(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、冷温水配管を用いた方法では、熱媒体の供給部から被冷却対象又は被加熱対象に到達するまでに熱媒体の温度が変化する。このため、任意の場所を局所的に冷却又は加熱することが難しい。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、任意の場所を局所的に冷却又は加熱することができる加熱冷却システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様の加熱冷却システムは、熱媒体を供給する供給部と、前記供給部に接続されると共に、前記熱媒体が流れる内管と、該内管の外周側に配置されて該内管との間の空間が真空に維持された外管とを備え、且つ、該空間の真空度が異なる部位又は該空間の真空度を調整可能な部位を備えた二重管ユニットと、を有する。
【0006】
第1態様の加熱冷却システムでは、熱媒体を供給する供給部に二重管ユニットが接続されている。ここで、二重管ユニットは、内管と外管とを備えており、内管に熱媒体が移送されるように構成されている。また、内管と外管との間の空間が真空に維持されている。これにより、内管と外管との間が効果的に断熱され、熱媒体の温度変化を抑制することができる。
【0007】
また、供給部と被冷却対象又は被加熱対象との間の任意の場所を冷却又は加熱する場合、この場所(熱交換部)に位置する二重管ユニットの内管と外管との間の空間の真空度を異なる真空度とすることにより、局所的に二重管ユニットの断熱効果を変化させることができる。これにより、この場所で熱媒体との熱交換が促進され、任意の場所を局所的に冷却又は加熱することができる。
【0008】
第2態様の加熱冷却システムは、第1態様において、前記二重管ユニットは、前記内管と前記外管との間の空間が密閉された二重管体を複数連結して構成されており、複数の前記二重管体のうち、少なくとも熱交換が行われる熱交換部に位置する前記二重管体における前記空間の真空度が、他の前記二重管体における前記空間の真空度よりも低くなっている。
【0009】
請求項2に記載の本発明に係る加熱冷却システムでは、1つの二重管体を供給部に接続した構成と比較して、設計自由度を向上させることができる。すなわち、供給部や熱交換部の位置を変更した場合であっても、一部の二重管体を除去又は追加するだけで加熱冷却システムを構築することができる。
【0010】
第3態様の加熱冷却システムは、第1態様において、前記二重管ユニットは、前記内管と、前記内管よりも軸方向の長さが短く軸方向に連結された複数の前記外管とを含んで構成されると共に、隣り合う前記外管の間で前記空間が仕切られており、少なくとも熱交換が行われる熱交換部に位置する前記空間の真空度が、他の前記空間の真空度よりも低くなっている。
【0011】
第3態様の加熱冷却システムでは、内管を外管よりも長く形成することにより、内管同士の接続部を少なくすることができ、熱媒体が漏れるのを抑制することができる。
【0012】
第4態様の加熱冷却システムは、第2態様又は第3態様において、前記空間の真空度は、低真空、中真空、及び高真空の何れかの真空度に維持されている。
【0013】
第4態様の加熱冷却システムでは、真空度が異なる3種類の二重管体を組み替えるだけで、任意の場所における熱媒体の温度を変更することができる。例えば、任意の場所において、高真空に維持された二重管体を低真空に維持された二重管体と組み替えれば、熱媒体との熱交換が促進されて熱媒体の温度を変更することができる。なお、ここでいう「低真空」、「中真空」、及び「高真空」とは、JISで規定されている圧力領域を指している。すなわち、「低真空」とは100PA以上の圧力領域であり、「中真空」とは100〜0.1PAの圧力領域であり、「高真空」とは0.1〜1×10
−5PAの圧力領域である。
【0014】
第5態様の加熱冷却システムは、第1態様〜第4態様の何れか1の態様において、大気導入弁及び真空ポンプの少なくとも一方によって、前記空間の真空度を可変させる。
【0015】
第5態様の加熱冷却システムでは、大気導入弁を開弁することで、内管と外管との間の空間に大気が導入されて真空度を低くすることができる。また、真空ポンプを作動させることで、内管と外管との間の空間内の気体が排出されて真空度を高くすることができる。これにより、内管と外管との間の空間の真空度を変えることができる。
【0016】
第6態様の加熱冷却システムは、第5態様において、熱媒体の温度を測定する内部温度計と、前記内部温度計と電気的に接続された制御部とを備え、前記制御部は、前記内部温度計が測定した熱媒体の温度に応じて前記大気導入弁又は前記真空ポンプを制御することで、前記空間の真空度を調整する。
【0017】
