特許第6091867号(P6091867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6091867-搬送機構 図000002
  • 特許6091867-搬送機構 図000003
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  • 特許6091867-搬送機構 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091867
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】搬送機構
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
   H01L21/68 A
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-264917(P2012-264917)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-110364(P2014-110364A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】山田 智広
【審査官】 梶尾 誠哉
(56)【参考文献】
【文献】 実開平2−90(JP,U)
【文献】 特開2004−83180(JP,A)
【文献】 特開2000−174108(JP,A)
【文献】 特開2002−43393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の板状ワークの下面を保持する保持面を有する保持テーブルに、板状ワークの外周部を保持する保持部で保持して板状ワークを搬送させる搬送機構であって、
該保持部は、板状ワークの外周部における側面および下面に接触させる保持爪と、該保持爪に併設され板状ワークの側面に接触させるガイドピンと、該ガイドピンを板状ワークの径方向で中心に向かってバネ力を付与する引張りバネと、該引張りバネによって移動する該ガイドピンを方向付ける第1のスライダーと、で構成され、
該保持部の移動を板状ワークの径方向に方向付ける第2のスライダーと、該保持部を径方向に移動させる移動部と、を備え、
該ガイドピンは内部バネによって上下方向に伸縮代が設けられており、
板状ワークを保持する時は、該移動部の作動で少なくとも3つの該保持部が板状ワークの径方向で中心に向かって移動する事によって、該ガイドピンが板状ワークの側面に接触すると共に、該保持爪が板状ワークの外周部における側面および下面に接触して板状ワークを保持して、
板状ワークを開放する時は、該移動部の作動で少なくとも3つの該保持部が板状ワークの径方向で外側に向かって移動する事によって、該ガイドピンを残して該保持爪を板状ワークの外側に移動させ、板状ワークの外周部から該保持爪を離間させるが、該引張りバネのバネ力によって該ガイドピンを板状ワーク側面に接触し続け、該搬送機構が保持する板状ワークを該保持面に対して平行な方向の位置を維持して該保持テーブルに板状ワークを搬送させた後、該移動部の作動で少なくとも3つの該保持部が板状ワークの径方向で外側に向かって移動する事によって、該保持爪と一体に該ガイドピンを板状ワークの外側に移動させ、板状ワークの外周部から該ガイドピンを離間させる事を特徴とする搬送機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状ワークの外周部を保持して搬送するエッジクランプ式の搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板状ワークを搬送する搬送機構として、板状ワークの表面を搬送パッドで保持して搬送するものが知られている。この搬送機構では、板状ワークの表面と搬送パッドとの接触によって搬送パッドの接触面が汚染する可能性があるため、洗浄機構により搬送パッドの接触面が洗浄される。しかしながら、洗浄された搬送パッドであっても、搬送パッドの接触面と板状ワークの表面との間に異物が挟まると、板状ワークが傷つけられるおそれがある。そこで、板状ワークの表面に触れることなく板状ワークを搬送できるエッジクランプ式の搬送機構が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−258450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の搬送機構では、複数の保持爪にV字溝が形成されており、このV字溝に板状ワークの外周部が保持されている。保持テーブルへの板状ワークの搬入時には、保持テーブルの上方で複数の保持爪が板状ワークの外周部から退避することで、自由落下により板状ワークが保持テーブルの保持面に降ろされる。