特許第6094300号(P6094300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094300
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】白色干渉測定方法及び白色干渉測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20170306BHJP
   G01B 9/02 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   G01B11/00 G
   G01B9/02
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-61586(P2013-61586)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-185961(P2014-185961A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】林 恭平
(72)【発明者】
【氏名】青戸 智浩
【審査官】 八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−526790(JP,A)
【文献】 特開2004−294155(JP,A)
【文献】 特開2005−233772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/00− 9/10
G01B 11/00−11/30
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色光の干渉によって生じる干渉縞を検出する白色干渉法を利用して測定対象物の位置及び変位を測定する白色干渉測定方法において、
白色光をP偏光光とS偏光光とに分割して一方を測定光とすると共に他方を参照光とした後、前記測定光と前記参照光とを再び同軸光路上に合成して、非干渉な測定光と参照光との2光束を形成する非干渉2光束形成工程と、
前記分割と前記合成との間に設けられ、前記参照光の光路長を変化させて測長範囲を走査する参照光路長走査工程と、
前記2光束のうち前記測定光を透過させ前記参照光を反射すると共に前記透過した測定光を前記測定対象物に照射し、測定対象物で反射した測定光と前記反射した参照光とにより非干渉な照射後2光束を形成する対象物測定工程と、
前記照射後2光束について干渉信号を形成する干渉ルートと干渉信号を形成しない非干渉ルートとの2つのルートを形成する干渉・非干渉ルート形成工程と、
前記干渉・非干渉ルート形成工程の前記干渉ルートに設けられ、前記照射後2光束を前記測定光と前記参照光とに分割すると共に測定光と参照光とが同一の偏光になるように変換した後、重ね合わせて干渉光を形成する干渉光形成工程と、
前記干渉ルートからの光信号と前記非干渉ルートからの光信号とをそれぞれ検出して、その差分を取ることによって、ノイズを除去した干渉信号のみを取得する検出工程と、
前記ノイズが除去された干渉信号から前記測定対象物の位置及び変位を演算する演算工程と、を備えたことを特徴とする白色干渉測定方法。
【請求項2】
白色光の干渉によって生じる干渉縞を検出する白色干渉法を利用して測定対象物の位置及び変位を測定する白色干渉測定装置において、
白色光をP偏光光とS偏光光とに分割して一方を測定光とすると共に他方を参照光とした後、前記測定光と前記参照光とを再び同軸光路上に合成して、非干渉な測定光と参照光との2光束を形成する非干渉2光束形成部と、
前記分割と前記合成との間に設けられ、前記参照光の光路長を変化させて測長範囲を走査する参照光路長走査部と、
前記2光束のうち前記測定光を透過させ前記参照光を反射すると共に前記透過した測定光を前記測定対象物に照射し、測定対象物で反射した測定光と前記反射した参照光とにより非干渉な照射後2光束を形成する対象物測定部と、
前記照射後2光束について干渉ルートと非干渉ルートとの2つのルートを形成する干渉・非干渉ルート形成部と、
前記干渉・非干渉ルート形成部の前記干渉ルートに設けられ、前記照射後2光束を前記測定光と前記参照光とに分割すると共に測定光と参照光とが同一の偏光になるように変換した後、重ね合わせて干渉光を形成する干渉光形成手段と、
前記干渉ルートからの光信号と前記非干渉ルートからの光信号とをそれぞれ検出して、その差分を取ることによって、ノイズを除去した干渉信号のみを取得する検出部と、
前記ノイズが除去された干渉信号から前記測定対象物の位置及び変位を演算する演算部と、備え、
前記各部同士及び前記各部を構成する部材同士は光ファイバによって連結されていることを特徴とする白色干渉測定装置。
【請求項3】
前記非干渉2光束形成部は、
白色光源と、
前記白色光源から送出される白色光をP偏光光とS偏光光とに分割する第1の偏光ビームスプリッタと、
前記分割した測定光と参照光とを再び同軸光路上に合成する第2の偏光ビームスプリッタと、
前記第1の偏光ビームスプリッタで分割された参照光を前記参照光路長走査部に導き、前記参照光路長走査部で反射された参照光を前記第2の偏光ビームスプリッタに導く第1の偏波保持サーキュレータと、の各部材を備えた偏波依存型の光学系である請求項に記載の白色干渉測定装置。
【請求項4】
前記対象物測定部は、
前記2光束のうち前記測定光を透過させて前記参照光を反射する機能を有し、前記透過した測定光を前記測定対象物に照射する測定用プローブと、
前記非干渉2光束形成部からの2光束を前記測定用プローブに導き、前記測定対象物で反射した測定光と前記測定用プローブで反射した参照光との非干渉な照射後2光束を前記干渉・非干渉ルート形成部に導く第2の偏波保持サーキュレータと、を備える請求項2又は3に記載の白色干渉測定装置。
【請求項5】
前記干渉光形成手段は、
前記干渉ルートに設けられ、前記照射後2光束を前記測定光と前記参照光とに分割する第3の偏光ビームスプリッタと、
前記干渉ルートに設けられ、前記測定光と参照光とが同一の偏光になるように変換する偏光回転手段と、
