(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095896
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】フィルム溶着方法及び装置、容器入り食品の製造方法、容器入り納豆の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65B 7/28 20060101AFI20170306BHJP
A23L 11/00 20160101ALI20170306BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20170306BHJP
B65B 7/26 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
B65B7/28 B
A23L11/00 109A
B65D85/50 101
B65B7/26 B
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-36875(P2012-36875)
(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公開番号】特開2013-170003(P2013-170003A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(73)【特許権者】
【識別番号】301058333
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Sanmi−pro
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】中西 貴史
(72)【発明者】
【氏名】釣井 淳二
【審査官】
高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−249188(JP,A)
【文献】
特開2000−177722(JP,A)
【文献】
特開平10−305886(JP,A)
【文献】
特開2004−315050(JP,A)
【文献】
実開昭54−073159(JP,U)
【文献】
特開昭55−077873(JP,A)
【文献】
実開昭60−182366(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 7/28
A23L 11/00
B65B 7/26
B65D 85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の食品収納凹部を有する容器本体と、上面にて開口する第2の食品収納凹部を有する蓋体とを備え、座屈強度が3.0kgf以上30.0kgf以下であり、発泡ポリスチレン樹脂シート、発泡ポリエチレン樹脂シートまたは発泡ポリウレタン樹脂シートを用いて成型された発泡樹脂製容器を対象とし、前記蓋体にて前記容器本体の前記第1の食品収納凹部を塞いだ状態で前記第2の食品収納凹部に樹脂フィルムを溶着する方法であって、
溶着温度を100℃以上200℃以下に設定するとともに、100℃以上140℃未満の温度帯では溶着時間を0.4秒以上9秒以下に設定し、140℃以上200℃未満の温度帯では溶着時間を0.2秒以上9秒以下に設定して、
前記容器に前記樹脂フィルムを押し付ける際の圧力を1.0kgf/cm2以上6.2kgf/cm2以下に設定する
ことを特徴とするフィルム溶着方法。
【請求項2】
前記第2の食品収納凹部が開口している開口端面としての前記上面の最上部にて、前記上面の外縁部からはみ出すことなく前記樹脂フィルムを溶着することを特徴とする請求項1に記載のフィルム溶着方法。
【請求項3】
前記発泡樹脂製容器は、前記第1の食品収納凹部である納豆収納凹部に納豆がじかに収納され、前記第2の食品収納凹部である調味料収納凹部に納豆用の液状調味料がじかに収納される納豆容器であり、前記第2の食品収納凹部が前記上面の一部にて開口している構造であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム溶着方法。
