(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093131
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】プレス成形用熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20170227BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20170227BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20170227BHJP
B29K 105/06 20060101ALN20170227BHJP
【FI】
C08J5/04CER
C08J5/04CEZ
B29C43/18
B29C43/34
B29K105:06
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-201652(P2012-201652)
(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公開番号】特開2014-55258(P2014-55258A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年8月11日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構 サステナブルハイパーコンポジット技術の開発における委託研究による発明で産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願である。
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091948
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 武男
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 章亘
(72)【発明者】
【氏名】林 崇寛
(72)【発明者】
【氏名】北村 仁志
(72)【発明者】
【氏名】園田 秀利
【審査官】
加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−125948(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0239856(US,A1)
【文献】
特開平04−259515(JP,A)
【文献】
特開平02−162031(JP,A)
【文献】
特開2013−198984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/04
B29C 43/18
B29C 43/34
B29K 105/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶着機を用いて、不連続繊維と熱可塑性樹脂とからなる板状の熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料に含まれる熱可塑性樹脂、及び/又は連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物に含まれる樹脂を溶融することにより、熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料の表面の少なくとも一部分に、連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物を部分的に固定させた後、該テープ状物の全体を固定させることを特徴とする、不連続繊維と熱可塑性樹脂とからなる板状の熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料の表面の少なくとも一部分に、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物が固定されているプレス成形用熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項2】
溶着機を用いて、連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物を部分的に固定させた後、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を加熱後、冷却することにより、不連続繊維と熱可塑性樹脂とからなる板状の熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料と連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物とを全体的に固定することを特徴とする請求項1に記載のプレス成形用熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項3】
連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物の一層の厚みが30〜300μm、幅が5〜75mm、連続強化繊維の体積含有率が20〜70%であり、それらが少なくとも一層以上積層していることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス成形用熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項4】
不連続繊維と熱可塑性樹脂とからなる板状の熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料に含まれる強化繊維の数平均繊維長が5〜100mm、強化繊維の体積含有率が20〜70%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス成形用熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項5】
不連続繊維と熱可塑性樹脂とからなる板状の熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料が、厚みが30〜300μm、幅が5〜75mm、連続強化繊維の体積含有率20〜70%である連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物を数平均が5〜100mmに切断した物を擬似等方的に分散したものであることを特徴とする請求項4に記載のプレス成形用熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項6】
不連続繊維と熱可塑性樹脂とからなる板状の熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物のいずれか又は双方の強化繊維が、炭素繊維を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプレス成形用熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項7】
不連続繊維と熱可塑性樹脂とからなる板状の熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料に含まれる熱可塑性樹脂と、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物に含まれる熱可塑性樹脂とが相溶性のあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプレス成形用熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項8】
不連続繊維と熱可塑性樹脂とからなる板状の熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料に含まれる熱可塑性樹脂と、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物に含まれる熱可塑性樹脂との双方が、ポリプロピレン系樹脂或はポリアミド系樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプレス成形用熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形用熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料
