特許第6095085号(P6095085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6095085
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】共振周波数読み出し方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 23/07 20060101AFI20170306BHJP
   G01R 23/14 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   G01R23/07
   G01R23/14
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-37174(P2016-37174)
(22)【出願日】2016年2月29日
【審査請求日】2016年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】木内 等
【審査官】 濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−095550(JP,A)
【文献】 特開2000−187050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 23/00−23/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の共振型センサを用いる、共振周波数読み出し方法であって、
2つの基準正弦波信号を生成するステップであって、前記2つの基準正弦波信号の位相は互いに直交し、前記2つの基準正弦波信号の周波数は、加算位相値に基づいて決定される、2つの基準正弦波信号を生成するステップと、
前記2つの基準正弦波信号に基づいて読み出し信号を生成するステップと、
前記読み出し信号を共振型センサに入力するステップと、
前記共振型センサの検出信号を取得するステップと、
前記2つの基準正弦波信号のそれぞれと、前記検出信号との相関値を取得するステップと、
前記相関値に基づき、前記基準正弦波信号の一方と前記検出信号との位相差を取得するステップと、
前記位相差に基づいて、前記加算位相値を決定するステップと
を備える、共振周波数読み出し方法。
【請求項2】
2つ以上の共振型センサを用い、
前記加算位相値および前記2つの基準正弦波信号は、各共振型センサについて個別のものであり、
前記読み出し信号および前記検出信号は、すべての共振型センサについて共通の信号である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法を実行する、共振周波数読み出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、共振周波数読み出し方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
共振回路等を用いて所定の周波数帯の信号を検出する、共振型センサが公知である。共振型センサが、検出対象となる目的信号を受信すると、共振周波数の変化および振幅の変化が生じる。
【0003】
図3に、このような共振型センサを用いた測定の原理を示す。共振型センサの、無信号時における出力のスペクトルをS0とし、そのピークすなわち共振周波数をf0とする。信号の測定(読み出し)は、読み出し信号と呼ばれる周波数f0の信号を、共振型センサに入力することで行われる。
【0004】
信号の検出は、共振型センサの出力信号において周波数f0における振幅を取得することにより行われる。無信号時には、出力信号のスペクトルはS0であり、周波数f0における振幅はA0である。目的信号を受信すると、共振型センサの共振周波数が変化し、たとえば出力信号のスペクトルはS1となる。この場合には、周波数f0における振幅はA1に低下する。この振幅A1に基づき、出力信号のピーク周波数f1が推定される。
【0005】
多数の共振器を用い、それぞれの周波数を僅かにずらすことにより、多数のセンサを一本の線で接続して用いることができ、各共振器周波数に合わせた読み出し用コム信号を用いることにより、一度に各共振器の状態を読み出すことが可能となる。このような技術に係る構成は、たとえば非特許文献1に記載される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】S. J. C. Yates、A. M. Baryshev、J. J. A. Baselmans、B. Klein、R. Gusten、「Fast Fourier transform spectrometer readout for large arrays of microwave kinetic inductance detectors」、Appl. Phys. Lett.、vol.95、no.4, 2009
