(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095897
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】研磨用組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20170306BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20170306BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622W
B24B37/00 H
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-61154(P2012-61154)
(22)【出願日】2012年3月16日
(65)【公開番号】特開2013-197211(P2013-197211A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】玉田 修一
【審査官】
竹口 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−278981(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/029465(WO,A1)
【文献】
特開2000−160138(JP,A)
【文献】
特開2008−182179(JP,A)
【文献】
特開2009−212378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/304、21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ge又はSiGe材料を含有する部分とケイ素材料を含有する部分とを有する研磨対象物を研磨する用途で使用される研磨用組成物であって、平均一次粒子径が40nm以下である砥粒と、酸化剤とを含有し、pHが5〜9であることを特徴とする研磨用組成物。
【請求項2】
前記ケイ素材料を含有する部分の表面OH基と結合してケイ素材料を含有する部分の加水分解を抑制する働きをする加水分解抑制化合物をさらに含有する、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
Ge又はSiGe材料を含有する部分とケイ素材料を含有する部分とを有する研磨対象物を研磨する用途で使用される研磨用組成物であって、砥粒と、酸化剤と、前記ケイ素材料を含有する部分の表面OH基と結合してケイ素材料を含有する部分の加水分解を抑制する働きをする加水分解抑制化合物とを含有し、pHが5〜9であることを特徴とする研磨用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いて、Ge又はSiGe材料を含有する部分とケイ素材料を含有する部分とを有する研磨対象物を研磨することを特徴とする研磨方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いて、Ge又はSiGe材料を含有する部分とケイ素材料を含有する部分とを有する研磨対象物を研磨する工程を有することを特徴とする基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IV族材料を含有する部分(以下、IV族材料部分ともいう)と酸化シリコンなどのケイ素材料を含有する部分(以下、ケイ素材料部分ともいう)とを有する研磨対象物を研磨する用途で使用される研磨用組成物に関する。本発明はまた、その研磨用組成物を用いた研磨方法及び基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタの消費電力低減やパフォーマンス(動作特性)を向上させる技術のひとつとして、キャリアの移動度を高める高移動度チャネル材料の検討が進められている。これらのキャリアの輸送特性が向上したチャネルでは、オン時のドレイン電流を高められるため、十分なオン電流を得つつ、電源電圧を下げられる。このコンビネーションは、低い電力におけるより高いMOSFETのパフォーマンスをもたらす。
【0003】
高移動度チャネル材料としてはIV族材料を使用したSiGe(シリコンゲルマニウム)およびGe( ゲルマニウム)、III−V族化合物、C(炭素)のみからなるグラフェンの適用が期待されているが、現在はIII−V族化合物に比べて導入が容易なIV族材料を使用したSiGe(シリコンゲルマニウム)およびGe(ゲルマニウム)を使ったチャネルが積極的に検討されている。III−V族化合物チャネルの形成は、チャネルの結晶性を高め、形状をうまく制御・成長させる技術が確立されていない事、またIV族材料を使用したチャンネルに対してコスト面で劣ることが理由として挙げられる。
【0004】
IV族材料チャンネルは、IV族材料部分とケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨して形成することができる。この場合、ケイ素材料部分よりもIV族材料部分を高選択的に研磨することができる研磨用組成物を用いれば、IV族材料部分を効率的に研磨除去することが可能になる。また、酸化シリコン等のオキサイドロスが少なくなるため、配線層間の耐電圧が確保される。さらに、その後フォトリソグラフィ工程を行う際には、オキサイドロスが少ないために露光焦点合わせが容易となり、工程が安定する。しかしながら、IV族化合物のみからなるIV族化合物半導体基板を研磨する用途で従来使用されている、例えば特許文献1、又は特許文献2に記載のような研磨用組成物は、IV族材料部分とケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨する用途で使用したときに、IV族材料部分に対する十分に高い研磨選択性を発揮しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−130009公報
