【実施例】
【0033】
〔比較実験〕
本発明の実施形態に係る超音波処理装置1の最大の特徴は、使用する超音波の出力が低いことである。超音波処理装置1の出力を、市販されている従来型の超音波処理装置の数分の1から10分の1の出力とすることにより、生体試料である食材の細胞組織構造を破壊することなく、超音波洗浄・処理を実施することが可能となった。低出力である第1の実施形態の超音波処理装置1と、高出力である従来の超音波処理装置とを比較した。従来の超音波処理装置として、シャープ株式会社の卓上型超音波洗浄装置UT−205Sを用いた。比較実験1は、同じ周波数(40kHz)で同じ時間(3分)、鶏肉を超音波処理した場合には、超音波処理装置1では食感が良好であったが、従来の超音波処理装置では食感が劣化した。
【0034】
さらに比較実験2では、アルミ箔を金魚すくいのポイ(一対の環状枠)にはさんで、それぞれの処理槽の中央の水面直下にポイを配置し、同じ周波数(40kHz)で同じ時間(1分)、アルミ箔を超音波処理した。従来の超音波処理装置は、最大出力200Wに対して、50〜100%の範囲で出力が可変である。
【0035】
図14に、本発明及び従来の超音波処理装置による比較実験2の結果を示す。
図14(a)には、本発明の超音波処理装置1により超音波処理されたアルミ箔を示している。
図14(a)のアルミ箔は、破砕が生じていない。
図14(b)は、従来の超音波処理装置により出力(50%)で超音波処理されたアルミ箔を示している。
図14(c)は、従来の超音波処理装置1により出力(100%)で超音波処理されたアルミ箔を示している。従来の超音波処理装置は、最低出力(50%)においてもアルミ箔が破砕され開口部が生じている。このように従来の超音波処理機は、出力が高いため生体試料である食材の細胞組織構造を破壊する恐れがあることが分かる。従来の超音波処理機に比べて、本発明の超音波処理装置1は、細胞組織構造を破壊するおそれが低い。
【0036】
超音波処理により、処理水は加熱されその水温が上昇することから、温度上昇により品質の劣化が予想される食材の超音波処理の業務利用は不可能と考えられてきた。そこで、本発明の実施形態に係る超音波処理装置1において、清浄で低温の水道水を継続的に供給しながら超音波処理を実施する動作原理により、食材の温度上昇を防止しつつ超音波処理することが可能である。
図15に噴流の有無での超音波処理による温度変化の比較図を示す。白丸は、噴流を加えずに超音波処理した場合である。この場合は、処理槽の水温が処理時間に応じて上昇する(30分で8℃の上昇)。これに対して、黒丸は、噴流を加えた場合であり、温度は変化しないことが実証された。
【0037】
〔出力測定実験〕
第1の実施形態の噴流式の超音波処理装置1、及び従来の超音波処理装置UT−205Sについて、それぞれ超音波出力を測定した。超音波出力の測定には、新科産業有限会社製の超音波メーターSM1000を用いた。結論として、第1の実施形態の噴流式の超音波処理装置1の適切な超音波強度は、3〜12psiであり、従来の超音波処理装置の約1/3であった。
【0038】
処理籠がない状態では、第1の実施形態の超音波処理装置1と、従来の超音波処理装置の超音波強度はほぼ同じであった。超音波処理装置1に処理籠55をセットした場合、超音波強度が大きく減弱した。したがって、超音波処理装置1自体は通常の超音波処理装置と同等の出力を発揮しているが、洗濯槽53内に配置された処理籠55が超音波強度を下げていたと解釈できる。したがって、処理籠55は、底部にパンチングメタル55aを有するため噴流透過性超音波減衰体として作用している。なお、超音波処理装置1において、噴流を流しながら測定した場合に超音波強度が増大したるが、噴流によるアーティファクト(ノイズ等)であるものと考えられる。出力測定実験で使用した超音波メーターは、噴流がある場合に超音波強度を正確に測定できなかった。そこで、以後の議論では、処理籠あり、かつ噴流なしの条件で実験を行った。
【0039】
図16に、第1の実施形態の超音波処理装置1の処理槽53を上方から見た平面図を示す。
図16に示される丸数字は測定点を示している。処理槽53の水深2cm、7cm、11cmの底面に平行な平面において、各測定点の超音波強度を測定した。超音波振動子60の発生する超音波の周波数は54kHzとした。
【0040】
図17に、従来の超音波処理装置の処理槽53を上方から見た平面図を示す。
