特許第6091301号(P6091301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091301
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】乾式シリカ微粒子
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
   C01B33/18 Z
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-82037(P2013-82037)
(22)【出願日】2013年4月10日
(65)【公開番号】特開2014-28738(P2014-28738A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2016年2月17日
(31)【優先権主張番号】特願2012-144475(P2012-144475)
(32)【優先日】2012年6月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】青木 博男
(72)【発明者】
【氏名】氏田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】中村 逸富
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−154820(JP,A)
【文献】 特開2008−019157(JP,A)
【文献】 特開2010−163303(JP,A)
【文献】 特開2002−003213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 − 33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の条件を全て満足することを特徴とする乾式シリカ微粒子。
(1)球形の一次粒子より構成され、BET比表面積が20〜60m/gである。
(2)該乾式シリカ微粒子を1.5質量%濃度で出力20W、分散時間3分で水中分散させ後の粒子の重量基準粒度分布について、そのメジアン径とBET比表面積相当径の比であるメジアン径/BET比表面積相当径が2.5以下で、かつ幾何標準偏差が1.33以下である。
(3)ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の1対1混合物であり、温度25℃、せん断速度10s−1における粘度が2Pa・sである液状エポキシ樹脂に、該乾式シリカ微粒子を充填率40質量%で添加して得られるエポキシ樹脂組成物の温度25℃、せん断速度10s−1における増粘指数が15g/m以上である。
(ここで、増粘指数は、以下の式で示される。
増粘指数(P)=(η・η−1・S−2)×100
(但し、ηは、樹脂組成物の粘度[Pa・s]、ηは、樹脂の粘度[Pa・s]、Sは、シリカ粒子のBET比表面積[m/g]))
【請求項2】
130℃での乾燥減量法により測定される水分量が0.5質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の乾式シリカ微粒子。
【請求項3】
シロキサンを燃焼反応させることを特徴とする請求項1又は2に記載の乾式シリカ微粒子の製造方法。
【請求項4】
シロキサンが環状シロキサンであることを特徴する請求項3記載の乾式シリカ微粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の乾式シリカ微粒子の表面が、シリル化剤、シリコーンオイル、シロキサン類、脂肪酸からなる群の少なくとも1種類から選ばれる処理剤によって表面処理された、疎水化乾式シリカ微粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物の充填剤・増粘剤・補強剤或いは電子写真用トナーの外添剤として好適に使用できる新規な乾式シリカに関する。
【背景技術】
【0002】
一次粒子が球形である比表面積20〜60m/gの乾式シリカ微粒子(以下、「球形シリカ微粒子」ともいう。)は、半導体封止剤や半導体実装用接着剤に添加される充填剤として、また、電子写真用トナー粒子の外添剤としての需要が見込まれる。
【0003】
即ち、近年、半導体デバイスの小型化、薄型化に伴い、エポキシ樹脂組成物である半導体封止剤や半導体実装用接着剤に添加される充填剤の粒子径が小さくなっていく傾向があり、比表面積20〜60m/g、一次粒子径に換算すると50〜150nm程度を有する球形シリカ微粒子が好適に用いられる(特許文献1参照)。
【0004】
上記球形シリカ微粒子は、クロロシランの火炎加水分解法によって製造されるヒュームドシリカに比して、一次粒子径が大きく、且つ、形状が球形であることより、かかる一次粒子が構成する凝集粒子の構造は単純でかつ弱く、これを樹脂充填剤として用いた場合、樹脂組成物の粘度は低いものとなる。このため、当該シリカ微粒子を樹脂に充填した場合の増粘効果が小さく、樹脂への充填率を不必要に高くする必要があった。
