特許第6092738号(P6092738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092738
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】波力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/16 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
   F03B13/16
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-174791(P2013-174791)
(22)【出願日】2013年8月26日
(65)【公開番号】特開2015-42860(P2015-42860A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2015年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】三井造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】中野 訓雄
(72)【発明者】
【氏名】川口 隆
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−515903(JP,A)
【文献】 特開2013−007380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体と、該胴体に沿って上下運動するフロートと、該フロートの上下運動を回転運動に変換する変換機構と、該変換機構に連結された発電機と、を有する波力発電装置において、
洋上に設置された浮体構造物に設置される少なくとも2つの該波力発電装置が、該浮体構造物に固定するための連結構造物を有しており、
一方の該波力発電装置の該連結構造物が、該胴体の上方から該浮体構造物に向かって延伸した上部ガイドと、該上部ガイドの端部に設置された上部第1固定バンドと、該胴体の下方から該浮体構造物に向かって延伸した下部ガイドと、該下部ガイドの端部に設置された下部第1固定バンドと、を有しており、
他方の該波力発電装置の該連結構造物が、該胴体の上方から該浮体構造物に向かって延伸した上部ガイドと、該上部ガイドの端部に設置された上部第2固定バンドと、該胴体の下方から該浮体構造物に向かって延伸した下部ガイドと、該下部ガイドの端部に設置された下部第2固定バンドと、を有していて、
前記下部第1固定バンドが前記浮体構造物の一部と接触する面の近傍に設置された永久磁石又は電磁石を有しており、該下部第1固定バンドが該永久磁石又は該電磁石の磁力により該浮体構造物の一部に固定される構成を有していることを特徴とする波力発電装置。
【請求項2】
胴体と、該胴体に沿って上下運動するフロートと、該フロートの上下運動を回転運動に変換する変換機構と、該変換機構に連結された発電機と、を有する波力発電装置において、
該波力発電装置が、洋上に設置された浮体構造物に固定するための連結構造物を有しており、
該連結構造物が、前記胴体の上方に該浮体構造物に対面し且つ略水平となるように設置された補助ガイドと、該補助ガイドの両端近傍からそれぞれ該浮体構造物に向かって延伸した2つの上部ガイドと、2つの該上部ガイドの端部にそれぞれ設置された2つの上部第1固定バンドと、を有しており、
且つ、該胴体の下方に該浮体構造物に対面し且つ略水平となるように設置された補助ガイドと、該補助ガイドの両端近傍からそれぞれ該浮体構造物に向かって延伸した2つの下部ガイドと、2つの該下部ガイドの端部にそれぞれ設置された2つの下部第1固定バンドと、を有していることを特徴とする波力発電装置。
【請求項3】
前記下部第1固定バンドが、前記浮体構造物の一部と接触する面の近傍に設置された永久磁石又は電磁石を有しており、
該下部第1固定バンドが、該永久磁石又は該電磁石の磁力により該浮体構造物の一部に固定される構成を有している請求項2に記載の波力発電装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の波力発電装置の海上輸送方法であって、
該波力発電装置が、前記胴体を挟んで前記下部第1固定バンド又は下部第2固定バンドの反対側となる位置に設置された偏心バラストタンクを有しており、
