特許第6090900号(P6090900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ADEKAの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6090900
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】焼き菓子練り込み用油中水型乳化物
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20170227BHJP
   A21D 2/16 20060101ALI20170227BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20170227BHJP
【FI】
   A23D7/00 506
   A21D2/16
   A21D13/08
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-197128(P2012-197128)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-50351(P2014-50351A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100143856
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 廣己
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑佳
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 秀将
【審査官】 高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−224057(JP,A)
【文献】 特開2008−125492(JP,A)
【文献】 特開平11−155482(JP,A)
【文献】 特開2006−166909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00−9/06
A21D 2/00−17/00
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋澱粉を10〜30質量%、有機酸モノグリセリドを0.1〜4質量%含有し、油分が25〜70質量%であることを特徴とする焼き菓子練り込み用油中水型乳化物。
【請求項2】
上記有機酸モノグリセリドがコハク酸モノグリセリドである、請求項1記載の焼き菓子練り込み用油中水型乳化物。
【請求項3】
水分が10〜30質量%である、請求項1又は2記載の焼き菓子練り込み用油中水型乳化物。
【請求項4】
さらにプロピレングリコール脂肪酸エステルを含有する、請求項1〜3の何れか一項記載の焼き菓子練り込み用油中水型乳化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カロリーを抑えながらも従来と同等の食感の焼き菓子を作ることのできる製菓練り込み用油中水型乳化物に関する。
【背景技術】
【0002】
飽食の潮流の中で、カロリーの過剰摂取が欧米を中心に大きな問題となっている。日本においても食生活の欧米化と共に油脂の摂取量が増加し、同様の問題が指摘されている。油脂は単位重量当たりのカロリー価が高く(9kcal/g)、カロリーの摂取量を抑える上で油脂の摂取量を低減することは不可欠である。また、油脂の過剰摂取は肥満、高脂血症、心臓病、大腸ガン等の一因ともなるため、生活習慣病予防の観点からも注意を払う必要があるとされる。
【0003】
しかし、食品の美味しさと油脂成分(以下、油分ともいう)は密接に関わっており、油分を低減すると食品の美味しさを大きく損なう場合も多い。特に、油分が焼成前生地の20質量%前後を占めるクッキーやビスケットといった焼き菓子では、良好な風味や口溶け、また特にサクサクとした食感を引き出すには相当量の油分が不可欠とされている。
【0004】
これは、油脂が小麦粉のグルテン形成を妨げて生地をもろく仕上げる特性(ショートニング性)を有するためであり、油脂を減じた場合、グルテンが必要以上に形成され、その結果、焼き菓子は歯切れの悪いものとなってしまう。
【0005】
このような「油分の吸収、カロリーを低減」と「美味しさの維持」という、いわば相反する課題をいかにして解決していくのか、食品の大きなテーマであり、課題を解決すべくこれまでにも様々なアプローチで検討が行われている。
【0006】
例えば、トリグリセリドの一部をジグリセリドに置き換える方法(特許文献1参照)、特定のトリグリセリドを使用することで、体内での吸収を抑える方法(特許文献2及び3参照)、油脂以外の成分を含有させることで、体内での吸収を抑える方法(特許文献4及び5参照)が挙げられる。
