(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、第4.5世代と称されるような被処理基板としては、一辺の長さが500mm以上である基板が用いられ、基板に対して処理が行われている。従って、そのような基板に対して処理を行う製造装置は、基板支持部分を有しており、基板支持部分の一辺の寸法は500mm以上である。しかも、基板とマスクとの間のアライメントを行う際には、極めて高精度のアライメントが要求されるため、移動距離が数cmであっても、±1μm以下の誤差が要求されている。
このような基板に対する高精度の位置決め要求に対応するために、製造装置を構成する各部材を高剛性にする必要がある。また、製造装置を構成するチャンバの上面からその内部に向けて駆動部が導入されているため、チャンバ内を真空環境にしたときにチャンバ内の圧力と大気圧との差圧分(0.1MPa)が負荷される。その結果、製造装置における基板支持部分は、数トン(数千kg)の質量を有する。
しかも、製造時間の短縮のため、アライメント時間の短縮が求められ、アライメントのリトライをなくして、1回、もしくは、せいぜい2回程度のアライメント回数で、必要な位置に基板を移動することが要求されている。
【0006】
ところが、上記特許文献1のような、UVWステージでは、このような重量物に対する慣性モーメントを考慮すると要求精度を出すことができていなかった。
特に、高温の蒸着処理を行っているチャンバ内で基板を移動させる被駆動部分に対して、駆動部であるステージは、大気中に配置されているとともに、マスクに対するZ方向位置制御も必要である。このため、チャンバ外のXYステージからチャンバ内の処理位置まで、数十cm〜1m程度の距離だけ離間した状態で基板を支持するとともに高精度に移動させる必要があり、このような制御が可能な装置は今まで具体的に開示されていなかった。
【0007】
しかも、精度および重量物に対する駆動力を実現するために、XYステージにおけるX軸方向とY軸方向とのアクチュエータ(モータ)を互いに異なるステージに設けて、ステージを積層させる場合もある。しかしながら、この場合、ステージの質量が大きくなり、積層されたステージのうち下段ステージに設けられたモータに付与される負荷が大きいため、下段ステージの位置決め精度が上段ステージに比べて悪くなってしまうという問題があった。また、このような問題を解消するために、大きな負荷に耐えられるようなモータを下段ステージに採用した場合には、装置構成として部品種類が増えて製造コストが増大する。その上、アライメントを行う際には、X軸方向とY軸方向とのアクチュエータを同時に駆動するため、アクチュエータの制御に関しても上段ステージ及び下段ステージの制御を調整する必要があり、制御ソフトとしても負担が大きくなってしまい、現実的ではない。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.重量物である基板支持部のモーメントを考慮して、基板支持部を高精度に動かして、短時間におけるアライメントを実現可能とすること。
2.チャンバの内部と外部との雰囲気差や基板支持部分までの必要な距離を考慮して、アライメントの精度を維持可能とすること。
3.部品種類を減少してコスト低減を図ること。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
本発明の第1態様に係るXYステージは、台座と、枠状のステージと、前記台座と前記ステージとの間に位置して、前記ステージをXY方向に駆動する支持駆動部と、を有し、前記支持駆動部は、前記台座に配設された直線状の第1のガイド部材と、前記第1のガイド部材に載置されて前記ステージの面内方向において前記第1のガイド部材の延在する第1のガイド方向に移動可能な第1のプレート部材と、前記第1のプレート部材に載置されて前記第1のガイド方向と直交する前記ステージの面内方向である第2のガイド方向に延在する第2のガイド部材と、前記第2のガイド部材に載置されて前記ステージと一体に固設され前記第2のガイド方向に移動可能な第2の接続部とを有する複数の支持部を備え、複数の前記支持部のうち、一対の第1支持部は前記第1のガイド方向となるX方向において対向するように位置して前記ステージの縁部に設けられ、一対の第2支持部は前記第
2のガイド方向となるY方向において対向するように位置して前記ステージの縁部に設けられ、
前記支持駆動部が、いずれも前記ステージの対向する縁部の中央位置に設けられるとともに、前記支持駆動部は、一対の前記第1支持部のうち少なくとも一方、及び、一対の前記第2支持部のうち少なくとも一方に設けられた駆動装置を備え、前記駆動装置は、前記第1のプレート部材と前記第2の接続部とに接続され、前記第1のプレート部材と前記第2の接続部とを前記第2のガイド方向に相対駆動可能であ
り、前記第1支持部における前記駆動装置は、前記第1のプレート部材の前記Y方向両端に設けられる軸受けと、これら軸受けに架け渡して螺合される駆動ネジ部と、前記軸受けおよび前記軸受けの間で前記駆動ネジ部に螺合されるナット部と、前記駆動ネジ部を回転駆動するモータと、を有し、前記ナット部が前記ステージと一体に固設され前記第2のガイド方向に移動可能とされ、前記第2支持部における前記駆動装置が、前記第1支持部における前記駆動装置と直交する配置方向とされる略同一の構造とされて前記台座上に同一の高さとして配置され、これらの駆動装置においては、いずれも前記モータにより、前記駆動ネジ部を所定量だけ回動することで、前記ナット部が前記駆動ネジ部の軸線方向に移動可能とされている。
このような構成によれば、複数の支持部が同一の構成を有するので、部品種類を低減することができる。さらに、重量物を精度よく、動かすとともに停止させて、効率よくアライメントを行うことができる。
【0010】
本発明の第2態様に係るアライメント装置は、上記第1態様に係るXYステージの前記ステージに設けられた円弧状のRガイド部材と、前記Rガイド部材に沿った円弧状の第3のガイド方向に駆動可能な駆動部とを備え、前記駆動部を介して前記第3のガイド方向に駆動可能に支持されるθステージとを備え
、前記Rガイド部材が、平面視した際に前記支持駆動部に対応した位置に配置される。
このような構成によれば、θステージが設けられているので、XY方向におけるアライメントだけでなく、θ方向のアライメントも同時に行うことができる。さらに、XY方向アライメントに比べて、XYステージよりも上段に位置するθステージにおけるθ方向アライメントにより、アライメント時間を短縮することができる。
【0011】