【0007】
図4に、従来の共振周波数読み出し装置の構成の例を示す。共振周波数に基づいた周波数設定テーブルを用意する。これに逆フーリエ変換を掛けることで時系列データを予め発生し、SIN成分およびCOS成分を振幅メモリに記録する。これを外部クロック信号に応じて読み出し、D/A変換することによりアナログ信号を発生する。このアナログ信号はIQミキサでローカル信号と混ぜられ、アップコンバート信号が得られる。これを共振器の読み出し信号とする。共振型センサを通過した読み出し信号は、共振器により振幅変調を受けている。この信号を、先程のローカル信号とIQミキサで混ぜることにより、ダウンコンバートされたIQ信号を表すSIN信号およびCOS信号を得る。これらはA/D変換された後、フーリエ変換を施され周波数成分に分離される。これを基に各共振器に一意した周波数成分で振幅と位相を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような従来の構成では、信号検出の精度を向上させることが困難であるという問題があった。
【0009】
たとえば、読み出し信号の周波数が共振周波数(図3の例ではf0)に十分一致していない場合には、出力信号の振幅が低下し、SNRの低下が生じる。
【0010】
また、信号受信時の出力信号のピーク周波数(図3の例ではf1)は、無信号時の共振曲線の裾野部分に相当するため、SNRの低下が生じる。図3の例では出力のスペクトルがS0からS1に変化するが、この時には、周波数がf0で固定された読み出し信号を用いて得られる出力信号の振幅は、A0からA1へと低下する。
【0011】
このようなSNRの低下に対応し信号検出の精度を向上させるためには、たとえば高量子化ビットのA/D変換処理が要求されるが、これは、より複雑な構成またはより高速な演算能力が要求される等の困難を伴う。
【0012】
この問題は、複数の共振型センサを備える共振型センサ列を用いる場合には、さらに深刻となる。
【0013】
この発明はこのような問題点を解消するためになされたものであり、信号検出の精度をより容易に向上させることができる、共振周波数読み出し方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような問題を解決するため、この発明に係る共振周波数読み出し方法は、
1つ以上の共振型センサを用いる、共振周波数読み出し方法であって、
2つの基準正弦波信号を生成するステップであって、前記2つの基準正弦波信号の位相は互いに直交し、前記2つの基準正弦波信号の周波数は、加算位相値に基づいて決定される、2つの基準正弦波信号を生成するステップと、
前記2つの基準正弦波信号に基づいて読み出し信号を生成するステップと、
前記読み出し信号を共振型センサに入力するステップと、
前記共振型センサの検出信号を取得するステップと、
前記2つの基準正弦波信号のそれぞれと、前記検出信号との相関値を取得するステップと、
前記相関値に基づき、前記基準正弦波信号の一方と前記検出信号との位相差を取得するステップと、
前記位相差に基づいて、前記加算位相値を決定するステップと
を備える。
2つ以上の共振型センサを用い、
前記加算位相値および前記2つの基準正弦波信号は、各共振型センサについて個別のものであり、
前記読み出し信号および前記検出信号は、すべての共振型センサについて共通の信号であってもよい。
また、この発明に係る共振周波数読み出し装置は、上述の方法を実行する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る、共振周波数読み出し方法および装置によれば、検出信号に応じて加算位相値をフィードバックし、読み出し信号の周波数を変動させるので、信号検出の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態1に係る共振周波数読み出し装置を含む構成の例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態2に係る共振周波数読み出し装置を含む構成の例を示す図である。
図3】共振型センサを用いた測定の原理を示す図である。
図4】従来の共振周波数読み出し装置の構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明の概要および動作原理を説明する。本発明に係る共振周波数読み出し方法および装置は、周波数随時可変型の数値制御オシレータと、その信号を直接用いたデジタル平均化位相検出器とを備えており、数値制御オシレータが生成する信号のSIN成分およびCOS成分をデジタル平均化位相検出器の入力信号とする構造を持つ。
【0018】
実施の形態1.
