(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)室温で固形の1分子中に2個以上のエポキシ基を含むエポキシ樹脂、
(B)室温で固形の1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を含む硬化剤:前記(A)成分中のエポキシ基1当量に対し、該成分(B)中の、エポキシ基と反応性を有する基が0.5〜1.5当量となる量、
(C)硬化促進剤:前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して1〜20質量部、
(D)質量平均粒径が0.1〜1.5μmであるフレーク状又は球状の導電性フィラーa、質量平均粒径が2〜5μmであるフレーク状の導電性フィラーb、
:前記導電性フィラーa、bの質量比(a/b)が、0.1から0.5であり、前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して1000〜4000質量部、
(E)希釈剤:前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して50〜300質量部
を含有
し、
前記(E)希釈剤が、下記一般式(1)で表されるものであり、純度95%以上、25℃の粘度が5〜20mPa・s、沸点が200℃以上のものであることを特徴とする導電性エポキシ樹脂組成物。
【化1】
前記(D)成分中の前記導電性フィラーaが、融点が180℃以下のSn/In、Sn/Bi、Sn/In/Biの合金又はAg、Niから選ばれる少なくとも1種を含んでおり、前記導電性フィラーbが、Ag、Cu、Al、Niから選ばれる少なくとも1種を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の導電性エポキシ樹脂組成物。
光電変換可能な基板の少なくとも一方の面に、集電電極層膜として金属酸化膜が形成された光電変換可能な基板の上に、電極配線を形成し、前記電極配線が、タブで半田接続される太陽電池セルの製造方法であって、
(i)前記金属酸化膜上に、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の導電性エポキシ樹脂組成物を、スクリーン印刷塗布する工程と、
(ii)前記導電性エポキシ樹脂組成物を熱硬化して、電極配線を形成する工程と
を有することを特徴とする太陽電池セルの製造方法。
前記工程(i)において、配線幅20〜60μmの範囲で、前記スクリーン印刷塗布を行い、前記工程(ii)において、180℃〜250℃で、5分間〜1時間加熱することにより熱硬化し、前記タブとして、Sn/Ag/Cu又はSn/Agの鉛フリー半田を被覆したCu箔を用い、前記半田接続を220〜400℃で行うことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池セルの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、導電性、接着性、印刷性、低ブリード性に優れた導電性エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。また、該組成物を用いた太陽電池セル、及び該太陽電池セルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、(A)室温で固形の1分子中に2個以上のエポキシ基を含むエポキシ樹脂、
(B)室温で固形の1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を含む硬化剤:前記(A)成分中のエポキシ基1当量に対し、該成分(B)中の、エポキシ基と反応性を有する基が0.5〜1.5当量となる量、
(C)硬化促進剤:前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して1〜20質量部、
(D)質量平均粒径が0.1〜1.5μmであるフレーク状又は球状の導電性フィラーa、質量平均粒径が2〜5μmであるフレーク状の導電性フィラーb、
:前記導電性フィラーa、bの質量比(a/b)が、0.1から0.5であり、前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して1000〜4000質量部、
(E)希釈剤:前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して50〜300質量部
を含有するものであることを特徴とする導電性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0009】
このような導電性エポキシ樹脂組成物であれば、導電性、接着性、印刷性、低ブリード性に優れる。
【0010】