前記フロートを該胴体の任意の位置に固定するとともに、該偏心バラストタンクの重量の調整により該波力発電装置を水中で直立させ、水中で直立した該波力発電装置を船舶で曳航することを特徴とする海上輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上に浮かべた発電ブイの運動により、波からエネルギーを取り出し発電を行う波力発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自然エネルギーを利用して発電を行う波力発電装置として、ブイ型の波力発電装置が開発されている(例えば特許文献1参照)。このブイ型の波力発電装置は、波によって上下運動するフロートと、フロートの上下運動を回転運動に変換する変換機構と、変換機構の回転運動により発電を行う発電機を有している。この構成により、波を利用した発電が可能となる。
【0003】
なお、波力発電装置は、海底に打ち込んだ杭を介して固定される杭係留方式(着床方式)や、ワイヤーを介して海底に固定されたアンカーにより係留される単索緊張係留方式により、海域に設置される。
【0004】
しかし、上記の波力発電装置はいくつかの問題点を有している。第1に、波力発電装置の設置コストが高いという問題を有している。これは、例えば杭係留方式が採用された場合は、この杭を海底に打ち込むためのコストが多大となる。また、単索緊張係留方式が採用された場合は、アンカーの設置コスト等が多大となる。特に、波力発電装置を水深の深い海域に設置する際には、杭又はアンカーを設置するコストが増大する。
【0005】
第2に、送電線の敷設コストが高いという問題を有している。特に、沿岸部から離れた場所に波力発電装置を設置する場合は、海底ケーブル等の敷設が必要となり、このコストが多大となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−047522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、波からエネルギーを取り出し発電を行う波力発電装置において、設置コストを抑制した波力発電装置を提供することである。また、設置コストを抑制しながら、長期間安定して効率的に発電を行うことができる波力発電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明に係る波力発電装置は、胴体と、該胴体に沿って上下運動するフロートと、該フロートの上下運動を回転運動に変換する変換機構と、該変換機構に連結された発電機と、を有する波力発電装置において、洋上に設置された浮体構造物に設置される少なくとも2つの該波力発電装置が、該浮体構造物に固定するための連結構造物を有しており、一方の該波力発電装置の該連結構造物が、該胴体の上方から該浮体構造物に向かって延伸した上部ガイドと、該上部ガイドの端部に設置された上部第1固定バンドと、該胴体の下方から該浮体構造物に向かって延伸した下部ガイドと、該下部ガイドの端部に設置された下部第1固定バンドと、を有しており、他方の該波力発電装置の該連結構造物が、該胴体の上方から該浮体構造物に向かって延伸した上部ガイドと、該上部ガイドの端部に設置された上部第2固定バンドと、該胴体の下方から該浮体構造物に向かって延伸した下部ガイドと、該下部ガイドの端部に設置された下部第2固定バンドと、を有していて、前記下部第1固定バンドが前記浮体構造物の一部と接触する面の近傍に設置された永久磁石又は電磁石を有しており、該下部第1固定バンドが該永久磁石又は該電磁石の磁力により該浮体構造物の一部に固定される構成を有していることを特徴とする。
【0011】
この構成により、波力発電装置の設置コストを大幅に低減できる。これは、波力発電装置を設置するための杭やアンカー等の製造及び設置が不要となるからである。また、浮体構造物が洋上風力発電装置等の送電線を備えた構造物である場合、送電線の敷設コストを大幅に低減できる。これは、風力発電装置の送電線を利用できるからである。
【0012】
体構造物の両側から接近させた部第1固定バンドと部第2固定バンドが、互いに連結される構成を有しており、体構造物の両側から接近させた部第1固定バンドと部第2固定バンドが、互いに連結される構成にすることができる。
【0013】
この構成により、波力発電装置の設置コストを更に低減できる。これは、第1固定バンド及び第2固定バンドの形状の変更により、波力発電装置をあらゆる形状の浮体構造物に設置することができるからである。また、波力発電装置の設置コストを抑制しながら、長期間安定した効率的な発電を実現することができる。これは、2つの波力発電装置の一部が直接的に連結される構造により、波力発電装置が浮体構造物を中心として波の力により回転することを防止し、フロートの正面で効率的に波のエネルギーを受けられるからである。
【0014】