図1に、本願の実施の形態1に係る共振周波数読み出し装置100を含む構成を示す。共振周波数読み出し装置100は、共振型センサ30(共振器型センサともいう)に関連して設けられる。共振周波数読み出し装置100は、本明細書に記載される方法を実行することにより、共振型センサ30の共振周波数を読み出す。より具体的には、共振周波数読み出し装置100は、共振型センサ30に読み出し信号を入力し、共振型センサ30から出力されるセンサ出力信号を取得する。
【0019】
共振周波数読み出し装置100は、デジタル信号を処理するデジタル信号処理部110と、アナログ信号を処理するアナログ信号処理部120を備える。デジタル信号処理部110は、加算器10と、位相レジスタ11と、SIN位相振幅決定器12と、COS位相振幅決定器13と、相関積分器20および21と、位相振幅検出器22とを備える。アナログ信号処理部120は、IQミキサ16と、ローカル信号発生器17と、ミキサ18とを備える。デジタル信号処理部110とアナログ信号処理部120との間の信号の変換は、D/A変換器14および15と、A/D変換器19とによって行われる。
【0020】
加算器10は、外部から(たとえば後述の位相振幅検出器22から)入力される加算位相値と、位相レジスタ11に記憶される値とを加算して出力する。位相レジスタ11は、外部から入力されるクロック信号に応じ、記憶している位相値を出力する。位相レジスタ11から出力される位相値は、加算器10にフィードバックされる。このような構成により、共振周波数読み出し装置100は、定期的に位相値を決定または出力する。たとえば、加算位相値がθ1である場合には、位相レジスタ11に記憶された位相値は、クロック信号が入力されるたびにθ1ずつ増加することになる。
【0021】
共振周波数読み出し装置100は、この位相値に基づいて、互いに直交する位相を持つ2つの正弦波信号(基準正弦波信号)を生成する。この処理は、たとえばSIN位相振幅決定器12およびCOS位相振幅決定器13によって実行される。
【0022】
位相レジスタ11から出力される位相値は、SIN位相振幅決定器12およびCOS位相振幅決定器13に入力され、SIN位相振幅決定器12およびCOS位相振幅決定器13は、それぞれ、入力された位相値に対応するSIN関数の値およびCOS関数の値を出力する。SIN関数の値の系列がSIN信号(第1基準正弦波信号)を表し、COS関数の値の系列がCOS信号(第2基準正弦波信号)を表す。SIN信号およびCOS信号の周波数は同じである。また、SIN信号およびCOS信号は、1つの複素信号のSIN成分およびCOS成分であるということができる。
【0023】
ここで、位相レジスタ11から出力される位相値は、クロックごとに加算位相値だけ増加してゆくので、SIN信号およびCOS信号の周波数は、加算位相値に基づいて決定されることになる。また、SIN位相振幅決定器12およびCOS位相振幅決定器13は、それぞれSIN信号およびCOS信号をデジタル信号として生成する。
【0024】
このようにして、共振周波数読み出し装置100は、加算位相値に応じた周波数のSIN信号およびCOS信号を生成する。すなわち、加算器10、位相レジスタ11、SIN位相振幅決定器12およびCOS位相振幅決定器13は、周波数随時可変型の数値制御オシレータを構成するということができる。
【0025】
共振周波数読み出し装置100は、SIN信号およびCOS信号をアナログ信号に変換する。この処理は、たとえばD/A変換器14および15によって実行される。
【0026】
共振周波数読み出し装置100は、SIN信号およびCOS信号に基づいて、共振型センサ30に対する読み出し信号を生成する。この処理は、たとえばIQミキサ16による周波数アップコンバート処理として実行される。IQミキサ16は、D/A変換器14および15からSIN信号およびCOS信号を受信し、このSIN信号およびCOS信号と、ローカル信号発生器17から出力されるローカル信号とに基づき、読み出し信号を生成する。
【0027】
ここで、SIN信号およびCOS信号の双方を用いることにより、アップコンバート処理時のイメージ信号(すなわち不要波)を抑えることができる。
【0028】
共振周波数読み出し装置100は、読み出し信号を共振型センサ30に入力する。共振型センサ30は、任意の構成のものを用いることができるが、たとえば、超伝導検出器(MKID)やファイバブラッググレーティング(FBG)変位計等の高感度センサを用いてもよい。共振型センサ30を通過した後のセンサ出力信号は、共振器により振幅変調を受けている。共振型センサ30が目的信号を受信している時には、共振器の共振周波数が変化するので、結果としてセンサ出力信号が変化することになる。