の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続繊維と熱可塑性樹脂とからなる連続繊維強化熱可塑性複合材料と、不連続繊維と熱可塑性樹脂とからなる不連続繊維強化熱可塑性複合材料との2種類以上の繊維強化熱可塑性複合材料をプレス成形により一体化する方法が、例えば特開7−68580号公報(特許文献1)に開示されている。この特許文献1によれば、どちらか一方の複合材料を積層設備を使わずにもう一方の複合材料の上に載せたのち、双方の材料を同時に加熱して熱可塑性樹脂を溶融させて、両者を熱融着させてからプレス成形することにより、繊維強化熱可塑性複合成形品を製造する方法である。しかしながら、この方法では、複合材料同士の位置関係が、成形するたびに異なりやすく、精度の高い成形品を得ることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−68580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
すなわち、特に近年は熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料と連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなる複合材料とをプレス成形する際に、両者の位置関係を精度よく保つことを可能にする、プレス成形用熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料と同複合材料の効率的な製造方法の実現が強く望まれている。
本発明は、こうした状況に鑑みてなされたもので、その主目的は熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料と連続強化繊維及び熱可塑性樹脂からなるテープ状物とが精度よく配置されたプレス成形用熱可塑性樹脂系の繊維強化複合材料を
短時間で効率的に製造できるプレス成形用熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記主目的は、本発明の基本構成である、
溶着機を用いて、不連続繊維と熱可塑性樹脂とからなる板状の熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料に含まれる熱可塑性樹脂、及び/又は連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物に含まれる樹脂を溶融することにより、熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料の表面の少なくとも一部分に、連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物を部分的に固定させた後、該テープ状物の全体を固定させることを特徴とする、不連続繊維と熱可塑性樹脂とからなる板状の熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料の表面の少なくとも一部分に、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物が固定されているプレス成形用熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の製造方法により達成される。
【0006】
本発明の上記基本構成であるプレス成形用熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の製造方法により、熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料と連続強化繊維及び熱可塑性樹脂からなるテープ状物とが精度よく配置されたプレス成形用熱可塑性樹脂系の繊維強化複合材料を
短時間で効率的に製造できる。
【0007】
本発明の好ましい態様としては、上記熱可塑性樹脂系の繊維強化複合材料を加熱後、冷却することにより、不連続繊維と熱可塑性樹脂とからなる板状の熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料と、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物とが全体的に固定されていることを更に特徴とするプレス成形用熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を含ん
でいる。更に、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物の一層の厚みが30〜300μm、幅が5〜75mm、連続強化繊維の体積含有率が20〜70%であり、それらが少なくとも一層以上積層されていることが好ましい。
【0008】
また、前記不連続繊維と熱可塑性樹脂とからなる板状の熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料に含まれる強化繊維の数平均繊維長が5〜100mm、強化繊維の体積含有率が20〜70%であることが好ましく、更には前記板状の熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料の厚みは30〜300μm、幅が5〜75mmであって、当該熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料が、連続強化繊維の体積含有率が20〜70%である連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなる前記テープ状物を数平均で5〜100mmに切断したものを擬似等方的に分散したものであるとよい。
【0009】
不連続繊維と熱可塑性樹脂とからなる板状の熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物のいずれか或いは双方が、強化繊維として炭素繊維を含んでいることが望ましい。また、不連続繊維と熱可塑性樹脂とからなる板状の熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料に含まれる熱可塑性樹脂と、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物に含まれる熱可塑性樹脂とが相溶性をもつことが望ましく、特に前記板状の熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料に含まれる熱可塑性樹脂と、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物に含まれる熱可塑性樹脂との双方がポリプロピレン系樹脂或いはポリアミド系樹脂のいずれかであるとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料と熱可塑性樹脂系連続繊維強化複合材料とからなる複合材料にあって、熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料の層を熱可塑性樹脂系連続繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物を載せて使用するため、プレス成形品を製造するにあたって、熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料の層を希望する部位に精度よく配置することが可能となり、熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料のもつ複雑な形状の成形性が確保されるとともに、プレス成形品として特に高強度が要求される部位に均一に連続繊維を配置することができ、同部位において連続繊維に由来する物性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料の表面の少なくとも一部分に、連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物の一部が部分的に固定されている一例を示す斜視図である。
【
図2】熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料の表面の少なくとも一部分に、連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物の一部が部分的に固定されている他の例を示す斜視図である。
【
図3】熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料の一面に、連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物を固定化するときの外観図である。
【
図4】プレス成形用金型の一例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び
図2は、本発明の熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1の表面の少なくとも一部分に、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物2が部分的に固定されている第一の例である。部分的に固定されている部分は符号3で示される。