前記干渉ルートに設けられ、偏光が同一となった測定光と参照光とを重ね合わせて干渉光を形成する光カプラと、を備えた請求項のいずれか1に記載の白色干渉測定装置。
【請求項6】
前記白色干渉測定装置は、
前記非干渉2光束形成部から多軸測定チャンネルに分岐され、それぞれの多軸測定チャンネルに前記対象物測定部、干渉・非干渉ルート形成部、干渉光形成手段、及び検出部を少なくとも備えると共に、前記参照光路長走査部は前記多軸測定チャンネルに対して1つ設けられている請求項のいずれか1に記載の白色干渉測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色干渉法(低コヒーレンス干渉法)を用いて測定対象物の位置及び変位を非接触で測定する白色干渉測定方法及び白色干渉測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光の干渉によって生じる干渉縞を検出する干渉法を用いた干渉計が知られている。干渉法は、単一の波長を光学干渉計によって干渉させた際に、波長の整数倍に近付くにしたがって輝度が高くなり、その中間に近付くにしたがって輝度が低くなる特性を利用して、波長や位相差を長さ測定に応用する技術であり、マイケルソン干渉方式の測定装置が一般的に使用されている。
【0003】
また、干渉法のうち白色干渉法(低コヒーレンス干渉法)は、コヒーレンス長(干渉縞を得ることのできる最大の光路長)の短い白色光源を用いる手法であり、測定対象物の微細な形状や凹凸を非接触で測定できるので、色々な測定分野において使用されている。
【0004】
マイケルソン干渉方式の白色干渉測定装置は、白色光源から出た白色光をビームスプリッタに照射して測定光と参照光とに分割し、分割した測定光と参照光とを、測定対象物もしくは測定対象物に取り付けられた測定ミラーと、参照光路長走査部に設けられ移動可能な参照ミラーに照射する。そして、測定対象物もしくは測定ミラー及び参照ミラーで反射されてビームスプリッタに戻る測定光及び参照光を重ね合わせて干渉させるように構成されている。したがって、各部材同士の間で光軸を正確にアライメントする必要があり煩雑である。
【0005】
このため、白色干渉測定装置を構成する各部材同士の間を光ファイバで連結した光ファイバ連結方式の白色干渉測定装置が開発されている(例えば特許文献1)。
【0006】
ここで、光ファイバ連結方式の白色干渉測定装置の基本構成を説明する。図6(A)に示すように、白色干渉測定装置1は、白色光源2、光カプラ3、参照光路長走査部4、測定対象物Wに白色光を照射する測定用プローブ5、光検出器6の各部材を光ファイバ7で連結した干渉システムと、光検出器6で検出された干渉信号を長さ情報に変換する処理装置8(図示せず)等から構成される。そして、参照光路長走査部4の参照ミラー4Aを移動させることにより、図6(B)の干渉信号を得る。
【0007】
光ファイバ連結方式の白色干渉測定装置1は、参照光路長走査部4に搭載されるコリメータレンズ9と参照ミラー4Aとの光軸アライメントを除き、干渉システムを構成する各部材同士の光軸をアライメントする必要がないというメリットがある。
【0008】
また、位置及び変位の測定を3次元で行うには、1軸の測定チャンネルのみではなく複数の測定チャンネルからなる多軸測定チャンネルが要望されており、光ファイバ連結方式は多軸測定チャンネルを構成し易いメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−83274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、光ファイバ連結方式の白色干渉測定装置を、高精度な実装置として構築するには、解決すべき以下の問題点(課題)がある。
【0011】
(1)図7に示すように、測定光側の光ファイバ7(特に点線で囲んだ部分)と参照光側の光ファイバ7(特に点線で囲んだ部分)の温度変化が測定値に温度ドリフトとして現れ、測定誤差になるという問題がある。この場合、参照光側の光ファイバ7は温度制御可能な筐体(図示せず)内に収納することは可能である。しかし、測定光側の光ファイバ7は筐体外を引き回す必要があり、測定光側の光ファイバ7に温度変化が生じるため、測定誤差が生じる(以下、「温度ドリフトによる測定誤差の問題」という)。
【0012】
(2)図8に示すように、測定対象物Wの振動や測定対象物Wを置いた床面の振動、白色干渉測定装置1全体の振動、あるいは白色干渉測定装置1の部材同士を繋ぐ光ファイバ7の振動等のノイズ発生要因によって、測定対象物Wで反射された反射光の強度に揺らぎが生じる。この揺らぎがノイズ信号(例えば振動信号)として干渉信号の近くに重畳し、測定誤差になる。特に、測定対象物Wが光軸に対して傾斜している等、干渉信号の振幅が小さくなる場合、あるいは反射率の低い金属やプラスチックのような測定対象物Wを測定する場合、上記揺らぎにより、測定対象物Wに対する干渉信号とノイズ信号(例えば振動信号)との区別が困難になり、精度が悪化する(以下、「ノイズ信号による測定誤差の問題」という)。
【0013】
(3)図9に示すように、多軸測定チャンネル(図9は2軸チャンネル)にした場合には、従来の光ファイバ連結方式の白色干渉測定装置は、参照光路長走査部4がチャンネル分だけ必要になる。したがって、複雑で高精度が要求される参照ミラーの光軸アライメントをチャンネル分だけ行うことが必要となり、時間を要するだけでなく測定誤差の要因になる。更には、チャンネル分の参照光路長走査部4を装置内に備えなくてはならず、白色干渉測定装置1が大型化するという問題もある(以下、「多軸測定チャンネルにした場合の問題」という)。