【特許文献2】特表2010−519740公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、IV族材料部分とケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨する用途で使用したときにIV族材料部分に対する高い研磨選択性を発揮することができる研磨用組成物を提供すること、またその研磨用組成物を用いた研磨方法及び基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様では、Ge又はSiGe材料を含有する部分とケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨する用途で使用される研磨用組成物であって、平均一次粒子径が40nm以下である砥粒と、酸化剤とを含有
し、pHが5〜9である研磨用組成物を提供する。
この研磨用組成物は、前記ケイ素材料部分の表面OH基と結合してケイ素材料部分の加水分解を抑制する働きをする加水分解抑制化合物をさらに含有することが好ましい。
本発明の第2の態様では、Ge又はSiGe材料を含有する部分とケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨する用途で使用される研磨用組成物であって、砥粒と、酸化剤と、前記ケイ素材料部分の表面OH基と結合してケイ素材料部分の加水分解を抑制する働きをする加水分解抑制化合物とを含有
し、pHが5〜9である研磨用組成物を提供する
。
本発明の第3の態様では、上記第1又は第2の態様の研磨用組成物を用いて、Ge又はSiGe材料を含有する部分とケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨する方法を提供する。
本発明の第4の態様では、上記第1又は第2の態様の研磨用組成物を用いて、Ge又はSiGe材料を含有する部分とケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨することにより、基板を製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、IV族材料部分とケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨する用途で使用したときにIV族材料部分に対する高い研磨選択性を発揮することができる研磨用組成物と、その研磨用組成物を用いた研磨方法及び基板の製造方法とが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の第1の実施形態を説明する。
本実施形態の研磨用組成物は、特定の砥粒と、酸化剤を水に混合して調製される。従って、研磨用組成物は、特定の砥粒、及び酸化剤を含有する。
【0010】
この研磨用組成物は、IV族材料部分とケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨する用途、さらに言えばその研磨対象物を研磨して基板を製造する用途においてIV族材料部分を選択的に研磨する目的で使用される。IV族化合物材料の例としては、シリコンゲルマニウム(SiGe)およびゲルマニウム(Ge)が挙げられる。また、ケイ素材料の例としては、ポリシリコン、酸化シリコン、窒化シリコン等が挙げられる。
【0011】
(砥粒)
研磨用組成物中に含まれる砥粒は、40nm以下の平均一次粒子径を有している。40nm以下という平均一次粒子径の小さい砥粒を使用した場合、平均一次粒子径が40nmを超える砥粒を使用した場合に比べて、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度が研磨用組成物によるIV族材料部分の研磨速度よりも大きく低下するという有利がある。なお、砥粒の平均一次粒子径の値は、例えば、BET法で測定される砥粒の比表面積に基づいて計算することができる。
【0012】
研磨用組成物中の砥粒は、無機粒子及び有機粒子のいずれであってもよい。無機粒子の具体例としては、シリカ、アルミナ、セリア、チタニアなどの金属酸化物からなる粒子が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子が挙げられる。その中でもシリカ粒子が好ましく、特に好ましいのはコロイダルシリカである。
研磨用組成物中の砥粒の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。砥粒の含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物の材料コストを抑えることができるのに加え、砥粒の凝集が起こりにくくなる。
【0013】
砥粒の平均二次粒子径は170nm以下であることが好ましく、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは120nm以下である。砥粒の平均二次粒子径が小さくなるにつれて、研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨することによりスクラッチのより少ない研磨面を得ることが容易になる。砥粒の平均二次粒子径の値は、例えば、レーザー光散乱法により測定することができる。
【0014】
(酸化剤)