図17に示される丸数字は測定点を示している。従来の超音波処理装置の処理槽53の水深2cm、8cmの底面に平行な平面において、各測定点の超音波強度を測定した。超音波振動子60の発生する超音波の周波数は40kHzとした。
【0041】
図18に、各処理槽における測定値の平均と標準偏差を示す。第1の実施形態の超音波処理装置1の超音波強度は3~12psiであり、従来の超音波処理装置の約3分の1であった。なお、第1の実施形態の超音波処理装置1における測定点は75箇所(各水深毎に25ヶ所)、従来の超音波処理装置における測定点は50箇所(各水深毎に25ヶ所)とした。
【0042】
図19に、各処理槽における測定値のヒストグラムを示す。第1の実施形態の噴流式の超音波処理装置1においては、
図19(a)に示すように、アサリ、塩サバの処理処理のために必要最小限の超音波強度である5~8psiが主であり、細胞毒性を有するより強い超音波強度成分(20psiより大きい値)が少ない。これに対して、従来の超音波処理装置においては、
図19(b)の出力50%、
図19(c)の出力100%に示すように、第1の実施形態の噴流式の超音波処理装置1に比較して、5〜8psiの超音波強度の成分が少なく、より大きい強度の成分が多くなっている。
【0043】
表1に、アサリA、アサリB、及び塩サバについて、第1の実施形態の超音波処理装置1を用いて、各超音波強度毎に洗浄効果を評価した。アサリAとアサリBは異なる日に購入した。
【表1】
【0044】
表1から明らかなようにアサリの洗浄効果が発揮されるためには、好ましくは約5psi(4.8psi)以上の超音波強度が必要であることが分かる。塩サバの脱酸化脂質効果が発揮されるためには、好ましくは約4psi(3.64psi)以上の超音波強度が必要なことが分かる。第1の実施形態の超音波処理装置1では、アサリ、塩サバの洗浄処理のために必要最小限の強度である5〜8psiが主であり、細胞毒性を有するより高い強度成分(20psiより大きい値)が少ないことが判明した。
【0045】
これらを総合すると、適切な超音波強度の範囲は、約5psi以上、約20psi以下が好ましい。ただし、5psi以下の超音波強度をある程度(数十%程度)含んでいても、被処理物が噴流により撹拌されることが予想されるため、5psi〜20psiの成分を主に含む場合に適切に処理することができる。5psi〜20psiの成分を主に含む場合とは、水深2cm〜11cmにおいて等間隔に複数の点で測定した場合、5psi〜20psiの成分を好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上とすることができる。水深2cm〜11cmの範囲は、噴流及び超音波が被処理物に適切に作用する処理領域である。
【0046】
図20は、
図19と同じものであるが、より適切な超音波強度の区間I
1と、やや適切な超音波強度の区間I
2とを示す。区間I
1の強度は、5〜12psiであり、区間I
2の強度は、12〜20psiである。第1の実施形態の噴流式の超音波処理装置1においては、
図20(a)に示すように、区間I
1の成分数が63.3%あり、区間I
1の成分数及び区間I
2の成分数の合計が84.0%となる。これに対して、従来の超音波処理装置においては、
図20(b)の出力50%に示すように、区間I
1の成分数が26.0%あり、区間I
1の成分数及び区間I
2の成分数の合計が72.0%となり、第1の実施形態の噴流式の超音波処理装置1に比べて、区間I
2の成分数を多く含むことが分かる。また、従来の超音波処理装置においては、
図20(c)の出力100%に示すように、区間I
1の成分数が10.0%あり、区間I
1の成分数及び区間I
2の成分数の合計が40.0%となり、第1の実施形態の噴流式の超音波処理装置1に比べて、区間I
2の成分数を多く含み、さらに区間I
1の成分数及び区間I
2の成分数の合計が半分以下であるが分かる。
【0047】
図21に、各被処理物毎に、第1の実施形態の噴流式の超音波処理装置1を用いた実験から得られた適切な超音波強度を示す。アサリの処理には、5〜20psiの超音波強度が適切であり、塩サバの処理(酸化脂質除去)には、5〜20psiの超音波強度が適切であった。なお生きたメダカ胚及び生きたヒラマキガイの超音波処理では、5〜20psiの超音波強度を用いることができるが、5psi以下がより適切であり、5〜10psiがやや適切であり、10psi以上の超音波強度によって生体への傷害効果が誘起された。レタスの活性化には、5〜20psiの超音波強度を用いることができるが、10psi以上でやや適切となり、20psiに近いほど適切となった。
