(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記環境認識部と、前記仕様生成部と、前記ソフトウェア無線プラットフォーム部とを含んで構成される無線機本体を備えるとともに、前記無線機本体に前記ソフトウェア生成部を内蔵することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項に記載の無線通信装置。
前記環境認識部と、前記仕様生成部と、前記ソフトウェア無線プラットフォーム部とを含んで構成される無線機本体を備えるとともに、前記無線機本体の外部に前記ソフトウェア生成部を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項に記載の無線通信装置。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信装置として、ハードウェア部とソフトウェア部とを備えたものが広く普及している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図20に示すように、この無線通信装置100では、ハードウェア部101としては、例えば、増幅器102と、ミキサ103と、シンセサイザ104と、ディジタル/アナログ変換器105と、アナログ/ディジタル変換器106と、ASIC107と、FPGA(Field Programmable Gate Allay)108と、DSP(Digital Signal Processor)109と、I/O110等のデバイスと、各デバイスに接続されたCPU111とを備えている。
【0004】
また、ソフトウェア部112としては、例えば、上述した各デバイスに対応するデバイスドライバ113と、オペレーティングシステム114と、ライブラリ115と、ライブラリ115に実装されたプログラムおよび制御コマンドを管理するライブラリ管理部116と、分配された機能に従って個々のデバイス用のプログラムおよびコマンドを生成するプログラム生成部117と、個々のデバイスに対して無線機能を分配する機能分配部118と、アプリケーションプログラム119とを備えている。
【0005】
アプリケーションプログラム119は無線通信装置100の動作が記述されたプログラムであり、仕様、機能、実現に関する定義、制約条件(消費電力上限、処理時間上限)等が記述されている。
【0006】
プログラム生成部117は、アプリケーションプログラム119に記述された無線機能の定義および制約条件に従って、無線通信を実現するためのFPGA108のHDLプログラムと、各デバイスの個々の機能を制御するためのコマンドと、DSPやCPU111のプログラムとを生成する。さらに、プログラム生成部117では、アプリケーションプログラム119で定義された各機能の各デバイスに対する振り分けを決定する。
【0007】
プログラム生成部117は、機能分配部の割り当て結果に基づいてライブラリ115を参照して、その時点で最適なプログラムを生成する。すなわち、プログラム生成部117は、最適なプログラムをライブラリ115から読み出して、必要なデバイスに割り当てる。
【0008】
さらに、機能分配部118を外部から制御可能な外部制御部と、無線通信装置の外部および内部の通信環境状態を評価する評価部とを備えている。そして、評価部の結果を機能分配部およびプログラム生成部117が利用するようになっている。これにより、無線通信装置100は、時系列的に変化する通信環境に動的に対応可能となっている。
【0009】
このように、従来の無線通信装置100では、通信環境の変化に対して所謂ハードウェアオリエンティッドであり、まずハードウェアの選択や変更があり、それに対応してソフトウェアの割り当て、すなわちソフトウェア生成があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述のような無線通信装置100の構成にあっては、プログラム生成部117は決められた内容に従ってライブラリ115からプログラムを選択して各デバイスに割り当てているが、通信環境の変化に応じた最適性を十分に考慮してプログラムを生成しているとはいえない。上述の無線通信装置100では、例えば性能および演算量は複数のアルゴリズムの組合せにより変化するものであるが、その最適な妥当な点を探索するようにはなっていない。このため、電波環境や無線通信装置の状態の変化に対しても予め決められた対応しかできないという問題があった。
【0012】
例えば、符号誤り率(BER:Bit error rate)を改善するために、周波数同期機能と、通信路等化機能と、誤り訂正機能等との複数の組合せの中に性能と演算量の最適なものが存在するはずである。しかしながら、上述した無線通信装置100では、そのような性能と演算量のバランスが最適となるものを探索するようにはなっていないという問題があった。
【0013】
