(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
[蒸着フィルム]
本発明の蒸着フィルムは、
ポリビニルアルコール系重合体を含む基材フィルムと、
この基材フィルムに積層される金属蒸着層と
を備え、上記金属蒸着層の電子顕微鏡で測定される平均粒径が、150nm以下であることを特徴とする。
以下、基材フィルム、金属蒸着層の順に説明する。
【0009】
<基材フィルム>
上記基材フィルムに含まれるポリビニルアルコール系重合体は、ビニルエステル単独重合体、又はビニルエステルを40モル%以上含む他の単量体との共重合体を、アルカリ触媒等を用いてケン化して得られる。上記ビニルエステルとしては、酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)も使用できる。また、上記ポリビニルアルコール系重合体は、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、他の単量体、例えば、エチレン;プロピレン、ブチレン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸又はそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸又はその塩;N−ビニルピロリドン等のビニルピロリドン化合物などの1種又は複数種を共重合させたものでもよい。これらの中でも、共重合させる単量体としては、得られるポリビニルアルコール系重合体の溶融成形が容易となる観点から、エチレンが好ましい。上記他の単量体がエチレンの場合、上記ポリビニルアルコール系重合体を構成する全単位に対するエチレン単位の含有量としては、3モル%〜60モル%であり、10モル%〜60モル%が好ましく、20モル%〜55モル%がより好ましい。
上記基材フィルムに含まれるポリビニルアルコール系重合体の製造は公知の方法で行うことができる。製造の際に連鎖移動剤を使用してもよく、連鎖移動剤としては、例えば、アルキルチオール類等が挙げられる。
【0010】
また、上記ポリビニルアルコール系重合体のケン化度(ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の合計に対するビニルアルコール単位の割合(モル%))としては、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましい。ケン化度が90モル%未満だと、当該蒸着フィルムの高湿度下でのガスバリアー性が低下するおそれがある。ポリビニルアルコール系重合体がケン化度の異なる2種類以上のポリビニルアルコール系重合体を含む場合には、それぞれのポリビニルアルコール系重合体の含有質量比により算出される平均値をケン化度とする。上記ポリビニルアルコール系重合体のケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0011】
上記基材フィルムの20℃−65%RHで測定される酸素透過係数としては、50mL・20μm/m
2・day・atm以下が好ましく、10mL・20μm/m
2・day・atm以下がより好ましく、5mL・20μm/m
2・day・atm以下がさらに好ましく、1mL・20μm/m
2・day・atm以下が特に好ましい。酸素透過係数が上記上限以下であると、真空断熱体としたときにバリアーフィルムの厚みを薄くすることができ、コストも低減することができる。
ここで、「20℃−65%RH」とは、20℃において相対湿度65%であることを表し、「50mL・20μm/m
2・day・atm」とは、フィルム厚さ20μmに換算したときに、フィルム1m
2、酸素ガス1気圧の圧力差のもとで、1日当たり50mLの酸素が透過することを表す。
【0012】
上記基材フィルムの平均厚みとしては特に限定されないが、30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。また、上記平均厚みとしては、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。
【0013】
上記基材フィルムの製造方法としては特に限定されず、例えば、キャスト法が挙げられ、無延伸及び延伸のいずれであってもよい。フィルムの延伸方法としては、二軸延伸、一軸延伸及びインフレーションのいずれであってもよい。
【0014】