【請求項4】
前記座屈強度が14kgf以上20kgf以下である前記容器を対象とした場合において、前記圧力を3.0kgf/cm2以上6.2kgf/cm2以下に設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフィルム溶着方法。
【請求項5】
発泡樹脂製容器に食品を充填した後、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法によって樹脂フィルムを溶着してシールすることを特徴とする容器入り食品の製造方法。
【請求項6】
納豆収納凹部を有する容器本体と、上面にて開口する調味料収納凹部を有する蓋体とを備える発泡樹脂製納豆容器を用い、前記納豆収納凹部に納豆をじかに収納し、前記調味料収納凹部に納豆用の液状調味料をじかに収納してなる容器入り納豆の製造方法であって、
前記調味料収納凹部に納豆用の液状調味料を充填した後、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法によって樹脂フィルムを溶着し、前記調味料収納凹部をシールすることを特徴とする容器入り納豆の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法により、発泡樹脂製容器に樹脂フィルムを溶着するための装置であって、
前記樹脂フィルムの原反から所定形状及び大きさの樹脂フィルムを切り抜くカット手段と、
切り抜かれた前記樹脂フィルムを保持しかつ加熱した状態で、前記容器の所定位置に前記樹脂フィルムを圧着する保持手段と
を含むフィルム溶着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム溶着方法及び装置、容器入り食品の製造方法、容器入り納豆の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被収納物を収納するための収納部を有する各種の容器が提案されており、その具体例として、例えば納豆や調味料を収納するための収納凹部を有する納豆容器などがよく知られている。通常、この種の容器は、被収納物を収納部に出し入れするための開口を上端面に備えている。そして、収納部内に被収納物を収納した後、その開口を樹脂フィルムで覆うことにより被収納物がシールされるようになっている。また、このようなシールを行うための装置も従来いくつか提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。また、容器の開口を覆ってシールする方法としては、一般的に、容器上端面の全体を覆うように樹脂フィルムを熱溶着した後、余った部分をカット(いわゆるトリミング)する方法が広く採用されている。
【0003】
ここで、容器上端面の全体に開口がある容器ではなく、一部のみに開口がある容器に対し、樹脂フィルムを熱溶着してシールしたいことがある。この場合、少なくとも開口よりも大きな面積の樹脂フィルムを用いる必要があるが、シールするにあたり例えば樹脂フィルムが容器上端面の外縁部からはみ出していると、見た目が悪くなり外観性が低下してしまう。また、外観性の低下ばかりでなく、樹脂フィルムの使用量も増えてコスト性が低下してしまう。さらに、熱溶着後に樹脂フィルムをカットしてトリミングしようとしても、容器における開口を包囲する箇所に刃などのカット手段が当接して容器を傷付けてしまう。従って、上記のシール方法は、いくつか不都合があるため、現実的には採用するのが難しいという問題があった。
【0004】
それゆえ、樹脂フィルムを容器上端面の外縁部からはみ出させることなく容器をシールすることができるシール方法が望まれており、このようなシール方法を実現しうるフィルム溶着装置(蓋材装着装置)が従来提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
この装置では、まず、蓋材打ち抜き部においてフィルム素材から蓋材が打ち抜かれる。打ち抜かれた蓋材は、開口を覆うのに必要な大きさ・形状を有する。この動作とほぼ同時に蓋材吸引部が作動し、その打ち抜かれた蓋材を吸着して保持する。蓋材を吸着した蓋材吸引部は、その蓋材を容器の上端面まで移送し、かつ蓋材を押し付けて所定時間温度を加えることにより熱溶着するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−252301号公報