研磨用組成物中に含まれる酸化剤の種類は特に限定されないが、0.3V以上の標準電極電位を有していることが好ましい。0.3V以上の標準電極電位を有する酸化剤を使用した場合には、0.3V未満の標準電極電位を有する酸化剤を使用した場合に比べて、研磨用組成物によるIV族材料部分の研磨速度が向上するという有利がある。0.3V以上の標準電極電位を有する酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、有機酸化剤、オゾン水、銀( I I ) 塩、鉄( I I I ) 塩、並びに過マンガン酸、クロム酸、重クロム酸、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、硫酸、過硫酸、クエン酸、ジクロロイソシアヌル酸及びそれらの塩等が挙げられる。これらの中でも、研磨用組成物によるIV族材料部分の研磨速度が大きく向上することから、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、次亜塩素酸、過ヨウ素酸、及びジクロロイソシアヌル酸ナトリウムが好ましい。
【0015】
なお、標準電極電位とは、酸化反応に関与するすべての化学種が標準状態にあるときに次式で表される。
【0016】
E0=−△G0/nF=(RT/nF)lnK
【0017】
ここで、E0は標準電極電位、△G0は酸化反応の標準ギブスエネルギー変化、Kはその平行定数、Fはファラデー定数、Tは絶対温度、nは酸化反応に関与する電子数である。従って、標準電極電位は温度により変動するので、本明細書中においては25℃における標準電極電位を採用している。なお、水溶液系の標準電極電位は、例えば改訂4版化学便覧(基礎編)II、pp464−468(日本化学会編)等に記載されている。
【0018】
研磨用組成物中の酸化剤の含有量は0.01mol/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.1mol/L以上である。酸化剤の含有量が多くなるにつれて、研磨用組成物によるIV族材料部分の研磨速度が向上する。
【0019】
研磨用組成物中の酸化剤の含有量はまた、100mol/L以下であることが好ましく、より好ましくは50mol/L以下である。酸化剤の含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物の材料コストを抑えることができるのに加え、研磨使用後の研磨用組成物の処理、すなわち廃液処理の負荷を軽減することができる。
【0020】
(pH調整剤)
研磨用組成物のpHは中性であること、より具体的には5〜9の範囲内であることが好ましい。pHが中性である場合には、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度が低下するという有利がある。
【0021】
研磨用組成物のpHを所望の値に調整するのにpH調整剤を使用してもよい。使用するpH調整剤は酸及びアルカリのいずれであってもよく、また無機及び有機の化合物のいずれであってもよい。
【0022】
本実施形態によれば以下の作用効果が得られる。
・ 本実施形態の研磨用組成物では、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度を低下させるために、40nm以下という平均一次粒子径の小さい砥粒が使用されている。そのため、この研磨用組成物はIV族材料部分に対する高い研磨選択性を有する。
・ 研磨用組成物のpHが中性である場合には、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度がさらに低下するために、IV族材料部分に対する研磨用組成物の研磨選択性がさらに向上する。
【0023】
以下、本発明の第2の実施形態を説明する。
第2の実施形態の研磨用組成物は、砥粒と酸化剤と加水分解抑制化合物を水に混合して調製される。従って、研磨用組成物は、砥粒、酸化剤及び加水分解抑制化合物を含有する。
【0024】
第2の実施形態の研磨用組成物も、第1の実施形態の研磨用組成物と同様、シリコンゲルマニウムおよびゲルマニウムなどのIV族材料部分と酸化シリコンなどのケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨する用途、さらに言えばその研磨対象物を研磨して基板を製造する用途においてIV族材料部分を選択的に研磨する目的で使用される。
【0025】
(砥粒)
第2の実施形態の研磨用組成物中に含まれる砥粒は、40nm以下の平均一次粒子径を有している必要がなく、この点を除けば第1の実施形態の研磨用組成物中に含まれる砥粒と同じである。
【0026】
(酸化剤)
第2の実施形態の研磨用組成物中に含まれる酸化剤は、第1の実施形態の研磨用組成物中に含まれる酸化剤と同じである。
【0027】
(加水分解抑制化合物)
第2の実施形態の研磨用組成物中に含まれる加水分解抑制化合物は、ケイ素材料部分の表面OH基と結合してケイ素材料部分の加水分解を抑制する働きをする。詳細には、ケイ素材料部分の表面OH基と加水分解抑制化合物の持つ酸素原子の間で水素結合が形成されると考えられる。また、ケイ素材料部分の表面OH基と加水分解抑制化合物のもつ窒素原子との間で水素結合が形成されると考えられる。そのため、加水分解抑制化合物を使用した場合には、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度が低下するという有利がある。このメカニズムを考えると、加水分解抑制化合物は酸素原子を持つ化合物及び窒素原子を持つ窒素含有化合物であることが好ましい。