【0048】
従来の超音波処理装置では、噴流式に比較して5〜8psiの超音波強度の成分が少なく、超音波強度の分布が高い方に偏っている。今回の測定により、食品用の超音波処理装置として5〜15psiの超音波強度を主として出力する超音波処理装置を作製すればよいことが判明した。
【0049】
本発明の超音波処理装置1は、弱い出力の超音波を用いることにより、食材の品質を劣化させることなく超音波処理を行い、表面に付着する農薬、泥汚れ、放射能を除去することができる。具体的には次の通り効果が得られた。豚肉、鶏肉、魚肉(干物類含む)の表層に所在する脂肪を除去することにより、酸化脂質を選択的に除去して味見を改善するとともに、食する人間の健康負荷を低減し、健康増進の効果がある。豚肉、鶏肉、魚肉(干物類含む)の表層に所在する脂肪を除去することにより、脂肪分に溶解した可塑剤を除去して食する人間の健康負荷を低減し、健康増進の効果がある。生きている植物(野菜、果物)を超音波処理することにより、細胞内の自由水が結合水化して水分活性が低下し、新鮮な状態の食味としゃきしゃきした食感が復活するとともに、日持ちが改善される。巨視的にはしおれていた葉が再び伸展してみずみずしく活性化した見た目に変容する。洗米(米研ぎ)の時間を短縮(30分→10分)し、かつ炊きあがりがおいしくなる。超音波処理して炊飯したご飯は冷蔵保存しても食味が劣化しない。超音波処理した食材を用いて調理した食事は、自然と箸が進むようになった。
【0050】
〔洗浄実験〕
本発明の第1の実施形態に係る超音波処理装置1を用いて、各種生鮮食品または生体試料を洗浄した実験例を以下説明する。
【0051】
1.野菜・果物の洗浄
1−1 周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、サツマイモ、里芋、ジャガイモ、牛蒡、大根、ニンジン、コカブ、レンコン、タマネギ、ニンニク、ショウガの品質を劣化させることなく表面の泥汚れを除去できた。
【0052】
1−2 周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、小松菜、チンゲン菜、ホウレンソウ、春菊、白菜、キャベツ、レタス、サラダ菜、サンチェ、水菜、山東菜、大葉(青しそ)、パセリ、バジル、ルッコラ、ネギ、モロヘイヤ、アシタバ、クレソン、バジルの品質を劣化させることなく表面の泥汚れを除去できた。
【0053】
1−3 周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、カリフラワー、ブロッコリー、アスパラガス、ローズマリー、モヤシ、スプラウトの品質を劣化させることなく表面の泥汚れを除去できた。
【0054】
1−4 周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、ワカメ、アカモクの品質を劣化させることなく表面の泥汚れを除去できた。
【0055】
1−5 周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、大根のせん切り(刺身のつま)、キャベツのせん切りの品質を劣化させることなく表面の泥汚れを除去できた。
【0056】
1−6 周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、イチゴの品質を劣化させることなく表面の泥汚れを除去できた。
【0057】
1−7 周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、トマト、ミニトマト、プチトマト、ピーマン、キュウリ、ナスビ、カボチャ、ゴーヤ、インゲン豆、ソラマメ、エンドウ豆、枝豆の品質を劣化させることなく表面の泥汚れを除去できた。
【0058】
1−8 周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、リンゴ、ナシ、ミカン、レモン、ブドウ、キウイ、グレープフルーツ、バナナ、メロン、桃、ブルーベリー、アボガド、柿の品質を劣化させることなく表面の泥汚れを除去できた。
【0059】