また、上述の無線通信装置100は、選択されたハードウェアに対してソフトウェアをマッピングするハードウェアオリエンティッドであり、ハードウェアに依存する割合も多くなっている。このため、ハードウェアに依存する割合を少なくして汎用性を高めるために、与えられた条件下で性能を満たすソフトウェアを生成し、これをハードウェアに割り付けるソフトウェアオリエンティッドな構成が望まれている。
【0014】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、通信環境の変化に対応した最適なソフトウェアを自律的に生成可能で、ハードウェアへの依存を大きく減らすことができる無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る無線通信装置は、上記目的達成のため、(1)外部および内部の環境を認識する環境認識部と、前記環境認識部により認識した前記環境を仕様に変換する仕様生成部と、前記仕様生成部により生成された前記仕様を参照して最適化されたソフトウェアを生成するソフトウェア生成部と、前記ソフトウェア生成部から出力される前記ソフトウェアを実行するソフトウェア無線プラットフォーム部とを備えることを特徴とする。
【0016】
これにより、環境認識部が、電波利用状態、ユーザ通信内容、無線機の状態等の無線通信装置の外部および内部の環境を認識する。そして、仕様生成部が、環境認識部により認識された環境を機能仕様、性能仕様、制約条件等の仕様に変換する。ソフトウェア生成部は、仕様生成部により生成された仕様に基づいて、性能や演算量等を最適化したソフトウェアを生成する。ソフトウェア無線プラットフォーム部は、ソフトウェア生成部により生成されたソフトウェアを実行する。
【0017】
このように、無線通信環境に適応して、ソフトウェアを都度生成するので、現状に対する最適なソフトウェアを用いて動作する無線通信装置を実現することができる。これにより、電波状況に適合した適切な周波数あるいは帯域の通信を行うことによる電波資源の有効利用や、無線通信装置のマルチモード化、無線通信装置のバッテリ残量に応じた省電力化等を実現できる。
【0018】
一般に無線通信装置では、電波環境、位置、ユーザ要求等の環境によって、必要とされる性能が異なるが、無線通信装置のリソースは一定である。様々な環境にも適応できるようなソフトウェアを最初から用意すると、無線通信装置において必要とされる無線通信装置のリソースが大きくなり、回路規模や消費電力が大きくなってしまう。
【0019】
これに対し、本発明に係る無線通信装置では、外部および内部の環境を認識し、その環境に適し、かつ現状の無線通信装置のリソースに収まるよう性能と演算量等を最適化する。これにより、限られたリソースを最大限に利用できる無線通信装置を実現できる。
【0020】
上記(1)に記載の無線通信装置においては、(2)前記ソフトウェア生成部は、前記仕様から最適化された汎用ソフトウェアモデルを生成するモデルジェネレータ部と、前記モデルジェネレータ部により生成された前記汎用ソフトウェアモデルを前記ソフトウェア無線プラットフォーム部で動作する形式に変換するモデル変換部とを備えることが好ましい。
【0021】
モデルジェネレータ部が、仕様生成部で生成された仕様から最適化された汎用ソフトウェアモデルを生成する。そして、モデル変換部が、モデルジェネレータ部により生成された汎用ソフトウェアモデルをソフトウェア無線プラットフォーム部で動作する形式に変換する。
【0022】
このように、この無線通信装置では、モデルジェネレータ部とソフトウェア無線プラットフォーム部との間にモデル変換部が介在されている。このため、モデルジェネレータ部で生成された汎用ソフトウェアモデルがソフトウェア無線プラットフォーム部のプラットフォームと形式の違いにより直接使用できない場合であっても、モデル変換部の変換により使用できるようになる。
【0023】
上記(2)に記載の無線通信装置においては、(3)前記モデルジェネレータ部は、機能要素情報、接続情報および設計上のノウハウ情報を有する知識データベースと、前記仕様生成部で生成された前記仕様に基づき、前記知識データベースを参照して無線機ソフトウェアを構築する無線機ソフトウェアモデル構築部と、前記知識データベースを参照して前記無線機ソフトウェアを最適化して、前記汎用ソフトウェアモデルを生成する最適性判定部とを備えることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、知識データベースに基づいて無線機ソフトウェアの最適化が行われるので、従来のように技術者の経験により無線機ソフトウェアを生成する場合に比べて、最適化の客観性を高めて高性能の無線機ソフトウェアを実現することができるようになる。
【0025】
上記(1)ないし(3)に記載の無線通信装置においては、(4)前記環境認識部と、前記仕様生成部と、前記ソフトウェア無線プラットフォーム部とを含んで構成される無線機本体を備えるとともに、前記無線機本体に前記ソフトウェア生成部を内蔵することが好ましい。
【0026】
