(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いる。それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。複数の図面に表れる同一符号は同一の部分又は部材を示す。発明を理解しやすくするために、実施形態を分けて説明するが、これらの実施形態はそれぞれ独立するものではなく、共有できるところは他の実施形態の説明を適用する。
【0010】
〔発光素子〕
本発明の発光素子は、基板と、複数の半導体積層体と、複数の第1電極及び第2電極とを含む。
【0011】
(基板)
基板は、絶縁性を有し、半導体層をエピタキシャル成長させることができるものであればよい。このような基板の材料としては、サファイア(Al
2O
3)、スピネル(MgA1
2O
4)のような絶縁性基板等が挙げられる。なかでも、C面、A面、R面、M面のいずれかを主面とする基板であることが好ましく、オリフラ面として、A面又はC面を有する基板がより好ましい。特に、C面(0001)を主面とし、オリフラ面をA面(11−20)とするサファイア基板であることがより好ましい。
【0012】
基板は、平面視において、長尺な形状を有していることが好ましい。例えば、四角形、特に長方形又はこれに近似した形状などが挙げられる。
【0013】
基板は、表面に複数の凸部又は凹凸を有するものが好ましい。例えば、凸部の構成辺となる一辺の長さは0.1μm〜5μm程度が挙げられる。凸部の相互の間隔は、100μm〜20μm程度が挙げられる。ここでの相互の間隔は、基板表面(凸部底面)において、隣接する凸部同士の最小の距離を指す。また、凸部の高さは、例えば、5nm程度以上、基板上に積層する半導体層の総厚さ以下であることが好ましい。光を十分に散乱又は回折することができるとともに、発光効率を確保するためである。凸部の形状は、円柱状、三角形、四角形、六角形等の多角形の柱状、円錐台、多角形錐台、加工上等の理由から、角に丸みを帯びているもの等、近似する形状、若干の変形形状が挙げられる。
【0014】
このような基板の表面の凸部は、当該分野で公知の方法によって形成することができる。例えば、適当な形状のマスクパターンを用いて、後述するようなドライエッチング又はウェットエッチング等を行う方法が挙げられる。なかでも、ウェットエッチングが好ましい。この場合のエッチャントは、例えば、硫酸とリン酸との混酸、KOH、NaOH、リン酸、ピロ硫酸カリウム等が挙げられる。凸部の底面形状は、例えば、用いるマスクパターンの形状、エッチング方法及び条件を適宜調整して制御することができる。
【0015】
(半導体積層体)
半導体積層体は、第1半導体層(例えば、n型半導体層)、発光層及び第2半導体層(例えば、p型半導体層)が基板上にこの順に積層されたものである。このような第1半導体層、発光層及び第2半導体層の種類、材料は特に限定されるものではなく、例えば、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体等、種々の半導体が挙げられる。具体的には、In
XAl
YGa
1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等の窒化物系の半導体材料が挙げられ、InN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等を用いることができる。各層の膜厚及び層構造は、当該分野で公知のものを利用することができる。
【0016】
半導体積層体は、1つの発光素子において、発光する機能を果たす複数、例えば、2以上の部位又は領域を有する。そのために、基板表面を露出する分離溝によって互いに分離されている。分離溝は、その底面において、上述したように、基板表面に凸部がある場合は、その少なくとも一部を露出していることが好ましい。従って、分離溝で囲まれた部位を1つの半導体積層体ということがある。
【0017】
複数の半導体積層体は、平面視において行列方向に配列されていてもよいが、上述した長尺の基板の長手方向に沿って、行方向にのみ配列されていることが好ましい。本発明において行方向に配列するとは、最短接続によって直列接続が可能な方向に沿った配列を意味する。半導体積層体は、上述した配置を実現する限り、平面視における1つの半導体積層体の形状は特に限定されるものではない。例えば、四角形又はこれに近似する形状が好ましい。1つの半導体積層体の大きさは、発光素子の大きさによって、その上限を適宜調整することができる。具体的には、1つの発光素子の一辺の長さが、数百μmから10mm程度が挙げられる。この場合、1つの発光素子において、半導体積層体は、例えば、2〜10個程度配列されることが例示される。