本発明の第2態様に係るアライメント装置においては、前記θステージに設けられ、前記θステージに対して鉛直方向に延在するZ方向ガイド部材と、前記Z方向ガイド部材に沿った鉛直方向に駆動可能な駆動部とを備え、前記駆動部を介して、前記Z方向ガイド部材に沿って上下動可能に支持されるZステージを備えることが好ましい。
このような構成によれば、Zステージが設けられているので、Z方向における被処理基板と蒸着マスクとを相対的に移動させることができる。
【0012】
本発明の第3態様に係る蒸着装置は、チャンバと、前記チャンバ内に設けられた蒸着源と、前記蒸着源の上方に配置される蒸着マスクと、前記蒸着マスクの上側に被処理基板を支持する基板支持部と、上記第2態様に係るアライメント装置と、を具備し、前記基板支持部が、前記アライメント装置を介して前記チャンバの外側から駆動可能である。
このような構成によれば、チャンバの外側からXYθ方向のアライメントを短時間に高精度に行うことができる。
【0013】
本発明の第3態様に係る蒸着装置においては、前記アライメント装置においては、枠状とされた前記ステージの平面視中央位置には、前記蒸着マスクと前記被処理基板とをアライメントするアライメント部が設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、例えば、CCDカメラなどの撮像装置と、この撮像装置が撮影可能とさせる透過性を有する窓部等とをチャンバに設けることで、大きな被処理基板に対して高精細な蒸着処理を行うことができる。
【0014】
本発明の第3態様に係る蒸着装置においては、前記アライメント装置においては、枠状とされた前記ステージの平面視中央位置には、前記蒸着マスクと前記被処理基板とをアライメント後に密着させる基板密着部が設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、蒸着マスクと被処理基板とが上下方向に離間してアライメントの正確性が低下することを防止でき、蒸着マスクと被処理基板とを密着させて、蒸着処理における精度が低下することを防止することができる。
【0015】
本発明の第3態様に係る蒸着装置においては、前記チャンバの内部において前記被処理基板を前記基板支持部まで搬送する搬送部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、重量物である基板支持部のモーメントを考慮して、基板支持部を高精度に動かして、短時間におけるアライメントを実現することが可能である。更に、チャンバの内部と外部との雰囲気差や基板支持部分までの必要な距離を考慮して、アライメントの精度を維持することが可能である。さらに、部品種類を減少してコスト低減を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施形態に係るXYステージ、アライメント装置、蒸着装置を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るXYステージを示す斜視図であり、
図2は、
図1におけるステージを透視した本実施形態に係るXYステージを示す斜視図であり、図において、符号10は、XYステージである。
【0019】
本実施形態に係るXYステージ10は、
図1に示すように、台座11と、ステージ12と、台座11とステージ12との間に位置してステージ12をXY方向に駆動する支持駆動部13,14,15,16と、を有する。
【0020】
台座11とステージ12は、いずれも、平面視して略同形状の輪郭である矩形の枠状からなる板体で形成されている。ステージ12における矩形の4辺12a,12b,12c,12dとなる矩形の一辺は、例えば、1〜2m程度とすることができる。
【0021】
支持駆動部13,14,15,16のうち、
図1〜
図4に示すように、支持駆動部13,14が、X方向に延在するステージ12の対向する縁部(辺)12a,12cの中央位置に設けられ、支持駆動部15,16が、Y方向に延在するステージ12の対向する縁部(辺)12b,12dの中央位置に設けられる。支持駆動部13,15は駆動部とされ、支持駆動部14,16は支持部とされる。
ここで、駆動部13は、支持部の機能を有するとともに駆動装置を備えた構成を有する。このため、駆動部13は、駆動装置を備えた支持部と称することもできる。
同様に、駆動部15は、支持部の機能を有するとともに駆動装置を備えた構成を有する。このため、駆動部15は、駆動装置を備えた支持部と称することもできる。
支持部13、14は互いに対応する位置に配置されており、一対の第2支持部を構成している。一対の第2支持部13、14は、第1のガイド方向となるY方向において対向するように位置してステージ12の縁部に設けられている。
支持部15、16は互いに対応する位置に配置されており、一対の第1支持部を構成している。一対の第1支持部15、16は、第1のガイド方向となるX方向において対向するように位置してステージ12の縁部に設けられている。
【0022】
支持駆動部13,14,15,16としては、まず、駆動部13,15のうち駆動部13について説明する。
図3は、本実施形態における支持駆動部13を示す拡大斜視図であり、
図4は、支持駆動部13における第1のガイド部材13aを示す拡大斜視図であり、
図5は、本実施形態における支持駆動部13の一部を省略した支持駆動部13を示す拡大斜視図である。
【0023】
駆動部13は、
図2に示すように、台座11に配設された直線状の第1のガイド部材13a,13a(2つの第1のガイド部材)によって第1のガイド方向に移動可能とされて台座11と接続される。駆動部13においては、第1のガイド方向がX方向とされている。第1のガイド部材13a,13aは、
図3に示すように、平行状態に二本配置されたクロスローラガイドとされて、第1のガイド方向に移動可能とされる。第1のガイド部材13a,13aには、ステージ12面内方向において第1のガイド部材13a,13aの延在する第1のガイド方向に移動可能な第1のプレート部材13bが載置される。
【0024】
第1のガイド部材13aは、
図4に示すように、軌道台13a2と、軌道台13a3とを備える。軌道台13a2及び軌道台13a3の各々は、互いに直交する内面を有する凹部、即ち、断面形状がV字形状である凹部を有しており、凹部を形成する2つの面が互いに直交している。軌道台13a2及び軌道台13a3の凹部は互いに対向するように配置されており、2つの凹部の間に形成された内部空間には、円筒状の精密ローラ13a5および精密ローラ13a6が配置されている。軌道台13a2及び軌道台13a3との間には、精密ローラ13a5および精密ローラ13a6を支持するゲージ13a4が配置されている。ゲージ13a4は、精密ローラ13a5の軸線と精密ローラ13a6の軸線とが互いに直交するように精密ローラ13a5および精密ローラ13a6を回転可能に支持している。上記構成を有する第1のガイド部材13aは、有限ストロークタイプの直線案内であり、高精度かつ高剛性で軽い動作の直線運動を得ることができる。