【特許文献2】特開2002−179124号公報
【特許文献3】特開2010−6375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで本願発明者は、容器本体と蓋体とを備える納豆容器の蓋体に凹部を設け、その凹部に食品を収納してその開口がある上端面に、上記方法にて樹脂フィルムを熱溶着することを考えている。しかしながら、一般的に納豆容器等に代表される食品容器は、発泡樹脂製であるため強度的に弱く、しかも強度自体にばらつきがある。従って、あらかじめ所定の形状とした樹脂フィルムを押し付けて加熱するタイプのフィルム溶着装置の場合、容器破壊やシール不足による内容物の漏れ等の不具合が起こりやすく、これらを回避しつつ安定的にシールすることが難しかった。それゆえ、従来においては、シール時の条件設定をシビアに行う必要があり、このことが生産性向上を阻害する要因にもなっていた。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、発泡樹脂製容器に対して樹脂フィルムを確実にかつ安定的にシールすることができるフィルム溶着方法及びそのための装置を提供することにある。また、本発明の別の目的は、上記のような優れた方法にて容器をシールすることで、容器入り食品あるいは容器入り納豆を効率よく確実に製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段[1]〜[5]を以下に列挙する。
【0010】
[1]第1の食品収納凹部を有する容器本体と、上面にて開口する第2の食品収納凹部を有する蓋体とを備え、座屈強度が3.0kgf以上30.0kgf以下で
あり、発泡ポリスチレン樹脂シート、発泡ポリエチレン樹脂シートまたは発泡ポリウレタン樹脂シートを用いて成型された発泡樹脂製容器を対象とし、前記蓋体にて前記容器本体の前記第1の食品収納凹部を塞いだ状態で前記第2の食品収納凹部
に樹脂フィルムを溶着する方法であって、溶着温度を100℃以上200℃以下に設定するとともに、100℃以上140℃未満の温度帯では溶着時間を0.4秒以上9秒以下に設定し、140℃以上200℃未満の温度帯では溶着時間を0.2秒以上9秒以下に設定して、前記容器に前記樹脂フィルムを押し付ける際の圧力を1.0kgf/cm
2以上6.2kgf/cm
2以下に設定することを特徴とするフィルム溶着方法。
【0011】
従って、手段1に記載の発明によると、溶着温度及び溶着時の押圧力を上記の好適範囲に設定することにより、容器破壊や内容物の漏れ等の不具合を回避しつつ、確実にかつ安定的にシールすることができる。よって、シール時の条件設定を必ずしもシビアに行う必要がなくなり、生産性の向上が達成されやすくなる。
【0012】
ここでは、座屈強度が3.0kgf以上30.0kgf以下である発泡樹脂製容器を対象としている。本明細書中において「座屈強度」とは、発泡樹脂製容器をシールする際に容器が縦方向の圧縮に耐えられる強さのことを意味する。「座屈強度」は例えば圧縮試験機ストログラフ(東洋精機製作所製 型式VES5D)などの装置を用いて、次の手順により測定可能である。まず、蓋閉じ状態の容器を圧縮試験機の真下にセットし、その容器を圧縮試験機で上部(容器の縦方向)から力を加えて圧縮し(圧縮スピード:50mm/min)、圧縮によって容器本体が破壊するまでの間の最大強度(ピーク)を求める。そして、この値をもって「座屈強度」とする。
【0013】
上記フィルム溶着方法においては、溶着温度を
100℃以上200℃以下に設定する。このような好適範囲内にて溶着温度を設定することにより、好適なシール性を得ることができる。溶着温度が
100℃未満であると、熱溶着部分の強度が不十分になる可能性があり、シール性が低下するおそれがあるからである。また、このような低温での処理で熱溶着部分の強度を高めようとすると、樹脂フィルムを押し付ける際の圧力を高めに設定したり、溶着時間を長く設定したりする必要があり、容器の破壊や生産性の低下につながりやすいからである。一方、溶着温度が
