(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記銅箔を幅方向に切断した断面において、粗化高さが0.5μm以上3μm以下の前記粗化粒子が、30μmの範囲に1個以上5個以下であり、かつ、粗化高さが0.1μm以上0.4μm以下の前記粗化粒子が、30μmの範囲に7個以上であることを特徴とする請求項1記載の高周波回路用銅箔。
請求項1記載の高周波回路用銅箔が、エポキシ、耐熱エポキシ、ビスマレイミド・トリアジンレジン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド、シアネートエステル系樹脂のいずれかの樹脂またはこれらの混合樹脂からなる樹脂基材の片面または両面に貼り付けられていることを特徴とする銅張積層板。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のように、粗化サイズを小さくすると、プリント基板材料と銅箔との密着性が下がる恐れがある。これに対し、密着性の低下を防ぐために、表面にシランカップリング剤に代表される接着層を形成することが行われている。
【0009】
しかし、特に高周波領域で使用されるプリント基板材料(たとえばパナソニック株式会社製のメグトロン6に代表されるポリフェニレンエーテル系樹脂など)では、プリント基板材料と銅箔表面に形成するシランカップリング剤と化学結合を作りにくいため、単純に粗化サイズを小さくしてしまうと基板材料との密着性が著しく下がってしまうという問題がある。
【0010】
これに対して、銅箔表面の粗化粒子の粗化高さや形状に特徴を持たせることにより、樹脂基材との密着性やその他の特性を良好とすることが特許文献2〜8に開示されている。
【0011】
特許文献2においては、銅箔の平滑面に均一で微細なこぶを多数生成させること、具体的には粗化高さが0.6〜1.0μmで逆涙滴形の粗化粒子を形成することにより、樹脂基材との密着性に優れかつ微細回路のエッチング性を高めている。
【0012】
特許文献3においては、電解銅箔の粗面側に微細で均一なコブ付け処理を行うこと、具体的には粗化高さが0.05〜0.3μmで針状またはコブ状の粗化粒子を形成することにより、樹脂基材との密着性に優れかつ高いエッチングファクターが得られている。
【0013】
特許文献4においては、銅箔の表面に微細な粗化粒子からなる粗化粒子層を形成すること、具体的には直径(粗化高さ)が0.05〜1.0μmで球状の粗化粒子を形成することにより、樹脂基材との密着性に優れかつ回路の直線性が高く、伝送損失の低減を可能としている。
【0014】
特許文献5においては、銅箔の表面に微細な粗化粒子からなる粗化粒子層を形成すること、具体的には直径(粗化高さ)が0.1〜2.0μmであり、高さと幅の比が1.5以上である針状の粗化粒子を形成することにより、樹脂基材との密着性に優れかつ回路浸食現象を回避している。
【0015】
特許文献6においては、銅箔の表面に微細な粗化粒子からなる粗化粒子層を形成すること、具体的には直径(粗化高さ)が0.666〜15μmであり、高さと幅の比が15以上である針状や棒状の粗化粒子を形成することにより、樹脂基材との密着性に優れかつ回路浸食現象を回避している。
【0016】
特許文献7においては、銅箔の表面に粗化粒子を付着させて粗化すること、具体的には粗化高さが0.3〜3.0μmであり、観察断面25μmの範囲に10〜100個が略均等に分布していることにより、樹脂基材との密着性に優れかつファインパターン化が作成でき、高周波特性が良好となっている。
【0017】
特許文献8においては、銅箔の表面に施す粗化処理の量と形状を適切な範囲とすること、具体的には粗化高さが0.4〜1.8μmで先端が尖った凸部形状の粗化粒子を形成することにより、樹脂基材との密着性に優れかつファインパターンの回路形成性が良好で、伝送損失の低減が可能としている。
【0018】
しかしながら、上記の特許文献2〜8における銅箔は、いずれも単一形状の粗化粒子のみにて構成されており、樹脂基材との密着性とその他の特性をともに良好となるようにしてはいるものの、密着性とはトレードオフの関係にあり、高周波回路において最も重要な高周波伝送特性を高いレベルで両立させるには至っていない。
【0019】
出願人にて検討を行った特許文献7〜8における銅箔においても、今後の高周波基板に要求される伝送損失レベルに対しては必ずしも十分とはいえない点があり、より一層の伝送損失の低減が必要となっている。
【0020】
さらに、高周波領域で使用されるプリント基板材料として、伝送損失の少ない低誘電樹脂を成分に含む熱硬化型の樹脂を用いる場合に、ガラス転移温度の高い樹脂では樹脂の流動性が高くなる温度と樹脂の硬化する温度が近接しており、銅箔の粗化粒子のすき間に樹脂が十分に充填される前に樹脂が硬化してしまうことがある。このような樹脂では、粗化高さの低い粗化粒子がすき間なく並んでいる状態においては樹脂が充填されにくくなり、基板材料との密着性が低下してしまうという問題がある。
