(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の側面及び前記第2の側面の少なくとも一方は、前記稜線部の形状に沿うように曲面又は斜面となっていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の光学積層フィルム製造用合流装置。
前記第1の側面及び前記第2の側面の少なくとも一方は、前記稜線部の形状に沿うように曲面又は斜面となっていることを特徴とする請求項9〜11の何れか一項に記載のベイン部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、粘性流体としての溶融樹脂の流れが障害物としての突起部にぶつかると、突起部の後方に渦や渦列(カルマン渦列)が形成され、その下流側における流れが規則的に又は不規則的に変化する場合があり、特に各層の層厚について要請される均一性の精度が極めて高い光学用途の積層フィルムにおいては、十分な均一性を確保することができない場合がある。場合によっては樹脂が突起部の後方で滞留してゲル化し、フィッシュアイ等の原因になる場合もあり、光学特性を劣化させ、あるいは生産性を低下させるという問題を引き起こす場合もある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、低コスト化の要請と各層の層厚の均一性の向上を両立的に実現し、光学特性に優れた光学積層フィルムを高い生産性で製造できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点に係る光学積層フィルム製造用合流装置は、第1の溶融樹脂を流通させ、第1の方向に長手方向を有する略矩形状の第1の出口から流出させる第1の樹脂流路と、第2の溶融樹脂を流通させ、前記第1の出口から流出される前記第1の溶融樹脂に合流積層されるように、前記第1の方向に長手方向を有する略矩形状の第2の出口から流出させる第2の樹脂流路と、前記第1の樹脂流路と前記第2の樹脂流路との合流部に配置され、互いに略V字状に配置された前記第1の樹脂流路の前記第1の出口近傍の一部を構成する第1の側面及び前記第2の樹脂流路の前記第2の出口近傍の一部を構成する第2の側面を含むV字部を有するベイン部材とを備え、前記ベイン部材の前記第1の側面と前記第2の側面とが交差する稜線部は、前記第1の方向に略平行な線に対して凹又は凸となるように、曲線形状又は折れ線形状となっていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第1の観点に係る光学積層フィルム製造用合流装置において、前記ベイン部材としては、前記V字部と一体的に形成され、前記第1の方向に略平行な軸を中心として回動可能に軸支される軸部を有するものを用い、前記軸部の回動に伴う前記稜線部の位置変化により前記第1の出口及び前記第2の出口の形状を変更するようできる。
【0011】
本発明の第1の観点に係る光学積層フィルム製造用合流装置において、前記稜線部の形状を、その中央部に行くに従って凹となるように略V字状に形成し、又はその中央部に行くに従って凹となるように略円弧状に形成することができる。
【0012】
本発明の第1の観点に係る光学積層フィルム製造用合流装置において、前記第1の側面及び前記第2の側面の少なくとも一方を、前記稜線部の形状に沿うように曲面又は斜面とすることができる。
【0013】
本発明の第1の観点に係る光学積層フィルム製造用合流装置において、前記第1の出口及び前記第2の出口に接続され、これらから流出されて合流積層された積層樹脂を流通させて、その下流に配置されるTダイに供給する排出流路を備え、前記排出流路として、その断面が略矩形状から略円形状に次第に変化するものを用いることができる。
【0014】
本発明の第2の観点に係る光学積層フィルムの製造装置は、上述した本発明の第1の観点に係る光学積層フィルム製造用合流装置と、前記第1の樹脂流路に前記第1の溶融樹脂を供給する第1の樹脂供給系と、前記第2の樹脂流路に前記第2の溶融樹脂を供給する第2の樹脂供給系と、前記排出流路の出口に接続されたTダイとを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の第2の観点に係る光学積層フィルムの製造装置において、前記第1の樹脂供給系により供給される前記第1の溶融樹脂は紫外線吸収剤を含有することができる。