【0025】
2つの第1のガイド部材13aは、台座11に固定された固定部13a1を挟持し、軌道台13a2が台座11に固着され、軌道台13a3が第1のプレート部材13bに固着される。これにより、第1のプレート部材13bが第1のガイド方向(X方向)に移動可能とされる。
【0026】
第1のプレート部材13bは、
図3に示すように、第1のガイド方向(X方向)と直交する第2のガイド方向(Y方向)に延在する複数の第2のガイド部材を備える。即ち、第2のガイド部材13c3,第2のガイド部材13c4,第2のガイド部材13c5,及び第2のガイド部材13c6が互いに平行状態となるように、第1のプレート部材13bに設けられる。
【0027】
第2のガイド部材13c3および第2のガイド部材13c4は、第1のプレート部材13bにおけるX方向の片方の端部側(第1端側)に位置し、互いに平行に配置されている。第2のガイド部材13c5および第2のガイド部材13c6は、第1のプレート部材13bにおけるX方向の他方の端部側(第2端側)に位置し、互いに平行に配置されている。これら複数の第2のガイド部材、即ち、第2のガイド部材13c3,第2のガイド部材13c4,第2のガイド部材13c5,第2のガイド部材13c6は、第1のガイド部材13aと同様に、
図4に示したクロスローラガイドとされる。
【0028】
第2のガイド部材13c3および第2のガイド部材13c4は、第1のプレート部材13bに固定された固定部13c1を挟持している。第2のガイド部材13c3および第2のガイド部材13c4の各々において、一方の軌道台が第1のプレート部材13bに固着され、他方の軌道台が、第2の接続部13dに固着される。第2の接続部13dは、第2のガイド部材13c3および第2のガイド部材13c4に載置され、第2のガイド方向(Y方向)に移動可能である。
【0029】
第2のガイド部材13c5および第2のガイド部材13c6は、第1のプレート部材13bに固定された固定部13c2を挟持している。第2のガイド部材13c5および第2のガイド部材13c6の各々において、一方の軌道台が第1のプレート部材13bに固着され、他方の軌道台が、第2の接続部13eに固着される。第2の接続部13eは、第2のガイド部材13c5および第2のガイド部材13c6に載置され、第2のガイド方向(Y方向)に移動可能である。
【0030】
これら第2の接続部13dおよび第2の接続部13eはステージ12と一体に固設され第2のガイド方向(Y方向)に移動可能とされている。
【0031】
第1のプレート部材13bには、
図3,
図5に示すように、X方向における第2の接続部13dと第2の接続部13eとの間となる中央位置に、駆動装置13fが設けられる。
【0032】
駆動装置13fは、
図3,
図5に示すように、第1のプレート部材13bのY方向両端に設けられる軸受け13g,13hと、これら軸受け13g,13hに架け渡して螺合される駆動ネジ部13jと、軸受け13gおよび軸受け13hの間で駆動ネジ部13jに螺合されて第2のガイド方向(Y方向)に延在するナット部13kと、駆動ネジ部13jを回転駆動するステッピングモータとされるモータ13mと、を有する。ナット部13kは、第2の接続部13d,13eと同様にして、ステージ12と一体に固設され第2のガイド方向(Y方向)に移動可能とされている。
【0033】
駆動装置13fにおいては、モータ13mにより、駆動ネジ部13jを所定量だけ回動することで、ナット部13kが駆動ネジ部13jの軸線方向(Y方向)に移動可能とされている。
これにより、第2のガイド部材13c3,第2のガイド部材13c4,第2のガイド部材13c5,第2のガイド部材13c6に沿って、第2の接続部13d,13eが第1のプレート部材13bに対して第2のガイド方向(Y方向)に相対移動することになる。駆動部13のみを見たときに、駆動装置13fの駆動だけでは、台座11に対する第1のプレート部材13bの第1のガイド方向(X方向)への相対移動は生じない。
【0034】
以下、駆動部13と駆動部15とは略同一の構造とされているので、駆動部15においては、上述した駆動部13に対する説明で、符号13を15と読み替えることとして、その説明を省略する。ただし、駆動部15は、駆動部13とその配置方向が異なる。
【0035】
駆動部15においては、
図2に示すように、駆動部13ではX方向に延在していた第1のガイド部材13aに対応する第1のガイド部材15aが、台座11のY方向に延在するように設けられ、第1のガイド部材15aによる第1のガイド方向がY方向とされている。同様に、駆動部15においては、駆動部13ではY方向に延在していた第2のガイド部材13c3〜13c6に対応する第2のガイド部材15c3〜15c6が、台座11のX方向に延在するように設けられ、第2のガイド部材15c3〜15c6による第2のガイド方向がX方向とされている。同様に、駆動部15においては、駆動部13ではY方向に延在していた駆動装置13fの駆動ネジ部13jに対応する駆動装置15fの駆動ネジ部15jが、台座11のX方向に延在するように設けられている。
【0036】
駆動部15においては、モータ15mにより、駆動ネジ部15jを所定量だけ回動することで、第2のガイド部材15c3〜第2のガイド部材13c6に沿って、第2の接続部15d,15eが第1のプレート部材15bに対して第2のガイド方向(X方向)に相対移動することになる。
【0037】
次に、支持駆動部13,14,15,16のうち、支持部14,16について説明する。
【0038】
支持部14,16は、
図1,
図2に示すように、駆動部13,15において、駆動装置13fまたは駆動装置15fを除いた構成とされ、それ以外は駆動部13および駆動部15と略同一の構造とされている。このため、支持部14,16においては、上述した駆動部13に対する説明における符号13を符号14または符号16と読み替えて、その説明を省略する。ただし、支持部14,16は、駆動部13,15とその配置方向が異なっている。
【0039】
支持部14は、ステージ12における駆動部13の設けられた辺(縁部)12aに対向する位置の辺(縁部)12cのX方向中央位置に設けられている。支持部14においては、駆動部13ではX方向に延在していた第1のガイド部材13aに対応する第1のガイド部材14aが、同様に、台座11のX方向に延在するように設けられ、支持部14の第1のガイド方向がX方向とされている。同様に、支持部14においては、駆動部13ではY方向に延在していた第2のガイド部材13c3〜13c6に対応する第2のガイド部材14c3〜14c6が、台座11のY方向に延在するように設けられ、支持部14の第2のガイド方向がY方向とされている。
