(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、遮水部材と有孔管とが別体であったり、遮水部材に導水部が一体化される場合でも、導水部の下端部に長手方向に延びる間隙が形成されたりしているため、植物の根が伸びた際には、有孔管や導水部の周囲に根が回り込んで巻き付く状態となってしまう場合がある。有孔管や導水部に根が巻き付いた状態で、耕運機などを用いて耕作地を耕すと、巻き付いた根ごと有孔管や導水部が引き抜かれてしまい、地下灌漑システムが損傷してしまう恐れがある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、地下灌漑用部材およびそれを用いた地下灌漑システムを提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、根の巻き付きを防止できる、地下灌漑用部材およびそれを用いた地下灌漑システムを提供することである。
【0008】
この発明のさらに他の目的は、施工を簡略化できる、地下灌漑用部材およびそれを用いた地下灌漑システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0010】
第1の発明は、地中に埋設されて使用される地下灌漑用部材であって、遮水性を有し、上側開口の溝状に埋設される遮水部、透水性を有し、両側縁部が遮水部と一体化されて、遮水部の内面側に長手方向に延びる通水空間を形成する透水部、および透水部内に設けられ、通水空間の閉塞を防止する空間保持部を備え、遮水部、透水部および空間保持部は、予め一体化されて
おり、透水部は、遮水部内の当該透水部よりも下側の空間に一定の厚みの土の層が形成されるように、遮水部の側面に一体化されている、地下灌漑用部材である。
【0011】
第1の発明では、地下灌漑用部材(10,100)は、地下から水を供給して土壌の水分量を適切に保つ地下灌漑システム(50,104)に用いられる部材であり、地中に埋設されて使用される。地下灌漑用部材は、遮水部(12)および透水部(14)を含む。遮水部は、土壌に供給する水を地中で保持しておくための遮水性を有する部分であり、上側開口の溝状に埋設される。透水部は、遮水部内への水の供給および遮水部内の余剰水の排水を行う通水空間(26)を遮水部の内面側に形成するための部分であり、その両側縁部が遮水部と一体化されている。透水部は、透水性を有する、つまり水が無加圧で通過する微細な孔を有している。また、透水部の内部には、空間保持部(16)が設けられる。実施例では、平板状の基部(34)に対して複数の突起部(36)が形成されたエンボスシート(32)が空間保持部として用いられる。この場合、突起部が内側から透水部を支持することにより、土圧などによる通水空間の閉塞が防止される。
さらに、透水部は、遮水部内の透水部(通水空間)よりも下側の空間に一定の厚みの土の層が形成されるように、遮水部の側面に一体化されている。
【0012】
このような地下灌漑用部材を用いた地下灌漑システムでは、透水部内(通水空間)を通って遮水部内に供給された水が、保水土壌部(54,106)を形成する。そして、保水土壌部に保持した水を毛細管現象によって上側の土壌に浸透させることにより、植物の根圏(作土層)を適切な水分量に保つ。
【0013】
ここで、生育した植物の根(70)が保水土壌部および透水部の位置まで伸びてきた場合でも、透水部の両側縁部が遮水部と一体化されているので、透水部の周方向への根の伸長は、遮水部によって阻止される。このため、透水部の周囲に根が回り込んで互いに絡まり合う状態となることが防止される。
【0017】
第
1の発明によれば
、通水空間を形成する透水部に対する根の巻き付きを防止できるので、耕運時や植物の収穫時などに、巻き付いた根ごと地下灌漑用部材が引き抜かれて地下灌漑システムが破損してしまうことを防止できる。また、遮水部と通水空間を形成する透水部とが予め一体的に形成されるので、遮水部材と有孔管とを別々に施工する場合と比較して、施工手間が簡略化される。さらに、部材コストも低減できる。さらにまた、地下灌漑用部材を傾斜させて埋設しても、水を一時的に保持する保水土壌部が遮水部内に適切に形成される。
【0018】
第
2の発明は、地中に埋設されて使用される地下灌漑用部材であって、遮水性を有し、上側開口の溝状に埋設される遮水部、透水性を有し、両側縁部が遮水部と一体化されて、遮水部の内面側に長手方向に延びる通水空間を形成する透水部、および透水部内に設けられ、通水空間の閉塞を防止する空間保持部を備え、遮水部、透水部および空間保持部は、予め一体化されており、透水部は、遮水部内の当該透水部よりも下側の空間に一定の厚みの土の層が形成されるように、当該遮水部に形成された底上げ部の上面に一体化されている、地下灌漑用部材である。
【0019】
第
2の発明によれば、第1の発明と同様に、通水空間を形成する透水部に対する根の巻き付きを防止できるので、耕運時や植物の収穫時などに、巻き付いた根ごと地下灌漑用部材が引き抜かれて地下灌漑システムが破損してしまうことを防止できる。また、遮水部と通水空間を形成する透水部とが予め一体的に形成されるので、遮水部材と有孔管とを別々に施工する場合と比較して、施工手間が簡略化される。さらに、部材コストも低減できる。さらにまた、地下灌漑用部材を傾斜させて埋設しても、水を一時的に保持する保水土壌部が遮水部内に適切に形成される。
【0027】
第
