(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の発光装置は車両用灯具に組み込んだとき、発光装置から出射された光が、発光装置周辺に備えられたリフレクタ、その周りに配置された光反射性の部材等の表面で反射され、その反射された光が発光装置の波長変換部材の発光面以外の表面で反射されて、その反射した光が、発光面からの光と合わさって発光装置からの光として出射されてしまう。これにより、発光装置の固有の配光特性と車両用灯具に組み込んだときの配光特性が変化することになり、車両用灯具全体として所望の配光特性を得ることが難しくなるという問題があった。
また、発光を予定していた発光面だけでなく、その発光面の形状の外周部までが発光しているように見えてしまうことから折角絞り込んだ発光面の見切りが悪くなり(輪郭が不明瞭になり)、さらに発光面積を十分に小さくできないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、車両用灯具に組み込んだときにも配光特性の変化が抑制できる発光装置を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は発光面積を小さくすることができ、かつ発光面の輪郭が明瞭な発光装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明に係る発光装置は、
発光素子と、
第1の面と第2の面を有し、前記発光素子が出射する光が前記第1の面から入射される波長変換部材と、を備え、前記第2の面の一部を発光面とする発光装置であって、
前記第2の面の前記発光面の周りに反射制御構造体が設けられており、該反射制御構造体は前記波長変換部材の上に設けられた反射膜と、該反射膜の上に設けられた反射防止膜とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上のように構成された本発明に係る発光素子は、発光面の周りに反射防止膜を備えているので、例えば、車両用灯具に組み込んだときにも配光特性の変化が抑制できる。
また、本発明に係る発光装置は、発光面の周りに反射制御構造体が設けられているので、発光面積を小さくすることができ、かつ反射制御構造体に設けられた反射防止膜によって、発光面の輪郭を明瞭にできる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本件発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。各図面は模式図であり、そこに示された配置、寸法、比率、形状等は実際と異なる場合がある。また、各実施形態において他の実施形態と同一の符号を用いた部材は、同一又は対応する部材を表しており、説明を省略する場合がある。
【0011】
本件明細書において、「上」、「下」という用語は、発光装置の発光を取り出す側とその逆側を指す用語としても用いる。例えば、「上方」は、発光装置の発光を取り出す方向を指し、「下方」は、その逆の方向を指す。また、「上面」とは発光装置の発光を取り出す側にある面を指し、「下面」とはその逆側の面を指す。
【0012】
<実施の形態>
図1は、本件発明の実施の形態1に係る発光装置100の構成を示す斜視図であり、
図2は
図1のA−A線についての模式的な断面図である。
図1等に示すように、発光装置100は、基材10上に、発光素子6と、発光素子6の上面に設けられた波長変換部材5と、発光素子6および波長変換部材5の側面を被覆する光反射性樹脂4と、を有する。ここで、発光素子6は例えば青色発光ダイオードからなり、要求される発光強度に応じて必要個数(1又は2以上)設けられる。また、波長変換部材5は、例えば、YAG等の蛍光体粒子が分散された透光性部材からなり、発光素子6の光(例えば、青色光)により励起されて黄色の光を発光する。
【0013】
そして、実施形態の発光装置では、反射制御構造体3が波長変換部材5の上面に波長変換部材5の外周に沿って形成され、発光面5aの面積を小さくして輝度を向上させている。反射制御構造体3は、波長変換部材5側に設けられた反射膜1と反射膜1の上に設けられた反射防止膜2とを含んでなり、反射膜1はさらに
図1に示すように波長変換部材5側に設けられた第1反射膜1aと第1反射膜1aの上に設けられた第2反射膜1bとを含んでいてもよい。
【0014】
以上のような構成された実施形態の発光装置100において、波長変換部材5の上面の反射制御構造体3に囲まれて露出した部分が発光面5aとなり、該発光面5aから例えば白色光が出射される。
