(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被加工基板上に請求項4乃至8のいずれか1項に記載のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線をパターン照射する工程、アルカリ現像液を用いて現像してレジストパターンを得る工程を含むことを特徴とするレジストパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に記述する。なお、以下の説明中、化学式で表される構造によっては不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがあるが、その場合は一つの式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0016】
[スルホニウム塩]
本発明では、下記一般式(1)で示されるスルホニウム塩を提供する。
【化7】
(式中、A
1はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を表す。A
2は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示す。A
3は水素原子、又はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。B
1はエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基を表す。kは0又は1を示す。R
1、R
2及びR
3は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基及びオキソアルキル基のいずれか、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基及びアリールオキソアルキル基のいずれかを示す。あるいはR
1、R
2及びR
3のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【0017】
上記一般式(1)中、B
1で示されるエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
【化8】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0019】
上記一般式(1)中、A
2は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示す。具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
上記一般式(1)中、A
1はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
上記式(1)中、A
3は水素原子、又はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、オキサノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル基、アダマンチル基等を例示できる。またこれらの基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子といったヘテロ原子と置き換わっていてもよく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子が介在していてもよく、その結果ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を形成又は介在してもよい。
【0024】
一般式(1)におけるA
3の好ましい構造としては、具体的に以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化11】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0025】
上記一般式(1)におけるR
1、R
2及びR
3は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基及びオキソアルキル基のいずれか、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基及びアリールオキソアルキル基のいずれかを示す。あるいはR
1、R
2及びR
3のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0026】
具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。オキソアルキル基としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、2−オキソエチル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基等を挙げることができる。
【0027】
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等や、4−ヒドロキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、3−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。アリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。更には置換基としてアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の重合可能な置換基を有するアリール基が挙げられ、具体的には4−アクリロイルオキシフェニル基、4−メタクリロイルオキシフェニル基、4−アクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル基、4−メタクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル基、4−ビニルオキシフェニル基、4−ビニルフェニル基等が挙げられる。
【0028】
また、R
1、R
2及びR
3のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成する場合には、これらの環状構造を形成する基としては、1,4−ブチレン、3−オキサ−1,5−ペンチレン等の2価の有機基が挙げられる。
【0029】
より具体的にスルホニウムカチオンを示すと、トリフェニルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、3−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、3,4−ジ−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ビス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−n−ヘキシルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、ジメチル(2−ナフチル)スルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4−メトキシフェニルジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2−オキソシクロヘキシルシクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム、ジメチルフェニルスルホニウム、5−フェニルジベンゾチオフェニウム、10−フェニルフェノキサチイニウム、2−オキソ−2−フェニルエチルチアシクロペンタニウム、ジフェニル2−チエニルスルホニウム、4−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、4−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム等が挙げられる。
【0030】
より好ましくはトリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム、等が挙げられる。更には4−メタクリロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−アクリロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−メタクリロイルオキシフェニルジメチルスルホニウム、4−アクリロイルオキシフェニルジメチルスルホニウム、(4−メタクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−アクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0031】