酸素原子を持つ加水分解抑制化合物の具体例としては、1−プロパノール、2−プロパノール、2−プロピン−1−オール、アリルアルコール、エチレンシアノヒドリン、1−ブタノール、2−ブタノール、(S)−(+)−2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、t−ブチルアルコール、パーフルオロ−t−ブチルアルコール、クロチルアルコール、1−ペンタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、S−アミルアルコール、1−ヘキサノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノール、シクロヘキサノール、DL−3−ヘキシルアルコール、1−ヘプタノール、2−エチルヘキシルアルコール、(S)−(+)−2−オクタノール、1−オクタノール、DL−3−オクチルアルコール、2−ヒドロキシベンジルアルコール、2−ニトロベンジルアルコール、3,5−ジヒドロキシベンジルアルコール、3,5−ジニトロベンジルアルコール、3−フルオロベンジルアルコール、3−ヒドロキシベンジルアルコール、4−フルオロベンジルアルコール、4−ヒドロキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、m−(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール、m−アミノベンジルアルコール、m−ニトロベンジルアルコール、o−アミノベンジルアルコール、o−ヒドロキシベンジルアルコール、p−ヒドロキシベンジルアルコール、p−ニトロベンジルアルコール、2−(p−フルオロフェニル)エタノール、2−アミノフェネチルアルコール、2−メトキシベンジルアルコール、2−メチル−3−ニトロベンジルアルコール、2−メチルベンジルアルコール、2−ニトロフェネチルアルコール、2−フェニルエタノール、3,4−ジメチルベンジルアルコール、3−メチル−2−ニトロベンジルアルコール、3−メチル−4−ニトロベンジルアルコール、3−メチルベンジルアルコール、4−フルオロフェネチルアルコール、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルアルコール、4−メトキシベンジルアルコール、4−メチル−3−ニトロベンジルアルコール、5−メチル−2−ニトロベンジルアルコール、DL−α−ヒドロキシエチルベンゼン、o−(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール、p−(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール、p−アミノフェネチルアルコール、p−ヒドロキシフェニルエタノール、p−メチルベンジルアルコール及びS−フェネチルアルコール、アセチレングリコール、等のアルコール、4−メチルフェノール、4−エチルフェノール及び4−プロピルフェノール等のフェノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、カプリリルグリコール、ブチレングリコール、アセチレンジオールなどのグリコール、n−デカノル−n−メチル−D−グルカミン、n−オクタノイル−n−メチル−D−グルカミン、n−ノナイノル−n−メチル−D−グルカミンなどのグルカミン、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、3−エトキシプロピオン酸、ポリオキシエチレン(以下、POEという)ソルビタン脂肪酸エステル、POEグリコール脂肪酸エステル、POEヘキシタン脂肪酸エステル及びアラニンエチルエステル等のエステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリエチレングリコール、アルキルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリエチレングリコール、アルケニルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルケニルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリプロピレングリコール、アルキルポリプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリプロピレングリコール、アルケニルポリプロピレングリコールアルキルエーテル及びアルケニルポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、POEアルキレンジグリセリルエーテル、POEアルキルエーテル、POEアルキルフェニルエーテル、POEポリプロピレンアルキルエーテル等のエーテル、及びポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンのブロック/ランダムコポリマー等が挙げられる。
【0028】
また、窒素原子を持つ加水分解抑制化合物の具体例としては、ビスヘキサメチレントリアミン(BHMT)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、テトラメチルアミン(TMA)、テトラエチルアミン(TEA)、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、プロピレンジアミン、メチルアミン、エチルアミン、ピペラジン、ピペリジン等の水溶性アルキルアミン、水酸化コリン(CH)、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン等のアミノアルコール類、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、キトサン等の水溶性アミン化合物が挙げられる。
【0029】
研磨用組成物中の加水分解抑制化合物の含有量は10質量ppm以上であることが好ましく、より好ましくは50質量ppm以上である。加水分解抑制化合物の含有量が多くなるにつれて、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度が低下する。
【0030】
研磨用組成物中の加水分解抑制化合物の含有量はまた、100000質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは50000質量ppm以下である。加水分解抑制化合物の含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物の材料コストを抑えることができるのに加え、研磨使用後の研磨用組成物の処理、すなわち廃液処理の負荷を軽減することができる。