尚、
図1において11及び12を付して示す部材は例えば金属膜からなる電極である。
【0015】
以下、発光装置100の発光動作について説明する。以下の説明では、発光素子6として青色発光ダイオードを用い、波長変換部材5に分散された蛍光体粒子は、青色光により励起されて黄色の光を発光するものとして説明する。
【0016】
本実施形態の発光装置100において、電極11及び12を介して、発光素子6に給電され、発光素子6から青色光が出射される。発光素子6から出射された青色光の一部は波長変換部材5に含まれた蛍光体粒子に吸収されて蛍光体粒子を励起し、一部は波長変換部材5に含まれた蛍光体粒子に吸収されることなく発光面5aから出射される。青色光により励起された蛍光体粒子は黄色の光を出射し、蛍光体粒子から出射された光が発光面5aから出射される。波長変換部材5の入射面である下面と発光面5a以外の面は反射部材(反射制御構造体3及び光反射性樹脂4のいずれか)に覆われているので、波長変換部材5内部の青色光及び黄色光は、直接又は波長変換部材5内で1乃至複数回反射された後に発光面から出射される。
以上のようにして、波長変換部材5の発光面5aから発光素子6の青色光と蛍光体粒子の黄色光との混色光である白色光が出射される。
【0017】
以上のように構成された実施形態の発光装置は、例えば、所望の配光特性が要求される車両用灯具に組み込まれて使用される。車両用灯具の内部構造は、発光装置の発光特性(配光特性を含む)をもとに決定され、当該車両用灯具に要求される配光特性が実現されることになるが、本発明にかかる発光装置によれば、容易に所望の配光特性が実現できる。
【0018】
すなわち、発光装置が車両用灯具に組み込まれたとき、発光装置から出射された光は、発光装置周辺に備えられたリフレクタ、その周りに配置された光反射性の部材等で反射されて発光装置に照射される。従来の発光装置では、発光装置に照射された光が発光面の周りで反射されて発光面から出射される光と干渉して発光装置の配光特性に変化が生じ、車両用灯具の配光特性を設計値から変化させる。このように反射光が発光面の近くで生じると車両用灯具全体として所望の配光特性を得ることが困難になる。
【0019】
しかしながら、本実施形態の発光装置では、発光面5aの周りに反射制御構造体3を備え、反射制御構造体3の表面には、反射防止膜2が設けられているので、発光面から出射される光が発光面の周りの反射光と干渉することはない。したがって、発光装置に光が照射されても発光装置の配光特性の変化が抑えられて、車両用灯具の配光特性の変化が抑制される。これにより、車両用灯具全体として設計どおりの所望の配光特性を得ることが可能になり、容易に所望の配光特性が実現できる。
【0020】
また、実施形態の発光装置は、発光面の周りが発光しているように見えることはなく、発光面の輪郭が明瞭になり、かつ発光面積を十分に小さくできる。
【0021】
以下に、本実施形態における発光装置100の各部材について説明する。
【0022】
(基材10)
基材10としては、ガラスエポキシ、樹脂、セラミックスなどの絶縁性部材で構成される基板が挙げられる。また、金属板に絶縁部材を介して電極11,12を形成したものでもよい。基材10は平板とすることが好ましい。
また、高輝度の発光装置を構成する場合、耐熱性および耐候性が高くしかも熱伝導率が高いセラミックスからなる基材10を用いることが好ましく、そのようなセラミックス材料としては、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライトなどが挙げられる。基材10は、発光素子6が発生する熱を効果的に放熱するために、例えば、熱伝導率が150W/m・K以上であることが好ましい。
【0023】
(発光素子6)
発光素子6としては、発光ダイオードを用いるのが好ましい。例えば、青色、緑色の発光素子としては、ZnSeや窒化物系半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)、GaPを用いたものを用いることができる。また、赤色の発光素子としては、GaAlAs、AlInGaPなどを用いることができる。さらに、これ以外の材料からなる半導体発光素子を用いることもできる。用いる発光素子の組成や発光色、大きさや、個数などは目的に応じて適宜選択することができる。蛍光体粒子が分散された波長変換部材5を使用する本実施形態では、蛍光体粒子を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いる事が好ましい。化合物半導体を用いた発光素子は、半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。