具体的なスルホニウムカチオンとしては、4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−エチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−ヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−オクチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−エトキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−シクロヘキシルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−ヘキシルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−n−オクチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−ドデシルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−トリフルオロメチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−トリフルオロメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−メタクリロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、4−アクリロイルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、(4−n−ヘキシルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム)、(4−メタクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−アクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0032】
上記一般式(1)中のA
1の構造は、下記一般式(2)で示される構造であることが特に好ましい。
【化12】
(式中、XはO又はCH
2を表す。破線は結合手を表す。)
上記式(2)のラクトン構造は極性基であるため、露光により発生した酸は、レジスト組成物中のフェノール性水酸基単位を含有する樹脂と好適に相互作用をし、拡散が抑制される。結果としてラフネスの小さいパターンが得られることに寄与する。
【0033】
上記一般式(1)中のA
3の構造は、下記一般式(3)で示される構造であることが特に好ましい。
【化13】
(式中、nは0又は1を表す。n=0の時、式(3)はアダマンチル基を表す。破線は結合手を表す。)
上記式(3)の構造を有することにより、露光により発生した酸の拡散が抑制され、ラフネスの小さいパターンが得られる。
【0034】
上記一般式(1)中の好ましいスルホン酸アニオンの具体例を下記に示す。
【化14】
【0038】
上記式(1)で表されるスルホニウム塩(単量体)を得るための方法について、下記スキームに例示するが、これに限定されるものではない。以下、式中で用いられる破線は結合手を示す。
【化18】
[式中、R
1〜R
3、A
1、A
2、A
3、B
1及びkは上記と同様である。Zはハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基又は下記一般式(16)
【化19】
(式中、A
2、A
3及びkは上記と同様である。)
で示される置換基を表す。M
+はリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び置換もしくは未置換のアンモニウムイオンのいずれかを示す。L
-はハライドイオン又はメチル硫酸イオンを示す。]
【0039】
上記ステップ(i)は、ヒドロキシエステル(8)とエステル化剤(13)との反応によりエステル(9)に導く工程である。
この反応は公知の方法により容易に進行するが、エステル化剤(13)としては、酸クロリド{式(13)において、Zが塩素原子の場合}、酸無水物{式(13)において、Zが一般式(13)で示される置換基の場合}又はカルボン酸{式(13)において、Zが水酸基の場合}が好ましい。
【0040】
エステル化剤として酸クロリド又は酸無水物を用いる場合は、無溶媒あるいは塩化メチレン、トルエン、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の溶媒中、ヒドロキシエステル(8)と、式(13)に対応するカルボン酸クロリド又はカルボン酸無水物、及びトリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基とを順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。
【0041】
また、エステル化剤としてカルボン酸を用いる場合は、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、ヒドロキシエステル(8)及び対応するカルボン酸を酸触媒の存在下加熱し、必要に応じて生じる水を系外に除くなどして行うのがよい。用いる酸触媒としては例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などの無機酸類、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸類等が挙げられる。
【0042】
ステップ(ii)は、エステル(9)のtert−ブチル基を脱保護し、カルボン酸(10)を得る工程である。ギ酸を溶媒としてエステル(9)を溶解し、必要に応じ、冷却あるいは加熱しながら撹拌することでカルボン酸(10)を得ることができる。
【0043】
ステップ(iii)は、カルボン酸(10)を対応する酸塩化物(11)に導く工程である。反応は塩化メチレン、トルエン、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の溶媒中、二塩化オキサリルなどの塩素化剤を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。
【0044】
ステップ(iv)は酸塩化物(11)とスルホアルコール(14)の求核置換反応により、スルホン酸塩(12)を得る工程である。反応は常法に従って行うことができ、溶媒中、酸塩化物(11)、スルホアルコール(14)、及び塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却又は加熱して行うのがよい。
【0045】
反応に用いることができる溶媒として、水、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、反応条件により適宜選択して用いればよく、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0046】
また、上記ステップ(iv)で示される反応に用いることができる塩基として、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン、コリジン、N,N−ジメチルアニリン等のアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水酸化物類、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩類等が挙げられる。これらの塩基は、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
ステップ(v)は、スルホン酸塩(12)とスルホニウム塩(15)とのイオン交換反応により、スルホニウム塩(1)を得る工程である。スルホン酸塩(12)はステップ(iv)の反応を行った後に、通常の水系後処理を経て単離したものを用いてもよいし、反応を停止した後に特に後処理をしていないものを用いてもよい。
【0048】
単離したスルホン酸塩(12)を用いる場合は、スルホン酸塩(12)を水、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶媒等に溶解し、スルホニウム塩(15)と混合し、必要に応じ、冷却あるいは加熱することで反応混合物を得ることができる。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work−up)によりスルホニウム塩(1)を得ることができ、必要があれば蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の常法に従って精製することができる。