延伸を行う方法としては特に限定されず、同時延伸、逐次延伸のいずれの方式も可能である。延伸倍率としては、面積倍率として12倍以下が好ましく、11倍以下がより好ましい。また、延伸倍率としては、面積倍率として8倍以上が好ましく、9倍以上がより好ましい。面積倍率を8〜12倍とすることが、得られるフィルムの厚みの均一性、ガスバリアー性及び機械的強度の点から好ましい。面積倍率が8倍未満であると、延伸斑が残りやすくなることがあり、また12倍を超えると、延伸時にフィルムの破断が生じやすくなることがある。
【0015】
また、延伸前の原反に予め含水させておくことにより、連続延伸が容易となる。延伸前原反の水分率としては2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。延伸前原反の水分率としては30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。水分率が2質量%未満の場合、延伸斑が残りやすく、また特にテンターで延伸する場合、グリップに近い部分の延伸倍率が高くなるために、グリップ近辺での破れが生じやすくなることがある。一方、水分率が30質量%を超える場合、延伸された部分の弾性率が低く、未延伸部分との差が十分でなく、延伸斑が残り易くなることがある。
【0016】
延伸温度としては、延伸前の原反の水分率によって多少異なるが、一般に50℃〜130℃の範囲が用いられる。特に同時二軸延伸においては、70℃〜100℃の範囲において、厚み斑の少ない二軸延伸フィルムが得られ易く、逐次二軸延伸においては、ロールでの長手方向の延伸においては70℃〜100℃、テンターでの幅方向の延伸においては80℃〜120℃の温度範囲において、厚み斑の少ない二軸延伸フィルムが得られ易い。
【0017】
上記ポリビニルアルコール系重合体は、無機酸化物を含有してもよい。この無機酸化物としては特に限定されないが、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化モリブデン及びこれらの複合体等が用いられる。これらの無機酸化物の中では、酸化ケイ素、酸化ケイ素−酸化マグネシウムが好ましく、酸化ケイ素がより好ましい。
【0018】
上記無機酸化物の含有量としては、ポリビニルアルコール系重合体100質量%に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましい。また、無機酸化物の含有量としては、1質量%以下が好ましく、0.75質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。無機酸化物の含有量が1質量%を超えるとゲル、フィッシュアイ等が発生し易くなり、蒸着抜け等によりガスバリアー性が低下する場合がある。
【0019】
上記無機酸化物のレーザー回折散乱法で測定される平均粒子径としては、2μm以上が好ましく、2.5μm以上がより好ましい。また、酸化物の平均粒子径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3.5μm以下がさらに好ましい。無機酸化物の平均粒子径が10μmを超えると、ゲル、フィッシュアイ等が発生し易くなる。また、2μm未満であると、ガスバリアー性が低下する場合がある。無機酸化物の添加方法としては特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール系重合体の製造時に、水分散液として加えてから凝固浴で析出し乾燥させる方法、押出機等で溶融混練する方法、ドライブレンドする方法、マスターバッチを混合する方法等が挙げられる。
【0020】
また、上記ポリビニルアルコール系重合体には、本発明の目的を阻害しない範囲で、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、フィラー等をブレンドすることもできる。
【0021】
<金属蒸着層>
