素子410の種類にも依存するが、例えば8本以上であることが好ましい。例えば、アレイ型光ファイバ420a,420bの各々のクラッド径は50μm以上125μm以下であり、クラッド径が50μmの場合、アレイ状の配列の間隔は52μmであり、クラッド径が125μmの場合、アレイ状の配列の間隔は127μmである。
【0068】
また、各高Δ光ファイバ421a,421bにおけるコアのクラッドに対する比屈折率差は2.0%以上3.0%以下である。高Δ光ファイバ421a,421bとシングルモード光ファイバ422a,422bとの間の接続損失は、0.1dB以下に低減することが好ましい。
【0069】
アレイ型光ファイバ420a,420bは、光学素子410に光を入出力するためのものである。アレイ型光ファイバ420a,420bのうち高Δ光ファイバ421a,421b側の端部が光学素子410に光学結合され、シングルモード光ファイバ422a,422b側の端部は、光学部品400の外部へ導出されている。なお、高Δ光ファイバ421a,421b側の光学素子410側の端面は、端面における光の反射を抑制するために高Δ光ファイバ421a,421bの光軸に垂直な面に対して0度より大きく16度以下の角度で斜めに加工されていることが好ましい。また、高Δ光ファイバ421a,421bおよびシングルモード光ファイバ422a,422bは、偏波面を保持しながら光を伝搬する偏波保持光ファイバとする。
【0070】
固定部材430a,430bは、高Δ光ファイバ421a,421bを光学素子410に対して固定し、光学素子410と高Δ光ファイバ421a,421bとを光学結合させるための、石英系のガラスを材料とした部材である。なお、高Δ光ファイバ421a,421bを固定部材430a,430bに固定する方法は、先述の第1〜3実施形態の何れかに記載の方法を採用することができる。
【0071】
図9は、DP−QPSK方式のコヒーレント変調に使用されるコヒーレントミキサとして機能する光学素子410の回路模式図である。なお、
図9に示される回路模式図は、光学素子410に用いられる回路の1例であり、本実施形態が当該回路に限定されるものではない。
【0072】
図9に示すように、光学素子410は、2つのシグナルポート(S1,S2)と局所発振光ポート(LO)と8つの出力ポート(P.1〜8)を備える。2つのシグナルポート(S1,S2)および局所発振光ポート(LO)は、アレイ型光ファイバ420aから光を入力するためのポートであり、8つの出力ポート(P.1〜8)は、アレイ型光ファイバ420aへ光を出力するためのポートである。
【0073】
図9に示される光学素子410では、事前に偏波分離され、TM偏波に偏波面が調整された2つの信号光が、それぞれ2つのシグナルポート(S1,S2)から光導波路411a、411cに入力される。光導波路411aに入力された信号光は、90度ハイブリッド素子413aに導かれ、光導波路411cに入力された信号光は、90度ハイブリッド素子413bに導かれる。
【0074】
一方、局所発振光ポート(LO)から、TM偏波の局所発振光が光導波路411bに入力される。光導波路411bに入力された局所発振光はパワースプリッタ412で2分岐され、それぞれ90度ハイブリッド素子413a,413bに導かれる。
【0075】
90度ハイブリッド素子413a,413bでは、信号光と局所発振光が干渉することによってIチャネル成分の信号光とQチャネル成分の信号光とに分離され、出力光が8つの出力ポート(P.1〜8)から出力される。
【0076】
上記構成の光学部品400は、クラッド径が50μmである複数の高Δ光ファイバ421a,421bおよびシングルモード光ファイバ422a,422bが、52μmの間隔でアレイ状に配列されているので、高密度に導波路が配線されたPLC素子と適合性が高く、光学部品400全体の小型化に有利である。
【0077】
〔効果の検証〕
次に、上記説明した実施形態で利用した光学素子と光ファイバとの光学結合における接続損失の検証を行う。
【0078】