【0007】
上記のトリグリセリドの一部をジグリセリドに置き換える方法は、1、3-ジグリセリドが小腸上皮細胞でのトリグリセリド再合成を抑制することで低カロリー化しているものである。しかし、ジグリセリドは乳化剤として利用されることも多いことからも推測されるように、風味はトリグリセリドとは異なるものであり、やや苦味や雑味が強いという面もあり、本来の食品の風味を損なう場合があった。
【0008】
また、上記の特定のトリグリセリドを使用する方法では、天然に存在しない油脂を利用する場合が多く、コストが非常に高いものとなってしまう上、油脂の物性が制約されてしまい、用途によっては適用できない場合があった。
【0009】
さらに、これらのジグリセリドや特定のトリグリセリドを使用する方法は、それら自体のカロリーは従来の油脂と同一に扱われるために低カロリー食品を得ることはできない、という問題もある。
【0010】
また、上記の油脂以外の成分を含有させることで、体内での吸収を抑える方法では、本来必要のない成分を加えるため、異味・雑味が生じることが多く、食品の美味しさを達成する上で満足できるものではなかった。
【0011】
一方、油脂と相当量の澱粉類を組み合わせた油脂組成物が報告されている(例えば特許文献6及び7参照)。しかし、これらの発明は製パン用に限定されており、その目的が製菓用とは全く逆に、グルテンの強化を目的としている。尚、パンのソフト化のためには絶対量としての油分が必要であることから油分を通常よりも低く抑えた場合は、最終製品の品質、特にソフト性を維持することはできず、そのため、低カロリー食品を得ることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−336471号公報
【特許文献2】特表平6−506106号公報
【特許文献3】特開2004−156046号公報
【特許文献4】WO2006/009259号パンフレット
【特許文献5】特開2001−122778号公報
【特許文献6】特開平08−196198号公報
【特許文献7】特開平08−224057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、油分の量を減じた場合であっても、サクい食感、風味及び口溶けが良好な焼き菓子を得ることが可能である製菓用油脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は上記課題を解決するには、求められる風味や食感に応じて適切な素材を選択することで、油分を低減できるのではないかと考えた。そして課題を解決すべく種々検討を重ねた結果、クッキーやビスケットといった製菓用途では、従来油分の高いマーガリンやショートニングを使用し、油脂組成に特徴を持たせることで良好な風味、口溶け、さらにサクい食感を達成していたところ、意外にも特定の澱粉類と乳化剤を併用した油中水型乳化物を使用した場合、油分を大きく減じた場合であっても従来と同等の焼き菓子が得られることを知見した。本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。
【0015】
即ち、本発明は、架橋澱粉を10〜30質量%、有機酸モノグリセリドを0.1〜4質量%含有し、油分が25〜70質量%であることを特徴とする焼き菓子練り込み用油中水型乳化物を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製菓練り込み用油中水型乳化物によれば、油分の量を減じた場合であっても、サクい食感、風味及び口溶けが良好な焼き菓子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の製菓練り込み用油中水型乳化物について好ましい実施形態に基づき詳述する。
【0018】
本発明の製菓練り込み用油中水型乳化物は、加工澱粉を10〜30質量%、有機酸モノグリセリドを0.1〜4質量%含有し、油分が25〜70質量%であることを特徴とする。
【0019】
先ず、上記加工澱粉について説明する。
本発明の製菓練り込み用油中水型乳化物は、加工澱粉を乳化物基準で10〜30質量%、好ましくは12〜28質量%、より好ましくは15〜25質量%含有する。加工澱粉が10質量%よりも少ないと、本発明の効果が得られない。また、30質量%よりも多いと、最終的に得られる焼き菓子が粉っぽい食感となってしまう。
【0020】
上記加工澱粉としては、澱粉を酸又はアルカリで処理したもの、架橋処理や乳化剤処理、アセチル化、ヒドロキシプロピルエーテル化等の化学的処理をしたもの、湿熱処理等の物理的処理をしたもの、アミラーゼ等による酵素処理したもの、レジスタントスターチ等種々のものが挙げられる。加工澱粉の原料となる澱粉としては特に限定されるものではなく、例えば馬鈴薯澱粉、タピオカ、コーンスターチ等が挙げられる。