200℃超であると、樹脂フィルムや発泡樹脂に変質や変形が生じる可能性があり、この場合にはシール性が低下するおそれがあるからである。また、このような高温での処理で変質、変形を回避しようとすると、溶着時間を極めて短く設定する必要があるため、工程が不安定になり、熱溶着部分の強度がばらつきやすくなる。
【0014】
上記フィルム溶着方法においては、容器に樹脂フィルムを押し付ける際の圧力を1.0kgf/cm
2以上6.2kgf/cm
2以下に設定する。このような好適範囲内にてフィルム押圧力を設定することにより、容器の破壊を回避しつつ好適なシール性を得ることができる。当該フィルム押圧力が1.0kgf/cm
2未満であると、熱溶着部分の強度が不十分になる可能性があり、シール性が低下するおそれがあるからである。また、この程度のフィルム押圧力で熱溶着部分の強度を高めようとすると、溶着温度を高めに設定せざるを得なくなり、樹脂フィルムや容器が変質、変形しやすくなるからである。一方、当該フィルム押圧力が6.2kgf/cm
2超であると、容器に加わる縦方向の圧縮力が大きくなりすぎてしまい、容器が破壊するおそれがあるからである。なお、フィルム押圧力は、3.0kgf/cm
2〜6.2kgf/cm
2がより好ましく、4.5kgf/cm
2〜6.0kgf/cm
2が特に好ましい。
【0015】
[2]前記第2の食品収納凹部が開口している開口端面としての前記上面の最上部にて、前記上面の外縁部からはみ出すことなく前記樹脂フィルムを溶着することを特徴とする手段1に記載のフィルム溶着方法。
[3]前記発泡樹脂製容器は、前記第1の食品収納凹部である納豆収納凹部に納豆がじかに収納され、前記第2の食品収納凹部である調味料収納凹部に納豆用の液状調味料がじかに収納される納豆容器であり、前記第2の食品収納凹部が前記上面の一部にて開口している構造であることを特徴とする手段1または2に記載のフィルム溶着方法。
[4]前記座屈強度が14kgf以上20kgf以下である前記容器を対象とした場合において、前記圧力を3.0kgf/cm
2以上6.2kgf/cm
2以下に設定することを特徴とする手段
1乃至3のいずれか1項に記載のフィルム溶着方法。
【0017】
[
5]発泡樹脂製容器に食品を充填した後、
手段1乃至4のいずれか1項に記載の方法によって樹脂フィルムを溶着してシールすることを特徴とする容器入り食品の製造方法。
【0018】
従って、手段
5に記載の発明によると、発泡樹脂製容器に食品が充填された後、この状態で溶着を行うことにより収納凹部の開口が樹脂フィルムで覆われて効率よくシールされる。ゆえに、収納凹部に食品が収納された容器入り食品を効率よく確実に製造することができる
【0019】
[
6]納豆収納凹部を有する容器本体と、上面にて開口する調味料収納凹部を有する蓋体とを備える発泡樹脂製納豆容器を用い、前記納豆収納凹部に納豆を
じかに収納し、前記調味料収納凹部に納豆用の液状調味料を
じかに収納してなる容器入り納豆の製造方法であって、前記調味料収納凹部に納豆用の液状調味料を充填した後、
手段1乃至4のいずれか1項に記載の方法によって樹脂フィルムを溶着し、前記調味料収納凹部をシールすることを特徴とする容器入り納豆の製造方法。
【0020】
従って、手段
6に記載の発明によると、調味料収納凹部に納豆用の液状調味料が充填された後、この状態で溶着を行うことにより調味料収納凹部の開口が樹脂フィルムで覆われて効率よくシールされる。ゆえに、蓋体の中に納豆用の液状調味料が収納された容器入り納豆を効率よく確実に製造することができる。
【0021】
[
7]手段
1乃至4のいずれか1項に記載の方法により、発泡樹脂製容器に樹脂フィルムを溶着するための装置であって、前記樹脂フィルムの原反から所定形状及び大きさの樹脂フィルムを切り抜くカット手段と、切り抜かれた前記樹脂フィルムを保持しかつ加熱した状態で、前記容器の所定位置に前記樹脂フィルムを圧着する保持手段とを含むフィルム溶着装置。
【0022】
従って、手段
7に記載の発明によると、カット手段により切り抜かれた樹脂フィルムを保持した保持手段が、樹脂フィルムを加熱した状態で容器の所定位置に圧着することができる。従って、この装置によると手段1に記載の優れた方法を容易にかつ確実に実現することができ、発泡樹脂製容器を確実にシールすることができる。
