【実施例】
【0024】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明する。尚、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0025】
実施例1
1cm角のシリコン基板上に、5〜15nmの粒度分布及び100ppmの金属不純物を有する水素添加ナノダイヤモンド(日本化薬製 Ustalla TypeC)の0.5%エタノール分散液を滴下塗布・乾燥し、水素添加ナノダイヤモンド塗布基板を得た。ついで塗布基板を加熱炉に設置し大気中600℃で15分加熱処理して0.5〜4nmの水素添加ナノダイヤモンド成長核を得た。その成長核の原子間力顕微鏡(AFM)の測定結果を
図2に示す。
図1bで示される多温条件対応のCVD装置に基板を設置し、上流温度850℃、基板周辺温度780℃、圧力500Paの条件下エタノール8sccm/アセチレン(アルゴンで2%に希釈されたもの)8sccm/アルゴン・水素キャリア4sccmからなるガスを30分流して単層カーボンナノチューブを得た。このようにして得られた単層カーボンナノチューブのSEM像を
図3に示す。また、SEM−EDSで金属由来の不純物は検出できず金属フリーの単層カーボンナノチューブが生成したことが判った。更に、ラマン分光器を用いてカーボンナノチューブ起因のGバンドとSi起因のSiバンドの強度比(I(G)/I(Si)比))を比較したところ1.1(
図4)という高い値が得られ、高効率(高収率)で単層カーボンナノチューブが生成していることが示された。また、I(G)/I(D)比から、後述する比較例2の未処理品に比べて高品質の単層カーボンナノチューブが得られたことが判った。
【0026】
比較例1
次に、高純度と謳われている市販の単層カーボンナノチューブをSEM−EDSで観察したところコバルト、モリブデンそしてシリコンが検出された(
図5)。
【0027】
比較例2
1cm角のシリコン基板上に、5〜10nmの粒度分布及び23000ppmの金属不純物を有する水素添加ナノダイヤモンドの0.5%エタノール分散液を滴下塗布・乾燥し、水素添加ナノダイヤモンド塗布基板を得た。ついで塗布基板を加熱炉に設置し大気中600℃で15分加熱処理して0.5〜4nmの水素添加ナノダイヤモンド成長核を得た。
図1bで示される多温条件対応のCVD装置に基板を設置し、上流温度850℃、基板周辺温度780℃、圧力500Paの条件下エタノール8sccm/アセチレン(アルゴンで2%に希釈されたもの)8sccm/アルゴン・水素キャリア4sccmからなるガスを30分流して単層カーボンナノチューブを得た。このようにして得られた単層カーボンナノチューブのラマンスペクトルを
図6に示す。I(G)/I(Si)比から高効率で単層カーボンナノチューブが生成していることが判るが、SEM−EDSでジルコニウム由来の不純物が検出された。
【0028】
比較例3
1cm角のシリコン基板上に、5〜10nmの粒度分布及び100ppmの金属不純物を有する水素添加ナノダイヤモンドの0.5%エタノール分散液を滴下塗布・乾燥し、水素添加ナノダイヤモンド塗布基板を得た。ついで装置
図1bで示される多温条件対応のCVD装置に基板を設置し、上流温度850℃、基板周辺温度780℃、圧力500Paの条件下エタノール8sccm/アセチレン(アルゴンで2%に希釈されたもの)8sccm/アルゴン・水素キャリア4sccmからなるガスを30分流して単層カーボンナノチューブ(
図7のSEM像)が得られたが、単層カーボンナノチューブのラマンスペクトル(
図8)のGバンド、DバンドのI(G)/I(D)比から明らかなように構造に欠陥を有する低品質な単層カーボンナノチューブであった。
【0029】
実施例2(エタノールとアセチレン比の検討)
1cm角のシリコン基板上に、5〜10nmの粒度分布及び100ppmの金属不純物を有する水素添加ナノダイヤモンドの0.5%エタノール分散液を滴下塗布・乾燥し、水素添加ナノダイヤモンド塗布基板を得た。ついで塗布基板を加熱炉に設置し大気中600℃で10分加熱処理して0.5〜4nmの水素添加ナノダイヤモンド成長核を得た。
図1aで示される定温条件対応のCVD装置に基板を設置し、系内温度780℃、圧力250Paの条件下エタノール0sccm、アセチレン(アルゴンで2%に希釈されたもの)20sccm、アルゴン・水素キャリア0sccmからなるガスを30分流して単層カーボンナノチューブを得た。このようにして得られた単層カーボンナノチューブのSEM像を
図9に示す。また、ラマン分光器を用いてカーボンナノチューブ起因のGバンドとSi起因のSiバンドの強度比(I(G)/I(Si)比)を比較したところ1.0という高い値が得られ(