【0021】
本発明では上記加工澱粉の中でも架橋澱粉を使用することが、油分を減じない場合に比べて、より同等の食感が得られる点で好ましい。
【0022】
上記架橋澱粉としては、多官能基を2箇所以上の水酸基に結合させた澱粉誘導体であれば、原料は特に限定されるものではなく、また、単なる架橋反応の他、アセチル化と架橋反応、エーテル化と架橋反応の組み合わせて得られたものでも構わない。
【0023】
次に、上記有機酸モノグリセリドについて説明する。
本発明の油中水型乳化物は、有機酸モノグリセリドを乳化物基準で0.1〜4質量%、好ましくは0.15〜3.7質量%、より好ましくは0.2〜3.5質量%、最も好ましくは0.3〜3質量%含有する。0.1質量%よりも少ないと最終的に得られる焼き菓子はガリガリとした硬い食感となってしまい、4質量%よりも多いとエグ味が生じ風味の悪いものとなるだけでなく、口溶けの悪いものとなってしまう。
【0024】
本発明で使用する有機酸モノグリセリドは、グリセリン1分子に対し脂肪酸1分子と有機酸1分子が結合した構造を有し、一般的には、有機酸の酸無水物と脂肪酸モノグリセリドを反応させることにより得られるものである。
【0025】
上記の有機酸としては、例えば、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。これらの中では、食品用途に使用されるコハク酸、クエン酸、ジアセチル酒石酸が好ましく、特にコハク酸が好ましい。上記の脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸等の炭素数8〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸が挙げられる。これらの中では、風味の観点から、パルミチン酸、ステアリン酸を主成分とする脂肪酸が好ましい。
【0026】
本発明の油中水型乳化物は、上記有機酸モノグリセリドに加え、プロピレングリコール脂肪酸エステルを好ましくは0.01〜1.5質量%、より好ましくは0.1〜0.75質量%含有する。有機酸モノグリセリドと上記プロピレングリコール脂肪酸エステルを併用することで、本発明の効果をより引き出すことができる。
【0027】
上記プロピレングリコール脂肪酸エステルとは、プロピレングリコールと脂肪酸とのモノ、ジエステル、又はこれらの混合物であって、好ましくはHLBが2〜6、より好ましくは3〜5のものである。本発明では、モノエステル含量が好ましくは40〜100%、より好ましくは50〜100%、さらに好ましくは60〜100%のものを使用する。
【0028】
また本発明では、上記プロピレングリコール脂肪酸エステルの結合脂肪酸は、好ましくは炭素数12〜24の飽和脂肪酸、より好ましくは炭素数16〜22の飽和脂肪酸、さらに好ましくは炭素数18〜22の飽和脂肪酸を使用する。
【0029】
次に、本発明の油中水型乳化物に使用する油脂について説明する。
本発明の油中水型乳化物で用いることができる油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、落花生油、カポック油、胡麻油、月見草油、カカオ脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明はこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0030】
本発明の油中水型乳化物における油分は、25〜70質量%であり、好ましくは30〜65質量%、より好ましくは35〜63質量%、最も好ましくは40〜60質量%である。本発明において、油分が25質量%よりも少ないと油中水型の乳化物が不安定となってしまう。一方、油分が70質量%よりも大きくなると、本発明の目的である低カロリー化を達成できなくなる。尚、上記油分には上記油脂の他、油溶性の乳化剤やその他原料に由来する油脂を含むものとする。
【0031】
本発明の油中水型乳化物における水分は、好ましくは10〜30質量%、より好ましくは13〜27質量%、最も好ましくは15〜25質量%である。本発明において、水分が10質量%よりも少ないと、加工澱粉の効果を十分に引き出すことができない場合があり、一方、水分が30質量%よりも大きくなると、油中水型の乳化物が不安定となってしまう。尚、上記水分には上記加工澱粉、後述するその他の成分等に由来する水分も算入するものとする。
【0032】
