特許第6090601号(P6090601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6090601硬化膜形成組成物、配向材および位相差材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6090601
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】硬化膜形成組成物、配向材および位相差材
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/04 20060101AFI20170227BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20170227BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20170227BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20170227BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20170227BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20170227BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   C08L33/04
   C08L71/00 Z
   C08L67/00
   C08L69/00
   G02F1/13363
   G02F1/1337 520
   G02B5/30
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-521507(P2014-521507)
(86)(22)【出願日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】JP2013066962
(87)【国際公開番号】WO2013191251
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2016年6月15日
(31)【優先権主張番号】特願2012-138959(P2012-138959)
(32)【優先日】2012年6月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑中 真
(72)【発明者】
【氏名】石田 智久
(72)【発明者】
【氏名】湯川 昇志郎
【審査官】 上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/018121(WO,A1)
【文献】 特表2001−517719(JP,A)
【文献】 特開2009−058584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/00
C08K 3/00−13/08
G02B 5/30
G02F 1/1337
G02F 1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シンナモイル基を有するアクリル重合体、
(B)ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマー、並びに
(C)架橋剤を含有することを特徴とする硬化膜形成組成物。
【請求項2】
前記(A)成分がヒドロキシ基、カルボキシル基及びアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基をさらに有するアクリル重合体である、請求項に記載の硬化膜形成組成物。
【請求項3】
前記(C)成分の架橋剤が、(A)成分より親水性である、請求項1又は請求項2に記載の硬化膜形成組成物。
【請求項4】
前記(C)成分の架橋剤が、メチロール基又はアルコキシメチル基を有する架橋剤である、請求項1乃至のうち何れか一項に記載の硬化膜形成組成物。
【請求項5】
更に、(D)架橋触媒を含有する、請求項1乃至のうち何れか一項に記載の硬化膜形成組成物。
【請求項6】
前記(A)成分と前記(B)成分との比率が質量比で5:95乃至95:5である、請求項1乃至のうち何れか一項に記載の硬化膜形成組成物。
【請求項7】
前記(A)成分と前記(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、10質量部乃至100質量部の前記(C)成分を含有する、請求項1乃至のうち何れか一項に記載の硬化膜形成組成物。
【請求項8】
前記(A)成分と前記(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、0.01質量部
乃至20質量部の前記(D)成分を含有する、請求項乃至のうち何れか一項に記載の硬化膜形成組成物。
【請求項9】
請求項1乃至のうち何れか一項に記載の硬化膜形成組成物を用いて得られることを特徴とする配向材。
【請求項10】
請求項1乃至のうち何れか一項に記載の硬化膜形成組成物から得られる硬化膜を使用して形成されることを特徴とする位相差材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化膜形成組成物、配向材及び位相差材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルを用いたテレビ等のディスプレイの分野においては、高性能化に向けた取り組みとして、3D画像を楽しむことができる3Dディスプレイの開発が進められている。3Dディスプレイでは、例えば、観察者の右目に右目用画像を視認させ、観察者の左目に左目用画像を視認させることにより、立体感のある画像を表示させることができる。
【0003】
3D画像を表示する3Dディスプレイの方式には多様なものがあり、専用のメガネを必要としない方式としては、レンチキュラレンズ方式及びパララックスバリア方式等が知られている。
そして、観察者がメガネを着用して3D画像を観察するディスプレイの方式の1つとしては、円偏光メガネ方式等が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
円偏光メガネ方式の3Dディスプレイの場合、液晶パネル等の画像を形成する表示素子の上にパターニングされた位相差材が配置されるのが通常である。このパターニングされた位相差材は、位相差特性の異なる2種類の位相差領域がそれぞれ複数、規則的に配置されることにより構成される。尚、以下、本明細書においては、このような位相差特性の異なる複数の位相差領域を配置するようにパターニングされた位相差材をパターン化位相差材と称する。
【0005】
パターン化位相差材は、例えば、特許文献2に開示されるように、重合性液晶からなる位相差材料を光学パターニングすることで作製することができる。重合性液晶からなる位相差材料の光学パターニングは、液晶パネルの配向材形成で知られた光配向技術を利用する。すなわち、基板上に光配向性の材料からなる塗膜を設け、これに偏光方向が異なる2種類の偏光を照射する。そして、液晶の配向制御方向の異なる2種類の液晶配向領域が形成された配向材として光配向膜を得る。この光配向膜の上に重合性液晶を含む溶液状の位相差材料を塗布し、重合性液晶の配向を実現する。その後、配向された重合性液晶を硬化してパターン化位相差材を形成する。
【0006】
液晶パネルの光配向技術を用いた配向材形成では、利用可能な光配向性の材料として、側鎖にシンナモイル基及びカルコン基等の光二量化部位を有するアクリル樹脂やポリイミド樹脂等が知られている。これらの樹脂は、偏光UV照射することにより、液晶の配向を制御する性能(以下、液晶配向性とも言う。)を示すことが報告されている(特許文献3〜特許文献5を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−232365号公報
【特許文献2】特開2005−49865号公報
【特許文献3】特許第3611342号公報
【特許文献4】特開2009−058584号公報
【特許文献5】特表2001−517719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、こうした側鎖にシンナモイル基やカルコン基等の光二量化部位を有するアクリル樹脂は、位相差材の形成に適用した場合に充分な特性(配向感度)が得られないことが分かっている。特に、これらの樹脂に偏光UVを照射して配向材を形成し、その配向材を用いて、重合性液晶からなる位相差材料の光学パターニングをするためには、大きな偏光UV露光量が必要となる。その偏光UV露光量は、通常の液晶パネル用の液晶を配向させるのに十分な偏光UV露光量(例えば、100mJ/cm程度。)より格段に多くなる。
