【文献】
Ambalavanan Jayaraman 他,Tailored Clinoptilolites for Nitrogen/Methane Separation,Ind.Eng.Chem.Res.,2005年,Vol.44, No.14,P.5184-5192
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の窒素を含みメタンを主成分とする炭化水素ガスからの窒素分離方法において、前記合成クリノプチロライトからなる窒素分離用吸着剤が成形体であることを特徴とする窒素を含みメタンを主成分とする炭化水素ガスからの窒素分離方法。
前記窒素を含みメタンを主成分とする炭化水素ガスがメタン、天然ガス、都市ガスまたは消化ガスのいずれか一種以上である請求項1または2に記載の窒素を含みメタンを主成分とする炭化水素ガスからの窒素分離方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、イオン交換サイトにストロンチウムを有する合成クリノプチロライトを用いて窒素含有炭化水素ガスから窒素を有効に分離する方法および窒素分離装置を提供することを目的とするものである。
より詳しくは、本発明は、クリノプチロライトのイオン交換サイトにストロンチウムを有する合成クリノプチロライトを使用してCH
4−N
2混合ガスからCH
4濃縮ガスを得るガス分離方法および窒素分離装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討を行った結果、窒素分離用吸着剤としてイオン交換サイトにストロンチウムを有する合成クリノプチロライト(以下、“ストロンチウム交換クリノプチロライト”あるいは“ストロンチウムイオン交換クリノプチロライト”と記載する)を用いて窒素含有炭化水素ガスからの窒素を効率よく分離できる方法および窒素分離装置を見出した。
すなわち、本発明は、ストロンチウムイオン交換クリノプチロライトからなる窒素分離用吸着剤を用いることを特徴とする、窒素を含みメタンを主成分とする炭化水素ガスからの窒素分離方法および窒素分離装置である。
【0009】
本発明は、イオン交換サイトにストロンチウムを有する合成クリノプチロライトからなる窒素分離用吸着剤を用いることを特徴とする窒素を含みメタンを主成分とする炭化水素ガスからの窒素分離方法および窒素分離装置である。
すなわち、本発明は、窒素を含みメタンを主成分とする炭化水素ガスから窒素を分離する方法およびそのための装置である。そして、窒素分離用吸着剤としてストロンチウムイオン交換クリノプチロライトからなる窒素分離用吸着剤を用い、窒素含有炭化水素ガスを、当該窒素分離用吸着剤に通して処理することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る窒素を含みメタンを主成分とする炭化水素ガスからの窒素分離方法および窒素分離装置は、前記イオン交換サイトにストロンチウムを有する合成クリノプチロライトからなる窒素分離用吸着剤が成形体であることを特徴とする窒素を含みメタンを主成分とする炭化水素ガスからの窒素分離方法および窒素分離装置である。
すなわち、本発明は、窒素を含みメタンを主成分とする炭化水素ガスからの窒素分離方法および窒素分離装置において、前記イオン交換サイトにストロンチウムを有する合成クリノプチロライトからなる窒素分離用吸着剤は、成形体として構成することができる。
【0011】
本発明において、前記窒素を含みメタンを主成分とする炭化水素ガスとしては、窒素を含む、メタン、天然ガス、都市ガスまたは消化ガスのいずれか一種以上が挙げられる。本発明は、これら例示のガスとは限らず、窒素を含みメタンを主成分とする炭化水素ガスであれば何れも対象とすることができる。分離の対象となるガスは、主成分であるメタン濃度はおおよそ60〜99vol%、窒素濃度は40〜1vol%の範囲である。
【0012】