接続損失が発生する主な原因は、光学素子の光導波路とシングルモード光ファイバの比屈折率差が異なることで両者を伝搬する光のビーム径(スポットサイズまたはモードフィールド径)に大きな差異が生じる点にある。そこで、通常のコアのクラッドに対する比屈折率差が0.3%のシングルモード光ファイバと、クラッドに対する比屈折率差が5.5%である3μm×3μmのコアを有するZrO
2添加のPLC素子とを直接光学結合した場合の接続損失をシミュレーションにより算出した。なお、両者のコアの中心位置ずれはないものとしている。
【0079】
シミュレーションではシングルモード光ファイバとPLC素子との出射端における波長1550nmにおけるフィールド形状を計算し、それらの中心を重ね合わせた際の電界分布の重なりから接続損失を算出した。シングルモード光ファイバとPLC素子では電界分布が大きく異なるため、接続損失は4.91dB/facetであった。ここで、dB/facetは、接続面(facet)毎の接続損失であることを表す単位として使用している。
【0080】
次に、接続損失を低減するために、光ファイバの設計を変更してコアのクラッドに対する比屈折率差が2.0%以上3.0%以下の高Δ光ファイバとすることで、電界分布をPLC素子と近づける検討を行った。検討に使用した高Δ光ファイバの屈折率プロファイルの各パラメータを表にしたものを表1に示す。なお、表1における、Fiber1〜3は、W型プロファイルを有する高Δ光ファイバであり、Fiber4〜6は、単峰型プロファイルを有する高Δ光ファイバである。ここで、W型プロファイルを有する光ファイバとは、中心コアと、中心コアの外周に形成され、クラッドの屈折率よりも屈折率が低い外周コアを有する光ファイバである。なお、両者のコアの中心位置ずれはないものとしている。
【0082】
なお、表1中に現れる記号は以下のとおりである。Δ1は、コア(または中心コア)のクラッドに対する比屈折率差であり、Δ2は、外周コアのクラッドに対する比屈折率差である。Raは、外周コアの外径と中心コアの直径の比であり、中心コアの直径は、中心コアと外周コアとの境界部における直径とする。MFDは、モードフィールド径である。また、αの定義は以下に示される屈折率プロファイルに関するパラメータである。
n
2(r)=n
core2×{1−2×(Δ/100)×(r/a)^α}
(但し、0<r<a)
ただし、rはコア(または中心コア)の中心からの半径方向の位置を示し、n(r)は位置rにおける屈折率、n
coreはコア(または中心コア)のr=0における屈折率、Δは比屈折率差、aはコア(または中心コア)の半径を表している。また、記号「^」はべき乗を表す記号である。
【0083】
表2〜表4にシミュレーション結果を示す。表2は、比屈折率差3.0%であり厚さが3.5μmのコアを有するPLC素子と各種光ファイバとの接続損失を示した表であり、表3は、比屈折率差5.5%であり厚さが3.0μmのコアを有するPLC素子と各種光ファイバとの接続損失を示した表であり、表4は、比屈折率差10.0%であり厚さが1.5μmのコアを有するPLC素子と各種光ファイバとの接続損失を示した表である。なお、表2〜表4のシミュレーションでは、PLC素子のコアの幅を変化させて計算を行っている。なお、これらのPLC素子のスポットサイズは、コアの高さ、幅よりも10%以下の範囲で小さくなり、いずれもスポットサイズが高さ方向、幅方向ともに1.0μm以上6.5μm以下である。
【0087】
表2〜表4に示されるように、比屈折率差が2.5%以上10%以下のコアを有するPLC素子に対して、コアのクラッドに対する比屈折率差が2.0%以上3.0%以下の高Δ光ファイバを使用することで、シングルモード光ファイバと比較して大幅に接続損失を低減可能なことが分かる。さらに、PLC素子の導波路幅を最適化することで、接続損失を低減可能なことが分かる。具体的には、上記検証では、高Δ光ファイバとPLC素子との間における波長1550nm接続損失は、最大でも3.08dBであり、高Δ光ファイバとシングルモード光ファイバとの間の接続損失を0.1dBとしても、シングルモード光ファイバとPLC素子とを直接接続した場合の接続損失である4.91dBよりも小さい。そして、上記検証における他例の接続損失は、最大値である3.08dBよりも顕著に小さく、多くの場合、後述するコアの中心位置ずれによる損失増加を考慮してもPLC素子と高Δ光ファイバとシングルモード光ファイバとのトータルの接続損失を1dB以下に抑えることができる。