【0049】
スルホン酸塩(12)を合成する反応を停止した後に、特に後処理をしていないものを用いる場合は、スルホン酸塩(12)の合成反応を停止した混合物に対してスルホニウム塩(15)を加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱することでスルホニウム塩(1)を得ることができる。その際、必要に応じて水、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶媒等を加えてもよい。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work−up)によりスルホニウム塩(1)を得ることができ、必要があれば蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の常法に従って精製することができる。
【0050】
本発明の上記一般式(1)で示されるスルホニウム塩は、フッ素置換されていないスルホン酸のスルホニウム塩構造を有しているため、高エネルギー線照射により適度な強度の酸を発生させることができる。また、嵩高い置換基を有していることから、発生酸の移動、拡散を適度に制御することが可能であり、ラフネスの向上に寄与する。なお、このスルホニウム塩は十分な脂溶性をもつことから、その製造、取り扱いは容易である。
【0051】
なお、本発明の上記一般式(1)で示されるスルホニウム塩の合成方法と同様な手法により、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等を合成することが可能であり、このようなオニウム塩を、化学増幅型レジスト組成物に適用することもできる。
【0052】
より具体的なヨードニウムカチオンとして、例えばジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル)ヨードニウム、ビス(4−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル)ヨードニウム、(4−(1,1−ジメチルエトキシ)フェニル)フェニルヨードニウムなどが挙げられ、アンモニウム塩としては、例えばトリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウムなどの3級アンモニウム塩や、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩などが挙げられる。このようなヨードニウム塩及びアンモニウム塩は、光酸発生効果や熱酸発生効果を有するものとして用いることができる。
【0053】
[レジスト組成物]
本発明は、高エネルギー線照射又は熱により下記一般式(1a)で示されるスルホン酸を発生する上記一般式(1)のスルホニウム塩を酸発生剤として含有するレジスト組成物を提供するものである。
【化20】
(式中、A
1、A
2、A
3、B
1及びkは上記と同様である。)
【0054】
このようなレジスト組成物として、例えば、本発明の酸発生剤、ベース樹脂及び有機溶剤を含有する化学増幅型レジスト組成物が挙げられる。
ここで、本発明のスルホニウム塩を酸発生剤として配合する場合、その配合量は、ベース樹脂100質量部に対して0.1〜40質量部、特に1〜20質量部であることが好ましい。40質量部を超えると、非常に高感度となり、保存安定性に欠けるおそれがある。0.1質量部未満では、酸不安定基の脱保護に必要な酸量が発生しないおそれがある。
【0055】
ポジ型レジスト組成物を調製する際には、ベース樹脂として、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂を含有することが好ましい。
酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂としては、下記一般式(4)で示される繰り返し単位を含む高分子化合物であることが望ましい。
【化21】
(式中、qは0又は1を表す。rは0〜2の整数を表す。R
4は水素原子、フッ素原子、メチル基、及びトリフルオロメチル基のいずれかを表し、R
5はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。B
2は単結合、又はエーテル結合を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。aはa≦5+2r−bを満足する整数である。bは1〜3の整数である。)
【0056】
上記式(4)で示される繰り返し単位を含む高分子化合物のうち、リンカー(−CO−O−B
2−)のない繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン単位等に代表される水酸基が置換された芳香環に1位置換もしくは非置換のビニル基が結合されたモノマーに由来する単位であるが、好ましい具体例としては、3−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシスチレンや、5−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレンもしくは6−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレン等に由来する単位を挙げることができる。
【0057】
リンカー(−CO−O−B
2−)を有する場合の繰り返し単位は、(メタ)アクリル酸エステルに代表される、カルボニル基が置換したビニルモノマーに由来する単位である。
リンカー(−CO−O−B
2−)を有する場合の上記一般式(4)で示される繰り返し単位の具体例を以下に示す。
【0059】
上述の一般式(4)で示される単位は、1種のみでも複数種を組み合わせて使用してもよく、本発明に係る高分子化合物の全繰り返し単位に対し30〜80モル%の範囲で導入されることが好ましい。但し、後述の本発明で使用するポリマーにより高いエッチング耐性を与える単位である一般式(6)及び/又は(7)を使用し、その単位が置換基としてフェノール性水酸基を有する場合には、その比率も加えて上記範囲内とされる。
【0060】
また、本発明のレジスト組成物は、ポジ型レジスト組成物として露光部がアルカリ水溶液に溶解する特性を与えるため、酸不安定基により保護された酸性官能基を有する単位(酸不安定基により保護され酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位)が含まれることが好ましい。本発明に係る高分子化合物に含むことができる、酸不安定基により保護され、酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位の最も好ましいものとして、下記一般式(5)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【化23】
(式中、sは0又は1を表す。tは0〜2の整数を表す。R
4、R
5は前述の通りである。B
3は単結合、又はエーテル結合を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。cはc≦5+2t−eを満足する整数である。dは0又は1であり、eは1〜3の整数である。Yはeが1の場合には酸不安定基を、eが2以上の場合には水素原子又は酸不安定基を表すが、少なくとも1つは酸不安定基である。)
【0061】
なお、cはc≦5+2t−eを満足する整数であり、R
5の全てが水素原子の場合、c=5+2t−eとなり、R
5の全てが炭素数1〜6のアルキル基の場合、0〜3の整数である。
【0062】
上記一般式(5)は、上記一般式(4)で示される単位の芳香環に置換したフェノール性水酸基の少なくとも1つを酸不安定基で保護したもの、あるいは、フェノール性水酸基がカルボキシル基に置換され、カルボン酸が酸不安定基で保護されたものであり、酸不安定基としては、既に公知の多数の化学増幅型レジスト組成物で用いられてきた、酸によって脱離して酸性基を与えるものを、基本的にはいずれも使用することができるが、アセタール基が好ましい。
【0063】
上記のフェノール性水酸基、カルボキシル基のいずれの場合の3級アルキル基による保護は、得られた重合用のモノマーを蒸留によって得るために、炭素数4〜18のものであることが好ましい。また、該3級アルキル基の3級炭素が有するアルキル置換基としては、炭素数1〜15の、一部エーテル結合やカルボニル基のような酸素含有官能基を含んでいてもよい、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を挙げることができ、3級炭素の置換アルキル基同士が結合して環を形成していてもよい。
【0064】