【0009】
偏光UV露光量が多くなる理由としては、位相差材形成の場合には液晶パネル用の液晶と異なり、重合性液晶が溶液の状態で用いられ、配向材の上に塗布されることが挙げられている。
【0010】
具体的には、側鎖にシンナモイル基等の光二量化部位を有するアクリル樹脂等を用いて配向材を形成し、該配向材を用いて重合性液晶を配向させようとする場合、まずアクリル樹脂等において光二量化反応による光架橋が実施される。そして、重合性液晶溶液に対する耐性が発現するまで、大きな露光量の偏光照射を行う必要がある。
一方、液晶パネルの液晶を配向させるためには、通常、光配向性の配向材の表面のみを二量化反応させればよい。
しかし、上述のアクリル樹脂等の従来材料を用いて配向材に重合性液晶溶液に対する溶剤耐性を発現させようとすると、配向材の内部まで反応をさせる必要があり、より多くの露光量が必要となる。その結果、従来材料の配向感度は非常に小さくなってしまうという問題があった。
【0011】
また、上述の従来材料である樹脂にこのような溶剤耐性を発現させるため、架橋剤を添加する技術が知られている。しかし、架橋剤による熱硬化反応を行った後、形成される塗膜の内部には3次元構造が形成され、光反応性が低下することがわかっている。すなわち従来材料に架橋剤を添加して使用しても、結果として配向感度が大きく低下してしまい、所望とする効果は得られていない。
【0012】
以上より、配向材の配向感度を向上させ、偏光UV露光量を低減できる光配向技術と、その配向材の形成に用いられる硬化膜形成組成物が求められている。そして、高効率にパターン化位相差材を提供することができる技術が求められている。
【0013】
また、光配向技術を用いて3Dディスプレイのパターン化位相差材を製造する場合、従来はガラス基板上での形成がなされてきた。しかし、近年は製造コスト低減の要求に応じ、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム、COP(シクロオレフィンポリマー)フィルムなどの安価な樹脂フィルム上で、所謂ロールツーロールにより生産されることが求められている。
【0014】
しかしながら、上述したような従来材料から形成された光配向膜では、樹脂フィルムへの密着性が弱く、樹脂フィルムの上で高信頼のパターン化位相差材を製造することは困難であった。
【0015】
したがって、樹脂フィルムへの密着性に優れ、TACフィルム等の樹脂フィルム上でも高信頼の位相差材を形成することができ、光配向技術に適用可能な配向材と、そうした配向材を形成するための硬化膜形成組成物が求められている。また、これらの基材上に作成した位相差フィルムでは高温高湿下でも密着性や位相差特性が低下しないことが求められている。
【0016】
本発明は、以上の知見や検討結果に基づいてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、優れた光反応効率を有するとともに耐溶剤性及び密着耐久性を備え、樹脂フィルム上でも高感度で重合性液晶を配向させることができる配向材を提供するための硬化膜形成組成物を提供することである。
【0017】
そして、本発明の別の目的は、その硬化膜形成組成物から得られ、優れた光反応効率を有するとともに耐溶剤性及び密着耐久性を備え、樹脂フィルム上でも高感度で重合性液晶を配向させることができる配向材とその配向材を用いて形成された位相差材を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的及び利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様は、
(A)光配向性基を有するアクリル重合体、
(B)主鎖に結合する基の少なくとも2つの末端にヒドロキシ基、カルボキシル基又はアミノ基のいずれか一つを有するポリマー、並びに
(C)架橋剤を含有することを特徴とする硬化膜形成組成物に関する。
【0020】
本発明の第1の態様において、(A)成分の光配向性基が光二量化又は光異性化する構造を有する官能基であることが好ましい。
【0021】
本発明の第1の態様において、(A)成分の光配向性基がシンナモイル基であることが好ましい。
【0022】
本発明の第1の態様において、(A)成分の光配向性基がアゾベンゼン構造を有する基であることが好ましい。
【0023】
本発明の第一の態様において、(A)成分がヒドロキシ基、カルボキシル基及びアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基をさらに有するアクリル重合体であることが好ましい。
【0024】
本発明の第1の態様において、(B)成分が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーであることが好ましい。
【0025】
本発明の第1の態様において、(C)成分の架橋剤が、(A)成分より親水性であることが好ましい。
【0026】
本発明の第1の態様において、(C)成分の架橋剤がメチロール基又はアルコキシメチル基を有する架橋剤であることが好ましい。
【0027】
本発明の第1の態様において、更に(D)架橋触媒を含有することが好ましい。
【0028】
本発明の第1の態様において、(A)成分と(B)成分との比率が質量比で5:95〜95:5であることが好ましい。
【0029】
本発明の第1の態様において、(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、10質量部〜100質量部の(C)成分を含有することが好ましい。
【0030】
本発明の第1の態様において、(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、0.01質量部〜20質量部の(D)成分を含有することが好ましい。
【0031】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の硬化膜形成組成物を用いて得られることを特徴とする配向材に関する。
【0032】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様の硬化膜形成組成物から得られる硬化膜を使用して形成されることを特徴とする位相差材に関する。
特に本発明の特に好ましい態様は、下記[1]〜[10]に関するものである。
[1]
(A)シンナモイル基を有するアクリル重合体、
(B)ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマー、並びに
(C)架橋剤を含有することを特徴とする硬化膜形成組成物。
[2]
前記(A)成分がヒドロキシ基、カルボキシル基及びアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基をさらに有するアクリル重合体である、[1]に記載の硬化膜形成組成物。
[3]
前記(C)成分の架橋剤が、(A)成分より親水性である、[1]又は[2]に記載の硬化膜形成組成物。
[4]
前記(C)成分の架橋剤が、メチロール基又はアルコキシメチル基を有する架橋剤である、[1]乃至[3]のうち何れか一項に記載の硬化膜形成組成物。
[5]
更に、(D)架橋触媒を含有する、[1]乃至[4]のうち何れか一項に記載の硬化膜形成組成物。
[6]
前記(A)成分と前記(B)成分との比率が質量比で5:95乃至95:5である、[1]乃至[5]のうち何れか一項に記載の硬化膜形成組成物。
[7]
前記(A)成分と前記(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、10質量部乃至100質量部の前記(C)成分を含有する、[1]乃至[6]のうち何れか一項に記載の硬化膜形成組成物。
[8]
前記(A)成分と前記(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、0.01質量部乃至20質量部の前記(D)成分を含有する、[5]乃至[7]のうち何れか一項に記載の硬化膜形成組成物。
[9]
[1]乃至[8]のうち何れか一項に記載の硬化膜形成組成物を用いて得られることを特
徴とする配向材。
[10]
[1]乃至[8]のうち何れか一項に記載の硬化膜形成組成物から得られる硬化膜を使用して形成されることを特徴とする位相差材。
【発明の効果】
【0033】
本発明の第1の態様によれば、優れた密着性、配向感度、パターン形成性及び密着耐久性を備え、樹脂フィルム上でも高感度で重合性液晶を配向させることができる配向材を提供するための硬化膜形成組成物を提供することができる。
【0034】
本発明の第2の態様によれば、優れた密着性、配向感度、パターン形成性及び密着耐久性を備え、高感度で性液晶を配向させることができる配向材を提供することができる。