【0005】
一方、一次粒子が球形である比表面積20〜60m/gの乾式シリカ微粒子は、電子写真用トナー粒子の外添剤として使用されたとき、長期の使用でもトナー樹脂粒子への埋没することがないため、長期の使用にわたって優れた流動性をトナー粒子に付与できることが知られている(特許文献1参照)。
【0006】
電子写真用トナー粒子の外添剤には、良好に目的の粒度に分散され、なおかつ分散時の粒度分布がシャープであるという特性が要求されるが、既存の比表面積20〜60m/gの乾式シリカ微粒子は、前記したように分散性に優れたものはあるものの、電子写真用トナー粒子の外添剤として適用されるには、外添・混合工程における分散処理によって得られる分散粒子の粒度分布がさらに狭いものが要求されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−19157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、一次粒子が球形で、比表面積が20〜60m/gの範囲にありながら、既存の同サイズの乾式シリカ微粒子よりも樹脂粘度に対する増粘性があり、なおかつ分散性に優れ、分散粒子の粒度分布がシャープであるという、前記樹脂用充填剤とトナー用乾式シリカ微粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく、珪素化合物の燃焼によって生成し、火炎中および火炎近傍において成長、凝集する乾式シリカ微粒子について、鋭意検討を行なった結果、火炎条件のみならずその冷却条件を調整することで、前記目的を達成した乾式シリカ微粒子を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、珪素化合物の燃焼によって得られた乾式シリカ微粒子であって、以下の条件を全て満足することを特徴とする乾式シリカ微粒子である。
【0011】
(1)球形の一次粒子より構成され、BET比表面積が20〜60m/gである。
【0012】
(2)該乾式シリカ微粒子を1.5質量%濃度で出力20W、分散時間3分で水中分散させて得られる分散粒子の重量基準粒度分布について、そのメジアン径とBET比表面積相当径の比であるメジアン径/BET比表面積相当径が2.5以下で、かつ幾何標準偏差が1.33以下である。
【0013】
(3)ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の1対1混合物であり、温度25℃、せん断速度10s−1における粘度が2Pa・sの液状エポキシ樹脂に、該乾式シリカ微粒子を充填率40質量%で添加して得られるエポキシ樹脂組成物の温度25℃、せん断速度10s−1における増粘指数が15g/m以上である。
(ここで、増粘指数は、以下の式で示される。
【0014】
増粘指数(P)=(η・η−1・S−2)×100
(但し、ηは、樹脂組成物の粘度[Pa・s]、ηは、樹脂の粘度[Pa・s]、Sは、シリカ粒子のBET比表面積[m/g]))
上記本発明の乾式シリカ微粒子においては、
(1)130℃での乾燥減量法により測定される水分量が0.5質量%以下であること、
(2)珪素化合物がシロキサン、特に、環状シロキサンであること、
が好適である。
【0015】
また、本発明は、前記乾式シリカ微粒子を、シリル化剤、シリコーンオイル、シロキサン類、脂肪酸からなる群の少なくとも1種類から選ばれる処理剤によって表面処理された疎水化シリカをも提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の乾式シリカ微粒子は、球形の一次粒子より構成され、BET比表面積が20〜60m/gであるにも拘わらず、前記適度な凝集構造を有しているため、樹脂に対する良好な増粘作用を有し、樹脂組成物に粘度と強度の双方を付与でき、樹脂充填剤・添加剤・補強剤として有用である。
【0017】
また本発明の乾式シリカ微粒子は、適度な凝集構造を有しているため、電子写真用トナー製造における外添・混合工程において、トナー樹脂粒子上に良好に分散し、かつ、分散後の分散粒子の粒度分布がシャープであるため、トナー樹脂の粒子に埋没あるいは脱離するシリカ微粒子が少なく、長期にわたって優れた流動性を付与し、且つ、トナー帯電量のバラツキも抑制するという効果も発揮するため、電子写真用トナーの外添剤としても極めて有用である。
【0018】
従って、本発明の乾式シリカ微粒子は、上記相反する特性が求められる用途においても、兼用することが可能であり、それぞれの用途に合わせて別々の製造方法で乾式シリカ微粒子を準備する必要がなくなり、製造コストの一層の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例2において得られた乾式シリカ微粒子の粒度分布図
図2】実施例4において得られた乾式シリカ微粒子の粒度分布図
図3】比較例1において得られた乾式シリカ微粒子の粒度分布図
図4】比較例2において得られた乾式シリカ微粒子の粒度分布図