好ましいアルキル置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラヒドロフラン−2−イル基、7−オキサノルボルナン−2−イル基、シクロペンチル基、2−テトラヒドロフリル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デシル基、8−エチル−8−トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デシル基、3−メチル−3−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5,1
7,10]ドデシル基、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5,1
7,10]ドデシル基、3−オキソ−1−シクロヘキシル基を挙げることができ、また、3級アルキル基として具体的には、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1−アダマンチル−1−メチルエチル基、1−メチル−1−(2−ノルボルニル)エチル基、1−メチル−1−(テトラヒドロフラン−2−イル)エチル基、1−メチル−1−(7−オキサノルボルナン−2−イル)エチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−プロピルシクロペンチル基、1−シクロペンチルシクロペンチル基、1−シクロヘキシルシクロペンチル基、1−(2−テトラヒドロフリル)シクロペンチル基、1−(7−オキサノルボルナン−2−イル)シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−シクロペンチルシクロヘキシル基、1−シクロヘキシルシクロヘキシル基、2−メチル−2−ノルボニル基、2−エチル−2−ノルボニル基、8−メチル−8−トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デシル基、8−エチル−8−トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デシル基、3−メチル−3−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5,1
7,10]ドデシル基、3−エチル−3−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5,1
7,10]ドデシル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、1−メチル−3−オキソ−1−シクロヘキシル基、1−メチル−1−(テトラヒドロフラン−2−イル)エチル基、5−ヒドロキシ−2−メチル−2−アダマンチル基、5−ヒドロキシ−2−エチル−2−アダマンチル基を例示できるが、これらに限定されない。
【0065】
また、下記一般式(17)
【化24】
(式中、R
8は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を表し、Wは炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。)
で示されるアセタール基は酸不安定基としてよく利用され、比較的パターンと基板の界面が矩形であるパターンを安定して与える酸不安定基として有用な選択肢である。特に、より高い解像性を得るためには炭素数7〜30の多環式アルキル基が含まれることが好ましい。またWが多環式アルキル基を含む場合、該多環式環構造を構成する2級炭素とアセタール酸素との間で結合を形成していることが好ましい。なぜなら、環構造の3級炭素上で結合している場合、ポリマーが不安定な化合物となり、レジスト組成物として保存安定性に欠け、解像力も劣化することがあるためである。逆にWが炭素数1以上の直鎖状のアルキル基を介在した1級炭素上で結合した場合、ポリマーのガラス転移温度(Tg)が低下し、現像後のレジストパターンがベークにより形状不良を起こすことがある。
【0066】
式(17)の具体例としては、下記のものを例示することができる。
【化25】
(式中、R
8は上記と同様である。)
【0067】
なお、R
8は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であるが、酸に対する分解性基の感度の設計に応じて適宜選択される。例えば比較的高い安定性を確保した上で強い酸で分解するという設計であれば水素原子が選択され、比較的高い反応性を用いてpH変化に対して高感度化という設計であれば直鎖状のアルキル基が選択される。レジスト組成物に配合する酸発生剤や塩基性化合物との組み合わせにもよるが、上述のような末端に比較的大きなアルキル基が置換され、分解による溶解性変化が大きく設計されている場合には、R
8としてアセタール炭素との結合を持つ炭素が2級炭素であるものが好ましい。2級炭素によってアセタール炭素と結合するR
8の例としては、イソプロピル基、sec−ブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等を挙げることができる。
【0068】
その他の酸不安定基の選択としては、フェノール性水酸基に、(−CH
2COO−3級アルキル基)を結合させるという選択を行うこともできる。この場合に使用する3級アルキル基は、上述のフェノール性水酸基の保護に用いる3級アルキル基と同じものを使用することができる。
【0069】
上述の一般式(5)で示され、酸不安定基により保護され、酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位は、1種のみでも複数種を組み合わせて使用してもよく、高分子化合物の全繰り返し単位に対し5〜45モル%の範囲で導入されることが好ましい。
【0070】
また、本発明に係る高分子化合物は、更に、ポリマーの主要構成単位として、下記一般式(6)及び/又は(7)で示される繰り返し単位を含むものとすることができる。
【化26】
(式中、fは0〜6の整数であり、R
6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基又は1級もしくは2級アルコキシ基、及びハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜7のアルキルカルボニルオキシ基のいずれかを表す。gは0〜4の整数であり、R
7はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基又は1級もしくは2級アルコキシ基、及びハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜7のアルキルカルボニルオキシ基のいずれかを表す。)
【0071】
これらの繰り返し単位(上記一般式(6)及び一般式(7)で示される繰り返し単位のうち少なくとも1以上)を構成成分として使用した場合には、芳香環が持つエッチング耐性に加えて主鎖に環構造が加わることによるエッチングやパターン検査の際の電子線照射耐性を高めるという効果を得ることができる。
【0072】
上記一般式(6)及び一般式(7)で示される、主鎖に環構造を与え、エッチング耐性を向上させる単位は、1種のみでも複数種を組み合わせて使用してもよく、エッチング耐性を向上させるという効果を得るためには高分子化合物を構成する全モノマー単位に対して5モル%以上の導入が好ましい。また、一般式(6)や(7)で示される単位が、一般式(6)や(7)が有する官能基の作用によって、極性を持ち基板への密着性を与える単位であるか、置換基が上述の酸不安定基により保護され、酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位である場合の導入量は、上述のそれぞれの好ましい範囲に合算され、官能基を持たない場合や、官能基がそのいずれでもない場合には、30モル%以下であることが好ましい。官能基を持たない場合や、官能基がそのいずれでもない場合の導入量が30モル%以下であれば、現像欠陥が発生するおそれがないために好ましい。
【0073】
また、本発明のレジスト組成物に使用される上記高分子化合物は、好ましくは、主要構成単位として上記一般式(4)及び(5)、更に導入可能な一般式(6)、(7)の単位が高分子化合物を構成する全モノマー単位の60モル%以上を占めることによって本発明のレジスト組成物の特性が確実に得られ、更に好ましくは70モル%以上、特に好ましくは85モル%以上である。
【0074】
また、全構成単位が式(4)〜(7)より選ばれた繰り返し単位である高分子化合物である場合は、高いエッチング耐性と解像性の両立に優れる。式(4)〜(7)以外の繰り返し単位としては、常用される酸不安定基で保護された(メタ)アクリル酸エステル単位や、ラクトン構造等の密着性基を持つ(メタ)アクリル酸エステル単位を使用してもよい。これらのその他の繰り返し単位によってレジスト膜の特性の微調整を行ってもよいが、これらの単位を含まなくてもよい。