【0018】
また、複数の半導体積層体は、その全てにおいて、発光層として機能する発光層の形状が同じ及び/又は面積が同じであることが好ましい。これによって、半導体積層体において発光面積を均一化して、発光素子の全体として、発光強度の均一化、輝度ムラ抑制を実現できる。
【0019】
(分離溝)
半導体積層体をそれぞれ分離する分離溝の幅は、半導体積層体を電気的に分離することができる幅であればよく、特に半導体積層体間の輝度の低下が軽減される3〜10μm程度の幅とすることが好ましい。分離溝の側面は、略垂直であってもよいが、テーパー状又は逆テーパー状等であってもよい。また、分離溝の幅は、部位によって変動していてもよいが、半導体積層体間で均一であることが好ましい。これによって、輝度ムラを抑制することができる。
このような分離溝によって、分離溝の延長方向の両側の略全体に発光層が配置される。これによって、各分離溝における輝度低下を軽減させることができる。
【0020】
(露出部)
半導体積層体は、その一部領域において、第2半導体層及び発光層が膜厚方向の全てにわたって除去されており、第1半導体層が露出する露出部を有する。
露出部の形状、大きさ、位置は、意図する発光素子の大きさ、形状、接続状態等によって適宜設定することができるが、半導体積層体の縁部よりも内側に複数形成されていることが好ましい。
【0021】
半導体積層体の縁部よりも内側に配置されている露出部は、後述する第1電極を第1半導体層と電気的に接続するために利用することができる。このような露出部は、平面視においてそれぞれが離間して配列されていることが好ましく、すべてが同じ形状、大きさであってもよいし、それぞれ又は一部が異なる形状、大きさであってもよい。特に、全ての半導体積層体において全てが同じ大きさ及び形状とすることによって、半導体積層体において発光面積の均一化、電流の供給量の均一化を実現することができる。その結果、発光素子の全体として、発光強度を均一化し、輝度ムラを抑制することができる。
また、各露出部の形状としては、平面視において円又は楕円、三角形、四角形、六角形等の多角形等が挙げられ、なかでも、円形が好ましい。各露出部の大きさは、半導体積層体の大きさ、求められる発光素子の出力、輝度等によって適宜調整することができ、例えば、直径(一辺)が数十〜数百μm程度の大きさであることが好ましい。別の観点から、直径が、半導体積層体の一片の1/20〜1/5程度の大きさであることが好ましい。
【0022】
露出部は、縁部の内側にランダムに配置されていてもよいが、均一に分布していることが好ましい。これによって、発光素子の輝度ムラを均一にすることができる。
ただし、露出部は、1つの半導体積層体の縁部よりも内側において、複数の半導体積層体の配列方向(例えば、上述したような行方向)に沿って一方に偏って分布していることが好ましい。また、1つの半導体積層体において、平面視、露出部の分布領域が、露出部の分布しない領域よりも広範であることが好ましい。言い換えると、平面視、1つの半導体積層体において、複数の露出部が一方に偏在して配列されており、露出部の偏在範囲が半導体積層体の平面積の半分以上を占める範囲、つまり、行方向の半分以上にわたる範囲、60%以上にわたる範囲、70%以上にわたる範囲、80%以上にわたる範囲に分布されていることが好ましい。従って、1つの半導体積層体において、露出部が存在しない範囲が、行方向の半分未満の範囲、40%未満の範囲、30%未満の範囲、20%未満の範囲に及ぶ。
このような露出部の偏在によって、後述する第1電極及び第2電極の発光素子における接続領域又は占有面積を画定することができ、つまり、第1電極の接続領域又は占有面積を第2電極のそれよりも大きくすることができる。そのため、第1半導体層に電流を均一に供給できる領域を広範にすることができ、発光素子の輝度ムラをさらに均一にすることができる。
【0023】
露出部は、1つの半導体積層体の縁部の内部に配置されるものの合計面積が、1つの半導体積層体の平面積の30%以下、25%以下、20%以下、18%以下、15%以下が好ましい。このような範囲とすることで、第1半導体層及び第2半導体層への電流供給のバランスを図ることができ、輝度ムラの均一化を確保することができる。
【0024】