【0021】
これに対して、粗化高さの低い粗化粒子と粗化高さの高い粗化粒子が混在する場合は、粗化粒子の間にすき間が形成され、そのすき間に樹脂が充填されやすくなることにより、このような樹脂においても充填性が良好となり、基板材料との密着性が向上することを見出した。
【0022】
また、例えば粗化粒子の高さを高くして樹脂基材との密着性を確保する方法は、高周波伝送特性について、必ずしも十分に考慮されていない。高周波信号伝送用銅箔においては、樹脂基材への密着性確保とともに、銅張積層板とした際の伝送特性の両立が大きな課題である。
【0023】
これに対し、本発明者らは、単に粗化粒子の高さ(表面粗さ)を規定するのみではなく、粗化粒子の高さを部分的に高くしたり、粗化粒子の形状を制御したりすることで、樹脂基材との密着性と、高周波伝送特性を両立することができることを見出した。
【0024】
特に、粗化粒子の高さや形状は、樹脂基材の充填性や引っ張り時の樹脂破壊挙動、高周波信号の伝送経路などへの影響が大きく、結果として密着性や高周波伝送特性を変動させる大きな要因であることが確認できた。この点において、粗化粒子の全体像を精度良く把握することが重要であり、本発明者は粗化粒子の観察方法についても鋭意研究を行った。
【0025】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、樹脂基材との密着性に優れ、高周波伝送特性にも優れた銅箔等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前述した目的を達するために第1の発明は、高周波電気信号の伝送用の銅箔であって、少なくとも一方の面に形成され、粗化粒子からなる粗化粒子層と、前記粗化粒子層の上に形成されるシランカップリング剤処理層と、を具備し、前記銅箔を幅方向に切断した断面において、粗化高さが0.5μm以上3μm以下の前記粗化粒子が、30μmの範囲に1個以上10個以下であり、かつ、粗化高さが0.1μm以上0.4μm以下の前記粗化粒子が、30μmの範囲に5個以上であることを特徴とする高周波回路用銅箔である。
【0027】
前記銅箔を幅方向に切断した断面において、粗化高さが0.5μm以上3μm以下の前記粗化粒子が、30μmの範囲に1個以上5個以下であり、かつ、粗化高さが0.1μm以上0.4μm以下の前記粗化粒子が、30μmの範囲に7個以上であることがより望ましい。
【0028】
前記銅箔の表面における輪郭曲面の二乗平均平方根勾配Sdqが45以上95以下であることが望ましい。
【0029】
前記銅箔の表面における輪郭曲面の二乗平均平方根勾配Sdqが55以上95以下であることがさらに望ましい。
【0030】
前記銅箔を幅方向に切断した断面において、粗化高さが0.5μm以上3μm以下の前記粗化粒子が、30μmの範囲に2個以上10個以下であり、粗化高さが0.5μm以上3μm以下の前記粗化粒子の断面形状が、逆滴状、柱状、針状、樹枝状のうち2つ以上の形状を含むことが望ましい。
【0031】
さらに、前記銅箔を幅方向に切断した断面において、粗化高さが0.5μm以上3μm以下の前記粗化粒子が、30μmの範囲に2個以上5個以下であり、粗化高さが0.5μm以上3μm以下の前記粗化粒子の断面形状が、逆滴状、柱状、針状、樹枝状のうち2つ以上の形状を含むことが望ましい。
【0032】
第1の発明によれば、シランカップリング剤処理層を有するため、樹脂基材との密着性が向上する。さらに、粗化高さが0.5μm以上3μm以下である高さの高い粗化粒子と、粗化高さが0.1μm以上0.4μm以下である高さの低い粗化粒子とが混在するため、部分的に粗化高さの高い部位と低い部位を形成することができる。
【0033】
具体的には、30μmの範囲において、粗化高さの高い粗化粒子が、1個以上10個以下であり、かつ、粗化高さの低い粗化粒子が、5個以上とすることで、全体的な粗化高さを低くしても、部分的に形成される粗化高さの高い粗化粒子によって、密着性を高めることができるとともに、全体的な粗化高さを低くすることで、良好な高周波伝送特性を確保することができる。
【0034】
このような効果は、30μmの範囲において、粗化高さの高い粗化粒子が、1個以上5個以下であり、かつ、粗化高さの低い粗化粒子が、7個以上とすることで、より大きな効果を得ることができる。
【0035】
また、銅箔の表面における輪郭曲面の二乗平均平方根勾配Sdqが45以上95以下であれば、粗化粒子の形状が適切となり、密着性を高めることができるとともに、良好な高周波伝送特性を確保することができる。
【0036】
特に、銅箔の表面における輪郭曲面の二乗平均平方根勾配Sdqが55以上95以下であれば、より大きな効果を得ることができる。
【0037】