【0088】
次に、屈折率プロファイルに関するパラメータであるαと各種高Δ光ファイバのコア径との関係について検討する。
【0089】
コアのクラッドに対する比屈折率差が2%〜3%の高Δ光ファイバを製造する場合、径方向の屈折率プロファイルを完全な矩形にすることは難しく、一般的にはαが3〜6程度の屈折率プロファイルとなる。そこで、Fiber1〜6について、他のパラメータはそのままで、αのみ3〜6の範囲で変化させた屈折率プロファイルを有するコアを使用した場合、コア径の上限と下限をシミュレーションにより算出した。なお、コア径の上限と下限は以下のように定義した。
【0090】
コア径が大きくなるとカットオフ波長が長波長側にシフトする。信号光のシングルモード伝搬のためにはカットオフ波長は波長1530nm〜1625nmの通信波長帯よりも短波長である必要があるため、コア径の上限はカットオフ波長が1500nm以下となるコア径とした。コア径が小さくなるとMFDは小さくなる。しかし、臨界値以上にコア径が小さくなると光をコアに閉じ込める作用が小さくなり、MFDが拡大する。よって、コア径の下限は、MFDが最小値となるコア径よりも小さいコア径であって、MFDが最小値よりも10%大きくなるコア径とした。
【0091】
表5は、以上のように規定したコア径の上限および下限とαとの関係を示す表である。また、代表例としてFiber2およびFiber5について、コア径とMFDとの関係およびコア径とカットオフ波長との関係を
図10〜
図13に示す。
図10は、Fiber2におけるコア径とMFDとの関係を示すグラフであり、
図11は、Fiber5におけるコア径とMFDとの関係を示すグラフである。
図12は、Fiber2におけるコア径とカットオフ波長との関係を示すグラフであり、
図13は、Fiber5におけるコア径とカットオフ波長との関係を示すグラフである。
【0093】
表5に示されるように、コアのクラッドに対する比屈折率差が2.0%以上3.0%以下の高Δ光ファイバは、比屈折率差が2.5%以上10%以下のコアを有し、波長1550nmにおいてスポットサイズが1.0μm以上6.5μm以下のPLC素子との光のフィールドのミスマッチが少なくなっており、高Δ光ファイバと光学素子との接続損失は低く抑えられる。
【0094】
以上のように、比屈折率差が2.5%以上10%以下のコアを有する光導波路が形成された光学素子と、コアのクラッドに対する比屈折率差が2.0%以上3.0%以下の高Δ光ファイバと光学結合した場合、当該光学素子と高Δ光ファイバとの接続損失が低い。さらに、先述のように、接続点におけるモードフィールド径の段差を滑らかにし、接続損失を低く抑えるように高Δ光ファイバとシングルモード光ファイバとを融着接続すれば、接続損失を0.1dB以下に低減することが可能である。
【0095】
以上を組み合わせると、比屈折率差が2.5%以上10%以下のコアを有するスポットサイズが1.0μm以上6.5μm以下の光学素子と、コアのクラッドに対する比屈折率差が2.0%以上3.0%以下の高Δ光ファイバと光学結合した場合、通常のシングルモード光ファイバを当該光学素子に直接光学結合するよりも接続損失が顕著に小さくなることが示されている。なお、特にPLC素子のスポットサイズが3.0μm以上5.0μm以下の場合、接続損失が顕著に小さくなる。
【0096】
以上の結果を言い換えると、本実施形態の構成では、高Δ光ファイバとシングルモード光ファイバとの間における波長1550nmの接続損失と、高Δ光ファイバと光学素子との間における波長1550nmの接続損失と、の合計は、シングルモード光ファイバと光学素子とを直接接続した場合の波長1550nmにおける接続損失よりも顕著に小さいことになる。
【0097】
〔第5実施形態〕
次に、第5実施形態に係る光学部品500について説明する。