【発明の効果】
【0023】
従って、請求項
1〜4に記載の発明によれば、発泡樹脂製容器に対して樹脂フィルムを確実にかつ安定的にシールすることができるフィルム溶着方法を提供することができる。
【0024】
請求項
5に記載の発明によれば、上記のような優れた方法にて容器を効率よくシールすることで、容器入り食品を効率よく確実に製造できる方法を提供することができる。
【0025】
請求項
6に記載の発明によれば、上記のような優れた方法にて容器を効率よくシールすることで、容器入り納豆を効率よく確実に製造できる方法を提供することができる。
【0026】
請求項
7に記載の発明によれば、樹脂フィルムを発泡樹脂製容器の外縁部からはみ出させることなく、確実にかつ安定的にシールすることができるため、上記のような優れたシール方法を実現することが可能なフィルム溶着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明のフィルム溶着方法及びフィルム溶着装置を具体化した実施形態における被シール物である納豆容器を示す平面図。
【
図2】納豆容器(蓋閉め後かつシール後)を示す正面図。
【
図4】
図2の納豆容器を別の位置で切断したときの概略断面図。
【
図5】フィルム溶着装置による容器シール工程を説明するための要部拡大概略図。
【
図6】フィルム溶着装置による容器シール工程を説明するための要部拡大概略図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した一実施の形態のフィルム溶着装置を
図1〜
図5に基づき詳細に説明する。
【0029】
本実施形態のフィルム溶着装置は、容器入り納豆の製造プロセスにおいて使用される。まずシールされる対象物である納豆容器について説明する。
【0030】
図1〜
図4に示されるように、本実施形態の納豆容器11は、納豆2及び納豆用の液状調味料3を内部に別々に収納しておき、必要に応じて納豆用の液状調味料3を納豆2に注ぎ入れることが可能な構造の食品容器である。この納豆容器11は発泡樹脂シート製の成型体12と樹脂フィルム13とからなる容器であって、発泡樹脂シート製の成型体12は容器本体22と蓋体23とヒンジ部24とを備えた構造を有している。容器本体22は平面視矩形状であって、上側に開口26が形成された納豆収納凹部25を有している。この納豆収納凹部25には納豆2が収納される。蓋体23は容器本体22の開口26を塞ぐための部分であって、容器本体22と同じく平面視矩形状を呈している。容器本体22と蓋体23とはヒンジ部24を介して連結されている。
【0031】
図1等に示されるように、納豆容器11を構成する発泡樹脂シート製の成型体12は、厚さ3mm以内であることがよく、ここでは厚さ約1.5mmのものを使用している。発泡樹脂シートを構成する樹脂としては、発泡ポリスチレン樹脂を使用しているが、発泡ポリエチレン樹脂や発泡ポリウレタン樹脂等を使用してもよい。そして、この発泡樹脂シート製の成型体12では、短辺の方向(即ち
図1の左右方向)が原反シートの巻き取り方向(原反の長手方向)となっている。発泡樹脂シート製の成型体12は、内部に多数の気泡を有している。これらの気泡は回転長円体状(あるいは回転楕円体状)の独立気泡であって、長軸が一定の方向に沿って配列した状態となっている。この方向のことを「気泡の配向方向D1」と呼ぶことにする。従って、この発泡樹脂シート製の成型体12においては、短辺の方向に気泡が配向していると把握できる。
【0032】
図1〜
図4に示されるように、本実施形態の蓋体23は、蓋体外面23a(開口端面)に円形状の包囲突条30を有しており、この包囲突条30の内側領域は蓋体外面23aにて開口する調味料収納凹部32となっている。調味料収納凹部32内には、蓋体外面23a側に隆起した形状の被押圧部38が一対設けられている。これらの被押圧部38は、蓋体23において開裂溝31を挟んだ両側に対峙して配置されている。
【0033】
図1〜
