特許第6093618号(P6093618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6093618色域データベース作成システム及びその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093618
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】色域データベース作成システム及びその方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/46 20060101AFI20170227BHJP
   H04N 1/60 20060101ALI20170227BHJP
   G01J 3/46 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   H04N1/46 Z
   H04N1/40 D
   G01J3/46 Z
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-70611(P2013-70611)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-195171(P2014-195171A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 融
(72)【発明者】
【氏名】宍倉 正視
(72)【発明者】
【氏名】森原 康博
(72)【発明者】
【氏名】出村 小夜香
【審査官】 豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−094353(JP,A)
【文献】 特開2008−083058(JP,A)
【文献】 特開平11−341297(JP,A)
【文献】 特開平09−202034(JP,A)
【文献】 特開2011−077869(JP,A)
【文献】 特開2008−054346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/46−62
G01J 3/46
H04N 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合インキを作成するために用いるベースインキを予め設定した選択条件により選択するベースインキ選択部と、
前記配合インキの色を調整する複数の異なる色の前記ベースインキの配合グループを設定するコンビネーション設計部と、
前記配合グループにおける前記ベースインキの各々の配合比率を設定する初期配合設定部と、
前記配合比率毎に前記配合グループによる配合インキの分光反射率を求める分光反射率計算部と、
前記分光反射率から所定の色空間における前記配合インキの色の座標値を求める座標値算出部と
前記色空間における前記座標値が疎の領域を検出し、前記座標値が疎の領域における前記座標値が求められていない無データ座標位置を補完するため、当該無データ座標位置に隣接する前記座標値の前記配合比率を変化させつつ、前記分光反射率計算部にこの変化させた配合比率における分光反射率を計算させ、前記座標値算出部に当該分光反射率から前記座標値を算出させ、前記無データ座標位置となる前記座標値の前記配合比率を求め、前記色空間における疎の領域の座標値の補完を行う空間データ補完部と
を備え、
前記座標値、前記配合グループ、前記配合比率、前記分光反射率、前記選択条件とを対応付け、外部の色域データベースに対して書き込むこと
を特徴とする色域データベース作成システム。
【請求項2】
前記配合インキにより彩色する下地素材を選択する素材設定部をさらに有し、
前記座標値算出部が、
前記配合インキの分光反射率に加え、前記下地素材の分光反射率を用いて前記座標値を算出することを特徴とする請求項1に記載の色域データベース作成システム。
【請求項3】
前記座標値算出部が、
前記配合インキの分光反射率に加え、前記配合インキにより彩色した彩色製品を照明する光源の分光特性を用いて前記座標値を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の色域データベース作成システム。
【請求項4】
配合インキを作成するために用いるベースインキを予め設定した選択条件により選択するベースインキ選択過程と、
前記配合インキの色を調整する複数の異なる色の前記ベースインキの配合グループを設定するコンビネーション設計過程と、
前記配合グループにおける前記ベースインキの各々の配合比率を設定する初期配合設定過程と、
前記配合比率毎に前記配合グループによる配合インキの分光反射率を求める分光反射率計算過程と、
前記分光反射率から所定の色空間における前記配合インキの色の座標値求める座標値算出過程と、
前記色空間における前記座標値が疎の領域を検出し、前記座標値が疎の領域における前記座標値が求められていない無データ座標位置を補完するため、当該無データ座標位置に隣接する前記座標値の前記配合比率を変化させつつ、前記分光反射率計算過程においてこの変化させた配合比率における分光反射率が計算され、前記座標値算出過程において当該分光反射率から前記座標値が算出され、前記無データ座標位置となる前記座標値の前記配合比率を求め、前記色空間における疎の領域の座標値の補完を行う空間データ補完過程と、
前記座標値、前記配合グループ、前記配合比率、前記分光反射率、前記選択条件とを対応付け、外部の色域データベースに対して書き込むデータ書込過程と