この構成により、無線通信装置は、外部と通信を行うことなく単体の無線機本体のみで最適化されたソフトウェアを生成することができる。このため、外部と通信することなくソフトウェアを生成することができるので、不測の事態による通信エラー等の発生を考慮する必要が無く、ソフトウェア生成の確実性を高めることができる。
【0027】
上記(1)ないし(3)に記載の無線通信装置においては、(5)前記環境認識部と、前記仕様生成部と、前記ソフトウェア無線プラットフォーム部とを含んで構成される無線機本体を備えるとともに、前記無線機本体の外部に前記ソフトウェア生成部を備えることが好ましい。
【0028】
この構成により、無線機本体にソフトウェア生成部を設ける必要が無いので、無線機本体の構造を小型化かつ簡素化することができる。また、複数の無線機本体に対して1つのソフトウェア生成部を共用することができるので、無線通信システム全体の規模を小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、仕様生成部により生成された仕様から最適化されたソフトウェアを生成するソフトウェア生成部を備えているので、通信環境の変化に対応した最適なソフトウェアを自律的に生成可能で、ハードウェアへの依存を大きく減らすことができる無線通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の全体を機能別ブロックで示す概略図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る無線通信装置のソフトウェア部を示す概略図であり、(a)は最適ソフトウェア生成部の構成の詳細を記載しない場合、(b)は最適ソフトウェア生成部の構成の詳細を記載した場合をそれぞれ示す。
【
図3】本発明の実施の形態に係る無線通信装置のソフトウェア部を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る無線通信装置のモデルジェネレータ部を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る無線通信装置のモデルジェネレータ部およびモデル変換部を示す概略図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の機能要素リストの例を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の機能要素の接続順序を表す雛型リストの例を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の構成を階層状に示す概略図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る無線通信装置のモデルジェネレータにおけるモデル構成アルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の無線機ソフトウェアモデル構築部において、仕様から内容を解釈する例を示す説明図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の無線機ソフトウェアモデル構築部において、抽象機能モデルを生成する例を示す説明図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の変換部において、抽象機能モデルから実行機能モデルを生成する例を示す説明図である。
【
図13】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の無線機ソフトウェアモデル構築部において、知識データベースを利用して抽象機能モデルを生成する例を示す説明図である。
【
図14】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の最適性判定部において、抽象機能モデルから抽象改善モデルを生成する手順の一例を示す説明図である。
【
図15】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の最適性判定部において、機能補完およびパラメータ変更を行う場合の例を示す説明図である。
【
図16】本発明の他の実施の形態に係る無線通信装置の機能要素の接続順序を表す雛型リストの例を示す図である。
【
図17】本発明の他の実施の形態に係る無線通信装置の構成を階層状に示す概略図である。
【
図18】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の実施例を示す説明図であり、(a)は実施例1、(b)は実施例2である。
【
図19】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の実施例を示す説明図であり、(a)は環境変化前の実施例1、(b)は環境変化後の実施例1、(c)は環境変化後の実施例2である。
【
図20】従来の無線通信装置の構成を階層状に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の無線通信装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0032】