部第1固定バンドが嵌合雄部又は嵌合雌部を有しており、部第2固定バンドが嵌合雌部又は嵌合雄部を有しており、部第1固定バンドと部第2固定バンドの連結が、合雄部と合雌部の嵌合により実現される構成にすることができる。
【0015】
この構成により、波力発電装置の設置コストを更に低減できる。これは、2つの下部固定バンドの連結が嵌合雄部及び嵌合雌部の嵌合により実現でき、下部第1固定バンドと下部第2固定バンドを連結する水中作業が不要となるからである。
【0016】
上記の目的を達成するための本発明に係る波力発電装置は、胴体と、該胴体に沿って上下運動するフロートと、該フロートの上下運動を回転運動に変換する変換機構と、該変換機構に連結された発電機と、を有する波力発電装置において、該波力発電装置が、洋上に設置された浮体構造物に固定するための連結構造物を有しており、該連結構造物が、前記胴体の上方に該浮体構造物に対面し且つ略水平となるように設置された補助ガイドと、該補助ガイドの両端近傍からそれぞれ該浮体構造物に向かって延伸した2つの上部ガイドと
、2つの該上部ガイドの端部にそれぞれ設置された2つの上部第1固定バンドと、を有しており、且つ、該胴体の下方に該浮体構造物に対面し且つ略水平となるように設置された補助ガイドと、該補助ガイドの両端近傍からそれぞれ該浮体構造物に向かって延伸した2つの下部ガイドと、2つの該下部ガイドの端部にそれぞれ設置された2つの下部第1固定バンドと、を有していることを特徴とする。
【0017】
この構成により、波力発電装置の設置コストを大幅に低減できる。これは、波力発電装置を設置するための杭やアンカー等の製造及び設置が不要となるからである。また、浮体構造物が洋上風力発電装置等の送電線を備えた構造物である場合、送電線の敷設コストを大幅に低減できる。これは、風力発電装置の送電線を利用できるからである。更に、波力発電装置の設置コストを抑制しながら、長期間安定した効率的な発電を実現することができる。これは、補助ガイド及び補助ガイドに設置された2つの固定バンドを利用する構成により、波力発電装置が浮体構造物を中心として波の力により回転することを防止し、フロートの正面で効率的に波のエネルギーを受けられるからである。
【0018】
上記の波力発電装置において、前記下部第1固定バンドが、前記浮体構造物の一部と接触する面の近傍に設置された永久磁石又は電磁石を有しており、該下部第1固定バンドが、該永久磁石又は該電磁石の磁力により該浮体構造物の一部に固定される構成を有していることを特徴とする。
【0019】
この構成により、浮体構造物への第2固定バンドの固定が磁力により実現でき、下部第1固定バンドと浮体構造物を連結する水中作業が不要となるからである。
【0020】
上記にいずれかに記載の波力発電装置の海上輸送方法であって、該波力発電装置が、前記胴体を挟んで前記下部第1固定バンド又は下部第2固定バンドの反対側となる位置に設置された偏心バラストタンクを有しており、前記フロートを該胴体の任意の位置に固定するとともに、該偏心バラストタンクの重量の調整により該波力発電装置を水中で直立させ、水中で直立した該波力発電装置を船舶で曳航することを特徴とする。
【0021】
この構成により、水中で直立した波力発電装置を浮体構造物に接近させれば、その後容易に連結することができるため、波力発電装置の設置コストを更に低減することができる。なお、波力発電装置の直立とは、胴体の中心軸が垂直となった状態をいう。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る波力発電装置によれば、設置コストを抑制した波力発電装置を提供することができる。また、設置コストを抑制しながら、長期間安定して効率的に発電を行うことができる波力発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る実施の形態の波力発電装置の概略図である。
図2】本発明に係る実施の形態の波力発電装置の図である。
図3】本発明に係る実施の形態の波力発電装置の設置例を示した概略図である。
図4】本発明に係る実施の形態の波力発電装置の一部の断面図である。
図5】本発明に係る異なる実施の形態の波力発電装置の図である。
図6】本発明に係る異なる実施の形態の波力発電装置の部分拡大図である。
図7】本発明に係る異なる実施の形態の波力発電装置の図である。
図8】本発明に係る異なる実施の形態の波力発電装置の設置例を示した概略図である。
図9】本発明に係る異なる実施の形態の波力発電装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態の波力発電装置について、図面を参照しながら説明する。図1に本発明の実施の形態の波力発電装置1の概略図を示す。図1の左方に正面、図1の右方に右側面を示している。2つの波力発電装置1は、洋上風力発電装置10の支持支柱11の両側に設置されている。ここで、50は、海面50を示している。