また、前記(D)成分中の前記導電性フィラーaが、融点が180℃以下のSn/In、Sn/Bi、Sn/In/Biの合金又はAg、Niから選ばれる少なくとも1種を含んでおり、前記導電性フィラーbが、Ag、Cu、Al、Niから選ばれる少なくとも1種を含むものであることが好ましい。
【0011】
このような化合物を用いることによって、より高い導電性を有する導電性エポキシ樹脂組成物とすることができる。
【0012】
また、前記(E)希釈剤が、下記一般式(1)で表されるものであり、純度95%以上、25℃の粘度が5〜20mPa・s、沸点が200℃以上のものであることが好ましい。
【化1】
【0013】
このような化合物を用いることによって、導電性エポキシ樹脂組成物の粘度を容易に調整することができる。
【0014】
また、前記(C)硬化促進剤が、下記一般式(2)で表されるものであることが好ましい。
【化2】
(R
15は、メチル基またはメチロール基であり、R
16は、炭素数1〜10の一価炭化水素基である。)
【0015】
このような化合物を用いることによって、導電性エポキシ樹脂組成物中の(A)成分と(B)成分との反応を、より促進することができる。
【0016】
更に、本発明では、上記本発明の導電性エポキシ樹脂組成物の硬化物を有するものであることを特徴とする太陽電池セルを提供する。
【0017】
本発明の組成物は、導電性、接着性、印刷性、低ブリード性に優れる。そのため、本発明の組成物の硬化物を有する太陽電池セルは、導電性、低ブリード性に優れ、良好な品質特性を有するものとなる。
【0018】
また、前記太陽電池セルにおいて、集電電極層膜がインジウム、スズ混合酸化膜(ITO)で構成されたものであることが好ましい。
【0019】
本発明の組成物は、このような太陽電池セルの電極配線として、特に好適に用いることができる。
【0020】
更に、本発明では、光電変換可能な基板の少なくとも一方の面に、集電電極層膜として金属酸化膜が形成された光電変換可能な基板の上に、電極配線を形成し、前記電極配線が、タブで半田接続される太陽電池セルの製造方法であって、
(i)前記金属酸化膜上に、上記本発明の導電性エポキシ樹脂組成物を、スクリーン印刷塗布する工程と、
(ii)前記導電性エポキシ樹脂組成物を熱硬化して、電極配線を形成する工程と
を有することを特徴とする太陽電池セルの製造方法を提供する。
【0021】
このような太陽電池セルの製造方法であれば、信頼性の高い太陽電池セルを安定して得ることができる。
【0022】
また、前記工程(i)において、配線幅20〜60μmの範囲で、前記スクリーン印刷塗布を行い、前記工程(ii)において、180℃〜250℃で、5分間〜1時間加熱することにより熱硬化し、前記タブとして、Sn/Ag/Cu又はSn/Agの鉛フリー半田を被覆したCu箔を用い、前記半田接続を220〜400℃で行うことが好ましい。
【0023】
本発明の太陽電池セルの製造方法は、このような条件で行うことが、特に好適である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の導電性エポキシ樹脂組成物は、導電性、接着性、印刷性、低ブリード性、耐熱性、及び耐湿性に優れる。特に、集電電極層膜が、ITOで構成された基板に対し、高い導電性と高接着性を有する。更に、本発明の組成物は、ITO等で構成された集電電極層膜上に、配線幅20μm〜60μmの範囲で、印刷が可能で、かつ、ブリードなく形成することができる。そのため、本発明の組成物の硬化物を電極配線として用いる太陽電池セルは、導電性、低ブリード性に優れ、良好な品質特性を有するものとなる。また、本発明の太陽電池セルの製造方法であれば、信頼性の高い太陽電池セルを確実に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をより詳細に説明する。
上記のように、導電性、接着性、印刷性、低ブリード性に優れる導電性エポキシ樹脂組成物が求められている。
【0026】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、室温で固形のエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する樹脂組成物が、導電性、接着性、低ブリード性に優れることを見出した。更に、このような組成物は、配線幅20μm〜60μmの範囲で基板上に印刷(微配線化)できることを見出し、本発明を完成させた。
【0027】