を備えることを特徴とする色域データベース作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、彩色製品に対する彩色の色合わせに用いる色域データベース作成システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、包装や衣服などの彩色製品において、色決定者(例えば製品のデザイナー)が彩色する色を指定し、彩色製品製造者がこの指定された色を再現する作業を行い、再現した色により製品を彩色している。
ここで、彩色する色の指定には、一般的には色見本帳が用いられている。この色見本帳の色の種類数は例えば数千色が用意されている。また、色見本帳において、彩色される下地の素材にはアート紙等の一般的な印刷可能な用紙が用いられ、これらの用紙への印刷方法は主にオフセット印刷が用いられている。
【0003】
色決定者が色見本帳を利用する場合、指定した色を伝える場合に色を指定する際に色見本帳から切り離した同一色の見本のカラーチップを、関係者に受け渡す必要があり、色決定者に色を決定してもらう際、関係者は常に完全に全色が存在する色見本帳を準備する必要がある。
また、色見本帳の色は限られており、色決定者が本当に望む色を選択することができない。さらに、色見本帳の色の彩色に必要なインキの配合情報や、彩色する下地の材料の種類数が限定されているため、彩色製品製造者が色決定者の決定した色を、異なる材料で再現する作業を行わなければならない。すなわち、彩色製品製造者は、例えば、色合わせのためのシステムを用い、色見本としてのカラーチップの色を元に、色決定者の設計した色を、彩色する下地の材料に合わせて再現する必要がある(例えば、特許文献1参照)。このため、色合わせ作業において、印刷方式に合わせたインキの種類の選択、配合割合などの試行錯誤を行うことになり、設備投資、人手及び時間がかかってしまう。
【0004】
また、近年、彩色製品のデザイナーは、パーソナルコンピュータ(以下、PC)上のアプリケーション(例えば、Adobe Illustrator(登録商標)等)を利用し、製品のデザイン及び彩色の設計を行っている。このとき、デザイナーは、PCの画面上に表示される色見本による色彩確認や、インクジェット印刷などによるモックアップ作成を行い、彩色製品のデザイン案の検討を行う。これにより、色見本帳に比較して、色決定者が選択できる色の連続性を得ることができ、希望の色を選択する幅が広がる。
【0005】
しかし、PCの画面上に表示される色は、デザインする製品の材料に彩色した状態で確認することはできない。またインクジェット印刷などによるモックアップ等も色見本帳と同様にデザインする製品の材料に彩色した状態で確認できることが望ましいが、一般的には製品とは異なる材料で確認している。
したがって、彩色製品製造者は、色決定者が設計した色を再現するため、色見本帳の場合と同様に、彩色に必要なインキの配合情報や、彩色する下地の素材(材料)の種類などが実際の彩色製品と異なるため、煩雑な色合わせ作業を行うことになる。また、色決定者が指定する色見本帳の色は、彩色製品にて使用される材料では再現しない場合があり、最終的な色決定まで多くの時間を費やしたり、色指定のやり直しによる工程の後戻りが発生したりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−163759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した点を鑑みてなされたもので、デザイナーによる色選択時に、デザイナーが彩色する下地の素材に対応させ、配合される配合インキの色を再現するためのベースインキの種類と、それらインキの配合比率及び分光反射率とを求める色域データベースを、容易に作成することができる色域データベース作成システム及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の色域データベース作成システムは、配合インキを作成するために用いるべースインキを予め設定した選択条件により選択するベースインキ選択部と、前記配合インキの色を調整する複数の異なる色の前記ベースインキの配合グループを設定するコンビネーション設計部と、前記配合グループにおける前記ベースインキの各々の配合比率を設定する初期配合設定部と、前記配合比率毎に前記配合グループによる配合インキの分光反射率を求める分光反射率計算部と、前記分光反射率から所定の色空間における前記配合インキの色の座標値を求める座標値算出部と、前記色空間における前記座標値が疎の領域を検出し、前記座標値が疎の領域における前記座標値が求められていない無データ座標位置を補完するため、当該無データ座標位置に隣接する前記座標値の前記配合比率を変化させつつ、前記分光反射率計算部にこの変化させた配合比率における分光反射率を計算させ、前記座標値算出部に当該分光反射率から前記座標値を算出させ、前記無データ座標位置となる前記座標値の前記配合比率を求め、前記色空間における疎の領域の座標値の補完を行う空間データ補完部とを備え、前記座標値、前記配合グループ、前記配合比率、前記分光反射率、前記選択条件とを対応付け、外部の色域データベースに対して書き込むことを特徴とする。
【0010】
本発明の色域データベース作成システムは、前記配合インキにより彩色する下地素材を選択する素材設定部をさらに有し、前記座標値算出部が、前記配合インキの分光反射率に加え、前記下地素材の分光反射率を用いて前記座標値を算出することを特徴とする。
【0011】
本発明の色域データベース作成システムは、前記座標値算出部が、前記配合インキの分光反射率に加え、前記配合インキにより彩色した彩色製品を照明する光源の分光特性を用いて前記座標値を算出することを特徴とする。
【0012】