図5】実施例2において得られた乾式シリカ微粒子の粒度分布図
図6】実施例4において得られた乾式シリカ微粒子の粒度分布図
図7】比較例1において得られた乾式シリカ微粒子の粒度分布図
図8】比較例2において得られた乾式シリカ微粒子の粒度分布図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の乾式シリカ微粒子は、珪素化合物の燃焼によって生成し、火炎中および火炎近傍において成長、凝集せしめる方法、所謂、「乾式法」により得られるシリカ微粒子であり、(1)一次粒子が球形で、BET比表面積が20〜60m/gの範囲にありながら、
(2)分散性に優れ、分散粒子の粒度分布がシャープであり、
(3)既存の同サイズの乾式シリカ微粒子よりも樹脂粘度に対する増粘性がある
という特性を有する。
【0021】
上記分散性に優れ、分散粒子の粒度分布がシャープである特性は、
(2)該乾式シリカ微粒子を1.5質量%濃度で出力20W、分散時間3分で水中分散させて得られる分散粒子の重量基準粒度分布について、そのメジアン径とBET比表面積相当径の比であるメジアン径/BET比表面積相当径が2.5以下で、かつ幾何標準偏差が1.33以下であることで特定され、
樹脂粘度に対する増粘性は、
(3)ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の1対1混合物であり、温度25℃、せん断速度10s−1における粘度が2Pa・sの液状エポキシ樹脂に、該乾式シリカ微粒子を充填率40質量%で添加して得られるエポキシ樹脂組成物の温度25℃、せん断速度10s−1における増粘指数が15g/m以上であることで特定される。
【0022】
(ここで、増粘指数は、以下の式で示される。
増粘指数(P)=(η・η−1・S−2)×100
(但し、ηは、樹脂組成物の粘度[Pa・s]、ηは、樹脂の粘度[Pa・s]、Sは、シリカ粒子のBET比表面積[m/g]))
このように、一次粒子が球形で、BET比表面積が20〜60m/gの範囲にある乾式シリカ微粒子であって、前記(2)、(3)に示す均一分散性と樹脂への増粘作用を発揮する、特異な凝集特性を有する乾式シリカ微粒子は、前記したように、従来製造された例は無く、本発明によって初めて提供されるものである。
【0023】
本発明の乾式シリカ微粒子は、上記特性を有することにより、樹脂への充填剤として、また、電子写真用トナー外添剤として、何れの用途においても好適に使用される。
【0024】
即ち、前記比表面積が前記範囲内であることにより、樹脂充填剤として樹脂への適度な増粘効果が発揮され、樹脂組成物に十分な強度を付与することができる。また、電子写真用トナー外添剤として適用した場合は、トナー樹脂粒子に埋没すること無く、また、トナー樹脂表面からシリカ微粒子が脱落することもなく、安定した付着性を有する。
【0025】
また、前記(2)に示す、メジアン径/BET比表面積相当径が2.5以下であるということは、一次粒子で構成されるシリカ微粒子が、一次粒子径と同水準まで分散され得る良好な分散特性を有することを意味し、かかる特性により、電子写真用トナー外添剤として用いた場合、トナー樹脂粒子表面上でシリカ微粒子が埋没抑止を発揮するサイズまで分散され、トナー樹脂に対して、良好な流動性を付与できる。しかも、幾何標準偏差が1.33以下であることは分散粒子の粒度分布が極めて狭いことを意味し、電子写真用トナー外添剤として用いた場合、トナー樹脂表面から埋没するシリカ微粒子と脱離するシリカ微粒子の両方を減少することができ、トナー樹脂に対して良好な流動性を付与することができる。
【0026】
本発明において、前記増粘指数が15g/m以上であるということは、前記分散粒子のメジアン径/BET比表面積相当径で示される分散性との関係で、一次粒子が適度に強い凝集構造を有していることを意味し、かかる特性により、樹脂に添加した場合、得られる樹脂組成物に適度な増粘作用を付与することができ、硬化後の樹脂組成物に充分な強度を与えることができる。尚、本発明の乾式シリカ微粒子の少量の添加で増粘作用を発現させたい場合は、増粘指数は20g/m以上のものが好ましく、25g/m以上のものが好適である。但し、増粘指数があまり高すぎると、前記分散性が低下する傾向にあり、該増粘指数は、50g/m以下であることが好ましい。
【0027】
尚、本発明において、「球形」とは以下に定める球形度が1.7以下であることをいう。
球形度[−]=BET比表面積[m/g]/円相当比表面積[m/g]
(ここで、円相当比表面積は、走査電子顕微鏡で任意に撮影した10万倍画像において、粒子を2000個以上任意に選択、その円相当径を計測し、各粒子を計測された円相当径を直径とする球とみなして算出した比表面積として定義される。)
また、前記乾式シリカ微粒子を1.5質量%濃度で出力20W、分散時間3分で水中分散させて得られる分散粒子の重量基準粒度分布は遠心沈降式粒度分布測定機で測定される。測定機の例として、CPS Instruments Inc.製ディスク遠心式粒度分布測定装置DC24000が挙げられる。また、BET比表面積相当径(D)は、以下の式によって算出される粒子径である。