まず、本実施の形態に係る無線通信装置1の構成について説明する。
図1に示すように、無線通信装置1は、ソフトウェア部2とハードウェア部3とを備えている。これらソフトウェア部2とハードウェア部3とは、単一の無線機本体1aに収容されている。
【0033】
図1および
図2に示すように、ソフトウェア部2は、外部および内部の環境を認識する環境認識部4と、環境認識部4により認識した環境に対して最適化されたソフトウェアを生成する最適ソフトウェア生成部5と、最適ソフトウェア生成部5から出力されるソフトウェアを実行するソフトウェア無線プラットフォーム部6とを備えている。ソフトウェア部は、単一または複数のプロセッサ(またはFPGA、あるいはこれらの組合せ)7に内蔵されている。
【0034】
このプロセッサ7では、OS上等で、変復調等の無線機信号処理ソフトウェアを動作させるようになっている。プロセッサ7で動作される無線機信号処理ソフトウェアは、周波数変更等のアナログ系の各種制御も行うようになっている。
【0035】
環境認識部4は、電波環境、電波利用状態、ユーザ通信内容、無線機の状態等の無線通信装置1の外部および内部の環境を認識する。
【0036】
環境認識部4は、例えばユーザ要求として、通信内容がメール送信であるのか動画通信であるのか等を認識する。また、環境認識部4は、例えば無線機の状態として、無線機リソース空きやバッテリ残量を認識する。さらに、環境認識部4は、例えばスペクトル利用状況センシング結果から空き周波数を認識する(例えば、周波数範囲f1〜f2の間に空き周波数10MHzあり等)。また、環境認識部4は、例えば信号対ノイズ比(SNR:Signal to Noise Ratio)を測定して認識する(例えば、SNR=10dB等)。また、環境認識部4は、例えば干渉の状況を認識する(例えば、干渉は無し等)。
【0037】
図2(b)に示すように、最適ソフトウェア生成部5は、環境認識部4により認識した環境を仕様に変換する仕様生成部10と、仕様生成部10により生成された仕様から最適化されたソフトウェアを生成するソフトウェア生成部20とを備えている。さらに、ソフトウェア生成部20は、仕様から最適化された汎用ソフトウェアモデルを生成するモデルジェネレータ部30と、モデルジェネレータ部30により生成された汎用ソフトウェアモデルをソフトウェア無線プラットフォーム部6で動作する形式に変換するモデル変換部50とを備えている。
【0038】
図3に示すように、仕様生成部10は、ルールデータベース11を備えている。仕様生成部10は、環境認識部4により認識された環境を機能仕様、性能仕様、制約条件、環境条件等の仕様に変換するようになっている。仕様生成部10での変換は、単純に選択するのではなく、ルールデータベース11を利用して複数の可能性の組合せから認識結果、すなわち現状に最適な機能仕様、性能仕様、制約条件、環境条件等を生成するようになっている。
【0039】
機能仕様としては、必要帯域、通信周波数、変調方式、誤り訂正符号等がある(例えば、必要帯域=5MHz、通信周波数=f1〜f2の間のf4、変調方式=16QAM、誤り訂正符号=R1/2の畳込み符号等)。性能仕様としては、SNRに対するBER要求特性等がある(例えば、SNR=10dBでBER<10
−5等)。制約条件としては、無線通信装置1の状態(リソース空き、バッテリ残量等)、通信路条件(干渉状況、SNR等)がある。環境条件としては、電波強度、周波数状況、干渉状況等がある。
【0040】
図3〜
図5に示すように、モデルジェネレータ部30は、仕様生成部10で生成された仕様から最適化された汎用ソフトウェアモデルを生成するようになっている。モデルジェネレータ部30は、モデル生成用の知識データベース31と、設計上のノウハウ情報を含む他の知識データベースとしての性能改善データベース32とを備えている。知識データベース31は、機能要素データベース31a(
図10参照)と接続情報データベース31b(
図11参照)とを含んで構成されている。
【0041】
図6に示すように、機能要素データベース31aには、カテゴライズされた機能要素情報である機能要素リスト41が記録されている。ここでの機能要素は、無線機ソフトウェアにおける信号処理機能を表す要素であり、例えば、誤り訂正符号化(符号41a)、変調(符号41b)、歪補正、フィルタ等である。機能要素データベース31aの機能要素リスト41では、各機能要素に入出力定義やパラメータ定義等が付随されている。
【0042】
図7に示すように、接続情報データベース31bには、機能要素データベース31aにカテゴライズされて記録された機能要素の接続順序を表す接続の雛型リスト42が記録されている。ここでの接続順序の雛型は、例えば、図示するように、誤り訂正符号化→変調→フィルタ(符号42a)、あるいは誤り訂正符号化→変調→歪補正→フィルタ(符号42b)のような接続順序をそのまま雛型としたものである。
【0043】
図3〜