また、銅箔を幅方向に切断した断面において、粗化高さが0.5μm以上3μm以下の粗化粒子が、30μmの範囲に2個以上10個以下であり、かつ、粗化高さが0.5μm以上3μm以下の粗化粒子の断面形状が、逆滴状、柱状、針状、樹枝状のうち2つ以上の形状を含むようにすることで、例えば、伝送特性に優れるが密着性が悪くなる恐れのある針状の粗化粒子形状のみではなく、密着性に優れる逆滴状や樹枝状の形状が混在することで、密着性を高めることができるとともに、良好な高周波伝送特性を確保することができる。なお、さらに、粗化高さが0.5μm以上3μm以下の粗化粒子が、30μmの範囲に2個以上5個以下であれば、上記の効果が大きい。
【0038】
また、高周波回路用の銅箔の粗化粒子層としては、銅又は銅合金が特に好適である。
【0039】
粗化粒子層とシランカップリング剤処理層との間にクロメート処理層を設けることで、防錆効果を得ることができる。
【0040】
第2の発明は、第1の発明にかかる高周波用銅箔が、エポキシ、耐熱エポキシ、ビスマレイミド・トリアジンレジン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド、シアネートエステル系樹脂のいずれかの樹脂またはこれらの混合樹脂からなる樹脂基材の片面または両面に貼り付けられていることを特徴とする銅張積層板である。
【0041】
第2の発明によれば、低伝送損失な銅張積層板を効率よく得ることができる。また、このような樹脂に対しても、本発明の銅箔を適用することで、高周波回路用銅箔と樹脂との十分な結合力を確保することができる。
【0042】
第3の発明は、第2の発明にかかる銅張積層板を用いたことを特徴とするプリント配線基板である。
【0043】
第3の発明によれば、伝送損失の低いプリント配線基板を得ることができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、樹脂基材との密着性に優れ、高周波伝送特性にも優れた銅箔等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(プリント配線基板1)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明にかかるプリント配線基板1を示す図である。プリント配線基板1は、樹脂基材3上に、銅箔5が貼り合わされて形成される。銅箔5は、マスキングおよびエッチングによってパターニングされ、図示を省略した回路を形成する。なお、エッチング前の銅箔5と樹脂基材3とが貼り合わさって一体化されたものを銅張積層板2とする。樹脂基材3と銅箔5を貼り合わせて、銅張積層板2を形成する方法としては、公知の方法、例えば熱プレス方式、連続ロールラミネート方式、連続ベルトプレス方式などを用いることができる。
銅箔5は、電解銅箔、電解銅合金箔、圧延銅箔、圧延銅合金箔のうちから、銅張積層板2の用途等に応じて適宜選択することができる。なお、銅箔5の詳細は後述する。
【0047】
樹脂基材3としては、例えば、エポキシ、耐熱エポキシ、ビスマレイミド・トリアジンレジン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド、シアネートエステル系樹脂のいずれかの樹脂またはこれらの混合樹脂からなる。このような樹脂に対しても、本発明の銅箔を適用することで高周波回路銅箔と樹脂との十分な化学結合力を確保することができる。
【0048】
これらの樹脂基材3の中でガラス転移温度が高いもの、例えばガラス転移温度が100℃を超えるものにおいては、シランカップリング剤処理層による化学結合力のみでは銅箔5と樹脂基材3との密着力が不足する場合があるため、適正な粗化粒子を形成するための処理をすることが必要となる。この傾向はガラス転移温度が高くなるにつれて顕著となり、ガラス転移温度が150℃を超える樹脂基材においては、本発明の銅箔を使用することの効果が高まる。更に、ガラス転移温度が200℃を超える樹脂基材においては本発明の銅箔を使用することの効果が著しく高くなる。
【0049】
プリント配線基板1は、高周波用低伝送損失基板である。例えば、5GHz以上の高周波電気信号の伝送用に用いられる。なお、プリント配線基板1は、図示したように、樹脂基材3と銅箔5とが片面に1層ずつ積層されたものには限られず、それぞれ複数層であってもよい。例えば、樹脂基材3の両面に銅箔5が積層されてもよく、同様に、銅箔5の両面に樹脂基材3が積層されてもよい。
【0050】
(銅箔)
次に、銅箔5について詳細に説明する。
図2は、銅箔5の樹脂密着面における断面拡大図である。銅箔5は、銅の元箔7上に複数の粗化粒子9が形成される。粗化粒子9により形成される層を粗化粒子層11とする。本発明の高周波回路用銅箔は、金属基材としての元箔表面の少なくとも一方の面(表面粗さは特に限定されないが、Rzが5.0μm以下であることが好ましい)に、ヤケめっきにより粗化粒子9が設けられて粗化粒子層11が形成される。なお、粗化粒子9は、銅または銅合金からなることが好ましい。
【0051】