このため、板状ワークの搬送時に、保持テーブルの保持面に対して板状ワークが位置合わせされていても、板状ワークの落下中に保持面に対する板状ワークの位置ズレが生じるという問題があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、保持テーブルの保持面に対する位置合わせ状態を維持しつつ、板状ワークを保持面に降ろすことができるエッジクランプ式の搬送機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の搬送機構は、円形の板状ワークの下面を保持する保持面を有する保持テーブルに、板状ワークの外周部を保持する保持部で保持して板状ワークを搬送させる搬送機構であって、該保持部は、板状ワークの外周部における側面および下面に接触させる保持爪と、該保持爪に併設され板状ワークの側面に接触させるガイドピンと、該ガイドピンを板状ワークの径方向で中心に向かってバネ力を付与する引張りバネと、該引張りバネによって移動する該ガイドピンを方向付ける第1のスライダーと、で構成され、該保持部の移動を板状ワークの径方向に方向付ける第2のスライダーと、該保持部を径方向に移動させる移動部と、を備え、該ガイドピンは内部バネによって上下方向に伸縮代が設けられており、板状ワークを保持する時は、該移動部の作動で少なくとも3つの該保持部が板状ワークの径方向で中心に向かって移動する事によって、該ガイドピンが板状ワークの側面に接触すると共に、該保持爪が板状ワークの外周部における側面および下面に接触して板状ワークを保持して、板状ワークを開放する時は、該移動部の作動で少なくとも3つの該保持部が板状ワークの径方向で外側に向かって移動する事によって、該ガイドピンを残して該保持爪を板状ワークの外側に移動させ、板状ワークの外周部から該保持爪を離間させるが、該引張りバネのバネ力によって該ガイドピンを板状ワーク側面に接触し続け、該搬送機構が保持する板状ワークを該保持面に対して平行な方向の位置を維持して該保持テーブルに板状ワークを搬送させた後、該移動部の作動で少なくとも3つの該保持部が板状ワークの径方向で外側に向かって移動する事によって、該保持爪と一体に該ガイドピンを板状ワークの外側に移動させ、板状ワークの外周部から該ガイドピンを離間させる事を特徴とする。
【0007】
この構成によれば、少なくとも3つの保持爪により板状ワークが保持された状態で、引張りバネのバネ力によって板状ワークの外周部の側面にガイドピンが接触する。また、板状ワークの外周部から保持爪が離間しても、ガイドピンが板状ワークの外周部の側面に接触し続けて、保持爪から落下した板状ワークがガイドピンに沿ってガイドされる。よって、エッジクランプ式の搬送機構であっても、搬送機構に保持された板状ワークと保持テーブルの保持面との平行な方向での位置関係を維持しつつ、位置合わせされた状態で板状ワークを保持面に降ろすことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、板状ワークの開放時に板状ワークから保持爪だけを離間させて板状ワークの落下をガイドピンでガイドすることで、保持テーブルの保持面に対する位置合わせ状態を維持しつつ、板状ワークを保持面に降ろすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る搬送機構の斜視図である。
図2】本実施の形態に係る搬送機構の保持部の分解斜視図である。
図3】本実施の形態に係る搬送機構の保持部の分解側面図である。
図4】本実施の形態に係る搬送機構による板状ワークの搬出動作の説明図である。
図5】本実施の形態に係る搬送機構による板状ワークの搬入動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係る搬送機構について説明する。図1は、本実施の形態に係る搬送機構の斜視図である。なお、本実施の形態では、板状ワークの外周部を3カ所で保持するエッジクランプ式の搬送機構を例示して説明するが、この構成に限定されない。搬送機構は、板状ワークの外周部の3カ所以上を保持する構成であればよい。
【0011】
図1に示すように、搬送機構1は、各種加工装置に組み込まれたエッジクランプ式の搬送機構であり、板状ワークWの外周部を保持して保持テーブル2に搬送するように構成されている。板状ワークWは、略円板状に形成されており、表面が不図示の分割予定ラインによって複数の領域に区画されている。分割予定ラインで区画された各領域には、IC、LSI等の回路が形成されている。なお、板状ワークWとしてシリコン、ガリウム砒素等の半導体ウェーハを例に挙げて説明するが、セラミック、ガラス、サファイア(Al2O3)系の無機材料基板等でもよい。
【0012】
保持テーブル2の上面には、ポーラスセラミック材によって板状ワークWの下面を保持する保持面21が形成されている。保持面21は、保持テーブル2内の流路を通じて吸引源25および圧縮エアの供給源26に切換バルブ(不図示)を介して接続されている。保持テーブル2が搬送機構1から板状ワークWを受け取ると、保持面21の接続先が吸引源25に切り換えられて、保持面21に板状ワークWが吸着される。保持テーブル2から搬送機構1に板状ワークWを渡す際には、保持面21の接続先が圧縮エアの供給源26に切り換えられて、搬送機構1でエッジクランプ可能な高さに保持面21から板状ワークWが浮かされる。
【0013】