【0029】
共振周波数読み出し装置100は、共振型センサ30から出力されるセンサ出力信号に基づき、検出対象周波数帯域内の検出信号を取得する。検出信号の取得は、たとえばミキサ18が検出信号を生成することによって実行される。ミキサ18は、共振型センサ30から出力されるセンサ出力信号と、ローカル信号発生器17から出力されるローカル信号とに基づき、たとえばこれらを混ぜることによって検出信号を生成する。ここで、ミキサ18は周波数ダウンコンバータとして機能する。また、ミキサ18は、検出信号をアナログ信号として生成する。なお、ミキサ18はIQミキサである必要はない。
【0030】
共振周波数読み出し装置100は、検出信号をデジタル信号に変換する。この処理は、たとえばA/D変換器19によって実行される。
【0031】
共振周波数読み出し装置100は、SIN信号およびCOS信号のそれぞれと、検出信号との相関値を取得する。本実施形態では、相関演算はデジタル信号に基づいて行われる。相関値を取得するための具体的関数および演算内容は当業者が適宜設計するものであってよいが、たとえば相関積分とすることができる。
【0032】
この処理は、たとえば相関積分器20および21によって実行される。相関積分器20は、COS位相振幅決定器12から出力されるCOS信号と、A/D変換器19から出力される検出信号との相関積分値を取得する。同様に、相関積分器21は、SIN位相振幅決定器13から出力されるSIN信号と、A/D変換器19から出力される検出信号との相関積分値を取得する。
【0033】
共振周波数読み出し装置100は、この相関値に基づき、共振型センサ30の目的信号に対応する周波数および振幅を検出し、これを装置出力信号として出力する。この処理は、たとえば位相振幅検出器22によって実行される。
【0034】
また、共振周波数読み出し装置100は、この相関値に基づき、基準正弦波信号(いずれでも等価であるが、たとえばいずれか一方)と、検出信号との位相差を取得する。この処理もまた、たとえば位相振幅検出器22によって実行される。このように、共振周波数読み出し装置100において、相関積分器20および21と、位相振幅検出器22とが、デジタル平均化位相検出器を構成するということができる。
【0035】
ここで、位相振幅検出器22は、SIN信号に対する相関(相関積分器20からの出力)と、COS信号に対する相関(相関積分器21からの出力)との双方に基づいて位相差を算出するので、イメージ信号を抑制することができる。このため、上述のようにミキサ18はIQミキサである必要はない。
【0036】
共振周波数読み出し装置100は、この位相差に基づいて、加算器10に入力すべき加算位相値を決定する。この処理もまた、たとえば位相振幅検出器22によって実行される。この加算位相値は、上述のように加算器10にフィードバックされる。
【0037】
これによって、SIN信号およびCOS信号の位相が進む速さ(すなわち周波数)が変更されることになる。
【0038】
A/D変換器19に入力される検出信号と、IQミキサ16から出力される読み出し信号との位相差は、逆正接(アークタンジェント)関数を用いて以下のように計算できる。
位相差 = アークタンジェント(相関積分器21の出力/相関積分器20の出力)
このアークタンジェント関数の閾値は、たとえば−πからπまでである。
【0039】
本実施形態では、位相振幅検出器22は、SIN信号(または相関積分器21の出力)およびCOS信号(または相関積分器20の出力)を用いて上式より位相差を検出し、検出信号との位相差が0となるように、または位相差の絶対値がより小さくなるように、加算位相値を変更する。
【0040】
さらにフィードバックが正しいかどうかは、相関振幅情報を用いて確認できる。相関振幅は、SIN成分の自乗とCOS成分の自乗との和の平方根を取ったものであり、これは相関積分器20および21の出力を用いて次のように表せる。
相関振幅 = √{(相関積分器21の出力)+(相関積分器20の出力)
フィードバックが正しければ、相関振幅は大きくなる。
【0041】
ここで、たとえばSIN信号およびCOS信号と検出信号との位相差が0となった場合には、読み出し信号のピーク周波数と、センサ出力信号のピーク周波数とが一致することになり、SNRの高い信号検出(共振周波数の読み出し)を実現することができる。