【0028】
D[nm]=6000/シリカ真密度[g/cm]/BET比表面積[m/g]
更に、本発明において、増粘指数の測定に使用するビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の1対1の混合物としては、東都化成製のエポキシ樹脂(商品名:ZX−1059)が挙げられる。また、上記エポキシ樹脂と乾式シリカ粒子との混練には、プラネタリーミキサーが使用され、具体的には、シンキー社製のプラネタリーミキサー(商品名:AR−500)が挙げられる。さらに、粘度を測定する装置として、Haake社製のレオメータ レオストレス(商品名:RS600)が挙げられる。
【0029】
増粘指数は、前記したように、25℃、せん断速度10s−1の条件で測定したエポキシ樹脂の粘度と混練後のエポキシ樹脂組成物の粘度の値と、乾式シリカ微粒子のBET比表面積から得られる。
【0030】
前記増粘指数は、粉体充填層を流体が通過するときの圧力損失を表現する次式のコゼニー−カルマンの式を根拠とする。
【0031】
ΔP=kμLuρ(1−ρ)−3
ここに、ΔPは圧力損失、kは定数、μは流体の粘度、Lは粉体充填層の厚み、uは粉体充填層を通過する流体の速度、ρは粉体の充填率、Sは粉体の比表面積である。コゼニー−カルマンの式は比表面積Sの微粒子が空間的に均一に充填率ρで充填されて厚みLの層を形成したとき、層の流体流路を均一系の毛細管の集合とみなし、流体が層流で流れるとして求めた理論式である。
【0032】
流速一定、厚み一定、充填率一定のとき、圧力損失は、以下のように、流体の粘度と微粒子の比表面積の2乗に比例する。
【0033】
ΔP∝μ
圧力損失が大きいほど、流体は流れにくい。圧力損失は流れの単位断面積当りのエネルギー損失を意味する。これを樹脂組成物に適用すれば、せん断応力が圧力損失にあたる。さらに、せん断速度を一定とすれば、せん断応力は樹脂組成物の粘度に該当する。流体の粘度を樹脂の粘度に読みかえ、μを樹脂組成物の粘度とすれば、
μ∝μ
すなわち、
μ/μ∝S
比粘度μ/μは微粒子の比表面積の2乗に比例する。
【0034】
上式の比例係数にあたるμμ−1−2が比表面積で与えられる一次粒子の大きさの影響を取り除いた、真の増粘効果を与える。増粘指数は、SとしてBET比表面積を使い、μμ−1−2に単に100を乗じたものである。
【0035】
増粘指数は一次粒子で形成される凝集粒子の構造の表れである。即ち、樹脂組成物中のシリカ微粒子の一次粒子で形成される凝集粒子が大きいと樹脂分子が凝集粒子に取り込まれ自由に運動できる樹脂分子が少なくなり、増粘指数が大きくなる。一方、凝集粒子が小さいと凝集粒子に取り込まれる樹脂分子が少なく、自由に運動できる樹脂分子が多くなるため、増粘指数が小さくなる。
【0036】
更に、大きい凝集粒子の構造は疎であり、小さい凝集粒子の構造は密である。
【0037】
例として、同一の一次粒子径を有する微粒子が同一径の凝集粒子を形成する単純な系で説明する。つまりこの場合、一次粒子も単分散、凝集粒子も単分散である。凝集粒子径Dと1つの凝集粒子に含まれる一次粒子数Nとの間には、以下の関係が存在する。
【0038】
N ∝ Ddm
ここで、dmはマス・フラクタル次元であり、3未満の値をとる。概ね約1.8の値であるとされる。凝集粒子の質量密度は凝集粒子に含まれる一次粒子数に比例し、凝集粒子の体積に反比例する。従って、凝集粒子の質量密度は、
ND−3 = Ddm−3
に比例する。dm−3は負値であるため、Ddm−3は凝集粒子の大きくなるにつれて小さくなる。つまり、凝集粒子が大きくなると、疎な構造となる。
【0039】
凝集粒子の大きさ、つまり、疎密構造は、燃焼反応によって生成し、火炎中および火炎近傍において成長、凝集することで得られる乾式シリカ微粒子で特に圧縮工程を経ずに回収される場合、その嵩密度に表れる。
【0040】
大きな凝集粒子径を有する、つまり、疎な凝集構造を有する、シリカ微粒子の嵩密度は同一比表面積を有するシリカ微粒子で比較したとき小さい。すなわち、嵩高い。
【0041】
尚、乾式シリカ微粒子を圧縮することによってシリカ微粒子の嵩密度の値自体を変化させることはできるが、火炎中および火炎近傍において成長、凝集した結果、形成された凝集構造はほとんど変化しない。これは、増粘指数でわかる特性である。
【0042】
本発明の乾式シリカ微粒子は、前記特性を有するものであれば、その他の特性は特に制限されるものではないが、例えば、130℃での乾燥減量法により測定される水分量が0.5質量%以下であれば、シリカ微粒子の吸着水分による経時的な強固な凝集粒子形成を抑止できる結果、長期間保存の後でも上述の優位性を維持できるため、より好ましい形態である。
【0043】
また、本発明の乾式シリカ微粒子は、その用途に応じて、シリル化剤、シリコーンオイル、シロキサン類、脂肪酸からなる群から少なくとも1種選ばれる処理剤によってシリカ微粒子の表面を処理してもよい。