(第1電極及び第2電極)
半導体積層体は、それぞれ、第1半導体層と接続される第1電極と、第2半導体層と接続される第2電極とを有する。これらの第1電極及び第2電極は、半導体積層体の上面側(つまり、基板とは反対側)に配置されている。ここでの第1電極及び第2電極は、第1半導体層及び第2半導体層と直接接触しておらず、反射層等の他の機能を有する導電性を介して電気的に接続されていてもよい。
【0025】
第1電極及び第2電極は、例えば、Au、Pt、Pd、Rh、Ni、W、Mo、Cr、Ti、Al、Cu等の金属又はこれらの合金の単層膜又は積層膜によって形成することができる。具体的には、これら電極は、半導体層側からTi/Rh/Au、Ti/Pt/Au、W/Pt/Au、Rh/Pt/Au、Ni/Pt/Au、Al-Cu合金/Ti/Pt/Au、Al-Si-Cu合金/Ti/Pt/Au、Ti/Rhなどの積層膜によって形成することができる。膜厚は、当該分野で用いられる膜の膜厚のいずれでもよい。
【0026】
(導電層)
第1電極又は第2電極がそれぞれ第1半導体層又は第2半導体層との間で介在して接続してもよい導電層としては、特に限定されないが、例えば、第1半導体層又は第2半導体層に接触する反射層が挙げられる。ただし、反射層は、第1半導体層及び第2半導体層の第1半導体層及び第2半導体層の双方に接続されていてもよいが、第2半導体層にのみ接続されることがより好ましい。
反射層としては、銀又は銀合金などを有する層が挙げられる。銀合金としては、当該分野で公知の材料のいずれを用いてもよい。反射層の厚みは、特に限定されるものではなく、発光素子から出射される光を効果的に反射することができる厚み、例えば、20nm〜1μm程度が挙げられる。反射層の第1半導体層又は第2半導体層との接触面積は大きいほど好ましく、例えば、半導体積層体の平面積の50%以上、60%以上、70%以上が挙げられる。
【0027】
導電層として反射層を用いる場合には、銀のマイグレーションを防止するために、その上面(好ましくは、上面及び側面)を被覆する被覆電極を形成することが好ましい。
このような被覆電極としては、通常、電極材料として用いられている金属及び合金によって形成されるものであればよく、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属を含有する単層又は積層層が挙げられる。なかでも、AlCu及びAlCuSiなどを用いることが好ましい。被覆電極の厚みは、効果的に銀のマイグレーションを防止するために、数百nm〜数μm程度が挙げられる。
【0028】
第1電極及び第2電極の形状は特に限定されるものではないが、半導体積層体が、通常四角形であるため、これら電極も四角形であることが好ましい。
第1電極及び第2電極は、平面視、1つの半導体積層体において、上述した行方向に並行して交互に配置されていることが好ましい。これによって、隣接する半導体積層体においても、第1電極と第2電極とを交互に配置することができる。つまり、平面視、第1の半導体積層体における第1電極と、この第1の半導体積層体に隣接する第2の半導体積層体における第2電極とを、分離溝を挟んで(好ましくは、対向して)配置させることができる。このような配置によって、半導体積層体全体として輝度ムラを防止することができる。
【0029】
第1電極は、上述した半導体積層体の縁部の内側に配置される露出部を通して電気的に接続される。この場合、複数の露出部に接続されることが好ましく、全ての露出部に接続されることがより好ましい。そして、これら複数又は全ての露出部を一体的に被覆するように接続されることが好ましい。従って、第1電極は、第1半導体層上のみならず、第2半導体層上にも配置される。この場合、露出部の側面(発光層及び第2半導体層の側面)から第2半導体層上に配置する絶縁膜を介して第2導電層上に配置される。このように、第1電極が露出部を一体的に被覆することにより、延伸して接続するための電極を設ける必要がなく、シート抵抗を低減することが可能となる。
ここでの絶縁膜は、特に限定されるものではなく当該分野で公知の材料を、電気的な絶縁性を確保し得る厚みで用いることが好ましい。
【0030】
第2電極は、上述したように、第1半導体層の露出部が分布していない領域において、導電層を介して配置されることが好ましい。
従って、1つの半導体積層体において、第1電極は、平面視における面積が、第2電極の面積よりも広いことが好ましい。
【0031】