搬送機構1は、上面視略三角形状のベースプレート3上に、板状ワークWの外周部を保持するように3つの保持部4を配置している。ベースプレート3の中央には、3つの柱部31により連結プレート32が支持されており、この連結プレート32を介して不図示のアームに支持されている。各保持部4は、板状ワークWの外周部を保持爪46によって保持すると共に、板状ワークWの外周部に一対のガイドピン47を突き当て可能に構成されている。板状ワークWは、保持爪46に保持された状態で、保持爪46の両側方に併設された一対のガイドピン47にガイドされる。
【0014】
保持爪46は、ベースプレート3上にスライド可能に設置された保持爪ベース41に固定されている。一対のガイドピン47は、保持爪ベース41上にスライド可能に設置されたピンベース42に固定されている。また、保持爪ベース41とピンベース42は引張りバネ43を介して接続されており、引張りバネ43のバネ力によって保持爪ベース41にピンベース42が引き付けられている。また、保持爪ベース41は、電動式の移動部44に連結されており、移動部44の駆動によって保持爪ベース41と共にピンベース42が板状ワークWの径方向に進退移動される。
【0015】
各保持部4および移動部44は、下面を開放したカバー45で覆われており、ベースプレート3から保持爪46および一対のガイドピン47を下方に突出させている。なお、図1では、1つの保持部4のカバー45を取り外した状態を示している。この搬送機構1は、保持爪46及び一対のガイドピン47を板状ワークWの外周部に接触させた状態で、保持爪46だけを板状ワークWの外周部から退避可能にしている。これにより、各保持爪46から板状ワークWが放された場合でも、一対のガイドピン47にガイドさせつつ、板状ワークWを保持テーブル2の保持面21に向けて落下させることが可能になっている。
【0016】
図2及び図3を参照して、搬送機構の保持部の詳細構成について説明する。図2は、本実施の形態に係る搬送機構の保持部の分解斜視図である。図3は、本実施の形態に係る搬送機構の保持部の分解側面図である。
【0017】
図2および図3に示すように、ベースプレート3は、三角形の角部を外側に延ばして、保持部4用の設置領域33とした上面視略三角形状に形成されている。ベースプレート3の各設置領域33には、放射方向に延びるガイドレール51が配置されており、ガイドレール51上には下側スライダー52(第2のスライダー)がスライド可能に設置されている。下側スライダー52の上面には保持爪ベース41が固定されている。保持爪ベース41は、ガイドレール51に沿って延在する上面視矩形状に形成されており、略前半部が肉厚に形成され、略後半部が薄厚に形成されている。
【0018】
保持爪ベース41は、薄厚の略後半部が下側スライダー52に固定され、肉厚の略前半部がベースプレート3の設置領域33よりも外側にはみ出している。この設置領域33から突き出した保持爪ベース41の前端部には、板状ワークWの外周部を保持する保持爪46が固定されている。保持爪46は、保持爪ベース41の前端部から下方に延び、下端部に内向き突出した爪先57を有している。保持爪46の爪先57に板状ワークWの外周部における側面および下面が接することで、複数の保持部4によって板状ワークWが保持される。なお、保持爪46は、保持爪ベース41に別体に形成されているが、一体に形成されてもよい。
【0019】
保持爪ベース41の後端部には、移動部44からの駆動力を受ける立壁部61が設けられている。移動部44は、電気信号を受けてロッド66を伸縮させる電動式の直動アクチュエータであり、ベースプレート3の設置領域33よりも内側に設置されている。移動部44は、位置決めブロック67により位置決めされており、ロッド66を設置領域33に向けて突出させている。ロッド66の先端には保持爪ベース41の立壁部61が固定されており、ロッド66の伸縮により保持爪ベース41がガイドレール51に沿って進退方向に移動される。
【0020】
保持爪ベース41の略前半部は、ピンベース42をスライド可能に支持する台座部62になっている。台座部62の上面には、放射方向に延びるガイドレール54が配置されており、ガイドレール54上には上側スライダー55(第1のスライダー)がスライド可能に設置されている。上側スライダー55の上面にはピンベース42が固定されている。ピンベース42は、保持爪ベース41の台座部62に対してスライド方向で沿う断面逆U字状の屈曲部71と、屈曲部71の両側方で一対のガイドピン47を支持する一対の支持部72とを有している。
【0021】
各ガイドピン47は、支持部72から下方に延びたピン本体75の下端部に、内部バネ76を介してガイド部77を伸縮可能に連結して構成されている。ガイドピン47は保持爪46の側方に位置付けられており、ガイドピン47のガイド部77は、保持爪46の爪先57よりも下方に突出されている(図4A参照)。搬送機構1による搬送時には、保持爪46の爪先57が保持テーブル2に接触しないように、ガイド部77を基準に高さ調整される。このとき、内部バネ76によってガイドピン47に伸縮代が設けられ、高さ方向の誤差が伸縮代に吸収されるため、搬送機構1の高さ調整を容易にしている。
【0022】