分離方法としては、PSA(Pressure Swing Adsorption)法、TSA(Temperature Swing Adsorption)法、及びこれらを組合せた方法などを用いることができる。吸着圧力と温度、脱着圧力と温度は、吸着剤の特性に合せて設定することができる。特に吸着温度は、天然ガスは通常、液化されて貯蔵されていることを考慮すると、天然ガスの沸点である−162℃から室温付近の40℃程度の範囲で選択することが好ましい。
【0013】
本発明において、イオン交換サイトにストロンチウムを有する合成クリノプチロライトからなる窒素分離用吸着剤は、窒素分離装置としても構成され、使用される。この窒素分離装置は、窒素分離用吸着剤を吸着塔等の容器内に充填することで構成され、その窒素分離用吸着剤に窒素を含みメタンを主成分とする炭化水素ガスを通過させることで使用される。すなわち、窒素を含みメタンを主成分とする炭化水素ガスを、吸着塔等の容器の一方の側から導入して窒素分離用吸着剤を通過させることで該窒素分離用吸着剤に窒素を選択的に吸着する。そのように窒素が吸着分離され、メタンを主成分とする炭化水素ガスは容器の他方の側から取り出される。
【0014】
〈ストロンチウム交換クリノプチロライトについて〉
本発明の方法および装置に用いるストロンチウム交換クリノプチロライトは合成クリノプチロライトである。クリノプチロライトは天然に産出されるゼオライトである。しかしながら、クリノプチロライトが天然に産出されたクリノプチロライト(以下、天然クリノプチロライト)であると、窒素の吸着量が低くなる。
【0015】
本発明の方法および装置に用いるストロンチウム交換クリノプチロライトは、イオン交換サイトにストロンチウムを有する。イオン交換サイトにストロンチウムを有することで、窒素の吸着特性が向上する。
【0016】
ストロンチウムの量が多いほど、窒素の吸着特性は向上する。そのため、ストロンチウム交換クリノプチロライトのイオン交換サイトにおけるストロンチウムの割合(以下、「ストロンチウム交換率」とする)は、クリノプチロライトのイオン交換サイトの量に対して少なくとも35mol%であることが好ましく、少なくとも40mol%であることがより好ましく、少なくとも65mol%であることが更に好ましく、少なくとも70mol%であることが更により好ましく、少なくとも75mol%であることが特に好ましい。
【0017】
また、イオン交換サイトに存在するストロンチウム以外のイオン種はナトリウム(Na)、カリウム(K)などのアルカリ金属イオンや、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属イオンなどが例示できる。
【0018】
本発明の方法および装置に用いるストロンチウム交換クリノプチロライトのSiO
2/Al
2O
3のモル比は特に限定されない。SiO
2/Al
2O
3のモル比としては、例えば、10未満(Si/Alの原子比で5未満)を挙げることができる。
【0019】
本発明の方法および装置に用いるストロンチウム交換クリノプチロライトは、細孔直径3〜10,000nmの範囲の細孔容積が0.5ml/g以上であることが好ましく、0.7ml/g以上であることがより好ましく、0.8ml/g以上であることが更に好ましい。細孔直径3〜10,000nmの範囲の細孔容積が0.5ml/g以上であることで、窒素吸着量が高くなりやすい。
【0020】
ここで、本発明の方法および装置に用いるストロンチウム交換クリノプチロライトは一次粒子が凝集した二次粒子からなる。そのため、細孔直径3〜10,000nmの細孔容積は、一次粒子間に形成された細孔であり、細孔直径10,000nmを超えた細孔容積は、二次粒子間に形成される粉末粒子間空隙である。
【0021】
本発明の方法および装置に用いるストロンチウム交換クリノプチロライトは平均細孔直径が200nm以上であることが好ましく、400nm以上であることがより好ましい。平均細孔直径が200nm以上であると、適度な充填性および強度を有する。これにより、本発明の方法に用いるストロンチウム交換クリノプチロライトが操作性に優れた粉末となりやすい。