第1電極及び第2電極と第1半導体層及び第2半導体層とのそれぞれの間に、両者の電気的な接続を阻害しない範囲で、DBR(分布ブラッグ反射器)を配置してもよい。
DBRは、例えば、任意に酸化膜等からなる下地層の上に、低屈折率層と高屈折率層とからなる1組の誘電体を、複数組(例えば、2〜5)にわたって積層させた多層構造であり、所定の波長光を選択的に反射するものである。具体的には屈折率の異なる膜を1/4波長の厚みで交互に積層することにより、所定の波長を高効率に反射させることができる。材料として、Si、Ti、Zr、Nb、Ta、Alからなる群より選択された少なくとも一種の酸化物または窒化物を含んで形成することができる。
DBRを酸化膜で形成する場合、低屈折率層を例えばSiO
2、高屈折率層を例えばNb
2O
5、TiO
2、ZrO
2、Ta
2O
5等とすることができる。具体的には、下地層側から順番に(Nb
2O
5/SiO
2)n、nは2〜5が挙げられる。DBRの総膜厚は0.2〜1μm程度が好ましい。
【0032】
また、第1電極及び第2電極の表面には、後述するような実装基板の配線と接続するための接合部材がさらに配置されていてもよい。このような接合部材は、当該分野で公知の材料のいずれをも用いることができる。具体的には、共晶合金等が挙げられる。
この場合、接合部材は、第1半導体層の露出部と重なる領域を避けた位置に配置されることが好ましい。これによって、発光素子を実装基板に実装する場合に生じる衝撃等に起因するリーク等の防止を図ることができる。
【0033】
半導体素子は、当該分野で公知の方法を利用して製造することができる。
【0034】
〔発光装置〕
本発明の発光装置は、上述した発光素子と、実装基板とを含んで構成される。
また、この発光装置は、任意に、その側面、上面又は下面(基板側)に、反射性、透光性、遮光性等を有する樹脂、これらの樹脂に蛍光体、拡散材、着色剤等を含有した樹脂等を配置していてもよい。このような樹脂、蛍光体等は、当該分野で通常使用されているもののいずれをも利用することができる。
【0035】
(実装基板)
実装基板は、例えば、ガラス、樹脂、セラミックス等からなる基材の表面に、任意に内部及び/又は裏面に、複数の配線を有する。
このような配線は、発光素子に電流を供給し得るものであればよく、当該分野で通常使用されている材料、厚み、形状等で形成されている。
また、配線は、部分的に、上述した発光素子の第1電極及び第2電極と接続するための実装用の接合部材が配置されていてもよい。この場合、上述したように、接合部材は、発光素子を実装基板に実装した場合に、第1半導体層の露出部と重なる領域を避けた位置に配置されることが好ましい。
【0036】
配線は、正負一対のパターンと、これらとは独立して配置されたパターンとを有していることが好ましい。このような配線パターンによって、発光素子における第1の半導体積層体の第1電極と、第2の半導体積層体の第2電極とを接続することができる。
この配線パターンは、発光素子の第1の半導体積層体と第2の半導体積層体とが直列接続するように配置されていることが好ましい。これによって、分離溝の幅が狭い場合においても、実装基板によって、簡便かつ確実に直列接続を実現することができる。
つまり、正負一対のパターンが、発光素子の行方向に対応する方向において両端に配置され、それらの間で、行方向に沿って、例えば、第1の半導体積層体の第2電極と第2の半導体積層体の第1電極との双方に接続されるパターン、第2の半導体積層体の第2電極と第3の半導体積層体の第1電極との双方に接続されるパターン、・・・第(n−1)の半導体積層体の第2電極と第nの半導体積層体の第1電極との双方に接続されるパターンが、配置されることが好ましい。
言い換えると、発光素子における1つの分離溝は、平面視において、配線における1つのパターンに少なくとも一部重なっている。1つの分離溝は、1つの配線パターンに全て重なって配置されていることが好ましい。これによって、分離溝での輝度の低下を配線によって補償することができ、光取り出し効果を向上させることが可能となる。その結果、より一層の輝度分布の均一化を図ることができる。
【0037】
以下に、本発明に係る発光素子及びそれを用いた発光装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
実施形態1:発光素子
実施形態1の発光素子10は、
図1Aに示すように、長尺なサファイア基板11と、この上に形成された略長方形状を有する4つの半導体積層体12a〜12dと、半導体積層体12a〜12dにそれぞれ接続された第1電極19及び第2電極20を有する。