本発明の油中水型乳化物は、本発明の効果を妨げない範囲において、必要に応じてその他の成分を含有することができる。その他の成分としては、上記有機酸モノグリセリド及びプロピレングリコール脂肪酸エステル以外の乳化剤、糖類・甘味料、蛋白質、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、CMC、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン等の増粘安定剤、上記加工澱粉以外の澱粉類、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、アミラーゼ、プロテアーゼ、アミログルコシダーゼ、プルラナーゼ、ペントサナーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、ホスフォリパーゼ、カタラーゼ、リポキシゲナーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、スルフィドリルオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ等の酵素、β―カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料類、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、調味料、アミノ酸、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、コーヒー、紅茶、緑茶、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、着香料等が挙げられる。
【0033】
上記有機酸モノグリセリド及びプロピレングリコール脂肪酸エステル以外の乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等が挙げられる。
【0034】
上記糖類としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、はちみつ、オリゴ糖、ポリデキストロース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、還元乳糖、ソルビトール、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、トレハロース等が挙げられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0035】
上記甘味料としては、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、ソーマチン、サッカリン等が挙げられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0036】
上記蛋白質としては、特に限定されないが、例えば、ホエイ蛋白質、カゼイン蛋白質、その他の乳蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質、ホスビチン、リベチン、リン糖蛋白質、オボアルブミン、コンアルブミン、オボムコイド等の卵蛋白質、グリアジン、グルテニン、プロラミン、グルテリン等の小麦蛋白質、その他動物性及び植物性蛋白質等の蛋白質が挙げられる。これらの蛋白質は、目的に応じて一種ないし二種以上の蛋白質として、或いは一種ないし二種以上の蛋白質を含有する食品素材の形で添加してもよい。
【0037】
次に、本発明の油中水型乳化物の好ましい製造方法について以下に説明する。
先ず、油脂に、有機酸モノグリセリド、必要によりその他の成分を添加し、溶解した油相を用意する。一方、水に、必要によりその他の成分を添加し、溶解した水相を用意する。尚、加工澱粉については油相に添加しても、また水相に添加してもよいが、架橋澱粉等の冷水不溶性の加工澱粉を使用する場合は、水相中に均質に分散させることが可能な点で、油相中に分散させることが好ましい。ついで、該油相と、該水相とを混合し、乳化して、油中水型乳化物とする。
【0038】
上記の油相と水相との質量比率(前者:後者)は、好ましくは25〜71:75〜29、より好ましくは30〜66:70〜34、更に好ましくは35〜63:65〜37である。本発明において油相が25質量%よりも少なく水相が75質量%よりも多いと乳化が不安定となってしまう。また、油相が71質量%よりも多く、水相が29質量%よりも少ないと、本発明の目的である低カロリーを達成することができない。尚、上記加工澱粉については、混合、乳化後は水相に存在するため、加工澱粉含量は加工澱粉を油相に分散させて製造する場合であっても水相として算入するものとする。
【0039】
上記の油中水型乳化物は殺菌処理するのが望ましい。殺菌方式は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続方式でも構わない。また殺菌温度は好ましくは80〜100℃、更に好ましくは80〜95℃、最も好ましくは80〜90℃とする。その後、必要により油脂結晶が析出しない程度に予備冷却を行なう。予備冷却の温度は好ましくは40〜60℃、更に好ましくは40〜55℃、最も好ましくは40〜50℃とする。