【0035】
本発明の第3の態様によれば、樹脂フィルム上でも高い効率で形成でき、且つ光学パターニングの可能な位相差材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<硬化膜形成組成物>
本実施の形態の硬化膜形成組成物は、(A)成分である光配向性基を有するアクリル重合体と、(B)成分である主鎖に結合する基の少なくとも2つの末端にヒドロキシ基、カルボキシル基又はアミノ基のいずれか一つを有するポリマーと、(C)成分である架橋剤とを含有する。本実施の形態の硬化膜形成組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分に加えて、さらに、(D)成分として架橋触媒をも含有することができる。そして、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤を含有することができる。
以下、各成分の詳細を説明する。
【0037】
<(A)成分>
本実施の形態の硬化膜形成組成物に含有される(A)成分は、光配向性基を有するアクリル重合体である。(A)成分は重合体、すなわち高分子化合物であることにより、本発明により得られる配向材の、基板に対する密着耐久性が向上する。すなわち、配向成分が光反応性基を有する低分子化合物である場合は、高温高湿下では未反応の配向成分が剥離して密着性が低下する場合があるが、高分子配向成分の場合は容易に剥離しないため、密着性が低下しない。なお本発明において“重合体”には、単一のモノマーを重合して得られる重合体に加え、複数種のモノマーを共重合して得られる共重合体をも包含する。
本発明におけるアクリル重合体としては、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを重合して得られる重合体や、これらモノマーとスチレン等の不飽和二重結合を有するモノマーとを重合して得られる共重合体が適用され得る。
(A)成分である光配向性基を有するアクリル重合体(以下、単に特定共重合体ともいう)は、斯かる構造を有するアクリル重合体であればよく、アクリル重合体を構成する高分子の主鎖の骨格及び側鎖の種類などについて特に限定されない。
【0038】
(A)成分のアクリル重合体は、重量平均分子量が1,000乃至200,000であることが好ましく、2,000乃至150,000であることがより好ましく、3,000乃至100,000であることがさらになお好ましい。重量平均分子量が200,000を超えて過大なものであると、溶剤に対する溶解性が低下しハンドリング性が低下する場合があり、重量平均分子量が1,000未満で過小なものであると、熱硬化時に硬化不足になり溶剤耐性及び耐熱性が低下する場合がある。なお重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準試料としてポリスチレンを用いて得られる値である。
【0039】
(A)成分の光配向性基を有するアクリル重合体の合成方法としては、光配向性基を有するモノマーを重合する方法が簡便である。
【0040】
本発明において、光配向性基としては、例えば、光二量化する構造部位と光異性化する構造を有する官能基が挙げられる。
光二量化する構造とは、光照射により二量体を形成する部位であり、その具体例としてはシンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基等が挙げられる。これらのうち可視光領域での高い透明性及び光二量化反応性を有するシンナモイル基が好ましい。
また、光異性化する構造とは、光照射によりシス体とトランス体とに変わる部位を指し、その具体例としてはアゾベンゼン構造、スチルベン構造等が挙げられる。これらのうち反応性の高さからアゾベンゼン構造が好ましい。
そのような光配向性基を有するモノマーの具体例を、下記式[A1]〜式[A3]に示す。なお本発明の(A)成分の光配向性基を有するアクリル重合体を合成するにあたり下記式[A1]〜式[A3]に示すモノマーを使用する場合には、下記モノマーにおいてアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有するモノマーを必須として用いる。
【0041】
【化1】
【0042】
前記式[A1]〜[A3]中、Xは単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合及びアミノ結合からなる群から選択される1種又は2種以上の結合を介して、炭素原子数1乃至18のアルキレン基、フェニレン基及びビフェニレン基からなる群から選択される1乃至3の2価の置換基が結合してなる構造を表す。その際、アルキレン基は直鎖状でも分岐状でも環状であってもよく、当該アルキレン基はヒドロキシ基で置換されていてもよく、フェニレン基及びビフェニレン基はハロゲン原子及びシアノ基のいずれかによって置換されていてもよい。
は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基又はシクロヘキシル基を表す。その際、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基及びシクロヘキシル基は、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又は尿素結合を介してベンゼン環に結合してもよい。
はヒドロキシ基、フェニル基、炭素原子数1乃至4のアルキル基又は炭素原子数1乃至4のアルコキシ基を表すか、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基又はシアノ基等で置換されたフェニル基を表す。
は単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合(式[A3]中のカルボニル基も当該エステル結合、アミド結合の一部であってもよい)、ウレタン結合及びアミノ結合からなる群から選択される1種又は2種以上の結合を介して、炭素原子数1乃至18のアルキレン基、フェニレン基及びビフェニレン基からなる群から選択される1乃至3の2価の置換基が結合してなる構造を表す。その際、アルキレン基は直鎖状でも分岐状でも環状であってもよく、当該アルキレン基はヒドロキシ基で置換されていてもよく、フェニレン基及びビフェニレン基はハロゲン原子及びシアノ基のいずれかによって置換されていてもよい。
は重合性基を表す。この重合性基の具体例としては、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、スチレン基、マレイミド基、アクリルアミド基及びメタクリルアミド基等が挙げられる。
【0043】
上記式中、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基又はシアノ基を表す。
【0044】
本実施の形態の硬化膜形成組成物に含有される(A)成分は、上記光配向性基に加えて、さらにヒドロキシ基、カルボキシル基及びアミノ基よりなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有するアクリル重合体であることが好ましい。
【0045】
光配向性基に加えて、さらにヒドロキシ基、カルボキシル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも一つの置換基を有するアクリル重合体を得るには、上記光配向性基を有するモノマーと、ヒドロキシ基、カルボキシル基及び/又はアミノ基を有するモノマーから選ばれる少なくとも一種のモノマーとを共重合する方法が簡便である。
【0046】
上記ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、カプロラクトン2−(アクリロイルオキシ)エチルエステル、カプロラクトン2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルメタクリレート、5−アクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン、5−メタクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン等のヒドロキシ基を有するモノマー、及び、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、モノ−(2−(アクリロイルオキシ)エチル)フタレート、モノ−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)フタレート、N−(カルボキシフェニル)マレイミド、N−(カルボキシフェニル)メタクリルアミド、N−(カルボキシフェニル)アクリルアミド等のカルボキシル基を有するモノマー、及び、ヒドロキシスチレン、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド及びN−(ヒドロキシフェニル)マレイミド等のフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマー、アミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピルアクリレート及びアミノプロピルメタクリレート等のアミノ基を有するモノマー等が挙げられる。