【0031】
(pH調整剤)
第2の実施形態の研磨用組成物も、第1の実施形態の研磨用組成物と同様、中性であること、より具体的には5〜9の範囲内であることが好ましい。pHが中性である場合には、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度が低下するという有利がある。
【0032】
第2の実施形態の研磨用組成物のpHを所望の値に調整するのにpH調整剤を使用してもよい。使用するpH調整剤は酸及びアルカリのいずれであってもよく、また無機及び有機の化合物のいずれであってもよい。
【0033】
第2の実施形態によれば以下の作用効果が得られる。
・ 第2の実施形態の研磨用組成物では、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度を低下させるために、加水分解抑制化合物が使用されている。そのため、この研磨用組成物はIV族材料部分に対する高い研磨選択性を有する。
・ 研磨用組成物のpHが中性である場合には、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度がさらに低下するために、IV族材料部分に対する研磨用組成物の研磨選択性がさらに向上する。
【0034】
前記実施形態は次のように変更されてもよい。
・ 第1及び第2の実施形態の研磨用組成物は、二種類以上の砥粒を含有してもよい。第1の実施形態の研磨用組成物が二種類以上の砥粒を含有する場合、一部の砥粒については必ずしも40nm以下の平均一次粒子径を有している必要はない。
・ 第1及び第2の実施形態の研磨用組成物は、二種類以上の酸化剤を含有してもよい。
・ 第2の実施形態の研磨用組成物は、二種類以上の加水分解抑制化合物を含有してもよい。
・ 第1の実施形態の研磨用組成物は、加水分解抑制化合物をさらに含有してもよい。この場合、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度がさらに低下するために、IV族材料部分に対する研磨用組成物の研磨選択性がさらに向上する。
・ 前記実施形態の研磨用組成物は、防腐剤のような公知の添加剤を必要に応じてさらに含有してもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物は一液型であってもよいし、二液型をはじめとする多液型であってもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物は、研磨用組成物の原液を水で希釈することにより調製されてもよい。
【0035】
次に、本発明の実施例及び比較例を説明する。
コロイダルシリカ及び酸化剤を、必要に応じて加水分解抑制化合物及びpH調整剤とともに水と混合することにより、実施例1
,3,5〜17
、参考例2,4及び比較例1〜2の研磨用組成物を調製した。各研磨用組成物中の成分の詳細、及び各研磨用組成物のpHを測定した結果を表1に示す。
【0037】
表1中、“H
2O
2”は過酸化水素を表し、“APS”は過硫酸アンモニウムを表す。pH調整は酢酸と水酸化カリウムで実施した。
【0038】
実施例1
,3,5〜17
、参考例2,4及び比較例1〜2の各研磨用組成物を用いて、シリコンゲルマニウムブランケットウェーハ、ゲルマニウムブランケットウェーハ、及びオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)ブランケットウェーハの表面を、表2に記載の条件で研磨したときに求められる研磨速度の値を表3の“SiGeの研磨速度”欄、“Geの研磨速度”欄、及び“TEOSの研磨速度”欄に示す。研磨速度の値は、TEOSブランケットウェーハについては光干渉式膜厚測定装置を用いて測定される研磨前後のウェーハの厚みの差を研磨時間で除することにより求め、シリコンゲルマニウムブランケットウェーハおよびゲルマニウムについては、研磨前後のウェーハの重量の差を密度と研磨時間で除することによって求めた。また、こうして求めた実施例1
,3,5〜17
、参考例2,4及び比較例1〜2の各研磨用組成物によるシリコンゲルマニウムの研磨速度を同じ研磨用組成物によるTEOSの研磨速度で除して得られる値を表3の“SiGeの研磨速度/TEOSの研磨速度”欄に、ゲルマニウムの研磨速度を同じ研磨用組成物によるTEOSの研磨速度で除して得られる値を表3の“Geの研磨速度/TEOSの研磨速度”欄に示す。TEOSの研磨速度の値は、300Å/min以下の場合に合格レベルであるが、より好ましくは200Å/min以下、さらに好ましくは100Å/min以下である。シリコンゲルマニウムの研磨速度をTEOSの研磨速度で除した値は、5以上の場合に合格レベルであるが、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上である。
【0041】
表3に示すように、実施例1
,3,5〜17
、参考例2,4の研磨用組成物の場合には、SiGeの研磨速度をTEOSの研磨速度除した値が5以上、Geの研磨速度をTEOSの研磨速度除した値が10以上、であり、IV族材料部分を選択的に研磨する目的で満足に使用できるレベルの結果が得られた。特に、pHを7に調整した実施例1、3、5〜16はSiGeの研磨速度をTEOSの研磨速度除した値、およびGeの研磨速度をTEOSの研磨速度除した値が共に10以上であり、特に好ましい。
【0042】
これに対し、比較例1の研磨用組成物の場合には、シリコンゲルマニウムの研磨速度をTEOSの研磨速度で除した値が5以下で合格レベルに達しておらず、IV族材料部分を選択的に研磨する目的で満足に使用できるレベルの結果が得られなかった。