3の発明は、地中に埋設されて使用される地下灌漑用部材であって、遮水性および可撓性を有するシート状に形成される遮水部、透水性および可撓性を有し、両側縁部が遮水部と一体化されて、遮水部の一方面に長手方向に延びる通水空間を形成する透水部、および可撓性を有し、透水部内に設けられて、通水空間の閉塞を防止する空間保持部を備え、遮水部、透水部および空間保持部は、予め一体化されており、地下灌漑用部材は、施工前はロール状に巻回されて保持され、耕作地への施工時において、ロール状態から引き出されて、一方面が内面側となるように、遮水部が上側開口の溝状に変形されて埋設される、地下灌漑用部材である。
【0028】
第
3の発明では、地下灌漑用部材(10,100)は、地下から水を供給して土壌の水分量を適切に保つ地下灌漑システム(50,104)に用いられる部材であり、地中に埋設されて使用される。地下灌漑用部材は、遮水部(12)および透水部(14)を含む。遮水部は、土壌に供給する水を地中で保持しておくための遮水性を有する部分であり、製造工場においては、たとえば平らなシート状に形成される。そして、施工現場において、上側開口の溝形に折り曲げて埋設することにより、土圧によってその形状を保持する。一方、透水部は、遮水部内への水の供給および遮水部内の余剰水の排水を行う通水空間(26)を遮水部の内面側に形成するための部分であり、その両側縁部が遮水部と一体化されている。透水部は、透水性を有する、つまり水が無加圧で通過する微細な孔を有している。また、透水部の内部には、空間保持部(16)が設けられる。実施例では、平板状の基部(34)に対して複数の突起部(36)が形成されたエンボスシート(32)が空間保持部として用いられる。この場合、突起部が内側から透水部を支持することにより、土圧などによる通水空間の閉塞が防止される。このような地下灌漑用部材の全体、つまり遮水部、透水部および空間保持部のそれぞれが可撓性を有するように形成され、地下灌漑用部材は、施工前はロール状に巻回されて保持される。そして、施工時にロール状態から引き出されて埋設される。
【0029】
第
3の発明によれば、遮水部が可撓性を有するシート状に形成され、また、透水部および空間保持部も可撓性を有するので、ドラム等に対して地下灌漑用部材をロール状に巻き付けることが容易となり、地下灌漑用部材の搬送および保管などが容易となる。
【0030】
また、第1の発明と同様に、通水空間を形成する透水部に対する根の巻き付きを防止できるので、耕運時や植物の収穫時などに、巻き付いた根ごと地下灌漑用部材が引き抜かれて地下灌漑システムが破損してしまうことを防止できる。さらに、遮水部と通水空間を形成する透水部とが予め一体的に形成されるので、遮水部材と有孔管とを別々に施工する場合と比較して、施工手間が簡略化され、部材コストも低減できる。
【0031】
第
4の発明は、第1ないし第
3のいずれかの発明に従属し、複数の透水部を備える。
第
4の発明では、遮水部(12)が形成する溝内には、複数の透水部が設けられる。たとえば、遮水部の側板(22)のそれぞれに対して、透水部が設けられる。
【0032】
第
4の発明によれば、複数の透水部を遮水部に設けておく、つまり予備の透水部を有することによって、1つの透水部が灌水部や集水部として機能しなくなってしまった場合でも、代わりに他の透水部を利用することができる。したがって、地下灌漑用部材の寿命を延ばすことができる。
【0033】
第
5の発明は、第1ないし第
4のいずれかの発明に従属し、透水部は、布製である。
【0034】
第
5の発明では、透水部(14)は、不織布および織布などの布によって形成される。
【0035】
第
6の発明は、第1ないし第
5のいずれかの発明に従属し、透水部は、防根性を有する。
【0036】
第
6の発明では、透水部(14)は、透水性を有すると共に、防根性も有している。つまり、水は無加圧で通過するが植物の根よりは小さい微細な孔を有している。
【0037】
第
6の発明によれば、通水空間を形成する透水部が防根性を有するので、根による透水部の孔の詰まりが防止され、透水部から遮水部内への水の供給を適切に行うことができる。
【0038】
第
7の発明は、第1ないし第
6のいずれかの発明に係る地下灌漑用部材を用いて、土壌に対して地下から水を供給する地下灌漑システムであって、地中に埋設される地下灌漑用部材、および地下灌漑用部材の透水部と接続され、透水部の通水空間に対して水を供給する給水部材を備える、地下灌漑システムである。
【0039】
第
7の発明では、地下灌漑システム(50)は、地下灌漑用部材(10)および給水部材(58,60)を備え、地下から水を供給して土壌の水分量を適切に保つ。地下灌漑用部材は、遮水部(12)および透水部(14)を含み、地中に埋設されて使用される。遮水部は、土壌に供給する水を地中で保持しておくための遮水性を有する部分であり、上側開口の溝状に形成される。透水部は、遮水部内への水の供給および遮水部内の余剰水の排水を行う通水空間(26)を遮水部の内面側に形成するための部分であり、その両側縁部が遮水部と一体化されている。透水部は、透水性を有する、つまり水が無加圧で通過する微細な孔を有している。また、透水部の内部には、空間保持部(16)が設けられる。そして、給水部材は、地下灌漑用部材の透水部と接続され、通水空間に対して水を供給する。
【0040】
このような地下灌漑システムでは、透水部内(通水空間)を通って遮水部内に供給された水が、保水土壌部(54)を形成する。そして、保水土壌部に保持した水を毛細管現象によって上側の土壌に浸透させることにより、植物の根圏(作土層)を適切な水分量に保つ。
【0041】