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、温度ドリフトによる測定誤差、ノイズ信号による測定誤差、多軸測定チャンネルにした場合の各問題点を解決することができるので、実装置として十分に満足する測定精度を得ることができ、更には装置のコンパクト化にも寄与できる白色干渉測定方法及び白色干渉測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様の白色干渉測定方法は前記目的を達成するために、白色光の干渉によって生じる干渉縞を検出する白色干渉法を利用して測定対象物の位置及び変位を測定する白色干渉測定方法において、白色光をP偏光光とS偏光光とに分割して一方を測定光とすると共に他方を参照光とした後、前記測定光と前記参照光とを再び同軸光路上に合成して、非干渉な測定光と参照光との2光束を形成する非干渉2光束形成工程と、前記分割と前記合成との間に設けられ、前記参照光の光路長を変化させて測長範囲を走査する参照光路長走査工程と、前記2光束のうち前記測定光を透過させ前記参照光を反射すると共に前記透過した測定光を前記測定対象物に照射し、測定対象物で反射した測定光と前記反射した参照光とにより非干渉な照射後2光束を形成する対象物測定工程と、前記照射後2光束について干渉信号を形成する干渉ルートと干渉信号を形成しない非干渉ルートとの2つのルートを形成する干渉・非干渉ルート形成工程と、前記干渉・非干渉ルート形成工程の直前に設けられ、前記照射後2光束を前記測定光と前記参照光とに分割すると共に測定光と参照光とが同一の偏光になるように変換した後、重ね合わせて干渉光を形成する干渉光形成工程と、前記干渉ルートからの光信号と前記非干渉ルートからの光信号とをそれぞれ検出して、その差分を取ることによって、ノイズを除去した干渉信号のみを取得する検出工程と、前記ノイズが除去された干渉信号から前記測定対象物の位置及び変位を演算する演算工程と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、白色干渉法による測定光と参照光とを干渉し合わないP偏光光とS偏光光とで構成し、干渉信号を検出する検出直前で測定光と参照光とを干渉させると供に、参照光を反射させ測定光を透過する機能を有する対象物測定部から測定光を測定対象物に照射するようにした。
【0017】
このように、白色干渉法を用いた場合には、測定光と参照光との光路長が一致した場合のみ干渉し、その他の条件で干渉しあうことがない。
【0018】
したがって、白色干渉法においては、測定光と参照光とを干渉し合わないP偏光光とS偏光光とで構成すれば、測定光と参照光とを同軸光路上(同じ光ファイバ上)を通しても干渉し合うことはないので、干渉信号の検出直前まで干渉させないようにできる。
【0019】
これにより、特に、外部(例えば温度制御可能な筐体外)を引き回す必要がある測定側の光ファイバには、測定光と参照光との2光束を同軸光路上に通すことができる。この結果、測定光と参照光との間で温度による光路長の変動が同様に生じるため、測定値では温度ドリフトによる誤差が相殺される。したがって、「温度ドリフトによる測定誤差の問題」を解決することができ、測定精度を向上できる。
【0020】
また、本発明によれば、測定光と参照光とが干渉しない非干渉ルートと、測定光と参照光とが干渉する干渉ルートとの2つのルートを形成し、非干渉ルートには振動等のノイズ信号のみが生成され、干渉ルートには、干渉信号と振動等のノイズ信号との両方が生成されるようにした。そして、検出工程において、2つのルートの光信号の差分を検出するようにしたので、ノイズ信号を除去した後の干渉信号のみを検出することができる。これにより、「ノイズ信号による測定誤差の問題」を解決することができるので、測定精度を向上できる。
【0021】
また、本発明によれば、測定光(例えばP偏光光)と参照光(例えばS偏光光)との2光束が多軸測定チャンネル上を送信されて測定光のみが射出されるように構成されている。即ち、測定光と参照光の干渉及び非干渉を検出工程の直前(例えば差動検出器の直前)で設定することができるので、1つの参照光路走査工程によって全ての多軸測定チャンネルを賄うことができる。これにより、「多軸測定チャンネルにした場合の問題」の問題を解決することができる。
【0022】
本発明の第2の態様の白色干渉測定方法は前記目的を達成するために、白色光の干渉によって生じる干渉縞を検出する白色干渉法を利用して測定対象物の位置及び変位を測定する白色干渉測定方法において、白色光をP偏光光とS偏光光とに分割して一方を測定光とすると共に他方を参照光とした後、前記測定光と前記参照光とを再び同軸光路上に合成して、非干渉な測定光と参照光との2光束を形成する非干渉2光束形成工程と、前記分割と前記合成との間に設けられ、前記参照光の光路長を変化させて測長範囲を走査する参照光路長走査工程と、前記2光束のうち前記測定光を透過させ前記参照光を反射すると共に前記透過した測定光を前記測定対象物に照射し、測定対象物で反射した測定光と前記反射した参照光とにより非干渉な照射後2光束を形成する対象物測定工程と、前記照射後2光束について干渉信号を形成する干渉ルートと前記干渉信号の位相を反転させた反転干渉信号を形成する反転干渉ルートとの2つのルートを形成する干渉・反転干渉ルート形成工程と、前記干渉・反転干渉ルート形成工程の直前に設けられ、前記照射後2光束を前記測定光と前記参照光とに分割すると共に測定光と参照光とが同一の偏光になるように変換した後、重ね合わせて干渉光を形成する干渉光形成工程と、前記干渉ルートからの光信号と前記反転干渉ルートからの光信号とをそれぞれ検出して、その差分を取ることによって、ノイズを除去した干渉信号のみを取得する検出工程と、前記ノイズが除去された干渉信号から前記測定対象物の位置及び変位を演算する演算工程と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
本発明の別の態様は、「ノイズ信号による測定誤差の問題」を解決するための構成を変えたものである。即ち、照射後2光束について干渉信号を形成する干渉ルートと干渉信号の位相を反転させた反転干渉信号を形成する反転干渉ルートとの2つのルートを形成する干渉・反転干渉ルート形成工程と、干渉・反転干渉ルート形成工程の直前に設けられ、照射後2光束を測定光と参照光とに分割すると共に測定光と参照光とが同一の偏光になるように変換した後、重ね合わせて干渉光を形成する干渉光形成工程と、干渉ルートからの光信号と反転干渉ルートからの光信号とをそれぞれ検出して、その差分を取ることによって、ノイズを除去した干渉信号のみを取得する検出工程とで構成される。