図10)、高効率(高収率)で単層カーボンナノチューブが生成していることが示された。
【0030】
比較例4
1cm角のシリコン基板上に、5〜10nmの粒度分布及び100ppmの金属不純物を有する水素添加ナノダイヤモンドの0.5%エタノール分散液を滴下塗布・乾燥し、水素添加ナノダイヤモンド塗布基板を得た。ついで塗布基板を加熱炉に設置し大気中600℃で10分加熱処理して0.5〜4nmの水素添加ナノダイヤモンド成長核を得た。
図1aで示される定温条件対応のCVD装置に基板を設置し、系内温度780℃、圧力250Paの条件下エタノール20sccm、アセチレン0sccm、アルゴン・水素キャリア0sccmからなるガスを30分流して単層カーボンナノチューブを得た。このようにして得られた単層カーボンナノチューブのSEM像を
図11に示す。また、ラマン分光器を用いてカーボンナノチューブ起因のGバンドとSi起因のSiバンドの強度比(I(G)/I(Si)比)(
図12)を比較したところ0.15と低効率(低収率)であった。
【0031】
実施例3
1cm角のシリコン基板上に、5〜10nmの粒度分布及び100ppmの金属不純物を有する水素添加ナノダイヤモンドの0.5%エタノール分散液を滴下塗布・乾燥し、水素添加ナノダイヤモンド塗布基板を得た。ついで塗布基板を加熱炉に設置し、大気中600℃で10分加熱処理して0.5〜4nmの水素添加ナノダイヤモンド成長核を得た。
図1bで示される多温条件対応のCVD装置に基板を設置し、上流温度850℃、基板周辺温度780℃、圧力250Paの条件下エタノール0sccm/アセチレン(アルゴンで2%に希釈されたもの)20sccm/アルゴン・水素キャリア0sccmからなるガスを30分流して単層カーボンナノチューブを得た。このようにして得られた単層カーボンナノチューブのSEM像を
図13に示す。また、ラマン分光器を用いてカーボンナノチューブ起因のGバンドとSi起因のSiバンドの強度比I(G)/I(Si)比で3.7(
図14)という高い値が得られ、高効率(高収率)で単層カーボンナノチューブが生成していることが示された。また、I(G)/I(D)比も11であり、高品質の単層カーボンナノチューブが得られたことが示される。
【0032】
比較例5
1cm角のシリコン基板上に、5〜10nmの粒度分布及び100ppmの金属不純物を有する水素添加ナノダイヤモンドの0.5%エタノール分散液を滴下塗布・乾燥し、水素添加ナノダイヤモンド塗布基板を得た。ついで塗布基板を加熱炉に設置し、大気中600℃で10分加熱処理して0.5〜4nmの水素添加ナノダイヤモンド成長核を得た。
図1bで示される多温条件対応のCVD装置に基板を設置し、上流温度850℃、基板周辺温度780℃、圧力250Paの条件下エタノール1sccm、アセチレン0sccm、アルゴン・水素キャリア19sccmからなるガスを30分流して単層カーボンナノチューブを得た。このようにして得られた単層カーボンナノチューブのSEM像を
図15に示す。また、ラマン分光器からI(G)/I(D)比が=60と高品質の単層カーボンナノチューブが得られたものの、I(G)/I(Si)比は0.11(
図16)であり、低収率(低効率)でしか単層カーボンナノチューブは得られなかった。
【0033】
実施例4
1cm角の水晶基板上に、5〜10nmの粒度分布及び100ppmの金属不純物を有する水素添加ナノダイヤモンドの0.5%エタノール分散液を滴下塗布・乾燥し、水素添加ナノダイヤモンド塗布基板を得た。ついで塗布基板を加熱炉に設置し、大気中600℃で10分加熱処理して0.5〜4nmの水素添加ナノダイヤモンド成長核を得た。装置
図1bで示される多温条件対応のCVD装置に基板を設置し、上流温度850℃、基板周辺温度780℃、圧力250Paの条件下エタノール4sccm、アセチレン(アルゴンで2%に希釈されたもの)12sccm、アルゴン/水素キャリア4sccmからなるガスを30分流して単層カーボンナノチューブを得た。このようにして得られた単層カーボンナノチューブを、ラマン分光器を用いて評価したところI(G)/I(Subst.)比は3.2と高く、且つI(G)/I(D)比も24と高い値(
図17)が得られた。これらの値から高収率(高効率)且つ高品質の単層カーボンナノチューブが得られたことが示される。こうして得た単層カーボンナノチューブ膜の透過率は97%以上、表面抵抗値が9.44×10
3Ω/□だった。
【0034】
比較例6
1cm角の水晶基板上に、コバルトを蒸着し0.1nmの成長核となるCo基板を得た。この基板を加熱炉中で大気中600℃で10分加熱処理する。ついで