【0047】
また、本発明においては、特定共重合体(光配向性基を有するアクリル重合体)を得る際に、上記光配向性基を有するモノマー、上記ヒドロキシ基、カルボキシル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも一つの置換基を有するモノマーの他に、これらのモノマーと共重合可能な上記の特定の官能基を有さないモノマーを併用することができる。
【0048】
そのようなモノマーの具体例としては、上述の特定官能基(光配向性基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びアミノ基)を含まないアクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。
【0049】
以下、前記モノマーの具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
前記アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、フェニルアクリレート、グリシジルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルアクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルアクリレート、及び、8−エチル−8−トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。
【0050】
前記メタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、γ−ブチロラクトンメタクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルメタクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、及び、8−エチル−8−トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。
【0051】
前記ビニル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ビニルナフタレン、ビニルカルバゾール、アリルグリシジルエーテル、3−エテニル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、及び、1,7−オクタジエンモノエポキシド等が挙げられる。
【0052】
前記スチレン化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
【0053】
前記マレイミド化合物としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、及びN−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0054】
特定共重合体を得るために用いる各モノマーの使用量は、全モノマーの合計量に基づいて、25乃至100モル%の光配向性基を有するモノマー、0乃至75モル%のヒドロキシ基、カルボキシル基及び/又はアミノ基を有するモノマー、0乃至75モル%の特定官能基を有さないモノマーであることが好ましい。光配向性基を有するモノマーの含有量が25モル%より少ないと、高感度かつ良好な液晶配向性を付与し難い。ヒドロキシ基、カルボキシル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも一つの置換基を有するモノマーは好ましくは10乃至75%を含有することが好ましく、その含有量が10モル%よりも少ないと、充分な熱硬化性を付与し難く、高感度かつ良好な液晶配向性を維持し難い。
【0055】
本発明に用いる特定共重合体を得る方法は特に限定されないが、例えば、特定官能基を有するモノマーと所望により特定官能基を有さないモノマーと重合開始剤等とを共存させた溶剤中において、50乃至110℃の温度下で重合反応により得られる。その際、用いられる溶剤は、特定官能基を有するモノマー、所望により用いられる特定官能基を有さないモノマー及び重合開始剤等を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、後述する<溶剤>に記載する。
前記方法により得られる特定共重合体は、通常、溶剤に溶解した溶液の状態であり、本発明の硬化膜形成組成物の調製にそのまま(溶液の状態で)用いることができる。
【0056】
また、上記方法で得られた特定共重合体の溶液を、攪拌下のジエチルエーテルや水等に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過・洗浄した後に、常圧又は減圧下で、常温乾燥又は加熱乾燥し、特定共重合体の粉体とすることができる。前記操作により、特定共重合体と共存する重合開始剤及び未反応のモノマーを除去することができ、その結果、精製した特定共重合体の粉体が得られる。一度の操作で充分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解させ、上記の操作を繰り返し行えば良い。
【0057】
本発明においては、(A)成分の光配向性基を有するアクリル重合体(特定共重合体)は粉体形態で、あるいは精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
【0058】
また、本発明においては、(A)成分の特定共重合体は、複数種の特定共重合体の混合物であってもよい。
【0059】
<(B)成分>
本実施の形態の硬化膜形成組成物に含有される(B)成分は、主鎖に結合する基の少なくとも2つの末端にヒドロキシ基、カルボキシル基又はアミノ基(以下、特定置換基とも称する)のいずれか一つを有するポリマーである。(B)成分は、架橋剤との反応点である上記特定置換基を少なくとも2つ有することにより、架橋後の膜の密度が低く、柔軟性をもつため、密着性の向上に寄与するものと考えられる。一方、上記特定置換基の数が多すぎると、架橋後の膜の密度が増し、柔軟性が低下するため、密着性に悪影響を与える。従って、ポリマーの数平均分子量300乃至10000あたり1つの特定置換基を有し、なおかつ、主鎖に結合する基の末端の少なくとも2カ所に特定置換基を有するポリマーが好ましい。その際、同一ポリマー内の特定置換基同士はなるべく離れていることが好ましく、少なくとも、特定置換基を有する繰り返し単位同士が隣り合わないことが望ましい。
【0060】
(B)成分であるポリマーとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアミン等の末端にヒドロキシ基やカルボキシル基、アミノ基を有する直鎖構造又は分岐構造を有するポリマーが挙げられる。
【0061】
(B)成分のポリマーの例としては、ポリエーテルポリオールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが挙げられ、また、プロピレングリコールやビスフェノールA、トリエチレングリコール、ソルビトール等の多価アルコールにプロピレンオキサイドやポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等を付加または縮合したものが挙げられる。ポリエーテルポリオールの具体例としては(株)ADEKA製アデカポリエーテルPシリーズ、Gシリーズ、EDPシリーズ、BPXシリーズ、FCシリーズ、CMシリーズ、日油(株)製ユニオックス(登録商標)HC-40、HC-60、ST-30E、ST-40E、G-450、G-750、ユニオール(登録商標)TG-330、TG-1000、TG-3000、TG-4000、HS-1600D、DA-400、DA-700、DB-400、ノニオン(登録商標)LT-221、ST-221、OT-221等が挙げられる。
【0062】