【0013】
熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1は、不連続の強化繊維が熱可塑性樹脂に分散した層である。強化繊維は一本ずつ開繊したフィラメントの状態で分散していてもよい
し、多数本の強化繊維フィラメントからなる束状で分散していてもよい。開繊したフィラメントや束状の繊維は、熱可塑性樹脂の中に擬似等方的にランダムに分散していることが好ましい。ここでランダムな分散とは、多数本の強化繊維フィラメントからなる束として、強化繊維が特定の方向性を持たずに分散している状態、個々の強化繊維フィラメントとして、特定の方向性を持たずに分散している状態のいずれをも含む。
【0014】
熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料1における強化繊維の体積含有率(JIS K
7052や、K 7075に準じて測定。)は20〜70%が好ましく、強化繊維の長さは5〜100mmであることが好ましい。強化繊維の体積含有率が20%以上であると、強化繊維に由来する物性を熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1に発揮させることができる。強化繊維の体積含有率が70%以下であると、熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料1のプレス成形時の流動性が保たれる。強化繊維長が5mm以上であると成形品の物性が優れ、強化繊維の長さが100mm以下であると、熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料1のプレス成形時の流動性が優れる。
【0015】
熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1の具体的な形態の例としては、連続した強化繊維を一方向に引き揃えて熱可塑性樹脂を含浸した厚み30〜300μm、幅5〜75mmのテープ状材料を長さ5〜100mmにカットしてチョップドテープとし、該チョップドテープを型内にランダムに分散させ、その状態で型内を加熱、加圧、冷却する加熱プレス成形により成形されたものが挙げられる。
【0016】
熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1に含まれる熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル、ポリアミド6等のポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルスルフォン、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなどを使用できる。また、これら各樹脂の変性体を用いてもよいし、複数種の樹脂をブレンドして用いてもよい。また、熱可塑性樹脂は、各種添加剤、フィラー、着色剤等を含んでいてもよい。
【0017】
熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1に含まれる強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などが挙げられる。
【0018】
連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物2とは、熱可塑性樹脂と連続繊維とから形成される層であって、連続繊維とは、当該連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物2中で途切れのないものを言う。連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物2は、このような連続繊維を含むため、物性が非常に優れる。
【0019】
連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物2の具体的な形態としては、連続した強化繊維を一方向に引き揃えて熱可塑性樹脂を含浸したものである。
【0020】
連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物2の強化繊維の体積含有率は、20〜70%であることが好ましい。強化繊維の体積含有率が20%以上であると、強化繊維に由来する物性を連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物2に発揮させることができる。強化繊維の体積含有率が70%以下であると、連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物2のプレス成形性を保つことができる。
【0021】
連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物2の厚みは、30〜300μmであることが好ましい。テープ状物の厚みが30μm以上であるとテープに強度や剛性を与えることができ、そのテープ状物を熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1に積層する作
業が実施しやくなる。テープ状物の厚みが300μm以下であるとテープ自体をボビン等に巻くことができ、そのテープ状物を熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1に積層する作業が実施しやくなる。
【0022】
連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物2の幅は、5〜75mmであることが好ましい。テープ状物の幅が5mm以上であると、そのテープ状物2を熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1に短時間で積層することができる。テープ状物の幅が75mm以下であると、熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1の細かい部分にも積層することが可能となる。
【0023】
連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物2に含まれる熱可塑性樹脂および強化繊維は、例えば熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料について例示したものの中から選択して使用できる。連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物2と熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1とに含まれる熱可塑性樹脂および強化繊維は、同じ材質であっても、異なっていてもよい。
【0024】
熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1と連続強化繊維
及び熱可塑性樹脂からなるテープ状物2とは、先ず、部分的に固定される。部分的に固定する具体的な形態の第一例としては、テープ状物2の少なくとも1箇所を赤外線ヒーターなどで加熱してそれに含まれる熱可塑性樹脂を溶融させて、その溶融部分を熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1に押し付けながら冷却する方法が挙げられる。
【0025】
部分的に固定する具体的な形態の第二例としては、熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1のある部分を赤外線ヒーターなどで加熱してそれに含まれる熱可塑性樹脂を溶融させて、その溶融部分に連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物2を配置させて、押し付けながら冷却する方法が挙げられる。
【0026】
部分的に固定する具体的な形態の第三例としては、熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1と連続強化繊維
及び熱可塑性樹脂からなるテープ状物2との少なくとも1箇所を、溶着機を用いて固定する方法が挙げられる。その溶着機の例として、振動溶着機、熱板溶着機、超音波溶着機が例示される。
【0027】
熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1と連続強化繊維
及び熱可塑性樹脂からなるテープ状物2とを部分的に固定した場合の強度を鑑みると、熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1と連続強化繊維
及び熱可塑性樹脂からなるテープ状物2とに含まれる熱可塑性樹脂は相溶性であるものが好ましい。