【0016】
本発明の第3の観点に係るベイン部材は、第1の方向に長手方向を有する軸部と、互いに略V字状に配置された第1の側面及び第2の側面を有し、前記V字部の前記第1の側面と前記第2の側面とが交差する稜線部が前記第1の方向に概略沿うように配置され、前記軸部と一体的に形成されたV字部とを備え、前記稜線部は、前記第1の方向に略平行な線に対して凹又は凸となるように、曲線形状又は折れ線形状となっていることを特徴とする。
【0017】
本発明の第3の観点に係るベイン部材において、前記稜線部を、その中央部に行くに従って凹となるように略V字状に形成し、又はその中央部に行くに従って凹となるように略円弧状に形成することができる。
【0018】
本発明の第3の観点に係るベイン部材において、前記第1の側面及び前記第2の側面の少なくとも一方を、前記稜線部の形状に沿うように曲面又は斜面とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の観点に係る発明によれば、第1の樹脂流路と第2の樹脂流路との合流部に配置され、互いに略V字状に配置された第1の側面及び第2の側面を含むV字部を有するベイン部材の第1の側面と第2の側面とが交差する稜線部が、凹又は凸となるように、曲線形状又は折れ線形状となっており、第1及び第2の出口の一方又は双方の形状がこのような曲線形状又は折れ線形状の稜線部によって規定されるので、稜線部の形状を調整し、最適化することにより、合流部における樹脂流の幅方向の流量分布を高精度に調整することができる。この際、従来の技術のように、流路中に突起部を設けるものと比較して、樹脂の流れが渦等により乱されることも少ないので、各層の層厚の均一性を高い精度で実現することができると共に、ゲル化するようなことも少なくなるので、光学積層フィルムの生産性を向上することができる。
【0020】
本発明の第2の観点に係る発明によれば、本発明の第1の観点に係る合流装置を備えているので、優れた光学特性を有する高品質な光学積層フィルムを高い生産性で製造することができる。
【0021】
本発明の第3の観点に係る発明によれば、本発明の第1の観点に係る合流装置に用いて好適なベイン部材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態の光学積層フィルムの製造システムの全体構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態のフィードブロックの概略構成を示す側面から見た縦断面図である。
【
図3】本発明の実施形態のフィードブロックの概略構成を示す正面から見た縦断面図である。
【
図4】本発明の実施形態のフィードブロックの概略構成を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施形態のフィードブロックの概略構成を示す底面から見た横断面図である。
【
図6】本発明の実施形態の稜線部を円弧形状とした一方のベインを示す平面図である。
【
図7】本発明の実施形態の稜線部を円弧形状とした一方のベインを示す正面図である。
【
図8】本発明の実施形態の稜線部を円弧形状とした一方のベインを示す図であり、(a)は側面図、(b)は
図6のA1−A1線又はA3−A3線に沿った断面図、(c)は
図6のA2−A2線に沿った断面図である。
【
図9】本発明の実施形態の稜線部を円弧形状とした他方のベインを示す平面図である。
【
図10】本発明の実施形態の稜線部を円弧形状とした他方のベインを示す正面図である。
【
図11】本発明の実施形態の稜線部を円弧形状とした他方のベインを示す図であり、(a)は側面図、(b)は
図9のA1−A1線又はA3−A3線に沿った断面図、(c)は
図9のA2−A2線に沿った断面図である。
【
図12】本発明の実施形態の稜線部をV字形状とした一方のベインを示す平面図である。
【
図13】本発明の実施形態の稜線部をV字形状とした一方のベインを示す正面図である。
【
図14】本発明の実施形態の稜線部をV字形状とした一方のベインを示す図であり、(a)は側面図、(b)は
図12のA1−A1線又はA3−A3線に沿った断面図、(c)は
図12のA2−A2線に沿った断面図である。
【
図15】本発明の実施形態の稜線部をV字形状とした他方のベインを示す平面図である。
【
図16】本発明の実施形態の稜線部をV字形状とした他方のベインを示す正面図である。
【