【0075】
本発明のレジスト組成物に用いられる高分子化合物は、公知の方法によって、それぞれの単量体を必要に応じて保護、脱保護反応を組み合わせ、共重合を行って得ることができる。共重合反応は特に限定されるものではないが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合である。これらの方法については国際公開第2006/121096号、特開2008−102383号公報、特開2008−304590号公報、特開2004−115630号公報を参考にすることができる。
【0076】
上記のレジスト組成物に使用されるベースポリマーとしての上記高分子化合物の好ましい分子量は、一般的な方法としてポリスチレンを標準サンプルとしてゲルパーミエーションクロマトグラフィー:GPCによって測定した場合、重量平均分子量が2,000〜50,000であることが好ましく、更に好ましくは3,000〜20,000である。重量平均分子量が2,000以上であれば、従来知られているように、パターンの頭が丸くなって解像力が低下すると共に、ラインエッジラフネスが劣化するといった現象が生じるおそれがない。一方、分子量が必要以上に大きくなった場合、解像するパターンにもよるが、ラインエッジラフネスが増大する傾向を示すため、50,000以下、特にパターン線幅が100nm以下のパターンを形成する場合には、分子量を20,000以下に制御することが好ましい。
GPC測定は一般的に用いられるテトラヒドロフラン(THF)溶媒を用いて行うことができる。
【0077】
更に、本発明のレジスト組成物に用いる高分子化合物においては、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.0、特に1.0〜1.8と狭分散であることが好ましい。このように狭分散の場合には、現像後、パターン上に異物が生じたり、パターンの形状が悪化することがない。
【0078】
本発明のレジスト組成物には、後述の溶剤を加えることによって基本的なレジスト性能が得られるが、必要に応じ、塩基性化合物、本発明に係る酸発生剤以外の酸発生剤、その他のポリマー、界面活性剤等を加えることもできる。
【0079】
塩基性化合物は、化学増幅型レジスト組成物では事実上必須構成成分であるが、本発明のレジスト組成物においても、高解像性を得るため、あるいは適正感度に調整を行うために、塩基性化合物を添加することが好ましい。その添加量は、上記ベース樹脂100質量部に対し、0.01〜5質量部、特に0.05〜3質量部が好ましい。また、用いることができる塩基性化合物は多数が知られており(特許文献1、特許文献2、特開2000−159758号公報、特開2007−182488号公報、国際公開第2006/121096号)、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類、アンモニウム塩類等が知られている。これらの具体例は特許文献2に多数例示されているが、基本的にはこれらの全てを使用することができ、また2つ以上の塩基性化合物を選択し、混合して使用することもできる。
特に好ましく配合される塩基性化合物としては、トリス(2−(メトキシメトキシ)エチル)アミン、トリス(2−(メトキシメトキシ)エチル)アミン−N−オキサイド、モルホリン誘導体、イミダゾール誘導体などが挙げられる。
【0080】
また、パターン形成時に、ポジ型のパターンが基板界面で溶解しにくくなる現象、いわゆる裾引き形状になり易い基板上、これはクロム系化合物による表面を持つ基板もそうであるが、このような基板上でパターンを形成する場合、カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素に共有結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物(アミン及びアミンオキシドの窒素原子が芳香環の環構造に含まれるものを除く)を用いると、パターン形状の改善を図ることができる。
【0081】
上述のカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素に共有結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物は、下記一般式(18)〜(20)で示される少なくともカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素に共有結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物が好ましいが、これに限られるものではない。
【化27】
(式中、R
9、R
10はそれぞれ炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数2〜10のアシルオキシアルキル基、又は炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基のいずれかである。またR
9とR
10が結合してこれらが結合する窒素原子と共に環構造を形成してもよい。R
11は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数2〜11のアシルオキシアルキル基、炭素数1〜11のアルキルチオアルキル基、又はハロゲン基のいずれかである。R
12は単結合、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、又は炭素数6〜20のアリーレン基である。R
13は炭素数2〜20の直鎖状又は分岐状の置換可アルキレン基であり、但し、アルキレン基の炭素−炭素間にカルボニル基、エーテル基、エステル基、スルフィドを1個あるいは複数個含んでいてもよい。また、R
14は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、又は炭素数6〜20のアリーレン基である。)
【0082】
上記の炭素数6〜20のアリール基として具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ナフタセニル基、フルオレニル基を、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、デカヒドロナフタレニル基を、炭素数7〜20のアラルキル基として具体的には、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、アントラセニルメチル基を、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基として具体的には、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基を、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基として具体的には、メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、エトキシメチル基、2−エトキシエチル基、プロポキシメチル基、2−プロポキシエチル基、ブトキシメチル基、2−ブトキシエチル基、アミロキシメチル基、2−アミロキシエチル基、シクロヘキシルオキシメチル基、2−シクロヘキシルオキシエチル基、シクロペンチルオキシメチル基、2−シクロペンチルオキシエチル基及びそのアルキル部の異性体を、炭素数2〜11のアシルオキシアルキル基として具体的には、ホルミルオキシメチル基、アセトキシメチル基、プロピオニルオキシメチル基、ブチリルオキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、シクロヘキサンカルボニルオキシメチル基、デカノイルオキシメチル基を、炭素数1〜11のアルキルチオアルキル基として具体的には、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、プロピルチオメチル基、イソプロピルチオメチル基、ブチルチオメチル基、イソブチルチオメチル基、tert−ブチルチオメチル基、tert−アミルチオメチル基、デシルチオメチル基、シクロヘキシルチオメチル基を、それぞれ例示できるが、これらに限定されない。
【0083】
一般式(18)で示されるカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素に共有結合する水素原子を含有しないアミン化合物を以下に具体的に例示するが、これらに限定されない。