図5に示すように、モデルジェネレータ部30は、無線機ソフトウェアモデル構築部34と、最適性判定部35と、仮想実行部36とを備えている。
【0044】
無線機ソフトウェアモデル構築部34は、仕様生成部10で生成された機能仕様に基づき、知識データベース31を参照して無線機ソフトウェアモデルの原形である抽象機能モデル43を構築する。抽象機能モデル43は、送信抽象機能モデル43aと受信抽象機能モデル43bとを備えている(
図11参照)。
【0045】
最適性判定部35は、性能仕様、制約条件、環境条件、後述する仮想実行部36の検証結果に基づき、性能改善データベース32を参照して無線機ソフトウェアモデルとしての抽象機能モデル43を最適化して、無線機ソフトウェアモデルとしての抽象改善モデル45を生成する。最適性判定部35では、性能改善データベース32を参照しながら抽象機能モデル43に対して機能追加を適宜行い、また各機能のパラメータ調整を行うことで新たな抽象機能モデル43を生成し、性能仕様、制約条件等に基づく評価関数を利用して複数の可能性の中から最適性の判定を行い、最適な抽象機能モデル(抽象改善モデル45)を絞り込む(最適化)。この最適化における評価関数には各機能の組合せが無線機の演算リソースに収まること等(演算量最小化等)の要件が反映される。すなわち、例えば、通信路条件、無線機リソース、バッテリ残量を考慮して複数のアルゴリズムから制約条件を満たしつつ最適となる機能構成の組合せとパラメータが生成される。
【0046】
また、モデルジェネレータ部30は、抽象機能モデル43を仮想実行環境に合わせた実行機能モデル44に変換する変換部37と、変換に必要な情報を記憶した実行検証用データベース38とを備えている。実行検証用データベース38は、実行環境データベース38aおよび実行環境構文データベース38bを備えている(
図12参照)。
【0047】
抽象機能モデル43は、変換部37により実行検証用データベース38を参照して仮想実行環境に合わせた実行機能モデル44に変換される。抽象改善モデル45は、変換部37により実行検証用データベース38を参照して仮想実行環境に合わせた実行改善モデル46に変換される。
【0048】
仮想実行部36は、機能検証部36aと性能検証部36bとを備えている。機能検証部36aは、実行機能モデル44が仮想実行環境上で正しい機能を有して作動するかシミュレートして検証する。性能検証部36bは、実行改善モデル46が仮想実行環境上で各種性能を満たすかシミュレートして検証する。これらの検証結果は、最適性判定部35に伝達されて、最適性判定部35における抽象改善モデル45の生成に反映される。
【0049】
また、モデルジェネレータ部30は、最適性判定部35より生成される複数の抽象改善モデル45から選択ポリシーに基づいて最適モデルを選択し、抽象最適モデル47を生成する最適モデル選択部39を備えている。ここでの選択ポリシーは、例えば、回路規模の小さいことを優先する、回路規模よりも性能を優先する、といったモデルを選択するための基準である。
【0050】
モデル変換部50は、モデルジェネレータ部30により生成された汎用ソフトウェアモデル(抽象最適モデル)47をソフトウェア無線プラットフォーム部6で動作する形式に変換するようになっている。モデル変換部50は、無線機ソフトウェアモデルの各機能を無線機プラットフォーム内のプロセッサ(あるいはFPGA)7に割り当て、各デバイスの実行形式への変換(モデルのコンパイル、あるいはコンパイル済みの機能コンポーネントのリンク)を実施する。
【0051】
モデル変換部50は、変換部51と、変換データベース52と、コンパイラ53とを備えている。変換部51は、変換データベース52を参照して、例えば、速度制約から誤り訂正復号をFPGAに割り当て、残りはプロセッサ上のソフトウェアとして実装するよう決定し、実行用ソース54を生成する。コンパイラ53は、実行用ソース54に対してそれぞれデバイス用のライブラリを用いてコンパイルを実施し、実行用オブジェクト55を生成する。
【0052】
さらに、モデル変換部50は、実行用オブジェクト55を無線機プラットフォームのプロセッサとFPGAにロードすることで無線機ソフトウェアを実行する。モデル変換部50は、実行用オブジェクト55を無線機プラットフォームのプロセッサ(あるいはFPGA)7にロードすることで無線機ソフトウェアを実行するようになっている。
【0053】
一方、
図1に示すように、ハードウェア部3は、送信部70と、受信部80と、共通部90とを備えている。送信部70は、ディジタル/アナログ変換器71と、各種デバイスである送信用中間周波(IF:Intermediate Frequency)変換・増幅器72と、送信用高周波(RF:Radio Frequency)変換・増幅器73、電力増幅器(PA:Power Amplifier)74とを備えている。受信部80は、アナログ/ディジタル変換器81と、各種デバイスである受信用中間周波変換・増幅器82と、受信用高周波変換・増幅器83、低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)84とを備えている。共通部90は、アンテナ共用器91と、アンテナ92とを備えている。