【0022】
本発明の方法および装置に使用する、イオン交換サイトにストロンチウムを有する合成クリノプチロライトからなる窒素分離用吸着剤は、成形体として構成することができる。成形体の形状は、円柱状、球状、三つ葉型、リング状、ハニカム型又は膜状などの形状を例示することができる。成形体とする場合、成形体が含有する結合剤の種類は適宜選択することができ、粘土鉱物、あるいは無機系バインダーなどを例示することができる。また結合剤と併せて成形助剤を含有していてもよい。成形助剤は、成形体を製造する際の成形性を向上させるために用いられるものであり、有機系の成形助剤を例示することができる。分離剤として使用する場合は、加熱脱水を行う。
【発明の効果】
【0023】
本発明の窒素含有炭化水素ガスから窒素を分離する方法および装置によれば、窒素含有炭化水素ガス中の窒素を従来のものよりも長い時間維持することができるため、長時間にわたり炭化水素ガス中の窒素を分離、除去することができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を、メタン中の窒素の選択的吸着特性に係る実験例を基に、さらに詳しく説明する。
【0026】
〈実験装置、操作〉
図1は、実験例1〜2で使用した実験装置、その操作を説明する図である。
図1のとおり、吸着剤充填容器11を配置する。
図1中「吸着剤試験サンプル」として示す箇所に窒素分離用吸着剤を充填する。吸着剤試験サンプル(窒素分離用吸着剤)は上下の多孔板間に層状に配置している。
窒素分離用吸着剤充填容器11への試験ガス供給側には原料ガスとして窒素(N
2)を含むメタンガスを供給する導管2を連結している。すなわち、窒素分離用吸着剤充填容器11への原料ガス供給側に流量調節器(M.F.C)、開閉弁V(1)を備える試験ガス導管1を配置する。
本実験装置は、開閉弁(=バルブ)V(1)〜V(8)を操作することにより、手順1→手順2→手順3のステップを踏んで実験を進めることができる。
【0027】
〈1.手順1〉
手順1は、系内を真空引きするステップである。V(1)〜V(8)のうち、V(1)、V(6)、V(8)を閉、V(2)〜V(5)、V(7)を開とする。そして、導管6からの分岐管8を介して配置した真空ポンプを作動する。これにより本実験装置系内を真空引きする。
【0028】
〈2.手順2〉
本実験装置系内を真空引きした後、手順2に移行する。手順2は、原料ガスを吸着剤充填容器11に導入し、真空引きした系内を真空、減圧状態から、常圧状態へと移行させるステップである。V(1)〜V(8)のうち、V(1)〜V(4)を開、V(5)〜V(8)を閉とする。
このとき、原料ガスを導管1から導管2、V(3)を介して吸着剤充填容器11へ導入し、併せてバイパスライン5へも原料ガスを導入する。V(5)〜V(8)は閉であるので、原料ガスは導管6〜導管8中に導入される。
【0029】
〈3.手順3〉
手順3は、原料ガスを吸着剤充填容器11に導入し、真空引きした系内を真空、減圧状態から、常圧状態へと移行させる手順2のステップを実施した後、手順3へ移行する。手順3は、原料ガスを吸着剤充填容器11に導入して窒素吸着を行い、その吸着傾向を経時的に観察するステップである。手順2で常圧状態へ移行しており、常圧状態は手順3でも保たれ、継続される。
【0030】
V(1)〜V(8)のうち、V(1)、V(3)、V(5)〜V(6)、V(8)を開とし、V(2)、V(4)、V(7)を閉とする。このとき、原料ガスを導管1から導管2、V(3)を介して容器11へ導入し、併せてバイパスライン4へも原料ガスを導入する。
【0031】
図1に示す実験装置により、比較例としてカルシウムでイオン交換した合成クリノプチロライト(以下、カルシウム交換クリノプチロライト)吸着剤を使用し、実施例としてストロンチウム交換クリノプチロライト吸着剤を使用して破過ガス組成を測定した。入ガスとして(CH