【0044】
具体的なシリル化剤として、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i−ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ヘキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等のシラザン類等が挙げられる。
【0045】
シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、末端反応性シリコーンオイル等が挙げられる。
シロキサン類としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等が挙げられる。
脂肪酸としては、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、バルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などの長鎖脂肪酸が挙げられる。
【0046】
(シリカ微粒子の製造方法)
本発明の乾式シリカ微粒子は珪素化合物の燃焼反応によりシリカ微粒子を生成後、同火炎中および同火炎近傍で一次粒子の成長及び一次粒子の軽度な凝集をさせることにより得られる。より具体的には、上記燃焼反応において、最高温度としてシリカの融点(2000K)を超えた火炎であって、なおかつ、緩やかな温度勾配を有する火炎を形成し、生成したシリカ微粒子の冷却速度を調整することで得られる。
【0047】
本発明の乾式シリカ微粒子は、同心円多重管構造を有するバーナを用いて製造することが好ましく、以下、その典型例として、同心円4重管バーナを使用する場合について詳述する。
【0048】
この同心円4重管バーナは中心管を有し、この中心管の外周に第1環状管を配置、第1環状管の外周に第2環状管を配置、第2環状管の外周に第3環状管を配置したバーナである。
【0049】
前記中心管に、シリカ源として気化した珪素化合物と酸素を予め混合して導入する。この際、窒素等の不活性ガスも合わせて混合してもよい。また、珪素化合物の加水分解反応でシリカ微粒子を生成させる場合は、酸素と反応すると水蒸気を生成する燃料、例えば水素、炭化水素等を合わせて混合する。
【0050】
また、第1環状管には、補助火炎形成のための燃料、例えば水素、炭化水素を導入する。この際、窒素等の不活性ガスを合わせて混合して導入してよい。さらに、酸素も合わせて混合してもよい。
【0051】
更に、第2環状管には、補助火炎形成のための酸素を導入する。この際、窒素等の不活性ガスを合わせて混合してよい。
【0052】
更にまた、第3環状管には、酸素と窒素等の不活性ガスの混合ガスを導入する。空気導入は容易であるため、空気を導入するのが好適である。
火炎中ならびに火炎近傍で生成・成長・凝集して得られる乾式シリカ微粒子の特性は、該シリカ微粒子が受ける温度履歴を非常に強く反映する。
【0053】
本発明の乾式シリカ微粒子の製造方法において、火炎の最高温度はシリカの融点を超えることが必須である。火炎の最高温度がシリカの融点を下回ると、分散性能が悪くなり、本発明の乾式シリカ微粒子を得ることは不可能になる。本発明のシリカを得るには、火炎の最高温度として、2400K以上であることが好ましい。
【0054】
本発明の乾式シリカ微粒子を得るには、以下に説明するように、緩やかな温度勾配を有する火炎に調整することが特に重要である。
【0055】
緩やかな温度勾配により、シリカ微粒子をシリカ融点以上の温度領域に長く滞在させることができるため、つまり、成長領域に長く滞在させることができるため、該シリカ微粒子に一次粒子径の水準まで分散でき、分散粒度分布もシャープである特性を与えることができる。
【0056】
さらに、緩やかな温度勾配により、シリカ微粒子の凝集が終了する温度までの時間を長くできるため、すなわち、該シリカ微粒子を凝集領域に長く滞在させることができるため、該シリカ微粒子の凝集粒子径は拡大、凝集粒子の構造は疎になり、該シリカ微粒子は樹脂に対する高い増粘指数を有する特徴を獲得する。
【0057】
かかる火炎温度分布の具体的な調整は、中心管の導入組成、中心管のサイズ、第3環状管の出口流速、第3環状管のサイズを調整することによって実施される。例えば、中心管の導入組成で火炎の最高温度を調整できる。火炎の最高温度は導入組成から算出できる標準状態での断熱火炎温度に導入ガスの温度を足し合せた後、標準温度(298K)を引くことで求められる温度で監理することが好ましい。この監理法の適用においては、中心管に導入する化学成分だけで反応が完結する組成、すなわち、未反応の珪素化合物と燃料が残留しない組成を選ぶことが必須である。例えば、中心管に珪素化合物と酸素のみを導入した場合、その酸素導入量は導入珪素化合物が完全燃焼するに必要な酸素量以上であることが必須である。
【0058】