1−9 周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、シイタケ、エノキダケ、エリンギ、マイタケ、シメジ、ナメタケの品質を劣化させることなく表面の泥汚れを除去できた。
【0060】
1−10 周波数28kHzの超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、ホウレンソウに散布した農薬(フェントエート)を、水洗いの103%増しの効率で洗浄できた。
【0061】
1−11 周波数28kHzの超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、チンゲン菜に散布した農薬(フェントエート)を、水洗いの2倍の効率で洗浄できた。
【0062】
1−12 周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、シイタケ、エノキダケ、モヤシの匂いが嫌みのないすがすがしい香りに変容した。
【0063】
1−13 周波数28kHzの超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、レタスの表面の雑菌を除去できた。
【0064】
2.野菜・果物類の味、日保ちへの効果
2−1 周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理と噴流を同時に10分間タマネギに実施することによって、超音波処理なしで食した直後に感じられていた辛味がなくなり、しばらくして辛味が感じられるようになった。裁断しタッパーに入れて冷蔵保存したところ、7日間以上味、食感が維持された。
【0065】
2−2 ニンジンを短冊状にカットして周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、一ヵ月間タッパーに入れて冷蔵保存することができた。
【0066】
2−3 キャベツを4分割し、芯をカットして重なり合った葉の隙間に水が行きわたるように、周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に10分間実施した後、サランラップ(登録商標)にくるんで冷蔵保存したところ、一ヵ月後にもみずみずしさは維持されていて、生でも問題なく食することができた。
【0067】
2−4 小松菜、チンゲン菜、ホウレンソウ、春菊、白菜、キャベツ、レタス、サラダ菜、サンチェ、水菜、山東菜、大葉(青しそ)、パセリ、バジル、ルッコラ、ネギ、モロヘイヤ、アシタバ、クレソン、バジルを周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理と噴流を同時に10分間実施したところ、葉のしおれた感がなくなり、しおれていた葉が大きく広がり、新鮮であった時の状態が復元され、新鮮であった時のようなしゃきしゃきした食感が感じられるようになった。
【0068】
2−5 小松菜、チンゲン菜、ホウレンソウ、小カブ、白菜、キャベツ、レタス、サラダ菜、サンチェ、水菜、山東菜、大葉(青しそ)、パセリを周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理と噴流を同時に10分間実施して葉のしなしな感がなくなり、新鮮であった時のようなしゃきしゃきした食感が感じられるようになったものを、暖房を利かせた室内にて保湿をしない状態で静置しても4時間以上その状態が維持された。
【0069】
2−6 小松菜、チンゲン菜、ホウレンソウ、春菊、白菜、キャベツ、レタス、水菜、山東菜を周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理と噴流を同時に10分間実施して葉のしなしな感がなくなり、新鮮であった時のようなしゃきしゃきした食感が感じられるようになったものを、乾燥しないようにタッパー等に入れて冷蔵庫の野菜庫にて保管すると、翌日もみずみずしさ、シャキシャキした食感が維持された。
【0070】
2−7 周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、モヤシが新鮮であった時のようなシャキシャキした食感が感じられるようになった。また、低価格のものによくみられる嫌味な匂いが消え、冷蔵庫内で一週間後でも問題なく食用に供することが可能なくらい日保ちがよくなった。