また、粗化粒子9(粗化粒子層11)上には、クロメート処理層13からなる防錆層が必要に応じて形成される。更に、クロメート処理層13の上にシランカップリング剤処理層15が形成される。なお、本発明において、クロメート処理層13上にシランカップリング剤処理層15が形成される場合でも、シランカップリング剤処理層15は、粗化粒子層11上に形成されるとして説明する。すなわち、本発明において、粗化粒子層11上にシランカップリング剤処理層15が形成されるとは、粗化粒子層11とシランカップリング剤処理層15との間に、他の層が形成されるものも含む。例えば、粗化粒子層11上に亜鉛層を形成した後にその上にクロメート処理層13を形成し、クロメート処理層13上にシランカップリング剤処理層15が形成される場合や、粗化粒子層11上にニッケル層を形成した後に亜鉛層を形成して、その上にクロメート処理層13を形成し、クロメート処理層13上にシランカップリング剤処理層15が形成される場合などを含む。
【0052】
シランカップリング剤処理層15は、樹脂基材3の樹脂に応じてエポキシ系、アミノ系、メタクリル系、ビニル系、アクリル系、メルカプト系等から適宜選択することができる。前述した、高周波対応用のプリント配線基板1に用いられる樹脂基材3用の樹脂には、特に相性の優れるエポキシ系、アミノ系、ビニル系のカップリング剤を選択することができる。
【0053】
ここで、通常、粗化粒子9の高さが高くなると、樹脂基板との密着性が向上する反面、高周波伝送特性が悪化する。このため、高周波伝送特性を考慮すると、粗化粒子9の高さを高くするだけでは、樹脂基板との密着性と高周波伝送特性を両立することは困難である。
【0054】
本発明では、粗化粒子9の全体の高さを高くするのではなく、部分的に高くすることで、密着性を向上させるとともに、粗化粒子9の高さを全体として低く抑えることで、樹脂基板との密着性と高周波伝送特性を両立するものである。すなわち、部分的に粗化粒子9を高くすることで、全体の高さを高くすることなく、密着性を確保することができることを見出したものである。
【0055】
より具体的には、粗化粒子9の高さが0.5μm以上3μm以下のものが部分的に存在すれば、樹脂基板との密着性の向上の効果が大きい。一方、粗化粒子9の高さが0.1μm以上0.4μm以下のものは、樹脂基板との密着性の向上の効果は小さくなるが、高周波伝送特性への悪影響が小さい。このため、本発明では、銅箔5を幅方向に切断した断面において、粗化高さが0.5μm以上3μm以下の粗化粒子9が、30μmの範囲に1個以上10個以下であり、かつ、粗化高さが0.1μm以上0.4μm以下の粗化粒子9が、30μmの範囲に5個以上である。
【0056】
ここで、幅方向とは、銅の基材として製箔された電解銅箔ないし圧延銅箔をロールに巻き取ったときのロールの長手方向に対し、垂直な方向を指す。このように、幅方向に限定した理由は、粗化処理を施す際、粗化ムラは引張方向にできるため、幅方向に測定した方が、安定して測定が可能であるためである。
【0057】
このように、粗化高さが0.5μm以上3μm以下の、粗化高さの高い粗化粒子9が、30μmの範囲に1個以上あれば、樹脂基板との密着性を向上することができる。一方、粗化高さの高い粗化粒子9が、30μmの範囲に10個を超えると、高周波伝送特性への影響が大きくなり、望ましくない。したがって、本発明では、粗化高さが0.5μm以上3μm以下の粗化粒子9は、30μmの範囲に1個以上10個以下必要であり、より望ましくは、30μmの範囲に1個以上5個以下である。
粗化高さは高い方が密着性は良好となるが、必要以上に高くしても密着性は飽和し、伝送損失も増加するため、3μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがさらに好ましい。
【0058】
また、粗化高さが0.1μm以上0.4μm以下の、粗化高さの低い粗化粒子9が、30μmの範囲に5個以上あれば、完全に平坦な場合と比較して、樹脂基板との密着性の向上の効果を得ることができる。しかしながら、前述した様に、粗化高さの高い粗化粒子が存在していても、粗化高さの低い粗化粒子9の存在がなければ十分な密着性は得ることができない。したがって、本発明では、前述した、粗化高さが0.5μm以上3μm以下の高さの粗化粒子に加え、粗化高さが0.1μm以上0.4μm以下の粗化粒子9が、30μmの範囲に5個以上必要であり、より望ましくは、30μmの範囲に7個以上である。なお、粗化高さが0.1μm以上0.4μm以下である粗化高さの低い粗化粒子9は、その数が増えても、高周波伝送特性への影響は少ない。
粗化高さは低い方が伝送損失は小さくなるが、低くなりすぎると密着性への寄与が小さくなるため、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがさらに好ましい。
【0059】