本発明の金属蒸着フィルムは、ポリビニルアルコール系重合体を含む基材フィルムに積層される金属蒸着層を有する。蒸着される金属としては、アルミニウムが、軽く、柔軟性及び光沢性に富むという利点を有するので好ましい。この金属蒸着層の平均粒径としては150nm以下であり、125nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、75nm以下がさらに好ましく。50nm以下が特に好ましい。また、上記金属蒸着層の平均粒径としては、下限は特に限定はないが、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましく、20nm以上がさらに好ましい。この金属蒸着層の粒径は、走査型電子顕微鏡等の電子顕微鏡で測定されるものであり、上記金属蒸着層が金属粒子で形成されている場合はこの金属粒子の粒子径を、金属粒塊で形成されている場合はこの粒塊を与える金属粒子の粒子径を意味する。また、金属蒸着層の平均粒径は、電子顕微鏡で観察される金属粒子等の同一方向についてのそれぞれの最大長さを個数平均したものを意味する。
【0022】
上記金属蒸着層の平均厚みとしては、100nm以下が好ましく、90nm以下がより好ましく、80nm以下がさらに好ましい。また、上記金属蒸着層の平均厚みとしては、15nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、30nm以上がさらに好ましい。平均厚みが100nmを超えると、真空断熱体においてヒートブリッジが発生し易くなり、断熱効果が低下するおそれがある。平均厚みが15nm未満だと、ガスバリアー性が不充分になるおそれがある。なお、上記金属蒸着層の平均厚みとは、電子顕微鏡により測定される金属蒸着層断面の任意の10点における厚みの平均値である。
【0023】
上記金属蒸着層の平均粒径を150nm以下とする方法としては、蒸着フィルムの製造において、蒸着前の基材フィルムに含まれる揮発分の含有量を1.1質量%以下にすること、蒸着時の基材フィルムの表面温度を60℃以下にすること、蒸着前の基材フィルムの表面をプラズマ処理し改質すること等の方法を用いることができる。
上記蒸着前の基材フィルムに含まれる揮発分の含有量としては、1.1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましい。また、上記揮発分の含有量としては、下限は特に限定されないが、0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。ここで、揮発分の含有量は、105℃における乾燥前後の質量変化から下記式により求められる。
揮発分の含有量(質量%)=[(乾燥前質量−乾燥後質量)/乾燥後質量]×100
【0024】
金属蒸着を行う際の基材フィルムの表面温度としては、60℃以下が好ましく、55℃以下がより好ましく、50℃以下がさらに好ましい。また、蒸着時の基材フィルムの表面温度としては、下限は特に限定されないが、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。
【0025】
蒸着前の基材フィルムの表面をプラズマ処理する方法としては、公知の方法を用いることができるが、この中でも、大気圧プラズマ処理が好ましい。大気圧プラズマ処理においては、放電ガスとして、窒素ガス、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。この中でも、窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストを低減することができ、好ましく用いられる。
【0026】
本発明の蒸着フィルムは、上記金属蒸着層に積層されるポリビニルアルコール系重合体を含む樹脂コート層をさらに有してもよい。樹脂コート層をさらに有することにより、当該蒸着フィルム製造において起こりうる、後工程のラミネーション等のフィルム加工における屈曲によるガスバリアー性の低下をさらに抑制することができる。樹脂コート層の材料としては、水溶性又は水分散性ポリマー、すなわち、常温で水を主成分とする溶媒に完全に溶解又は微分散可能な高分子であることが好ましい。このようなポリマーとしては、特に限定されないが、基材フィルムに用いることのできるポリビニルアルコール系重合体として例示したもののうち、水溶性又は水分散性等を持つポリマーが挙げられる。
【0027】
上記樹脂コート層には、膨潤性無機層状ケイ酸塩を分散させてもよい。樹脂コート層中のポリビニルアルコール系重合体に対する上記膨潤性無機層状ケイ酸塩の含有量としては特に限定されないが、固形分換算で、0.5質量%〜55質量%が好ましい。55質量%を超えると、樹脂コート層の柔軟性が低下してクラックなどの欠点を生じ易くなる。膨潤性無機層状ケイ酸塩の含有量としては、1質量%〜40質量%がより好ましく、3質量%〜30質量%がさらに好ましく、5質量%〜20質量%が特に好ましい。