本発明の色域データベース作成方法は、配合インキを作成するために用いるべースインキを予め設定した選択条件により選択するベースインキ選択過程と、前記配合インキの色を調整する複数の異なる色の前記ベースインキの配合グループを設定するコンビネーション設計過程と、前記配合グループにおける前記ベースインキの各々の配合比率を設定する初期配合設定過程と、前記配合比率毎に前記配合グループによる配合インキの分光反射率を求める分光反射率計算過程と、前記分光反射率から所定の色空間における前記配合インキの色の座標値求める座標値算出過程と、前記色空間における前記座標値が疎の領域を検出し、前記座標値が疎の領域における前記座標値が求められていない無データ座標位置を補完するため、当該無データ座標位置に隣接する前記座標値の前記配合比率を変化させつつ、前記分光反射率計算過程においてこの変化させた配合比率における分光反射率が計算され、前記座標値算出過程において当該分光反射率から前記座標値が算出され、前記無データ座標位置となる前記座標値の前記配合比率を求め、前記色空間における疎の領域の座標値の補完を行う空間データ補完過程と、前記座標値、前記配合グループ、前記配合比率、前記分光反射率、前記選択条件とを対応付け、外部の色域データベースに対して書き込むデータ書込過程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、デザイナーによる色選択時に、デザイナーが彩色する下地の素材に対応させ、配合される配合インキの色を再現するためのベースインキの種類と、それらインキの配合比率及び分光反射率とを求める色域データベースを、容易に作成することができる
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の一実施形態による色域データベース作成システム1の構成例を示す概略ブロック図である。
図2】素材データベース20に予め書き込まれて記憶されている下地素材テーブルの構成を示している。
図3】ベースインキデータベース19に予め書き込まれて記憶されているベースインキテーブルの構成例を示している。
図4】一例としてオフセットインキ及びグラビアインキにおける耐性特性の種類とその耐性の説明が示されている。
図5】配合インキの配合情報が記載されている配合インキテーブルの構成例を示す図である。
図6】初期配合した配合インキ各々のL値をL色空間の各座標にプロットした図である。
図7】本実施形態による色域データベース作成システム1の配合インキテーブルの作成における動作を示すフローチャートである。
図8】L空間補完部17が行うL値の離散化を説明する図である。
図9】計算対象の配合計算対象L群に含まれる離散化L値の設定を説明する図である。
図10】配合計算対象外L群に含まれる離散化L値の配合比率を算出する処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明の一実施形態による色域データベース作成システム1の構成例を示す概略ブロック図である。
図1において、色域データベース作成システム1は、素材設定部11、ベースインキ選択部12、コンビネーション設計部13、初期配合設定部14、分光反射率計算部15、L算出部16、L空間データ補完部17、表示部18、ベースインキデータベース19及び素材データベース20を備えている。また、色域データベース作成システム1は、作成した色域データを外部の再現可能色域データベース100に予め書き込まれて記憶されている配合インキテーブルに書き込む。
【0016】
素材設定部11は、素材データベース20に予め書き込まれている、配合インキ(特色インキ)を印刷(特色印刷)する下地の素材の種類が書き込まれた下地素材テーブルから読み出し、素材の名称である素材名称の一覧表を表示部18に表示し、この一覧表からの素材の選択を操作者に促す。
また、素材設定部11は、表示部18に表示された一覧表から操作者が素材を選択すると、選択された素材の下地素材識別情報をベースインキ選択部12及び分光反射率計算部15に対して出力する。
【0017】
素材データベース20には、図2に示す下地素材テーブルが、予め書き込まれて記憶されている。図2は、素材データベース20に予め書き込まれて記憶されている下地素材テーブルの構成を示している。この図2において、下地素材テーブルは、下地素材を識別する下地素材識別情報と、この下地素材識別情報が示す素材の名称である素材名称と、この素材の分光反射率のデータとが組みとして構成されている。分光反射率は380nmから780nmまで、10nm刻みで記憶されている。素材名称としては、例えば、コート紙やアルミ(アルミニウム)などの彩色する下地の素材の名称がある。
【0018】
ここで、分光反射率の測定条件は、例えばミノルタ製の分光光度計(CM−2600d)を用いた場合は、積分球によるD/8(鏡面反射光取込)もしくはd/8(鏡面反射光非取込)であったり、X−Rite社製分光光度計 SpectroEye(登録商標)を用いた場合は、45/0(フィルタ条件含む)である。これらの測定条件は、測定された分光反射率と共に、測定機名称や測定条件を記憶する。また、素材データベース20に記憶されている色彩値であるL値(L)は、例えばD50/2度視野による計算値とし、その計算方法はJIS Z8729にある方法を使用する。
【0019】
ベースインキ選択部12は、操作者の選択した下地素材に適用可能なベースインキを、ベースインキデータベース19に記憶されているベースインキのなかから選択する。
また、ベースインキ選択部12は、この選択した下地素材の彩色に適用可能なベースインキを、耐性データ、透明度及び価格などの属性データによってグルーピングする。例えば、耐光性が所定の数値より高いベースインキのグループ、耐酸性が所定の数値より高くかつ価格が所定の価格より安いベースインキのグループなどにグルーピング(分類)する。このグループを作成する耐性データ、透明度及び価格などの属性データの条件は、予め操作者が設定しておく。