図14は、第5実施形態に係る光学部品500の構成を模式的に示した図である。光学部品500は、高比屈折率差の光学素子510とシングルモード光ファイバ522とが、高Δ光ファイバ521を介して、間接的に接続された接続構造を有している。
【0098】
高比屈折率差の光学素子510は、例えばマルチキャストスイッチである。高比屈折率差の光学素子510は、内部に複数のコアが設けられた、クラッドに対するコアの比屈折率差が2.5%以上10%以下のいわゆる超高Δ光学素子である。例えば、このような比屈折率差は、コアにZrO
2を添加することによって実現される。また、コアのサイズはたとえば厚さが1.5μm〜6.5μmであり、幅が1.5μm〜6.5μmである。
【0099】
このような光学素子510は、たとえば波長1550nmにおいて1.0μm〜6.5μmのスポットサイズを有する。ここで、スポットサイズは、導波路もしくは光ファイバのコアを伝搬する光のNFP(Near−Field Pattern)において、最大強度の5%の強度となる点の直径とする。なお、スポットサイズが楕円の場合は長径と短径でそれぞれスポットサイズが異なることになる。
【0100】
高Δ光ファイバ521は、クラッドに対するコアの比屈折率差が2.0%以上3.0%以下の光ファイバであり、1550nmにおけるモードフィールド径は例えば3.0μm以上5.0μm以下である。屈折率プロファイルは、たとえば単峰型や、中心コアと、中心コアの外周に形成されクラッドの屈折率よりも屈折率が低い外周コアを有するW型などを用いることができ、各屈折率プロファイルの各パラメータは、モードフィールド径が例えば3.0μm以上5.0μm以下になるように調整される。複数本の高Δ光ファイバ521はテープ化されてテープ心線を構成する。それぞれの高Δ光ファイバ521は、所定の間隔で固定部材530に固定される。すなわち、高比屈折率差の光学素子510と、固定部材530に高Δ光ファイバ521が固定された光ファイバアレイとが接続される。なお、光ファイバアレイの詳細は後述する。
【0101】
高Δ光ファイバ521がテープ化されたテープ心線の他端には、シングルモード光ファイバ522がテープ化されたテープ心線が接続される。なお、個々の高Δ光ファイバ521とシングルモード光ファイバ522は、融着接続時の加熱条件を工夫することで接続点におけるモードフィールド径の段差を滑らかにし、接続損失を低く抑えるように融着されており、例えば接続損失を0.1dB/facet程度に抑えることができる。
【0102】
なお、高比屈折率差の光学素子510とシングルモード光ファイバ522とを、従来の方法で直接接続すると、5dB/facet程度の接続損失となる可能性がある。これに対し、高Δ光ファイバ521を介して両者を接続することで、接続箇所が増えたとしても、トータルの接続損失を低減することができる。例えば、高比屈折率差の光学素子510と高Δ光ファイバ521との接続損失を0.4dB/facet程度に抑えることができれば、高比屈折率差の光学素子510とシングルモード光ファイバ522とのトータルの接続損失を0.5dB程度に抑えることができる。以下に、高比屈折率差の光学素子510と高Δ光ファイバ521との接続部について詳細を説明する。
【0103】
図15は、
図14のA部におけるB−B線断面図であり、高比屈折率差の光学素子510と高Δ光ファイバ521との接続部近傍における、高Δ光ファイバ521の長手方向の断面図である。高比屈折率差の光学素子510は、上下のリッド511、基板512の間に導波路513(コアおよびクラッド)が形成される。固定部材530は、本体部531と上板532とを備え、間に高Δ光ファイバ521が挟み込まれる。導波路513と高Δ光ファイバ521とは光接続される。
【0104】
なお、固定部材530と高比屈折率差の光学素子510との接合界面は、反射防止のため斜めに形成され、互いに接着剤で接着される。
【0105】
図16Aは、