【0028】
上記金属蒸着層に上記樹脂コート層を積層する方法としては特に限定されないが、金属蒸着層上に、樹脂組成物の塗工液を基材フィルム側の表面に塗布、乾燥及び熱処理を行いコーティングする方法、金属蒸着層側に樹脂コート層をラミネートする方法が好ましい。また、金属蒸着層と樹脂コート層との界面は、コロナ処理、アンカーコート剤等による処理などがされていてもよい。上記コーティングする方法としては、ダイレクトグラビア法やリバースグラビア法、マイクログラビア法、2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法;ドクターナイフ法、ダイコート法、ディップコート法、バーコーティング法、及びこれらを組み合わせたコーティング法などが挙げられる。樹脂コート層の平均厚みとしては、特に限定されないが、10μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましい。樹脂コート層の平均厚みとしては、下限は特に限定されないが、効果的なガスバリアー性を得るためには0.001μm以上が好ましい。
【0029】
本発明の蒸着フィルムは、ポリビニルアルコール系重合体以外の熱可塑性樹脂を含む層をさらに有していてもよい。上記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル等が挙げられ、これらは延伸されていてもよい。上記熱可塑性樹脂からなる層は、当該蒸着フィルムの基材フィルム、金属蒸着層、及び樹脂コート層のいずれに積層されていてもよく、これらの層と接着層を介していてもよい。
【0030】
当該蒸着フィルムは、上述のように、蒸着加工時のピンホールやクラックの発生を抑え、ガスバリアー性の低下を抑制することができ、断熱性及びガスバリアー性に共に優れるので、包装材料や真空断熱体の材料として、好ましく用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
[蒸着フィルムの製造]
<実施例1>
株式会社クラレ製エチレン−ビニルアルコール共重合体F101A(エチレン含有量32モル%、ケン化度99.9%)100質量部に対して、無機酸化物として、富士シリシア化学株式会社製合成シリカ(「サイリシア」310P、レーザー法で測定された平均粒子径2.7μm)を0.03質量部になるようにタンブラーを用いてドライブレンドを行った後、240℃にて溶融し、ダイからキャスティングロール上に押し出すと同時にエアーナイフを用いて空気を風速30m/秒で吹付け、厚さ170μmの未延伸フィルムを得た。このフィルムを80℃の温水に10秒接触させ、テンター式同時二軸延伸設備により90℃にて縦方向に3.2倍、横方向に3.0倍延伸し、さらに170℃に設定したテンター内にて5秒間熱処理を行い、厚さ12μm、全幅3.6mの延伸熱処理フィルムを得た。このフィルムを巻き返しながら、フィルム全幅における中央位置を中心にして幅80cmをスリットし、4,000m長のロールを得た。
【0033】
上記ロールの全幅80cmにおける中央部から、揮発分測定用の小片を切り出し、熱風乾燥機を用いて105℃で3時間乾燥し、乾燥前後の質量から下記式により揮発分の含有量を求めた。
揮発分の含有量(質量%)=[(乾燥前質量−乾燥後質量)/乾燥後質量]×100
実施例1の蒸着前の基材フィルムに含まれる揮発分の含有量は、0.15質量%であった。製造した二軸延伸フィルムは、製膜後、吸湿を防止するため、速やかにアルミニウム箔ラミネートフィルムで梱包した。
【0034】
上記フィルムを基材フィルムとして、日本真空技術社製バッチ式蒸着設備EWA−105を用い、基材フィルムの表面温度38℃、フィルム走行速度200m/分で、フィルム片側にアルミニウムを蒸着させ、蒸着フィルムを得た。蒸着されたアルミニウムの厚さ(金属蒸着層の平均厚み)は70nmであった。
【0035】
アルミニウム蒸着層の平均粒径はアルミニウム蒸着層の表面側から、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて直接観察により決定した。なお、ここでいう平均粒径とは、
図1に示すSEM写真(倍率:60,000倍、測定下限値:10nm)におけるn=100の平均値のことである。SEM観察はエス・アイ・アイナノテクノロジー株式会社製ZEISS ULTRA 55にて測定を行った。検出器としては、反射電子検出器を用いた。実施例1におけるアルミニウム蒸着層の平均粒径は35nmであった。