半導体積層体12a〜12dは、その短辺側が互いに分離溝13を介して対向するように、サファイア基板11の長手方向(
図1A中、X方向)に配列されている。分離溝13は、半導体積層体が完全に除去され、サファイア基板11の表面の一部が露出する。分離溝13は全長にわたって一定の幅が好ましく、例えば約10μm程度、より好ましくは約5μm程度の幅を有する。
【0038】
この発光素子10は、
図1C及び
図1Dに示すように、半導体積層体側の表面に複数の凸部を有するサファイア基板11用いて形成されており、分離溝13の底部にはサファイア基板11の凸部が露出している。凸部は、正三角形の各辺が外側に凸となる丸みを帯びた底面形状を有し、一辺の長さLが約3μm、凸部間の距離が約1〜2.5μm、高さHが約1μmで配置されている。
1つの半導体積層体12aは、サファイア基板11上に、第1半導体層14としてn型半導体層、発光層15、第2半導体層16としてp型半導体層がこの順に積層されて構成されている。
なお、
図1C及び
図1Dでは、後述する実装基板の配線との関係を分かりやすくするために、これら断面図においてのみ、実装基板24及びその配線23を図示している。
【0039】
半導体積層体12aは、p型半導体層16及び発光層15の一部が除去されてn型半導体層14が露出した露出部を有している。この露出部は、各半導体積層体12a〜12dの全周囲をそれぞれ囲むように配置されている。
さらに、半導体積層体12aの縁部よりも内側には、平面視で略円形状(直径:約70μm)の露出部17を複数有し、それぞれが離間して配置されている。この露出部17は、1つの半導体積層体12aの一端から略80%程度の領域に偏って、均一(ピッチ:約250μm)に分布している。
【0040】
このような半導体積層体12aでは、その表面にSiO
2からなる絶縁膜18(厚み:約0.5μm)が被覆されている。この絶縁膜18は、露出部17の側面及び一部その底面(第1半導体層14上面)に及んで配置されているが、この露出部17の第1半導体層14上面を露出する複数の貫通孔18aと、第2半導体層16上面を露出する1つの貫通孔18bとを有している。
【0041】
第1電極19は、例えば、半導体層側からAl-Si-Cu合金/Ti/Pt/Au(厚み:350nm/300nm/50nm/450nm)によって形成されている。
第1電極19は、露出部17に及ぶ貫通孔18aを通して、これら全ての露出部17に接続されている。そして、第1電極19は、全ての露出部17と、これらの露出部17が偏って配置された領域(1つの半導体積層体12の一端から略80%程度の領域)に配置される第2半導体層16の上面とを一体的に被覆するように配置されている。つまり、第1電極19は、X方向に長尺な略長方形状で形成されており、X方向に直交する方向においては、半導体積層体12aの幅より若干小さい幅(半導体積層体12aの幅の90〜100%)で配置されている。
【0042】
第2電極20は、例えば、半導体層側からAl-Si-Cu合金/Ti/Pt/Au(350nm/300nm/50nm/450nm)によって形成されている。
第2電極20で被覆された第2半導体層16上の略全面に銀からなる反射層21(厚み:約0.5μm)と、この反射層21の側面及び上面を被覆する被覆電極22(材料:Al-Cu合金、厚み:約2μm)が配置されている。また、第1電極19で被覆された第2半導体層16上のほぼ全面にも、同様に、反射層21と被覆電極22とが配置されている。このような反射層21によって、発光層から出射される光の取り出し効率を向上させることができる。また、被覆電極22によって、銀のマイグレーションを効果的に用いることができる。
第2電極20は、最小限の距離で第1電極19と離間され(離間距離:約25μm)かつ隣接するように、略四角形の形状で、X方向に配置されている。
第2電極20は、X方向に直交する方向に長尺な略長方形状で形成されており、X方向に直交する方向においては、半導体積層体12aの幅より若干小さい幅(半導体積層体12aの幅の90〜100%)で配置されている。
この発光素子10の第1電極19と第2電極20との面積比は、例えば、80:20である。
【0043】
