【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
【0027】
[試験例1]
チェダーチーズ5kgおよびゴーダチーズ5kgを原料チーズとして用いて、低速せん断乳化釜に投入した。これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム100g、ジリン酸ナトリウム100g、タピオカ加工デンプン(ヒドロキシプロピル澱粉(エーテル化)(松谷化学製ファリネックスTG600))を最終製品であるプロセスチーズ類中に2.0重量%、11.0重量%含有するように添加した後、最終製品の水分含有量が55.0%となるように水を添加し、低速せん断乳化釜で120rpm、85℃まで加熱攪拌した。加熱溶解したチーズを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却してプロセスチーズを製造した。比較として、チェダーチーズ5kg、ゴーダチーズ5kgを原料チーズとして用いて、低速せん断乳化釜に投入し、これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム100g、ジリン酸ナトリウム100g、トウモロコシ加工デンプン(松谷化学製ファリネックスVA70C)を最終製品であるプロセスチーズ類中に2.0重量%、11.0重量%含有するように添加した後、最終製品の水分含有量が55.0%になるように水を添加し、低速せん断乳化釜で120rpm、85℃まで加熱攪拌した。加熱溶解したチーズを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却してとしてプロセスチーズを製造し、糸引き性評価、官能評価を実施した。
【0028】
[評価方法]
(糸引き性の評価)
糸引き性試験:糸引き性について、糸引き試験機(長嶋製作所社製)を用いて評価した。
プロセスチーズ類100gをカップに採取し、これを電磁加熱器で1分間(90℃)加熱溶解させた。その後、カップを直ちに取り出し、85℃になった時点で糸引き試験機(長嶋製作所製)を用いて試験を行った。試験は、毎秒10cmの速度でプロセスチーズ類を引き上げ、プロセスチーズ類の糸が切れるまでの長さを測定し、得られた値をプロセスチーズ類の糸引き性とした。加熱後の放置時間を調整して、50℃まで冷却した場合、および、加熱せずに5℃に冷却したとき攪拌後の糸引き性もあわせて測定した。
◎:糸引き性が30cm以上である。
○:糸引き性が10cm以上30cm未満である。
×:糸引き性が10cm未満である。
【0029】
(官能評価)
風味および食感については、訓練された官能パネラー5人により評価した。
◎(特に良好):口どけが非常に良好であり、ホクホク感があり、ねちゃつきがない。
○(良好):口どけが良好であり、ホクホク感があり、ねちゃつきがほとんどない。
×(不良):口どけが悪く、ホクホク感がなくザラザラしており、ねちゃつきがある。加熱後のオイルオフの有無についてもあわせて評価した。なお、風味、食感に上記評価以外の特徴がある場合は、各チーズ類の特徴として各表に記載した(特に記載すべき事項のないものは「−」で示した)。
【0030】
【表1】
【0031】
結果を表1に示した。その結果、タピオカ加工デンプンを使用したプロセスチーズは、トウモロコシ加工デンプンを使用したプロセスチーズよりも糸引き性が優れていた。この特性は、加熱時および冷却後も維持されていた。タピオカ加工デンプンの添加により、糸引き性、口どけは向上したが歯切れの良いホクホク感は得られなかった。
【0032】
[試験例2]
チェダーチーズ5kgおよびゴーダチーズ5kgを原料チーズとして用いて、低速せん断乳化釜に投入した。これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム100g、ジリン酸ナトリウム100g、タピオカ加工デンプン(ヒドロキシプロピル澱粉(エーテル化)(松谷化学製ファリネックスTG600))0〜4,300g(0〜19.0重量%)を添加した後、最終製品の水分含有量が55.0%となるように水を添加し、低速せん断乳化釜で120rpm、85℃まで加熱攪拌した。加熱溶解したチーズを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却してプロセスチーズを製造し、糸引き性評価、官能評価を実施した。
【0033】
【表2】
【0034】
結果を表2に示した。タピオカ加工デンプンを添加した場合、糸引き性の優れた口どけ良好となったが、19.0重量%以上配合した場合に口どけは悪くなった。
【0035】
[試験例3]
チェダーチーズ5kgおよびゴーダチーズ5kgを原料チーズとして用いて、低速せん断乳化釜に投入した。これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム100g、ジリン酸ナトリウム100g、α化デンプン(日本食品化工製 アルスターH)0〜1,800g(0〜10.0重量%)を添加した後、最終製品の水分含有量が55.0%となるように水を添加し、低速せん断乳化釜で120rpm、85℃まで加熱攪拌した。加熱溶解したチーズを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却してプロセスチーズを製造し、糸引き性評価、官能評価を実施した。
【0036】
【表3】
【0037】
結果を表3に示した。α化デンプンを添加した場合、タピオカ加工デンプンのみでは得られなかったねちゃつき感がなく、歯切れの良いホクホクした食感を有した。しかし、α化デンプンを10.0重量%配合したプロセスチーズは、ザラザラした食感になり、歯切れの良いホクホク感は有していなかった。
【0038】
[実施例1]