【0042】
このように、本発明の実施の形態1に係る共振周波数読み出し装置100および共振周波数読み出し方法によれば、検出信号に応じて加算位相値をフィードバックし、読み出し信号の周波数を変動させる。このため、たとえば検出信号の周波数に一致するように読み出し信号の周波数を変更することができ、信号検出の精度を向上させることができる。また、検出信号の周波数が変化する場合には、これを追尾するように読み出し信号の周波数を変更し、信号検出の精度を向上させることができる。
【0043】
また、読み出し信号の周波数が可変なので、周波数分解能を高く維持したまま、周波数ダイナミックレンジを広くすることが可能である。
【0044】
また、実施の形態1において、検出信号におけるイメージ信号の抑制は、アナログ信号に基づいて動作するミキサ18ではなく、デジタル信号に基づいて動作する相関積分器20および21によって行うので、A/D変換は1つの信号のみについて行えば十分であり、A/D変換器19を複数設ける必要がない。
【0045】
また、実施の形態1では、フーリエ変換を用いないので、フーリエ変換に伴って発生する問題を回避することができる。たとえば、高感度の共振型センサは高い共振Q値(例えば超伝導共振器では10〜10程度)を持つ。このような高感度の共振型センサに対して、フーリエ変換を用いた従来の方式を適用すると、読み出し信号の周波数と、共振型センサ30における共振周波数の十分な一致をみるためには、比較的多点のフーリエ変換を行う必要がある。これは、読み出し信号の周波数分解能が逆フーリエ変換およびフーリエ変換の周波数分解能で決定されるためである。
【0046】
フーリエ変換の周波数分解能が十分でないと、読み出し信号が共振周波数レンジからずれてしまい(すなわち、読み出し信号の周波数が、無信号時における出力スペクトルの低振幅部分に該当してしまい)、測定精度が低くなる。高い周波数分解能を得るためにはフーリエ変換のポイント数を大きくする必要があるが、このためには、測定時間が長くなる、周波数ダイナミックレンジを広くすることが難しくなる、回路規模が大きくなる、等の問題が発生する。
【0047】
これに対し、実施の形態1に係る共振周波数読み出し装置100によれば、そのような問題を回避することができる。たとえば、相関積分器20および21において積分時間を長く設定することにより、構成を複雑にせずに周波数分解能を向上させることができる。
【0048】
実施の形態2.
実施の形態1では、単一のデジタル信号処理部110が設けられ、単一の共振型センサ30についてのみ共振周波数の読み出しを行った。実施の形態2は、実施の形態1において、複数のデジタル信号処理部を備え、複数の共振型センサについて並列的に共振周波数の読み出しを行うよう変更するものである。以下、実施の形態1との相違を説明する。
【0049】
図2に、本願の実施の形態2に係る共振周波数読み出し装置200を含む構成を示す。共振周波数読み出し装置200は、共振型センサの組31に関連して設けられる。共振型センサの組31は、複数の共振型センサを備える。たとえば、1本のライン上に、互いに共振周波数が異なる複数の共振型センサが接続されたものを用いることができる。または、複数のライン上に、それぞれ1つ以上の共振型センサが接続されたものを用いてもよく、その場合には、異なるライン上に、同一の共振周波数の共振型センサが接続されていてもよい。
【0050】
共振型センサの数はデジタル信号処理部の数に対応する。共振周波数読み出し装置200は、本明細書に記載される方法を実行することにより、共振型センサの組31に含まれる各共振型センサの共振周波数を読み出す。
【0051】
共振周波数読み出し装置200は、複数のデジタル信号処理部(図2の例ではデジタル信号処理部211〜213)を備える。各デジタル信号処理部は、図1のデジタル信号処理部110と同様の構成を備える。すなわち、各デジタル信号処理部は、SIN信号およびCOS信号を出力し、検出信号を受け取る。
【0052】
共振周波数読み出し装置200の各デジタル信号処理部は、それぞれ、共振型センサの1つに対応しており、各共振型センサの共振周波数を読み取るためのSIN信号およびCOS信号を生成する。これは、加算位相値を、各共振型センサについて(すなわち、各デジタル信号処理部について)個別の値とすることで実現可能である。たとえば、各デジタル信号処理部における加算位相値の初期値を、対応する共振型センサに応じて異なる値に定義しておいてもよい。また、これによって、SIN信号およびCOS信号も、各共振型センサについて(すなわち、各デジタル信号処理部について)個別の信号として生成されることになる。