4濃度90vol%、N
2濃度10vol%)のガスを使用した。以下、比較例、実施例について順次説明する。
図1中、下部に“CH
4濃度90vol%、N
2濃度10vol%の原料ガス(入ガス)を用いた試験概要”を表示している。
【0032】
〈実験例1:比較例〉
直径1.0〜1.4mmサイズにカルシウム交換クリノプチロライト吸着剤を整粒し、容器11に充填した。充填容器11への入ガス〔CH
4濃度90体積%(vol%)、N
2濃度10体積%(vol%)〕を“カルシウム交換クリノプチロライト”に導入し、破過ガス組成を測定した。
【0033】
この試験は、空塔速度90(/h)の条件下、空間速度を変えて実施した。
図2はその結果であり、
図2中、横軸はガス導入時からの経過時間、縦軸はCH
4の濃度である。
図2には、空間速度SV=90、180、360、720(/h)での結果を示している。
【0034】
図2の結果からして以下の事実が明らかである。
(a)空間速度SVが720であると〔
図2中(a)線参照〕、CH
4濃度は94.1vol%程度でピークとなり、破過時間も僅か2秒でしかない。
(b)空間速度SVが360であると〔
図2中(b)線参照〕、CH
4濃度は96.0vol%程度でピークとなり、破過時間も僅か3秒でしかない。
(c)空間速度SVが180であると〔
図2中(c)線参照〕、CH
4濃度は96.9vol%程度でピークとなり、破過時間は6秒程度である。
(d)空間速度SVが90であると〔
図2中(d)線参照〕、CH
4濃度は97.0vol%程度でピークとなり、破過時間も10秒と長くなる。すなわち
図1中、質量分析計で計測されるそのCH
4濃度97.0vol%は10秒程度の時間保持された。
【0035】
そのようにCH
4濃度のピークは97.0vol%であり、破過時間は10秒と長いので、それなりに有用であるが、CH
4濃度のピークは97.0vol%で限度であり、破過時間は10秒で、これで限度である。CH
4濃度のピークが97.0vol%であることは、3vol%の窒素が残り、依然含まれることになり、また破過時間が10秒であることは、CH
4濃度97.0vol%への窒素の分離操作時間はその分改善されてはいるが、その程度の破過時間つまり破過維持時間では有用な窒素分離操作期間は依然短い。
【0036】
〈実験例2:実施例〉
直径1.0〜1.4mmサイズにストロンチウム交換クリノプチロライト吸着剤を整粒し、容器11に充填した。この吸着剤のストロンチウムのイオン交換率は82.1%であった。充填容器11への入ガス〔CH
4濃度90体積%(vol%)、N
2濃度10体積%(vol%)〕をストロンチウム交換クリノプチロライトに導入し、破過ガス組成を測定した。
【0037】
この試験は、空塔速度90(h)の条件下、被処理ガスの空間速度を変えて実施した。
図3はその結果である。
図3中、横軸はガス導入時からの経過時間、縦軸はCH
4の濃度であり、左右の縦軸に同じ目盛を付している。また、
図3中、空間速度SV=90、180、360、720h
-1での結果を示している。
【0038】
図3の結果からして以下の事実が明らかである。
(a)空間速度SVが720であると〔
図2中(a)線参照〕、CH
4濃度は96.7%程度でピークとなり、破過時間も僅か3秒でしかない。
(b)空間速度SVが360であると〔
図2中(b)線参照〕、CH
4濃度は98.3%程度でピークとなり、破過時間も僅か6秒でしかない。
(c)空間速度SVが180であると〔
図2中(c)線参照〕、CH
4濃度は99.0%程度でピークとなり、破過時間も可成り長いが16秒程度である。
(d)空間速度SVが90であると〔
図2中(d)線参照〕、CH
4濃度は99.0%程度でピークとなり、破過時間も30秒と非常に長くなる。
図1中、質量分析計で計測されるそのCH
4濃度99.0%は30秒程度強の長時間保持された。
【0039】