【0040】
次に急冷可塑化を行なうことが好ましい。この急冷可塑化を行う装置としては、ゴンビネーター、ボテーター、パーフェクター、ケムテーター等の密閉型連続式掻き取りチューブラー冷却機(Aユニット)、プレート型熱交換機等が挙げられ、また開放型冷却機のダイヤクーラーとコンプレクターを組み合わせが挙げられる。この急冷可塑化を行なうことにより、可塑性を有する油中水型乳化物となる。
これらの装置の後に、ピンマシン等の捏和装置(Bユニット)やレスティングチューブ、ホールディングチューブを使用してもよい。
上記の油中水型乳化物の製造工程において、窒素、空気等を含気させても、含気させなくても構わない。
【0041】
本発明の油中水型乳化物は、製菓練り込み用途として用いられるが、特に好ましくは焼き菓子の製造の際に練り込み用油脂として使用する。
【0042】
次に、本発明の焼き菓子生地について述べる。
本発明の焼き菓子生地は、本発明の製菓練り込み用油中水型乳化物を練込用油脂として含有する焼き菓子生地である。
【0043】
上記焼き菓子生地としては、例えば、スナックカステラ生地、バターケーキ生地、サンドケーキ生地、ビスケット生地、クッキー生地、クラッカー生地、サブレ生地、マカロン生地等が挙げられる。
【0044】
焼き菓子生地の製造方法としては、一般的な焼き菓子生地の製造方法と同様であり、例えば、本発明の油中水型乳化物に糖類を加えてクリーミングし、ここに、卵類、乳等を配合して混合後、小麦粉を軽く混合して製造されるシュガーバッター法や、本発明の油中水型乳化物に小麦粉を加えてクリーミングし、ここに、糖類、卵類、乳等を配合、混合して製造されるフラワーバッター法、あるいは、オールインミックス法、卵白別立て法等によって得ることができる。
【0045】
これらの上記焼き菓子生地における本発明の油中水型乳化物の使用量は、一般的なショートニングやマーガリンを使用する場合と同様であり、従来使用していたショートニングやマーガリンの一部又は全部、好ましくは全部を、本発明の油中水型乳化物に置き換えることができる。すなわち、本発明の油中水型乳化物の使用量は、焼き菓子生地中の好ましくは1〜60%、より好ましくは5〜50%である。
【0046】
最後に、本発明の焼き菓子について述べる。
本発明の焼き菓子は、本発明の焼き菓子生地を焼成して得られるものである。
上記焼き菓子としては、例えば、スナックカステラ、バターケーキ、サンドケーキ、ビスケット、クッキー、クラッカー、サブレ、マカロン等が挙げられる。中でも、本発明の焼き菓子は、焼成後の水分が0.01〜10質量%となる焼き菓子であることが好ましく、より好ましくは0.1〜8質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
得られた焼き菓子は、表面がべたつくことがないため、通常通り、包装、流通することができる。
【実施例】
【0047】
以下に実施例、比較例及び参考例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0048】
実施例1〜10は、本発明の油中水型乳化物並びにこれを用いた本発明の焼き菓子生地及び焼き菓子の実施例を示し、比較例1は、加工澱粉の配合量が本発明の範囲外である油中水型乳化物を用いた比較例を示し、比較例2は、加工澱粉の代わりに通常の澱粉を用いた油中水型乳化物を用いた比較例を示し、比較例3は、有機酸モノグリセリド以外の乳化剤のみを用いた油中水型乳化物を用いた比較例を示す。また、参考例1は、ショートニングタイプの可塑性油脂組成物を用いた参考例であり、油分の量を減じていない従来品に対応するものである。
【0049】
〔実施例1〕
パーム油とナタネ油を9:1の質量比で混合した配合油60質量部にコハク酸ステアリン酸モノグリセリド1質量部、プロピレングリコール脂肪酸エステル0.3質量部を添加、65℃に加温溶解した後、馬鈴薯由来のリン酸架橋澱粉20質量部を分散させた油相を得た。この油相へ、水18.7質量部のみからなる水相を加え、撹拌乳化後、急冷可塑化し、本発明の油中水型乳化物Aを得た。
【0050】
<クッキーの製造>
得られた油中水型乳化物Aを用いて、次の配合及び製法によりワイヤーカットクッキーを製造した。
【0051】
(配合)
薄力粉100質量部、砂糖40質量部、全卵(正味)15質量部、食塩1質量部、重炭安1質量部、重曹1質量部、水16.7質量部、油中水型乳化物46質量部
(製法)
卓上ミキサー(ケンウッドミキサー)に油中水型乳化物A及び砂糖を投入し、軽く混合した後、最高速で7分クリーミングした。次いで、あらかじめ全卵、水、食塩及び重炭安を混合した水相を少しずつ加えて攪拌・混合した(比重:0.9)。さらに薄力粉及び重曹を加えた後、低速で1分混合して本発明の焼き菓子生地であるワイヤーカットクッキー生地Aを得た。得られたワイヤーカットクッキー生地Aを、厚さ4ミリ、直径4センチの丸型にワイヤーカット成型し、オーブン(フジサワ社製)で180℃にて10分焼成した後、25℃で40分冷却し、包装した。