【0040】
支持部16は、ステージ12における駆動部15の設けられた辺(縁部)1baに対向する位置の辺(縁部)12dのY方向中央位置に設けられている。支持部16においては、駆動部15ではY方向に延在していた第1のガイド部材15aに対応する第1のガイド部材16aが、同様に、台座11のY方向に延在するように設けられ、支持部16の第1のガイド方向がY方向とされている。同様に、支持部16においては、駆動部15ではX方向に延在していた第2のガイド部材15c3〜15c6に対応する第2のガイド部材16c3〜16c6が、台座11のX方向に延在するように設けられ、支持部16の第2のガイド方向がX方向とされている。
【0041】
本実施形態に係るXYステージ10においては、図示しない制御部等から駆動部13に入力された駆動信号によって、モータ13mを介して駆動ネジ部13jが回転駆動された際には、ナット部13kが駆動ネジ部13jの軸線方向(Y方向)に移動する。このとき、第2の接続部13d,13eが、第1のプレート部材13bに対して、第2のガイド部材13c3〜13c6に沿って第2のガイド方向(Y方向)に相対移動する。
同時に、駆動部13の動きに連動して、支持部14においても、第2の接続部14d,14eが、第1のプレート部材14bに対して、第2のガイド部材14c3〜14c6に沿って第2のガイド方向(Y方向)に相対移動する。
このとき、第1のプレート部材13bおよび第1のプレート部材14bは、台座11に対してY方向には変位しない。
【0042】
同時に、駆動部13の動きに連動して、駆動部15においては、第1のプレート部材15bが、台座11に対して、第1のガイド部材15a,15aに沿って第1のガイド方向(Y方向)に相対移動する。
同様に、支持部16においては、第1のプレート部材16bが、台座11に対して、第1のガイド部材16a,16aに沿って第1のガイド方向(Y方向)に相対移動する。
このとき、第2の接続部15d,15eおよび第2の接続部16d,16eは、第1のプレート部材15bおよび第1のプレート部材16bに対してY方向には変位しない。
【0043】
これらの動作により、ナット部13k、第2の接続部13d,13e、第2の接続部14d,14e、ナット部15k、第2の接続部15d,15e、第2の接続部16d,16eと一体とされたステージ12がY方向に変位する。
【0044】
さらに、XYステージ10においては、図示しない制御部等から駆動部15に入力された駆動信号によって、モータ15mを介して駆動ネジ部15jが回転駆動された際には、ナット部15kが駆動ネジ部15jの軸線方向(X方向)に移動する。このとき、第2の接続部15d,15eが、第1のプレート部材15bに対して、第2のガイド部材15c3〜15c6に沿って第2のガイド方向(X方向)に相対移動する。
同時に、駆動部15の動きに連動して、支持部16においても、第2の接続部16d,16eが、第1のプレート部材16bに対して、第2のガイド部材16c3〜16c6に沿って第2のガイド方向(X方向)に相対移動する。
このとき、第1のプレート部材15bおよび第1のプレート部材16bは、台座11に対してX方向には変位しない。
【0045】
同時に、駆動部15の動きに連動して、駆動部13においては、第1のプレート部材13bが、台座11に対して、第1のガイド部材13a,13aに沿って第1のガイド方向(X方向)に相対移動する。
同様に、支持部14においては、第1のプレート部材14bが、台座11に対して、第1のガイド部材14a,14aに沿って第1のガイド方向(X方向)に相対移動する。
このとき、第2の接続部13d,13eおよび第2の接続部14d,14eは、第1のプレート部材13bおよび第1のプレート部材14bに対してX方向には変位しない。
【0046】
これらの動作により、ナット部13k、第2の接続部13d,13e、第2の接続部14d,14e、ナット部15k、第2の接続部15d,15e、第2の接続部16d,16eと一体とされたステージ12がX方向に変位する。
【0047】
実際のXYステージ10においては、駆動部13と駆動部15とを同時に動かして、XY面内方向に同時に移動することになる。
【0048】
本実施形態に係るXYステージ10においては、駆動部13,15が台座11上に同一の高さとして配置されているため、2軸のXY方向に対するアクチュエータとしての駆動に必要な推力は同等となり、駆動方向によって負荷の差が生じてしまうことがない。このため、モータ13m、15mを同じ規格として構成した場合に、X方向およびY方向の負荷をほぼ等しくして、駆動方向によって応答性が異なってしまうことを防止できる。これにより、均一な位置制御をおこない、精度のばらつきを生ずることなく高精度なアライメントを実現することが可能となる。しかも、支持駆動部13,15の各々が駆動装置13f、15fを備えている点を除いて、支持駆動部13,14,15,16をいずれも、同じ構成を有する。このため、支持駆動部13,14,15,16を同部材で構成することができる。これにより、支持駆動部13,14,15,16の各々において同等な性能を容易に実現しつつ、部品調達コストを低減して、装置の製造コストを抑制することが可能となる。
【0049】
図6は、本実施形態におけるθステージ20を一部省略して示す斜視図であり、
図7は、XYステージ10、θステージ20、Zステージ30を示す斜視図である。
【0050】
本実施形態に係るXYステージ10には、
図6,
図7に示すように、ステージ12の上にθステージ20が設けられる。θステージ20は、ステージ12と平面視ほぼ同形状とされる枠状のステージ22と、ステージ12およびステージ22との間に設けられる円弧状のRガイド部材23,24,25,26と、θ駆動部27とを有する。
【0051】
本実施形態に係るθステージ20としては、
図6,
図7に示すように、ステージ12の中心と同心状としてRガイド部材23,24,25,26がステージ12上に設けられる。
Rガイド部材23,24,25,26は、
図6に示すように、平面視した際に支持駆動部13,14,15,16に対応した位置に配置されている。Rガイド部材23,24,25,26のそれぞれが同心円弧形状を形成するように、Rガイド部材23,24,25,26の位置が決定されている。
【0052】
Rガイド部材23には、
図6に示すように、Rガイド部材23の長さ方向(円弧形状に沿う方向、第3のガイド方向)に離間した3カ所にそれぞれ移動部23a,23b,23cが勘合されている。移動部23a,23b,23cは、Rガイド部材23の延在する第3のガイド方向に移動可能である。ここで、第3のガイド方向は、Rガイド部材23,24,25,26の延在する方向であり、同心円の円周方向とされる。