第6態様の加熱冷却システムでは、内部温度計が計測した温度に応じて内管と外管との間の空間の真空度を調整することができ、任意の場所を流れる熱媒体の温度を所定の温度にすることができる。例えば、熱媒体が冷媒であるとき、任意の場所を流れる冷媒(熱媒体)の温度を高くしたい場合、制御部が大気導入弁を開弁して内管と外管との間の空間に大気を導入させる。これにより、この空間の真空度が低くなって熱媒体との熱交換が促され、熱媒体の温度を所定の温度に近づけることができる。また逆に、任意の場所を流れる冷媒(熱媒体)の温度を低くしたい場合、制御部が真空ポンプを作動させて空間内の気体を排出させる。これにより、この空間の真空度が高くなって熱媒体との熱交換が抑制され、熱媒体の温度を所定の温度に近づけることができる。このようにして、供給時の熱媒体の温度を変えることなく、任意の場所を流れる熱媒体の温度を変えることができる。
【0018】
第7態様の加熱冷却システムは、第5態様において、前記二重管ユニットの周囲の温度を測定する外部温度計と、前記外部温度計と電気的に接続された制御部とを備え、前記制御部は、前記外部温度計が測定した前記二重管ユニットの周囲の温度に応じて前記大気導入弁又は前記真空ポンプを制御することで、前記空間の真空度を調整する。
【0019】
第7態様の加熱冷却システムでは、第6態様と同様に、供給時の熱媒体の温度を変えることなく、任意の場所を流れる熱媒体の温度を変えることができる。
【0020】
第8態様の加熱冷却システムは、第2態様又は第3態様において、前記二重管ユニットにおける前記熱交換部に位置する部位は、前記内管のみで構成されている。
【0021】
第8態様の加熱冷却システムでは、内管のみで構成された部位において、他の部位よりも熱交換を促進させることができる。
【0022】
第9態様の加熱冷却システムは、第2態様又は第3態様において、前記二重管ユニットにおける前記熱交換部に位置する部位は、断熱材に被覆された前記内管のみで構成されている。
【0023】
第9態様の加熱冷却システムでは、断熱材の量や種類を変えることで断熱効果を調整することができる。
【0024】
第10態様の加熱冷却システムは、第2態様において、隣り合う前記二重管体を連結する単管を備え、前記単管は、前記熱交換部の近傍に位置している。
【0025】
第10態様の加熱冷却システムでは、第8態様と同様に、単管で構成された部位において、他の部位よりも熱交換を促進させることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明に係る加熱冷却システムによれば、任意の場所を局所的に冷却又は加熱することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
以下、
図1〜
図3を参照して、本発明に係る加熱冷却システムの第1実施形態について説明する。なお、本実施形態では、一例として、室内の空気を冷却させる冷房システムについて説明するが、本発明はこれに限定しない。例えば、室内の空気を加熱させる暖房システムに本発明に係る加熱冷却システムを用いてもよい。また、被冷却対象及び被加熱対象は、空気に限らず、床パネルや熱源など広く適用することができる。
【0029】
(加熱冷却システムの全体構成)
図1に示されるように、本実施形態に係る加熱冷却システム10は、主として、供給部としての熱プラント12と、複数の二重管体16を連結して構成された二重管ユニット14とを備えている。
【0030】
熱プラント12は、熱媒体としての冷却水を所定の温度に冷却させて二重管ユニット14へ供給するユニットであり、冷却水を送水するための図示しないポンプを備えている。また、熱プラント12は、図示しない冷凍機を備えており、この冷凍機の内部に冷却水を流すことで冷却水を所定の温度に冷却している。
【0031】
なお、本実施形態は、空気を冷却する冷房システムに本発明を適用した実施例であるため、熱プラント12で冷却水を冷却しているが、これに限定しない。例えば、暖房システムの場合は、熱媒体として温水を採用すると共に熱プラント12に温水を加熱するためのヒータを設けてもよい。また、熱媒体として、液体窒素などの極低温の熱媒体を用いてもよく、オイル等の高沸点の熱媒体を用いてもよい。
【0032】
二重管ユニット14は、複数の二重管体16の両端部に設けられたフランジ16A同士を締結することで連結されている。また、本実施形態では、熱プラント12と施設11との間で冷却水を循環できるように二重管体16が配設されている。詳細には、施設11の熱交換室18に接続された二重管体17は、略U字状に形成されている。そして、この二重管体17の一端側のフランジ17Aには、熱プラント12から施設11へ冷却水を流すための二重管体16が接続されており、二重管体17の他端側のフランジ17Aには、施設11を通過した冷却水を熱プラント12へ戻すための二重管体16が接続されている。また、二重管体17のうち、施設11の内部を通過している部分は、二重管構造になっておらず、一般的なパイプ17Bとなっている。なお、二重管体16の詳細については後述するが、本実施形態では一例として、長さが100mの二重管体16を用いている。