【0071】
2−8 周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、アスパラガスの先端の芽の部分が開いた。洗浄直後に、生で1本ずつ食したところ、超音波洗浄した方がより甘みが強く、風味が強い印象を持った。茹でて食したところ、超音波処理した方がより黄緑色で、よりきれいで、青臭さがなく、しなびた感じがなくなって、美味であった。
【0072】
2−9 周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、国内産のブロッコリーを超音波処理した後に茹でたところ、甘みが増したように感じられ、美味であった。中国産のブロッコリーの味に変化は生じなかった。
【0073】
2−10 周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、シイタケ、エリンギ、マイタケ、エノキダケのかさがふっくらとふくらみ、しなびた感じがなくなり、食感もみずみずしく、新鮮な感じであり、美味となった。また、シイタケのかさの下面の襞が真っ白にきれいになった。すえたような独特の香りがなくなりすっきりした香りになった。潤いを取り戻して、ふっくらした見た目になり、焼いて、および鍋物にして食したところ、美味であった。
【0074】
2−11 大根、牛蒡、蓮根、蒟蒻、人参、里芋、シイタケ、鶏肉を裁断した後に周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に10分間実施した後に煮物にしたところ、美味となった。超音波処理した具材を用いた煮物では、灰汁が少なく、すっきりした味わいとなった。また、大根、蒟蒻への味の浸透が早くなり、調理時間を短縮できた。
【0075】
2−12 周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、矢車草の日持ちが改善した。
【0076】
3. 野菜を活性化する効果
3−1 周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、噴流式超音波処理して8日間静置したところ、超音波処理していないモヤシ群は全て腐敗したのに対して、超音波処理したモヤシ群では発芽するものがあった。
【0077】
3−2 周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、1時間程度のうちにネギの芯部が突出した。数時間以上の時間経過によって芯部が突出することは通常であるが、超音波処理によりネギ内部の体積が急速に増加したものと解釈できる。
【0078】
3−3 周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に10分間実施することによって、ブドウ(福岡産)を超音波処理し、糖度計にて果汁の糖度を測定したところ、超音波処理後3時間の時点で糖度が上昇し、また糖度分布の分散が小さくなった。
【0079】
4. 洗米(米研ぎ)への効果
4−1 周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理と噴流を同時に5〜10分間実施すると、浸漬の時間がゼロであっても通常の炊飯器を用いて炊飯でき、美味になった。
【0080】
4−2 周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理と噴流を同時に5〜10分間実施して炊飯する場合、もち米と白米の割合が5:5以下であれば、浸漬の時間がゼロであっても通常の炊飯器を用いて炊飯でき、美味になった。
【0081】
4−3 余ったご飯を冷ご飯として食した場合も、すっきりした食感は維持され、美味であった。電子レンジを用いて加熱すると、嫌な匂いがなく炊きたてと同様の食味になった。
【0082】
5.肉類の超音波処理