【0024】
このように、干渉ルートからの光信号と反転干渉ルートからの光信号との差分を取ることによって、干渉信号は2倍になり、振動信号は打ち消しあってゼロになる。これにより、振動信号が除去された後の干渉信号のみを得ることができる。
【0025】
本発明の第1の態様の白色干渉測定装置は前記目的を達成するために、白色光の干渉によって生じる干渉縞を検出する白色干渉法を利用して測定対象物の位置及び変位を測定する白色干渉測定装置において、白色光をP偏光光とS偏光光とに分割して一方を測定光とすると共に他方を参照光とした後、前記測定光と前記参照光とを再び同軸光路上に合成して、非干渉な測定光と参照光との2光束を形成する非干渉2光束形成部と、前記分割と前記合成との間に設けられ、前記参照光の光路長を変化させて測長範囲を走査する参照光路長走査部と、前記2光束のうち前記測定光を透過させ前記参照光を反射すると共に前記透過した測定光を前記測定対象物に照射し、測定対象物で反射した測定光と前記反射した参照光とにより非干渉な照射後2光束を形成する対象物測定部と、前記照射後2光束について干渉ルートと非干渉ルートとの2つのルートを形成する干渉・非干渉ルート形成部と、前記干渉・非干渉ルート形成部の直前に設けられ、前記照射後2光束を前記測定光と前記参照光とに分割すると共に測定光と参照光とが同一の偏光になるように変換した後、重ね合わせて干渉光を形成する干渉光形成手段と、前記干渉ルートからの光信号と前記非干渉ルートからの光信号とをそれぞれ検出して、その差分を取ることによって、ノイズを除去した干渉信号のみを取得する検出部と、前記ノイズが除去された干渉信号から前記測定対象物の位置及び変位を演算する演算部と、備え、前記各部同士及び前記各部を構成する部材同士は光ファイバによって連結されていることを特徴とする。
【0026】
本発明の第1の態様の白色干渉測定装置は、上記した第1の態様の白色干渉方法を装置として構成したものである。
【0027】
本発明の第2の態様の白色干渉測定装置は前記目的を達成するために、白色光の干渉によって生じる干渉縞を検出する白色干渉法を利用して測定対象物の位置及び変位を測定する白色干渉測定装置において、白色光をP偏光光とS偏光光とに分割して一方を測定光とすると共に他方を参照光とした後、前記測定光と前記参照光とを再び同軸光路上に合成して、非干渉な測定光と参照光との2光束を形成する非干渉2光束形成部と、前記分割と前記合成との間に設けられ、前記参照光の光路長を変化させて測長範囲を走査する参照光路長走査部と、前記2光束のうち前記測定光を透過させ前記参照光を反射すると共に前記透過した測定光を前記測定対象物に照射し、測定対象物で反射した測定光と前記反射した参照光とにより非干渉な照射後2光束を形成する対象物測定部と、前記照射後2光束について干渉信号を形成する干渉ルートと前記干渉信号の位相を反転させた反転干渉信号を形成する反転干渉ルートとの2つのルートを形成する干渉・反転干渉ルート形成部と、前記干渉・反転干渉ルート形成部の直前に設けられ、前記照射後2光束を前記測定光と前記参照光とに分割すると共に測定光と参照光とが同一の偏光になるように変換した後、重ね合わせて干渉光を形成する干渉光形成手段と、前記干渉ルートからの光信号と前記反転干渉ルートからの光信号とをそれぞれ検出して、その差分を取ることによって、ノイズを除去した干渉信号のみを取得する検出部と、前記ノイズが除去された干渉信号から前記測定対象物の位置及び変位を演算する演算部と、を備え、前記各部同士及び前記各部を構成する部材同士は光ファイバによって連結されていることを特徴とする。
【0028】
本発明の第2の態様の白色干渉測定装置は、上記した第2の態様の白色干渉方法を装置として構成したものである。
【0029】
本発明の白色干渉測定装置では、前記非干渉2光束形成部は、白色光源と、前記白色光源から送出される白色光をP偏光光とS偏光光とに分割する第1の偏光ビームスプリッタと、前記分割した測定光と参照光とを再び同軸光路上に合成する第2の偏光ビームスプリッタと、前記第1の偏光ビームスプリッタで分割された参照光を前記参照光路長走査部に導き、前記参照光路長走査部で反射された参照光を前記第2の偏光ビームスプリッタに導く第1の偏波保持サーキュレータと、の各部材を備えた偏波依存型の光学系であることが好ましい。
【0030】
これは、非干渉2光束形成部の好ましい具体構成を示したものであり、偏波依存型の光学系を採用することができる。
【0031】
また、本発明の白色干渉測定装置では、前記非干渉2光束形成部は、白色光源と、前記白色光源から送出される白色光を測定光と参照光とに分割する分割用光カプラと、前記分割した測定光と参照光とを再び同軸光路上に合成する合成用光カプラと、前記分割用光カプラで分割された参照光を前記参照光路長走査部に導き、前記参照光路長走査部で反射された参照光を前記合成用光カプラに導く偏波無依存サーキュレータと、の各部材を備えた偏波無依存型の光学系であることが好ましい。
【0032】
これは、非干渉2光束形成部の好ましい別の具体構成を示したものであり、光源が無偏光であり、且つ参照光路長走査部の走査範囲で合成用光カプラにて干渉が生じない場合に、偏波無依存型の光学系を採用することができる。
【0033】
本発明の白色干渉測定装置は、前記対象物測定部は、前記2光束のうち前記測定光を透過させて前記参照光を反射する機能を有し、前記透過した測定光を前記測定対象物に照射する測定用プローブと、前記非干渉2光束形成部からの2光束を前記測定用プローブに導き、前記測定対象物で反射した測定光と前記測定用プローブで反射した参照光との非干渉な照射後2光束を前記干渉・非干渉ルート形成部に導く第2の偏波保持サーキュレータと、を備えることが好ましい。
【0034】
これは、対象物測定部の好ましい具体構成を示したものである。
【0035】
本発明の白色干渉測定装置は、前記干渉光形成手段は、前記干渉ルートに設けられ、前記照射後2光束を前記測定光と前記参照光とに分割する第3の偏光ビームスプリッタと、前記干渉ルートに設けられ、前記測定光と参照光とが同一の偏光になるように変換する偏光回転手段と、前記干渉ルートに設けられ、偏光が同一となった測定光と参照光とを重ね合わせて干渉光を形成する第2の光カプラと、を備えることが好ましい。