このように、本発明では、粗化高さの高い粗化粒子9と、粗化高さの低い粗化粒子9とを混在させることで、全体として粗化粒子9の粗化高さを高くする場合と比較して、高周波伝送特性への悪影響を抑制するとともに、樹脂基板との十分な密着性を確保することができる。
【0060】
粗化粒子を形成する前の元箔の粗化処理面の表面粗さが粗い場合には、粗化めっき時の電流に分布が生じる。凸部には電流が集中しやすくなり粗化粒子は高く成長し、凹部には電流が流れにくくなり粗化粒子は低く成長する。このことにより、粗化高さの高い粗化粒子9と粗化高さの低い粗化粒子9とが混在した形態となる。
【0061】
元箔の粗化処理面の表面粗さについては、一例としては元箔を製箔する際のドラム表面の粗さを調整することで対応ができる。また、他に一例としては製箔時のめっき液に添加するブライトナーとレベラーの濃度や比率を調整することや、製箔後の銅箔の表面を化学的に溶解(エッチング)することでも対応できる。元箔の粗化処理面の表面粗さを粗くするには、一例としては元箔を製箔するドラム表面を粗めのバフにより研磨することで対応できる。また、他に一例としては、製箔時のめっき液に添加するレベラーの濃度を低くすることや、製箔後の銅箔の表面を化学的に溶解(エッチング)する際のエッチング時間を長くすることでも対応できる。
【0062】
なお、元箔の粗化処理面の表面粗さについては、粗い方が粗化粒子の粗化高さに高低差をつけやすくなるが、粗くなり過ぎると粗化粒子の粗化高さが全体的に高くなってしまい、伝送特性への悪影響を及ぼすことがある。元箔の粗化処理面の10点平均粗さRzは、1.5μm以下が好ましく、1.3μm以下がより好ましく、1.1μm以下が更に好ましい。
【0063】
別の方法としては、粗化処理方法を適正な条件とすることにより、元箔の表面粗さを大きく粗くすることなく、粗化高さの高い粗化粒子9と粗化高さの低い粗化粒子9とが混在した形態とすることができる。
粗化高さの異なる粗化粒子が混在した形態とするには、一例としては、複数回の粗化めっきを行う際に、前の粗化めっきよりも後の粗化めっきの電流密度を大きくすることにより、前の粗化めっきにより形成された粗化粒子の高低差を更に拡大することができる。また、他に一例としては複数回の粗化めっきにおいて、粗化めっき液中の添加元素を適宜選択することにより、粗化粒子の高低差を拡大することも可能である。
【0064】
複数回の粗化めっきを連続して行う場合においては、粗化粒子を形成するためのヤケめっきの後に粗化粒子の脱落を防止するために平滑めっきであるカプセルめっきを施すことがある。本発明においては、このような粗化めっきに続けてカプセルめっきを施す方法以外にも、ヤケめっきの後に連続して次のヤケめっきを行うこともできる。連続してヤケめっきを行うことにより、粗化粒子の高低差を効果的に拡大することができる。
【0065】
また、発明者らは、伝送特性と密着性に対しては、粗化粒子9の粗化高さだけではなく、粗化粒子9の形状(傾斜)が影響を及ぼすことを見出した。すなわち、粗化粒子9の粗化高さの分布のみではなく、粗化粒子9の形態を規定することで、伝送特性と密着性とをさらに高いレベルで両立することができる。
【0066】
さらに、本発明者は、粗化粒子の形状や粗化粒子間のすき間の空き具合は粗化めっきの液の組成や温度の影響を受け、銅箔の表面における輪郭曲線の二乗平均平方根勾配Sdqは粗化粒子の形状や粗化粒子間のすき間の空き具合の影響を受けることを見出した。
【0067】
より具体的には、銅箔の表面における輪郭曲面の二乗平均平方根勾配Sdqが45以上95以下であることが望ましく、より望ましくは、二乗平均平方根勾配Sdqが55以上95以下である。二乗平均平方根勾配は、すべての方向に対する輪郭表面の表面性状を表すものであり、粗化粒子9の粗化高さを平方根にしてその値を平均したものである。すなわち、この数値が高いとは、粗化粒子9の傾斜が高いという意味となる。
【0068】
二乗平均平方根勾配Sdqを上述の範囲に規定し、粗化粒子9の形状(傾斜)を適正にすることで、伝送特性と密着性とを効率良く両立させることができる。なお、二乗平均平方根勾配Sdqの値が高すぎると、針状粗化粒子が多くなり密着性が低下する。このため、二乗平均平方根勾配Sdqは、95以下が望ましい。一方、二乗平均平方根勾配Sdqの値が低すぎと、平べったい粗化粒子が多くなり、密着性が低下するとともに、高周波帯域において表皮効果によって粗化粒子の表面に沿って流れる電流が増加するために伝送特性が低下する。このため、二乗平均平方根勾配Sdqは、45以上が望ましい。なお、二乗平均平方根勾配Sdqは、一般的に次式で与えられる。
【0070】