(B)成分のポリマーの好ましい一例であるポリエステルポリオールとしては、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸等の多価カルボン酸にエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジオールを反応させたものが挙げられる。ポリエステルポリオールの具体例としてはDIC(株)製ポリライト(登録商標)OD-X-286、OD-X-102、OD-X-355、OD-X-2330、OD-X-240、OD-X-668、8651、OD-X-2108、OD-X-2376、OD-X-2044、OD-X-688、OD-X-2068、OD-X-2547、OD-X-2420、OD-X-2523、OD-X-2555、OD-X-2560、(株)クラレ製ポリオールP-510、P-1010、P-2010、P-3010、P-4010、P-5010、P-6010、F-510、F-1010、F-2010、F-3010、P-1011、P-2011、P-2013、P-2030、N-2010、PNNA-2016、C-590、C-1050、C-2050、C-2090、C-3090等が挙げられる。
【0063】
(B)成分のポリマーの好ましい一例であるポリカプロラクトンポリオールとしては、トリメチロールプロパンやエチレングリコール等の多価アルコールにポリカプロラクトンを反応させたものが挙げられる。ポリカプロラクトンポリオールの具体例としてはDIC(株)製ポリライト(登録商標)OD-X-2155、OD-X-640、OD-X-2568、(株)ダイセル製プラクセル(登録商標)205、L205AL、205U、208、210、212、L212AL、220、230、240、303、305、308、312、320等が挙げられる。
【0064】
(B)成分のポリマーの好ましい一例であるポリカーボネートポリオールとしては、トリメチロールプロパンやエチレングリコール等の多価アルコールにポリカーボネートを反応させたものが挙げられる。ポリカーボネートポリオールの具体例としては(株)ダイセル製プラクセル(登録商標)CD205、CD205PL、CD210、CD220等が挙げられる。
【0065】
(B)成分のポリマーの好ましい一例であるポリアミンとしては、エチレンイミンを重合して得られるポリエチレンイミンやジアミンとアクリル酸メチルとの繰り返し反応によるポリアミドアミンデンドリマー等が挙げられる。ポリアミンの具体例としてはDIC(株)製LUCKAMIDE(登録商標)17-202、TD-961、TD-977、TD-992、WN-155、WN-170、WN-405、WN-505、WN-620、F4、WH-650、EA-330、EA-2020、TD-960、TD-982、(株)日本触媒製エポミン(登録商標)SP-003、SP-006、SP-012、SP-018、SP-200、P-1000等が挙げられる。
【0066】
本実施の形態の硬化膜形成組成物における(A)成分と(B)成分の混合比は質量比で5:95〜95:5であることが好ましい。(A)成分の質量比が5:95より小さい場合、配向性が低下することがある。(A)成分の質量比が95:5より大きい場合、フィルム基材との密着性が低下する場合がある。
【0067】
また、本実施の形態の硬化膜形成組成物において、(B)成分のポリマーは、(B)成分のポリマーの複数種の混合物であってもよい。また、特性に影響を与えない範囲で(A)成分及び(B)成分に該当しないその他のポリマーを混合することもできる。
【0068】
<(C)成分>
本実施の形態の硬化膜形成組成物に含有される(C)成分は、架橋剤である。
【0069】
そして、本実施の形態の硬化膜形成組成物において、(C)成分は、(A)成分の光配向性を有するアクリル重合体より親水性の化合物であることが好ましい。これは、本実施の形態の硬化膜形成組成物を用いて硬化膜を形成する際に、膜中に(C)成分を好適に分散させることができるためである。
(C)成分である架橋剤としては、エポキシ化合物、メチロール化合物、及びイソシアナート化合物等の化合物が挙げられるが、好ましくはメチロール化合物である。
【0070】
上述したメチロール化合物の具体例としては、アルコキシメチル化グリコールウリル、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン及びアルコキシメチル化メラミン等の化合物が挙げられる。
【0071】
アルコキシメチル化グリコールウリルの具体例としては、例えば、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(ブトキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(メトキシメチル)尿素、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリノン、及び1,3−ビス(メトキシメチル)−4,5−ジメトキシ−2−イミダゾリノン等が挙げられる。
これらの市販品として、日本サイテックインダストリーズ(株)(旧 三井サイテック(株))製グリコールウリル化合物(商品名:サイメル(登録商標)1170、パウダーリンク(登録商標)1174)等の化合物、メチル化尿素樹脂(商品名:UFR(登録商標)65)、ブチル化尿素樹脂(商品名:UFR(登録商標)300、U−VAN10S60、U−VAN10R、U−VAN11HV)、DIC(株)(旧 大日本インキ化学工業(株))製尿素/ホルムアルデヒド系樹脂(高縮合型、商品名:ベッカミン(登録商標)J−300S、同P−955、同N)等が挙げられる。
【0072】
アルコキシメチル化ベンゾグアナミンの具体例としてはテトラメトキシメチルベンゾグアナミン等が挙げられる。市販品として、日本サイテックインダストリーズ(株)(旧 三井サイテック(株))製(商品名:サイメル(登録商標)1123)、(株)三和ケミカル製(商品名:ニカラック(登録商標)BX−4000、同BX−37、同BL−60、同BX−55H)等が挙げられる。
【0073】
アルコキシメチル化メラミンの具体例としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン等が挙げられる。市販品として、日本サイテックインダストリーズ(株)(旧 三井サイテック(株))製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:サイメル(登録商標)300、同301、同303、同350)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:マイコート(登録商標)506、同508)、(株)三和ケミカル製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:ニカラック(登録商標)MW−30、同MW−22、同MW−11、同MS−001、同MX−002、同MX−730、同MX−750、同MX−035)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:ニカラック(登録商標)MX−45、同MX−410、同MX−302)等が挙げられる。
【0074】
また、このようなアミノ基の水素原子がメチロール基又はアルコキシメチル基で置換されたメラミン化合物、尿素化合物、グリコールウリル化合物及びベンゾグアナミン化合物を縮合させて得られる化合物であってもよい。例えば、米国特許第6323310号に記載されているメラミン化合物及びベンゾグアナミン化合物から製造される高分子量の化合物が挙げられる。前記メラミン化合物の市販品としては、商品名:サイメル(登録商標)303(日本サイテックインダストリーズ(株)(旧 三井サイテック(株))製)等が挙げられ、前記ベンゾグアナミン化合物の市販品としては、商品名:サイメル(登録商標)1123(日本サイテックインダストリーズ(株)(旧 三井サイテック(株))製)等が挙げられる。
【0075】
さらに、(C)成分としては、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド等のヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物を使用して製造されるポリマーも用いることができる。
【0076】
そのようなポリマーとしては、例えば、ポリ(N−ブトキシメチルアクリルアミド)、N−ブトキシメチルアクリルアミドとスチレンとの共重合体、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミドとメチルメタクリレートとの共重合体、N−エトキシメチルメタクリルアミドとベンジルメタクリレートとの共重合体、及びN−ブトキシメチルアクリルアミドとベンジルメタクリレートと2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの共重合体等が挙げられる。このようなポリマーの重量平均分子量は、1,000〜500,000であり、好ましくは、2,000〜200,000であり、より好ましくは3,000〜150,000であり、更に好ましくは3,000〜50,000である。なお重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準試料としてポリスチレンを用いて得られる値である。