ここで、生育した植物の根(70)が保水土壌部および透水部の位置まで伸びてきても、地下灌漑用部材では、通水空間を形成する透水部の両側縁部が遮水部と一体化されているので、透水部の周方向への根の伸長は、遮水部によって阻止される。このため、透水部の周囲に根が回り込んで互いに絡まり合う状態となることが防止される。
【0042】
第
7の発明によれば、通水空間を形成する透水部に対する根の巻き付きを防止できるので、耕運時や植物の収穫時などに、巻き付いた根ごと地下灌漑用部材が引き抜かれて地下灌漑システムが破損してしまうことを防止できる。また、遮水部と通水空間を形成する透水部とが予め一体的に形成されるので、遮水部材と有孔管とを別々に施工する場合と比較して、施工手間が簡略化され、部材コストも低減できる。
【0043】
第
8の発明は、第1ないし第
6のいずれかの発明に係る地下灌漑用部材を用いて、土壌に対して地下から水を供給する地下灌漑システムであって、地中に水平に埋設される地下灌漑用部材、地下灌漑用部材の透水部と接続され、透水部の通水空間に対して水を供給する給水部材、および地下灌漑用部材の遮水部内の重力水の水位を所定水位に保つ水位管理器を備える、地下灌漑システムである。
【0044】
第
8の発明では、地下灌漑システム(104)は、地下灌漑用部材(100)、給水部材(58,60)および水位管理器(108)を備え、地下から水を供給して土壌の水分量を適切に保つ。地下灌漑用部材は、遮水部(12)および透水部(14)を含み、地中に水平(略水平を含む)に埋設されて使用される。遮水部は、土壌に供給する水を地中で保持しておくための遮水性を有する部分であり、上側開口の溝状に形成される。透水部は、遮水部内への水の供給および遮水部内の余剰水の排水を行う通水空間(26)を遮水部の内面側に形成するための部分であり、その両側縁部が遮水部と一体化されている。透水部は、透水性を有する、つまり水が無加圧で通過する微細な孔を有している。また、透水部の内部には、空間保持部(16)が設けられる。そして、給水部材は、地下灌漑用部材の透水部と接続され、通水空間に対して水を供給する。水位管理器は、実施例では、第1配水管(58)に設けられ、第1配水管から透水部内への水の供給を調整する。
【0045】
このような地下灌漑システムでは、透水部内(通水空間)を通って遮水部内に供給された水が、遮水部内に重力水状態の保水土壌部(106)を形成し、この保水土壌部の水位(114)は水位管理器によって一定に保たれる。そして、保水土壌部に保持した水を毛細管現象によって上側の土壌に浸透させることにより、植物の根圏(作土層)を適切な水分量に保つ。
【0046】
第
8の発明によれば、第
7の発明と同様に、通水空間を形成する透水部に対する根の巻き付きを防止できるので、耕運時や植物の収穫時などに、巻き付いた根ごと地下灌漑用部材が引き抜かれて地下灌漑システムが破損してしまうことを防止できる。また、遮水部と通水空間を形成する透水部とが予め一体的に形成されるので、遮水部材と有孔管とを別々に施工する場合と比較して、施工手間が簡略化され、部材コストも低減できる。
【発明の効果】
【0047】
この発明によれば、通水空間を形成する透水部に対する根の巻き付きを防止できるので、耕運時や植物の収穫時などに、巻き付いた根ごと地下灌漑用部材が引き抜かれて地下灌漑システムが破損してしまうことを防止できる。
【0048】
また、遮水部と通水空間を形成する透水部とが予め一体的に形成されるので、遮水部材と有孔管とを別々に施工する場合と比較して、施工手間が簡略化される。また、部材コストも低減できる。
【0049】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1−
図3を参照して、この発明の一実施例である地下灌漑用部材(以下、単に「部材」と言う。)10は、地下から水を供給して土壌の水分量を適切に保つ地下灌漑システムに用いられる部材である。部材10は、遮水部12および透水部14を含み、地中に埋設されて使用される。
【0052】
遮水部12は、土壌に供給する水を地中で保持しておくための遮水性を有する部分であり、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンおよびポリエチレン等の合成樹脂などによって、上側開口の溝状に形成される。この実施例では、遮水部12は、可撓性を有する長尺の遮水シートによって、矩形平板状の底板20と、底板20の両側端からやや外側に傾斜して立ち上がる側板22とを有する細長い溝状に形成される。遮水部12の大きさは、地下灌漑システムの規模(耕作地の面積)や栽培する植物の種類などに応じて適宜設定されるが、その長さは、たとえば数m−数百mである。また、遮水部12の幅は、たとえば、下端側(底板20)で120mmであり、その上端側(開口24)で300mmである。また、遮水部12の高さ(側板22の高さ或いは溝の深さ)は、たとえば150mmである。
【0053】
透水部14は、遮水部12内への水の供給および遮水部12内の余剰水の排水を行う通水空間26を遮水部12の内面側に形成するための部分であり、ポリエステル、ポリプロピレンおよびポリエチレン等の合成樹脂などによって、遮水部12の内面に対して一体的に形成される。透水部14は、防根性および透水性を有する、つまり植物の根よりは小さい(根が入り込むことはできない)が水は無加圧で通過する微細な孔を有している。この実施例では、可撓性を有する長尺の防根透水シートの両側縁部を遮水部12の側板22の内面側上部に融着または接着することによって、両側縁部28が遮水部12と一体化された、遮水部12の長手方向の全長に亘って延びる断面円弧状の透水部14を形成している。透水部14の下端は、遮水部12の底面(内面側最下面)30よりも、たとえば50−100mm高い位置に設けられる。なお、防根透水シートとしては、不織布や織布などの布製の市販品(たとえば、東洋紡スペシャルティズトレーディング株式会社製の防根透水シートBKS0812や、ユニチカ株式会社製の防根用透水性不織布−ラブシート20704FLDなど)を利用可能である。