【0020】
ここで、ベースインキ選択部12は、設定されているグループの属性データの組みを表示し、いずれの属性データの組みのグループを、配合色を生成するベースインキのグループとするかの選択を、操作者に対して促す。
また、ベースインキ選択部12は、操作者が選択した属性データの組み合わせに対応するベースインキのグループを、コンビネーション設計部13に対して出力する。
【0021】
ベースインキデータベース19には、図3に示すベースインキテーブルが予め書き込まれて記憶されている。図3は、ベースインキデータベース19に予め書き込まれて記憶されているベースインキテーブルの構成例を示している。この図3において、ベースインキテーブルは、例えば、ベースインキを識別するベースインキ識別情報と、このベースインキ識別情報が示すベースインキの種類の名称と、このインキベースの色を示す色名称と、このベースインキの色材濃度と、光学濃度(分光反射率から以下の(1)式により算出される数値)のデータ(後述する波長λ毎)と、印刷可能な下地素材の名称である下地対応情報と、単位当たりの価格と、ベースインキの透明度と、ベースインキの耐性特性の評価値を示す耐性データと、このベースインキを入手及び使用可能な地域や、その地域の化学物質法規制への対応情報などと、分光反射率を測定した測定装置情報と、分光反射率を測定する際の測定条件として照明の種類とが組みとして構成されている。属性データとしては、透明度、価格、耐性データなどである。
【0022】
ここで、ベースインキの種類としては、油性オフセットインキ、UV(紫外線)硬化型インキ、グラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーン印刷インキ及び金属インキなどである。色名称としては、例えば、赤色、黄色、青色、緑色、橙色などである。また、下地対応情報とは、印刷可能な下地素材の名称が記載され、全部とされているときは全ての下地素材に対応可能であることを示している。価格は所定の単位毎、例えば1kg(キログラム)毎の標準販売価格が記載されている。
【0023】
測定装置情報は、分光反射率を測定したメーカー、製品名及び型番に加えてフィルタ有無や鏡面反射成分の有無などの測定条件などが記載されている。分光反射率の測定条件は、例えばミノルタ製の分光光度計 CM−2600dを用いた場合は、積分球によるD/8(鏡面反射光取込)もしくはd/8(鏡面反射光非取込)や、X−Rite社製分光光度計 SpectroEye(登録商標)を用いた場合は、45/0(フィルタ条件含む)である。これらの測定条件は、光学濃度を求めるために測定された分光反射率及び分光反射率を測定した測定機名称とともに、ベースインキデータベース19のベースインキテーブルに書き込んで記憶させる。この測定条件については下地素材の分光反射率の場合と同様である。また、透明度は、そのベースインキの展色物(例えば、顔料を均等に分散・付着させる媒体である展色材)を評価する事によって求められ、例えば0−5の数値に置き換えられる。
【0024】
【数1】
【0025】
上記(1)式において、Nが光学濃度であり、Rが分光反射率であり、xが任意の係数である。
【0026】
耐性データは、それぞれの用途に対して用いられるために必要な特性、例えば図4のテーブルに示す耐光性、耐アルカリ性、耐溶剤性、耐水性、耐酸性、耐ボイル性、耐レトルト性などである。
図4は、一例としてオフセットインキ及びグラビアインキにおける耐性特性の種類とその耐性の説明が示されている。
この図4において、耐光性は、蛍光灯や太陽光に含まれる紫外線による色褪せの程度に対する耐性の評価を示している。また、耐アルカリ性は、アルカリ性を有する環境による色褪せ及び変色に対する耐性の評価を示している。耐溶剤性は、付着した溶剤による色褪せ及び変色に対する耐性の評価を示している。耐水性は、付着した水による色褪せ及び変色に対する耐性の評価を示している。耐酸性は、付着した酸性を有する液体による色褪せ及び変色に対する耐性の評価を示している。耐ボイル性は、加熱された際の温度による色褪せ及び変色に対する耐性の評価を示している。耐レトルト性は、内容物の殺菌や加熱加工時された際の温度による色褪せ及び変色に対する耐性の評価を示している。
【0027】
図1に戻り、コンビネーション設計部13は、操作者が選択したベースインキのグループが供給されると、このグループ内における異なるベースインキを2種類以上選択し、配合インキを配合するためのベースインキの組み合わせ(コンビネーション)を生成する。
上述したように、コンビネーション設計部13は、ベースインキの異なる色の配合に際し、例えば2種類から3種類の異なる色のベースインキの配合する組み合わせを設定する。このとき、コンビネーション設計部13が異なる色のベースインキの配合の組み合わせを設計する場合、一般的に用いられない色の組み合わせを、除外組み合わせとして予め設定しておく。
【0028】
そして、コンビネーション設計部13は、生成される色の組み合わせを確認し、この除外組み合わせが検出された場合、この組み合わせを削除して配合インキの色の設計から除外する。例えば、除外組み合わせは、橙色/紫色/草色や黄色/紫色/緑などの色合せ作業では一般的ではないベースインキの組み合わせである。また、色として用いられる可能性が低い色となる可能性のある、ベースインキの組み合わせを、上述した除外組み合わせに加えても良い。以下、この色の組み合わせを、配合インキ組と呼ぶ。
また、コンビネーション設計部13は、作成した配合インキ組の各々を配合インキ組テーブルとして、ベースインキデータベース19に書き込んで記憶させる。
【0029】