【0033】
二重管ユニット14は、施設11の熱交換部としての熱交換室18に接続されている。施設11は、主として、熱交換室18と部屋24とを含んで構成されている。ここで、部屋24としては、室温が管理されたサーバルームやオフィス等が挙げられる。また、その他の用途で使用する部屋でもよい。
【0034】
熱交換室18と部屋24との間には、熱交換室18から部屋24へ冷却風を導入するための導入側配管20と、部屋24で温められた空気を熱交換室18へ排出するための排出側配管22とが接続されている。また、熱交換室18には、ファン26が設けられており、このファン26によって熱交換室18と部屋24との間で空気を循環できるように構成されている。ここで、熱交換室18の内部には、冷却水が流れるパイプ17Bが通っており、この冷却水と熱交換室18内の空気との間で熱交換が行われる。詳細には、部屋24で温められた空気が排出側配管22を通って熱交換室18へ排出される。そして、この空気が二重管体17を流れる冷却水によって冷却され、その後に導入側配管20を通って冷却された空気が部屋24へ導入される。
【0035】
(二重管ユニットの構成)
図2に示されるように、二重管ユニット14を構成する二重管体16は、冷却水が流れる内管28と、内管28の外周側に配置された外管30とを含んで構成されている。ここで、内管28と外管30との間の空間38は、真空に維持されている。また、内管28と外管30との間の空間38は、二重管体16の両端部に設けられたフランジ16Aによって密閉されている。
【0036】
さらに、外管30には大気導入弁32が接続されている。そして、この大気導入弁32を開弁することで、空間38内に大気が導入されて空間38の真空度を低くすることができるようになっている。また、大気導入弁32には、真空ポンプ36が接続されている。そして、この真空ポンプ36を作動させることにより、空間38内の気体を排出して真空度を高くすることができる。すなわち、大気導入弁32及び真空ポンプ36の少なくとも一方によって空間38の真空度を調整できるように構成されている。なお、本実施形態では、全ての二重管体16に同様の大気導入弁32及び真空ポンプ36が設けられているが、本発明はこれに限定されない。例えば、二重管ユニット14を構成する一部の二重管体16にだけ大気導入弁32及び真空ポンプ36が設けられた構成としてもよい。また、大気導入弁32だけが設けられた二重管体16と真空ポンプ36だけが設けられた二重管体16とが混在された構成としてもよい。
【0037】
次に、二重管体16の詳細な構造について説明する。
図2では二重管体16を概略的に示しているが、詳細には、
図3に示されるように、二重管体16を構成する内管28は、熱絶縁層29によって被覆されている。また、本実施形態では、コルゲート管によって内管28が形成されている。さらに、熱絶縁層29の外周側には、内管28よりも大径のコルゲート管で形成された外管30が配置されている。そして、内管28と外管30との間の空間38が真空に維持されている。また、外管30は、保護層31に被覆されて保護されている。なお、本実施形態では、内管28及び外管30をコルゲート管で形成しているが、これに限らず、表面に凹凸がない管体で形成してもよい。また、本実施形態では、外管30を保護層31で保護しているが、これに限らず、保護層31を設けない構成としてもよい。
【0038】
ここで、二重管ユニット14を構成する複数の二重管体16のうち、一部の二重管体16における内管28と外管30との間の空間38の真空度が、他の二重管体16における内管28と外管30との間の空間38の真空度とは異なる真空度とされている。すなわち、二重管ユニット14は、他の部位とは真空度が異なる部位を備えている。
【0039】
本実施形態では、
図1に示された加熱冷却システム10において、一部の二重管体16が図示しない熱源の近傍を通っており、この熱源の近傍に配置された二重管体16における内管28と外管30との間の空間38の真空度が、他の二重管体16における内管28と外管30との間の空間38の真空度よりも低い(大気圧に近い)真空度に維持されている。詳細には、熱源の近傍に配置された二重管体16おける空間38の真空度は、JISで規定された圧力領域の低真空に維持されている。また、その他の二重管体16における空間38の真空度は、JISで規定された圧力領域の高真空又は中真空に維持されている。
【0040】
(作用並びに効果)
次に、本実施形態に係る加熱冷却システムの作用並びに効果について説明する。
【0041】
本実施形態に係る加熱冷却システム10では、