図14のC−C線断面図であり、高Δ光ファイバ521の長手方向に垂直な方向に対する、固定部材530に固定された高Δ光ファイバ521の断面図である。固定部材530の本体部531には、所定のピッチでV字溝533が形成され、それぞれのV字溝533に高Δ光ファイバ521が配置される。すなわち、高Δ光ファイバ521が所定のピッチで配列される。
【0106】
図16Bは、
図16AのD部拡大図である。高Δ光ファイバ521は、クラッド521aとコア521bとを有する。前述した様に、コア521bは、クラッド521aの中心(図中Fであり黒丸)から偏心する可能性がある。本実施形態では、コア521bの偏心方向が互いに一定の方向となるように、高Δ光ファイバ521が配列される。
【0107】
ここで、互いに一定の方向になるとは、完全に同一方向でなくてもよく、例えば、クラッド521aの中心Fを通る中心線Eに対して、全て同一の方向に配置されればよい。
図16Bに示した例では、高Δ光ファイバ521の配列方向に平行な中心線Eに対して、全て図中上方側にコア521bが偏心するように配置される。すなわち、中心線Eに対して同一方向となる範囲内(180°)にコアが位置するように揃えられれば、多少の角度ずれはあってもよい。
【0108】
また、偏心方向は、高Δ光ファイバ521の配列方向または配列方向に垂直な方向でなくてもよい。例えば、
図17に示すように、それぞれの高Δ光ファイバ521の中心Fを通る、互いに平行な任意の中心線Gを想定した際に、それぞれの高Δ光ファイバ521のコア521bの偏心方向が、それぞれの中心線Gに対して一定の方向(図では右上側)に配置されれば、偏心方向はいずれの方向であってもよい。
【0109】
次に、本実施形態に係る高比屈折率差の光学素子510とシングルモード光ファイバ522との接続方法について説明する。まず、
図18に示すように、1本の高Δ光ファイバ521を複数本の短尺の高Δ光ファイバ521に切断する。この際、高Δ光ファイバ521の外周面の一部に、長手方向に沿って一直線に着色等によるマーク523を形成しておく。なお、短尺の高Δ光ファイバ521の本数は、ファイバアレイを構成する光ファイバの心数と同じである。また、短尺の高Δ光ファイバ521の長さは、例えば、2〜50mm程度である。
【0110】
次に、
図19に示すように、切り出された短尺の高Δ光ファイバ521を配列させてテープ化する。この際、マーク523が略同一方向に向くように整列させる。例えば、マーク523がすべて上面に見えるように短尺の高Δ光ファイバ521を配列してテープ化する。
【0111】
マーク523は、高Δ光ファイバ521の長手方向にまっすぐに形成されるため、短尺の高Δ光ファイバ521の長手方向に垂直な断面におけるコアの偏心方向と、マーク523の周方向の位置関係は、全て略一定となる。また、短尺の高Δ光ファイバ521は十分に短いので、捻じれなども生じにくい。このため、短尺の高Δ光ファイバ521のコアの偏心方向を端面から確認することなく、容易に略一定の方向に偏心方向を揃えることができる。
【0112】
次に、
図20に示すように、短尺の高Δ光ファイバ521をテープ化して得られたテープ心線の一端に、別途シングルモード光ファイバ522を配列してテープ化したテープ心線を接続する。前述した様に、高Δ光ファイバ521とシングルモード光ファイバ522の接続は、接続点におけるモードフィールド径の段差を滑らかにし、接続損失を低く抑えるように融着される。
【0113】
次に、高Δ光ファイバ521側のテープ心線の端を固定部材530に固定する。以上により、光ファイバアレイ540が形成される。得られた光ファイバアレイ540を高比屈折率差の光学素子510に接続することで、高比屈折率差の光学素子510とシングルモード光ファイバ522とが接続される。
【0114】
ここで、光ファイバアレイのピッチずれの原因としては、光ファイバアレイを構成する固定部材の切削精度、組立時の光ファイバの位置ずれ、光ファイバのコア偏心およびクラッド外径のばらつき等が考えられる。特に、光ファイバアレイのピッチずれで支配的なのは、コア偏心およびクラッド外径のばらつきであり、通常の製造方法で得られる光ファイバでは、それぞれ±0.3μm程度のばらつきが生じることが知られている。
【0115】