また、ピンベース42は、引張りバネ43を介して保持爪ベース41に連結されている。引張りバネ43の一端部は、ピンベース42の屈曲部71上面に設けられた係止ピン73に係止され、引張りバネ43の他端部は、保持爪ベース41の立壁部61上面に設けられた係止ピン63に係止されている。ピンベース42は、引張りバネ43のバネ力によって立壁部61側に引き寄せられている。立壁部61には、ピンベース42の立壁部61側への移動を規制する規制突起64が設けられている。ピンベース42は、引張りバネ43のバネ力によって規制突起64の先端に突き当てられることで、保持爪ベース41と一体的に動作される。
【0023】
規制突起64の長さは、板状ワークWの外周部からガイドピン47が退避するタイミングを、板状ワークWの外周部から保持爪46が退避するタイミングよりも遅らせるように調整されている。すなわち、移動部44によって保持爪ベース41が押し込まれて、板状ワークWの外周部から保持爪46だけが退避される(図5C参照)。さらに移動部44によって保持爪ベース41が押し込まれることで、規制突起64にピンベース42が突き当てられて板状ワークWの外周部からガイドピン47が退避される(図5F参照)。このようにして、搬送機構1では、ガイドピン47を残して板状ワークWから保持爪46だけを退避させた状態を作り出している。
【0024】
図4及び図5を参照して、搬送機構による板状ワークの搬出動作および搬入動作について説明する。図4は、本実施の形態に係る搬送機構による板状ワークの搬出動作の説明図である。図5は、本実施の形態に係る搬送機構による板状ワークの搬入動作の説明図である。なお、図4および図5に示す搬送機構による板状ワークの搬出動作および搬入動作は一例を示すものであり、適宜変更が可能である。
【0025】
まず、図4を参照して、搬送機構1による板状ワークWの搬出動作について説明する。図4Aに示すように、保持テーブル2の保持面21に板状ワークWが保持され、保持テーブル2の上方には搬送機構1が待機している。このとき、移動部44によって保持爪ベース41が奥方まで押し込まれており、各保持爪46及び各ガイドピン47が板状ワークWの径方向外側に位置付けられている。ガイドピン47は、保持爪46の爪先57よりも板状ワークW側(内側)に位置している。さらに、ガイドピン47の下端は保持爪46の下端よりも僅かに下方に突出している。
【0026】
次に図4Bに示すように、搬送機構1が下降してガイドピン47の下端が保持テーブル2に接触される。上記したようにガイドピン47は伸縮可能に構成されているため、伸縮代によって高さ方向の位置調整の誤差が吸収される。このため、本実施の形態に係る搬送機構1では、不図示のアームの上下軸により搬送機構1の高さ調整する構成と比較して高さ調整が容易になっている。また、搬送機構1の高さが調整された状態で、保持爪46の爪先57が保持面21よりも僅かに高く位置付けられている。
【0027】
次に図4Cに示すように、保持面21による板状ワークWの吸引が停止され、保持面21から板状ワークWの裏面に圧縮エアが噴射される。これにより、板状ワークWの裏面側に圧縮エア層が形成され、板状ワークWが保持面21から浮上される。また、保持面21から板状ワークWが吹き上げられると同時に、移動部44によって保持爪ベース41が引き寄せられる。そして、保持爪46の爪先57が保持面21と板状ワークWとの隙間に入り込むと共に、ガイドピン47が板状ワークWの外周部に当接される。これにより、板状ワークWの外周部が保持爪46の爪先57に引っ掛けられて、板状ワークWの外周部が搬送機構1に保持される。
【0028】
図5を参照して、搬送機構1による板状ワークWの搬入動作について説明する。図5Aに示すように、搬送機構1が板状ワークWを保持した状態で、保持テーブル2の上方に位置付けられている。このとき、保持爪46が板状ワークWの外周部に接するように、移動部44によって保持爪ベース41が位置調整されている。また、保持爪ベース41には引張りバネ43を介してピンベース42が連結され、引張りバネ43のバネ力によって板状ワークWの外周部にガイドピン47が引き付けられている。この状態では、規制突起64の先端からピンベース42が離間している。
【0029】
次に図5Bに示すように、搬送機構1が下降してガイドピン47の下端が保持テーブル2に接触され、搬送機構1の高さ位置が調整される。同時に、板状ワークWと保持テーブル2の保持面21との平行な方向での位置関係が調整される。そして、搬送機構1の高さ方向及び平行方向が位置調整された状態で、保持爪46の爪先57が保持面21よりも僅かに高く位置付けられている。このため、保持爪46が保持テーブル2に接触して保持テーブル2を傷つけることがない。
【0030】
次に図5Cに示すように、移動部44によって保持爪ベース41が距離L1だけ押し込まれ、板状ワークWの外周部から保持爪46の爪先57が退避される。このとき、ピンベース42に規制突起64が接触していないので、移動部44の駆動力がピンベース42に伝わることがない。よって、板状ワークWの外周部から保持爪46だけを退避させて、引張りバネ43のバネ力によりガイドピン47を板状ワークWの外周部に接触させ続けることが可能になっている。