図17】本発明の実施形態の稜線部をV字形状とした他方のベインを示す図であり、(a)は側面図、(b)は
図15のA1−A1線又はA3−A3線に沿った断面図、(c)は
図15のA2−A2線に沿った断面図である。
【
図18】本発明の実施形態の製造システムを用いて、円弧形状のベイン、V字形状のベイン及びフラット形状のベインを用いて光学積層フィルムを製造した場合におけるそれぞれの中間層の層厚(厚み)を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
(1)光学積層フィルムの製造システム
まず、光学積層フィルムの製造システムの全体構成について、
図1を参照して説明する。なお、本実施形態では、第1の樹脂材料からなる中間層の両面に、該第1の樹脂材料とは成分の一部又は全部が異なる第2の樹脂材料からなる表面層をそれぞれ積層してなる3層の光学積層フィルムの製造を一例として説明する。但し、本発明はこのような3層の光学積層フィルムを製造するものに限定されず、2層又は4層以上の光学積層フィルムの製造にも適用することができる。また、中間層の両面に積層される表面層は同一の樹脂材料を用いるものに限られず、成分の一部又は全部が異なる樹脂材料を用いるものであっても良い。
【0025】
この光学積層フィルムの製造システム1は、第1の溶融樹脂供給系2及び第2の溶融樹脂供給系3を有する。これらの溶融樹脂供給系2,3は、それぞれ乾燥された非晶性の熱可塑性樹脂からなる樹脂材料(ペレット)が供給されるホッパ2a,3a、ホッパ2a,3aに供給された樹脂材料を加熱し、溶融混練する押出機2b,3b、押出機2b,3bにより溶融された樹脂を定量供給するギヤポンプ2c,3c、不溶融の異物等を除去する濾過装置2d,3dをそれぞれ備えている。濾過装置2d、3dからの溶融樹脂は配管2e,3eを介して、合流装置としてのフィードブロック4に供給される。フィードブロック4の詳細については後に詳述する。
【0026】
フォードブロック4の下流側に設けられるダイス5は、単層用のTダイである。ダイス5としては、リップ部を炭化タングステン等の硬質の材料で構成し、クロムメッキ等を施して平滑に仕上げ、光学積層フィルムにダイラインが発生することを防止することが好ましい。ダイス5の形状に特に制限はなく、ストレートマニホールド形、フィッシュテール形、コートハンガー形等を例示することができる。これらの中で、コートハンガー形のダイスは、膜厚むらの少ない光学フィルムを製膜することができるので、好適に用いることができる。
【0027】
ダイス5からフィルム状に押し出された溶融状態の樹脂材料は、第1冷却ロール6a、第2冷却ロール6b、および第3冷却ロール6cで順次冷却される。ダイス5の開口部の近傍には、不図示の静電ピニング装置が設けられており、フィルムの両端に静電気を印加して、フィルムの両端を第1冷却ロール6aに静電吸着させるようになっている。
【0028】
第1冷却ロール6a、第2冷却ロール6bおよび第3冷却ロール6cの引取速度は、均一な膜厚を得るため、製膜される光学積層フィルムの熱収縮等に応じて適宜選択される。第1冷却ロール6a、第2冷却ロール6bおよび第3冷却ロール6cにおいて冷却された光学フィルムは、複数のテンションロール7a,7b,7c、駆動ロール8a,8b等を経由し、必要に応じて幅方向の両端部を裁断(トリミング)した後、巻取ロール9に巻き取られる。なお、製造される光学フィルムの厚さは、10〜500μm程度である。
【0029】
これにより、長尺の光学フィルムが製造される。なお、長尺とは、フィルムの幅方向に対して、少なくとも5倍程度以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍もしくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管または運搬される程度の長さを有するものをいう。
【0030】
光学積層フィルムを巻き取ったフィルムロールは、光学積層フィルムを1軸延伸、2軸延伸、または斜め延伸等する延伸装置、他の光学フィルムと積層する積層装置、その他の加工装置によって加工することにより、液晶表示装置等の表示装置に用いられる光学部品、例えば、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、透明導電フィルム等に加工される。
【0031】