【0077】
これらの架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0078】
本実施の形態の硬化膜形成組成物における(C)成分の架橋剤の含有量は、(A)成分のアクリル重合体と(B)成分のポリマーとの合計量の100質量部に基づいて10質量部〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは15質量部〜80質量部である。架橋剤の含有量が過小である場合には、硬化膜形成組成物から得られる硬化膜の溶剤耐性及び耐熱性が低下し、光配向時の感度が低下する。他方、含有量が過大である場合には光配向性及び保存安定性が低下することがある。
【0079】
<(D)成分>
本実施の形態の硬化膜形成組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分に加えて、さらに、(D)成分として架橋触媒を含有することができる。
【0080】
(D)成分である架橋触媒としては、例えば、酸又は熱酸発生剤を用いることができる。この(D)成分は、本実施の形態の硬化膜形成組成物の熱硬化反応を促進させることにおいて有効である。
【0081】
(D)成分としては、スルホン酸基含有化合物、塩酸又はその塩、及びプリベーク又はポストベーク時に熱分解して酸を発生する化合物、すなわち温度80℃から250℃で熱分解して酸を発生する化合物であれば特に限定されるものではない。そのような化合物としては、例えば、塩酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、p−キシレン−2−スルホン酸、m−キシレン−2−スルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロ(2−エトキシエタン)スルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタン−1−スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸又はその水和物や塩等が挙げられる。熱により酸を発生する化合物としては、例えば、ビス(トシルオキシ)エタン、ビス(トシルオキシ)プロパン、ビス(トシルオキシ)ブタン、p−ニトロベンジルトシレート、o−ニトロベンジルトシレート、1,2,3−フェニレントリス(メチルスルホネート)、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩、p−トルエンスルホン酸モルホニウム塩、p−トルエンスルホン酸エチルエステル、p−トルエンスルホン酸プロピルエステル、p−トルエンスルホン酸ブチルエステル、p−トルエンスルホン酸イソブチルエステル、p−トルエンスルホン酸メチルエステル、p−トルエンスルホン酸フェネチルエステル、シアノメチルp−トルエンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエチルp−トルエンスルホネート、2−ヒドロキシブチルp−トルエンスルホネート、N−エチル−p−トルエンスルホンアミド、
【0082】
【化2】
【0083】
【化3】
【0084】
【化4】
【0085】
【化5】
【0086】
【化6】
【0087】
【化7】
等が挙げられる。
【0088】
本実施の形態の硬化膜形成組成物における(D)成分の含有量は、(A)成分のアクリル重合体と(B)成分のポリマーとの合計量の100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜20質量部、より好ましくは0.1質量部〜15質量部、更に好ましくは0.5質量部〜10質量部である。(D)成分の含有量を0.01質量部以上とすることで、充分な熱硬化性及び溶剤耐性を付与することができ、さらに光照射に対する高い感度をも付与することができる。しかし、20質量部より多い場合、組成物の保存安定性が低下する場合がある。
【0089】
<溶剤>
本実施の形態の硬化膜形成組成物は、主として溶剤に溶解した溶液状態で用いられる。その際に使用する溶剤は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分、必要に応じて(D)成分及び/又は、後述するその他添加剤を溶解できればよく、その種類及び構造などは特に限定されるものでない。
【0090】
溶剤の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ブタノン、3−メチル−2−ペンタノン、2−ペンタノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、シクロペンチルメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0091】
本実施の形態の硬化膜形成組成物を用い、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム上で硬化膜を形成して配向材を製造する場合は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が、TACフィルムが耐性を示す溶媒であるという点から好ましい。
【0092】
これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上の組合せで使用することができる。
【0093】
なおこれらの溶剤のうち、酢酸エチルには、形成される硬化膜の接着性を向上させる効果が見出されている。すなわち、溶剤として酢酸エチルを用い、又は、溶剤中に酢酸エチルを含有させることにより、硬化膜の密着性を向上されることが可能である。すなわち、酢酸エチルについては、溶剤として使用するとともに密着向上成分として使用することも可能である。
酢酸エチルを本発明の硬化膜形成組成物の一成分として配合した場合、本実施の形態の硬化膜形成組成物から形成される硬化膜は、基板に対する密着性が向上する。そして、例えば、TACフィルム等の樹脂からなる基板上においても、より高い信頼性を備えた硬化膜の形成を可能とし、高信頼の配向材を提供することが可能となる。
【0094】
<その他添加剤>
さらに、本実施の形態の硬化膜形成組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、増感剤、密着向上剤、シランカップリング剤、界面活性剤、レオロジー調整剤、顔料、染料、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤等を含有することができる。
【0095】
例えば、増感剤は、本実施の形態の硬化膜形成組成物を用いて熱硬化膜を形成した後、光反応を促進することにおいて有効である。
【0096】
その他添加剤の一例である増感剤としては、ベンゾフェノン、アントラセン、アントラキノン、チオキサントン等及びその誘導体、並びにニトロフェニル化合物等が挙げられる。これらのうち、ベンゾフェノン誘導体及びニトロフェニル化合物が好ましい。好ましい化合物の具体例としてN,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ニトロフルオレン、2−ニトロフルオレノン、5−ニトロアセナフテン、4−ニトロビフェニル、4−ニトロケイ皮酸、4−ニトロスチルベン、4−ニトロベンゾフェノン、5−ニトロインドール等が挙げられる。特に、ベンゾフェノンの誘導体であるN,N−ジエチルアミノベンゾフェノンが好ましい。
【0097】
これらの増感剤は上記のものに限定されるものではない。また、増感剤は単独で又は2種以上の化合物を組み合わせて併用することが可能である。
【0098】
本実施の形態の硬化膜形成組成物における増感剤の使用割合は、(A)成分の光配向性基を有するアクリル重合体(特定共重合体)と(B)成分の主鎖に結合する基の少なくとも2つの末端にヒドロキシ基、カルボキシル基及びアミノ基から選ばれる置換基を有するポリマーとの合計質量の100質量部に対して0.1質量部〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部〜10質量部である。この割合が過小である場合には、増感剤としての効果を充分に得られない場合があり、過大である場合には透過率の低下及び塗膜の荒れが生じることがある。
【0099】
<硬化膜形成組成物の調製>