図2に示されるように、二重管ユニット14を構成する二重管体16の内管28と外管30との間の空間38が真空に維持されている。これにより、一般的な冷水管や温水管を用いた場合と比較して、高い断熱効果を得ることができる。すなわち、内管28と外管30との間が真空層によって断熱されているため、内管28を流れる冷却水と外気との熱交換を効果的に抑制することができる。この結果、熱プラント12から施設11までの距離が離れている場合であっても、冷却水の温度変化を抑制することができる。
【0042】
また、熱源の近傍に配置された二重管体16における内管28と外管30との間の空間38の真空度を他の二重管体16における内管28と外管30との間の空間38よりも低くしている。これにより、熱源の近傍において冷却水との熱交換が促進され、熱源を局所的に冷却することができる。
【0043】
以上のようにして、二重管ユニット14における任意の部位の真空度を他の部位の真空度よりも低い真空度とすることにより、局所的に熱媒体との熱交換を行うことができる。すなわち、局所的に冷却又は加熱することができる。
【0044】
また、本実施形態では、真空度を低真空、中真空、及び高真空の何れかに維持された二重管体16を用いている。これにより、異なる真空度とされた二重管体16に組み替えるだけで冷却水の温度を調整することができる。例えば、任意の場所に配置された二重管体16における空間38が高真空に維持されている場合において、この二重管体16を中真空に維持されている二重管体16と組み替えれば、この場所で冷却水との熱交換を促すことができる。また、二重管体16が劣化した場合、この劣化した二重管体16のみを取り換えればよいため、メンテナンス性を向上させることができる。
【0045】
さらに、本実施形態では、
図2に示されるように、外管30に大気導入弁32及び真空ポンプ36が設けられている。これにより、この大気導入弁32を開弁することで、空間38の真空度を低くすることができる。また、真空ポンプ36を作動させることで、空間38の真空度を高くすることができる。このようにして空間38の真空度を変えることで、二重管体16を組み替えなくても冷却水の温度を調整することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、複数の二重管体16の両端部に設けられたフランジ16A同士を連結して二重管ユニット14を構成したが、これに限定されない。例えば、
図5に示された変形例のように、内管42と外管44とで二重管ユニット40を構成してもよい。
【0047】
図5に示されるように、変形例の二重管ユニット40は、内管42と外管44とを含んで構成されている。ここで、外管44は、第1実施形態の外管30と軸方向に同じ長さで形成されている。一方、内管42は、第1実施形態の内管28よりも長く形成されている。
【0048】
外管44は、上下に分割されており、上管部46と下管部48とを含んで構成されている。また、上管部46における軸方向の両端部には、上側フランジ46Aが形成されており、下管部48における軸方向の両端部には、下側フランジ48Aが形成されている。そして、この上管部46と下管部48とで内管42を挟むようにして取り付けられる。
【0049】
隣り合う外管44同士は、上側フランジ46A及び下側フランジ48Aをそれぞれ締結することによって連結される。ここで、外管44を取り付けることで、内管42と外管44との間の空間が密閉される。このため、隣り合う外管44の間で空間が仕切られており、それぞれの空間の真空度を異ならせることができるように構成されている。
【0050】
本変形例では、内管42の長さを長く形成することで、内管42同士の接続部を少なくすることができ、熱媒体が漏れるのを抑制することができる。
【0051】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る加熱冷却システムの第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0052】
図4に示されるように、本実施形態に係る加熱冷却システム50は、二重管ユニット14を構成する二重管体16のそれぞれに内部温度計としての水温計52が設けられており、二重管体16の内管28を流れる冷却水の温度を測定できるように構成されている。
【0053】
また、施設11の部屋24には、室温計54が設けられており、部屋24の室温を測定できるように構成されている。さらに、水温計52及び室温計54は、制御部56と電気的に接続されている。このため、制御部56は、それぞれの水温計52が測定した冷却水の温度、及び室温計54が測定した部屋24の温度を取得できるようになっている。
【0054】
さらに、制御部56は、二重管体17に設けられた大気導入弁32及び真空ポンプ36と電気的に接続されている(
図2参照)。このため、制御部56からの信号によって大気導入弁32の開弁及び閉弁を行うことができるようになっている。また、制御部56からの信号によって真空ポンプ36を作動させることができるようになっている。