光接続されるコア同士の中心位置が例えば0.3μmずれると、高Δ光ファイバ521と高比屈折率差の光学素子との接続を想定した場合、この中心位置ずれ(ピッチずれ)に伴う接続損失は0.7dB/facet程度と見込まれる。このため、この偏心ずれを抑制する必要がある。
【0116】
これに対し、
図16Bや
図17に示すように、それぞれの高Δ光ファイバ521のコア偏心方向を揃えて配列することで、ピッチずれを低減することができる。しかし、それぞれの高Δ光ファイバ521のコアの偏心方向を揃えたとしても、それぞれの高Δ光ファイバ521の偏心量が異なれば、十分にピッチずれを抑制することはできない。例えば、偏心量が0μm〜0.3μmの範囲で異なる複数の光ファイバを配列すれば、互いの偏心方向を合わせたとしても、最大でコア中心位置(ピッチ)が0.3μmのずれを生じることとなる。
【0117】
そこで、本発明では、固定部材530に固定される複数の高Δ光ファイバ521が、1本の光ファイバから切り出された短尺の高Δ光ファイバ521で構成される。例えば、1本の高Δ光ファイバから、10mmの短尺の高Δ光ファイバを100本切り出したとしても、1m程度の高Δ光ファイバから必要な短尺の高Δ光ファイバを取り出すことができる。
【0118】
通常、コア偏心量の変化やクラッド外径ばらつきは、高Δ光ファイバの長さ方向に対して緩やかに変動する。このため、数m程度の長さの範囲内であれば、コア偏心量およびクラッド外径はほとんど変動しない。具体的には、数m程度の長さの高Δ光ファイバであれば、コア偏心量のばらつきもクラッド外径のばらつきも±0.05μm未満に抑えることができる。したがって、所定長さの高Δ光ファイバ521から切り出された短尺の高Δ光ファイバのコア偏心量およびクラッド外径のばらつきはほとんどない。
【0119】
このようにして得られた短尺の高Δ光ファイバを用いて、コア偏心方向を揃えて光ファイバアレイを構成することで、ピッチずれを最小化することができる。このため、高比屈折率差の光学素子510と光ファイバアレイ540(高Δ光ファイバ521)とのピッチずれに伴う接続損失を、0.4dB/facet以下に低減することができる。
【0120】
以上、本実施形態によれば、1本の高Δ光ファイバ521から切り出された短尺の高Δ光ファイバ521を用いるため、それぞれの短尺の高Δ光ファイバ521のコア偏心量およびクラッド外径のばらつきがほとんどない。また、それぞれの短尺の高Δ光ファイバ521のコア偏心方向を揃えて光ファイバアレイ540を構成するため、ピッチずれがほとんど生じることがない。このため、高比屈折率差の光学素子510と光ファイバアレイ540との接続損失を低減することができる。このため、高比屈折率差の光学素子510とシングルモード光ファイバ522とを効率よく接続することができる。
【0121】
特に、高比屈折率差の光学素子510とシングルモード光ファイバ522とが高Δ光ファイバ521を介して接続されるため、高比屈折率差の光学素子510とシングルモード光ファイバ522とを直接接続する場合と比較して、トータルの接続損失を低減することができる。
【0122】
また、短尺の高Δ光ファイバ521を固定部材530に固定するため、確実に所定のピッチで短尺の高Δ光ファイバ521を配列することができる。
なお、本実施形態においては、高Δ光ファイバ521の外周面の一部に、長手方向に沿って一直線に着色等によるマーク523を形成することで、光ファイバの円周方向を特定できるようにしたが、光ファイバの円周方向を特定方法はこれには限定されない。たとえば、光ファイバの外形を円形以外の形状(楕円形、四角形、円の一部を直線状に切とった形状)としておいてもよい。あるいは光ファイバの内部にマーカを埋め込んでおいてもよい。
【0123】
〔第6実施形態〕
次に、第6実施形態に係る光学部品について説明する。
図21は、第6実施形態に係る光学部品の固定部材630の断面図である。なお、以下の説明において、第5の実施形態と同様の機能を奏する構成については、重複する説明を省略する。
【0124】