5−1 豚肉(ロース、もも、バラ)、国産牛肉を周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に3分間実施して、肉野菜炒め、および鉄板焼きにして食したところ、冷凍肉の嫌な風味(臭み)が消失し、美味であった。食感には悪影響はなく、むしろやわらかくなって食感が向上したように思われた。通常は調理後時間が経つと肉の食感が堅くなるが、超音波処理した肉では調理後も肉が堅くなることがなかった。豚肉(トンカツ用、国産)を超音波処理(5分)したところ、小さな白色の懸濁物が大量に脂身より噴出した。処理後、豚肉の表面が水膨れした印象であった。また、肉が3割ほど大きくなった。トンカツにして食したところ、普通のトンカツよりもすっきりしたおいしさであり、調理の翌日も脂分が固くなることなくおいしく食することができた。超音波処理をした牛肉、豚肉では、調理後料理が冷めて煮汁表面に出現する白い油状のラード、あるいは調理した翌日に生じる白いラードの塊が発生せず、冷めてもすっきりした美味のままであった。
【0083】
5−2 オーストラリア産の冷凍牛肉スライスを周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に10分間実施して調理すると、風味がほぼ完全に失われ、嫌な不快な風味となって極めて不味となり、成形肉や牛脂注入肉などの加工肉を識別することができた。
【0084】
5−3 鶏肉(ムネ肉、モモ肉、骨付きモモ)周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に5分間実施して調理したところ、あっさりした食感と風味であって美味であった。チキンカツにして食したところ、通常のチキンカツよりもあっさりした食感と風味であり、強いて言えばすこし風味が物足りない心象であった。肉野菜炒め、鉄板焼き、煮物、焼き鳥に調理し食したところ、皮も大変やわらかくてやさしい食感となっており、大変美味であった。牛肉、豚肉と同様、調理後料理が冷めて煮汁表面に出現する白い油状のラード、あるいは調理した翌日に生じる白いラードの塊が発生せず、冷めてもすっきりした美味のままであり、臭みも発生しなかった。皮を塩味で焼き鳥にしたところ、通常の鳥皮のねちょねちょした食感と鳥の脂独特の臭みが消失し、すっきりした味と風味であり、美味となった。
【0085】
5−4 周波数28kHzの超音波処理と噴流を同時に5分間実施して調理したところ、フタル酸ジイソオクチル(商標名:Corflex880)という可塑剤を鶏肉より除去することができた。
【0086】
6. 魚肉の超音波処理
6−1 冷凍赤魚を周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に5分間実施した後に煮魚としたところ、発生した灰汁の量が明らかに少なく、煮汁が透明であり、煮ている際の湯気の香りに臭みがなかった。煮魚は冷凍とは思えないような美味であった。また、煮汁を分注して冷蔵庫に一晩静置したところ、大変驚くべきことに「煮こごり」が生じた。
【0087】
6−2 冷凍カレイ、冷凍銀タラを周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に5分間実施した後に煮魚としたところ、冷凍焼けのいやな風味が消失し、美味ではないものの普通に食することができた。
【0088】
6−3 冷凍ではないウマヅラハギを周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に5分間実施した後に煮魚としたところ美味であった。
【0089】
6−4 アユを周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に5分間実施した後に焼き魚として食したところ、生臭さが消失して美味であった。
【0090】
6−5 超音波処理によって、新鮮でない魚が有する嫌味な風味が消失するために、味付けが薄くて十分となり、味付けに用いる醤油、出し汁、みりん、砂糖、塩等の調味料の使用量が少なくなった。調味料の使用量を減らす節約効果に加えて、過剰な醤油の使用に起因する過剰な塩分摂取を防ぐことができた。
【0091】
6−6 三陸産のサバを周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に3分間実施した後に煮たところ、美味であった。煮汁は透明であり、「煮こごり」が生じた。
【0092】
6−7 冷凍イカ、解凍イカ(スルメイカ、ヤリイカ、ケンサキイカ、ヒイカ)を周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に3分間実施した後に煮物に調理したところ、生臭さが消失し、美味となった。イカの風味は失われなかった。煮汁が不透明化しないことが特徴であった。
【0093】