【0024】
(波長変換部材5)
波長変換部材5は、ベースとなる透光性材料に発光素子6が発光する光を吸収して吸収した光と異なる波長の光を発光する波長変換が可能な蛍光体粒子が分散されている。ベースとなる透光性材料としては、例えば、ガラス材料や透明セラミックス材料が用いられる。波長変換部材5の厚みは、特に限定されるものではなく、適宜設定可能であるが、例えば、50〜300μm程度である。青色発光素子と好適に組み合わせて白色系の混色光を発光させることができ、波長変換部材に用いられる代表的な蛍光体としては、例えば、YAG(Yttrium AluminumGarnet)系、BOS(Barium ortho-Silicate)系等の蛍光体などが好適に用いられる。白色に発光可能な発光装置とする場合、波長変換部材5に含有される蛍光体粒子の分散量によって白色となるよう調整される。
【0025】
(反射制御構造体3)
反射制御構造体3は、波長変換部材5側に形成される反射膜1と反射膜1の上に形成される反射防止膜2とを含む。さらに、反射膜1は、例えば高屈折率の誘電体膜と低屈折率の誘電体膜の多層膜(誘電体多層膜)からなる第1反射膜1aと、例えば高い反射率を有する金属膜からなる第2反射膜1bとを含む積層体であることが好ましい。誘電体多層膜は、高屈折率誘電体膜と低屈折率誘電体膜の屈折率差及び各膜厚を目的とする反射率に応じて設定することにより、特定の波長または特定の波長範囲において高い反射率を実現できる。誘電体多層膜を構成する高屈折率材料としては、Nb
2O
5、TiO
2、ZrO
2、Ta
2O
3、HfO
2が挙げられ、低屈折率材料としては、SiO
2、Al
2O
3、MgF
2等が挙げられる。
【0026】
また、誘電体多層膜は高い反射率が得られることに加えて光の吸収率を低くできることから、波長変換部材5側に形成される第1反射膜1aとして適している。尚、誘電体多層膜の反射率は、高屈折率誘電体膜と低屈折率誘電体膜の屈折率差を大きくすることで高くでき、高屈折率誘電体膜と低屈折率誘電体膜の積層数を増やすことで高くできる。この誘電体多層膜からなる第1反射膜1aは、反射率が入射角依存性を有することから、特に、垂直入射が支配的(多くの光が垂直又は垂直に近い状態で反射膜に入射する)と考えられる青色光を効果的に反射するように各誘電体膜の膜厚及び屈折率が設定される。
【0027】
これに対して、高い反射率を有する金属膜からなる第2反射膜1bは、比較的反射率の波長依存性及び入射角依存性が小さいことから、第1反射膜1aによって反射されずに透過した光を反射する。第1反射膜1aが青色光を効果的に反射するように構成された場合には、この第2反射膜1bが青色光より波長の長い黄色光を含む長波長の光を反射する。
第2反射膜1bを構成する高反射用の金属材料としては、Ag又はAg合金、Al又はAl合金、Rh、Au、Cuなどが挙げられる。
【0028】
以上のように、反射膜1を第1反射膜1aと第2反射膜1bを含む積層構造にすることにより、効果的にあらゆる方向から幅広い波長範囲の光を効果的に反射させることが可能になる。
【0029】
反射防止膜2は、例えば、光を吸収する黒色系の色の金属により構成することができ、例えば、Ni、Cr、Cr
2O
3、Fe、Nb、Tiを用いて形成することができる。
これらの反射膜および反射防止膜の形成方法として、スパッタリング、蒸着および鍍金を挙げることができ、板状の波長変換部材5の上にメタルマスクなどの所定の形状のマスクを用いて所望のパターンの形状に形成することができる。
【0030】
(光反射性樹脂4)
光反射性樹脂4は、本実施形態では、発光素子6および波長変換部材5の側面を被覆しており、具体的には、発光素子6および波長変換部材5の周囲を包囲する枠状に形成されている。
光反射性樹脂4は、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂、また、これらの樹脂を少なくとも一種以上含むハイブリッド樹脂等の樹脂からなる母材に反射性物質を含有させることで形成することができる。反射性物質の材料としては、Ti、Zr、Nb、Al、Siのいずれかを含む酸化物、または、AlN、MgFなどを用いることができる。好ましくは酸化チタン(TiO
2 )を用いる。好ましくは、反射性物質として、母材の屈折率と異なる粒子を母材中に分散させる。その含有濃度、密度により光の反射量、透過量が異なるため、発光装置の形状、大きさに応じて、適宜濃度、密度を調整するとよい。