即ち、o−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸、m−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸、p−ジプロピルアミノ安息香酸、p−ジブチルアミノ安息香酸、p−ジブチルアミノ安息香酸、p−ジペンチルアミノ安息香酸、p−ジヘキシルアミノ安息香酸、p−ジエタノールアミノ安息香酸、p−ジイソプロパノールアミノ安息香酸、p−ジメタノールアミノ安息香酸、2−メチル−4−ジエチルアミノ安息香酸、2−メトキシ−4−ジエチルアミノ安息香酸、3−ジメチルアミノ−2−ナフタレン酸、3−ジエチルアミノ−2−ナフタレン酸、2−ジメチルアミノ−5−ブロモ安息香酸、2−ジメチルアミノ−5−クロロ安息香酸、2−ジメチルアミノ−5−ヨード安息香酸、2−ジメチルアミノ−5−ヒドロキシ安息香酸、4−ジメチルアミノフェニル酢酸、4−ジメチルアミノフェニルプロピオン酸、4−ジメチルアミノフェニル酪酸、4−ジメチルアミノフェニルリンゴ酸、4−ジメチルアミノフェニルピルビン酸、4−ジメチルアミノフェニル乳酸、2−(4−ジメチルアミノフェニル)安息香酸、2−(4−(ジブチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸等が挙げられる。
【0084】
一般式(19)で示されるカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素に共有結合する水素原子を含有しないアミンオキシド化合物は上記の具体的に例示されたアミン化合物を酸化したものであるが、これらに限定されない。
【0085】
一般式(20)で示されるカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素に共有結合する水素原子を含有しないアミン化合物を以下に具体的に例示するが、これらに限定されない。
即ち、1−ピペリジンプロピオン酸、1−ピペリジン酪酸、1−ピペリジンリンゴ酸、1−ピペリジンピルビン酸、1−ピペリジン乳酸等が挙げられる。
【0086】
一般式(19)で示されるアミンオキシド化合物は、特開2008−102383号公報で開示された方法により容易に合成することが可能である。また、アミンオキシド化合物の具体例についても上記の特開2008−102383号公報に詳述されている。
【0087】
本発明のレジスト組成物には、上述の一般式(4)〜(7)から選ばれる単位を含有する高分子化合物を単一種又は複数種混合して用いることができるほかに、酸によってアルカリ可溶性に変化するポリマー、あるいは酸との反応とは無関係にアルカリ可溶性であるポリマーを含有させてもよい。その他の樹脂の例として、i)ポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ii)ノルボルネン誘導体−無水マレイン酸の共重合体、iii)開環メタセシス重合体の水素添加物、iv)ビニルエーテル−無水マレイン酸−(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、v)ポリヒドロキシスチレン誘導体などを挙げることができるが、これらは実際には公知の化学増幅ポジ型レジスト用ポリマーであり、上記酸によってアルカリ可溶性に変化するポリマーである。また、パターン形状等の改善や、現像時残渣の発生を制御するため、アルカリ可溶性ポリマーを添加してもよいが、このような目的に使用するポリマーとしては、既に多数公知の化学増幅ネガ型レジスト組成物に使用するポリマーを挙げることができる。更に、特開2008−304590号公報に開示されているようなフッ素を含有するポリマーを添加することもできる。
【0088】
上述の一般式(4)〜(7)から選ばれる単位を含有する高分子化合物と、その他のポリマーとを混合して使用する場合の配合比率は、本発明に係る高分子化合物の配合比は30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上である。本発明に係る高分子化合物の配合比が30質量%以上であると、現像時に欠陥が発生するおそれがないために好ましい。しかし、配合時に、配合されるポリマーの全繰り返し単位中の芳香環骨格を有する単位の割合が60モル%以下にならないよう配合されることが好ましい。なお、上記その他のポリマーは1種に限らず2種以上を添加することができる。複数種のポリマーを用いることにより、化学増幅型レジスト組成物の性能を調整することができる。
【0089】
本発明のレジスト組成物には、塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤を用いる場合、国際公開第2006/121096号、特開2008−102383号公報、特開2008−304590号公報、特開2004−115630号公報、特開2005−8766号公報にも多数の例が記載されているように多数のものが公知であり、それらを参考にして選択することができる。
【0090】
なお、界面活性剤の添加量としては、レジスト組成物中のベース樹脂100質量部に対して2質量部以下、好ましくは1質量部以下であり、0.01質量部以上とすることが好ましい。
【0091】
本発明のレジスト組成物を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができる。一般論としては、集積回路製造用の基板(Si、SiO
2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi等)等の被加工基板上にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜20分間、好ましくは80〜140℃、1〜10分間プリベークし、レジスト膜を形成する。
【0092】
次いで目的のパターンを形成するためのマスクを用い、あるいはビーム露光により、遠紫外線、エキシマレーザー、X線、電子線等の高エネルギー線を露光量1〜200mJ/cm
2、好ましくは10〜100mJ/cm
2となるようにパターン照射する。なお、本発明の化学増幅型レジスト組成物はEUV又は電子線によるパターン照射の場合に、特に有効である。露光は通常の露光法の他、場合によってはマスクとレジストの間を液浸するImmersion法を用いることも可能である。その場合には水に不溶な保護膜を用いることも可能である。
【0093】
次いで、ホットプレート上で、60〜150℃、1〜20分間、好ましくは80〜140℃、1〜5分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。
【0094】
なお、本発明のレジスト組成物は、特に高いエッチング耐性を持ち、かつ露光後、露光後加熱までの時間が延長された場合にもパターン線幅の変化が小さく、ラインエッジラフネスが小さいことが要求される条件で使用される際に有用である。また、被加工基板として、レジストパターンの密着性が取り難いことからパターン剥がれやパターン崩壊を起こし易い材料を表面に持つ基板への適用に特に有用であり、金属クロムや酸素、窒素、炭素の1以上の軽元素を含有するクロム化合物をスパッタリング成膜した基板上、特にはフォトマスクブランクス上でのパターン形成に有用である。
【実施例】
【0095】
以下、合成実施例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例中、Meはメチル基を示す。また、共重合組成比はモル比であり、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0096】
(合成実施例1)スルホニウム塩の合成
本発明のスルホニウム塩PAG−1〜PAG−4を以下に示す処方で合成した。なお、合成した本発明のスルホニウム塩(PAG−1〜PAG−4)の構造、及び比較例で使用する比較PAG1〜比較PAG3のスルホニウム塩の構造は、後述の表5に示した。
【0097】
【化28】
【0098】
(合成実施例1−1)PAG−1の合成
(合成実施例1−1−1)
アダマンタンカルボン酸7−ターシャリーブトキシカルボニル−2−オキソヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−6−イル(22)の合成
6−ヒドロキシ−2−オキソヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボン酸ターシャリーブチル(21)282g及びトリエチルアミン157g、及び4−ジメチルアミノピリジン13.6gをアセトニトリル2,000mlに溶解した。20℃以下にて、アダマンタンカルボン酸クロリド(26)328gを滴下した。室温で3時間撹拌した後、水を1,000gを加え、通常の後処理操作を行った。塩化メチレンより再結晶を行い、目的物391gを得た(収率85%)。
【0099】
(合成実施例1−1−2)
6−アダマンタンカルボニルオキシ−2−オキソヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボン酸(23)の合成