(クロマトグラフィーによる窒素の吸着分離特性の評価)
図4は、実験例3〜10で使用した実験装置図である。窒素分離用吸着剤を0.35〜0.5mmに成形整粒し、約4.5mlを500℃、1.5時間、空気中で脱水処理後、25℃に保持した内径4.35mm×長さ30cmのステンレスカラムにヘリウム(純度99.999%以上)を流通しながら充填した。キャリアガスとしてヘリウム(純度99.999%以上)を50Nml/minの流量でカラムに流通させて、六方ガスサンプラーの流路を切り替えて入ガス(CH
4濃度90体積%、N
2濃度10体積%)をカラムに1ccパルス注入して出口ガスにおける窒素とメタンをTCD検出器で検出して、得られたクロマトグラムから窒素とメタンの保持時間を分析し、窒素とメタンの保持時間の差を算出した。
【0040】
〈実験例3:実施例〉
ストロンチウム交換率70.1%のストロンチウム交換クリノプチロライトを用いて、窒素とメタンの保持時間の差を評価した。25℃での窒素とメタンの保持時間の差を表1に示す。
【0041】
〈実験例4:実施例〉
ストロンチウム交換率79.7%のストロンチウム交換クリノプチロライトを用いて、窒素とメタンの保持時間の差を評価した。25℃での窒素とメタンの保持時間の差を表1に示す。
【0042】
〈実験例5:実施例〉
実験例2と同じストロンチウム交換クリノプチロライト(ストロンチウム交換率82.1%)を用いて、窒素とメタンの保持時間の差を評価した。25℃での窒素とメタンの保持時間の差を表1に示す。
【0043】
〈実験例6:実施例〉
ストロンチウム交換率84.5%のストロンチウム交換クリノプチロライトを用いて、窒素とメタンの保持時間の差を評価した。25℃での窒素とメタンの保持時間の差を表1に示す。
【0044】
〈実験例7:実施例〉
ストロンチウム交換率38.4%のストロンチウム交換クリノプチロライトを用いて、窒素とメタンの保持時間の差を評価した。25℃での窒素とメタンの保持時間の差を表1に示す。
【0045】
〈実験例8:比較例〉
実験例1と同じカルシウム交換クリノプチロライト(Ca交換率68.8%)を用いて、窒素とメタンの保持時間の差を評価した。25℃での窒素とメタンの保持時間の差を表1に示す。
【0046】
〈実験例9:比較例〉
Ca交換率36.8%のカルシウム交換クリノプチロライトを用いて、窒素とメタンの保持時間の差を評価した。25℃での窒素とメタンの保持時間の差を表1に示す。
【0047】
〈実験例10:比較例〉
Ca交換率76.5%のカルシウム交換クリノプチロライトを用いて、窒素とメタンの保持時間の差を評価した。25℃での窒素とメタンの保持時間の差を表1に示す。
【0048】
表1と
図5は、実験例3〜10の結果をまとめたものである。表1からわかるように、ストロンチウム交換クリノプチロライトは、カルシウム交換クリノプチロライトと比べ、保持時間の差が大きくなっており、優れた吸着分離特性を有することがわかる。さらに、ストロンチウム交換率が70%以上において、ストロンチウム交換率の増加に従い急激に保持時間の差が大きくなっており、窒素とメタンの分離性能が向上することがわかる。
【0049】
【表1】
【0050】
このように非常に高いCH
4濃度を得て、しかも長時間保持可能な吸着分離方法であることが見出された。したがってこの事実からして、この剤つまりストロンチウム交換プチロライトを充填した容器を2塔用意し、交互に吸着−再生を行うことにより、連続的に高いCH
4濃度のガスを効率的に得ることが可能となる。
【0051】
この条件において、吸着剤を充填した容器を2個用意し、ガスを交互に流通させた。サイクル時間を1〜2分、切替え時に系内を均一にする時間を1秒確保する運転をすることにより高濃度CH
4ガスを得た。
【0052】
〈実験例11:実施例〉
ストロンチウム交換クリノプチロライト成形体(追加実施例)と市販窒素吸着剤(追加比較例)を用い、前記と同様の分離方法において、PSA法による「CH
4−N