【0054】
また、透水部14の内部、つまり通水空間26には、透水部14の形状を保持して通水空間26の閉塞を防止するための空間保持部16が設けられる。この実施例では、透水部14内に挿通したエンボスシート32を空間保持部16として用いている。
図3に示すように、エンボスシート32は、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンおよびポリエチレン等の合成樹脂などによって形成され、可撓性を有する平板状の基部34に対して複数の突起部36が形成された形状を有している。エンボスシート32は、可撓性は有するが、突起部36が土圧などの外力に耐え得る強度を有するものである。
【0055】
ただし、空間保持部16は、土圧などの外力による通水空間26の閉塞を防止することができるものであれば特に限定されない。たとえば、捲縮をつけた合成樹脂製の繊維を透水部14内に充填するようにし、この繊維を空間保持部16として利用するようにしてもよいし、管壁に複数の貫通孔が形成された合成樹脂製の有孔管、或いはスプリング(コイル)状のものを透水部14内に挿通するようにし、この有孔管やスプリング状のものを空間保持部16として利用するようにしてもよい。また、遮水部12自体にエンボス加工を施して、透水部14内に突出する突起部を形成し、この突起部を空間保持部16として利用するようにしてもよい。さらに、透水部14自体に土圧などの外力に耐え得る強度を持たせ、自身でその形状を保持できるように防根保持部14を形成することもできる。この場合は、空間保持部16を必ずしも設ける必要はない。
【0056】
また、この実施例では、遮水部12、透水部14および空間保持部16のそれぞれが可撓性を有するように形成されているが、可撓性は必ずしも有する必要はない。ただし、部材10の各部分12,14,16が可撓性を有する、つまり部材10が可撓性を有することにより、ドラム等に対して巻き付けることが可能となるので、長尺部材としての供給が可能となる。したがって、たとえば広い耕作地に部材10を適用する場合にも、部材10同士を施工現場で接続して長尺化する必要がなくなるので、施工手間を簡略化できる。
【0057】
また、遮水部12は、予め溝形の形状を保持できるように形成することもできるが、耕作地への施工時に、遮水部12を上側開口の溝状に変形して埋設するようにすることもできる。たとえば、製造工場においては、
図4(A)に示すように遮水部12を平らなシート状に形成しておく。そして、施工現場において、遮水部12の外面形状に沿う溝を耕作地に掘削した後、その耕作地の溝に対して、
図4(B)に示すように遮水部12を上側開口の溝形に折り曲げて埋設することにより、土圧によって遮水部12の所望形状を保持するようにしてもよい。このことは、後述の他の実施例の部材10,100においても同様である。遮水部12を平らなシート状に形成する場合には、ドラム等に対して部材10をロール状に巻回して保持することが容易となり、施工時にロール状態から引き出して埋設するようにすればよいので、部材10の搬送および保管などが容易となる。
【0058】
このような部材10は、上述のように地下灌漑システムに用いられる。以下、
図5−7を参照して、部材10を用いた地下灌漑システムの一例である地下灌漑システム50について説明する。
【0059】
図5−7に示すように、地下灌漑システム50は、傾斜を有する耕作地(傾斜地)52に適用されて、地下から水を供給して土壌中の水分を植物の生育にとって適切な状態に保つシステムであり、地中に埋設される部材10を含む。詳細は後述するが、地下灌漑システム50では、通水空間26を通って遮水部12内に供給された水が、毛管水状態または重力水状態の保水土壌部54を遮水部12内に形成する。そして、保水土壌部54に保持した水を毛細管現象によって上側の土壌に浸透させることにより、植物の根圏(作土層)を適切な水分量に保つ。
【0060】
部材10は、耕作地52の傾斜に沿って畝立てされた畝56ごとに、その長手方向が植物の根圏に沿うように地中に傾斜して埋設され、遮水部12の内部には、土が充填される。なお、
図5では、耕作地52に4つの部材10を等間隔に並べて配置しているが、これは単なる例示であり、部材10の配置個数や配置態様などは、耕作地52の広さ等に応じて適宜変更され得る。また、部材10を畝56ごとに配置する必要もなく、複数の畝56がある耕作地52では、2−3本の畝56に1つの割合で部材10を配置してもよい。たとえば、隣り合う部材10同士の間隔は、500−2000mmが好ましく、部材10の上端から地表面までの距離(埋設深さ)は、100mm−800mmが好ましい。
【0061】
部材10の透水部14の上流側端部は、第1配水管58を介して、部材10よりも傾斜上側に配置された給水源に接続される。また、遮水部12の上流側端部は、板状の封止部材(図示せず)等によって適宜封止される。第1配水管58は、給水源から供給された水を透水部14まで送る管路であり、複数の直管、可撓管および継手などを適宜連結して形成される。給水源は、耕作地52に供給するための水を貯留する給水タンク60を含む。給水タンク60は、たとえば地上に設置され、農業用水配管などと接続されて、農業用水配管などから送られてくる水をその内部に水を貯留する。つまり、この地下灌漑システム50では、第1配水管58および給水タンク60が通水空間26に対して水を供給する給水部材として機能する。