なお、テンションロール7cと駆動ロール8a、8bとの間の部分には、製膜された光学フィルム内に残留している異物の数を検出(計数)する異物検出装置(欠陥検査装置)10が設けられている。なお、駆動ロール8a、8bと巻取ロール9との間に、延伸装置等を設けてもよく、この場合において、異物検出装置10は該延伸装置の下流側に設けてもよい。つまり巻取りロール10は1軸延伸、2軸延伸、または斜め延伸した光学フィルムでもよい。
【0032】
(2)フィードブロック(合流装置)
次に、フィードブロック4について、図面を参照して詳述する。
【0033】
図2〜
図5は本発明の実施形態に係るフィードブロック4の構成を示す図であり、
図2は側面から見た縦断面図、
図3は正面から見た縦断面図、
図4は平面図、
図5は底面から見た横断面図である。
【0034】
フィードブロック4は、第1の樹脂流路11及び第2の樹脂流路12をブロック内部に備えている。第1の樹脂流路11は、管路11a及び拡幅部11bを有している。管路11aはその一端がブロック上面から外部に向かって開口し、該開口には不図示のフランジを介して第1の樹脂供給系2の配管2eが接続され、該開口を介して第1の樹脂供給系2から溶融樹脂(第1の溶融樹脂)が供給される。管路11aの他端は、X方向(第1の方向)に長手方向を有する略矩形状の拡幅部11bの略中央部分に開口するように接続されている。拡幅部11bの下流側の出口(第1の出口)11cは同様にX方向に長手方向を有する略矩形状となっている。
【0035】
第2の樹脂流路12は、管路12a,12b及び拡幅部12c、並びに管路13b及び拡幅部13cを有している。管路12aはその一端がブロック側面から外部に向かって開口し、該開口には不図示のフランジを介して第2の樹脂供給系3の配管3eが接続され、該開口を介して第2の樹脂供給系3から溶融樹脂(第2の溶融樹脂)が供給される。管路12aには分岐管路12b及び分岐管路13bの一端が接続されている。分岐管路12bの他端はX方向に長手方向を有する略矩形状の拡幅部12cの略中央部分に開口するように接続されている。拡幅部12cの下流側の出口(第2の出口)12fは同様にX方向に長手方向を有する略矩形状となっている。分岐管路13bの他端はX方向に長手方向を有する略矩形状の拡幅部13cの略中央部分に開口するように接続されている。拡幅部13cの下流側の出口(第2の出口)13fは同様にX方向に長手方向を有する略矩形状となっている。
【0036】
拡幅部11b及び拡幅部12cの間の部分(第1の樹脂流路11及び第2の樹脂流路12の合流部の上流側近傍の部分)にはベイン(ベイン部材)14が配置されている。
図6、
図7、
図8(a)〜
図8(c)は、ベイン14の詳細構成を示す図である。ベイン14は、X方向に略平行な軸(中心軸)Bを中心として回動可能に軸支される軸部14a及び該軸部14aに突出するように一体的に形成されたV字部14bを有している。軸部14aの一端には、このベイン14の姿勢を調整するために中心軸Bを中心として回動させるための六角部14fが略同軸上に一体的に形成されている。V字部14bは互いに略V字状に配置された第1の側面14c及び第2の側面14dを有している。
【0037】
第1の側面14cは拡幅部11bの側壁の一部(第1の出口11c近傍の一部)を構成するように配置され、第2の側面14dは拡幅部12cの側壁の一部(第2の出口12f近傍の一部)を構成するように配置される。第1の側面14cと第2の側面14dとが交差する稜線部14eは、X方向に略平行な線(
図6中、仮想線C参照)に対して凹又は凸となるように、曲線形状となっている。本実施形態では、一例として、稜線部14eは、その両側から中央部に行くに従って凹となるように略円弧状となっている。但し、稜線部14eを形成する曲線形状はそのような略円弧状に限定されず、より複雑な曲線形状であってもよい。
【0038】
本実施形態では、拡幅部11bの側壁の一部を構成する第1の側面14cは平面となっており、拡幅部12cの側壁の一部を構成する第2の側面14dは稜線部14eの形状に滑らかに沿うように曲面(凹曲面)となっている。即ち、稜線部14eはその一端側から他端側に渡って一様に鋭利な形状(微視的には略同一の幅)となっている。
【0039】