即ち本発明の導電性エポキシ樹脂組成物は、(A)室温で固形の1分子中に2個以上のエポキシ基を含むエポキシ樹脂、(B)室温で固形の1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を含む硬化剤:(A)成分中のエポキシ基1当量に対し、成分(B)中の、エポキシ基と反応性を有する基が0.5〜1.5当量となる量、(C)硬化促進剤:(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して1〜20質量部、(D)質量平均粒径が0.1〜1.5μmであるフレーク状又は球状の導電性フィラーa、質量平均粒径が2〜5μmであるフレーク状の導電性フィラーb:導電性フィラーa、bの質量比(a/b)が、0.1から0.5であり、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して1000〜4000質量部、(E)希釈剤:(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して50〜300質量部を含有するものである。
【0028】
以下、本発明の導電性エポキシ樹脂組成物について、詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
[(A)エポキシ樹脂]
(A)成分のエポキシ樹脂は、室温(25℃)で固形(固体状)の1分子中に2個以上のエポキシ基を含むものであり、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、下記(3)式で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用しても良い。室温で固形のエポキシ樹脂であれば、ブリードが発生しにくい。
【0030】
【化3】
(式中、R
1は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基の中から選択される同一もしくは異なる原子又は基であり、aは0〜4の整数、bは0〜3の整数、Qは0〜10の整数である。)
【0031】
上記式(3)で表されるエポキシ樹脂の具体例としては、以下のものが例示される。
【化4】
(式中、pは0.5〜1.5(平均値)である。)
【0032】
上記式(3)で示されるエポキシ樹脂は、可とう性に優れ、弾性率が低いために耐衝撃性に優れる。
【0033】
[(B)硬化剤(フェノール樹脂硬化剤)]
(B)成分は、(A)成分の硬化剤である。(B)成分は、室温(25℃)で固形(固体)の1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を含む硬化剤であり、下記一般式(4)で表されるフェノール樹脂の他、ナフタレン環含有フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、複素環型フェノール樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂等が挙げられ、これらのうち1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。室温で固形の硬化剤であれば、ブリードが発生しにくい。
【0034】
【化5】
(式中、R
2は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基の中から選択される同一もしくは異なる原子又は基であり、aは0〜4の整数、bは0〜3の整数、rは0〜10の整数である。)
【0035】
上記式(4)で表されるフェノール樹脂の具体例としては、以下のものが例示される。
【化6】
(式中、mは平均0.5〜1.5である。)
【0036】
上記式(4)で表されるフェノール樹脂も、上記の(3)式で表されるエポキシ樹脂と同様に、ビフェニルアラルキル骨格を有する樹脂であり、耐熱性・耐クラック性に優れる。
【0037】
エポキシ樹脂、フェノール樹脂硬化剤の配合量は特に制限されないが、エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基1モルに対して、フェノール樹脂硬化剤中のエポキシ基と反応性を有する基(例えば、フェノール性水酸基)のモル比が0.5〜1.5、好ましくは、0.8〜1.3、特に好ましくは0.8〜1.2の範囲となる量である。モル比が0.5未満あるいは1.5を超えるとエポキシ基とフェノール性水酸基の量がアンバランスであり、硬化物の特性が不十分となる恐れがある。
【0038】
(A)成分と(B)成分の「室温で固形」とは、例えば、25℃において、自己流動性のない固体状(非液状)のことである。(A)成分、(B)成分として、室温で液状の樹脂を用いると、基板等に塗布した際に、ブリードが発生する恐れがある。
【0039】
[(C)硬化促進剤]