【0062】
一方、透水部14の下流側端部は、第2配水管62を介して、部材10よりも傾斜下側に配置された貯水タンク64に接続される。また、遮水部12の下流側端部は、板状の封止部材(図示せず)等によって適宜封止される。第2配水管62は、透水部14から送られてきた余剰水を貯水タンク64まで送る管路であり、複数の直管、可撓管および継手などを適宜連結して形成される。貯水タンク64は、たとえば地中に設置され、第2配水管62から送られてくる余剰水をその内部に貯留する。
【0063】
図示は省略するが、貯水タンク64内に貯水した水は、適宜再利用することが可能である。たとえば、ソーラー型循環ポンプなどを設けて、貯水タンク64内の水を給水タンク60に戻すようにしたり、作業員がタンクローリー車等で貯水タンク64内の水を運搬して、給水タンク60に戻すようにしたりすることによって、再利用するとよい。また、たとえば、耕作地52よりも傾斜下側の耕作地に適用した別の地下灌漑システムの給水タンクに対して貯水タンク64を接続し、貯水タンク64内の水を別システムの給水に再利用することもできる。このように貯水タンク64内の水を再利用することで、水の無駄使いを低減できる。
【0064】
このような地下灌漑システム50では、灌漑時には、第1配水管58などに設けられたバルブを手動で開け閉めすることによって、給水タンク60に貯留された水が第1配水管58を介して透水部14内に供給される。ただし、電磁弁やタイマ等を利用して、所定の時間帯に自動的に水が供給されるようにしてもよいし、栽培作物の生理的状況や環境状況をモニタリングして水分を補給するようにしてもよい。また、給水タンク60からの取水量を適宜調整して、水が常時供給されるようにしてもよい。
【0065】
第1配水管58から透水部14(通水空間26)内に流れ込んだ水は、透水部14の上流側部分から順に、透水部14に形成される微細な孔を通って遮水部12内に供給される。また、上流側部分で遮水部12内に供給されなかった水は、透水部14内を通って下流側に順次搬送されて、搬送先の透水部14の微細な孔から遮水部12内に順次供給される。さらに、遮水部12内に供給されずに透水部14の下流側端部まで到達した水は、余剰水として排水され、第2配水管62を介して貯水タンク64に貯留される。
【0066】
一方、透水部14から遮水部12内に供給された水は、主として重力水となって遮水部12内の土中を下方に移動していくが、遮水部12によってその移動を阻止されて、重力水または毛管水として遮水部12内に留まる。これにより、遮水部12内に、重力水状態または毛管水状態の保水土壌部54が形成される。その後、保水土壌部54の水は、その上側の土壌に毛細管現象によって徐々に浸透していき、植物の根圏(作土層)に毛管水状態の土壌部66を形成する。
【0067】
なお、透水部14内の水は、遮水部12内に上流側から順次供給されるが、透水部14内の通水空間26は、遮水部12内の土中の空隙よりも通水抵抗が小さいため、水の一部は透水部14内を通って適切に下流側にも搬送される。また、保水土壌部54の水位68が遮水部12内の水位に達すると、透水部14内から遮水部12内への水の移動は止まるので、定常状態においては、保水土壌部54の水位68は、透水部14内の水位とほぼ同じ一定の水位に保たれる。すなわち、給水タンク60からの給水が行われているときには、保水土壌部54の水位、つまり遮水部12内で保持される水の量は、遮水部12の全長に亘ってほぼ一定に保たれるので、その上側の土壌(土壌部66)の毛管水の量も一定に保たれる。
【0068】
また、部材10は傾斜させて埋設されるので、保水土壌部54の水は、遮水部12内を徐々に下流側に移動することになるが、この移動速度は、土の抵抗があるため遅い。このため、給水タンク60からの給水の停止後も、保水土壌部54の水は、遮水部12内に一定時間保持され、その間に上側の土壌に毛管水として吸い上げられる。したがって、上側の土壌部66の毛管水の量は、給水の停止後も長時間に亘って一定に保たれる。なお、遮水部12内を下流側に移動する水により、下流側部分で保水土壌部54の水位が通水空間26の下端の位置よりも高くなった場合は、遮水部12内から透水部14内に水が移動する。透水部14内に移動した水は、余剰水として貯水タンク64に運ばれて貯留されるので、水の無駄使いは発生しない。
【0069】
上述のように、地下灌漑システム50では、土壌に供給する水を遮水部12内で保持しておき、そこから毛細管現象によって上側の土壌に供給するようにしている。そして、遮水部12内で保持される水の量は、その全長に亘ってほぼ一定に保たれるので、上側の土壌に対する水の供給が一部に偏ることなく、植物の根圏に対して略均等に灌水できる。また、水位管理器を用いる必要がないので、システムが簡略化され、コストも削減できる。
【0070】
また、地下灌漑システム50では、降雨時には、地中に浸透した雨水が遮水部12によって受け止められ、遮水部12内に貯留される。そして、遮水部12内の水位が通水空間26の下端を超えると、遮水部12内の水は、透水部14の微細な孔を通って透水部14内に流入する。透水部14内に流入した水は、透水部14内を通って余剰水として排水され、第2配水管62を介して貯水タンク64に貯留される。つまり、透水部14内の通水空間26は、土壌に供給する水を遮水部12の全長に亘って搬送する給水路として用いられると共に、土壌または遮水部12内に発生した余剰水を集めて排水する排水路として用いられる。換言すれば、部材10は、地中から土壌に対して水を供給する灌水部材として機能すると共に、雨水を集水する集水部材としても機能すると言える。地下灌漑システム50によれば、雨水を集水して再利用することもできるので、水資源を効率的に利用できる。