【0055】
ここで、制御部56は、水温計52が測定した冷却水の温度、及び室温計54が測定した部屋24の温度の少なくとも一方の温度に応じて大気導入弁32又は真空ポンプ36を制御することで、二重管体17の内管28と外管30との間の空間38の真空度を調整している。
【0056】
なお、本実施形態では、二重管ユニット14を構成する全ての二重管体16に水温計52を設けているが、本発明はこれに限定しない。例えば、一部の二重管体16のみに水温計52を設けた構成としてもよい。
【0057】
(作用並びに効果)
次に、本実施形態に係る加熱冷却システムの作用並びに効果について説明する。
【0058】
本実施形態に係る加熱冷却システム50では、制御部56は、水温計52が測定した水温及び室温計54が測定した室温の少なくとも一方の温度に応じて大気導入弁32及び真空ポンプ36を制御することにより、部屋24の室温を所定の温度に維持することができる。
【0059】
上述した作用について、室温計54の温度に応じて制御部56が大気導入弁32及び真空ポンプ36を制御する場合の一例について説明する。室温計54が測定した部屋24の室温が予め設定した温度よりも低くなった場合、制御部56は、一部の二重管体16の大気導入弁32を所定の時間だけ開弁させる。これにより、内管28と外管30との間の空間38に大気が導入されて、この空間38の真空度が低くなる。そして、一部の二重管体16における断熱効果が低下して、熱交換室18に到達するまでに冷却水の熱交換が促される。この結果、熱交換室18に到達した冷却水の温度が上がって冷却能力が低下することとなり、部屋24の温度を上げることができる。
【0060】
また逆に、室温計54が測定した部屋24の室温が予め設定した温度よりも高くなった場合、制御部56は、一部の二重管体16の真空ポンプ36を所定の時間だけ作動させる。これにより、内管28と外管30との間の空間38が排出されて、この空間38の真空度が高くなる。そして、一部の二重管体16における断熱効果が高められ、熱交換室18に到達するまでの冷却水の熱交換が抑制される。この結果、熱交換室18に到達した冷却水の温度を下げることができ、部屋24の温度を下げることができる。
【0061】
なお、水温計52の温度に応じて制御部56が大気導入弁32及び真空ポンプ36を制御する場合も同様である。また、本実施形態では、部屋24の室温を予め設定した温度に維持させる場合について説明したが、これに限定しない。例えば、部屋24の温度を予め設定した温度よりも上げたい場合、又は下げたい場合も同様の方法によって制御することができる。
【0062】
また、本実施形態では、部屋24の室温を所定の温度に維持する方法について説明したが、これに限定しない。例えば、熱プラント12と施設11との間の図示しない熱源の温度を測定し、この熱源の温度が所定の温度となるように二重管体16における空間38の真空度を調整してもよい。
【0063】
<第3実施形態>
次に、本発明に係る加熱冷却システムの第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0064】
図6に示されるように、本実施形態に係る加熱冷却システム60は、データセンターなどのサーバールーム62に適用されており、熱プラント12と、複数の二重管体16を連結して構成された二重管ユニット14とを備えている。
【0065】
ここで、二重管ユニット14は、サーバールーム62内の床下又は天井に配設されている。また、サーバールーム62には、複数のサーバ64が配置されており、二重管ユニット14は、サーバ64に沿って配設されている。
【0066】
サーバールーム62内には、外部温度計としての複数の室温計66が配置されており、本実施形態では一例として、5つの室温計66A、66B、66C、66D、66Eが配置されている。そして、室温計66はそれぞれ、二重管ユニット14の周囲に配置されており、図示しない制御部と電気的に接続されている。
【0067】
また、二重管ユニット14を構成する二重管体16にはそれぞれ、気導入弁32及び真空ポンプ36が設けられており、制御部は、これらの大気導入弁32及び真空ポンプ36と電気的に接続されている(
図2参照)。このため、制御部56からの信号によって大気導入弁32の開弁及び閉弁を行うことができるようになっている。また、制御部56からの信号によって真空ポンプ36を作動させることができるようになっている。
【0068】
ここで、制御部は、室温計66が測定した前記二重管ユニットの周囲の温度に応じて大気導入弁32又は真空ポンプ36を制御することで、任意の位置(熱交換部)における二重管体16の内管28と外管30との間の空間38の真空度を調整できるように構成されている。
【0069】
(作用並びに効果)
次に、本実施形態に係る加熱冷却システムの作用並びに効果について説明する。