初期配合設定部14は、ベースインキデータベース19の配合インキ組テーブルから順次、1つずつ配合インキ組を取り出す。
また、初期配合設定部14は、配合インキ組を構成するベースインキ各々の組み合わせの割合を設定する。
例えば、配合インキ組が3種類のベースインキから構成されている場合、この3種類のベースインキI、ベースインキI及びベースインキIの組み合わせる割合、a:a:aを設定する。このとき、例えば、配合する割合の刻み幅は墨色を除く色を10%とし、墨色の割合を2%とする。
【0030】
また、例えば、ベースインキに使われる顔料の特性によって配合量が少ない場合に外的要因による退色が顕著になってしまう為にインキや印刷物の耐性性能に影響する様な配合量制限がある等の特性により、配合する割合の上限及び下限が存在するベースインキの種類においては、この割合の上限及び下限のいずれかあるいは双方を設定する。
一例として、墨色の場合には配合の割合の上限を30%とし、淡色耐候性が配合する他のベースインキに比較して低いベースインキの場合には下限を2%とする。
そして、初期配合設定部14は、10%刻みで1つのインキベースで10段階の割合とした場合、
[a,a,a]
={[0.1,0.1,0.8],…,[0.1,0.8,0.1],…,[0.8,0.1,0.1]}
などの配合割合(配合比率)の集合を設計データとして生成する(a+a+a=1)。
【0031】
分光反射率計算部15は、初期配合の組合せに対する分光反射率及びL値(L色空間における座標値、すなわち色彩値)の算出を行う。ここで、分光反射率計算部15は、配合インキの分光反射率を以下の(2)式及び上述した(1)式により、配合したベースインキの各々の配合比率a及び光学濃度N(λ)とから、配合して得られた配合インキを下地素材に彩色した際の光学濃度Nc(λ)を算出して求める。ここで、iは配合するベースインキの数である。光学濃度は、例えば、波長λが380nmから780nmまで、10nm刻みでベースインキデータベース19に記憶されている。分光反射率計算部15は、上記光学濃度と同様に、例えば波長λが380nmから780nmまで、10nm刻みで配合インキの分光反射率を算出する。
【0032】
【数2】
【0033】
上記(2)式において、Ncは配合した配合インキを下地素材に彩色した際の光学濃度であり、Niは配合したベースインキの光学濃度であり、a(たとえば上記a,a,a)は配合比率である。iは、配合するベースインキの種類の数である。また、分光反射率計算部15は、下地素材の光学濃度Nwを、下地素材テーブルから下地素材の分光反射率を読み出し、(1)式に代入して求める。
例えば、3種類のべースインキを用いて配合インキを配合する際(n=3)、配合インキ組の各々の初期配合の分光反射率は、分光反射率計算部15において、以下の(2)式により算出される。例えば、赤色(光学濃度N(λ))と緑色(光学濃度N(λ))と青色(光学濃度N(λ))との各々を、3:3:4の配合比率(a=0.3、a=0.3、a=0.4)で配合した場合、配合した配合インキを下地素材に彩色した際の分光反射率R(λ)compは、以下の(3)式のようになる。
【0034】
【数3】
【0035】
また、上述したように、ベースインキテーブルには、波長毎の光学濃度が予め書き込まれて記憶されている。この光学濃度を算出する際に用いる分光反射率は、例えばミノルタ製の分光光度計CM−2600dを用いた場合は、積分球によるD/8(鏡面反射光取込)もしくはd/8(鏡面反射光非取込)や、X−Rite社製分光光度計 SpectroEye(登録商標)を用いた場合は、45/0(フィルタ条件含む)の測定条件で測定されている。これらの測定条件は、測定された分光反射率と共に、測定機名称や測定条件を記憶する。また記憶している色彩値であるL値は、例えばD50/2度視野による計算値とし、その計算方法はJIS Z8729にある方法を使用する。
【0036】
算出部16は、分光反射率計算部15が算出した配合インキの分光反射率R(λ)compと、等色関数と、照明の分光反射強度とから、予め設定された一般的な分光反射率からの変換を行う変換式を用いて、初期配合の配合インキ各々のL値(下地素材に彩色された際の色彩値)の算出を行う。
【0037】
図5は、配合インキの配合情報が記載されている配合インキテーブルの構成例を示す図である。この図5の配合インキテーブルは、再現可能色域データベース100に書き込まれて記憶されている。この配合インキテーブルは、2種類あるいは3種類など複数の異なる色のベースインキを配合した(後述する配合比率において配合した)場合の分光反射率及びL色空間(色空間)における色彩値データある座標の値(L値)を示し、再現可能な色域を示している。
【0038】
また、図5(a)には、一例として、配合インキを識別する配合インキ識別情報とともに、配合インキの下地となっている下地素材を識別する下地素材識別情報と、分光反射率と色の管理番号である色番号と、L値と、ベースインキの分光反射率の測定を行った測定装置の情報と、配合インキの配合に用いたベースインキ情報(配合比率を含む)と、使用したベースインキが入手及び使用可能な地域と、対応情報となどの属性データの欄がある。
【0039】
また、図5(a)におけるベースインキ情報は、図5(b)に示す構成となっている。
図5(b)は、配合インキの配合に用いたベースインキを識別するベースインキ識別情報及び配合比率などが示されている。
【0040】
図6は、初期配合した配合インキ各々のL値をL色空間の各座標にプロットした図である。
図1に戻り、初期配合インキを配合する際、ベースインキの割合を所定の率、例えば10%ずつ変化させて配合しても、図6のL色空間においては、各配合の座標が所定の間隔で求められる訳ではない。このため、後述するL空間データ補完部17は、図6のL色空間における座標値に対応するL値が算出されておらず疎となっている領域のL値を補完する。