【0071】
ここで、このような地下灌漑システム50を用いて植物を栽培すると、植物の根圏の土壌の水分量が適切に保たれるので、植物は大きく成長する。
図8に示すように、植物の根70は、水分が豊富に存在する場所を目指して伸びる傾向にあるので、生育した植物の根70が保水土壌部54および透水部14の位置まで伸びてくる場合がある。このような場合でも、部材10では、通水空間26を形成する透水部14の両側縁部28が遮水部12と一体化されている、つまり透水部14の周囲に回り込む経路の一部が遮水部12によって分断されているので、透水部14の周方向への根70の伸長は、遮水部12によって阻止される。このため、透水部14(通水空間26)の全周に根が回り込んで互いに絡まり合う状態となることがない。また、部材10では、透水部14が防根機能を有するので、根による透水部14の孔の詰まりも生じない。
【0072】
この実施例の部材10によれば、通水空間26を形成する遮水部12が透水部14の周方向への根の伸長を阻止する機能を発揮するので、透水部14に対する根の巻き付きを防止できる。したがって、耕運時や植物の収穫時などに、巻き付いた根ごと部材10が引き抜かれて、地下灌漑システム50が破損してしまうことを防止できる。また、透水部14が防根機能を有するので、根による透水部14の孔の詰まりが防止され、透水部14から遮水部12内への水の供給を適切に行うことができる。
【0073】
また、部材10では、遮水部12と通水空間26を形成する透水部14とが一体的に形成されるので、遮水部材と有孔管とを別々に施工する従来の地下灌漑システムと比較して、施工手間が簡略化される。また、部材コストも低減できる。
【0074】
さらに、部材10では、可撓性を有する遮水シートによって遮水部12を形成し、透水部14を遮水部12の内面側上部に設けている。このため、
図9に示すように、耕作地の土中の一部に岩盤72や埋設管74などの障害物がある場合でも、透水部14に影響を与えることなく遮水部12が変形するだけで障害物を回避でき、透水部14の架空設置が可能となる。したがって、透水部14(通水空間26)を一定の勾配で配置することが容易となる。また、深掘削による障害物の取り除き等の地盤改良が不要となる。
【0075】
なお、上述の地下灌漑システム50では、その長手方向が耕作地52の傾斜に沿うように部材10を埋設しているが、これに限定されない。たとえば、その長手方向が耕作地52の傾斜方向からずれるように部材10を配置してもよいし、耕作地52の勾配よりも大きいまたは小さい勾配で傾斜させて部材10を埋設するようにしてもよい。また、部材10は、基本的には耕作地52の地中に所定勾配で傾斜させて埋設されるが、水平(略水平を含む)に埋設することもできる。つまり、耕作地52の傾斜に直交する方向に沿って部材10を水平に埋設することもできるし、傾斜地ではなく、平坦な耕作地(水平地)に適用される地下灌漑システムに部材10を用いることもできる。
【0076】
また、部材10は、基本的には直線状に配置されるが、蛇行するように配置してもよい。さらに、耕作地52全体に万遍なく部材10を配置することによって、耕作地52の作土層全体を毛管水状態の土壌部66とすることもできるし、耕作地52の一部の範囲に部材10を配置することによって、耕作地52の作土層の一部の範囲のみ、つまり耕作者が望む範囲のみを毛管水状態の土壌部66とすることもできる。
【0077】
また、上述の地下灌漑システム50では、遮水部12内に土を充填するようにしたが、遮水部12内、好ましくは透水部14の下端よりも下側の空間には、土よりも保水性の高い材料を充填するようにしてもよい。土よりも保水性の高い材料としては、たとえば、ポリアクリル酸ナトリウムなどの高吸水性高分子からなる汎用の保水材や、そのような保水材と土とを混合した混合物を用いるとよい。このように、遮水部12内に土よりも保水性の高い材料を充填することにより、部材10を傾斜させて設置しても、保水土壌部54の水の下流方向への移動がより遅くなる。したがって、遮水部12内で保持される水の量がその全長に亘ってほぼ一定に保たれ、上側の土壌部66に対する水の供給が一部に偏ることなく、植物の根圏に対してより均等に灌水できる。
【0078】
また、遮水部12内に充填する材料を、下層から順に、礫層、砂層、およびシルト層を形成するというように複層状態にして、上側の土壌に対して毛管水が移動し易いようにすることもできる。
【0079】
また、上述の地下灌漑システム50では、土壌に水のみを供給するようにしているが、たとえば給水タンク60内の水に肥料を溶かして、水とともに肥料を部材10から土壌(作物)に供給するようにしてもよい。
【0080】
さらに、上述の地下灌漑システム50では、部材10の上流側に給水タンク60を設け、下流側に貯水タンク64を設けるようにしたが、給水タンク60および貯水タンク64は、必ずしも設ける必要はない。たとえば、給水タンク60を設けることなく、農業用配水管などに第1配水管58を直接接続するようにしてもよい。
【0081】