【0025】
図2に、波力発電装置1の詳細を示す。波力発電装置1は、胴体3と、胴体3に沿って上下運動するフロート4と、フロート4の上下運動を回転運動に変換する変換機構(図示しない)と、変換機構に連結された発電機(図示しない)と、を有している。
【0026】
また、波力発電装置1は、浮体構造物11(例えば洋上風力発電装置10の支持支柱11等)と連結するための連結構造物2を有している。図2左方に示す一方の波力発電装置1の連結構造物2は、胴体3の上方から浮体構造物11に向かって延伸した上部ガイド23と、上部ガイド23の端部に設置されており且つ浮体構造物11の一部に固定される上部第1固定バンド21uと、胴体3の下方から浮体構造物11に向かって延伸した下部ガイド24と、下部ガイド24の端部に設置されており且つ浮体構造物11の一部に固定される下部第1固定バンド21dと、を有している。
【0027】
更に、波力発電装置1は、浮体構造物11に対して2つ以上を1組として設置される。図2右方に示す他方の波力発電装置の連結構造物は、胴体3の上方から浮体構造物11に向かって延伸した上部ガイド23と、上部ガイド23の端部に設置されており且つ浮体構造物11の一部に固定される上部第2固定バンド22uと、胴体3の下方から浮体構造物11に向かって延伸した下部ガイド24と、下部ガイド24の端部に設置されており且つ浮体構造物11の一部に固定される下部第2固定バンド22dと、を有している。
【0028】
加えて、浮体構造物11の両側から接近させた上部第1固定バンド21uと上部第2固定バンド22uが、互いに直接的に連結される構成を有しており、浮体構造物11の両側から接近させた下部第1固定バンド21dと下部第2固定バンド22dが、互いに直接的に連結される構成を有している。つまり、上部第1固定バンド21u、上部第2固定バンド22u、下部第1固定バンド21d及び下部第2固定バンド22d(以下、総称する場合は固定バンドとする)は、例えばそれぞれ半円形に形成されており、両側から浮体構造物11を挟み込むように連結される。
【0029】
このとき、固定バンドは、その端部にフランジ25を有しており、それぞれに形成されたフランジ25を複数のボルト等により接合して、浮体構造物11に固定することができる。なお、上部ガイド23及び下部ガイド24は、胴体3から浮体構造物11に向かって略水平となるように延伸されている。
【0030】
図3に、2つの波力発電装置1を、風力発電装置の支持支柱(浮体構造物)11に設置した際の概略を示す。図3の左方に波力発電装置1の正面、図3の右方に波力発電装置1の右側面を示す。この2つの波力発電装置1は、フロート4のフロート正面41が、波Fの上流側に面するように配置されることが望ましい。
【0031】
次に、波力発電装置1を、支持支柱11に設置する方法について説明する。まず、2つの波力発電装置1を、支持支柱11の両側からそれぞれ接近させる。次に、上部第1固定バンド21u及び上部第2固定バンド22uを、支持支柱11を挟み込むように配置し、フランジ25にボルト等を連通させて互いに連結する。同様に、海水中に位置する下部第1固定バンド21d及び下部第2固定バンド22dも互いに連結する。この際、水中での連結作業は、ダイバー等が行う必要がある。その後、波力発電装置1の発電機に接続された送電ケーブルを、風力発電装置10の送電ケーブルに接続する。
【0032】
上記の構成により、本発明の波力発電装置1は以下の作用効果を得ることができる。第1に、波力発電装置の設置コストを大幅に低減できる。これは、波力発電装置を設置するための杭やアンカー等の製造及び設置が不要となるからである。また、固定バンドの形状の変更により、波力発電装置をあらゆる形状の浮体構造物に設置することができるからである。特に、既に設置された洋上風力発電装置や他の浮体構造物等に、容易に波力発電装置を設置することができる。
【0033】
第2に、送電線の敷設コストを大幅に低減できる。これは、洋上風力発電装置10の送電線等の送電設備を利用できるからである。
【0034】
第3に、波力発電装置1の作動の安定性を向上することができる。これは、2つの波力発電装置1の一部が直接的に連結される構造により、波力発電装置1が支持支柱11等の浮体構造物を中心として、波の力により回転することを防止できるからである。つまり、図2及び図3右方に示すように、波Fの衝突により波力発電装置1に生じたモーメントMが、第1固定バンドと第2固定バンドの接合部で相殺される。このため、波力発電装置1は、長期間安定して効率的に発電を行うことができる。ここで、モーメントMにより波力発電装置1が支持支柱11に対して回転した場合、フロート正面41に対して波Fが斜めに衝突し、波力発電装置1の発電効率が低下する可能性がある。
