【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の太陽電池の検査装置の構成の例を示す図である。太陽電池1は20個のセル2が直列に接続されたものである。なお、本実施例ではセルの数を20個としているが、2個以上の何個であってもよい。
太陽電池の出力端子には、負荷と直列に信号抽出部3が設けられている。信号抽出部3において抽出された信号は、判定部4に送信される。
光源部5が別途に設けられ、光源部5から射出された光が1つのセルに照射されている。
光源部5から判定部4に向けて、信号線を通じて発光量の情報等を送信する。
【0016】
図2は、信号抽出部の例を示す図である。同図(a)は負荷と直列に接続する場合のもので、導線31は、太陽電池の出力端子に接続されている。電流トランス33が負荷と直列に接続されている。電流トランス33の二次側導線34は、判定部4に接続されている。直列に入れるといっても簡単な場合には、電流トランス33の鉄芯が可動式円環状で、負荷へ繋がる線の被服の外からこれを抱き込む形にすれば、既存の配線を外さずに設置できる。同図(b)は負荷と並列に接続する場合のもので、導線31は、太陽電池の出力端子に接続されている。コンデンサ32及びコイル33が直列に接続されている。コイル33の導線34は、判定部4に接続されている。直流を遮断してあるので、これも既存配線に全く影響を与えることはない。
【0017】
図3は、光源部の例を示す図である。光源51は半導体発光素子、好ましくは半導体レーザである。本実施例では半導体レーザとする。光源51は所定の周波数、本実施例では300Hz、の電流によって駆動され、1/300秒の周期で光量が増減する。光源51から発せられた光は、光導管52を通じて照射方向が均一化され、レンズ53によってセルの大きさに収束される。
【0018】
検査を行う際の動作は、以下のとおりである。
太陽電池1の出力端子に信号抽出部の導線31を接続する。光源部5からの光照射が行われていない状態においては、太陽電池1からは一定の電流が流れる。電流の変化がないので、電流トランス33を介して導線34に信号が送られるものではない。
光源部5からの光で1つのセルを照射する。光源部5からの光は所定の周波数で増減するので、照射を受けているセルの電流−電圧特性も周期的に変化する。これによって太陽電池1の出力電流が変化すると、その変化によってコイル33を介して導線34に信号が送られる。
光源部5からの光で1つのセルを照射する。光源部5からの光は所定の周波数で増減するので、照射を受けているセルの電流−電圧特性も周期的に変化する。これによって太陽電池1の出力電流が変化すると、その変化によって電流トランス33を介して導線34に信号が送られ、判定部4に伝わる。
判定部4は、その信号を分析し、所定の周波数の変化によるものを検出する。本実施例においては、所定の周波数に同調する電気回路を用いて、その周波数の信号を検出する。なお、信号をA/D変換してコンピュータによる処理を行ってもよい。
【0019】
図4は、セル及び太陽電池の電流−電圧特性を示す図である。(a)は、正常なセルの電流−電圧特性を示す。曲線61は光照射時の電流−電圧特性、曲線62は無照射時の電流−電圧特性である。(b)は、曲線63は上記正常なセルを20個直列に接続した太陽電池の光照射時の電流−電圧特性である。太陽電池のISCは各セルのISCに等しい。太陽電池全体の出力エネルギー((b)に描かれた長方形の面積)を最大化するよう、負荷抵抗(=V/I)を制御して使う場合が多い。以上は、20個のセル全てが正常である場合についてのものである。
【0020】
発電電流の小さい異常なセルの電流−電圧特性を(c)に示す。曲線71は光照射時の電流−電圧特性、曲線61は正常なセルの電流−電圧特性で、比較の為示してある。光照射時の短絡電流ISC’は、ISCよりも小さな値となっている。このとき、太陽電池の電流−電圧特性は、(d)の曲線73のようになる。具体的には、曲線63の図の右側において異常なセルの影響があり、曲線73はその部分で曲線63と相違している。
【0021】
図5は、セル及び太陽電池の電流−電圧特性の変化を示す図である。(a)は、正常なセルを周期的に光量の変化する光源で照射した場合の電流−電圧特性を示す。光量が少ないときには曲線64、光量が多いときには曲線65となる。光量の変化に対応して、曲線64と曲線65との間で電流−電圧特性も変化する。
太陽電池(電流−電圧特性は曲線73)において、一つの正常なセルの電流−電圧特性が(a)のように変化しても、太陽電池の電流−電圧特性は(b)のように曲線73から大きく変化しない。
【0022】
一方、(c)は、異常なセルを周期的に光量の変化する光源で照射した場合の電流−電圧特性を示す。光量の変化に対応して、曲線74と曲線75との間で電流−電圧特性も変化する。このとき、太陽電池の電流−電圧特性は、(d)の曲線76と曲線77との間で変化する。
図においてV0で示された電圧にバイアスして電流を測定すれば、対応する電流値はΔIだけ変化しているのがわかる。又は、
図1において太陽電池の負荷を0Ωから順次大きくしてゆけば、途中で信号抽出部の電流トランス33を介して電流変動分、即ち交流分を検出できることになる。この実施例では、光源51を300Hzで変調しているので、電流トランス33の二次側からこの300Hz の信号がえられる。
ここで、負荷抵抗の値は太陽電池の電流―電圧特性のほぼ右肩の電圧/電流値から大凡の値を求めることができる。
【0023】
以上の考察のとおり、異常なセルを照射した場合には、太陽電池の電流−電圧特性が変化し、特性値も増減する。信号抽出部3により、その変化に基づく信号が判定部4に送信される。一方、正常なセルを照射した場合には、太陽電池の電流−電圧特性はほとんど変化せず、判定部4には信号が出ない。判定部4において、信号の大きさ及び信号の周波数に基づいて、異常なセルを特定することができる。
【0024】
以上、異常なセルが1つの場合について説明した。異常なセルが2つ以上ある場合には、それらのうち発電電流が小さいものほど、低電圧側(低負荷抵抗側)に信号が出る。通常の太陽光発電システムでは、最大効率で動作させるべく負荷抵抗を制御しているので、負荷抵抗の変更幅が狭い事が予測される。この条件で信号が出ない場合は、発電量が小さなセルがあっても殆ど影響が無いといえる。
太陽光発電システムが負荷抵抗を変える仕組みを持たない場合には、パワートランジスタ等によって負荷抵抗を変える仕組みを付け加えて測定すればよい。
また、信号抽出部が負荷と直列に入った場合を説明したが、負荷と並列に信号抽出部を入れることも可能である。但し、この場合にはコンデンサを入れて直流を遮断する事が必要である。
【0025】
この装置は、太陽電池1の出力端子に信号抽出部3をつなぎ、光源部5を手に持ってセルを照射することで動作する。太陽電池を設置したままの状態で動作させることが可能である。
更に、太陽電池を設置したままの状態で動作させることにより、評価対象のセル以外に対してこれらを通電させるために光を照射する必要がなく、装置が小型・軽量である点が特徴である。