本実施の形態の硬化膜形成組成物は、(A)成分である光配向性基を有するアクリル重合体(特定重合体)と、(B)成分である主鎖に結合する基の少なくとも2つの末端にヒドロキシ基、カルボキシル基及びアミノ基のいずれか一つを有するポリマーと、(C)成分である架橋剤とを含有する。本実施の形態の硬化膜形成組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分に加えて、さらに、(D)成分として架橋触媒をも含有することができる。そして、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤を含有することができる。
【0100】
本実施の形態の硬化膜形成組成物の好ましい例は、以下のとおりである。
[1]:(A)成分と(B)成分の配合比が質量比で5:95〜95:5であり、(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、10質量部〜100質量部の(C)成分を含有する硬化膜形成組成物。
【0101】
[2]:(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、10質量部〜100質量部の(C)成分、溶剤を含有する硬化膜形成組成物。
【0102】
[3]:(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、10質量部〜100質量部の(C)成分、0.01質量部〜20質量部の(D)成分、溶剤を含有する硬化膜形成組成物。
【0103】
本実施の形態の硬化膜形成組成物を溶液として用いる場合の配合割合、調製方法等を以下に詳述する。
本実施の形態の硬化膜形成組成物における固形分の割合は、各成分が均一に溶剤に溶解している限り、特に限定されるものではないが、1質量%〜80質量%であり、好ましくは3質量%〜60質量%であり、より好ましくは5質量%〜40質量%である。ここで、固形分とは、硬化膜形成組成物の全成分から溶剤を除いたものをいう。
【0104】
本実施の形態の硬化膜形成組成物の調製方法は、特に限定されない。調製法としては、例えば、溶剤に溶解した(A)成分の溶液に(B)成分及び(C)成分、さらには(D)成分等を所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法、或いは、この調製法の適当な段階において、必要に応じてその他添加剤をさらに添加して混合する方法が挙げられる。
【0105】
本実施の形態の硬化膜形成組成物の調製においては、溶剤中の重合反応によって得られる特定共重合体の溶液をそのまま使用することができる。この場合、例えば、(A)成分の溶液に前記と同様に(B)成分及び(C)成分、(D)成分等を入れて均一な溶液とする。この際に、濃度調整を目的としてさらに溶剤を追加投入してもよい。このとき、(A)成分の生成過程で用いられる溶剤と、硬化膜形成組成物の濃度調整に用いられる溶剤とは同一であってもよく、また異なってもよい。
【0106】
また、調製された硬化膜形成組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて濾過した後、使用することが好ましい。
【0107】
<硬化膜、配向材及び位相差材>
本実施の形態の硬化膜形成組成物の溶液を基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、金属、例えば、アルミニウム、モリブデン、クロムなどが被覆された基板、ガラス基板、石英基板、ITO基板等)やフィルム(例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリルフィルム等の樹脂フィルム)等の上に、バーコート、回転塗布、流し塗布、ロール塗布、スリット塗布、スリットに続いた回転塗布、インクジェット塗布、印刷などによって塗布して塗膜を形成し、その後、ホットプレート又はオーブン等で加熱乾燥することにより、硬化膜を形成することができる。
【0108】
加熱乾燥の条件としては、硬化膜から形成される配向材を構成する成分が、その上に塗布される重合性液晶溶液に溶出しない程度に、架橋剤による架橋反応が進行すればよく、例えば、温度60℃〜200℃、時間0.4分間〜60分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度及び加熱時間が採用される。加熱温度及び加熱時間は、好ましくは70℃〜160℃、0.5分間〜10分間である。
【0109】
本実施の形態の硬化性組成物を用いて形成される硬化膜の膜厚は、例えば、0.05μm〜5μmであり、使用する基板の段差や光学的、電気的性質を考慮し適宜選択することができる。
【0110】
このようにして形成された硬化膜は、偏光UV照射を行うことで配向材、すなわち、液晶等の液晶性を有する化合物を配向させる部材として機能させることができる。
【0111】
偏光UVの照射方法としては、通常150nm〜450nmの波長の紫外光〜可視光が用いられ、室温又は加熱した状態で垂直又は斜め方向から直線偏光を照射することによって行われる。
【0112】
本実施形態の硬化膜組成物から形成された配向材は耐溶剤性及び耐熱性を有している。従ってこの配向材上に後述する位相差材料を塗布した後、液晶の相転移温度まで加熱することで位相差材料を液晶状態とし、配向材上で配向させ、その後配向状態となった位相差材料をそのまま硬化させることで、光学異方性を有する層として位相差材を形成することができる。
【0113】
位相差材料としては、例えば、重合性基を有する液晶モノマー及びそれを含有する組成物(即ち重合性液晶溶液)等が用いられる。そして、配向材を形成する基板がフィルムである場合には、本実施の形態の位相差材を有するフィルムは、位相差フィルムとして有用である。このような位相差材を形成する位相差材料には、液晶状態とした際に配向材上で水平配向、コレステリック配向、垂直配向、ハイブリッド配向等の配向状態をとるものがあり、それぞれ必要とされる位相差に応じて使い分けることが出来る。
【0114】
また、3Dディスプレイに用いられるパターン化位相差材を製造する場合には、本実施形態の硬化膜組成物から上記した方法で形成された硬化膜に、ラインアンドスペースパターンのマスクを介して所定の基準から、例えば、+45度の向きで偏光UV露光し、次いで、マスクを外してから−45度の向きで偏光UVを露光し、液晶の配向制御方向の異なる2種類の液晶配向領域が形成された配向材を得る。その後、重合性液晶溶液からなる上述の位相差材料を塗布した後、液晶の相転移温度まで加熱することで位相差材料を液晶状態とし、配向材上で配向させる。そして、配向状態となった位相差材料をそのまま硬化させ、位相差特性の異なる2種類の位相差領域がそれぞれ複数、規則的に配置された、パターン化位相差材を得ることができる。
【0115】
また、上記のようにして形成された、本実施の形態の配向材を有する2枚の基板を用い、スペーサを介して両基板上の配向材が互いに向かい合うように張り合わせた後、それらの基板の間に液晶を注入して、液晶が配向した液晶表示素子とすることもできる。
このように本実施の形態の硬化膜形成組成物は、各種位相差材(位相差フィルム)や液晶表示素子等の製造に好適に用いることができる。
【実施例】
【0116】
以下、実施例を挙げて、本実施の形態をさらに詳しく説明するが、本実施の形態は、これら実施例に限定されるものでない。なお、実施例における各物性の測定方法及び測定条件は、以下のとおりである。
・NMR
対象とする化合物を重水素化クロロホルム(CDCl)に溶解し、核磁気共鳴装置(300MHz、ジオール社製)を用いてH−NMRを測定した。
【0117】
[実施例で用いる略記号]
以下の実施例で用いる略記号の意味は、次のとおりである。
<(A)成分:光配向性基を有するアクリル重合体(特定共重合体) 原料>
CIN1:4−(6−メタクリルオキシヘキシル−1−オキシ)ケイ皮酸メチルエステル
CIN2:4−[6−(2−メタクリロイルオキシエチルアミノカルボニルオキシ)ヘキシルオキシ]ケイ皮酸メチルエステル
CIN3:4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ケイ皮酸メチルエステル
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
AIBN:α,α’−アゾビスイソブチロニトリル
【0118】
<(B)成分:ポリマー 原料>
PCT:ポリカプロラクトントリオール(数平均分子量2,000)
PEPO:ポリエステルポリオール(アジピン酸/ジエチレングリコール共重合体)(数平均分子量4,800)
【0119】
<(C)成分:架橋剤>
HMM:ヘキサメトキシメチルメラミン
【0120】
<(D)成分:架橋触媒>
PTSA:p−トルエンスルホン酸一水和物
【0121】
<溶剤>