なお、ここでは、V字部14bの一方の側面である第1の側面14cを平面とし、他方の側面である第2の側面14dを凹曲面としたが、これと反対に第2の側面14dを平面とし、第1の側面14cを凹曲面としてもよい。また、第1の側面14c及び第2の側面14dの双方を互いに対称となるように略同一形状の凹曲面としてもよい。さらに、本実施形態では、稜線部14eは、その両側から中央部に行くに従って凹となるように曲線形状(略円弧形状)となっているため、第1の側面14c及び第2の側面14dの少なくとも一方を稜線部14eの形状に滑らかに沿うように凹曲面としたが、稜線部14eを、その両側から中央部に行くに従って凸となるように曲線形状(略円弧形状)とすることもでき、この場合には、第1の側面14c及び第2の側面14dの少なくとも一方を稜線部14eの形状に滑らかに沿うように凸曲面とすることになる。また、稜線部14eはその一部を凹、他の一部を凸となるように曲線形状としてもよく、この場合には、第1の側面14c及び第2の側面14dの少なくとも一方を稜線部14eの形状に滑らかに沿うように凹曲面及び凸曲面とすることになる。
【0040】
拡幅部11b及び拡幅部13cの間の部分(第1の樹脂流路11及び第2の樹脂流路12の合流部の上流側近傍の部分)にはベイン(ベイン部材)15が配置されている。
図9、
図10、
図11(a)〜
図11(c)は、ベイン15の詳細構成を示す図である。ベイン15は、ベイン14と略対称な形状となっており、X方向に略平行な軸(中心軸)Bを中心として回動可能に軸支される軸部15a及び該軸部15aに突出するように一体的に形成されたV字部15bを有している。軸部15aの一端には、このベイン15の姿勢を調整するために中心軸Bを中心として回動させるための六角部15fが同軸上に一体的に形成されている。V字部15bは互いに略V字状に配置された第1の側面15c及び第2の側面15dを有している。
【0041】
第1の側面15cは拡幅部11bの側壁の一部(第1の出口11c近傍の一部)を構成するように配置され、第2の側面15dは拡幅部13cの側壁の一部(第2の出口13f近傍の一部)を構成するように配置される。第1の側面15cと第2の側面15dとが交差する稜線部15eは、X方向に略平行な線(
図9中、仮想線C参照)に対して凹又は凸となるように、曲線形状となっている。本実施形態では、一例として、稜線部15eは、ベイン14と同様に、その両側から中央部に行くに従って凹となるように略円弧形状となっている。但し、稜線部14eを形成する曲線形状はそのような略円弧形状に限定されず、より複雑な曲線形状であってもよい。
【0042】
本実施形態では、拡幅部11bの側壁の一部を構成する第1の側面15cは平面となっており、拡幅部13cの側壁の一部を構成する第2の側面15dは稜線部15eの形状に滑らかに沿うように曲面(凹曲面)となっている。即ち、稜線部15eはその一端側から他端側に渡って一様に鋭利な形状(微視的には略同一の幅)となっている。
【0043】
なお、ここでは、V字部15bの一方の側面である第1の側面15cを平面とし、他方の側面である第2の側面15dを凹曲面としたが、これと反対に第2の側面15dを平面とし、第1の側面15cを凹曲面としてもよい。また、第1の側面15c及び第2の側面15dの双方を互いに対称となるように略同一形状の凹曲面としてもよい。さらに、本実施形態では、稜線部15eは、その両側から中央部に行くに従って凹となるように曲線形状(略円弧形状)となっているため、第1の側面15c及び第2の側面15dの少なくとも一方を稜線部15eの形状に滑らかに沿うように凹曲面としたが、稜線部15eを、その両側から中央部に行くに従って凸となるように曲線形状(略円弧形状)とすることもでき、この場合には、第1の側面15c及び第2の側面15dの少なくとも一方を稜線部15eの形状に滑らかに沿うように凸曲面とすることになる。また、稜線部15eはその一部を凹、他の一部を凸となるように曲線形状としてもよく、この場合には、第1の側面15c及び第2の側面15dの少なくとも一方を稜線部15eの形状に滑らかに沿うように凹曲面及び凸曲面とすることになる。
【0044】
ベイン14,15は、
図2に最もよく示されているように、それぞれの中心軸Bを中心として、図中の円弧状の矢印D1,D2に示されるように所定の角度範囲内で回動可能に支持されており、当該所定の角度範囲内の任意の位置で位置決め固定できるようになっている。従って、ベイン14,15をそれぞれ対称に又は非対称に回動させることによって、稜線部14e,15eの位置変化により、拡幅部11bの出口(第1の出口)11c、拡幅部12cの出口(第2の出口)12f、及び拡幅部13cの出口(第2の出口)13fの形状を変更することができる。