【0054】
ハードウェア部3の各構成要素については、公知または新規のものを適用することができるので、詳細な説明を省略する。
【0055】
図8に示すように、この無線通信装置1では、無線機本体1aであるハードウェアプラットフォームにプロセッサ7を搭載し、このプロセッサ7においてソフトウェア部2を全て実行するようになっている。
【0056】
次に、無線通信装置1の作用について以下に説明する。
【0057】
環境認識部4により電波環境、電波利用状態、ユーザ通信内容、無線機の状態等の無線通信装置1の外部および内部の環境が認識され、無線機ソフトウェアを変更する必要が生じたときは、仕様生成部10により、環境認識部4で認識された環境が機能仕様、性能仕様、制約条件、環境条件等の仕様に変換される。
【0058】
以下、仕様生成部10で生成された仕様から抽象機能モデル43および実行機能モデル44を生成する手順、すなわちモデル構成アルゴリズムを、
図9のフローチャートにおよび
図10〜
図13の説明図に基づいて説明する。
【0059】
プロセッサ7は、無線機ソフトウェアモデル構築部34において、与えられた仕様の具体的内容を解釈する(ステップS1)。例えば、
図10に示すように、仕様として生成された図示するXMLファイルの場合、機能要素データベース31aを参照して、畳込み符号化、QPSK変調、RRCフィルタという内容を読み取り、これに対する機能要素を機能要素データベース31aから抽出することができる。
【0060】
次に、プロセッサ7は、無線機ソフトウェアモデル構築部34において、送信抽象機能モデル43aを構成する(ステップS2)。これは、仕様から読み取られた機能構成に対して、接続情報データベース31bを参照して、順番を設定することで送信抽象機能モデル43aを構成する。
【0061】
ここで、
図13に示す例では、接続情報データベース31bに記録された雛型リスト42のうちで誤り訂正符号化→変調→フィルタという雛型42aが選択されている。そこで、この雛型42aの各要素に対して、先に選択した機能要素データベース31aに記録された機能要素リスト41から機能要素を当てはめる。誤り訂正符号化がRS符号、変調が16QAMである場合の機能要素データベース31aに記録された機能要素リスト41の例を
図13に示す。
【0062】
次に、プロセッサ7は、無線機ソフトウェアモデル構築部34において、受信抽象機能モデル43bを構成する(ステップS3)。これは、仕様から読み取られた機能構成に対して、接続情報データベース31bを参照して、順番を設定することで受信抽象機能モデル43bを構成する。具体的な手順としては、送信抽象機能モデル43aを構成する場合と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0063】
さらに、プロセッサ7は、変換部37において、実行検証用データベース38を参照して抽象機能モデル43を仮想実行環境に合わせた実行機能モデル44に変換する(ステップS4)。変換部37では、例えば、
図12に示すように、送信抽象機能モデル43aおよび受信抽象機能モデル43bに対して、実行環境データベース38aおよび実行環境構文データベース38bを参照して変換し、実行機能モデル44を生成する。
【0064】
生成された実行機能モデル44は、機能検証部36aにおいて機能検証が行われる。
【0065】
次に、抽象機能モデル43を最適化して抽象改善モデル45を生成する手順、すなわちモデル最適化アルゴリズムを、
図14に基づいて説明する。
【0066】
プロセッサ7は、最適性判定部35に抽象機能モデル43と、性能仕様と、制約条件と、環境条件等を入力する(ステップS10)。プロセッサ7は、最適性判定部35において、入力された性能仕様と、制約条件と、環境条件等に対して評価すべき性能項目および性能項目に対応する劣化要素を抽出する(ステップS11)。これにより、性能に対する劣化要素を考慮した性能評価系が構築される。
【0067】
そして、プロセッサ7は、最適性判定部35において、基本性能の評価を行う(ステップS12)。ここでは改善要素は無い。さらに、プロセッサ7は、最適性判定部35において、機能(性能改善要素)の補完および各機能のパラメータ調整を行って抽象改善モデル45を生成し、仮想実行環境36上で実行改善モデル46を含む性能評価系を動作させ、性能仕様、制約条件等に基づく評価関数を用いて静的性能の評価(ステップS13)と動的性能の評価(ステップS14)を行う。また、これらの機能補完および各機能のパラメータ調整は、性能改善データベース32を参照して行われる。
【0068】
ここで、機能補完およびパラメータ変更の例として、
図15に示すように、例えば最初に雛型42cがあった場合、性能改善データベース32を参照して、等化(符号41c)および周波数同期(符号41d)の機能要素を追加して、各パラメータを調整するようにできる。
【0069】