【0031】
(製造方法)
本実施形態の発光装置100の製造方法について説明する。
反射制御構造体3の製造
例えば、ガラス材料にYAG蛍光体粒子を混ぜて焼結することにより、大判の波長変換部材板を作製する。大判の波長変換部材板とは複数の波長変換部材5を集合状態で一括して作製するための大面積の波長変換部材板である。
波長変換部材の第2の面となる表面上で、発光面5aを形成する個所を含む、反射膜および反射防止膜を形成する以外の個所をレジストマスクで被覆した後、スパッタリング法や蒸着法によって、反射制御構造体3を構成する反射膜および反射防止膜を形成する。成膜後、レジストマスクを除去する。そして、大判の波長変換部材板を、所望の大きさ及び形状となるように切断して、波長変換部材を形成する。
基材10作製
正負一対の電極11,12を備えた基材10を準備する。
実装及び組み立て
実施形態において、電極11,12は、例えば、複数(例えば4個)の発光素子6がフリップチップ実装により直列接続されるようなパターンで形成される(図示せず)。
次に、発光素子6を、バンプによって電極上にフリップチップ実装する。
【0032】
次に、フリップチップ実装された発光素子6の上に、波長変換部材5を接着する。発光素子6と波長変換部材5は、接着材(図示せず)を介して固着することができる。この接着材は、発光素子6からの出射光を波長変換部材5へと導光できる材質であることが好ましく、例えばシリコーン樹脂などの透光性接着材料を用いることができる。
【0033】
次に、発光素子6を囲む光反射性樹脂4を枠状に形成する。
光反射性樹脂4は、少なくとも波長変換部材5の側面及び反射制御構造体3の側面を覆うように形成する。
【0034】
以上のようにして、波長変換部材5の入射面である下面と発光面5a以外の面は反射部材(反射制御構造体3及び光反射性樹脂4のいずれか)に覆われ、かつ発光面5aの周りの表面が反射防止膜2に覆われた発光装置が作製される。
【0035】
以上の実施形態では、
図3に示すように、1つの発光面5aを波長変換部材5の上面に形成するようにしたが、本発明はこれに限られるものではなく、
図4に示すように、波長変換部材5の上面に複数の発光面5aを形成するようにしてもよし、発光面の形状は方形に限定されるものではなく、種々の形状に形成することができる。
【実施例】
【0036】
実施例1.
ガラス材料にYAG蛍光体を混ぜて焼結することにより、大判のYAG板を形成する。大判のYAG板の表面上で、発光面5aを形成する個所を含む、反射膜1および反射防止膜2を形成する以外の個所をレジストマスクで被覆した後、まず、反射膜1として、スパッタ装置でAlを膜厚が0.3μmとなるように成膜し、さらに反射防止膜2として、スパッタ装置でTiを膜厚が0.3μmとなるように成膜することにより、反射膜1と反射防止膜2とを成膜する。その後、レジストマスクを除去して、大判のYAG板上の縦方向と横方向にダイシングすることにより、所望の大きさの長方形状の波長変換部材5を形成する。
配線パターンを施した基板の上に、四つの発光素子6を一列に並べてフェイスダウン実装した後、接着剤で上記波長変換部材5を、四つの発光素子6の上に固定する。
発光素子6および波長変換部材5の側面を被覆するように、二酸化チタンを含有した反射樹脂を、発光素子6および波長変換部材5の外周に沿って配置する。
【0037】
実施例2.
実施例1と同様にして作製した大判のYAG板の上に、まず、第1反射膜1aとして、SiO
2/Nb
2O
5からなる誘電体多層膜をスパッタ装置で、膜厚が4.4μmとなるように成膜し、第2反射膜1bとして、スパッタ装置でAlを膜厚が0.3μmとなるように成膜し、さらに反射防止膜2として、スパッタ装置でTiを膜厚が0.3μmとなるように成膜することにより、反射膜1と反射防止膜2とを成膜する。
その他は、実施例1と同様に発光装置を作成する。
【0038】
実施例3.
実施例1と同様にして作製した大判のYAG板の上に、まず、第1反射膜1aとしてSiO
2/Nb
2O
5からなる誘電体多層膜をスパッタ装置で、膜厚が4.0μmとなるように成膜し、次に、500nm以上の光を主に反射する第2反射膜1bとして、スパッタ装置でAuを膜厚が0.3μmとなるように成膜し、この第2反射膜1bの拡散防止層として、スパッタ装置でPtを膜厚が0.2μmとなるように成膜し、さらに反射防止膜2として、スパッタ装置でTiを膜厚が0.3μmとなるように成膜する。これにより、青色光と、黄色光の両方の光を反射させるための反射膜1と、反射防止膜2とを形成する。
その他は、実施例1と同様に発光装置を作成する。