Rガイド部材23の規制方向は、円弧形状に沿う方向である。Rガイド部材23の構成としては、第1のガイド部材13aと同様のクロスローラガイドを採用することができる。
【0053】
Rガイド部材24,25,26は、
図6に示すように、Rガイド部材23と同等の構成とされるが、その配置がRガイド部材23と異なる。
【0054】
Rガイド部材23は、平面視してステージ12における駆動部13の設けられた辺(縁部)12aのX方向中央位置に設けられている。Rガイド部材24は、辺(縁部)12aに対向する位置で平面視してステージ12における支持部14の設けられた辺(縁部)12cのX方向中央位置に設けられている。Rガイド部材25は、駆動部15の設けられた平面視してステージ12における辺(縁部)1baのY方向中央位置に設けられている。Rガイド部材26は、Rガイド部材25の設けられた辺(縁部)1baに対向する位置の支持部16の設けられた辺(縁部)12dのY方向中央位置に設けられている。
【0055】
ステージ22には、上述した駆動装置13fと同様の構成を有する駆動装置27が設けられる。駆動装置27は、ステージ12とステージ22との間に設けられている。
駆動装置27は、
図6に示すように、Y方向に離間してステージ12と一体に設けられる軸受け27g,27hと、これら軸受け27g,27hに架け渡して螺合される駆動ネジ部27jと、軸受け27gおよび軸受け27hの間で駆動ネジ部27jに螺合されて第3のガイド方向(Y方向)に沿って移動可能とされるナット部27kと、駆動ネジ部27jを回転駆動するステッピングモータとされるモータ27mと、を有する。ナット部27kは、移動部23a,23b,23cと同様にして、ステージ22と一体に固設され、第3のガイド方向(θ方向)に移動可能とされている。ナット部27kは、ガイド部材13aと同等の構成とされるガイド部材27aにより略Y方向(径方向)に移動可能としてステージ22に接続されている。
【0056】
駆動装置27においては、モータ27mにより、駆動ネジ部27jを所定量だけ回動することで、ナット部27kが駆動ネジ部27jの軸線方向(Y方向)およびガイド部材27aの規制方向であるX方向に移動可能である。これによりナット部27kは、Rガイド部材23,24,25,26が延在する方向である円弧方向、即ち、θ方向に移動可能とされている。
これにより、Rガイド部材23,24,25,26に沿って、移動部23a,23b,23c,移動部24a,24b,24c,移動部25a,25b,25c,移動部26a,26b,26cが第3のガイド方向(θ方向)に相対移動することになる。
【0057】
本実施形態に係るθステージ20は、駆動装置27を、駆動装置13f、15fと同部材で構成することができる。これにより、駆動装置27においては、駆動装置13f、15fと同等な性能を容易に実現しつつ、部品調達コストを低減して、装置の製造コストを抑制することが可能となる。
【0058】
本実施形態に係るθステージ20には、
図7に示すように、ステージ22の上にZステージ30が設けられる。
Zステージ30は、ステージ22に立設されて鉛直方向に延在するZ方向ガイド部材33a,34a,35a,36aと、Z方向ガイド部材33a,34a,35a,36aに沿って上下動可能に支持されて、ステージ22と平面視ほぼ同形状とされる枠状のステージ32と、Z方向ガイド部材33a,34a,35a,36aに沿ってステージ32を鉛直方向に駆動可能な駆動部33,34,35,36とを有する。
【0059】
Z方向ガイド部材33a,34a,35a,36aは、4辺12a,12b,12c,12dに対応したステージ22の各辺(縁部)にそれぞれが立設された円柱状の棒状体である。Z方向ガイド部材33a,34a,35a,36aは、ステージ32の対応する位置に設けられた貫通孔と摺動可能に貫通している。
Z方向ガイド部材33aは、ステージ32の辺(縁部)32aにX方向に離間して2本設けられている。Z方向ガイド部材35aは、ステージ32の辺(縁部)32bにY方向に離間して2本設けられている。Z方向ガイド部材34aは、ステージ32の辺(縁部)32cにX方向に離間して2本設けられている。Z方向ガイド部材36aは、ステージ32の辺(縁部)32dにY方向に離間して2本設けられている。
【0060】
Z方向ガイド部材33a,33aのX方向中央位置には、駆動部33が設けられている。Z方向ガイド部材34a,34aのY方向中央位置には、駆動部34が設けられている。Z方向ガイド部材35a,35aのX方向中央位置には、駆動部35が設けられている。Z方向ガイド部材36a,36aのX方向中央位置には、駆動部36が設けられている。
【0061】
駆動部33は、駆動装置13fと同様に、モータ33mと、駆動ネジ部33jと、この駆動ネジ部33jに螺合するナット部33kとを有する。ナット部33kは、ステージ32の下面に一体となるように固定されている。モータ33mにより駆動ネジ部33jが回転すると、ナット部33kおよびステージ32が、Z方向ガイド部材33a,34a,35a,36aの延在するZ方向(第4のガイド方向)に沿って移動可能とされている。
駆動部34,35,36のそれぞれは、駆動部33と同等な構成とされており、符号33を34,35,36と読み替えることでその説明を省略する。
【0062】
以下、本実施形態における蒸着装置100について説明する。
【0063】
図8は、本実施形態における蒸着装置100を示す模式正断面図であり、
図9は、基板支持部60を示す模式正面図である。
【0064】
上述のXYステージにおいて、XYステージ10、θステージ20、Zステージ30は、蒸着装置100のアライメント装置50を構成している。
【0065】
本実施形態における蒸着装置100は、
図8に示すように、真空チャンバ101を有している。真空チャンバ101の天井側の外壁面にはアライメント装置50が設けられている。
【0066】
アライメント装置50は、台座11と、台座11に設けられたXYステージ10と、XYステージ10に設けられたθステージ20、θステージ20に設けられたZステージ30とを有している。XYステージ10は、ステージ12を水平な一の平面内で所望の方向に移動させることができるように構成されている。
【0067】
さらにアライメント装置50は、ステージ12に設けられたθステージ20と、θステージ20に設けられたステージ22とを有している。θステージ20はステージ12に対してステージ22を平面内で回転可能に構成されている。
さらにアライメント装置50は、ステージ22に設けられたZステージ30と、Zステージ30に設けられたステージ32とを有している。Zステージ30はステージ22に対してステージ32を鉛直方向に平行移動できるように構成されている。ステージ32には接続部材108が固定されている。