(C)硬化促進剤は、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤の反応を促進するものであれば特に制限されないが、例えば、有機リン、イミダゾール、3級アミン等の塩基性有機化合物を使用することができる。有機リンとしては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−トリル)ホスフィン、トリ(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(p−エトキシフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボレート誘導体、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート誘導体等が挙げられる。イミダゾールとしては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。3級アミンとしては、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)7−ウンデセン等が挙げられる。
【0040】
中でも、下記式(2)で表わされるメチロールイミダゾール誘導体が好ましい。これらの硬化促進剤は、(B)硬化剤と組合せて選択するのがよい。
【化7】
(R
15は、メチル基またはメチロール基であり、R
16は、炭素数1〜10の一価炭化水素基である。)
【0041】
(C)硬化促進剤の添加量は、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との合計の100質量部に対して、1〜20質量部、好ましくは3〜15質量部、さらに好ましくは5〜10質量部である。硬化促進剤の配合量が1質量部未満の場合、エポキシ樹脂組成物が硬化不十分になる恐れがある。20質量部を超える場合、エポキシ樹脂組成物の保存性に支障をきたす恐れがある。
【0042】
[(D)導電性フィラー]
(D)導電性フィラーは、2種類の導電性フィラーaとbを用いることを特徴とする。導電性フィラーaは、質量平均粒径が0.1〜1.5μmであるフレーク状又は球状のフィラーであり、導電性フィラーbは、質量平均粒径が2〜5μmであるフレーク状のフィラーである。更に、導電性フィラーaと導電性フィラーbの質量比(a/b)は、0.1から0.5である。
【0043】
フレーク状の導電性フィラーbのみで、高い導電性を示し、電気配線を形成した際、配線の抵抗値を低くすることができるが、ブリードが発生する恐れがある。導電性フィラーbに加えて、フレーク状又は球状の導電性フィラーaを含むことによって、高い導電性等を有しつつ、ブリードの発生を確実に防ぐことができる。
【0044】
導電性フィラーaとしては、フレーク状又は球状の融点が180℃以下のSn/In、Sn/Bi、Sn/In/Biの合金又はAg、Niから選ばれる少なくとも1種を含んでおり、導電性フィラーbが、フレーク状のAg、Cu、Al、Niから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0045】
質量平均粒径はレーザー回折法で測定することができる。
【0046】
導電性フィラーaの質量平均粒径が0.1μm未満の場合、樹脂組成物の粘度が上昇し、印刷性が悪化する恐れがある。1.5μmを超える場合、微配線化が困難となり、印刷性が悪化する恐れがある。また、導電性フィラーbの質量平均粒径が2μm未満の場合、樹脂組成物の粘度が上昇し、印刷性が悪化する恐れがある。5μmを超える場合、微配線化が困難となり、印刷性が悪化する恐れがある。また、導電性フィラーaと導電性フィラーbの質量比(a/b)が、0.1未満の場合、ブリードが発生する恐れがある。0.5を超える場合、導電性が悪化する恐れがある。
【0047】
(D)成分の配合量は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して1000から4000質量部、より好ましくは、1500から3500質量部である。(D)成分の配合量が1000質量部未満であると、電気配線を形成した際、配線の抵抗値が著しく低下する恐れがある。4000質量部を超えると、樹脂組成物の粘度が上昇し、印刷性が悪化する恐れがある。
【0048】
導電性フィラーは、予めシラン系カップリング剤で表面処理したものを使用することが好ましい。より好ましくは、(A)成分のエポキシ樹脂とカップリング剤で表面処理した充填剤(導電性フィラー)とを、予め減圧・混練処理することが望ましい。これにより充填剤表面とエポキシ樹脂の界面がよく濡れた状態とすることができ、耐湿信頼性が格段に向上する。
【0049】
上記シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。これらの中でもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用することが好ましい。
【0050】
[(E)希釈剤]
希釈剤は樹脂組成物の粘度を調整する目的で添加する。