【0053】
共振周波数読み出し装置200は、加算器40および41を備える。各加算器は、各デジタル信号処理部から入力される基準正弦波信号の、対応する成分を加算する。図2の例では、加算器40は、各デジタル信号処理部のSIN信号の総和を算出し、加算器41は、各デジタル信号処理部のCOS信号の総和を算出する。
【0054】
SIN信号の総和およびCOS信号の総和は、それぞれD/A変換器14および15に入力される。この入力に基づいて、実施の形態1と同様に読み出し信号が生成され、この読み出し信号に応じてセンサ出力信号および検出信号が取得される。このように、読み出し信号、センサ出力信号および検出信号は、共振型センサの組31に含まれるすべての共振型センサについて共通の信号である。
【0055】
ここで、実施の形態2において、読み出し信号は、複数の周波数成分を含むコム信号となる。また、この読み出し信号に応じて取得されるセンサ出力信号および検出信号も、複数の周波数成分を含むコム信号となる。なお、ここでいう「コム信号」とは、各成分の周波数間隔が一定であるものに限られない。
【0056】
A/D変換器19からの出力は、各デジタル信号処理部に入力され、各デジタル信号処理部の相関積分器20および21において実施の形態1と同様の処理が行われる。また、各デジタル信号処理部の位相振幅検出器22は、それぞれ装置出力信号を出力する。これによって、各共振型センサの共振周波数を同時に読み出すことができる。
【0057】
このように、本発明の実施の形態2に係る共振周波数読み出し装置200および共振周波数読み出し方法によれば、実施の形態1と同様に、検出信号に応じて加算位相値をフィードバックし、読み出し信号の周波数を変動させるので、検出信号の周波数に一致するように読み出し信号の周波数を変更し、信号検出の精度を向上させることができる。
【0058】
また、実施の形態2では、各共振型センサについて加算位相値を独立に処理するので、複数の共振型センサの共振周波数を同時に読み取ることを可能としながらも、各共振型センサについて独立に共振周波数変位の追尾が可能である。また、このため、各共振型センサの共振周波数を厳密に等間隔とする必要はなく、センサ設計上の制約が緩和できる。また、各共振型センサの共振周波数が設置環境等に応じて変動する場合にも対応可能である。
【0059】
また、実施の形態2でもフーリエ変換を用いないので、フーリエ変換に伴って発生する問題を回避することができる。とくに実施の形態2では複数のデジタル信号処理部を用いるので、この利点がより顕著なものとなる。多数の共振型センサの共振周波数を同時に読み出すためには信号処理の広帯域化が必要であり、たとえばより高周波のA/D変換処理が必要となる。一方で、検出精度を向上させるには高量子化ビットのA/D変換処理が必要となり、これらは両立困難な要件である。これに対して、実施の形態2では、実施の形態1と同様に積分時間を長く設定することにより検出精度を向上させることができるので、たとえばA/D変換処理の量子化ビット数を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、たとえば、高周波天文学分野や、FBGセンサ等を使用する分野への応用が可能である。
【符号の説明】
【0061】
100,200 共振周波数読み出し装置。
【要約】
【課題】信号検出の精度をより容易に向上させることができる、共振周波数読み出し方法および装置を提供する。
【解決手段】1つ以上の共振型センサを用いる、共振周波数読み出し方法は、2つの基準正弦波信号を生成するステップであって、2つの基準正弦波信号の位相は互いに直交し、2つの基準正弦波信号の周波数は、加算位相値に基づいて決定される、2つの基準正弦波信号を生成するステップと、2つの基準正弦波信号に基づいて読み出し信号を生成するステップと、読み出し信号を共振型センサに入力するステップと、共振型センサの検出信号を取得するステップと、2つの基準正弦波信号のそれぞれと、検出信号との相関値を取得するステップと、相関値に基づき、基準正弦波信号の一方と検出信号との位相差を取得するステップと、位相差に基づいて、加算位相値を決定するステップとを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4