【0036】
これは、干渉光形成手段の好ましい具体構成を示したものである。
【0037】
本発明の白色干渉測定装置は、前記非干渉2光束形成部から多軸測定チャンネルに分岐され、それぞれの多軸測定チャンネルに前記対象物測定部、干渉・非干渉ルート形成部、干渉光形成手段、及び検出部を少なくとも備えると共に、前記参照光路長走査部は前記多軸測定チャンネルに対して1つ設けられていることが好ましい。
【0038】
これは、多軸測定チャンネルを有する白色干渉測定装置の構成を示したものである。
【発明の効果】
【0039】
本発明の白色干渉測定方法及び白色干渉測定装置によれば、温度ドリフトによる測定誤差、ノイズ信号による測定誤差、多軸測定チャンネルにした場合の各問題点を解決することができるので、実装置として十分に満足する測定精度を得ることができ、更には装置のコンパクト化にも寄与できる白色干渉測定方法及び白色干渉測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の白色干渉測定装置の全体構成の概念図
図2】干渉ルート・非干渉ルートにより振動を除去する構成の説明図
図3】検出部での干渉ルートと非干渉ルートの信号図及び差分後の干渉信号の図
図4】干渉ルート・反転干渉ルートにより振動を除去する構成の説明図
図5】本発明の多軸測定チャンネル型の白色干渉測定装置を示す概念図
図6】従来の白色干渉測定装置の基本構成と干渉信号を示す概念図
図7】従来の白色干渉測定装置の温度ドリフトを説明する説明図
図8】従来の白色干渉測定装置のノイズを説明する説明図
図9】従来の多軸測定チャンネル型の白色干渉測定装置を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付図面にしたがって本発明に係る白色干渉測定方法及び白色干渉測定装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0042】
[白色干渉測定装置]
図1は、本発明に係る白色干渉測定装置の全体構成を示す概念図である。
【0043】
なお、光が光ファイバ内を伝わる場合には「送出」又は「伝播」と言い、光が空中を飛ぶ場合には「射出」又は「照射」と言うことにする。
【0044】
図1に示すように、白色干渉測定装置10は、主として、非干渉2光束形成部A、参照光路長走査部B、対象物測定部C、干渉・非干渉ルート形成部D、干渉・非干渉ルート形成部D内に設けられた干渉光形成手段E、検出部F、演算部 G、で構成され、各部A〜G同士及び各部A〜Gを構成する下記に示す部材同士は光ファイバLによって連結されている。
【0045】
以下に各部の詳細を説明する。
【0046】
(非干渉2光束形成部A)
非干渉2光束形成部Aは、主として、白色光源12、白色光源12から送出される白色光をP偏光光とS偏光光とに分割する第1の偏光ビームスプリッタ14、分割した測定光と参照光とを再び同軸光路上に合成する第2の偏光ビームスプリッタ16、第1の偏光ビームスプリッタ14で分割された参照光を参照光路長走査部Bに導き、参照光路長走査部Bで反射された参照光を第2の偏光ビームスプリッタ16に導く第1の偏波保持サーキュレータ18、の各部材12〜18を備えた偏波依存型の光学系として構成される。
【0047】
また、第1の偏光ビームスプリッタ14で分割された測定光は、遅延用光ファイバ20を介して第2の偏光ビームスプリッタ16に送出されることが好ましい。
【0048】
白色光源12は、白色光を送出する装置であり、低コヒーレンス光であるランダム偏光光を送出する。このような白色光源としては、高輝度で低コヒーレンス性であるASE(Amplified Spontaneous Emission)、SLD(Super Luminescence Diode)、パルス幅がフェムト秒レベルであるフェムト秒レーザ、及び波長走査型レーザ等を好適に使用できる。白色光源は低コヒーレンス性を有し、例えば1310nmもしくは1550nm程度の波長帯から選択される。
【0049】
第1の偏光ビームスプリッタ14は、白色光源12から送出された白色光を互いに干渉し合うことのないP偏光光とS偏光光とに分割する部材である。第1の偏光ビームスプリッタ14は、例えば平行六面体形状の複数個のプリズムを貼り合わせることによって構成される。プリズム同士の張り合わせ面には、例えばS偏光光を反射し、P偏光光を透過するPBS面と、PBS面によって反射されたS偏光光を再び反射する反射面とが交互に形成されている。
【0050】
本実施の形態では、第1の偏光ビームスプリッタ14で分割されたP偏光光は測定光として使用し、S偏光光は参照光として使用する例で説明する。なお、P偏光光を参照光として使用し、S偏光光を測定光として使用してもよい。
【0051】
第2の偏光ビームスプリッタ16は、2つの光を合成するものであり、第1の偏光ビームスプリッタ14とは逆の使い方をするだけで同じ機能を備えたものを使用することができる。
【0052】
第1の偏波保持サーキュレータ18は、光ファイバLに連結する3つのポートを有し、第1の偏光ビームスプリッタ14から送出された参照光は参照光路長走査部Bのみに送出し、参照光路長走査部Bで反射する参照光は第2の偏光ビームスプリッタ16のみに送出する。
【0053】
遅延用光ファイバ20は、第1の偏光ビームスプリッタ14から送出された測定光に適度な光路長による遅延を与えて第2の偏光ビームスプリッタ16に送出するものである。
【0054】
これらの各部材12〜20を連結する光ファイバLは、光の伝送路であり、部材12〜20間で光を送受する機能を有する。光ファイバLは透過率の高い石英ガラス製又はプラスチック製であり、外側よりも芯の屈折率を高くすることで光を芯にだけ伝播させることができる。
【0055】
なお、図1では、非干渉2光束形成部Aを、偏波依存型の光学系として構成したが、2光束を必ずしも偏光によって測定光と参照光とを区別する必要はなく、偏波非保持の偏波無依存型の光学系を用いて構成してもよい。例えば、第1の偏光ビームスプリッタ14と第2の偏光ビームスプリッタ16とをそれぞれ光カプラ(分割用光カプラ、合成用光カプラ)に替え、第1の偏波保持サーキュレータ18を偏波無依存サーキュレータに替えることにより、偏波無依存型の光学系として構築することもできる。