希釈剤としては、下記式(1)で表される室温で液状の化合物であり、純度95%以上、25℃の粘度が5〜20mPa・s、沸点が200℃以上のものが好適に使用できる。
【化8】
【0051】
上記希釈剤の配合量は、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤の合計100質量部に対して50〜300質量部、好ましくは100〜200質量部である。希釈剤の配合量が300質量部より多いと、ブリードが発生する恐れがあり、樹脂組成物が低粘度になりすぎるため、(D)導電性フィラーが長期保存中に沈降する恐れがある。50質量部より少ないと、粘度が高くなり、印刷性が著しく悪くなる恐れがある。
【0052】
[その他の添加剤]
本発明の組成物は、(A)〜(E)成分の他、用途に応じて、シランカップリング剤、及び接着助剤等を添加することができる。
【0053】
シランカップリング剤としては、具体的には、上述したシランカップリング剤と同様のものを挙げることができる。これらは1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。中でもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用することが好ましい。シランカップリング剤の配合量は、(A)〜(E)成分の合計100質量部に対し、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.3〜3質量部である。
【0054】
本発明の導電性エポキシ樹脂組成物は、上述した各成分を公知の方法、例えば、ミキサー、ロール等を用いて混合することによって製造することができる。
【0055】
本発明の導電性エポキシ樹脂組成物を、例えば、太陽電池セルの電極配線用として基板等に塗布する場合、スクリーン印刷がもっとも有効である。配線幅20〜60μmとなるように基板に塗布した場合、180℃〜250℃で、5分間〜1時間加熱することにより、信頼性の高い組成物の硬化物が得られる。また、厚さが5〜50μmとなるように基板に塗布した場合は、180℃〜280℃、好ましくは200℃〜250℃で、5分間〜1時間、好ましくは10分間〜30分間加熱することにより信頼性の高い組成物の硬化物が得られる。
【0056】
[太陽電池セル]
更に、本発明では、上記本発明の導電性エポキシ樹脂組成物の硬化物を有するものであることを特徴とする太陽電池セルを提供する。
【0057】
本発明の組成物は、導電性、接着性、印刷性、低ブリード性に優れる。そのため、本発明の組成物の硬化物を電極配線として用いる太陽電池セルは、導電性、低ブリード性に優れ、良好な品質特性を有するものとなる。
【0058】
また、本発明の太陽電池セルは、集電電極層膜がインジウム、スズ混合酸化膜(ITO)で構成されたものであることが好ましい。
【0059】
本発明の組成物は、このような太陽電池セルの電極配線用として、特に好適に用いることができる。
【0060】
[太陽電池セルの製造方法]
本発明の太陽電池セルの製造方法は、
光電変換可能な基板の少なくとも一方の面に、集電電極層膜として金属酸化膜が形成された光電変換可能な基板の上に、電極配線を形成し、電極配線が、タブで半田接続される太陽電池セルの製造方法であって、
(i)前記金属酸化膜上に、上記本発明の導電性エポキシ樹脂組成物を、スクリーン印刷塗布する工程と、
(ii)前記導電性エポキシ樹脂組成物を熱硬化して、電極配線を形成する工程と
を有する。
【0061】
このような太陽電池セルの製造方法であれば、信頼性の高い太陽電池セルを安定して得ることができる。
【0062】
また、工程(i)において、配線幅20〜60μmの範囲で、スクリーン印刷塗布を行い、工程(ii)において、180℃〜250℃で、5分間〜1時間加熱することにより熱硬化し、タブとして、Sn/Ag/Cu又はSn/Agの鉛フリー半田を被覆したCu箔を用い、半田接続を220〜400℃で行うことが好ましい。
【0063】
本発明の太陽電池セルの製造方法は、このような条件で行うことが、特に好適である。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
[実施例1〜5、比較例1〜8]
以下に示す各成分を、表1に示す配合量でプラネタリーミキサーを用いて混合し、3本ロールを通過させた後、25℃において再度プラネタリーミキサーで混合して、実施例1〜5及び比較例1〜8の導電性エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0066】
[(A)エポキシ樹脂]
(A−1) o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EOCN1020−55(日本化薬社製)、エポキシ当量200、室温で固形、軟化点57℃)
【化9】