固定部材630は、V字溝633が設けられた本体部631と上板632とを備える。本体部631と上板632とは例えば接着剤で接着される。この際、接着剤の硬化等に伴い、固定部材630に反りが発生することがある(図中H)。具体的には、固定部材630の両側方が上方(または下方)に変形する可能性がある。
【0125】
図22Aは、高Δ光ファイバ621の長手方向に垂直な断面において、固定部材630に反りが生じた際の高Δ光ファイバ621の配列状態を示す概念図である。図中の範囲Kは、配列方向に対する中央部近傍の高Δ光ファイバ621を示し、図中の範囲Lは、配列方向に対する両端部近傍の高Δ光ファイバ621を示す。
【0126】
固定部材630に反りが生じると、それぞれの高Δ光ファイバ621の中心Fを結ぶ中心線Iが、理想状態の理想中心線Jからずれる。具体的には、範囲Kでは、中心線Iが理想中心線Jの下方に位置し、範囲Lでは、中心線Iが理想中心線Jの上方に位置する。すなわち、範囲Kと範囲Lとでは、高Δ光ファイバ621の配列方向に垂直な方向に対する中心線Iと理想中心線Jの位置関係が、互いに逆方向となる。
【0127】
本実施形態では、コア621bの偏心方向を、全て一定の方向に揃えるのではなく、高Δ光ファイバ621の配置される位置によって変化させる。例えば、中央の高Δ光ファイバ621のコア621bの偏心方向を上方に向け、端部側に行くにつれて所定角度ずつ高Δ光ファイバ621を回転させて、最端部の高Δ光ファイバ621のコア621bの偏心方向が下方に向くようにする。すなわち、中央の高Δ光ファイバ621から最端部の高Δ光ファイバ621までの間に、高Δ光ファイバ621を180°回転させる。
【0128】
このように、高Δ光ファイバ621の長手方向に垂直な断面において、中央部近傍から両端部近傍に向けて、高Δ光ファイバ621のコアの偏心方向が逆方向となるように回転させて配置することで、コア621bの位置を、理想の中心線Jに近づけることができる。すなわち、反りによるピッチずれの影響を小さくすることができる。
【0129】
なお、本実施形態において、配列される高Δ光ファイバ621を少しずつ回転させて配置するのではなく、
図22Bに示すように、範囲K内ではすべて一定の方向(図中上方)にコア偏心を揃え、範囲L内では、すべて逆方向に(図中下方)にコア偏心を揃えてもよい。すなわち、少なくとも中央部近傍の高Δ光ファイバ621の偏心方向と、少なくとも端部近傍の高Δ光ファイバ621の偏心方向とが、高Δ光ファイバ621の配列方向に略垂直な方向に互いに逆方向となることで、反りによるピッチずれの影響を小さくすることができる。
【0130】
なお、このように配置するためには、中央の高Δ光ファイバ621については、端面からコア621bの位置を確認し、所定の方向にコアが偏心するように配置し、その他の高Δ光ファイバ621の回転角度(向き)は、中央の高Δ光ファイバ621に対して、前述したマークを見ながら調節すればよい。
【0131】
第6実施形態によれば、固定部材630の反りの影響を小さくすることができ、高比屈折率差の光学素子と光ファイバアレイとの接続損失を低減することができる。このため、高比屈折率差の光学素子とシングルモード光ファイバとを効率よく接続することができる。
【0132】
〔その他の実施形態〕
上述の説明では、高比屈折率差の光学素子とシングルモード光ファイバとが高Δ光ファイバを介して接続される実施形態を用いたが、本発明の実施はこれに限られない。例えば、
図23Aに示す光学部品700では、高Δ光ファイバを用いずに、高比屈折率差の光学素子710とシングルモード光ファイバ722とが接続される。
【0133】
光学部品700では、1本のシングルモード光ファイバから短尺のシングルモード光ファイバ721を切り出して、これらシングルモード光ファイル721を配列したテープ心線を作成し、当該テープ心線を介して高比屈折率差の光学素子710と本来のシングルモード光ファイバ722のテープ心線とが接続される。この場合でも、各シングルモード光ファイバ722同士のコア偏心量やクラッド外径が略同一であるため、コア偏心方向を揃えるのみで、高比屈折率差の光学素子710とシングルモード光ファイバ722とを効率よく接続することができる。