図1bで示される定温条件対応のCVD装置に基板を設置し、系内温度750℃、圧力340Paの条件下エタノール8sccm、アセチレン0sccm、アルゴン・水素キャリア17sccmからなるガスを30分流して単層カーボンナノチューブを得た。また、上記条件での効率と品質を確認するため、Si基板と同条件で単層カーボンナノチューブの合成を行い、得られた単層カーボンナノチューブをラマン分光器を用いて評価したところI(G)/I(Subst.)比は5.1と高く且つI(G)/I(D)比も21(
図18)であり、実施例4とほぼ同等の高収率(高効率)且つ高品質の単層カーボンナノチューブが得られた。しかし、透明導電膜としての性能を評価したところ、膜透過率が97%、表面抵抗値が4.42×10
6Ω/□であった。CNT品質・生成効率としては同等であるにも拘らず実施例4に比し表面抵抗値が劣っていた。
【0035】
実施例5
1cm角の水晶基板上に、5〜10nmの粒度分布及び100ppmの金属不純物を有する水素添加ナノダイヤモンドの0.5%エタノール分散液を滴下塗布・乾燥し、水素添加ナノダイヤモンド塗布基板を得た。ついで塗布基板を加熱炉に設置し、大気中600℃で10分加熱処理して0.5〜4nmの水素添加ナノダイヤモンド成長核を得た。装置
図1bで示される多温条件対応のCVD装置に基板を設置し、上流温度850℃、基板周辺温度780℃、圧力500Paの条件下エタノール1sccm、アセチレン(アルゴンで2%に希釈されたもの)9sccm、アルゴン/水素キャリア10sccmからなるガスを15分間流し単層カーボンナノチューブを得た。このようにして得られた単層カーボンナノチューブを、ラマン分光器を用いて評価したところI(G)/I(Si)比は0.20であり、且つI(G)/I(D)比は10であった(
図19)。これらの値から高収率(高効率)且つ高品質の単層カーボンナノチューブが得られたことが示される。
【0036】
実施例6
実施例5と同様の方法、同様の条件にて多温条件対応のCVD装置に基板を設置し、上流温度850℃、基板周辺温度780℃、圧力500Paの条件下エタノール1sccm、アセチレン(アルゴンで2%に希釈されたもの)9sccm、アルゴン/水素キャリア10sccmからなるガスを2分間流し、その後エタノール10sccm、アルゴン/水素キャリア10sccmからなるガスに切り替えて13分流して単層カーボンナノチューブを得た。このようにして得られた単層カーボンナノチューブを、ラマン分光器を用いて評価したところI(G)/I(Si)比は0.39であり、且つI(G)/I(D)比は23であった(
図19)。これらの値から実施例5よりさらに高収率(高効率)且つ高品質の単層カーボンナノチューブが得られたことが示される。
【0037】
実施例7
1cm角の水晶基板上に、5〜10nmの粒度分布及び100ppmの金属不純物を有する水素添加ナノダイヤモンドの2.0wt%エタノール分散液を滴下塗布・乾燥し、水素添加ナノダイヤモンド塗布基板を得た。ついで塗布基板を加熱炉に設置し、大気中600℃で15分加熱処理して0.5〜4nmの水素添加ナノダイヤモンド成長核を得た。装置
図1bで示される多温条件対応のCVD装置に基板を設置し、上流温度850℃、基板周辺温度780℃、圧力500Paの条件下、アセチレン(アルゴンで2%に希釈されたもの)10sccm、アルゴン/水素キャリア10sccmからなるガスを60分間流し、単層カーボンナノチューブを得た。このようにして得られた単層カーボンナノチューブを、ラマン分光器を用いて評価したところI(G)/I(Si)比は1.14であり、且つI(G)/I(D)比は11であった(
図20)。これらの値から高収率(高効率)且つ高品質の単層カーボンナノチューブが得られたことが示される。
【0038】
実施例8
実施例5と同様の方法、同様の条件にて多温条件対応のCVD装置に基板を設置し、上流温度850℃、基板周辺温度780℃、圧力500Paの条件下、アセチレン(アルゴンで2%に希釈されたもの)10sccm、アルゴン/水素キャリア10sccmからなるガスを2分間流し、その後アセチレン(アルゴンで2%に希釈されたもの)2sccm、アルゴン/水素キャリア18sccmからなる成長ガス分圧を1/5に低減したガスを58分間流して単層カーボンナノチューブを得た。このようにして得られた単層カーボンナノチューブを、ラマン分光器を用いて評価したところI(G)/I(Si)比は4.42であり、且つI(G)/I(D)比は20であった(
図20)。これらの値から実施例7よりさらに高収率(高効率)且つ高品質の単層カーボンナノチューブが得られたことが示される。
また、こうして得た単層カーボンナノチューブ膜の透過率は97%以上、表面抵抗値が7.3×10
3Ω/□だった。