図4に示されるように、蓋体23の蓋体外面23a側には、可撓性及び液体不透過性を有する樹脂フィルム13が熱溶着されている。この樹脂フィルム13は、特に凹凸加工を施したものではなく、略平坦でシンプルな構成を有している。本実施形態における樹脂フィルム13は、円形状の包囲突条30の外形及び寸法に相当する外径及び寸法のピースをフィルム原反から切り抜いたものである。そのため、樹脂フィルム13は、調味料収納凹部32よりも一回り大きく、かつ、蓋体23の蓋体外面23aの外縁からはみ出さない程度のものとして形成されている。
【0034】
樹脂フィルム13を形成する樹脂としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等といった汎用の熱可塑性樹脂が使用可能である樹脂フィルム13は、蓋体外面23a(即ち開口端面)の中央部(詳細には包囲突条30を含む範囲)を覆うように熱溶着されることで、調味料収納凹部32内の納豆用の液状調味料3を密閉している。樹脂フィルム13は透明、不透明を問わず選択することが可能である。例えば、前者であると、収納後であっても納豆用の液状調味料3の状態等を目視確認または検査機による確認をすることができる。また、一対の被押圧部38がある位置を目視確認することができる。後者であると、納豆用の液状調味料3の光による劣化等を防止することができる。ここで、納豆用の液状調味料3としては、液体状の納豆用たれ等が具体例として挙げられる。また、本実施形態では、樹脂フィルム13の裏面が一対の被押圧部38の上面に接していないが、両者が接触していて互いに熱溶着されていてもよい。
【0035】
次に、
図5、
図6に基づき本実施形態のフィルム溶着装置41について説明する。このフィルム溶着装置41は、メインフレーム42及び納豆容器11を載せた状態で搬送するコンベア装置43を備えている。
【0036】
メインフレーム42の上方には図示しないサブフレームが配設されている。サブフレームには、第1のエアシリンダ(図示略)及び第2のエアシリンダ(図示略)が取り付けられている。第2のエアシリンダには刃52を有するカット手段51が接続されており、第2のエアシリンダを駆動するとカット手段51が上動または下動(後退移動または前進移動)するようになっている。カット手段51は、樹脂フィルム13の原反から、所定の大きさを有する円形状の樹脂フィルム13を切り抜くための役割を果たす。なお、
図5はカット手段51が樹脂フィルム13を切り抜く前の状態を示している。
【0037】
第1のエアシリンダには、保持手段及び圧着手段としてのヒートツール61が接続されている。ヒートツール61は略柱状の部材であって、フィルム切抜動作を開始する前の状態(初期状態)では、カット手段51の上方かつ同軸上に配設されている。ヒートツール61の下端面62には、吸着凹部63が形成されている。ヒートツール61における熱盤61aの内部には複数の真空吸引通路64が形成され、真空吸引通路64及びホース65を介して図示しない真空引き手段が接続されている。切り抜かれた樹脂フィルム13は、真空引きにより真空吸着されて下端面62に保持されるようになっている。
【0038】
第1のエアシリンダを駆動すると、即ちカット手段51の内孔53を通過してヒートツール61が上動または下動(後退移動または前進移動)するようになっている。ヒートツール61の前進移動の先には、コンベア装置43上に載置された納豆容器11が配置されている。ヒートツール61の下端面62は、納豆容器11の蓋体外面23aまで到達可能であり、蓋体外面23aに樹脂フィルム13を移送し、押圧することができる。なお、
図6はカット手段51により切り抜かれた樹脂フィルム13を保持、移送したヒートツール61が、蓋体外面23aに樹脂フィルム13を圧着している状態を示している。
【0039】
次に、本実施形態のフィルム溶着装置41を用いて容器入り納豆を製造する方法をいくつか具体的に説明する。
【0040】
(第1の製造方法)
第1の製造方法は次のとおりである。まず、
図1に示す状態の納豆容器11を用意し、蓋体外面23aの側を下向きにし、かつ、容器本体22における納豆収納凹部25の開口26側を上向きにして配置する。そして、納豆容器11の容器本体22における納豆収納凹部25に図示しない充填装置を用いて所定量の蒸煮大豆を充填する(蒸煮大豆充填工程)。次に、蒸煮大豆が充填された状態の納豆容器11をヒンジ部24で折り曲げ、納豆収納凹部25を塞ぐように納豆容器11の蓋体23を閉じる(蓋閉じ工程)。次に、蓋体23における調味料収納凹部32に、図示しない別の充填装置を用いて納豆用の液状調味料3を所定量充填する(調味料充填工程)。次に、