【0134】
また、固定部材730は必ずしも必要ではない。例えば、
図23Bに示す光学部品800のように、高比屈折率差の光学素子810と高Δ光ファイバ821とをレーザ等により融着して接続してもよい。この場合でも、テープ心線を構成する各高Δ光ファイバ821同士のコア偏心量やクラッド外径が略同一であるため、コア偏心方向を揃えるのみで、高比屈折率差の光学素子810とシングルモード光ファイバ822とを効率よく接続することができる。
【0135】
〔効果の検証〕
次に、上記実施形態に係る光学部品を実際に製作して、接続損失を測定した結果を説明する。
図24はツリー型の8×1の光スイッチ911の構成を示す図である。光スイッチ911は、一端に1つの共通ポート912と、他端に8つの分岐ポート913を有する。光スイッチ911は、複数のMZI(マッハツェンダ型干渉計)914を有する。MZI914の入力/出力ポートの間にはカプラ914a、914bと、914a、914bで挟まれた二つの導波路914c、914dが設けられる。一方の導波路914dには、加熱手段であるヒータ914eが設けられる。光スイッチ911は、各MZI914のヒータ914eのオン/オフによって、光信号の通る経路を変更することができる。
【0136】
この光スイッチ911を4アレイ配置したチップをFHD(Flame Hydrolysis Deposition)法、フォトリソグラフィー、反応性イオンエッチング等のPLC作製プロセス技術を用いて作製した。導波路形成後、ヒータ、電極、絶縁膜を形成し、最後にエッチングにて電極パッド部にコンタクトホールを形成させた。比屈折率差Δは5%とし、チップサイズは18×6mmとした。
【0137】
図25は、実験に用いた光学部品900の構成を示す図である。作製した4アレイ8×1スイッチ(高比屈折率差の光学素子910)の両端には、それぞれ光ファイバアレイを接続した。光ファイバアレイは、以下のようにして製作した。まず、1本の高Δ光ファイバから36本×10mmの高Δ光ファイバ921a、921bを切り出した。その際、元の高Δ光ファイバには、長手方向にマークを形成した。なお、高Δ光ファイバ921a、921bには、比屈折率差Δ2.9%のものを使用した。
【0138】
次に、高Δ光ファイバ921a、921bをテープ化してテープ心線を形成した。この際、前述したマークが同一方向に向くように配置した。なお、テープ心線の長さは10mmとした。また、高Δ光ファイバ921aのテープ心線は4心とし、高Δ光ファイバ921bのテープ心線は32心とした。すなわち、入力と出力のファイバアレイの心数はそれぞれ32心と4心である。
【0139】
次に、高Δ光ファイバ921a、921bのテープ心線のそれぞれの一端にシングルモード光ファイバ922a、922bを接続点におけるモードフィールド径の段差を滑らかにし、接続損失を低く抑えるように融着した。さらに、高Δ光ファイバ921a、921bのテープ心線の他端を固定部材930a、930bで固定し、高比屈折率差の光学素子910に接続した。
【0140】
図26は、
図25に示した光学部品900における各ポートの接続損失を示す図である。
図26に示されるグラフの横軸は、32心のそれぞれのポートを示し、縦軸にはポートごとの接続損失を示している。
図26に示される検証実験では、すべてのポートにおいて、トータルで1dB以下である0.7dB以下の損失を実現できている。この結果から、光学部品900の構成は、ファイバアレイのピッチずれを十分抑制でき、実用性があることがわかった。
【0141】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。例えば高比屈折率差光ファイバの端面に光線を入射する光学素子としては、例えばPLC素子で構成されたスポットサイズコンバータや、空間結合系などでも良い。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明の範疇に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。