PM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PMA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0122】
以下の合成例に従い得られたアクリル重合体の数平均分子量及び重量平均分子量は、日本分光(株)製GPC装置(Shodex(登録商標)カラムKF803L及びKF804L)を用い、溶出溶媒テトラヒドロフランを流量1mL/分でカラム中に(カラム温度40℃)流して溶離させるという条件で測定した。尚、下記の数平均分子量(以下、Mnと称す。)及び重量平均分子量(以下、Mwと称す。)は、ポリスチレン換算値にて表した。
【0123】
<参考例1>
4−[6−(2−メタクリロイルオキシエチルアミノカルボニルオキシ)ヘキシルオキシ]ケイ皮酸メチルエステル(CIN2)の合成
【0124】
【化8】
【0125】
CIN3(511.6g)と、ジブチルスズラウレート(0.1401g)、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)(2.831g)をアセトニトリル(2364g)に溶解させ、50℃まで昇温させた後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(299.79g)(BHT入り)を40分かけて滴下した。滴下終了後、HPLCで反応を追跡しながら、CIN3のピークが消失するまで60℃で2時間反応を行った。反応終了後、5℃まで冷却し、析出した固体をろ過した後、アセトニトリル(790.0g)で2回ろ取物を洗浄し、得られたろ取物を35℃にて真空乾燥することでCIN2を630.0g得た(HPLC面積%(310nm):99.53%)。この結晶は、H−NMR分析結果により、CIN2であることを確認した。
H−NMR(CDCl3、δppm):7.65(d,1H)、7.46(d,2H)、6.88(d,2H)、6.31(d,1H)、6.12(s,1H)、5.60(s,1H)、4.92(brs,1H)、4.23(t,2H)、4.08(t,2H)、3.98(t,2H)、3.79(s,3H)、3.52−3.49(m,2H)、1.95(s,3H)、1.83−1.77(m,2H),1.68−1.62(m,2H)、1.54−1.42(m,4H)
融点:76.4℃
【0126】
<合成例1>
CIN1 40.0g、HEMA 10.0g、重合触媒としてAIBN 1.2gをPMA 133.5gに溶解し85℃にて20時間反応させることにより特定共重合体溶液(固形分濃度27質量%)(P1)を得た。得られた特定共重合体のMnは7,080、Mwは14,030であった。
【0127】
<合成例2>
CIN2 40.0g、HEMA 10.0g、重合触媒としてAIBN 1.2gをPM 204.8gに溶解し85℃にて20時間反応させることにより特定共重合体溶液(固形分濃度20質量%)(P2)を得た。得られた特定共重合体のMnは6,500、Mwは12,000であった。
【0128】
<合成例3>
HEMA 50.0g、重合触媒としてAIBN 1.2gをPM 204.8gに溶解し85℃にて20時間反応させることにより共重合体溶液(固形分濃度20質量%)(P3)を得た。得られた共重合体のMnは8,500、Mwは15,000であった。
【0129】
<実施例1乃至実施例4>
表1に示す組成にて実施例1乃至実施例4の各硬化膜形成組成物を調製し、それぞれについて、密着性及びその耐久性、配向感度、パターン形成性の評価を行った。
【0130】
【表1】
【0131】
<比較例1〜2>
表2に示す組成にて、比較例1及び比較例2の各硬化膜形成組成物を調製し、それぞれについて、密着性及びその耐久性、配向感度、パターン形成性の評価を行った。
【0132】
【表2】
【0133】
[密着性の評価]
実施例及び比較例の各硬化膜形成組成物をTACフィルム上にスピンコータを用いて2000rpmで30秒間回転塗布した後、温度110℃で120秒間、熱循環式オーブン中で加熱乾燥を行い、硬化膜を形成した。この硬化膜に313nmの直線偏光を垂直に20mJ/cm照射した。
露光後の硬化膜の上にメルク株式会社製の水平配向用重合性液晶溶液RMS03−013Cを、スピンコータを用いて塗布し、次いで、60℃で60秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。このフィルム上の塗膜を1000mJ/cmで露光し、位相差材を作製した。
得られたフィルム上の位相差材にカッターナイフを用いてクロスカット(1mm×1mm×100マス)を入れ、その後、ニチバン(株)製セロテープ(登録商標)を貼り付け、次いで、そのセロテープ(登録商標)を剥がした時に基板上の膜が剥がれず残っているマス目の個数をカウントした。膜が剥がれず残っているマス目が90個以上残っているものは、密着性が良好であると評価できる。
【0134】
[配向感度の評価]
実施例及び比較例の各硬化膜形成組成物をTACフィルム上にスピンコータを用いて2000rpmで30秒間回転塗布した後、温度110℃で120秒間、熱循環式オーブン中で加熱乾燥を行い、硬化膜を形成した。この硬化膜に313nmの直線偏光を垂直に照射し、配向材を形成した。
フィルム上の配向材の上に、メルク株式会社製の水平配向用重合性液晶溶液RMS03−013Cを、スピンコータを用いて塗布し、次いで、60℃で60秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。このフィルム上の塗膜を1000mJ/cmで露光し、位相差材を作製した。
作製したフィルム上の位相差材をフィルムごと一対の偏光板で挟み込み、位相差材における位相差特性の発現状況を観察し、配向材が液晶配向性を示すのに必要な偏光UVの露光量を配向感度とした。
【0135】
[パターン形成性の評価]
実施例及び比較例の各硬化膜形成組成物をTACフィルム上にスピンコータを用いて2000rpmで30秒間回転塗布した後、温度110℃で120秒間、熱循環式オーブン中で加熱乾燥を行い、硬化膜を形成した。この硬化膜に100μmのラインアンドスペースマスクを介し、313nmの直線偏光を30mJ/cm垂直に照射した。次いでマスクを取り外し、基板を90度回転させた後、313nmの直線偏光を15mJ/cm垂直に照射し、液晶の配向制御方向が90度異なる2種類の液晶配向領域が形成された配向材を得た。
このフィルム上の配向材の上に、メルク株式会社製の水平配向用重合性液晶溶液RMS03−013Cを、スピンコータを用いて塗布し、次いで、60℃で60秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。このフィルム上の塗膜を1000mJ/cmで露光し、パターン化位相差材を作製した。
作製したフィルム上のパターン化位相差材を、偏光顕微鏡を用いて観察し、配向欠陥なく位相差パターンが形成されているものを○、配向欠陥が見られるものを×として評価した。
【0136】
[密着耐久性の評価]
実施例及び比較例の各硬化膜形成組成物をTACフィルム上にスピンコータを用いて2000rpmで30秒間回転塗布した後、温度110℃で120秒間、熱循環式オーブン中で加熱乾燥を行い、硬化膜を形成した。この硬化膜に313nmの直線偏光を垂直に20mJ/cm照射した。
露光後のフィルム上にメルク株式会社製の水平配向用重合性液晶溶液RMS03−013Cを、スピンコータを用いて塗布し、次いで、60℃で60秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。このフィルムを1000mJ/cmで露光し、位相差材を作製した。
位相差材が形成されたフィルムを温度80℃、湿度90%の条件で100時間保管後、フィルム上の位相差材にカッターナイフを用いてクロスカット(1mm×1mm×100マス)を入れ、その後、セロテープ(登録商標)を貼り付け、次いで、そのセロテープ(登録商標)を剥がした時に基板上の膜が剥がれず残っているマス目の個数をカウントした。100時間保管前に評価した初期の密着性と違いがないものは耐久性が良好であると評価できる。
【0137】
[評価の結果]
以上の評価を行った結果を、次の表3に示す。
【0138】
【表3】
【0139】
実施例1乃至実施例4は、いずれも少ない露光量で液晶配向性を示して高い配向感度を示し、光学パターニングを行うことができた。さらに、高い密着耐久性を示した。
【0140】
比較例1は、密着性が低く、比較例2は密着耐久性が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明による硬化膜形成組成物は、液晶表示素子の液晶配向膜や、液晶表示素子に内部や外部に設けられる光学異方性フィルムを形成するための配向材として非常に有用であり、特に、3Dディスプレイのパターン化位相差材の形成材料として好適である。