(n=5(平均),Mw(重量平均分子量)=1250)
(A−2) ビスフェノールA型エポキシ樹脂(RE310S(3〜6核体;44質量%、日本化薬社製)、エポキシ当量180、室温(25℃)で液状(粘度15Pa・s))
(Mw=370)
【0067】
[(B)硬化剤]
(B−1) 下記式で表されるフェノールノボラック樹脂:DL−92(明和化成(株)製、フェノール性水酸基当量107、室温で固形、軟化点90℃)
【化10】
(m=5(平均),Mw=730)
(B−2) ジアリールビスフェノールA(BPA−CA(小西化学社製)、フェノール当量154、室温(25℃)で液状(粘度16Pa・s))
【0068】
[(C)硬化促進剤]
(C−1) 2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成製 2P4MHZ−PW)
【0069】
[(D)導電性フィラー]
(D−1) フレーク状銀粉(AgC−239(福田金属箔粉工業社製)平均(質量平均粒径)2.6μm)
(D−2) 球状銀粉(AgC−104W(福田金属箔粉工業社製)平均1.4μm)
(D−3) Ni球状粉(SNP−350E(住友金属鉱山社製)平均0.6μm)
(D−4) フレーク状SnBi粉(L20(千住金属社製)粉砕物 平均0.4μm)
(D−5) フレーク状銀粉(AgC−224(福田金属箔粉工業社製)平均9.0μm)
【0070】
[(E)希釈剤]
(E−1)セロキサイド3000(ダイセル化学工業(株)製)
【0071】
[その他の成分]
シランカップリング剤 KBM−403(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン((株)信越化学工業製))
【0072】
各エポキシ樹脂組成物について、後述する評価試験を行った。結果を表1に示す。
[(a)粘度]
各組成物について、JIS Z−8803に準じ、E型粘度計(HBDV−III、ブルックフィールド社製)を用いて、測定温度25℃、ずり速度2.00(sec
−1)で、回転開始後2分における粘度を測定した。
【0073】
[(b)スクリーン印刷性]
ITOを蒸着したSi基板上に400メッシュスクリーンを用いて0.05mm幅×100mmのラインを印刷し、200℃で30分間加熱して硬化させた後のライン観察し、断線の有無を評価した。
○:断線がない
△:断線の数が1箇所
×:断線の数が2箇所以上
【0074】
[(c)ブリード]
(b)の評価で作成したラインを観察し、樹脂・溶剤のブリード状態を評価した。
○:ブリードが0.01mm未満
△:ブリードが0.01mm以上〜0.04mm未満
×:ブリードが0.04mm以上
【0075】
[(d)体積抵抗率]
ガラス板上に幅×高さ×長さが0.04cm×0.015cm×7cmとなるように導電性樹脂組成物を塗布し、200℃で30分間加熱して硬化させたラインの両端の電気抵抗値を測定し、下記式により体積抵抗率を求めた。
体積抵抗率(Ω・cm)=電気抵抗値(Ω)×幅(cm)×高さ(cm)/長さ(cm)
【0076】
[(e)Sn/Agの鉛フリー半田を被覆したCu箔からなるタブ線とのピール強度]
ITO基板(ITOを蒸着したSi基板)上に325メッシュスクリーンを用いて2mm×100mmのパターンを印刷し、その上にタブ線を置き、半田ごてを用いて300℃で熱圧着し、試験片を作成した。(株)島津製作所製オートグラフAGS−5kNGを用いて該試験片の90°ピール強度を測定した。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示されるように、本発明の要件を満たす、導電性エポキシ樹脂組成物(実施例1〜5)は、導電性、接着性、印刷性、低ブリード性に優れたものであることがわかる。一方、(A)成分及び(B)成分として、室温(25℃)で液状の樹脂を用いた比較例1では、ブリードが発生した。組成物中に導電性フィラーaを含まない比較例2では、ブリードが発生し、ピール強度の測定結果が悪化した。導電性フィラーbの粒径の値が、本発明の範囲を超えるものを用いた比較例3では、スクリーン印刷性が悪化した。(E)成分の配合量が、本発明の範囲未満のものを用いた比較例4では、測定を行うことができなかった。(E)成分の配合量が、本発明の範囲を超えるものを用いた比較例5では、ブリードが発生した。導電性フィラーa、bの質量比(a/b)が本発明の範囲を超えるものを用いた比較例6では、体積抵抗率の値が上昇した。(D)成分の配合量が、本発明の範囲未満のものを用いた比較例7では、体積抵抗率の値が上昇し、更にピール強度の測定結果が悪化した。(D)成分の配合量が、本発明の範囲を超えるものを用いた比較例8では、ブリードが発生し、更にピール強度の測定結果が悪化した。
【0079】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。