【0041】
空間データ補完部17は、図6のL空間の座標値におけるL値の有無の連続性を検出し、L値が計算されていない疎の座標領域の検出を行う。例えば、L空間データ補完部17は、L値のある座標値が「1」を超えて不連続である領域、すなわちL値が計算されていない座標の距離が以上離れている間の座標値のL値を補完する。この補完に関する詳細な処理は、後述するが、L値を離散化L値として配合比率の算出を行う。ここで、L空間データ補完部17は、L空間において、すでに配合比率が求められている離散化L値に対し、配合比率が求められていない離散化L値の配合比率を計算対象とする。
そして、L空間データ補完部17は、配合比率が算出されていない離散化L値を、目標の離散化L値とし、この目標のL値となる分光反射率を算出する。
【0042】
すなわち、L空間データ補完部17は、分光反射率計算部15に対し、L値に隣接するL値が計算された座標値における配合比率を変化させた補完配合比率を出力し、補完分光反射率を算出させる。そして、L空間データ補完部17は、分光反射率計算部15の算出した補完分光反射率を用いて、L算出部16に予測値として補完L値を算出させる。L空間データ補完部17は、L算出部16が算出した予測値である補完L値と、補完配合比率を与えた目標の離散化L値とが一致するか否かの判定を行う。
【0043】
ここで、L空間データ補完部17は、補完L値が補完配合比率を与えた座標値(後述する計算対象となっている離散化L値)と予め設定されている所定の誤差内で一致した場合、この補完L値をこの座標におけるL値とする。また、L空間データ補完部17は、補完値を再現可能色域データベース100の配合インキテーブルに、初期配合の配合インキのデータに対して、追加で書き込み記憶させる。
一方、L空間データ補完部17は、補完L値が補完配合率を与えた座標値と予め設定されている所定の誤差内で一致しない場合、この補完L値(L空間における後述する疎の領域の座標に対応する計算対象とされる離散化L値)を算出した際の補完配合比率を変化させ、所定の誤差範囲において一致するまで上述した処理を繰り返して行う。
【0044】
次に、図7は、本実施形態による色域データベース作成システム1の配合インキテーブルの作成における動作を示すフローチャートである。以下、この図7及び図1を用いて、本実施形態による本実施形態による色域データベース作成システム1の動作例を説明する。
ステップS1:
素材設定部11は、ベースインキを配合して生成する配合インキの下地となる下地素材を操作者に選択させるため、例えば、素材データベース20に予め書き込まれている全ての種類の下地素材を表示部18に一覧表示する。
そして、素材設定部11は、操作者が上述した一覧表示からいずれかの下地素材を選択すると、その下地識別情報をベースインキ選択部12及びL算出部16に対して出力し、処理をステップS2へ進める。
【0045】
ステップS2:
ベースインキ選択部12は、ベースインキデータベース19に記憶されているベースインキから、操作者が選択した下地素材に対応するべースインキを選択し、表示部18に対して一覧表示する。
このとき、ベースインキ選択部12は、耐性データの種類、透明度及び価格などの属性データによりグルーピングされた状態で、分類して表示部18に表示する。
そして、ベースインキ選択部12は、操作者が選択したベースインキのグループを、配合インキを配合するためのベースインキとして使用するため、このグループに含まれるベースインキのベースインキ識別番号をコンビネーション設計部13に対して出力し、処理をステップS3へ進める。
【0046】
ステップS3:
コンビネーション設計部13は、操作者が選択したグループのベースインキのベースインキ識別情報が供給されると、配合インキを配合するための、色成分3種類と希釈成分1種類の計4種類のベースインキの組合せを作成する。
このとき、コンビネーション設計部13は、生成した組合せ毎に構成するベースインキの色を抽出し、この抽出した色の組合せにより、予め設定されている除外組合せであるか否かの判定を行い、除外組合せと同一の色の組合せで有る場合、この組合せを除去して削除する。
【0047】
そして、コンビネーション設計部13は、除外組合せを除去した残りの組合せを、再現可能色域データベース100の配合インキテーブルに対し、配合するベースインキの組合せである配合インキ組として、順次書き込んで記憶させ、処理をステップS4へ進める。また、コンビネーション設計部13は、現在の配合インキ組の各々における下地素材情報の欄に、操作者の選択した下地素材の下地素材識別情報を書き込んで記憶させる。
【0048】
ステップS4:
初期配合設定部14は、再現可能色域データベース100の配合インキテーブルから、順番に配合インキ組を読み出す。
そして、初期配合設定部14は、読み出した配合インキ組のベースインキの配合割合を示す配合比率を、所定の基準幅により変化させて、この初期配合における配合比率で配合する配合インキに対して配合インキ識別情報及び色番号を与え、再現可能色域データベース100に書き込んで記憶させる。また、初期配合設定部14は、この配合インキの配合に用いるベースインキのベースインキ識別情報と、それぞれの配合比率と、分光反射率とを、べースインキ情報として、他の属性データとともに、再現可能色域データベース100配合インキテーブルに書き込んで記憶させる。そして、初期配合設定部14は、処理をステップS5へ進める。
【0049】
ステップS5:
分光反射率計算部15は、配合インキ組におけるベースインキの配合比率の各々に対応した配合インキの分光反射率を計算するため、再現可能色域データベース100の配合インキテーブルから、ベースインキ情報を配合インキ識別情報の順番に読み出す。