【0028】
熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1の表面における、連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物2の配置する方法としては、
図1に示すように、テープ状物2を互いに隙間を空けて平行になるように配置したり、
図2に示すように、テープ状物2を互いに平行に隙間を空けないで配置する方法がある。テープ状物の互いの角度は任意の角度を選ぶことができる。連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状物2は、熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1の表面全てを覆ってもよく、部分的に覆ってもよい。
【0029】
熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1と連続強化繊維
及び熱可塑性樹脂からなるテープ状物2とが部分的に固定された材料は、後に全体を固定することが好ましい。熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料1と連続強化繊維
及び熱可塑性樹脂からなるテープ状物2
とを全体的に固定する具体的な第一例として、プレス機に熱可塑性樹脂の融点或はガラス転移温度以上に加熱された平板状の金型を設置し、その金型に、互いが部分的に固定された熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1と連続強化繊維
及び熱可塑性樹脂からなるテープ状物2とを載せて加熱プレス成形後、その金型を熱可塑性樹脂の融点或はガラス転移温度以下に冷却する方法が挙げられる。熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1と連続強化繊維
及び熱可塑性樹脂からなるテープ状物2とを全体的に固定する具体的な第二例として、
図3に示すように、平板状の金型に、互いが部分的に固定された熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1と連続強化繊維
及び熱可塑性樹脂からなるテープ状物2とを挟んで、それを熱可塑性樹脂の融点或はガラス転移温度以上に加熱されたプレス機に挟んでプレス成形後、別に用意した熱可塑性樹脂の融点或はガラス転移温度以下に温度調整されたプレス機に移し変える方法が挙げられる。
【0030】
このようにして熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1と連続強化繊維
及び熱可塑性樹脂からなるテープ状物2とが全体的に固定された材料は、予備加熱後、
図4に示すような成形した形に加工された金型に載せてプレス成形することにより、
図5に示すような成形品を製造することができる。
【0031】
赤外線加熱炉を用いて予備加熱工程を行うことがより好ましい。予備加熱工程を赤外線加熱により行うと、全体的に固定された熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1と、連続強化繊維
及び熱可塑性樹
脂からなるテープ状物2とが内部まで均一に加熱でき好適である。予備加熱工程の設定温度は、熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1
と連続強化繊維
及び熱可塑性樹
脂からなるテープ状物2に使用されている熱可塑性樹脂の種類にもよるが、樹脂の融点またはガラス転移温度から、ガラス転移温度に150℃を加えた温度の範囲である。保持時間は1〜10分間である。
【0032】
成形工程におけるプレス成形の条件は、熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1
と連続強化繊維
及び熱可塑性樹
脂からなるテープ状物2
とに使用されている熱可塑性樹脂の種類にもよるが、例えば金型の設定温度を、樹脂の融点またはガラス転移温度から100℃を引いた温度〜樹脂の融点またはガラス転移温度とし、成形圧力を3.0〜30MPa、保持時間を0.5〜10分間とする条件に設定することが好ましい。
【実施例】
【0033】
熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料の強化繊維が直径7μmの炭素繊維であって、その連続した炭素繊維にポリプロピレンを含浸させた、厚み150μm、幅15mm、炭素繊維の体積含有率が45%であるテープ状物を長さ30mmに切断したのち、その切断片を擬似等方的に分散して得られる、長さ380mm、幅55mm、厚み8mmの板状物を使用した。
【0034】
連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物2として、熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料の製造の際に使用したものと同じ厚み150μm、幅15mm、炭素繊維の体積含有率45%であるテープ状物を使用した。
【0035】
(比較例1)
図2に示すように、熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1の上に、長さ380mmの連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなる3本のテープ状物2を互いに平行になるように、且つテープ間の隙間が0mmとなるように並べた。このとき2本目のテープの中心が熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料1の中心に重なるようにした。テープ配置をそのままにして、3本のテープの両端を固定部分3として赤外線ヒーターで溶融させた後、冷却することでテープ状物2を熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料1に部分的に固定させた。
【0036】
次いで、
図3に示すように、この部分的に固定された熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料1及びテープ状物2を平板状の上下金型12,13にセットして、その上下金型1
2,13を200℃に加熱されたプレス機11に挟み、圧力1MPaで5分間保圧した。その後、50℃に加熱された、図示せぬ別のプレス機に移し変えて、圧力5MPaで5分間保圧した。熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料1とテープ状物2とは全体で一体化されていた。この複合材料を270℃にセットされた赤外線ヒーターに6分入れた後、
図4に示すような130℃に加熱された金型14の上に載せて、圧力20MPaで1分間保圧した。このようなプレス成形により、
図5に示すような、熱可塑性樹脂系の不連続繊維強化複合材料と熱可塑性樹脂系の連続繊維強化複合材料とからなる成形品15を得た。熱可塑性樹脂系の連続繊維強化複合材料1の層は、成形品の天面部に精度よく配置されていた。
【0037】
(比較例2)
連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物2を熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料1に固定しなかった以外は、実施例1と同様な操作を実施した。天面部に配置された連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物2の精度は
比較例1と比較して低下していた。
【0038】
(実施例1)
連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなるテープ状物2
を部分的に固定する際に、図示せぬ超音波溶着機(ブランソン社製、2000LP)を使用した以外は、
比較例1と同様の操作を実施した。超音波溶着時の条件は、発振時間0.2秒、保持時間0.3秒、振幅90%とした。
比較例1と同様に、得られた熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料1と熱可塑性樹脂系の連続繊維強化複合材料であるテープ状物2とからなる成形品において、熱可塑性樹脂系連続繊維強化複合材料の層は、成形品の天面部に精度よく配置された。
超音波溶着時にあって、その発振時間及び保持時間は上述のとおりいずれも極めて短いが、上記比較例1の赤外線ヒーターによる加熱は局部的な加熱が難しく、また樹脂の溶融に要する時間も溶着機と比較すると長時間かかる。
【符号の説明】
【0039】
1 熱可塑性樹脂系不連続繊維強化複合材料
2 (連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなる)テープ状物
3 固定部分
11 プレス機
12 上金型
13 下金型
14 金型
15 成形品