チェダーチーズ5kgおよびゴーダチーズ5kgを原料チーズとして用いて、低速せん断乳化釜に投入した。これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム100g、ジリン酸ナトリウム100g、タピオカ加工デンプン(ヒドロキシプロピル澱粉(エーテル化)(松谷化学製ファリネックスTG600))0〜4,300g(0〜19.0重量%)およびα化デンプン(日本食品化工製 アルスターH)0〜1,800g(0〜10.0重量%)を混合した後、最終製品の水分含有量が55.0%となるように水を添加し、低速せん断乳化釜で120rpm、85℃まで加熱攪拌した。加熱溶解したチーズを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却してプロセスチーズ(pH6.0)を製造し、糸引き性評価、官能評価を実施した。
【0039】
【表4】
【0040】
85℃に加熱した際の糸引き性および官能評価の結果を表4に示した。タピオカ加工デンプン(松谷化学製ファリネックスTG600、ファリネックスVA70TJ、スタビローズTA-8)2.0〜18.0重量%、α化デンプン2.0〜9.0重量%配合することにより、良好な糸引き性を有し、かつ、良好な口どけであり、歯切れの良いホクホク感があり、ねちゃつきがないプロセスチーズを製造することができた。なお、50℃加熱時、5℃冷却時においても同様に良好な糸引き性、および、風味・食感を有した。
【0041】
[実施例2]
チェダーチーズ5kgおよびゴーダチーズ5kgを原料チーズとして用いて、低速せん断乳化釜に投入した。これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム100g、ジリン酸ナトリウム100g、タピオカ加工デンプン(ヒドロキシプロピル澱粉(エーテル化)(松谷化学製ファリネックスTG600))2kg、α化デンプン(日本食品化工製 アルスターH)1kgを添加した後、pHを4.5〜6.5となるように調整して最終製品の水分含有量が55.0%になるように水を添加し、低速せん断乳化釜で120rpm、85℃まで加熱攪拌した。加熱溶解したチーズを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却してプロセスチーズを製造し、糸引き性評価、官能評価を実施した。
【0042】
【表5】
【0043】
結果を表5に示した。プロセスチーズのpHをpH 5.0〜6.0に調整することにより、糸引き性、風味の良好なプロセスチーズを製造することができた。
【0044】
[実施例3]
チェダーチーズ5kgおよびゴーダチーズ5kgを原料チーズとして用いて、低速せん断乳化釜に投入した。これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム100g、ジリン酸ナトリウム100g、タピオカ加工デンプン(ヒドロキシプロピル澱粉(エーテル化)(松谷化学製ファリネックスTG600))2000g、α化デンプン(日本食品化工製 アルスターH)1000gを添加した後、最終製品の水分含有量が45.0〜65.0%となるように水を添加し、低速せん断乳化釜で120rpm、85℃まで加熱攪拌した。加熱溶解したチーズを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却してプロセスチーズ(pH5.5)を製造し、糸引き性評価、官能評価を実施した。
【0045】
【表6】
【0046】
結果を表6に示した。プロセスチーズの水分値を48.0〜60.0%に調整することにより糸引き性、風味の良好なプロセスチーズ類を製造することができた。
【0047】
[実施例4]
チェダーチーズ5kgおよびゴーダチーズ5kgを原料チーズとして用いて、低速せん断乳化釜に投入した。これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム100g、ジリン酸ナトリウム100g、タピオカ加工デンプン(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(エステル化)(松谷化学製 ファリネックスVA70TJ))2kg、α化デンプン(日本食品化工製 アルスターE)1kgを添加した後、pHを5.5となるように調整して最終製品の水分含有量が55.0%になるように水を添加し、低速せん断乳化釜で120rpm、85℃まで加熱攪拌した。加熱溶解したチーズを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却してプロセスチーズを製造した。
得られたプロセスチーズの糸引き性試験を行ったところ、加熱時および冷却時とも30cm以上のチーズの伸びが認められ、優れた糸引き性を有していた。また、口どけが非常に良好であり、ホクホク感があり、ねちゃつきがない歯切れの良い食感を有していた。
【0048】
[実施例5]
チェダーチーズ5kgおよびゴーダチーズ5kgを原料チーズとして用いて、低速せん断乳化釜に投入した。これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム100g、ジリン酸ナトリウム100g、タピオカ加工デンプン(酸化澱粉(松谷化学製 スタビローズTA-8))2kg、α化デンプン(日本食品化工製 ネオビスC-60)1kgを添加した後、pHを5.5となるように調整して最終製品の水分含有量が55.0%になるように水を添加し、低速せん断乳化釜で120rpm、85℃まで加熱攪拌した。加熱溶解したチーズを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却してプロセスチーズを製造した。
得られたプロセスチーズの糸引き性試験を行ったところ、加熱時および冷却時とも30cm以上のチーズの伸びが認められ、優れた糸引き性を有していた。また、口どけが非常に良好であり、ホクホク感があり、ねちゃつきがない歯切れの良い食感を有していた。