【0035】
なお、波力発電装置1は、風力発電装置10が海底に打ち込んだ杭を介して固定される杭係留方式であっても、ワイヤーを介して海底に固定されたアンカーにより係留されるワイヤー係留方式であっても、連結構造物2を介して同様に設置することができる。
【0036】
また、風力発電装置10に設置される波力発電装置1は、2つに限られない。例えば、波Fの方向が変化する海域等では3つの波力発電装置1を設置するように構成してもよい。この場合、波力発電装置1の固定バンドを、それぞれ120度の中心角を有する扇形に形成し、3つの固定バンドを連結して円形となるように構成できる。更に、4つ以上の波力発電装置1を設置するように構成してもよい。この場合、波力発電装置1の固定バンドを、それぞれ90度の中心角を有する扇形に形成する方法、又は180度の中心角を有する2組の扇形をそれぞれ連結する方法のいずれも採用可能である。ただし、波力発電装置1のフロート4は、他のフロート4や支持支柱11の下流側となったとき、発電効率が低下してしまう。
【0037】
図4に、波力発電装置1の断面の概略を示す。図4の左方の波力発電装置1は、波により胴体3に沿って上下運動するフロート4と、フロート4の上下運動を回転運動に変換する変換機構5と、変換機構5に連結された発電機6と、を有している。変換機構5は、フロート4に設置されたラック51と、ラック51の直進運動を受けて回転するピニオンギア52と、を有している。このピニオンギア52は、その回転力を発電機6に伝達するように構成されている。この波力発電装置1は、フロート4の上下運動に伴い、ラック51が上下運動し、ピニオンギア52が回転するように構成されている。
【0038】
この構成により、波力発電装置1を低コストで製造することが可能となる。これは、従来の変換機構5を利用することができるからである。
【0039】
図4の右方に、異なる実施例の波力発電装置1Aを示す。この波力発電装置1Aの変換機構5Aは、フロート4に設置されたフロート側磁石54と、胴体3内に配置され且つフロート側磁石54と磁気的に結合可能に構成された胴体側磁石55と、胴体側磁石55に固定されたラック56と、ラック56の直進運動を受けて回転するピニオンギア52Aと、を有している。
【0040】
この波力発電装置1Aは、フロート4の上下運動に伴い、フロート側磁石54が上下運動し、この上下運動が磁気結合により胴体側磁石55に伝達されるように構成されている
。また、波力発電装置1Aは、胴体側磁石55の上下運動を、例えば、ラック56及びピニオンキア52Aを介して、発電機6に伝達するように構成されている。
【0041】
この構成により、波力発電装置1Aは、以下の作用効果を得ることができる。第1に、波力発電装置の設置コストを大幅に低減できる。これは、波力発電装置1Aを浮体構造物に設置する際の設計の自由度を向上できるからである。具体的には、波力発電装置1Aは、フロート4が胴体3に沿って移動する空間が確保されれば、発電を行える。そのため、図4の左方に示すように、ラック51が胴体3の上方に突出するような構成を有さないため、波力発電装置1Aを浮体構造物に設置する際の制限が生じにくい。
【0042】
第2に、波力発電装置1Aが故障する可能性を低減し、作動の安定性を向上することができる。これは、胴体側磁石55及びフロート側磁石54による磁気結合の利用により、胴体3に水密構造を採用し、胴体3の内部の発電機6等に水がかからない構造を容易に実現できるからである。つまり、波力発電装置1Aは、図4の左方に示すように胴体3にラック51を貫通させるための開口部を形成する必要がないため、海水や雨水等が胴体3内へ侵入することを防止できる。
【0043】
なお、波力発電装置1Aは、磁気結合の代わりに、電磁誘導を利用して発電を行う構成とされてもよい。この構成により、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
図5に、本発明の異なる実施の形態の波力発電装置1Bの詳細を示す。この波力発電装置1Bは、図2に示した実施例とは異なる連結構造物2Bを有している。この連結構造物2Bを構成する下部第1固定バンド21dは、下方に突出するように構成された嵌合雄部27を有している。また、下部第2固定バンド22dは、上方を開口した嵌合雌部28を有している。図6に、嵌合雄部27と嵌合雌部28の近傍の拡大図を示す。
【0045】