【0052】
得られた本発明の焼き菓子であるワイヤーカットクッキーAは、10人のパネラーにより下記[評価基準]に従って官能評価をさせ、10人のパネラーの合計点を評価点数とし、結果を下記のようにして〔表1〕に示した。
41〜50点:◎+、31〜40点:◎、21〜30点:○、11〜20点:△、0〜10点:×
[評価基準]
・ 食感
5点 …非常にサクサクした食感で、歯切れも良好である。
3点 …サクサクした食感で、歯切れも良好である。
1点…やや硬い食感で、歯切れが悪い。
0点…硬い食感で、歯切れが悪い。
・風味
5点…非常に風味が良い。
3点…風味が良い。
1点…やや風味が乏しく、わずかな雑味が感じられる。
0点…風味が乏しく、雑味が感じられる。
・口溶け
5点…非常に口溶けが良い。
3点…口溶けが良い。
1点…口溶けが悪い。
0点…非常に口溶けが悪い。
【0053】
〔実施例2〕
馬鈴薯由来のリン酸架橋澱粉を15質量部、コハク酸ステアリン酸モノグリセリドを2質量部、水を22.7質量部に変更した以外は実施例1と同様の配合・製法で、本発明の油中水型乳化物Bを得た。
続いて、油中水型乳化物Aに代えて油中水型乳化物Bを使用し、水を14.9質量部とした以外、実施例1と同様の方法で、本発明の焼き菓子生地であるワイヤーカットクッキー生地B及び本発明の焼き菓子であるワイヤーカットクッキーBを製造し、評価を行った。評価結果は〔表1〕に示す。
【0054】
〔実施例3〕
コハク酸ステアリン酸モノグリセリドを0.5質量部、プロピレングリコール脂肪酸エステルを0.6質量部、水を18.9質量部に変更した以外は実施例1と同様の配合・製法で、本発明の油中水型乳化物Cを得た。
続いて、油中水型乳化物Aに代えて油中水型乳化物Cを使用し、水を16.6質量部とした以外、実施例1と同様の方法で、本発明の焼き菓子生地であるワイヤーカットクッキー生地C及び本発明の焼き菓子であるワイヤーカットクッキーCを製造し、評価を行った。評価結果は〔表1〕に示す。
【0055】
〔実施例4〕
コハク酸ステアリン酸モノグリセリドを2.8質量部、プロピレングリコール脂肪酸エステルを0.6質量部、水を16.6質量部に変更した以外は実施例1と同様の配合・製法で、本発明の油中水型乳化物Dを得た。
続いて、油中水型乳化物Aに代えて油中水型乳化物Dを使用し、水を17.7質量部とした以外、実施例1と同様の方法で、本発明の焼き菓子生地であるワイヤーカットクッキー生地D及び本発明の焼き菓子であるワイヤーカットクッキーDを製造し、評価を行った。評価結果は〔表1〕に示す。
【0056】
〔実施例5〕
コハク酸ステアリン酸モノグリセリドを0.2質量部、プロピレングリコール脂肪酸エステルを0.6質量部、水を19.2質量部に変更した以外は実施例1と同様の配合・製法で、本発明の油中水型乳化物Eを得た。
続いて、油中水型乳化物Aに代えて油中水型乳化物Eを使用し、水を16.5質量部とした以外、実施例1と同様の方法で、本発明の焼き菓子生地であるワイヤーカットクッキー生地E及び本発明の焼き菓子であるワイヤーカットクッキーEを製造し、評価を行った。評価結果は〔表1〕に示す。
【0057】
〔実施例6〕
コハク酸ステアリン酸モノグリセリドを0.5質量部、プロピレングリコール脂肪酸エステルを0質量部、水を19.5質量部に変更した以外は実施例1と同様の配合・製法で、本発明の油中水型乳化物Fを得た。
続いて、油中水型乳化物Aに代えて油中水型乳化物Fを使用し、水を16.4質量部とした以外、実施例1と同様の方法で、本発明の焼き菓子生地であるワイヤーカットクッキー生地F及び本発明の焼き菓子であるワイヤーカットクッキーFを製造し、評価を行った。評価結果は〔表1〕に示す。
【0058】
〔実施例7〕
馬鈴薯由来のリン酸架橋澱粉20質量部を馬鈴薯由来の酸化澱粉20質量部に変更し、コハク酸ステアリン酸モノグリセリドを2質量部、プロピレングリコール脂肪酸エステルを0.6質量部、水を17.4質量部に変更した以外は実施例1と同様の配合・製法で、本発明の油中水型乳化物Gを得た。
続いて、油中水型乳化物Aに代えて油中水型乳化物Gを使用し、水を17.3質量部とした以外、実施例1と同様の方法で、本発明の焼き菓子生地であるワイヤーカットクッキー生地G及び本発明の焼き菓子であるワイヤーカットクッキーGを製造し、評価を行った。評価結果は〔表1〕に示す。
【0059】
〔実施例8〕
馬鈴薯由来のリン酸架橋澱粉を12質量部、コハク酸ステアリン酸モノグリセリドを2質量部、プロピレングリコール脂肪酸エステルを0.6質量部、水を25.4質量部に変更した以外は実施例1と同様の配合・製法で、本発明の油中水型乳化物Hを得た。