なお、式中のx、yは、平面座標であり、Zは高さ方向の座標である。Z(x,y)は、ある点の座標を示し、これを微分することで、その座標点における傾きとなる。上式では、全ての点(A個)のx方向の傾きとy方向の傾きの2乗を足して平方根としたものである。二乗平均平方根勾配Sdqは、例えば垂直走査型低コヒーレンス干渉法を用いて、測定倍率5倍またはそれ以上の倍率で測定することが出来る。測定は、非接触式の表面粗さ測定装置であって、解像度が1μmまたはそれ以下(例えば800nm)のものを用いることが好ましい。このように、二乗平均平方根勾配Sdqを規定することで、粗化粒子9の高さだけではなく、粗化粒子9の形状を数値で規定することができる。この結果、高周波領域での導体損を上げることなく、プリント基板材料との密着性を確保することができる。
【0071】
従来発明における接触式表面粗さ計やレーザー反射式表面粗さ計を用いての粗化粒子の測定では、個々の粗化粒子をきちんと識別してその高さや形状の特徴を把握するためには分解能が不十分であり、粗化粒子の高さや形状が異なる場合にも測定数値に差が見られないこともあった。本発明においては、非接触式でも高さ方向の分解能に優れる光干渉式の測定装置を用いて得られるパラメータのSdqによって、密着性と伝送特性を高いレベルで両立する粗化粒子の状態を規定することを可能にしている。
【0072】
粗化粒子の形状(傾斜)については、例えば粗化めっきに用いるめっき液中に含まれる添加元素により調整することができる。一例としては、粗化めっきにおけるヤケめっき液に含まれるニッケルは粗化形状に影響を及ぼし、ニッケル濃度が高くなると丸味を帯び、ニッケル濃度が低くなると細く尖った形状となる。また、他にはヤケめっき液に含まれるモリブデンは粗化粒子のすき間の空き具合に影響を及ぼし、モリブデン濃度が低いと粗化粒子がまばらに存在する状態となる。また、他にはヤケめっき液の液温も粗化粒子のすき間の空き具合に影響を及ぼし、液温が高いと粗化粒子がまばらに分布した状態となる。
【0073】
上述したように、粗化粒子を形成する際の粗化めっき条件として、一例としてヤケめっき液の組成やめっき液温度を適正化することにより、二乗平均平方根勾配Sdqを適正化することができる。Sdqを高くするには、一例としてはヤケめっき液のニッケル濃度を低くすることで対応でき、また他の一例としてはヤケめっき液のモリブデン濃度を低くすることや、ヤケめっき液の液温を高くすることでも対応できる。
【0074】
次に、より具体的に粗化粒子9の形状について説明する。
図3A〜
図3Eは、粗化粒子9の形状の分類を示す概念図であり、
図3Aは、針状の粗化粒子9を示す。なお、粗化粒子9の形状及び個数の測定については、例えばイオンミリング装置を用いて幅方向に断面加工を施し、HR−SEM(走査型電子顕微鏡)で、測定倍率3,000倍またはそれ以上の倍率で撮影した画像により測定することができる。
【0075】
ここで、粗化粒子9の基部の幅をaとする。また、粗化粒子9の高さhの半分の高さ(h/2)における幅をbとする。また、粗化粒子9の半分の高さ(h/2)から頂点までの高さの半分(h/4)における幅をcとする。
図3Aに示すような、針状の粗化粒子9では、a>b>cであり、ほぼ均等に幅が変化する。
【0076】
図3Bは、柱状の粗化粒子9を示す図である。柱状の粗化粒子9では、a≒b≒cであり、ほぼ幅が同一である。針状の粗化粒子9との違いとしては、例えば、aとbとcとの差が、20%以下であることが挙げられる。
【0077】
図3Cは、逆滴状の粗化粒子9を示す図である。逆滴状の粗化粒子9では、b>aかつb>cであり、bが最も幅が広い。
【0078】
図3Dは、球状の粗化粒子9を示す図である。球状の粗化粒子9では、全体として略球形の形状であり、最も広い幅dが、高さ0からh/2の間に形成される。
【0079】
図3Eは、樹枝状の粗化粒子9を示す図である。樹枝状の粗化粒子9は、複数に枝分かれした形状である。
【0080】
本発明では、粗化高さが0.5μm以上3μm以下の粗化粒子9の断面形状が、逆滴状、柱状、針状、樹枝状のうち2つ以上の形状を含むことが望ましい。例えば、粗化粒子9の基部の幅が細いと、伝送特性の低下は小さくなるが、粗化粒子の根元から折れやすくなるため、密着性が低下する。このため、この場合には、針状の粗化粒子9以外の形状が1種以上含まれることで、密着性を向上させることができる。この場合には、粗化高さが0.5μm以上3μm以下の粗化粒子9は、30μmの範囲に2個以上10個以下必要であり、より望ましくは、30μmの範囲に2個以上5個以下である。
【0081】
粗化粒子9の断面形状が上記の2つ以上の形状を含むためには、一例としてはヤケめっきを複数回行う場合に組成が異なるヤケめっき液を使用することで対応できる。また、他に一例としてはヤケめっきを複数回行う場合に電流密度を変えることでも対応できる。特に、ヤケめっきの後に連続して次のヤケめっきを行う場合に、それぞれ異なる組成のヤケめっき液を使用すると異なる形状の粗化粒子を形成することができる。
【0082】
本実施形態によれば、粗化粒子9の全体の高さを高くするのではなく、部分的に高くすることで、密着性を向上させるとともに、粗化粒子9の高さを全体として低く抑えることで、樹脂基板との密着性と高周波伝送特性を両立することができる。