また、プロセッサ7は、ステップS14の実行後、性能改善要素ごとにステップS13に戻り、また、性能項目ごとにステップS11に戻ってループ処理を行う。すなわち、個々の性能項目を順次評価するようにしている。
【0070】
そして、プロセッサ7は、ステップS14までの評価で評価関数を満たす性能改善要素を性能改善候補として記憶する。記憶された性能改善候補の組合せに対して評価関数を用いた結合総合評価を行う(ステップS15)。さらに、プロセッサ7は、最適性判定部35において演算量の評価を行い(ステップS16)、単一あるいは複数の抽象改善モデル45が生成される。
【0071】
同時に、プロセッサ7は、抽象機能モデル43と、性能仕様と、制約条件と、環境条件等を利用して、仮想実行環境36上に上述した性能改善データベース32を参照して行われる機能補完およびパラメータ変更の結果が反映された実行改善モデル46を含む性能評価系を構築する。この性能評価系における実行改善モデル46が、ステップS13とステップS14での性能評価とステップS16の演算量の評価において参照される。
【0072】
ステップS13、ステップS14、およびステップS15において機能補完およびパラメータ調整されたモデルは、変換部37により実行検証用データベース38を参照して実行改善モデル46に変換されて、前述の性能評価系に組み込まれ、性能検証部36bにおいて性能検証が行われる。その結果は、最適性判定部35に伝達されてステップS13およびステップS14における機能補完、パラメータ調整に反映される。
【0073】
また、抽象改善モデル45からは、最適モデル選択部39により、選択ポリシーに基づいて最適モデルが選択され、抽象最適モデル47とされる。これにより、モデルジェネレータ部30から抽象最適モデル47が出力される。
【0074】
さらに、モデル変換部50において、変換部51が、変換データベース52を参照して、例えば、速度制約から誤り訂正復号をFPGAに割り当て、残りはプロセッサ上のソフトウェアとして実装するよう決定し、実行用ソース54を生成する。そして、コンパイラ53が、実行用ソース54に対してそれぞれデバイス用のライブラリを用いてコンパイルを実施し、実行用オブジェクト55を生成する。
【0075】
実行用オブジェクト55は、ソフトウェア無線プラットフォーム部6に入力されて実行され、無線通信装置1が動作される。
【0076】
以上のように、本実施の形態に係る無線通信装置1によれば、仕様生成部10により生成された仕様から最適化されたソフトウェアを生成するソフトウェア生成部20を備えているので、通信環境の変化に対応した最適なソフトウェアを自律的に生成可能で、ハードウェアへの依存を大きく減らすことができる無線通信装置1を得ることができる。
【0077】
また、無線通信環境に適応して、ソフトウェアを都度生成するので、現状に対して最適なソフトウェアを用いて動作する無線通信装置1を実現することができる。これにより、電波状況に適合した適切な周波数あるいは帯域の通信を行うことによる電波資源の有効利用や、無線通信装置1のマルチモード化、無線通信装置1のバッテリ残量に応じた省電力化等を実現できる。
【0078】
一般に無線通信装置1では、電波環境、位置、ユーザ要求等の環境によって、必要とされる性能が異なるが、無線通信装置1のリソースは一定である。様々な環境にも適応できるようなソフトウェアを最初から用意すると、無線通信装置1において必要とされる無線通信装置1のリソースが大きくなり、回路規模や消費電力が大きくなってしまう。
【0079】
これに対し、本実施の形態に係る無線通信装置1では、外部および内部の環境を認識し、その環境に適し、かつ現状の無線通信装置1のリソースに収まるよう性能と演算量等を最適化する。これにより、限られたリソースを最大限に利用できる無線通信装置1を実現できる。
【0080】
また、本実施の形態の無線通信装置1によれば、モデルジェネレータ部30とソフトウェア無線プラットフォーム部6との間にモデル変換部50が介在されている。このため、モデルジェネレータ部30で生成された汎用ソフトウェアモデル(抽象最適モデル47)がソフトウェア無線プラットフォーム部6のプラットフォームと形式の違いにより直接使用できない場合であっても、モデル変換部50の変換により使用できるようになる。
【0081】
また、本実施の形態の無線通信装置1によれば、知識データベース31および性能改善データベース32に基づいて無線機ソフトウェアの最適化が行われるので、従来のように技術者の経験により無線機ソフトウェアを生成する場合に比べて、最適化の客観性を高めて高性能の無線機ソフトウェアを実現することができるようになる。
【0082】
また、本実施の形態の無線通信装置1によれば、
図2(b)に示すように、無線機本体1aに環境認識部4と、最適ソフトウェア生成部5と、ソフトウェア無線プラットフォーム部6とを含んでいるので、無線通信装置1は外部と通信を行うことなく単体の無線機本体1aのみで最適化されたソフトウェアを生成することができる。このため、外部と通信することなくソフトウェアを生成することができるので、不測の事態による通信エラー等の発生を考慮する必要が無く、ソフトウェア生成の確実性を高めることができる。