次に、波力発電装置1Bを、支持支柱11に設置する際の方法について説明する。まず、2つの波力発電装置1Bを、支持支柱11の両側からそれぞれ接近させる。次に、下部第1固定バンド21dの嵌合雄部27を、下部第2固定バンド22dの嵌合雌部28に挿入する。このとき、少なくとも一方の波力発電装置1を傾斜させれば、嵌合雄部27と嵌合雌部28の嵌合は容易に実現することができる。その後、上部第1固定バンド21u及び上部第2固定バンド22uを、支持支柱11の両側から挟み込むように配置し、フランジ25にボルト等を連通させて互いに連結する。最後に、波力発電装置1の発電機に接続された送電ケーブルを、洋上風力発電装置10等の送電ケーブルに接続する。
【0046】
この構成により、波力発電装置の設置コストを更に低減できる。これは、下部第1固定バンド21dと下部第2固定バンド22dの連結が、嵌合雄部27及び嵌合雌部28の嵌合により実現でき、水中でボルトを固定する等の作業が不要となるからである。つまり、ダイバーによる水中作業が不要となるため、設置コストを低減することができる。
【0047】
なお、下部第1固定バンド21dに嵌合雄部27を、下部第2固定バンド22dに嵌合雌部28を形成した例について説明したが、逆であっても同様の作用効果を得ることができる。また、嵌合部の構造は、上記に限られない。水中での作業を不要とする構造であれば、他の周知の連結構造を採用することができる。
【0048】
更に、図6に示すように、嵌合雄部27又は嵌合雌部28の少なくとも一方の近傍に、回転防止プレート29を設置してもよい。この構成により、図5に示したモーメントMに抗する力を増大することができる。そのため、図3に示した実施例と同様に、波力発電装置1Bの作動の安定性を向上することができる。
【0049】
図7に、本発明の異なる実施の形態の波力発電装置1Cの詳細を示す。この波力発電装置1Cは、図2及び図5に示した実施例とは異なる連結構造物2Cを有している。この連結構造物2Cは、胴体3の上方に支持フレーム12等の浮体構造物に対面し且つ略水平となるように設置された補助ガイド23sと、補助ガイド23sの両端近傍からそれぞれ支持フレーム12等の浮体構造物に向かって延伸した2つの上部ガイド23と、2つの上部ガイド23の端部にそれぞれ設置された2つの上部第1固定バンド21uと、を有している。
【0050】
また、この連結構造物2Cは、胴体3の下方に支持フレーム12等の浮体構造物に対面し且つ略水平となるように設置された補助ガイド24sと、補助ガイド24sの両端近傍からそれぞれ支持フレーム12等の浮体構造物に向かって延伸した2つの下部ガイド24と、2つの下部ガイド24の端部にそれぞれ設置された2つの下部第1固定バンド21dと、を有している。
【0051】
この固定バンドは、前述の例とは異なり、第1固定バンドと第2固定バンドがそれぞれ独立している。それぞれの固定バンドは、円環状を分割した形状に形成されている。この分割された固定バンドは、前述の例と同様にフランジ等を有しており、ボルト等で連結し、浮体構造物の支持フレーム12等に固定される。
【0052】
図8に、2つの波力発電装置1Cを、風力発電装置の支持フレーム(浮体構造物)12に設置した際の概略を示す。図8の左方に波力発電装置1Cの正面、図8の右方に波力発電装置1Cの右側面を示す。この2つの波力発電装置1Cは、フロート4のフロート正面41が、波Fの上流側に面するように配置されることが望ましい。
【0053】
次に、波力発電装置1Cを、支持フレーム12に設置する際の方法について、図7及び図8を参照しながら説明する。まず、一方の波力発電装置1Cを、支持フレーム12に接近させる。次に、2つの上部第1固定バンド21uでそれぞれ支持フレーム12を挟み込み、フランジにボルト等を連通させて固定する。同様に、水中に位置する2つの下部第1固定バンド21dも支持フレーム12に固定する。その後、波力発電装置1Cの発電機に接続された送電ケーブルを、洋上風力発電装置10の送電ケーブルに接続する。上記と同様に、他方の波力発電装置1Cも支持フレーム12に固定する。
【0054】
上記の構成により、波力発電装置1Cは以下の作用効果を得ることができる。第1に、波力発電装置1Cは、支持フレーム12等の細い支柱に対しても設置することができる。つまり、波力発電装置1Cの設置個所の汎用性を高めることができる。そのため、波力発電装置1Cは、例えば洋上で石油の生産等を行う洋上プラットフォームの支持フレーム等にも設置することが可能となる。特に、既に設置された洋上風力発電装置や他の浮体構造物等に、容易に適用させ、波力発電装置を設置することができる。
【0055】