図5,
図6のフィルム溶着装置41を用いて、納豆用の液状調味料3が充填された調味料収納凹部32の開口を塞ぐように樹脂フィルム13を熱溶着し、調味料収納凹部32を液漏れ不能に密閉する(上記のフィルム溶着によるシール工程)。次に、蒸煮大豆と納豆用の液状調味料3とが充填された納豆容器11を発酵室で所定時間保管することで納豆菌発酵を行い(発酵工程)、所望とする容器入り納豆を完成させる。
【0041】
(第2の製造方法)
第2の製造方法は次のとおりである。まず、
図1に示す状態の納豆容器11を用意し、蓋体外面23aの側を下向きにし、かつ、容器本体22における納豆収納凹部25の開口26側を上向きにして配置する。そして、納豆容器11の容器本体22における納豆収納凹部25に、図示しない充填装置を用いて所定量の蒸煮大豆を充填する(蒸煮大豆充填工程)。次に、納豆収納凹部25に蒸煮大豆が充填された納豆容器11をヒンジ部24で折り曲げ、納豆収納凹部25を塞ぐように蓋体23を閉じる(蓋閉じ工程)。次に、蒸煮大豆が充填された納豆容器11を発酵室で所定時間保管して納豆菌発酵を行う(発酵工程)。次に、蓋体23における調味料収納凹部32に納豆用の液状調味料3を充填する(調味料充填工程)。次に、
図5,
図6のフィルム溶着装置41を用いて、納豆用の液状調味料3が充填された調味料収納凹部32の開口を塞ぐように樹脂フィルム13を熱溶着し、調味料収納凹部32を液漏れ不能に密閉して(上記のフィルム溶着によるシール工程)、所望とする容器入り納豆を完成させる。
以下、実施形態をより具体化した実施例を説明する。
【0042】
[実施例1]
実施例1では、上記実施形態にて示した構造の納豆容器11(座屈強度が14kgf〜20kgf)をサンプルとして用いた。この納豆容器11の蓋体23における調味料収納凹部32に、納豆用の液状調味料3を所定量充填した後、調味料収納凹部32の開口を塞ぐべく、フィルム溶着装置41を用いて樹脂フィルム13を熱溶着した。その際、溶着温度(℃)及び溶着時間(秒)を表1のように設定した。溶着するにあたっては、ヒートツール61の押し量を一律に3mmに設定した。そのときのフィルム押圧力の測定値は約4.5kgf/cm
2であった。なお、押し量とは、樹脂フィルム13と納豆容器11の蓋体23とが接触した位置からヒートツール61を押し付けるときの量のことをいう。
【0043】
そして、溶着直後の容器11をそのまま目視観察し、シール部分からの液漏れの有無を調査した(通常試験)。また、「後工程不具合」の発生の可能性を予測するために、溶着直後の容器11をわざと歪ませるという過酷な条件を設定したうえで目視観察し、樹脂フィルム13に若干の剥がれが生じるか否かを調査した(過酷試験)。なお、本評価試験では1試験区で10個のサンプルを用いた。
【0044】
評価は「◎」、「○」及び「×」の3段階とした。具体的にいうと、「◎」は10個中10個のサンプルにつき液漏れがなく、かつ、後工程不具合の発生の可能性もなかったことを示している。「○」は10個中10個のサンプルにつき液漏れがないものの、後工程不具合の発生の可能性があることを示している。「×」は10個中1個以上のサンプルにつき液漏れがあったことを示している。その結果を表1に示す。
【表1】
【0046】
実施例2でも実施例1と同様の試験を行った。ここでは、一律に溶着温度を160℃に設定しかつ溶着時間を1秒に設定した。その一方で、
図1に示すように、ヒートツール61の押し量を0mm〜10mmの範囲内でいくつか設定し、溶着を行った。そのときのフィルム押圧力を表2に示す。なお、押し量を0mm〜0.4mmまでは押圧力が極めて小さいため、測定値としては0.0kgf/cm
2となっている。
【0047】
そして、本評価試験でも1試験区で10個のサンプルを用いるとともに、溶着直後の納豆容器11をそのまま目視観察し、シール部分からの液漏れの有無を調査した。
【0048】