【0056】
(参照光路長走査部B)
参照光路長走査部Bは、参照光の光路長を変化させる走査部であり、主として、参照ミラー22、直動ステージ24、スケールヘッド26、リニアスケール28、コリメータレンズ30で構成される。
【0057】
参照ミラー22は、第1の偏波保持サーキュレータ18からコリメータレンズ30に送出され、コリメータレンズ30から射出された参照光(S偏光光)を、射出方向と平行な逆方向に反射する。参照ミラー22としては、再帰性反射可能なCCP(コーナキューブプリズム)又は直角プリズムミラー等を好適に用いることができる。参照ミラー22は、直動ステージ24上に搭載されて往復移動可能に設置される。
【0058】
直動ステージ24は、参照光の射出方向又は逆方向にスライド可能な移動体であり、移動させることで、参照光の光路長を変化させることができる。直動ステージ24の移動は、後記する差動光検出器52からの干渉信号及びスケールヘッド26からのスケール信号に基づいて後記する処理装置54が移動制御信号を生成し、直動ステージ24に出力することによって制御される。
【0059】
リニアスケール28は、直動ステージ24の可動範囲に目盛り等を付したもので、直動ステージ24に取り付けたスケールヘッド26でリニアスケール28上の目盛りを読み取ることで参照ミラー22の位置が取得される。
【0060】
スケールヘッド26は、直動ステージ24と共に移動しながら、リニアスケール28上の位置情報を読み取る。スケールヘッド26が取得した参照ミラー22の位置は、スケールヘッド26がスケール信号として処理装置54に出力する。そして、処理装置54は、スケール信号から参照ミラー22の移動量を取得することで、参照光の光路長を把握することができる。
【0061】
(対象物測定部C)
対象物測定部Cは、主として、第2の偏波保持サーキュレータ34と、測定用プローブ36とで構成され、第2の偏波保持サーキュレータ34と測定用プローブ36との間は、偏波保持ファイバ38が介在される。
【0062】
第2の偏波保持サーキュレータ34は、光ファイバに連結する3つのポートを有し、非干渉2光束形成部Aで形成された2光束(測定光としてのP偏光光と参照光としてのS偏光光)を、偏波保持ファイバ38を介して測定用プローブ36側のみに送出し、測定用プローブ36から戻ってきた2光束を干渉・非干渉ルート形成部Dにのみ送出する部材である。
【0063】
測定用プローブ36は、非干渉2光束形成部Aで形成された2光束のうち、S偏光光である参照光のみを測定用プローブ36内で反射して偏波保持ファイバ38側へ戻す機能と、P偏光光である測定光のみを透過し、測定光を測定対象物Wに向けて出射する機能を有する。このような2つの機能を有する仕組みとしては、偏光ビームスプリッタ、レトロリプレクタ、レンズ等を用いて組み立てることができる。また、ファイバ端面にワイヤグリットを形成し、偏光ビームスプリッタを構成する方法も有効である。
【0064】
偏波保持ファイバ38は、互いに独立な2つの偏波状態で伝播する光に対し、利用する偏波と利用しない偏波との間で混信がないように工夫した光ファイバである。
【0065】
(干渉・非干渉ルート形成部D)
干渉・非干渉ルート形成部Dは、対象物測定部Cからの照射後2光束について、第1のカプラ40によって、非干渉ルート42に送出する2光束と、干渉ルート44に送出する2光束とを形成する部分である。
【0066】
第1のカプラ40は、光ファイバLの結合器であり、1本の光ファイバLを伝播する光パワーをある比率(例えば50:50)で2本の光ファイバLに分岐させる部材である。
【0067】
非干渉ルート42は、第1のカプラ40と検出部Fに設けられた差動光検出器52の負極側とが光ファイバLで連結されることによって形成される。
【0068】
干渉ルート44は、第1のカプラ40と差動光検出器52の正極側とを、第3の偏光ビームスプリッタ46、偏光回転手段48、第2のカプラ50を介して光ファイバLで連結することにより形成される。更に、第3の偏光ビームスプリッタ46と第2のカプラ50との間は、光ファイバLのみのルートと偏光回転手段48を有するルートとの2本のルートに分岐される。
【0069】
偏光回転手段48としては、例えば、三角プリズムの斜面に2種類のパターン傾斜面からなる周期パターンを刻設した偏光回転素子を用いることができる。この偏光回転手段48では、S偏光光は三角プリズム状の偏光回転素子内に入り、周期パターンで全反射することによって偏光面を90度回転させられてP偏光光となり、他方のP偏光光と平行に出射される。
【0070】
このように干渉ルート44を構成することにより、第3の偏光ビームスプリッタ46において、2光束が測定光(P偏光光)と参照光(S偏光光)とに分割され、測定光が光ファイバLのみのルートを通って第2のカプラ50に送出され、参照光が偏光回転手段48を介して第2のカプラ50に送出される。そして、参照光は偏光回転手段48によって、測定光と同じP偏光光に変換される。これにより、測定光と参照光は干渉可能な同じP偏光光となり、第2のカプラ50で重ね合わされることにより干渉光(干渉信号)を形成する。なお、本実施の形態では参照光を測定光と同じ偏光になるようにしたが、測定光を参照光と同じ偏光になるようにしてもよい。
【0071】
(検出部F)
検出部Fは、主として差動光検出器52で構成される。差動光検出器52は、非干渉ルート42から取得される信号と、干渉ルート44から取得される信号との差分を取ることによって、ノイズ信号を有しない干渉信号のみを取り出し、電気信号として演算部Gに出力する。
【0072】
(演算部G)
演算部Gは、コンピュータ等の処理装置54で構成される。処理装置54は、必要に応じて各部材の動作制御、取得データの演算処理を行う。動作制御としては、参照光路長走査部Bから取得したスケール信号に応じて移動制御信号を生成し、直動ステージ24の位置を制御する等がある。
【0073】