【0068】
真空チャンバ101の天井側の外壁面のうち台座11が固定された部分とは別の部分には貫通孔が設けられている。貫通孔には筒状のベローズ109の一端が気密に密着され、ベローズ109の他端は接続部材108に気密に密着されている。
【0069】
ベローズ109は、蛇腹状に形成されている。接続部材108がステージ32と一緒に水平な一の平面内で平行に移動し、かつ、回転移動する場合であっても、又は、接続部材108が、鉛直方向に平行に移動する場合であっても、接続部材108の移動に合わせてベローズ109は伸縮して、真空チャンバ101内の気密性が維持されるようになっている。
【0070】
真空チャンバ101内には蒸発源103が配置され、蒸発源103の放出口104と対面する位置にはマスク板105が配置されている。マスク板105は、棒状のマスク保持部材107に保持されている。
マスク保持部材107(シャフト)の一端は、真空チャンバ101の天井側に設けられた貫通孔に挿入され、ベローズ109の内側を通って接続部材108に固定されている。
【0071】
アライメント装置50は、アライメント部として、
図9に示すように、搬送装置111と、マスク台107aと、フック部材61と、反射板組立体116と、マグネット保持部材117とを備える。
このようなアライメント部は、平面視したXYステージ10の内側位置に配置され、蒸着装置100の真空チャンバ101の上壁11Aよりも真空チャンバ101の内側となる台座11の下方位置に配置されている。搬送装置111は、メタルマスク105および透明基板106を所定のパスラインに沿って搬送する。マスク台107aは、搬送されたマスク105を保持し、昇降自在である。フック部材61は、搬送された基板106を保持し、開閉自在である。反射板組立体116には、マスク用の光源118からの光が照射される。マグネット保持部材117は、アライメント後に基板にマスクを密着させ、昇降自在である。
【0072】
真空チャンバ101の外側となる台座11の上方には、マスク用の光源118と、基板用の光源119と、CCDカメラ120とが配置されている。光源118は、反射板組立体116と協同してマスク105のマークを下側から照射する。光源119は、基板106のマークを上から照射する。CCDカメラ120は、マスク105のマークおよび基板106のマークを上から撮影する。さらに真空チャンバ101の外側には、演算装置130が設けられている。
【0073】
真空チャンバ101の内部において、基板106の下側に位置するメタルマスク105は、磁性材で作製されており、基板106よりやや大きい所定の寸法を有する。マスク105の左右両側の下面には、マスク台107aによって支持される支持枠が設けられている。支持枠には、フック部材61の後述するフック61aを収容する図示しない切り欠き部が設けられている。マスク105には、基板106の中心に対し対称の位置となる縁部に、貫通孔からなる位置検出用のマークが複数個設けられる。フック部材61および関連する部材等が基板支持部60を構成している。
【0074】
真空チャンバ101の内部において、メタルマスク105の上側に位置する基板106は、縦横が730mm×650mm、厚みが0.5mmのガラス基板である。基板106は、予め透明電極膜が成膜された蒸着面を下向きに設置される。さらに基板106には、位置検出用のマークが、一方の対角線上の両側の左側及び右側の隅にマスク105のマークに近接させて設けられている。基板106のマークは、金属を蒸着してメタル光沢を有するようにしている。
【0075】
これらマスク105および基板106の左側及び右側の各々に位置するマークは、本実施形態に係るアライメント装置において、予め位置調整した左側及び右側の各々に配置されたCCDカメラ120の撮影視野内に位置する。基板106のマークとマスク105のマークは、マスク105と基板106を密着させたときに、重なるように設定される場合があるが、本実施形態では2つのマークが重なる場合に限定されない。
【0076】
アライメント部は、
図8,
図9に示すように、マスク台107a、フック部材61およびマグネット保持部材117で囲まれるXYステージ10の内側の領域に、パスラインの一部を含んで区画される。パスラインは所定の高さ位置に
図9の紙面に垂直に設定されている。搬送装置(搬送部)111はロボットハンドからなり、アライメント部に対し前後方向に進退自在に設けられている。搬送装置111は、蒸着装置100に付属の各フィダー部から搬送されたマスク105および基板106を受け取って、パスラインに沿って順次搬送してアライメント装置部分に搬入する。
【0077】
マスク台107aは、上述したZステージ30(ステージ32)に昇降自在に取付けたシャフト107の下端に固定されている。シャフト107の上端側に設けたXYステージにおいて、XYステージ10,θステージ20、Zステージ30によってシャフト107を駆動することによって、マスク台107aが昇降される。左側及び右側の各々に位置する前後のマスク台107aは、アライメント部分に搬入されたマスク105の左側及び右側の支持枠の前後位置の下面に当接して、マスク105を支持する。シャフト107の下端には、マスク105を冷却する水冷部107wが設けられる。
【0078】
フック部材61は、左側及び右側の各々の前後のマスク台107aの間に各1対設けられている。各フック部材61の下端は内側を向いたフック61aを有する。フック61aはマスク台107aの上方に位置している。各フック部材61は、Zステージ30の内側位置で下側に配置された支持フレームにヒンジ機構を介して取付けられる。支持フレームの上端は、上壁11A上に設けた姿勢制御機構に接続されている。ヒンジ機構は、これに取付けた軸によって上壁11Aの上方に設置した開閉モータの出力軸に接続されている。
【0079】
フック部材61は、姿勢制御機構によって前後左右方向(XY方向)および周方向(θ方向)に移動可能である。フック部材61は、開閉モータおよびヒンジ機構によって、垂直な閉じた位置から外側に略水平に開いた解除位置までヒンジ機構を支点として開閉可能である。左側及び右側の各々に位置する前後のフック部材61は、フック部材61が閉じた位置で、アライメント部分に搬入された基板106を該基板106の左右両側の前後2箇所の位置で保持する。これによって、基板106は、該基板106に生じるたわみが基板の中心に対して対称に生じる位置で保持される。
【0080】