2」の分離評価を実施した。本実験例11:実施例での分離条件は下記のとおりである。
【0053】
〈実験装置、操作〉
図6は、実験例11で使用した実験装置、その操作を説明する図である。
図6のとおり、窒素分離用吸着剤充填容器AT1、AT2を配置する。吸着剤充填容器AT1、AT2には、前述
図1中「吸着剤試験サンプル」として示すのと同様にして窒素分離用吸着剤を充填する。
【0054】
窒素分離用吸着剤充填容器AT1、AT2への混合ガス供給側には混合ガスとして窒素(N
2)を含むメタンガスを供給する導管を連結している。すなわち、窒素分離用吸着剤充填容器AT1、AT2への試験ガス供給側に流量調節器(M.F.C)、電磁開閉弁SV11を備える混合ガス導管を配置する。
【0055】
本実験装置は、電磁開閉弁(=バルブ)SV1〜SV14を操作することにより、手順1→手順2→手順3→手順4のステップを踏んで実験を進めることができる。
【0056】
〈1.手順1〉
手順1は、工程1であり、吸着タンク1でガス分離し、吸着タンク2を再生する。このとき、電磁弁SV1〜SV14のうち、SV1、SV4、SV7、SV11、SV12、SV14を開とし、その余の電磁弁は閉とする。真空ポンプPUは作動する。
【0057】
〈2.手順2〉
手順2は、工程2の均圧である。このとき、電磁弁SV1〜SV14のうち、SV5、SV6、SV8、SV9、SV10、SV11、SV12、SV14を開とし、その余の電磁弁は閉とする。真空ポンプPUは作動する。
【0058】
〈3.手順3〉
手順3は、工程3であり、吸着タンク1を再生し、吸着タンク2でガス分離する。このとき、電磁弁SV1〜SV14のうち、SV2、SV3、SV8、SV11、SV12、SV14を開とし、その余の電磁弁は閉とする。真空ポンプPUは作動する。
【0059】
〈4.手順4〉
手順4は、工程4の均圧である。このとき、電磁弁SV1〜SV14のうち、SV5、SV6、SV8、SV9、SV10、SV11、SV12、SV14を開とし、その余の電磁弁は閉とする。真空ポンプPUは作動する。
【0060】
図6に示す実験装置により、比較例として市販の窒素吸着剤:分子篩炭素を使用し、実施例としてストロンチウム交換クリノプチロライト成形体吸着剤を使用して前記と同様の分離方法において、PSA法によるCH
4とN
2の原料ガスの分離評価を実施した。原料ガスとしてCH
4濃度90vol%、N
2濃度10vol%の混合ガスを使用した。
図6中、下部に“CH
4濃度90vol%、N
2濃度10vol%の原料ガス(入ガス)を用いた試験概要”を表示している。
【0061】
分離評価に使用した成形体吸着剤は次のように調製した。クリノプチロライト粉末100重量部に対して、粘土20重量部、成形助剤CMC5重量部、及び適量の水を添加して、直径1.5mmの円柱状に成形、100℃で乾燥、600℃で焼成、ストロンチウム交換してストロンチウム交換率83%とし、500℃で脱水した。
【0062】
本実施例、比較例で得られた結果を表2に示す。ここで、製品CH
4の回収率は、式(1)のとおりである。すなわち、製品CH
4の回収率は式(1)で定義している。
【数1】
【0063】
【表2】
【0064】
表2のとおり、製品CH
4濃度については、分離剤:ストロンチウム交換クリノプチロライト成形体によると99.6vol%という非常に高い値が得られた。これに対して、市販窒素吸着剤(成形体)による製品CH
4濃度は93.4vol%が最大値であった。
製品CH
4濃度が93vol%程度の条件下では、分離剤:ストロンチウム交換クリノプチロライト成形体において、製品CH
4回収率が市販窒素吸着剤(成形体)よりも大きく上回り、且つ4倍のガス量を処理可能であることがわかった。
【0065】
また、表2のとおり、製品ガス量を増加させると、製品CH
4濃度は低下するが、回収率は増加する。製品中のCH
4濃度と回収率はトレードオフの関係にあるので、ニーズに応じて、適した条件でガス濃縮を実施することとなる。