(合成実施例1−1−1)で得たエステル(22)388gをギ酸1,900gに溶解し、40℃にて10時間撹拌した。ギ酸を減圧下で留去し酢酸エチルから再結晶を行い、目的物319gを得た(収率95%)。
【0100】
(合成実施例1−1−3)
アダマンタンカルボン酸7−クロロカルボニル−2−オキソヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−6−イル(24)の合成
(合成実施例1−1−2)で得たカルボン酸(23)60gをトルエン420mlに懸濁させ、80℃で二塩化オキサリル25.3gを滴下した。4時間撹拌した後、トルエンを減圧下で留去し、目的物を得た。得られた酸塩化物はこれ以上の精製はせずに、次の反応に用いた。
【0101】
(合成実施例1−1−4)
2’−(6−アダマンタンカルボニルオキシ−2−オキソヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボニルオキシ)エタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム(PAG−1)の合成
CH
3CN20gに2−ヒドロキシエタンスルホン酸ナトリウム(27)4.7g、トリエチルアミン2.9g、4−ジメチルアミノピリジン24mgを溶解し、(合成実施例1−1−3)で得た酸塩化物(24)7.3gをCH
3CN20gに溶かした溶液を20℃以下で滴下後、25℃で2時間撹拌し、スルホン酸塩(25)を得た。CH
2Cl
220g、トリフェニルスルホニウムクロリドの水溶液34gを加え、30分撹拌した。有機層を分液後、水層をCH
2Cl
2で抽出し、あわせた有機層をH
2Oで3回洗浄した。溶媒を減圧下で留去し、目的物(PAG−1)を8.4g得た(3段階収率57%)。
【0102】
(合成実施例1−2)PAG−2の合成
(合成実施例1−1)中の(合成実施例1−1−4)で、トリフェニルスルホニウムクロリドの水溶液の代わりに4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムクロリドを用いた以外は、(合成実施例1−1)と同様の手順で合成を行い、2’−(6−アダマンタンカルボニルオキシ−2−オキソ−4−オキサヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボニルオキシ)エタンスルホン酸4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム(PAG−2)を13.8g得た(5段階収率60%)。
【0103】
(合成実施例1−3)PAG−3の合成
THF300g、H
2O200g、4−フェノールスルホン酸ナトリウム48.8g、25%水酸化ナトリウム水溶液40.0gを溶解し、25℃で(合成実施例1−1−3)で得られた酸塩化物(24)60.0gのTHF溶液を滴下した。25℃で2時間撹拌した後、析出した固体を濾取た。濾取した固体にCH
2Cl
2200g、トリフェニルスルホニウムクロリドの水溶液67gを加え、30分撹拌した。有機層を分液後、水層をCH
2Cl
2で抽出し、あわせた有機層をH
2Oで3回洗浄した。溶媒を減圧下で留去し、目的物(PAG−3)を48g得た(3段階収率74%)。
【0104】
(合成実施例1−4)PAG−4の合成
(合成実施例1−2)でトリフェニルスルホニウムクロリドの水溶液の代わりに4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムを用いた以外は、(合成実施例1−2)と同様の手順で合成を行い、4−(6−アダマンタンカルボニルオキシ−2−オキソ−4−オキサヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボニルオキシ)ベンゼンスルホン酸4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム(PAG−4)を53.4g得た(5段階収率70%)。
【0105】
(合成実施例2)高分子化合物の合成
本発明のレジスト組成物に用いた高分子化合物を以下の処方で合成した。合成した各ポリマーの組成比は表1に、繰り返し単位の構造は、表2〜5に示した。
(ポリマー合成例2−1)ポリマー1の合成
3Lのフラスコにアセトキシスチレン407.5g、アセナフチレン42.5g、溶媒としてトルエンを1,275g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製V−65)を34.7g加え、55℃まで昇温後、40時間反応を行った。この反応溶液にメタノール970gと水180gの混合溶液を撹拌中滴下し、30分後に下層(ポリマー層)を減圧濃縮し、このポリマー層にメタノール0.45L、テトラヒドロフラン0.54Lに再度溶解し、トリエチルアミン160g、水30gを加え、60℃に加温して40時間脱保護反応を行った。この脱保護反応溶液を減圧濃縮し、濃縮液にメタノール548gとアセトン112gを加え溶液化した。ここに撹拌中ヘキサンを990g滴下し、30分後に下層(ポリマー層)にテトラヒドロフラン300gを加え、ここに撹拌中ヘキサンを1,030g滴下し、30分後に下層(ポリマー層)を減圧濃縮した。本ポリマー溶液を酢酸82gを用いて中和し、反応溶液を濃縮後、アセトン0.3Lに溶解し、水10Lに沈殿させ、濾過、乾燥を行い、白色重合体280gを得た。得られた重合体を
1H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比
ヒドロキシスチレン:アセナフチレン=89.3:10.7
重量平均分子量(Mw)=5,000
分子量分布(Mw/Mn)=1.63
得られたポリマー100gに(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテル50gを酸性条件下反応させて、中和、分液処理、晶出工程を経て、ポリマー1を得た。収量は125gであった。これを(ポリマー1)とする。
【化29】
【0106】
(ポリマー合成例2−2)ポリマー2の合成
ポリマー合成例2−1における(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテルを、2−メチル−1−プロペニル)−8−(トリシクロ[5,2,1,0
2,6]デカニルエーテルに代えた以外はポリマー合成例2−1と同様の手順で合成を行い、ポリマー2を得た。
【0107】
(ポリマー合成例2−3)ポリマー3の合成
ポリマー合成例2−1における(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテルを、2−メチル−1−プロペニル)−2−アダマンチルエーテルに代えた以外はポリマー合成例2−1と同様の手順で合成を行い、ポリマー3を得た。
【0108】
(ポリマー合成例2−4)ポリマー4の合成
窒素雰囲気とした滴下用シリンダーに362gの4−ヒドロキシフェニルメタクリレート、38.2gのアセナフチレン、40.9gのジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)=V−601(和光純薬工業(株)製)、500gのメチルエチルケトンをとり、単量体溶液を調製した。窒素雰囲気とした別の重合用フラスコに、250gのメチルエチルケトンをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま4時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、10kgのヘキサン/ジイソプロピルエーテル溶液に滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をヘキサン5kgで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して、白色粉末固体状のポリマーを得た。得られたポリマー100gに(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテル40.5gを酸性条件下反応させて、中和、分液処理、晶出工程を経て、ポリマー4を得た。収量は128gであった。
【0109】
(ポリマー合成例2−5)ポリマー5の合成
ポリマー合成例2−4における(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテルを、2−メチル−1−プロペニル)−8−(トリシクロ[5,2,1,0
2,6]デカニルエーテルに代えた以外はポリマー合成例2−4と同様の手順で合成を行い、ポリマー5を得た。
【0110】
(ポリマー合成例2−6)ポリマー6の合成
ポリマー合成例2−4における(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテルを、2−メチル−1−プロペニル)−2−アダマンチルエーテルに代えた以外はポリマー合成例2−4と同様の手順で合成を行い、ポリマー6を得た。