6−8 国産マダコ(刺身用)を周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に3分間実施した後に刺身および煮物としたところ、臭みがなくなり美味となった。モーリタニア産マダコ(刺身用)を周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に3分間実施した後に刺身および煮物としたところ、味と風味がほぼ完全に消失し無味となった。国産と海外産解凍品を判別する手法として用いることができた。
【0094】
6−9 チリ産冷凍シャケを周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に1分間実施した後に、焼いて食したところ、美味であった。超音波洗浄開始直後に、皮下の脂身の部分より白い懸濁物が大量に噴出した。超音波処理を5分間行ったところ、ほぼ完全に風味が失われて、不味であった。
【0095】
6−10 1%食塩水を満たしてハマチの刺身に周波数40kHzの超音波処理を3分間実施したところ、少々塩辛くなったが、臭みが消失し美味となった。また、ハマチの刺身を周波数40kHzの超音波処理と水道水の噴流を同時に3分間実施したところ、ハマチの臭みが消失したが、水っぽさが強くなり美味ではなかった。ハマチの刺身を1%塩水の中で噴流がない状態で周波数40kHzの超音波処理を3分間実施したところ、ハマチの臭みが消失したが、塩辛くなりそのままでは不味であった。
【0096】
6−11 鯛のアラ(頭部、腹壁、背骨、尾ひれほか)の鱗を除去した後に周波数40kHzの超音波処理と噴流を同時に5分間実施した後にアラ煮としたところ、美味であった。煮汁は透明であり、「煮こごり」が生じた。
【0097】
7 魚の干物のの超音波処理
7−1 サンマの開き、アジの開き、本ホッケの開き、縞ホッケの開き、カマスの開き、赤魚の干物、ヒメタラの干物、コマイの干物、シシャモの干物、カレイの干物を周波数40kHzの超音波処理を3分間実施して食したたところ、臭みが消失して風味は残り、美味であった。
【0098】
7−2 サンマの開きを周波数28kHzの超音波処理を3分間実施したところ、サンマの開きの表面に存在する雑菌類が約10分の1に減少した。
【0099】
7−3 塩サバ(干物、冷凍、ノルウェー産)を周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理を3分間実施した後に、焼いて食したところ、美味であった。食後にゲップをしても嫌な臭いがしない、胸焼けがしないのが特徴であった。
【0100】
7−4 塩サバ(干物、冷凍、ノルウェー産)を周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理を2〜3分間実施したところ、黄色く着色した脂分、臭みのある匂い、冷凍焼けの匂いが消失し、爽やかなサバ本来の風味に変化した。
【0101】
7−5 塩サバ(干物、冷凍、ノルウェー産)を周波数28kHzの超音波処理を2〜3分間実施したところ、可塑剤が除去された。
【0102】
8. 2枚貝の超音波洗浄
8−1 活きたアサリを周波数周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理を10分間実施した後に、アサリの殻表面の微細な汚れ(バイオフィルムが死滅腐敗したもの)が除去され、洗浄後のアサリの肉質に悪影響はなく、すっきりとした味わいとなって美味となった。洗浄後のアサリを家庭用冷凍庫にて冷凍保存することも可能であった。
【0103】
8−2 活きたシジミを周波数40kHz(もしくは28kHz)の超音波処理を10分間実施した後に、シジミの殻表面の微細な汚れ(バイオフィルムが死滅腐敗したもの)が除去され、洗浄後のシジミの肉質に悪影響はなく、すっきりとした味わいとなって美味となった。洗浄後のアサリを家庭用冷凍庫にて冷凍保存することも可能であった。
【0104】
8−3 活きたホッキ貝を周波数40kHzの超音波処理を10分間実施した後に、シジミの殻表面の微細な汚れ(バイオフィルムが死滅腐敗したもの)が除去され、洗浄後のホッキ貝の肉質に悪影響はなく、すっきりとした味わいとなって美味となった。
【0105】
8−4 ホタテの冷凍むき身を周波数40kHzの超音波処理を10分間実施したところ、生臭い嫌な匂いが消失し、鉄板焼きにて食すと臭くなくすっきりしたホタテの香りと風味が感じられ、美味となった。