また、貯水タンク64の代わりに、部材10の下流側にため池などを形成しておき、このため池を貯水部として利用してもよい。さらに、貯水タンク64やため池などの貯水部を設けることなく、透水部14の下流側端部を排水管に接続し、この排水管を介して下水処理施設などへ余剰水を排出するようにしてもよい。また、第2配水管62や貯水タンク64を設けることなく、透水部14の下流側端部から土壌に余剰水を排水し、そのまま余剰水を地下深くに浸透させるようにしてもよい。余剰水を排水する場合には、水資源を有効利用できるという効果は小さくなるが、部材コストや維持管理コストなどのコストを削減できる。
【0082】
続いて、各図を適宜参照して、この発明の他の実施例について説明する。なお、上述の実施例と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
【0083】
上述の実施例では、側板22がやや外側に傾斜して立ち上がる断面台形状に遮水部12を形成しているが、これに限定される必要はない。遮水部12は、上側開口の溝状に形成され、地中で水を保持できる形状であれば、適宜の形状を適用可能である。たとえば、側板22が底板20から垂直に立ち上がる断面矩形状に遮水部12を形成することもできるし、遮水部12を半円筒状に形成することもできる。ただし、遮水部12の上側の開口24の幅を広げるようにすれば、その分だけ土壌に浸み込んだ雨水の集水能力が増すので、水資源をより効率的に利用することが可能になる。
【0084】
また、透水部14の微細な孔は、基本的には透水部14の全面に万遍なく一様に形成されるものであるが、必ずしもこれに限定される必要はなく、たとえば、長手方向の一定間隔ごと、または不規則的に微細な孔が形成されない範囲があってもよい。
【0085】
また、上述の実施例では、透水部14を遮水部12の側板22の内面側上部に設けているが、これに限定されず、透水部12の位置は、遮水部12の内面側であれば任意に変更可能である。さらに、透水部14の形状は、通水空間26を形成できる形状であれば、特に限定されない。
【0086】
たとえば、
図10に示すように、透水部14を遮水部12の側板22の内面側最上部よりも低い位置に設けることもできる。
【0087】
また、たとえば、
図11に示すように、遮水部12の底板20の中央部に対して断面台形状の底上げ部76を形成し、その底上げ部76の上面(つまり遮水部12の内面)に透水部14を設けることもできる。なお、
図11に示す実施例の場合には、底上げ部76の両側に2つの土壌部54が形成されることになる。
【0088】
また、たとえば、
図12に示すように、遮水部12の側板22上部に対して外側に突出する溝部78を形成し、その溝部78を覆うように透水部14を設けることもできる。この場合にも、遮水部12の内面と一体に設けられた透水部14が通水空間26を形成している。
【0089】
さらに、上述の実施例では、遮水部12に対して1つの透水部14(通水空間26)を設けているが、これに限定されず、遮水部12に対して複数の透水部14を設けることもできる。たとえば、
図13に示すように、遮水部12の側板22のそれぞれに透水部14を設けることもできる。また、図示は省略するが、
図11に示す実施例のような遮水部12の場合には、底上げ部76に透水部14を設けると共に、側板22のそれぞれに透水部14を設けるようにしてもよい。このように複数の透水部14を設ける場合には、たとえば、第1配水管58は、1つの透水部14に接続される。そして、供給される水に含まれる不純物や土壌中の泥成分などが原因となって、通水空間26や透水部14の微細な孔が詰まる等してしまい、使用中の透水部14が灌水部や集水部として機能しなくなってしまったときに、第1配水管58を残りの透水部14に接続し直すようにするとよい。このように、複数の透水部14を遮水部12に設けておく、つまり予備の透水部14を有することによって、部材10の寿命を延ばすことができる。
【0090】
また、
図14に示すように、遮水部12の側縁部に鍔部80を設けるようにしてもよい。鍔部80は、合成樹脂などの遮水性を有する材質によって形成され、遮水部12の全長に亘るように側板22の上端から鍔状に外側に延びる。遮水部12(土壌部54)内の水は、その上側の土壌に毛細管現象によって吸い上げられて、遮水部12の上部およびその周辺の土壌へと浸透していくが、遮水部12に鍔部80を設けておくことによって、鍔部80がその下方の土壌への毛管水の浸透を遮断する。つまり、下方に向かって浸透していく毛管水の量を低減させるので、毛管水は横方向ないし上方向に浸透していくことになる。これによって、使用する水の量を低減させつつ、横方向に広範囲に広がる毛管水状態の土壌部66を形成することができるようになる。また、降雨時には、鍔部80が地中に浸透した雨水を受け止めて遮水部12内に導くこともできるので、雨水をより効率的に集水することが可能になる。
【0091】
さらに、
図15に示すように、遮水部12には、遮水部12の内面側底部の空間を区画する複数の仕切部82を設けるようにしてもよい。仕切部82は、たとえば、合成樹脂などの遮水性を有する材質によって形成され、遮水部12の長手方向の所定間隔ごとに、遮水部12の内面から突出する平板状に形成される。隣り合う仕切部82の間隔は、耕作地52の勾配に応じて適宜設定されるが、たとえば1mとされ、その高さは、たとえば透水部14の下端位置までの高さとされる。このような仕切部82を設けることにより、保水土壌部54の水の下流方向への移動がより抑制されるので、遮水部12内で保持される水の量がその全長に亘ってほぼ一定に保たれる。したがって、上側の土壌部66に対する水の供給が一部に偏ることなく、植物の根圏に対してより均等に灌水できる。なお、仕切部82は、必ずしも遮水部12の内面から突出させるように形成する必要はなく、たとえば、遮水部12の長手方向の所定間隔ごとに、遮水部12の底板20および側板22下部を上側に湾曲させて仕切部82を形成することもできる。