【0045】
本実施形態では、中間層の両面に互いに同一(材料、膜厚)の表面層を積層した3層の光学積層フィルムを製造するため、ベイン14とベイン15としては、そのV字部の形状(稜線部14e)が互いに対称形状となるものを用いているが、製造する光学積層フィルムのプロファイルによっては、互いに相関の無い形状のものを用いてもよい。
【0046】
第1の樹脂流路11(拡幅部11b)の出口(第1の出口)11c、第2の樹脂流路12(拡幅部12c)の出口(第2の出口)12f、第2の樹脂流路12(拡幅部13c)の出口(第3の出口)13fが配置される合流部は、全体として略矩形状となっており、この合流部下流側には略矩形状の断面形状を有する排出管路16の一端が接続されている。排出管路16の他端は、ブロック底面に開口しており、この開口は、ダイス5の不図示の樹脂受入口に接続される。本実施形態では、ダイス5の樹脂受入口の形状が略円形状であるものとし、排出管路16は略矩形状の合流部の下流側において、矩形状から次第に円形状に変化するように形成されており、従って当該開口は略円形状となっている。なお、排出管路16の形状は、ダイス5の樹脂受入口の形状に応じたものが用いられ、ダイス5の樹脂受入口が矩形状の場合には、断面が全体に渡って矩形状のものを用いることができる。
【0047】
ベインとしては他の構成のものを用いてもよい。例えば、上述したフィードブロック4において、稜線部14e,15eを曲線形状としたベイン14,15に代えて、稜線部24e、25eを折れ線形状とした以下のようなベイン24,25を用いてもよい。
図12、
図13、
図14(a)〜
図14(c)は、ベイン24の詳細構成を示す図である。ベイン24は、X方向に略平行な軸(中心軸)Bを中心として回動可能に軸支される軸部24a及び該軸部24aに突出するように一体的に形成されたV字部24bを有している。軸部24aの一端には、このベイン24の姿勢を調整するために中心軸Bを中心として回動させるための六角部24fが略同軸上に一体的に形成されている。V字部24bは互いに略V字状に配置された第1の側面24c及び第2の側面24dを有している。
【0048】
第1の側面24cは拡幅部11bの側壁の一部(第1の出口11c近傍の一部)を構成するように配置され、第2の側面24dは拡幅部12cの側壁の一部(第2の出口12f近傍の一部)を構成するように配置される。第1の側面24cと第2の側面24dとが交差する稜線部24eは、X方向に略平行な線(
図12中、仮想線C参照)に対して凹又は凸となるように、折れ線形状となっている。本実施形態では、一例として、稜線部24eは、その両側から中央部に行くに従って凹となるように略V字状となっている。但し、稜線部14eを形成する折れ線形状はそのような略V字状に限定されず、より複雑な折れ線形状であってもよい。
【0049】
本実施形態では、拡幅部11bの側壁の一部を構成する第1の側面24cは平面となっており、拡幅部12cの側壁の一部を構成する第2の側面24dは稜線部24eの形状に沿うように凹斜面(谷線を有する2つの斜面)となっている。即ち、稜線部24eはその一端側から中央部に向かって、及び他端側から中央部に向かって一様に鋭利な形状(微視的には略同一の幅)となっている。
【0050】
なお、ここでは、V字部14bの一方の側面である第1の側面24cを平面とし、他方の側面である第2の側面24dを凹斜面としたが、これと反対に第2の側面24dを平面とし、第1の側面24cを凹斜面としてもよい。また、第1の側面24c及び第2の側面24dの双方を互いに対称となるように略同一形状の凹斜面としてもよい。さらに、本実施形態では、稜線部24eは、その両側から中央部に行くに従って凹となるように折れ線形状(略V字形状)となっているため、第1の側面24c及び第2の側面24dの少なくとも一方を稜線部24eの形状に沿うように凹斜面としたが、稜線部24eを、その両側から中央部に行くに従って凸となるように折れ線形状(略逆V字形状)とすることもでき、この場合には、第1の側面24c及び第2の側面24dの少なくとも一方を稜線部24eの形状に沿うように凸斜面(稜線を有する2つの斜面)とすることになる。また、稜線部24eはその一部を凹、他の一部を凸となるように折れ線形状としてもよく、この場合には、第1の側面24c及び第2の側面24dの少なくとも一方を稜線部24eの形状に沿うように凹斜面及び凸斜面とすることになる。