断熱火炎温度の算出においては、その熱力学物性値は”JANAF Thermochemical Tables SECOND EDITION”,堀越研究所(1975)等を参照すればよい。さらに、断熱火炎温度の算出で必要な比熱は、ある特定の温度の値を使用するより、比熱の温度依存性を盛り込んだほうが正確な温度となり、監理上好ましい。例えば、比熱を温度の多項式、例えば、6次の多項式で近似し、それに基づいて断熱火炎温度を算出することが好ましい。
【0059】
また、中心管のサイズで、火炎温度勾配を調整できる。中心管のサイズが大きくなると、放熱が抑制され、火炎温度勾配は緩やかになる。これは、以下の原理に基づく。
【0060】
火炎の冷え難さを表す火炎の熱容量は、中心管に導入したガス量である、(π/4)×(中心管のガス流速)×(中心管の径)に実質的に比例する。一方、火炎からの単位時間当たりの放熱量は、火炎と周囲の接触面積、つまり放熱面積にあたる、(π)×(中心管のガス流速)×(中心管の径)に実質的に比例する。従って、放熱面積/熱容量は中心管の径に反比例する。つまり、中心管の径に反比例して、火炎は冷却され難くなり、その結果、緩やかな温度勾配を有する火炎を得ることができる。
【0061】
また、第3環状管の出口流速を遅くすると、境膜伝熱の法則により、伝熱係数が小さくなり、火炎は周囲と熱交換しない結果、火炎は冷却されず、緩やかな温度勾配を有する火炎が得られる。
【0062】
さらに、第3環状管のサイズが小さくなると、これも境膜伝熱の法則により、伝熱係数が小さくなるため、火炎は冷却されず、緩やかな温度勾配を有する火炎が得られる。
上記を総合すれば、中心管の組成によって最高火炎温度が、中心管サイズで火炎と周囲との伝熱面積が、第3環状管の出口流速とサイズで火炎と周囲との間の伝熱係数が決まり、これよって、火炎温度分布が確定する。これを用いて、火炎の温度分布を調整することで、本発明の乾式シリカ微粒子を得ることができる。
【0063】
さらに具体的な調整法は、使用する珪素化合物に応じ、上述の調整法で、適宜定めればよいが、緩やかな温度勾配を有する火炎を形成するために、以下に定める冷却因子を400Nm/m/s以下にすることが、本発明の乾式シリカ微粒子に得るにあたって好適な形態である。
【0064】
冷却因子[Nm/m/s]
=(Dout/Din)0.5×V/Dc×(Tmax−T0)/Tm
ここに、Doutが第3環状管の外径[m]を、Dinが第3環状管の内径[m]を、Vが第3環状管の出口流速[Nm/s]を、Dcが中心管の径[m]を、Tmaxが最高火炎温度[K]を、T0が第3環状管のガス温度[K]を、Tmがシリカの融点である2000Kを表す。
上式で、(Dout/Din)0.5×Vが第3環状管の出口流速とサイズによる伝熱係数因子を表し、1/Dcが放熱面積に関わる因子を表し、(Tmax−T0)/Tmがシリカの融点である2000Kで規格化した伝熱の駆動力となる温度差を表す。
【0065】
なお、火炎の温度分布の調整は火炎の逆火、吹き飛びがの虞がない範囲で実施する必要がある。このため、中心管のガス流速は、10〜200Nm/sの範囲が好ましく、さらに20〜180Nm/sの範囲であることが好ましい。なお、流速の単位であるNm/sは温度273K、大気圧で換算した場合の流速である。
【0066】
また、第1環状管と第2環状管は、火炎をバーナ先端に定着させ、安定燃焼、安定運転、安定操業することを目的としたものである。この目的のためには、第1環状管の出口流速は10Nm/s以上であることが好ましい。また、第2環状管の出口流速は5Nm/s以上であることが好ましく、10Nm/s以上であることがさらに好ましい。さらに、第2環状管の導入ガスは酸素単独であることが好ましい。なお、火炎をバーナ先端に定着させ、安定燃焼、安定運転、安定操業させることができさえすれば、第1環状管と第2環状管を統合し、1つの環状管としてもよい。
【0067】
さらに、第3環状管は、火炎と周囲との間の伝熱係数の調整を主たる役割とするが、火炎の性状を安定化させ、安定燃焼させる役目も果たす。この目的のためには、その出口流速を0.5Nm/s以上にすることが好ましく、2Nm/s以上とすればさらに好ましい。
珪素化合物としては、常温でガス状または液状であるものが特に制限なく使用される。例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサン類、ヘキサメチルジシロキサン等の鎖状シロキサン類、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のアルコキシシラン類、トリクロロシラン、テトラクロロシラン等のクロロシラン類を珪素化合物として使用することができる。
上記珪素化合物としてシロキサン類およびアルコキシシラン類の塩素を含まない珪素化合物を使用すれば、不純物となる塩素を著しく低減された高純度の乾式シリカ微粒子を得ることができるため好ましい。
【0068】
なお、上記で挙げた珪素化合物と酸素の燃焼当量炎の断熱火炎温度を、珪素化合物と酸素を298Kで導入したとして算出すると、シロキサン類では5500〜6000K、アルコキシシラン類では4500K〜5100K、クロロシラン類では3000〜4000Kとなる。ここで、クロロシラン類はクロロシラン−水素−酸素の当量炎とした。