【0083】
また、粗化粒子9の高さだけでなく、形状(傾斜)を規定することで、伝送特性と密着性とをさらに両立することができる。
【0084】
また、さらに、複数の形状の粗化粒子9を混在させることで、伝送特性と密着性とをさらに両立することができる。
【実施例】
【0085】
(実施例1〜7)
金属基材として厚さ18μmの未処理平滑銅箔を用意し、この未処理銅箔に粗化粒子を形成するヤケめっきを施した。ヤケめっきの浴組成は表1の溶液Aとした。また、ヤケめっき条件及び評価結果を表2に示す。
ヤケめっきの溶液Aは粗化粒子がまばらに成長しやすく、元箔の粗化処理面の表面粗さが粗いほど粗化粒子の粗化高さに高低差が生じやすい特徴がある。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
ついでヤケめっき粗化面にカプセルめっきを施すことで、粗化粒子が粉落ちすることのない強固で健全な粗化粒子形状とするために、下記の浴組成とめっき条件でカプセルめっきを施した。
硫酸濃度:100g/L
硫酸銅からの銅濃度:50g−Cu/L
浴温:55℃
電流密度:直流整流で15A/dm
2【0089】
上記のヤケめっき、及びカプセルめっきを施した後に一例として下記のクロムめっき条件で処理することにより防錆のクロメート処理層を形成した。
【0090】
<クロムめっき条件>
無水クロム酸(CrO
3) : 2.5g/L
pH: 2.5
電流密度: 0.5A/dm
2
温度: 15〜45℃
時間: 1秒〜2分
【0091】
このようにして作製した銅箔の断面形状をイオンミリング装置(日立ハイテク社製IM4000)を用いて断面加工を施し、HR−SEM(日立ハイテク社製SU8020)で加速電圧3kV(2次電子像)を用いて、5万倍の断面観察を行い、幅方向に任意の30μmにおいて粗化高さ0.5μm以上3μm以下の粒子数及び粗化高さ0.1μm以上0.4μm以下の粒子数をカウントした。また粗化高さが0.5μm以上3μm以下の粗化粒子に対し、その粗化形状が1種類のものを「good」、2種類以上のものを「excellent」とした。さらに、3次元白色光干渉型顕微鏡(BRUKER Wyko ContourGT−K)を用いて、二乗平均平方根勾配Sdqを測定(測定条件は測定倍率10倍、ハイレゾCCDカメラを使用し、測定後に特別なフィルタをかけずに数値化した)し、45以上95以下を「good」、更に55以上95以下を満たすものを「excellent」、それ以外を「bad」とした。
【0092】
得られた粗化粒子つきの銅箔を、市販の高周波対応絶縁基板(パナソニック株式会社製メグトロン6:ガラス転移温度185℃)に、一例としてプレス温度:200℃、プレス圧力:35kgf/cm
2、プレス時間:160分のプレス条件で積層した。
この積層板に、レジスト幅300μm、回路間隔450mmのパターンフィルムを用いてUV露光によってパターンを形成し、さらにエッチングを施し、マイクロストリップライン構造の伝送特性測定用基板を得た。伝送特性は、ネットワークアナライザにより伝送損失を測定し、この測定した伝送損失の数値から評価した。作製したマイクロストリップラインは、特性インピーダンスを50Ωとし、一例として銅箔の厚さ:18μm、樹脂の厚さ:0.2mm、幅:500μm、長さ:450mmとした。
【0093】
密着強度は、テンシロンテスター(株式会社エー・アンド・デイ製)を使用して、絶縁基板と銅箔とをプレス後に、試験片を10mm幅の回路パターンにエッチング加工し、回路パターンを90度方向に50mm/分の速度で引っ張った際の引き剥がし強さを測定した。
【0094】
(実施例8〜11)
実施例1に対し、1回目のヤケめっき後にカプセルめっきを行い、次いで2回目のヤケめっき後にカプセルめっきを行った。2回目のヤケめっきで用いる溶液を溶液Bとし、電流密度を変更した以外は、実施例1と同様に作製し、同様の評価を行った。
ヤケめっきの溶液Bは粗化が均一に成長しやすく、1回目のヤケめっきにより形成された粗化粒子の粗化高さの高低差をあまり変化させずに粗化粒子を成長させやすい特徴がある。
【0095】
(実施例12〜15)
実施例8に対し、1回目のヤケめっき後にカプセルめっきを施さずに、そのまま2回目のヤケめっき後にカプセルめっきを施し、次いで3回目のヤケめっき後にカプセルめっきを行ったことと電流密度を変更した以外は、実施例8と同様に作製し、同様の評価を行った。
【0096】
(実施例16〜22)
実施例8または実施例12に対し、2回目以降のヤケめっきで用いる溶液を溶液Cまたは溶液Dとして、電流密度を変更した以外は、実施例8または実施例12と同様に作製し、同様の評価を行った。
ヤケめっきの溶液Cは粗化粒子が丸味を帯びて成長しやすく、また溶液Dは粗化粒子が尖った形状に成長しやすい特徴がある。
【0097】
(実施例23、24)