【0092】
また、
図16に示すように、遮水部12を上側開口の複数の溝を有するように形成し、それら溝のそれぞれに透水部14を設けるようにすることもできる。つまり、上側開口の溝状とは、1つの溝を有するものに限定されるものではなく、複数の溝を有するものも含まれる。たとえば、遮水部12は、幅方向に凹凸を繰り返す波形状に形成される。この場合、遮水部12の溝(凹部)のそれぞれに、保水土壌部54が形成されることになる。もちろん、
図1および
図10−15に示した部材10の遮水部12の側縁部同士を適宜連結して1つの部材10とすることもできる。
【0093】
なお、上述の各実施例では、透水部14を遮水部12の側板22の内面側上部や底板20の底上げ部76などに設けている。つまり、遮水部12の底面(内面側の最下面)より高い位置に透水部14を設けている。これは、遮水部12内の透水部14(通水空間26)より下側の空間に一定の厚みの土の層を形成するためである。これによって、部材10を傾斜させて埋設しても、水を一時的に保持する保水土壌部54が遮水部12内に適切に形成される。
【0094】
しかし、
図17に示す部材100のように、水平(略水平を含む)に埋設されるものであれば、遮水部12の底面(底板22の上面)に対して透水部14を設けることもできる。
【0095】
このような部材100は、
図18に示すように、たとえば平坦な耕作地(水平地)102に適用される地下灌漑システム104に用いられる。この地下灌漑システム104では、通水空間26を通って遮水部12内に供給された水が、重力水状態の保水土壌部106を遮水部12内に形成する。そして、保水土壌部106に保持した水を毛細管現象によって上側の土壌に浸透させることにより、植物の根圏を適切な水分量に保つ。
【0096】
具体的には、部材100は、たとえば、その長手方向が植物の根圏に沿うように地中に水平に埋設され、遮水部12の内部には、土が充填される。部材10の透水部14の上流側端部は、第1配水管58を介して、地上に配置された給水タンク60に接続される。また、遮水部12の上流側端部と、遮水部12および透水部14の下流側端部とは、板状の封止部材(図示せず)等によって適宜封止される。
【0097】
さらに、第1配水管58には、遮水部12内に形成される保水土壌部106の水位を調整するための水位管理器108が設けられる。水位管理器108は、貯水機能を有する縦管110、および縦管110の内部に収容される管理器本体112を含み、縦管108内の水位に応じて水の供給を調整するものである。この地下灌漑システム104では、水位管理器108は、第1配水管58から透水部14内への水の供給を調整することによって、遮水部12内に形成される重力水状態の保水土壌部106の水位114を一定に保つ。水位管理器108としては、公知の水位管理器を適宜使用することができ、たとえば、管理器本体112として、本願出願人が先に出願した特開2008−240934号において提案したものを好適に用いることができる。
【0098】
このような地下灌漑システム104では、灌漑時には、第1配水管58などに設けられたバルブは常に開状態とされる。給水タンク60から第1配水管58を介して透水部14(通水空間26)内に流れ込んだ水は、透水部14内を通って下流側に順次搬送されると共に、透水部14に形成される微細な孔を通って遮水部12内に供給される。遮水部12内に供給された水は、その内部の土中に浸透していき、重力水となって遮水部12内に留まり、重力水状態の保水土壌部106を形成する。この保水土壌部106の重力水の水位114、すなわち遮水部12内の重力水の水位は、水位管理器108の縦管110内の水位と連動しており、縦管110内の水位が所定の水位設定値になると、第1配水管58から透水部14内への給水が停止される。また、遮水部12内の水が上層の土壌に吸い上げられて、重力水の水位114が低下すると、その分だけ第1配水管58から透水部14内への給水が行われる。つまり、遮水部12内の重力水の水位114は、水位管理器108によって、その全長に亘って一定に保たれる。保水土壌部106(遮水部12)に保持された水は、その上側の土壌に毛細管現象によって徐々に浸透していき、植物の根圏(作土層)に毛管水状態の土壌部66を形成する。
【0099】
図17に示す部材100においても、
図1に示す部材10と同様に、通水空間26を形成する遮水部12が透水部14の周方向への根の伸長を阻止する機能を発揮するので、透水部14に対する根の絡まりを防止できる。したがって、耕運時や植物の収穫時などに、絡まった根ごと部材100が引き抜かれて、地下灌漑システム104が破損してしまうことを防止できる。また、透水部14が防根機能を有するので、透水部14の根による詰まりが防止され、透水部14から遮水部12内への水の供給を適切に行うことができる。また、遮水部12と通水空間26を形成する透水部14とが一体的に形成されるので、施工手間が簡略化され、部材コストも低減できる。
【0100】
なお、上述の各実施例では、透水部14は、防根性および透水性を有する、つまり植物の根よりは小さいが水は無加圧で通過する微細な孔を有するように形成しているが、透水部14は、少なくとも透水性を有していればよく、防根性を必ずしも有する必要はない。
【0101】
また、上で挙げた寸法や配置態様などに関する具体的数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様および適用する耕作地の面積、土壌成分および気候条件などに応じて、適宜変更可能である。