評価は「○」及び「×」の2段階とした。具体的にいうと、「○」は10個中10個のサンプルにつき液漏れがなかったことを示し、「×」は10個中1個以上のサンプルにつき液漏れがあったことを示している。その結果を表2に示す。
【表2】
【0049】
表2から明らかなように、試験の結果、押し量を0.9mm以下としたとき、即ち溶着時のフィルム押圧力が0.7kgf/cm
2以下のときには、液漏れを起こすものがあった。それゆえ、このような条件設定では熱溶着部分の強度が不十分になり、必要とする好適なシール性を得ることができなかった。逆に、押し量を11mmとしたとき、即ち溶着時のフィルム押圧力が6.2kgf/cm
2を超えたときには、納豆容器11が破壊するに至った。これに対し、押し量を1mm〜10mmとしたとき、即ち溶着時のフィルム押圧力が1.0kgf/cm
2〜6.2kgf/cm
2のときには、液漏れを起こさず、納豆容器11も破壊しなかった。従って、熱溶着部分に十分な強度を付与し、必要とする好適なシール性を得るためには、押し量を1mm〜10mmに設定(フィルム押圧力を1.0kgf/cm
2〜6.2kgf/cm
2に設定)する必要があると結論付けられた。なお、実際には発泡樹脂製納豆容器11には少なからず強度ばらつきがあることを考慮すると、例えば押し量を2mm〜10mmに設定(フィルム押圧力を3.0kgf/cm
2〜6.2kgf/cm
2に設定)することが好ましく、押し量を3mm〜8mmに設定(フィルム押圧力を4.5kgf/cm
2〜6.0kgf/cm
2に設定)することがより好ましいと考えられた。
【0050】
以上説明したように、本実施形態では、溶着温度及び溶着時のフィルム押圧力を上記の好適範囲に設定することを特徴としている。このため、容器破壊や内容物の漏れ等の不具合を回避しつつ、確実にかつ安定的にシールすることができる。よって、シール時の条件設定を必ずしもシビアに行う必要がなくなり、生産性の向上が達成されやすくなる。さらに本実施形態では、溶着温度の温度帯に応じて好適な溶着時間を設定しているため、各温度域において好適なシール性を確実に得ることができるとともに、生産性を低下させることなく効率よく安定的にシールすることができる。
【0051】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0052】
・上記実施形態では、容器本体22と蓋体23とが一体的に形成されていたが、それぞれ別体として形成されたものであってもよい。また、容器本体22と蓋体23とを分離するための分離加工部(ミシン目など)がヒンジ部近傍に形成されていてもよい。
【0053】
・上記実施形態では、カット手段51のカット部として刃52を採用し、カット工程ではカット手段51を筒状体の軸線方向(下方向)に移動させることでカット工程を行うように構成した。しかしながら、カット部として刃52を採用した場合において、その刃52を前記軸線方向とは異なる方向(例えば周方向)に移動させることでカット工程を行うように構成してもよい。また、刃52のような部材に代えて、例えばレーザ加工機をカット部として備えたカット手段としてもよい。
【0054】
・上記実施形態のフィルム溶着装置41は、樹脂フィルム13の原反から所定形状及び大きさの樹脂フィルム13を切り抜くカット手段51を備えるものであったが、これに代えて、例えば、所定形状及び大きさの樹脂フィルム13を打ち抜く手段を備えるものとしてもよい。
【0055】
・上記実施形態のフィルム溶着装置41は、ヒートツール61が樹脂フィルム13の保持手段及び圧着手段を兼ねるものであったが、保持手段と圧着手段とを別々に備えていてもよい。
【0056】
・上記実施形態では、本発明を、納豆収納凹部25に納豆2が収納され、調味料収納凹部32に納豆用の液状調味料3が収納される納豆容器11に具体化したが、納豆容器以外の食品容器に具体化しても勿論よい。さらには食品以外のものを収納するための容器に具体化することもできる。
【符号の説明】
【0057】
2…納豆
3…納豆用の液状調味料
11…容器としての納豆容器
13…樹脂フィルム
22…容器本体
23…蓋体
25…納豆収納凹部
32…調味料収納凹部
41…フィルム溶着装置
51…カット手段
61…保持手段としてのヒートツール