次に、分光反射率計算部15は、読み出したベースインキ情報における各ベースインキの配合比率及び分光反射率により、配合インキ毎の配合比率により配合インキの分光反射率を、(1)式により算出する。
【0050】
そして、分光反射率計算部15は、再現可能色域データベース100の配合インキテーブルのそれぞれの配合インキ組の配合インキの分光反射率の欄に、算出した配合インキそれぞれの分光反射率を書き込んで記憶させる。
分光反射率計算部15は、配合インキ組における配合比率のコンビネーションの全てに対する分光反射率の算出が終了すると、L算出部16に対してL値の算出を指示する制御信号を出力する。
【0051】
次に、L算出部16は、ベースインキデータベース19から等色関数と、ベースインキの分光反射率を行った際の照明の分光反射強度とを読み出し、素材データベース20から操作者の選択した下地素材の分光反射率を読み出す。
そして、L算出部16は、再現可能色域データベース100の配合インキテーブルから、現在処理している配合インキ組の分光反射率を、配合インキ識別情報の順番に順次読み出す。
【0052】
これにより、L算出部16は、読み出した順番に、配合比率毎の分光反射率と、読み出した等色関数と、照明の分光反射強度と、操作者の選択した下地素材の分光反射率とから、配合比率毎に下地素材に対応したL値を求める。
算出部16は、求めたL値をそれぞれの配合インキ識別情報に対応させ、再現可能色域データベース100の配合インキテーブルに書き込み、処理をステップS6へ進める。
【0053】
ステップS6:
分光反射率計算部15は、再現可能色域データベース100の配合インキテーブルにおける配合インキ組における全てのインキの組合せに対する分光反射率の計算が終了し、かつL値を求める処理が終了したか否かの判定を行う。
このとき、分光反射率計算部15は、分光反射率及びL値を求める処理が終了した場合、処理をステップS7へ進める。一方、分光反射率計算部15は、分光反射率及びL値を求める処理が終了していない場合、処理をステップS4へ進める。
【0054】
ステップS7:
次に、L空間補完部17は、ステップS6で分光反射率計算部15が計算した実数のL値を離散化(例えば、小数点以下の数値を四捨五入して整数化)し、離散化した結果の離散化L値の集合を配合計算対象L群とし、処理をステップS8へ進める。
図8は、L空間補完部17が行う離散化を説明する図である。この図8においては、L値方向の軸を省略して記載し、a値及びb値の軸からなる2次元平面を示しているが、実際にはL空間である。図8(a)は、所定の配合比率において初期配合された配合インキのL値(計算値)をプロットした図である。図8(b)は、配合インキのL値を離散化して離散化L値(離散化)としてプロットした図である。
【0055】
ステップS8:
そして、L空間補完部17は、配合計算対象L群に含まれる離散化L値の各々に対し、L±dL(ΔL)、a±da(Δa)、b±db(Δb)した離散化L値を新規配合計算対象とし、配合計算対象L群へ加える。一方、L空間補完部17は、配合計算対象L群の補集合における離散化L値を配合計算対象外L群とし、処理をステップS9へ進める。ここで、dL、da、dbの各々は、予め設定された所定の数値であり、離散化した数値が例えば整数値である場合、それぞれ「1」である。
ここで、L空間補完部17は、配合計算対象L群におけるL±dL、a±da、b±dbした離散化L値において、すでに配合計算対象L群にあり、重複する離散化L値を削除する。
【0056】
図9は、計算対象の配合計算対象L群に含まれる離散化L値の設定を説明する図である。図9は、図8と同様に、L値方向の軸を省略して記載し、a値及びb値の軸からなる2次元平面を示しているが、実際にはL空間である。図9(a)は、配合計算対象の離散化L値(計算対象)に対し、配合計算対象の離散化L値の各々をL±dL、a±da、b±dbした離散化L値(新規対象)を設定した図である。
【0057】
ステップS9:
空間補完部17は、配合計算対象L群と配合計算対象外L群の連結の評価を行う。
ここで、L空間補完部17は、配合計算対象L群内の各離散化L値の連結(隣接している)と、配合計算対象外L群内のL値の連結とを、すなわちグルーピングしてグループ数を評価する。図9(b)は、配合計算対象L値(計算対象)と、計算対象外L値(計算対象外)とのグルーピング結果を示す図である。図9(b)においては、計算対象外L値のグループが複数存在している。
【0058】
すなわち、L空間補完部17は、配合計算対象L群内の各離散化L値がL空間において上下(L軸方向)前後(a軸方向)左右(b軸方向)の6方向において配合計算対象L群内の他の離散化L値と連結されている離散化L値からなるグループ数を計数する。
同様に、L空間補完部37は、配合計算対象外L群内の各離散化L値がL空間において上下前後左右の6方向において配合計算対象外L群内の他の離散化L値と連結されている離散化L値からなるグループ数を計数する。
【0059】
ステップS10:
次に、L空間補完部17は、配合計算対象L群内の各離散化L値のグループと、配合計算対象外L群内の各離散化L値のグループとの各々が1つであるか否かの判定を行う。
このとき、L空間補完部17は、配合計算対象L群内の各離散化L値のグループと、配合計算対象外L群内の各離散化L値のグループとの各々が1つである場合、処理をステップS11へ進める。 ここで、図9(c)は、配合計算対象L値と、計算対象外L値とのグルーピング結果を示す図である。図9(c)においては、配合計算対象L値(計算対象)と、計算対象外L値(対象外)とのグループが一つずつ構成されている。。