【0083】
上述した本実施の形態の無線通信装置1においては、プロセッサ7は最適性判定部35において機能の補完および性能検証が静的性能および動的性能についてなされると(ステップS13およびステップS14)、性能項目ごとにステップS11に戻ってループ処理を行うが、本発明に係る無線通信装置においては、これに限られず、例えば複数の性能項目を同時に、すなわち多次元的に評価することにより、ステップS11へのループ処理を不要にしてもよい。
【0084】
また、上述した本実施の形態の無線通信装置1においては、接続情報データベース31bには、機能要素データベース31aにカテゴライズされて記録された機能要素の接続順序を表す接続の雛型リスト42が記録されているが、本発明に係る無線通信装置においては、これに限られず、例えば「誤り訂正符号化は変調の前」等のように、接続の順序関係のリストで示すこともできる。
【0085】
また、上述した本実施の形態の無線通信装置1においては、モデル構成アルゴリズムとモデル最適化アルゴリズムとが明確に分離されているが、本発明に係る無線通信装置においては、これに限られず、例えばモデル構成アルゴリズムとモデル最適化アルゴリズムとが明確に分離されていなくてもよい。この場合、例えば、
図16に示すように、接続の雛型リスト42に性能改善要素を含め、このような接続の雛型リスト42を接続情報データベース31bに記録する。そして、機能要素データベース31a、接続情報データベース31b、および性能改善データベース32とを利用して、ソフトウェアの最適化を行うようにする。
【0086】
また、上述した本実施の形態の無線通信装置1においては、無線機本体1aに環境認識部4と、最適ソフトウェア生成部5と、ソフトウェア無線プラットフォーム部6とを含んでいるが、本発明に係る無線通信装置においては、これに限られず、例えば
図17に示すように、無線機本体1aの外部に最適ソフトウェア生成部5を備えるようにしてもよい。この場合、無線機本体1aに最適ソフトウェア生成部5を設ける必要が無いので、無線機本体1aの構造を小型化かつ簡素化することができる。また、複数の無線機本体1aに対して1つの最適ソフトウェア生成部5を共用することができるので、無線通信システム全体の規模を小さく抑えることができる。
【0087】
また、上述した本実施の形態の無線通信装置1においては、無線機本体1aに送信部70および受信部80の両方を備えているが、本発明に係る無線通信装置においては、これに限られず、送信部70あるいは受信部80の一方のみを備えるようにしてもよい。
【0088】
また、上述した本実施の形態の無線通信装置1においては、送信部70に送信用中間周波変換・増幅器72を備えるとともに、受信部80に受信用中間周波変換・増幅器82を備えているが、本発明に係る無線通信装置においては、これに限られず、例えばダイレクトコンバージョン方式の場合は、これら送信用中間周波変換・増幅器72および受信用中間周波変換・増幅器82の一方または両方は無くてもよい。
【0089】
また、上述した本実施の形態の無線通信装置1においては、コンパイラ53が実行用ソース54をコンパイルすることにより実行用オブジェクト55を生成するが、本発明に係る無線通信装置においては、これに限られず、例えばコンパイル済オブジェクトのリンクにより実行用オブジェクト55を生成するようにしてもよい。
【実施例】
【0090】
上述した無線通信装置1を利用して、外部の環境が変化した場合の動作の実施例を説明する。
【0091】
(実施例1)
図18(a)に示すように、機能仕様および性能仕様として、400MHz帯、BW=25kHz、QPSK、R=1/2CC、制約条件として、CNR=10dB以下、干渉無しである場合に、無線通信装置1のソフトウェア部2では、無線機モデルAが構成された。
【0092】
この場合、
図18(a)および
図19(a)に示すように、この無線機モデルAでは、BERとSNRに関する規格(図中、破線で示す。)を満たした。しかしながら、
図18(a)および
図19(b)に示すように、無線機モデルAでは、マルチパス条件下では規格を満たさなかった。
【0093】
(実施例2)
次いで、機能仕様および性能仕様は変更することなく、制約条件をCNR=10dB以下、マルチパスに変更した。
【0094】
この場合、
図18(b)および
図19(c)に示すように、無線通信装置1のソフトウェア部2では、無線機モデルBが構成された。この無線機モデルBでは、BERとSNRに関する規格を満たした。
したがって、環境認識部4および最適ソフトウェア生成部5の動作により、環境に応じて無線機モデルが変更されることにより、性能が改善されたことが確認された。
【0095】
以上説明したように、本発明に係る無線通信装置は、ハードウェアに変更を加えることなく、ソフトウェアを変更することによって、例えば、帯域幅、フィルタリング、変復調、符号化等といった無線の基本的な機能を変更することが可能なシステムであるソフトウェア無線に好適な無線通信装置全般に有用である。