また、検出部Fから入力されたノイズ除去処理後の干渉信号を基に、最大振幅を示す参照光路長を決定する。干渉振幅を示す参照光路長は、参照ミラー22の移動量、即ちスケール信号に対して干渉信号の強度を得ることで決定される。
【0074】
なお、図1の符号56は、光ファイバL同士を単に連結する接続器であり、接続する以外の特別な機能は有しない。
【0075】
また、上記説明した白色干渉測定装置10において、対象物測定部C、干渉・非干渉ルート形成部Dにおける光ファイバL及び光学素子は全て偏波保持のものを使用する。
【0076】
また、非干渉2光束形成部A及び参照光路長走査部Bについては、偏波依存型の光学系で構成した場合には、光ファイバL及び光学素子は全て偏波保持のものを使用し、偏波無依存型の光学系で構成した場合には、偏波保持のものを使用する必要はない。
【0077】
[白色干渉測定方法]
次に、上記の如く構成された白色干渉測定装置10を用いて測定対象物Wを位置及び変位を測定する白色干渉測定方法を説明する。
【0078】
白色干渉測定方法は、主として、非干渉2光束形成工程、参照光路長走査工程、対象物測定工程、干渉・非干渉ルート形成工程、干渉光形成工程、検出工程、及び演算工程で構成される。
【0079】
非干渉2光束形成工程では、白色光源12からの白色光を、第1の偏光ビームスプリッタ14でP偏光光とS偏光光とに分割して一方を測定光とすると共に他方を参照光とする。測定光(P偏光光)と参照光(S偏光光)は、電場の振動面が直交しており互いに干渉し合うことはない。
【0080】
そして、測定光は遅延用光ファイバ20を通って第2の偏光ビームスプリッタ16に送出される。一方、参照光は第1の偏波保持サーキュレータ18を介して参照光路長走査部Bに送出される。そして、参照光路長走査部Bの参照ミラー22で反射された参照光は第1の偏波保持サーキュレータ18を介して第2の偏光ビームスプリッタ16に送出される。第2の偏光ビームスプリッタ16では、測定光と参照光とを再び同軸光路上に合成して、非干渉な測定光と参照光との2光束を形成する。
【0081】
なお、本実施の形態の非干渉2光束形成工程では、偏波依存型の光学系の例で説明したが、上記の装置構成のところで説明したように、偏波無依存型の光学系を使用することもできる。
【0082】
参照光路長走査工程では、干渉ルート44において形成される干渉縞の強度を、参照光の光路長を変化させることによって変動させる。
【0083】
対象物測定工程では、非干渉2光束形成工程で形成された2光束が第2の偏波保持サーキュレータ34及び偏波保持ファイバ38を介して測定用プローブ36に送出される。測定用プローブ36では、2光束のうちの測定光を透過させ参照光を反射すると共に透過した測定光を測定対象物Wに照射する。測定対象物Wで反射した測定光と測定用プローブ36で反射した参照光とは、第2の偏波保持サーキュレータ34を介して干渉・非干渉ルート形成工程に送出される。
【0084】
干渉・非干渉ルート形成工程では、測定対象物Wで反射した測定光と、測定用プローブ36で反射した参照光との照射後2光束について、第1のカプラ40が干渉ルート44を進む2光束と非干渉ルート42を進む2光束とに分割する。
【0085】
非干渉ルートを進む2光束は、そのまま検出部Fにおける差動光検出器52の負極側に送出され、干渉ルートを進む2光束は、測定光と参照光とによる干渉光を形成するように干渉光形成工程が行われる。
【0086】
干渉光形成工程では、照射後2光束を第3の偏光ビームスプリッタ46により測定光と参照光とに分割する。そして、分割された測定光と参照光とが偏光回転手段48によって同一の偏光になるように変換される。同一の偏光になるように変換され測定光と参照光とが第2のカプラ50により重ね合わされて干渉光を形成する。干渉光は、検出工程における差動光検出器52の正極側に送出される。
【0087】
検出部Fにおいて、差動光検出器52は、正極側に送出され、等しい偏光を有する測定光と参照光とから、その光量の和に応じたノイズ信号と干渉信号とを取得する。また、差動光検出器52は、負極側に送出され、互いに直交し干渉し合わない偏光を有する測定光と参照光とから、その光量の和に応じたノイズ信号を取得する。そして、差動光検出器52は、正極側の信号と負極側の信号との差を取ることで、干渉信号のみを電気信号として演算部Gの処理装置54に出力する。
【0088】
処理装置54は、参照光路長走査工程で得られるステージ位置情報処理により、干渉信号から測定対象物の位置及び変位を演算する。これにより、白色干渉法(低コヒーレンス干渉法)を用いて測定対象物Wの位置及び変位を非接触で測定することができる。
【0089】
上記の如く構成した白色干渉測定方法及び白色干渉測定装置10によれば、白色干渉法による測定光と参照光とを干渉し合わないP偏光光とS偏光光とで構成し、干渉信号を検出する検出直前で測定光と干渉光とを干渉させると供に、参照光を反射させ測定光を透過する機能を有する対象物測定部から測定光を測定対象物に照射するようにした。
【0090】
P偏光光とS偏光光とは互いに電場の振動方向が直交しており干渉しない。したがって、測定光と参照光とを干渉し合わないP偏光光とS偏光光とで構成すれば、測定光と参照光とを同軸光路上(同じ光ファイバ上)を通しても干渉し合うことはないので、干渉信号の検出直前まで干渉させないようにできる。
【0091】
これにより、本発明の白色干渉測定装置10は、光ファイバLで連結された全光路のうち、測定光と参照光とを同軸光路上に通す部分を従来の白色干渉測定装置に比べて格段に多くすることができる。特に、外部(例えば温度制御可能な筐体の外)を引き回す必要がある測定側の光ファイバL、即ち対象物測定部Cの第2の偏波保持サーキュレータ34から測定用プローブ36との間の光ファイバLについて、測定光と参照光との2光束を同軸光路上に通すことができる。これにより、測定側の光ファイバLの温度環境によって測定光と参照光との間で温度による光路長の変動が同様に生じ、温度ドリフト誤差が相殺されるので、「温度ドリフトによる測定誤差の問題」を解決することができ、測定精度を向上できる。
【0092】