このような発光素子10は、半導体積層体12dにおける第1電極19と、半導体積層体12cにおける第2電極20とが、分離溝13を挟んで対向して配置されており、半導体積層体12cにおける第1電極19と、半導体積層体12bにおける第2電極20とが、分離溝13を挟んで対向して配置されており、半導体積層体12bにおける第1電極19と、半導体積層体12aにおける第2電極20とが、分離溝13を挟んで対向して配置されている。
【0044】
この発光素子10では、第1電極19及び第2電極20の表面に、実装基板24と接続するための接合部材25を有していてもよい。この場合、接合部材25は、第1電極19上においては、平面視で複数の露出部17とは重ならない位置に配置されている。
これによって、発光素子を実装基板に実装する場合に生じる衝撃等に起因するリーク等の防止を図ることができる。
【0045】
この発光素子10では、半導体積層体間に分離溝を極細く設けるのみで素子分離を行うことができるため、輝度の低い部分を生じさせることなく、発光素子全面において輝度分布を均一にすることができる。
また、分離溝の延長方向の両側の略全体に発光層が配置されるために、各分離溝における輝度低下を軽減させることができ、発光素子全面においてより一層、輝度分布を均一にすることができる。
【0046】
このような発光素子は、以下の方法で製造することができる。
まず、サファイア基板を準備し、その表面に第1半導体層、発光層及び第2半導体層の積層体を形成する。
得られた第2半導体層上の所望の領域に、所定のパターンを有する反射層として銀膜を形成し、その後、この反射層の全表面を被覆する被覆電極を形成する。
続いて、第1半導体層を露出するための所定形状の開口を有するマスクを形成し、そのマスクを利用して、第2半導体層、活性層、さらに第1半導体層の膜厚方向の一部をエッチング除去し、露出部を形成する。
さらに、別のマスクを利用して、得られた積層体を素子分離するために、サファイア基板を露出する分離溝を形成する。
その後、得られた積層体の全表面に絶縁膜を形成する。そして、電極との接続を意図するこの絶縁膜の所定の領域に、半導体層又は被覆電極の表面に至る貫通孔を形成する。
次いで、貫通孔を含む絶縁膜上に、電極材料を積層し、所定形状にパターニングすることにより、第1半導体層の全露出部に接続される一体的な第1電極と、被覆電極に接続される第2電極とを形成する。
【0047】
実施形態2:発光装置
この発光装置は、
図1C、
図1D及び
図1Eに示したように、実施形態1の発光素子10と、表面に配線23を有する実装基板24とを備える。
配線23は、正負一対のパターン23aと、これらとは独立して配置された3つのパターン23b、23c、23dとを有している。これらの配線23のパターンのうち、正負一対のパターン23aが、発光素子10の両端に配置され、それらの間に3つのパターン23b、23c、23dがそれぞれ配置している。これら配線23の3つのパターンは、半導体積層体12c第2電極20と半導体積層体12dの第1電極19との双方に接続されるパターン23d、半導体積層体12bの第2電極20と半導体積層体12cの第1電極19との双方に接続されるパターン23c、半導体積層体12aの第2電極20と半導体積層体12bの第1電極19との双方に接続されるパターン23bとして配置されている。
つまり、これらの配線23のパターンは、発光素子の第1の半導体積層体と第2の半導体積層体とが直列接続するように配置されている。
これによって、分離溝の幅が狭い場合においても、実装基板によって、簡便かつ確実に直列接続を実現することができる。
【0048】
そして、発光素子10における1つの分離溝13は、平面視において、配線23における1つのパターンに全て重なって配置されている。
これによって、分離溝での輝度の低下を配線によって補償することができ、光取り出し効果を向上させることが可能となる。その結果、より一層の輝度分布の均一化を図ることができる。
【0049】
発光素子10の第1電極19及び第2電極20は、接合部材25を介して、実装基板24の配線23と接続されている。
この場合、接合部材25は、発光素子10側ではなく、実装基板24の配線23側に形成されたものであってもよい。そして、接合部材25は、第1電極19上においては、複数の露出部17とは重ならない位置に配置されている。
これによって、発光素子を実装基板に実装する場合に生じる衝撃等に起因するリーク等の防止を図ることができる。
【0050】
このような発光装置では、発光素子をフリップチップ実装にて複数配列するのとは異なり、各発光素子間を詰めて配置して実装することができるため、製造工程上の制約を受けることなく、輝度分布が均一な発光装置を得ることができる。