【0036】
樹脂コート層として、ポリエチレン−酢酸ビニル重合体のけん化により得られたポリエチレン−ビニルアルコール共重合体である株式会社クラレ製「EXCEVAL」 RS−3110(エチレン含有量6モル%、ケン化度98%以上)33.75gを、イオン交換水326.5gに加え、90℃に加熱しながら1時間攪拌して水溶液を得た。この水溶液を室温にまで冷却した後、溶液の安定性向上のため、50質量%のイソプロピルアルコール水溶液64.75gを添加した。さらにこの溶液にトピー工業株式会社製NHT−ゾルB2(合成ヘクトライトの水分散液、固形分濃度5質量%、平均粒子径3.8μm、標準偏差2.2μm)76gを添加して、膨潤性無機層状ケイ酸塩を含む500gの樹脂組成物を得た。液中の固形分濃度は7.5質量%、固形分中の膨潤性無機層状ケイ酸塩の含有量は10質量%であった。この樹脂組成物を上記得られた蒸着フィルムのアルミ蒸着層側にコートし、熱風乾燥機で100℃にて20秒乾燥を行った。乾燥後の樹脂コート層(上記エチレン−ビニルアルコール共重合体と膨潤性無機層状ケイ酸塩との組成物から形成された層)の平均厚みは1.5μmであった。
【0037】
上記得られた樹脂コート層を備える蒸着フィルム(コートフィルム)を用いて、酸素透過度(OTR)の評価を行った。OTRは、試料フィルムの一部を切り取り、MOCON INC.製酸素透過率測定装置OX−TRAN2/20型(検出限界値0.01mL/m
2・day・atm)を用いてコートフィルムの樹脂コート層側の湿度90%RH、基材フィルム側の湿度0%RH、温度40℃の条件下でJIS K7126(等圧法)に記載の方法に準じて測定した。実施例1のコートフィルムの酸素透過度は0.08mL/m
2・day・atmであった。ここで酸素透過度は、試料フィルムを透過する酸素の単位面積(m
2)、単位時間(day)及び試料フィルム両面間の単位圧力差(atm)当たりの体積を表す。
【0038】
上記コートフィルムに、厚さ50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製、RXC−21)と、厚さ15μmのポリエステル延伸フィルム(東レ株式会社製「ルミラー」P60)とを、接着剤を用いてドライラミネートにより積層し、多層フィルムを得た。この多層フィルムの層構成は、ポリエステル延伸フィルム/コートフィルム/無延伸ポリプロピレンフィルムであり、上記コートフィルムの樹脂コート層側が、ポリエステル延伸フィルム側になるように積層した。接着剤として、三井化学株式会社「タケラック」A−385/「タケネート」A−50を用い、塗布量を固形分4g/m
2とし、50℃で5秒間乾燥した。また、乾燥後さらに40℃で3日間エージングした。
【0039】
上記多層フィルムを用いて、酸素透過度の評価を行った。酸素透過度は0.09mL/m
2・day・atmであった。すなわち、ラミネーション加工による酸素透過度の上昇は0.01mL/m
2・day・atmであった。
【0040】
<実施例2>
実施例1で得られた樹脂コート層形成前の蒸着フィルムを用いて、実施例1に記載の層構成と条件でラミネーションを行い、多層フィルムを得た。実施例1と同様の条件で酸素透過度の測定を行ったところ、蒸着フィルムの酸素透過度(ラミネート前OTR)は0.07mL/m
2・day・atm、多層フィルム(ラミネート後OTR)の酸素透過度は0.11mL/m
2・day・atmであった。すなわち、ラミネーション加工による酸素透過度の上昇は0.04mL/m
2・day・atmであった。
【0041】
<実施例3、4及び5>
実施例1において、蒸着時の基材フィルムの表面温度を43℃(実施例3)、48℃(実施例4)、53℃(実施例5)にそれぞれ変更し、樹脂コート層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、蒸着フィルム及び多層フィルムを得、これらの評価を行った。結果を表1に示す。いずれの実施例のいずれの評価項目においても良好な性能が確認された。
【0042】
<実施例6、7及び8>
実施例5において、蒸着前の基材フィルムに含まれる揮発分の含有量を0.45質量%(実施例6)、0.70質量%(実施例7)、0.95質量%(実施例8)とした以外は実施例5と同様にして、蒸着フィルム及び多層フィルムを得、これらの評価を行った。結果を表1に示す。いずれの実施例のいずれの評価項目においても良好な性能が確認された。