また、図2(A)に示すように、干渉信号を検出する差動光検出器52直前の干渉・非干渉ルート形成部Dにおいて、測定光と参照光とが干渉しない非干渉ルート42と、測定光と参照光とが干渉する干渉ルート44との2つのルートを形成した。
【0093】
これにより、図2(B)に示すように、非干渉ルート42には干渉光の干渉信号は生成されず、生成される信号は振動等のノイズ信号のみが生成される。一方、図2(C)に示すように、干渉ルート44には、干渉信号と振動等のノイズ信号との両方が生成される。
【0094】
そして、図3に示すように、差動光検出器52で2つのルートの光信号の差分を検出するようにしたので、ノイズ信号を除去した後の干渉信号のみを検出することができる。これにより、「ノイズ信号による測定誤差の問題」を解決することができるので、測定精度を向上できる。
【0095】
従来の白色干渉測定装置では、図3(A)のように、干渉信号とノイズ信号である振動信号との両方が生成されたものが使用されていたため、干渉信号の位置(位相)検出に誤差が生じていた。
【0096】
これに対して、本実施の形態の白色干渉測定装置10では、差動光検出器52の正極側と負極側の両方に反射光(戻り光)の強度変動が生じるので、図3(A)と図3(B)との差分取ることで図3(C)の○で囲んだ部分のように振動信号が無くなり、干渉信号のみとなる。これにより、測定精度を向上できる。
【0097】
なお、図4は、振動信号等のノイズ信号を除去するための別態様であり、干渉ルートと反転干渉ルートとを構成するようにしたものである。即ち、第2の偏波保持サーキュレータ34からの測定光と参照光との2光束を、図1の第1のカプラ40を介さずに第3の偏光ビームスプリッタ46に送出する。次に、第3の偏光ビームスプリッタ46で測定光(P偏光光)と参照光(S偏光光)とに分割した2つのルートを形成する。2つのルートのうちの一方は光ファイバLで第2のカプラ50に接続し、他方は偏光回転手段48を介して光ファイバLにより第2のカプラ50に接続する。そして、第2のカプラ50で測定光と参照光とを干渉させて干渉光の干渉信号を形成し、それぞれの光ファイバL1、L2により干渉信号の一方を差動光検出器52の負極側に送出し、他方を正極側に送出するように構成する。これにより、光ファイバL1を通って差動光検出器52の正極側に送出された信号は反転しない干渉信号を形成し(干渉ルート)、光ファイバL2を通って差動光検出器52の負極側に送出された信号は反転した干渉信号を形成する(反転干渉ルート)。
【0098】
これにより、図4(B)に示すように、反射光(戻り光)の強度変動は図3と同じ位相であるが、干渉信号は位相(正負)が反転する。
【0099】
したがって、差動光検出器52の負極側と正極側との差分を取ることによって、干渉信号は2倍になり、振動信号は打ち消しあってゼロになる。これにより、振動信号が除去された後の干渉信号のみを得ることができる。
【0100】
図5は、多軸測定チャンネルを有する白色干渉測定装置100の全体構成を示す概念図であり、基本構成は図1の1軸測定チャンネルの場合と同様である。
【0101】
即ち、多軸測定チャンネルを有する白色干渉測定装置100は、非干渉2光束形成部Aの第2の偏光ビームスプリッタ16から複数本の光ファイバL(図5は3本)によって多軸測定チャンネル(図5は3軸)に分岐され、それぞれの多軸測定チャンネルに対象物測定部C、干渉・非干渉ルート形成部D、干渉光形成手段E、及び検出部Fを少なくとも備えると共に、参照光路長走査部Bは多軸測定チャンネルに対して1つ設けられるように構成される。なお、処理装置54については1つのものを共通で使用することが通常であるが、多軸測定チャンネルごとに設けることもできる。
【0102】
このように、本発明の多軸測定チャンネルを有する白色干渉測定装置100によれば、測定光(P偏光光)と参照光(S偏光光)との2光束が多軸測定チャンネル上を送信されて対象物測定部Cの測定用プローブ36から測定光のみが射出されるように構成されている。したがって、多軸測定チャンネル上において測定光と参照光との光路差が発生しないので、1つの参照光路長走査部Bによって全ての多軸測定チャンネルを賄うことができる。これにより、1つの参照光路長走査部Bの参照ミラー22の光軸アライメントを行うだけで多軸同時測定を行うことができるので、アライメント時間を短縮できるだけでなく、参照ミラー22をスケールヘッド26近くに設置することができるため、直動ステージ24のピッチング及びヨーイング等の誤差要因を最小にできる。この結果、測定精度を向上できる。また、チャンネル分の参照光路長走査部を装置内に備える必要がないので、白色干渉測定装置をコンパクト化することができる。これにより「多軸測定チャンネルにした場合の問題」を解決することができる。
【0103】
したがって、本発明の実施の形態の白色干渉測定装置10、100は、温度ドリフトによる測定誤差、ノイズ信号による測定誤差、多軸測定チャンネルにした場合の各問題点を解決することができるので、実装置として十分に満足する測定精度を得ることができ、更には装置のコンパクト化にも寄与できる白色干渉測定方法及び白色干渉測定装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0104】
10…白色干渉測定装置、12…白色光源、14…第1の偏光ビームスプリッタ、16…第2の偏光ビームスプリッタ、18…第1の偏光保持サーキュレータ、20…遅延用光ファイバ、22…参照ミラー、24…直動ステージ、26…スケールヘッド、28…リニアスケール、30…コリメータレンズ、34…第2の偏波保持サーキュレータ、36…測定用プローブ、38…偏波保持ファイバ、40…第1の光カプラ、42…非干渉ルート、44…干渉ルート、46…第3の偏光ビームスプリッタ、48…偏光回転手段、50…第2の光カプラ、52…差動光検出器、54…処理装置、56…接続器、A…非干渉2光束形成部、B…参照光路長走査部、C…対象物測定部、D…干渉・非干渉ルート形成部、E…干渉光形成部、F…検出部、G…演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9