【0051】
図15、
図16、
図17(a)〜
図17(c)は、ベイン25の詳細構成を示す図である。ベイン25は、ベイン24と略対称な形状となっており、X方向に略平行な軸(中心軸)Bを中心として回動可能に軸支される軸部25a及び該軸部25aに突出するように一体的に形成されたV字部25bを有している。軸部25aの一端には、このベイン25の姿勢を調整するために中心軸Bを中心として回動させるための六角部25fが略同軸上に一体的に形成されている。V字部25bは互いに略V字状に配置された第1の側面25c及び第2の側面25dを有している。
【0052】
第1の側面25cは拡幅部11bの側壁の一部(第1の出口11c近傍の一部)を構成するように配置され、第2の側面25dは拡幅部13cの側壁の一部(第2の出口13f近傍の一部)を構成するように配置される。第1の側面25cと第2の側面25dとが交差する稜線部25eは、X方向に略平行な線(
図15中、仮想線C参照)に対して凹又は凸となるように、折れ線形状となっている。本実施形態では、一例として、稜線部15eは、ベイン24と同様に、その両側から中央部に行くに従って凹となるように略V字状となっている。但し、稜線部14eを形成する折れ線形状はそのような略V字状に限定されず、より複雑な折れ線形状であってもよい。
【0053】
本実施形態では、拡幅部11bの側壁の一部を構成する第1の側面25cは平面となっており、拡幅部12cの側壁の一部を構成する第2の側面25dは稜線部25eの形状に沿うように凹斜面(谷線を有する2つの斜面)となっている。即ち、稜線部25eはその一端側から中央部に向かって、及び他端側から中央部に向かって一様に鋭利な形状(微視的には略同一の幅)となっている。
【0054】
なお、ここでは、V字部25bの一方の側面である第1の側面25cを平面とし、他方の側面である第2の側面25dを凹斜面としたが、これと反対に第2の側面25dを平面とし、第1の側面25cを凹斜面としてもよい。また、第1の側面25c及び第2の側面25dの双方を互いに対称となるように略同一形状の凹斜面としてもよい。さらに、本実施形態では、稜線部25eは、その両側から中央部に行くに従って凹となるように折れ線形状(略V字形状)となっているため、第1の側面25c及び第2の側面25dの少なくとも一方を稜線部25eの形状に沿うように凹斜面としたが、稜線部25eを、その両側から中央部に行くに従って凸となるように折れ線形状(略逆V字形状)とすることもでき、この場合には、第1の側面25c及び第2の側面25dの少なくとも一方を稜線部25eの形状に滑らかに沿うように凸斜面(稜線を有する2つの斜面)とすることになる。また、稜線部25eはその一部を凹、他の一部を凸となるように折れ線形状としてもよく、この場合には、第1の側面25c及び第2の側面25dの少なくとも一方を稜線部25eの形状に沿うように凹斜面及び凸斜面とすることになる。
【0055】
(3)樹脂材料
光学積層フィルムの成形に用いる非晶性の熱可塑性樹脂としては、例えば、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、脂環式構造を有する重合体樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等を用いることができる。これらの中で、脂環式構造を有する重合体樹脂を好適に用いることができる。脂環式構造を有する重合体樹脂は、流動性が良好なので、膜厚むらの小さい厚さ精度の良好なフィルムを製膜することができ、吸湿性が極めて低いので、寸法安定性に優れたフィルムを得ることができる。
【0056】
脂環式構造を有する重合体樹脂としては、例えば、ノルボルネン系単量体の開環重合体もしくは開環共重合体またはそれらの水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加重合体もしくは付加共重合体またはそれらの水素添加物、単環の環状オレフィン系単量体の重合体またはその水素添加物、環状共役ジエン系単量体の重合体またはその水素添加物、ビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体もしくは共重合体またはそれらの水素添加物、ビニル芳香族炭化水素系単量体の重合体または共重合体の芳香環を含む不飽和結合部分の水素添加物などを挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系単量体の重合体の水素添加物であるノルボルネン系重合体樹脂は、製膜性が良好であり、機械的強度と耐熱性と透明性に優れるので、より好適に用いることができる。