【0031】
次に図5Dに示すように、板状ワークWの外周部から保持爪46が離れることで、板状ワークWが保持テーブル2の保持面21に向かって落下する。このとき、ガイドピン47によって板状ワークWの外周部がガイドされ続けるため、保持面21に対して位置合わせ状態を維持しながら板状ワークWが保持面21に降ろされる。そして、板状ワークWが位置合わせ状態で保持面21に載置され、保持面21に板状ワークWが吸引保持される。
【0032】
次に図5Eに示すように、移動部44によって保持爪ベース41が距離L2だけ押し込まれ、保持爪ベース41の規制突起64がピンベース42に突き当たる。そして、図5Fに示すように、保持爪ベース41の規制突起64によって引張りバネ43のバネ力に抗してピンベース42が押し込まれ、板状ワークWの外周部から保持爪46とガイドピン47が一体的に退避する。
【0033】
このように、本実施の形態に係る搬送機構1では、板状ワークWから保持爪46及びガイドピン47を段階的に離間させて、板状ワークWの外周部からガイドピン47が離れるタイミングを遅らせている。これにより、ガイドピン47を残して保持爪46だけを板状ワークWから離間させて、ガイドピン47にガイドさせながら板状ワークWを保持テーブル2の保持面21に載置することが可能になっている。
【0034】
なお、本実施の形態に係る搬送機構1では、電動式の直動アクチュエータで移動部44を構成している。このため、初期設定時における保持面21に対する板状ワークWの位置合わせを容易に行うことができ、搬送機構1の設計誤差等を吸収することができる。この場合、移動部44には、補正値に対応した電気信号が外部装置から入力され、保持面21に対する板状ワークWの位置合わせが実施される。
【0035】
以上のように、本実施の形態に係る搬送機構1によれば、3つの保持爪46により板状ワークWが保持された状態で、引張りバネ43のバネ力によって板状ワークWの外周部の側面にガイドピン47が接触する。また、板状ワークWの外周部から保持爪46が離間しても、ガイドピン47が板状ワークWの外周部の側面に接触し続けて、保持爪46から落下した板状ワークWがガイドピン47に沿ってガイドされる。よって、エッジクランプ式の搬送機構1であっても、搬送機構1に保持された板状ワークWと保持テーブル2の保持面21との平行な方向での位置関係を維持しつつ、位置合わせされた状態で板状ワークWを保持面21に降ろすことが可能になっている。
【0036】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0037】
例えば、上記した実施の形態においては、板状ワークWの外周部を引っ掛けるように、保持爪46の爪先57が突出する構成としたが、この構成に限定されない。保持爪46は板状ワークWを保持可能であればよく、例えば、保持爪46に板状ワークWの外周部を挟むようなV字溝が形成されてもよい。
【0038】
また、上記した実施の形態においては、ガイドピン47が伸縮可能に構成されたが、この構成に限定されない。ガイドピン47は伸縮しないように構成されてもよい。
【0039】
また、上記した実施の形態においては、第1、第2のスライダーとしての上側スライダー55および下側スライダー52がガイドレール51、54上をスライドする構成としたが、この構成に限定されない。第1、第2のスライダーは、ガイドピン47および保持爪46の移動を板状ワークWの径方向に方向付ける構成であればよい。
【0040】
また、上記した実施の形態においては、移動部44が電動シリンダで駆動する構成としたが、この構成に限定されない。移動部44は、保持部4を板状ワークWの径方向に移動させる構成であればよく、例えば、エアーシリンダで駆動してもよい。
【0041】
なお、上記した実施の形態において、規制突起64は、ピンベース42の移動を規制するものであればよく、例えば、立壁部61にボルトをねじ込んで構成されてもよい。また、規制突起64は、立壁部61に一体に形成されていてもよい。
【0042】
なお、上記した実施の形態においては、搬送機構1には各保持爪46に対応して一対のガイドピン47が設けられる構成としたが、この構成に限定されない。搬送機構1には、各保持爪46に対応してガイドピン47が設けられていればよく、ガイドピン47の数は特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明は、保持テーブルの保持面に対する位置合わせ状態を維持しつつ、板状ワークを保持面に降ろすことができるという効果を有し、特に、板状ワークの外周部を保持して搬送するエッジクランプ式の搬送機構に有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 搬送機構
2 保持テーブル
4 保持部
21 保持面
41 保持爪ベース
42 ピンベース
43 引張りバネ
44 移動部
46 保持爪
47 ガイドピン
52 下側スライダー(第2のスライダー)
55 上側スライダー(第1のスライダー)
64 規制突起
W 板状ワーク
図1
図2
図3
図4
図5