【0069】
酸素燃焼当量炎より低い断熱火炎温度にするには当量炎を不活性ガスで希釈しさえすればよい一方で、酸素燃焼当量炎より高い火炎を得ることは不可能である。
【0070】
乾式シリカ微粒子がBET比表面積20〜60m/gで、一次粒子径の水準まで分散され、なおかつ分散粒度分布がシャープであるという特性を有しながら、もう一方で、高い増粘指数を有する凝集構造となるように火炎温度分布を調整できるためには、使用する珪素化合物として高い断熱火炎温度にできる珪素化合物が好ましく、このため珪素化合物としてシロキサン類を使用するのが好ましい形態である。
【0071】
シロキサン類の内、環状シロキサンのほうが鎖状シロキサンよりも、珪素原子当りの炭素原子数が少ないため、炭素の発生等などの燃焼不良を起こし難く、火炎を均一にし易いため、珪素化合物として、環状シロキサンが最も好適な形態である。
【0072】
本発明の乾式シリカ微粒子は火炎中および火炎近傍で生成・成長・凝集させることで得られるが、その回収は金属フィルター、セラミックフィルター、バックフィルター等によるフィルター分離やサイクロン等による遠心分離で燃焼ガスと分離させて、回収することでなされる。本発明の乾式シリカ微粒子はフィルター分離であれ遠心分離であれ、凝集粒子径が大きいため、分離装置に対する負荷が小さく、回収しやすい特徴がある。
【実施例】
【0073】
本発明を具体的に説明するために実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
なお、以下の実施例および比較例における各種の物性測定等は以下の方法による。
【0075】
(1)比表面積
柴田理化学社製比表面積測定装置SA−1000を用い、窒素吸着BET1点法により測定した。
【0076】
(2)粒度分布
(測定サンプルの調製)
測定サンプルであるシリカ濃度1.5質量%水懸濁液を、以下のように調製した。
シリカ0.3gと蒸留水20mlをガラス製のサンプル管瓶(アズワン社製、内容量30ml、外径約28mm)に入れ、超音波細胞破砕器(BRANSON社製Sonifier II Model 250D、プローブ:1.4インチ)のプローブチップ下面が水面下15mmになるように試料入りサンプル管瓶を設置し、出力20W、分散時間3分の条件でシリカ微粒子を蒸留水に分散し、測定サンプルであるシリカ濃度1.5質量%水懸濁液を調製した。
【0077】
(粒度分布測定)
CPSInstruments Inc.製のディスク遠心式粒度分布測定装置(DC24000)を用いて、重量基準粒度分布を測定した。なお測定条件は、回転数18000rpm、温度32℃、シリカ真密度を2.2g/cmとした。
【0078】
得られた重量基準粒度分布からメジアン径を算出した。メジアン径とBET比表面積とから、メジアン径/BET比表面積相当径を求めた。なお、BET比表面積相当径は下記式で求められる。
BET比表面積相当径[nm]
=6000/シリカ真密度[g/cm]/BET比表面積[m/g]
上式でもシリカ真密度を2.2g/cmとした。
【0079】
また、累積頻度10質量%〜90質量%の範囲で対数正規分布フィッティングし、そのフィッティングから幾何標準偏差を算出した。
【0080】
(3)増粘指数
(エポキシ樹脂組成物の調製)
東都化成製エポキシ樹脂ZX−1059を42.84g秤取し、これにシリカ28.56g添加した。その後、シンキー社製のプラネタリーミキサーAR−500を用いて、回転数1000rpmで8分間攪拌、その後、回転数2000rpmで2分間脱泡することで、混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。その後、樹脂組成物を25℃の恒温槽に1時間以上静置した。
【0081】
(エポキシ樹脂組成物の粘度)
25℃の恒温槽から樹脂組成物を取り出し、Haake社製レオメータ レオストレスRS600を用いてせん断速度10s−1で粘度を測定した。なお、測定温度は25℃、使用センサーはC35/1(コーンプレート型 直径35mm、角度1度、材質チタン)とし、せん断速度10 s−1の状態を3分間保った後での粘度の値をエポキシ樹脂組成物の粘度とした。
【0082】
(エポキシ樹脂の粘度)
東都化成製エポキシ樹脂ZX−1059の粘度を、Haake社製レオメータ レオストレスRS600を用いてせん断速度10s−1で粘度を測定した。なお、測定温度は25℃、使用センサーはC35/1(コーンプレート型 直径35mm、角度1度、材質チタン)とし、せん断速度10s−1の状態を3分間保った後での粘度の値をエポキシ樹脂の粘度とした。
【0083】
(増粘指数)
増粘指数[g/m]を下記式で求めた。
増粘指数[g/m]=(η・η−1・S−2)×100
ここで、ηは、樹脂組成物の粘度[Pa・s]、ηは、樹脂の粘度[Pa・s]、Sは、BET比表面積[m/g]である。
【0084】
(4)吸光度