マグネット保持部材(基板密着部)117は、Zステージ30の内側位置で上壁11Aに貫装させた中心シャフト117jの下端に取付けフック117kを介して取付けられる。マグネット保持部材117は、フック部材61のフック61aと上方に間隔を開けて設置される。中心シャフト117jを上端に取付けた昇降モータ117mによって駆動することにより、マグネット保持部材117が上下に移動するようになっている。このマグネット保持部材117は、取付けフック117kに支持板117aを介して固定されたマグネット板117bおよびマグネットを冷却する水冷部117wと、支持板117a、マグネット板117bおよび水冷部117wを周囲4箇所で貫いて支持板117aに上下動自在に吊下げられたピン117dと、該ピン711dの下端に取付けた押さえ板117cとからなっている。
【0081】
押さえ板117cには押さえ部材が設置されている。押さえ部材は突起からなり、押さえ板117cの下側の、基板106の最大のたわみ部に対応する位置の、奥側と手前側の2箇所に設けられている。押さえ板117cには、上記奥側と手前側の位置の下面に凹部が形成され、この凹部内に取付けたばね等の弾性体で押さえ部材を支持することにより、押さえ部材は凹部に入没可能に設けられている。押さえ部材は、常態では弾性体の伸長により凹部から突出し、押さえ板が基板106と密着した状態では、弾性体の伸縮により凹部に格納される。
【0082】
CCDカメラ120は、アライメント部として、XYステージ10の内側で上壁11Aの外側位置の左右両側にそれぞれ設けられている。左側のCCDカメラ120は、予め位置調整することによって、アライメント部内に位置されたマスク105および基板106の左側後方のマークが撮影視野内に収まる後方位置に位置されている。右側のCCDカメラ120は、同様に、マスク105および基板106の右側前方のマークが撮影視野内に収まる前方位置に位置されている。本発明の実施形態では、基板106のマークとマスク105のマークを上下方向に離れた位置で別々に撮影するため、CCDカメラ120は、焦点を合わせるため上下に移動可能に設置される。
【0083】
マスク用の光源118は、XYステージ10の内側に位置されたマスク105のマークを、反射板組立体116と協同して下から光照射する。光源118は、CCDカメラ120の光軸と平行な光軸を有するように、CCDカメラ120の近くに鉛直姿勢に設けられる。反射板組立体116は、左側後と右側前のマスク台107aの近くの2箇所に設置され、マスク105の対角線の下方の平行な直線上に配置された、45°に傾斜して互いに対向する第1、第2のミラーとを備える。第1ミラーは光源118の光軸上に置かれ、光源118からの光を水平に45°反射して第2ミラーに向けて送る。第2ミラーはマークの下方に置かれ、第1ミラーからの光を垂直に45°反射してマークに送る。
【0084】
基板用の光源119は、アライメント装置50においてXYステージ10の内側に位置された基板106のマークを上から光照射するように、CCDカメラ120の近くに光軸をマークに向けた傾斜姿勢で設置される。なお、光源は上方からのみ照射させて、上から基板マーク、マスクマークを同時にカメラで撮像する構成とすることもできる。
【0085】
演算装置130は、各CCDカメラ120で撮影したマスク105のマークと基板106のマークの画像情報を記憶し、画像処理してこれらマークの位置情報を演算する。さらに演算装置130は、位置情報に基づいて基板106とマスク105の相対位置を演算し、基板106とマスク105の相対位置の演算値と予め設定した所定の許容値とを比較する。相対位置の演算値が所定の許容値から外れていると判定したときは、姿勢制御装置およびアライメント装置のうち少なくとも一方を駆動制御する。これにより、基板106とマスク105の相対位置が許容値内になるようにフック部材61およびマスク保持部材107のうち少なくとも一方をXY方向に移動させる。
【0086】
蒸着装置100を用いて成膜を行うには、まず真空排気装置102により真空チャンバ101内を真空排気して真空雰囲気を形成しておく。
【0087】
真空チャンバ101内の真空雰囲気を維持しながら真空チャンバ101内にロードロック110より基板106を搬入し、成膜すべき成膜面を放出口104側に向けた状態でマスク板105から見て放出口104とは反対側に水平に配置する。
【0088】
アライメント装置50のXYステージ10θステージ20を動作させて、マスク板105を水平な一の平面内で所望の方向に移動させ、基板106の成膜面のうち所定の成膜領域をマスク板105の開口から露出させる。
また、アライメント装置のZステージ30を動作させて、マスク板105を鉛直方向に平行移動し、マスク板105と基板106との間の間隔を所定の間隔(ゼロを含む)にする。
【0089】
蒸発源103の放出口104から薄膜材料を放出させると、薄膜材料はマスク板105の開口を通過して、基板106の成膜面のうち開口から露出する所定の成膜領域に到達して付着し、成膜領域に開口と同じ形状の有機薄膜が形成される。
【0090】
本実施形態におけるアライメント装置50によるマスク105と基板106のアライメント動作について説明する。先ず、開閉モータを作動させて左右両側に位置する前後のフック部材61を外側にやや開いた姿勢に位置させる。ついで搬送装置(ロボットハンド)111によって、メタルマスク105をパスラインに沿って後方からアライメント部に搬入し、左右両側のフック部材61の内側の上方に位置させる。
【0091】
ついで、搬送装置111を下降してマスク105を下げ、マスク105の左右両側の保持枠の下面をフック部材61のフック61aに掛けて、マスク105をフック部材61で一旦受け取る。続いて、搬送装置111をアライメント部分から退出させた後、アライメント装置50を作動させて左右両側に位置する前後のマスク台107aを上昇し、マスク105の両側の保持枠の下面をその前後の隅の位置でマスク台107aに掛けて、マスク105をマスク台107aに保持する。これにより、フック61a上のマスク105が、マスク台107a上に受け渡される。マスク台107aは、保持したマスク105の保持枠107aを除くマスク本体部分をパスラインの高さに位置させたところで停止する。
【0092】
ついで、左右の光源118からスポット光をそれぞれの側の反射板組立体116に発射する。組立体116は、第1ミラー、第2ミラーによって光を反射して、マスク台107a上のマスク105のマークの近傍に下から光を照射する。そしてその下からの光照射下に左右の各マークを左右それぞれの側のCCDカメラ120によって上方から撮影する。撮影したマークの画像情報は、演算装置130に送って記憶させる。
【0093】
つぎに、Zステージ30を作動させてマスク台107aを下降し、マスク105を下げる。続いて搬送装置111によって透明基板106をパスラインに沿って後方からアライメント装置50に搬入し、左右両側のフック部材61の内側の上方に位置させる。基板106は蒸着する表面が下側に向けられている。