【0111】
(ポリマー合成例2−7〜2−12)ポリマー7〜12の合成
ヒドロキシスチレンユニットを含むポリマーの場合は、各単量体の種類、配合比を変えた以外は、ポリマー合成例2−1、2−2又は2−3と同様の手順により、表1に示した樹脂を製造した。また、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートユニットを含むポリマーの場合は、各単量体の種類、配合比を変えた以外は、ポリマー合成例2−4、2−5又は2−6と同様の手順により、表1に示した樹脂を製造した。
【0112】
(ポリマー合成例2−13)ポリマー13の合成
窒素雰囲気とした滴下用シリンダーに42.4gの4−ヒドロキシフェニルメタクリレート、40.6gのメタクリル酸5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン−2−イル、16.9gのメタクリル酸1−メトキシ−2−メチル−1−プロピル、9.3gのジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)=V−601(和光純薬工業(株)製)、124gのメチルエチルケトンをとり、単量体溶液を調製した。窒素雰囲気とした別の重合用フラスコに、62gのメチルエチルケトンをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま4時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、1.5kgのヘキサン/ジイソプロピルエーテル溶液に滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をヘキサン300gで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して、白色粉末固体状のポリマー13を得た。
【0113】
(ポリマー合成例2−14〜16)ポリマー14〜16の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、ポリマー合成例2−13と同様の手順により、表1に示した樹脂を製造した。
表1中、各単位の構造を表2〜4に示す。なお、表1において、導入比はモル比を示す。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
【表4】
【0118】
ポジ型レジスト組成物の調製
上記で合成したポリマー(ポリマー1〜16)、光酸発生剤、塩基性化合物を表6に示す組成で有機溶剤中に溶解してレジスト組成物を調合し、更に各組成物を0.2μmサイズのフィルターもしくは0.02μmサイズのナイロン又はUPEフィルターで濾過することにより、ポジ型レジスト組成物の溶液をそれぞれ調製した。塩基性化合物は下記Base−1で表される構造のものを使用した。また、使用した光酸発生剤の構造を下記の表5に示した。
【化30】
【0119】
【表5】
【0120】
表6中の有機溶剤は、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、EL(乳酸エチル)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、CyH(シクロヘキサノン)である。また、各組成物には、界面活性剤としてPF−636(OMNOVA SOLUTIONS製)を0.075質量部添加した。
【0121】
【表6】
【0122】
電子ビーム描画評価(実施例1〜24、28、比較例1〜6)
上記調製したポジ型レジスト組成物(実施例1〜24、28、比較例1〜6)をACT−M(東京エレクトロン(株)製)152mm角の最表面が酸化窒化クロム膜であるマスクブランク上にスピンコーティングし、ホットプレート上で90℃で600秒間プリベークして90nmのレジスト膜を作製した。得られたレジスト膜の膜厚測定は、光学式測定器ナノスペック(ナノメトリックス社製)を用いて行った。測定はブランク外周から10mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内81箇所で行い、膜厚平均値と膜厚範囲を算出した。
【0123】
更に、電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製、EBM−5000plus、加速電圧50keV)を用いて露光し、120℃で600秒間ベーク(PEB:post exposure bake)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で現像を行うと、ポジ型のパターンを得ることができた。更に得られたレジストパターンを次のように評価した。
【0124】
作製したパターン付きマスクブランクを上空SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、400nmの1:1のラインアンドスペースを1:1で解像する露光量を最適露光量(μC/cm
2)とし、400nmのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量における最小寸法を解像度(限界解像性)とし、200nmLSのエッジラフネスをSEMで測定した。パターン形状については、矩形か否かを目視にて判定した。密着性に関しては、上空SEMにて上空観察を行ったときに、目視にて剥がれを判定した。EB描画における本発明のレジスト組成物及び比較用のレジスト組成物の評価結果を表7に示す。
真空中のPED(Post Exposure Delay)を評価するには、電子線描画装置により描画した後、20時間真空に引かれた装置内に放置し、その後にPEB及び現像を行った。得られた400nmのラインアンドスペースのEopにおける線幅を、露光後すぐにベークした時の線幅と比較し、その差を[nm]表示した。
また、CDU(CD uniformity)を評価するには、ブランク外周から20mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内49箇所において、400nmの1:1のラインアンドスペースを1:1で解像する露光量(μC/cm
2)をかけた場合の線幅を測定し、その線幅平均値から各測定点を差し引いた値の3σ値を算出した。
【0125】
【表7】
【0126】
EUV露光評価(実施例25〜27、比較例7)
上記調製したポジ型レジスト組成物(実施例25〜27、比較例7)をヘキサメチルジシラザン(HMDS)ベーパープライム処理した直径4インチのSi基板上にスピンコートし、ホットプレート上で105℃で60秒間プリベークして50nmのレジスト膜を作製した。これに、NA0.3、ダイポール照明でEUV露光を行った。
露光後直ちにホットプレート上で60秒間ポストエクスポージャベーク(PEB)を行い2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間パドル現像を行い、ポジ型のパターンを得た。
【0127】
得られたレジストパターンを次のように評価した。35nmのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量における、最小の寸法を解像力(限界解像性)とし、35nmLSのエッジラフネス(LER)をSEMで測定した。パターン形状については、矩形か否かを目視にて判定した。密着性に関しては、上空SEMにて上空観察を行ったときに、目視にて剥がれを判定した。EUV描画における本発明のレジスト組成物及び比較用のレジスト組成物の評価結果を表8に示す。
【0128】
【表8】
【0129】
上記表7及び表8の結果を説明する。上記一般式(1)で示されるスルホニウム塩を含有レジスト組成物(実施例1〜24、あるいは、実施例25〜27)は、いずれも良好な解像性、良好なパターン矩形性を示し、CDU、ラインエッジラフネス及びPED特性も良好な値を示した。一方、比較例1〜6、あるいは、比較例7の、上記一般式(1)で示されるスルホニウム塩よりも相対的に嵩高さが小さいスルホニウム塩を用いたレジスト組成物は、解像性とCDU、ラインエッジラフネス及びPED特性が実施例と比べて悪い結果となった。これらは、比較例で用いたスルホニウム塩が上記一般式(1)で示されるスルホニウム塩よりも相対的に嵩高さが小さいため、酸の拡散を抑制できなかったことが原因と考えられる。
【0130】
以上説明したことから明らかなように、本発明のレジスト組成物を用いれば、露光によりCDU、PED、ラインエッジラフネスが小さいパターンを形成することができる。これを用いたパターン形成方法は半導体素子製造、特にフォトマスクブランクスの加工におけるフォトリソグラフィーに有用である。
【0131】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。