(測定サンプルの調製)
粒度分布における測定サンプルと全く同一とした。
【0085】
(吸光測定)
日本分光社製分光光度計V−530を用いて、波長700nmの光に対するシリカ濃度1.5質量%の水懸濁物の吸光度を測定した。なお、測定試料セルは東京硝子器械社製合成石英セル(5面透明、10×10×45H)を用いた。
【0086】
(5)嵩密度
ホソカワミクロン社製パウダーテスターPT−R型を用いて、嵩密度を測定した。目開き1.4mmの篩上にサンプルを投入し、篩を振動させることで、サンプルを容量100mlの測定カップに投下した。この後、嵩密度をカップ内のサンプル重量とカップ容量から算出した。
【0087】
(6)球形度
(走査電子顕微鏡用の試料調製)
10mlのアセトンに0.02gのシリカを添加後、10分間超音波分散し、シリカのアセトンスラリーを得た。このスラリーを親水化処理したシリコンウェハー上に数滴滴下した後、減圧乾燥させ、走査電子顕微鏡用の試料を得た。
【0088】
(走査電子顕微鏡撮影)
日立ハイテクノロジーズ製電界放射型走査電子顕微鏡S−5500で試料の10万倍画像を撮影した。
【0089】
(円相当径の計測、円相当比表面積)
試料の10万倍画像と旭エンジニアリング製の画像解析ソフトIP−1000PCを用い、シリカ微粒子を任意に2000個以上選択し、その円相当径を計測した。計測したシリカ微粒子は円相当径を直径する真球シリカ微粒子とみなし、計測した全てのシリカ微粒子のデータを使って、円相当比表面積を求めた。なお、シリカ微粒子の真密度は、2.2g/cmとした。
【0090】
(球形度)
球形度 = BET比表面積[m/g]/円相当比表面積[m/g]
に従い、球形度を求めた。
【0091】
実施例1〜5、比較例1〜4
オクタメチルシクロテトラシロキサンを同心円4重管バーナで燃焼させ乾式シリカ微粒子を製造した。以下、オクタメチルシクロテトラシロキサンを原料と記す。
【0092】
加熱気化させた原料と酸素と窒素を混合した後、バーナ中心管に導入した。また、水素と窒素を混合し、中心管の外周に配置した第1環状管に導入し、酸素を第1環状管の外周に配置した第2環状管に導入した。さらに、空気を第2環状管の外周に配置した第3環状管に導入した。そして、得られた乾式シリカ微粒子を金属フィルターで回収後、そのBET比表面積、粒度分布、増粘指数、吸光度、嵩密度、球形度を測定した。
【0093】
表1に実施例1〜5の製造条件とシリカ特性を、表2に比較例1〜4の製造条件とシリカ特性をそれぞれ示す。
【0094】
上記実施例1〜5、比較例1〜4の乾式シリカ微粒子の球形度は1.7以下であり、全て球形であった。また、130℃での乾燥減量法により測定される水分量が0.5質量%以下であることを確認した。
【0095】
なお、表1と表2の酸素比は(中心管に導入した酸素のモル数)/(16×中心管に導入した原料のモル数)であり、酸素濃度は(中心管に導入した酸素のモル数)/(中心管に導入した酸素のモル数+中心管に導入した窒素のモル数)をパーセント表示したものである。またRSFLは(第1環状管に導入した水素のモル数)/(32×中心管に導入した原料のモル数)であり、Rcmbtsは(第2環状管に導入した酸素のモル数)/(16×中心管に導入した原料のモル数)である。最高火炎温度の算出に関わる比熱の表式として2000Kを境界にして、それぞれの温度範囲で、”JANAF Thermochemical Tables SECOND EDITION”, 堀越研究所(1975)を元に最小2乗法で求めた温度の6次多項式を用いた。原料であるオクタメチルシクロテトラシロキサンの標準生成モルエンタルピーの値は”J. Lipowitz, J. Fire & Flammability 7, 482 ( 1976 )”の値を採用し、それ以外の物質の標準生成モルエンタルピーの値はThermochemical Tables SECOND EDITION”, 堀越研究所(1975)の値を使った。
【0096】
また、実施例1〜3では同一バーナを使用した。実施例4〜5と比較例1〜2では中心管、第1環状管、第2環状管は実施例1と同一で第3環状管は実施例1より拡大したバーナを使用した。さらに、比較例3〜4では、中心管径が実施例1の1/2、第1環状管のクリアランス(スペース)と第2環状管の断面積は実施例1と同一、第3環状管の外径は実施例1の1.1倍のバーナを使用した。
【0097】
また、増粘指数を求めるために測定したエポキシ樹脂の粘度は2.22Pa・sであった。
【0098】
球形度測定の際に得られたシリカ微粒子の粒度分布について、図1に実施例2の、図2に実施例4の、図3に比較例1の、図4に比較例2の粒度分布図を示す。これらは、シリカ微粒子の一次粒子粒度分布である。
【0099】
さらに、ディスク遠心式粒度分布測定装置で測定された分散粒子の重量基準粒度分布について、図5に実施例2の、図6に実施例4の、図7に比較例1の、図8に比較例2の粒度分布図を示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8