実施例1または実施例8に対し、元箔の粗化処理面側に市販のエッチング液による粗面化処理を施した以外は、実施例1または実施例8と同様に作製し、同様の評価を行った。
エッチング処理条件としては、一例として市販のエッチング液(CZ8101:メック株式会社製)を用いて、液温30℃、スプレー圧0.25MPa、エッチング量1μmで実施した。
【0098】
(実施例25〜27)
実施例4または実施例9もしくは実施例13に対し、粗化めっき後にニッケルめっきおよび亜鉛めっきを施した後にクロメート処理を施した以外は、実施例4または実施例9または実施例13と同様に作製し、同様の評価を行った。
ニッケルめっきおよび亜鉛めっきについては、一例として下記条件にて行った。
【0099】
<Niめっき条件>
硫酸ニッケル: ニッケル濃度として 5.0g/L
過硫酸アンモニウム: 40.0g/L
ほう酸: 28.5g/L
電流密度: 1.5A/dm
2
pH: 3.8
温度: 28.5℃
時間: 1秒〜2分
<Znめっき条件>
硫酸亜鉛7水和物: 1〜30g/L
水酸化ナトリウム: 10〜300g/L
電流密度: 0.1〜10A/dm
2
温度: 5〜60℃
時間: 1秒〜2分
【0100】
(比較例1〜3)
実施例1〜7に対し、ヤケめっきの電流密度または元箔の粗化処理面の表面粗さを変更した以外は、実施例1〜7と同様に作製し、同様の評価を行った。
【0101】
(比較例4)
実施例8〜11に対し、2回目のヤケめっきで用いる溶液を溶液Aとした以外は、実施例8〜11と同様に作製し、同様の評価を行った。
【0102】
(比較例5)
実施例1に対し、粗化処理を施さなかった以外は、実施例1と同様に作製し、同様の評価を行った。
【0103】
以上の評価方法により各実施例及び比較例に係わる高周波回路用銅箔について評価した結果を表2に示す。
【0104】
なお、表2では、伝送特性は、40GHzにおける伝送損失が−28dB以上の場合を「excellent」、−28dB未満、−31dB以上の場合を「good」、−31dB未満、−33dB以上の場合を「average」、そして−33dB未満の場合を「bad」と示している。また、引き剥がし強さが0.6kN/m以上の場合を「excellent」、引き剥がし強さが0.5kN/m以上0.6kN/m未満の場合を「good」、引き剥がし強さが0.45kN/m以上0.5kN/m未満の場合を「average」、そして引き剥がし強さが0.45kN/m未満の場合を「bad」で示している。
【0105】
粗化高さが0.5μm以上3μm以下の粗化粒子が、30μmの範囲に1個以上10個以下であり、かつ、粗化高さが0.1μm以上0.4μm以下の粗化粒子が、30μmの範囲に5個以上である、実施例では、十分な引き剥がし強度と、良好な伝送特性を両立することができた。特に、粗化高さが0.5μm以上3μm以下の粗化粒子に対し、その粗化形状が2種類以上であり、二乗平均平方根勾配Sdqが55以上95以下を満たす実施例では、引き剥がし強度と40GHzでの伝送損失がともに「excellent」となった。なお、実施例21では1回目のヤケめっきに溶液Cを用いたため粗化粒子の形状の丸味が顕著となってSdqが45未満となり、引き剥がし強さがやや低下した。また、実施例22では1回目のヤケめっきに溶液Dを用いたため粗化粒子の形状の尖りが顕著となってSdqが95より大きくなり、伝送損失がやや増加した。
【0106】
これに対し、比較例1〜6では、引き剥がし強度と伝送特性の一方は良好であっても、両立することはできなかった。
比較例1ではヤケめっきの電流密度が小さいため粗化高さが0.5μm以上3μm以下の粗化粒子の数が1個未満であり、引き剥がし強さが不足した。比較例2では、ヤケめっきの電流密度が大きいため粗化高さが0.5μm以上3μm以下の粗化粒子が10個以上かつ粗化高さが0.1μm以上0.4μm以下の粗化粒子が5個未満であり、伝送特性が低下した。また、比較例3では元箔の粗化処理面の表面粗さが粗いため粗化高さが0.5μm以上3μm以下の粗化粒子が10以上かつ粗化高さが0.1μm以上0.4μm以下の粗化粒子が5個未満であり、伝送特性が低下した。比較例4では2回目のヤケめっきにも溶液Aを用いたため粗化高さが0.5μm以上3μm以下の粗化粒子が10個以上かつ粗化高さが0.1μm以上0.4μm以下の粗化粒子が5個未満であり、伝送特性が低下した。比較例5では粗化処理を施しておらず、引き剥がし強さが大幅に不足した。
粗化粒子9の高さが0.5μm以上3μm以下のものが部分的に存在すれば、樹脂基板との密着性の向上の効果が大きい。一方、粗化粒子9の高さが0.1μm以上0.4μm以下のものは、樹脂基板との密着性の向上の効果は小さくなるが、高周波伝送特性への悪影響が小さい。このため、本発明では、銅箔5を幅方向に切断した断面において、粗化高さが0.5μm以上3μm以下の粗化粒子9が、30μmの範囲に1個以上10個以下であり、かつ、粗化高さが0.1μm以上0.4μm以下の粗化粒子9が、30μmの範囲に5個以上である。