第2に、波力発電装置1Cの作動の安定性を向上することができる。これは、補助ガイド23s及び補助ガイド23sに設置された2つの固定バンドを利用する構成により、波力発電装置1Cが支持フレーム12等の浮体構造物を中心として、波の力により回転することを防止できるからである。つまり、図7及び図8に示すように、波Fの衝突により波力発電装置1Cに生じたモーメントMが、補助ガイド23sに設置された2つの固定バンドにより支持される。このため、波力発電装置1Cは、長期間安定して効率的に発電を行うことができる。
【0056】
なお、図7に示した下部第2固定バンド22dのように、下部第1固定バンド21d及び下部第2固定バンド22dを扇形に構成してもよい。この扇形の固定バンドは、支持フレーム12に接触しているのみで、特に固定されていない状態である。この構成により、
水中作業が不要となり、波力発電装置1Cの設置コストを低減することができる。
【0057】
また、上記の扇形の固定バンドに、永久磁石を設置し、支持フレーム12等の浮体構造物に設置する構成としてもよい。この構成により、水中作業を不要としながら、波力発電装置1Cの設置の安定性を向上することができる。
【0058】
更に、上記の扇形の固定バンドに、電磁石を設置する構成としてもよい。この電磁石の電源は、波力発電装置1Cの発電機6から供給するように構成することが望ましい。この構成により、支持フレーム12に対する下部第2固定バンド22dの固定力を制御することができる。具体的には、波力発電装置1Cにおける発電量に比例して、電磁石による固定力を向上させるように制御することができる。この場合は、フロート4に波Fが衝突し、波力発電装置1Cに生じるモーメントM等の外力が大きくなるとき、波力発電装置1Cにおける発電量も増加し、発電量の増加に伴い、電磁石による固定力を増加させるように構成することができる。また、波が穏やかで、波力発電装置1Cに生じるモーメントM等の外力が小さくなるときに、発電量が減少し、発電量の減少に伴い電磁石による固定力を減少させるように構成することができる。この構成により、水中作業を不要としながら、波力発電装置1Cの設置の安定性を向上することができる。
【0059】
図9に、波力発電装置1を、浮体構造物11、12の近傍まで船舶30により曳航する際の様子を示す。波力発電装置1は、胴体3を挟んで下部第1固定バンド21dの反対側となる位置に設置された偏心バラストタンク31を有している。この偏心バラストタンク31には、海水又はコンクリート等のおもりが充填されている。また、フロート4は、胴体3に固定された状態である。
【0060】
上記の偏心バラストタンク31を設置する構成により、波力発電装置1の設置コストを更に低減することができる。これは、偏心バラストタンク31により水中で直立するように準備された波力発電装置1は、タグボート等の船舶30で浮体構造物11、12に接近させれば、その後容易に連結することができる。つまり、波力発電装置1を船台等に載置して運搬する場合は、浮体構造物11、12への設置作業において、クレーン船等が必要となるが、図9の構成では、クレーン船等が不要となる。そのため、波力発電装置1の設置作業に係る時間及びコストを抑制することができる。
【0061】
また、上記の構成により、波力発電装置1を設置する際の高さ方向の位置合わせを容易に行うことができる。これは、取り付け時の潮位を考慮しつつ、胴体3に対するフロート4の固定位置、及び偏心バラストタンク31の重量等を調整することにより、浮体構造物11、12に対する波力発電装置1の設置位置を決定できるからである。
【0062】
なお、波力発電装置1の設置作業が完了した後は、偏心バラストタンク31を取り外し回収する構成としてもよく、偏心バラストタンク31を胴体3に固定したまま波力発電装置1を運用する構成としてもよい。ここで、偏心バラストタンク31を回収する際は、偏心バラストタンク31に連結した回収ワイヤー32を利用して、水中作業を伴わず回収することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1、1B、1C 波力発電装置
2、2B、2C 連結構造物
3 胴体
4 フロート
5 変換機構
6 発電機
11 支持支柱(浮体構造物)
12 支持フレーム(浮体構造物)
21u 上部第1固定バンド
21d 下部第1固定バンド
22u 上部第2固定バンド
22d 下部第2固定バンド
23 上部ガイド
23s 補助ガイド
24 下部ガイド
24s 補助ガイド
27 嵌合雄部
28 嵌合雌部
29 回転防止プレート
30 船舶
31 偏心バラストタンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9