一方、L空間補完部17は、配合計算対象L群内の各離散化L値のグループ、あるいは配合計算対象外L群内の各離散化L値のグループのいずれか一方でも2つ以上有る場合、処理をステップS8へ戻す。
【0060】
ステップS11:
空間補完部17は、新規配合計算対象として離散化L値を得るためのベースインキの配合比率を求める。
このとき、L空間補完部17は、新規配合計算対象の離散化L値各々の配合比率の計算において、配合比率の初期値として予め設定した初期配合比率を用いて、上記離散値に対応する配合比率を算出する。ここで、初期配合比率は任意であり、3種類のベースインキを用いる場合、例えば34%、33%、33%などと設定して良い。
また、L空間補完部17は、この配合比率の計算過程において、配合比率の結果として得られた予測L値を離散化する。
【0061】
そして、L空間補完部17は、離散化した予測L値と、目標値である配合計算対象L値とが一致するかを確認し、一致した場合に配合計算済L値とし、計算済L群に加え、かつ配合計算対象L群から除く。
【0062】
図10は、配合計算対象外L群に含まれる離散化L値の配合比率を算出する処理を説明する図である。図10(a)は、図9(c)における配合計算対象とされた離散化L値において配合比率を求める計算が収束せず、配合計算対象とされた離散化L値(例えば、a=24、b=21の離散化L値など)が、再度、配合計算対象外の離散化L値とされたことを示す図である。この図10(a)においては、配合比率の計算が収束した離散化L値(計算済)のみが示されている。
【0063】
ステップS12:
そして、L空間補完部17は、計算済L群に含まれる離散化L値の各々に対し、L±dL、a±da、b±dbした離散化L値において、計算済L群における離散化L値と重複しない離散化L値を新規配合計算対象とし、配合計算対象L群へ加える。
【0064】
ステップS13:
次に、L空間補完部17は、配合計算対象L群における新たに設定された新規配合計算対象の離散化L値に対して、配合比率の再計算を行う。
このとき、L空間補完部17は、配合比率の初期値として、配合計算済L群の中で最も小さい色差のものを用いる。ここで、同じ色差のものが存在した場合には、その中のいずれを初期値としても良い。例えば、L値、a値、b値の順番で予めいずれを用いるかの優先順位を設定しておく。
そして、L空間補完部17は、予め設定した演算回数の範囲内において、離散化した予測L値と、目標値である配合計算対象L群における離散化L値とが一致するかを確認し、一致した場合に配合計算済の離散化L値とし、配合計算済L群に含める。
【0065】
ステップS14:
空間補完部17は、ステップS13において、配合計算済L群に新たに含めた離散化L値が、すでに配合計算済L群に含まれているいずれかの離散化L値と一致する数値が存在した場合、処理をステップS12に戻す。
一方、L空間補完部17は、ステップS13において、配合計算済L群に新たに含めた離散化L値が、すでに配合計算済L群に含まれている離散化L値のいずれとも一致しない場合、処理を終了する。図10(c)は、再計算の結果で収束しなかった離散化L値(計算済)と、計算対象外の離散化L値が、色域外の離散化L値(色域外)となったことを示す図である。
【0066】
上述したように、本実施形態によれば、操作者が選択する下地素材と、耐性データ及び価格などの属性データとなどに対応させてL色空間における離散化L値を算出し、L色空間に疎の領域(L値として算出されていない座標値の密度が少ない領域)がなくなるように、すなわち色の連続性が従来に比較して高い色域データとしての離散化L値を容易に補完して得ることができる。
これにより、本実施形態によれば、再現可能な色域内における離散化L値が隣接する他の離散化L値と連結された状態、すなわち疎の領域が無い状態となるため、高い精度で再現色に対応させた配合比率を得ることが可能となり、デザイナーが希望する、彩色を行う下地の素材に対応させた色を再現するベースインキの種類と、それらベースインキの配合比率とを容易に求めることができるデータベースを作成することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、属性データの一つである入手及び使用可能地域により、ベースインキのグループを形成し、デザイナーが作業する地域において容易に入手及び使用可能なベースインキによって、配合色の色域データを得ることが可能となり、デザイナーの作業効率を上げることができる。
更に、色彩製品製造者においても、色決定者が指定した色は、製品に使用される素材で再現可能なものであること、また色再現に用いるベースインキの組合せと初期配合が判ることから、色合せ作業を効率化することができる。
【0068】
また、図1における色域データベース作成システムの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりデータベース作成の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0069】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0070】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1…色域データベース作成システム
11…素材設定部
12…ベースインキ選択部
13…コンビネーション設計部
14…初期配合設定部
15…分光反射率計算部
16…L値算出部
17…L空間データ補完部
18…表示部
19…ベースインキデータベース
20…素材データベース
100…再現可能色域データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10