続いて、油中水型乳化物Aに代えて油中水型乳化物Hを使用し、水を13.7質量部とした以外、実施例1と同様の方法で、本発明の焼き菓子生地であるワイヤーカットクッキー生地H及び本発明の焼き菓子であるワイヤーカットクッキーHを製造し、評価を行った。評価結果は〔表1〕に示す。
【0060】
〔実施例9〕
コハク酸ステアリン酸モノグリセリド1質量部をジアセチル酒石酸モノグリセリドを2質量部に変更し、プロピレングリコール脂肪酸エステルを0.6質量部、水を17.4質量部に変更した以外は実施例1と同様の配合・製法で、本発明の油中水型乳化物Iを得た

続いて、油中水型乳化物Aに代えて油中水型乳化物Iを使用し、水を17.3質量部と
した以外、実施例1と同様の方法で、本発明の焼き菓子生地であるワイヤーカットクッキー生地I及び本発明の焼き菓子であるワイヤーカットクッキーIを製造し、評価を行った
。評価結果は〔表1〕に示す。
【0061】
〔実施例10〕
パーム油とナタネ油を9:1の質量比で混合した配合油50質量部にコハク酸ステアリン酸モノグリセリド2質量部、プロピレングリコール脂肪酸エステル0.6質量部を添加、65℃に加温溶解した後、馬鈴薯由来のリン酸架橋澱粉28質量部を分散させた油相を得た。
この油相へ、水19.4質量部のみからなる水相を加え、撹拌乳化後、急冷可塑化し、本発明の油中水型乳化物Jを得た。
続いて、油中水型乳化物Aに代えて油中水型乳化物Jを使用し、水を16.4質量部とした以外、実施例1と同様の方法で本発明の焼き菓子生地であるワイヤーカットクッキー生地J及び本発明の焼き菓子であるワイヤーカットクッキーJを製造し、評価を行った。評価結果は〔表1〕に示す。
【0062】
〔比較例1〕
パーム油とナタネ油を9:1の質量比で混合した配合油65質量部にコハク酸ステアリン酸モノグリセリド0.5質量部、プロピレングリコール脂肪酸エステル0.5質量部を添加、65℃に加温溶解した後、馬鈴薯由来のリン酸架橋澱粉5質量部を分散させ油相を得た。
この油相へ、水29質量部のみからなる水相を加え、撹拌乳化後、急冷可塑化し、油中水型乳化物Kを得た。
続いて、油中水型乳化物Aに代えて油中水型乳化物Kを使用し、水を12質量部とした以外、実施例1と同様の方法で、ワイヤーカットクッキー生地K及びワイヤーカットクッキーKを製造し、評価を行った。評価結果は〔表1〕に示す。
【0063】
〔比較例2〕
パーム油とナタネ油を9:1の質量比で混合した配合油60質量部にコハク酸ステアリン酸モノグリセリド0.5質量部、プロピレングリコール脂肪酸エステル0.5質量部を添加、65℃に加温溶解した後、馬鈴薯澱粉20質量部を分散させ油相を得た。
この油相へ、水19質量部のみからなる水相を加え、撹拌乳化後、急冷可塑化し、油中水型乳化物Lを得た。
続いて、油中水型乳化物Aに代えて油中水型乳化物Lを使用し、水を16.6質量部とした以外、実施例1と同様の方法で、ワイヤーカットクッキーを製造し、評価を行った。評価結果は〔表1〕に示す。
【0064】
〔比較例3〕
パーム油とナタネ油を9:1の質量比で混合した配合油60質量部にプロピレングリコール脂肪酸エステル0.6質量部、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル0.5質量部を添加、65℃に加温溶解した後、馬鈴薯由来のリン酸架橋澱粉20質量部を分散させ油相を得た。
この油相へ、水18.9質量部のみからなる水相を加え、撹拌乳化後、急冷可塑化し、油中水型乳化物Mを得た。
続いて、油中水型乳化物Aに代えて油中水型乳化物Mを使用し、水を16.6質量部とした以外、実施例1と同様の方法で、ワイヤーカットクッキー生地M及びワイヤーカットクッキーMを製造し、評価を行った。評価結果は〔表1〕に示す。
【0065】
〔参考例1〕
パームオレインのランダムエステル交換油52質量部、パームステアリン13質量部、ナタネ油35質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの可塑性油脂組成物Nを得た。
続いて、油中水型乳化物Aに代えてショートニングタイプの可塑性油脂組成物Nを使用し、水を25.3質量部とした以外、実施例1と同様の方法で、ワイヤーカットクッキー生地N及びワイヤーカットクッキーNを製造し、評価を行った。評価結果は〔表1〕に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
上記〔表1〕の結果から明らかなように、本発明の油中水型乳化物を用いた実施例1〜10の焼き菓子は、油分の量を減じているのにもかかわらず、油分の量を減じていない従来の焼き菓子(参考例1)と同等のサクい食感、風味及び口溶けが得られた。
これに対し、加工澱粉の配合量が本発明の範囲外である油中水型乳化物を用いた場合(比較例1)や、加工澱粉の代わりに通常の澱粉を用いた油中水型乳化物を用いた場合(比較例2)、有機酸モノグリセリド以外の乳化剤のみを用いた油中水型乳化物を用いた場合(比較例3)には、食感、風味及び口溶けが不十分であった。