【0043】
<実施例9>
実施例1において、蒸着前の基材フィルムに含まれる揮発分の含有量を1.05質量%とし、蒸着時の基材フィルムの表面温度を38℃とし、樹脂コート層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、蒸着フィルム及び多層フィルムを得、これらの評価を行った。結果を表1に示す。いずれの評価項目においても良好な性能が確認された。
【0044】
<実施例10、11及び12>
実施例1において、蒸着したアルミニウムの厚み(金属蒸着層の平均厚み)を95nm(実施例10)、50nm(実施例11)、25nm(実施例12)とし、樹脂コート層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、蒸着フィルム及び多層フィルムを得、これらの評価を行った。結果を表1に示す。いずれの実施例のいずれの評価項目においても良好な性能が確認された。
【0045】
<実施例13>
実施例9において、蒸着前の基材フィルムに、放電ガスとしてヘリウムを用い、出力700W、放電量212W・min/m
2、ラインスピード100m/minでプラズマ処理を行い、また、蒸着時の基材フィルムの表面温度を53℃とした以外は実施例9と同様にして蒸着フィルム及び多層フィルムを得、これらの評価を行った。結果を表1に示す。いずれの評価項目においても良好な性能が確認された。
【0046】
<実施例14>
実施例13において、基材フィルムの製造におけるEVOHの溶融前に合成シリカを添加せず、蒸着時の基材フィルムの表面温度を38℃とした以外は、実施例13と同様にして蒸着フィルム及び多層フィルムを得、これらの評価を行った。結果を表1に示す。いずれの評価項目においても良好な性能が確認された。
【0047】
<比較例1>
実施例1において、基材フィルムの製造におけるEVOHの溶融前に合成シリカを添加せず、蒸着前の基材フィルムに含まれる揮発分の含有量を1.15質量%とし、樹脂コート層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、蒸着フィルム及び多層フィルムを得、これらの評価を行った。得られた蒸着フィルムの金属蒸着層の平均粒径は155nmであり、蒸着フィルムの酸素透過度は0.16mL/m
2・day・atm、多層フィルムの酸素透過度は0.28mL/m
2・day・atmであり、ガスバリアー性の悪化が見られ、性能が不十分であった。
【0048】
<比較例2>
実施例1において、基材フィルムの製造におけるEVOHの溶融前に合成シリカを添加せず、蒸着前の基材フィルムに含まれる揮発分の含有量を0.15質量%とし、樹脂コート層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、蒸着フィルム及び多層フィルムを得、これらの評価を行ったが、ガスバリアー性の悪化が見られ、性能が不十分であった。
【0049】
<比較例3>
実施例2において、蒸着時の基材フィルムの表面温度を62℃とした以外は実施例2と同様にして、蒸着フィルム及び多層フィルムを得、これらの評価を行ったが、ラミネート前後のガスバリアー性の悪化(OTR悪化)が大きく、性能が不十分であった。
【0050】
<比較例4>
実施例13において、蒸着時の基材フィルムの表面温度を62℃とし、蒸着前の基材フィルムに含まれる揮発分の含有量を0.15質量%とした以外は実施例13と同様にして、蒸着フィルム及び多層フィルムを得、これらの評価を行ったが、ラミネート前後のガスバリアー性の悪化(OTR悪化)が大きく、性能が不十分であった。
【0051】
表1において、「無機酸化物」、「プラズマ処理」及び「樹脂コート層」の欄の「○」は、それらを用いた、行った又は形成したことを示し、「×」は、それらを用いなかった、行わなかった又は形成しなかったことを示す。用いた「無機酸化物」は、実施例1で用いたものと同じ「合成シリカ」である。
【0052】
【表1】
【0053】
表1の結果から示されるように、実施例の蒸着フィルムは、金属蒸着層の電子顕微鏡で測定される平均粒径が150nm以下であり、ラミネーション加工前後でピンホールやクラックの発生を抑えられ、ガスバリアー性の低下を抑制することができる。一方、比較例の蒸着フィルムは、平均粒径が150nmを超えており、ラミネーション加工前後でピンホールやクラックが発生し、ガスバリアー性が悪化している。