【0094】
ついで搬送装置111を下降して基板106を下げ、基板106の両側の下面をフック部材61のフック61aに掛けて、フック部材61に支持させる。基板106のフック61aに掛けた部分はほぼパスラインの高さに位置される。フック部材61に支持させた基板106は自重で中央部がたわむ。基板106が、厚みが薄くかつ大サイズのガラス基板の場合たわみが大きくなる。しかし、基板106の左右両側の前後の4箇所の位置でフック61aにより持しているので、そのたわみは基板106の中心に対して対称に生じる。
【0095】
ついで、Zステージ30を作動させてマスク台107aによりマスク105を上昇させ、マスク105を基板106に隙間を開けた位置で正対させる。そして左右の光源119からスポット光を基板106の対角線上の左右の隅に位置するマークの近傍に照射し、その光照射下に左右の各マークを左右それぞれの側のCCDカメラ120によって上方から撮影する。撮影したマークの画像情報は、演算装置130に送ってメモリに記憶させる。
【0096】
さらに、上記のマスク105のマークの撮影の代わりに、またはその撮影と合わせて、上記のマスク105を基板106に隙間を開けた位置で正対させた段階で、マスク105のマークを撮影してもよい。具体的には、マスク105のマークを撮影して、マスク105の搬入の確認と、マスク105が所定の範囲内に設置されたことの確認を行う。そして、マスク105を基板106に隙間を開けた位置で正対させた状態で、マスク105のマークを撮影して、位置情報を取得する。これにより、マスク105の位置情報取得後の移動を最小限に抑えることができ、マスク105の位置情報の精度が向上する。
【0097】
このとき基板106がたわみ、基板106とマスク105が上下方向に離れているので、CCDカメラ120は、マスク105を撮影するときと基板106を撮影するときとに応じて、焦点を合わせるために上下に移動させる場合がある。
【0098】
演算装置130は、メタルマスク105の左右のマークと透明基板106の左右のマークを撮影した画像情報をメモリから呼び出し、画像処理によって左側及び右側の各々に位置する側におけるそれぞれのマークの位置を求める。さらに演算装置130は基板106のマークの位置情報から基板106の中心および基準線を求め、マスク105のマークの位置情報からマスク105の中心および基準線を求める。演算装置130はこれらの位置情報、中心および基準線から基板106とマスク105の相対位置を演算する。
【0099】
そして演算装置130は、基板106とマスク105の相対位置が予め設定した許容範囲内に入るか否かを判断する。基板106とマスク105の相対位置が許容範囲外あるときは、許容範囲内に入らせるのに必要な基板106またはマスク105のXYθ方向の移動量を演算し、アライメント装置50および姿勢制御装置の少なくとも一方に制御命令を出力する。アライメント装置50および姿勢制御装置の少なくとも一方は、フック部材61に支持された基板106または107に支持されたマスク105をXYθ方向に移動して、マスク105に対する基板106の位置を許容範囲内とする。
【0100】
上記のようにして基板106とマスク105がアライメントされたら、昇降モータ117mを作動して、中心シャフト117j下端のマグネット保持部材117を下降させると同時に、Zステージ30を作動して、マスク台107a上のマスク105を上昇させ、基板106とマスク105とを密着させる。
【0101】
次いで、基板106とマスク105を密着させる。
図9に示すように、基板106とマスク105とが離間した状態から、マグネット保持部材117を下降し、マスク105を上昇する。この場合、初めに、マスク105が基板106のたわみ部に下から接触し、続いてマグネット保持部材117の押さえ板117cから突出した押さえ部材が基板106のたわみ部分に上から接触して押さえ、基板106のたわみ部分をマスク105に固定する。
【0102】
ついで、マグネット保持部材117の下降とマスク105の上昇がさらに進むと、押さえ部材が押さえ板117cの凹部内に格納されながら、押さえ板の全体が基板106に当接する。続いて、
図10に示すように、一体に設けられたマグネット板117bおよび支持板117aが押さえ板117cに対して下降し、マグネット板117bが上昇するマスク105に押さえ板117cおよび基板106を介して相対する。これによりマグネット板117bがマスク105を吸引し、間に挟まれた基板106にマスク105が密着される。かくして、基板106とマスク105のアライメント作業が完了する。
【0103】
図10では、煩雑を避けるために、基板106を支持した左側及び右側の各々に位置するフック61aは示していないが、押さえ板117cの全体が基板106に当接する過程で、フック61aはマスク105の左側及び右側の各々に位置する支持枠107aに形成された切り欠き部に収容される。
【0104】
この後に、再度、アライメントの確認のため基板106とマスク105とのマークの撮影をする場合がある。この確認の撮影のとき、基板106のマークがマスク105のマークの中に重なるように設定しておくと、下からの照明によって一度で撮影可能であるため好ましい。
【0105】
本実施形態に係る蒸着装置100においては、ステージ12,22,32の内側に、マグネット板117b等を有するマグネット保持部材117などの基板密着部が設けられ、昇降するため、数トン(tons)といった極めて大きな枠状のステージ12,22,32を素早く且つ精度よく動かしてアライメントする必要がある。この際、X方向とY方向のアクチュエータにおける力加減をほぼ同期させることができるため、アライメント時に、少ないリトライ回数で、μm単位(±1μm)程度とされる位置決め精度に差が出てしまうことを防止してバラツキの発生を防止することができる。これにより、従来は、4,5回かかっていたアライメント工程を2回以内に抑えることが可能となり、一工程に付き数秒から十数秒の工程削減が可能となる。
【0106】
図11は、本実施形態に係る蒸着装置を複数有する有機EL製造装置200を示す模式平面図である。
図11において、蒸着装置100,100は、搬送装置(ロボットハンド)111が設けられた前室201,202と、ロードロック110を介して密閉可能に接続されている。
このように、
図11に示すように、有機EL素子の製造装置200では、複数回の蒸着工程を多数の蒸着装置100,100で行う必要がある。蒸着工程を行う際、毎回アライメント工程が必要となるため、その全ての工程において、それぞれの蒸着装置100,100でのリトライ発生を抑制することができる。このため、有機EL素子の製造における製造時間を大幅に短縮して製造コストを削減することが可能となる。