【0057】
紫外線吸収剤を含有させる場合における当該紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤等公知のものが使用可能である。中でも、紫外線吸収剤としては、2,2´−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2´−ヒドロキシ−3´−tert−ブチル−5´−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2,2´−ジヒドロキシ−4,4´−ジメトキシベンゾフェノン、2,2´,4,4´−テトラヒドロキシベンゾフェノン等が好適に用いられる。これらの中でも、特に2,2´−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)が好ましい。
【0058】
上記紫外線吸収剤を含有させる方法としては、紫外線吸収剤を予め脂環式構造を有する重合体樹脂中に配合する方法;紫外線吸収剤を高濃度に含有するマスターバッチを用いる方法;溶融押出成形時に直接供給する方法などが挙げられ、いずれの方法が採用されてもよい。
【0059】
(4)光学積層フィルムの製造
本実施形態の光学積層フィルムの製造装置を用いて、例えば、中間層に紫外線吸収剤を含有し、その両面に表面層を積層した3層の光学積層フィルムを製造する場合には、第1の樹脂供給系1により、上述したような紫外線吸収剤を含有する脂環式構造を有する重合体樹脂の溶融樹脂を第1の溶融樹脂としてフィードブロック4の第1の樹脂流路11に供給し、第2の樹脂供給系2により、そのような紫外線吸収剤を含有しない脂環式構造を有する重合体樹脂を第2の溶融樹脂としてフォードブロック4の第2の樹脂流路12に供給する。
【0060】
第1の溶融樹脂は管路11a及び拡幅部11bを介して出口11cに至り、第2の溶融樹脂は管路12a,12b及び拡幅部12cを介して出口12fに、及び管路12a,13b及び拡幅部13cを介して出口13fに至り、これらの出口11c,12f,13fにより構成される合流部にて積層合流され、排出管路16を介してフィードブロック4の下流に配置されるダイス5に供給され、ダイス5からフィルム状に押し出される。
【0061】
ダイス5からフィルム状に押し出された溶融状態の樹脂材料は、第1冷却ロール6a、第2冷却ロール6b、および第3冷却ロール6cで順次冷却され、複数のテンションロール7a,7b,7c、駆動ロール8a,8b等を経由し、必要に応じて幅方向の両端部を裁断(トリミング)した後、巻取ロール9に巻き取られる。
【0062】
このようにして製造された光学積層フィルムの層厚(中間層の膜厚)は、例えば、接触式厚さ計を用いて、光学積層フィルムの総厚を測定し、厚さ測定部分を切断し断面を光学顕微鏡で観察して、中間層と表面層との厚さ比を求めて、その比率より中間層の厚さを計算することにより、求めることができる。
【実施例】
【0063】
図18は、上述した実施形態で説明した稜線部14e、15eを円弧形状としたベイン14,15(
図6〜
図11)、及び稜線部を略V字形状としたベイン24,25(
図12〜
図17)、並びに比較として稜線部を第1の方向(X方向)に略平行な直線状し、第1の側面及び第2側面を平面としたベイン(フラット形状)の3種類をフィードブロック4に装着して光学積層フィルムを製造し、ベインの姿勢(回動の角度)を試行錯誤的に最適化して中間層の層厚(厚み)を測定した結果を示す図である。各製造における光学積層フィルムのプロファイル、製造装置における設定条件、その他の条件は全て同じとし、ベインのみを交換して、結果を得た。
【0064】
フラット形状のベインを用いた場合における層厚のバラツキ(最大値と最小値の差)は約6μmであり、円弧形状のベインを用いた場合は約4μm、V字形状のベインを用いた場合は約2μmとなっており、円弧形状又はV字形状のベインを採用することにより、層厚にバラツキの少ない光学積層フィルムを製造できることが理解される。
【0065】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。