【0070】
本実施形態に係る加熱冷却システム60では、室温計66が測定した温度に応じて制御部が大気導入弁32及び真空ポンプ36を制御することにより、サーバールーム62内の任意の位置を局所的に冷却させることができる。
【0071】
上述した作用について、室温計66の温度に応じて制御部が大気導入弁32及び真空ポンプ36を制御する場合について説明する。例えば、室温計66Aの近傍に配置されたサーバ64からの発熱量が多くなり、室温計66Aが測定した温度が予め設定した温度よりも高くなった場合、制御部によって室温計66Aの近傍の二重管体16における大気導入弁32を所定の時間だけ開弁させる。これにより、この二重管体16の真空度が低くなり、断熱効果が低下する。この結果、室温計66Aの近傍において、冷却水の熱交換が促され、この場所の温度を局所的に低下させることができる。
【0072】
なお、本実施形態では、室温計66の測定した温度に基づいて真空度を調整したが、これに限定されない。例えば、第2実施形態のように、二重管体16の内管28を流れる冷却水の温度を測定可能な水温計を設けて、この水温計が測定した冷却水の温度及び室温計66が測定した室温の少なくとも一方に基づいて真空度を調整する構成としてもよい。
【0073】
(試験例)
長さが100mの二重管体を用いて内管と外管との間の空間の真空度を変えた場合における冷媒の冷却能力を調べた。ここで、外管は、外径54mm、内径48mmのものを用いた。また、内管は、外径33mm、内径29mmのものを用いた。さらに、冷媒は液体窒素(−200℃)とした。
【0074】
空間の真空度が1×10
−2PA(高真空)の場合、冷却能力は長さ1mあたり1Wとなった。また、空間の真空度が10PA(中真空)の場合、冷却能力は長さ1mあたり30Wとなった。さらに、空間が大気圧の場合、冷却能力は長さ1mあたり150Wとなった。以上のように、二重管体における内管と外管との間の空間の真空度に応じて冷媒の冷却能力が変わることを確認した。
【0075】
以上、本発明の第1実施形態〜第3実施形態に係る加熱冷却システムについて説明したが、これらの実施形態を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記の実施形態では、複数の二重管体16を連結して二重管ユニット14を構成したが、本発明はこれに限定しない。例えば、二重管ユニット14の一部を内管28のみで構成してもよい。この場合、二重管体16の内管28と外管30との間の空間38を大気圧にした場合よりも断熱効果が低下するため、熱媒体の熱交換を促すことができる。また、二重管ユニット14の一部を断熱材に被覆された内管28のみで構成してもよい。この場合も同様に、二重管体16よりも断熱効果を低下させることができる。また、断熱材の量や材質を変更すれば、断熱効果を調整することができる。さらに、二重管体16同士を単管で連結した構成としてもよい。熱交換が行われる熱交換部の近傍に位置する部位を単管で構成することにより、この位置の断熱効果が低下し、熱媒体の熱交換を促すことができる。
【0076】
さらに、上記の実施形態では、複数の二重管体16を連結して二重管ユニット14を形成したが、本発明はこれに限定しない。例えば、
図1において、熱プラント12から施設11まで1つの二重管体16で接続した構成としてもよい。この場合、内管28と外管30との間の空間38を複数の領域に仕切り、それぞれの領域で異なる真空度にすれば、上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。ただし、設計自由度を向上させる観点、及びメンテナンス性を向上させる観点から、複数の二重管体16を連結して二重管ユニット14を形成するのが好ましい。
【0077】
また、上記の実施形態では、熱プラント12と施設11との間で冷却水を循環させているが、本発明はこれに限定しない。例えば、熱交換室18を通過した冷却水を熱プラント12へ戻さずに排水してもよい。さらに、熱媒体として液体窒素を用いる場合は、熱交換室18を通過させた後、窒素ガスとして大気中に放出させてもよい。
【0078】
さらに、上記の実施形態では、被冷却対象が1つのみであったが、本発明はこれに限定しない。例えば、二重管体16を分岐させて複数の被冷却対象又は被加熱対象へ接続させた構成としてもよい。
【0079】
また、上記の実施形態では、熱プラント12と施設11との間に二重管ユニット14を接続したが、本発明はこれに限定しない。例えば、電力ケーブル等が配設された地中の洞道内(トラフ)に二重管ユニット14を配設してもよい。この場合、洞道内の温度が高い場所に配置された二重管体16における内管28と外管30との間の空間38の真空度を、他の二重管体16における内管28と外管30との間の空間38の真空度よりも低い真空度とすることで、洞道内を効果的に冷却させることができる。