(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記硬化性シリコーン樹脂組成物が、光半導体素子を封止するものとして用いられるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記発明にあるような平均粒径が小さなシリコーン微粒子は比表面積が大きいため、高温時、酸化による変色を受けやすい。一方で、近年一層高輝度化したLED素子からの発熱量の増加により、駆動時のLED素子表面温度は150℃に到達すると試算されている。このような状況の中で、粒径の小さなシリコーン微粒子を含むシリコーン封止剤を使用すると、シリコーン微粒子の酸化により、封止剤の変色が早く進行し、光半導体から発光した光が変色した封止剤により遮られ、暗くなるという問題が発生している。これは、LEDデバイスの寿命を短くしていることを意味し、長時間の耐熱性に劣るという欠点があった。更に、製造におけるリフロー工程において、高温に晒すことで熱衝撃による樹脂のクラックが発生し、製品としての信頼性に劣るという問題がある。
【0011】
上記先行技術は、光取り出し効率に優れるものではなく、リフロー工程におけるクラックを抑止できるものではなかった。
【0012】
即ち、高い光取り出し効率を有し、特にリフロー工程における加熱時のクラックが抑止可能な信頼性に優れる、LED素子等の光半導体素子用封止材料が強く求められていた。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、高い光取り出し効率を有するとともにクラックの発生が抑止可能な、信頼性の高い、例えば封止材として有用な硬化性シリコーン樹脂組成物、その硬化物及び光半導体デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、
付加硬化型シリコーン組成物であって、
(A)
(A−1)下記一般式(1)で表され、一分子あたり少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有する化合物、
【化1】
(式中、R
1は脂肪族不飽和基、R
2は同一でも異なっていてもよい脂肪族不飽和基以外の炭素数1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基、Rf
1はCF
3−(CF
2)
m−(CH
2)
n−基(ただし、mは0以上の整数、nは1以上の整数である)であり、aは1〜3の整数、x,y,zは、それぞれx≧0、y≧1、z≧0の整数である。)
(B)1分子あたり少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を有し、脂肪族不飽和基を有さない有機ケイ素化合物、
(C)白金族金属を含むヒドロシリル化触媒、
(D)平均粒径0.5〜100μmのシリコーンパウダー:(A)、(B)成分の合計100質量部に対し0.1〜500質量部、
を含むことを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物を提供する。
【0015】
このような本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、リフロー工程においてクラックの発生を抑制できる信頼性の高い、高い光取り出し効率を有する硬化物を与えることができ、光半導体素子(光学素子)用封止材として好適に用いることができる。
【0016】
また、前記(A)成分が、前記(A−1)成分に加えて、
(A−2)一分子中に、2個以上のケイ素原子結合脂肪族不飽和基及び1個以上のケイ素原子結合CF
3−(CF
2)
m−(CH
2)
n−基を有し、かつSiO
4/2及び/又はRSiO
3/2で示されるシロキサン単位の分岐構造を有するオルガノポリシロキサン(m、nは上記と同様であり、Rは置換又は非置換の一価炭化水素基である。Rを有するシロキサン単位が複数ある場合には、Rはそれぞれ同一の基であっても異なる基であってもよい。)を含有するものであることが好ましい。
【0017】
このような(A)成分含有の本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物であれば、得られる硬化物の硬度が優れたものとなるため好ましい。
【0018】
また、前記(D)成分が、ポリオルガノシルセスキオキサン樹脂を含むシリコーンパウダーであることが好ましい。
【0019】
このような(D)成分含有の本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物であれば、更に高い光取り出し効率およびリフロー工程において高い信頼性を与えることができ好都合である。
【0020】
更に、前記CF
3−(CF
2)
m−(CH
2)
n−基において、m=0、n=2であることが好ましい。
【0021】
このような本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物であれば、合成面に優れるので好都合である。
【0022】
前記(B)成分が、下記平均組成式(2):
R
3a’H
bSiO
(4−a’−b)/2 (2)
(式中、R
3は、脂肪族不飽和基以外の互いに同一又は異種の非置換もしくは置換の、ケイ素原子に結合した一価炭化水素基であり、a’及びbは、0.7≦a’≦2.1、0.001≦b≦1.0、かつ0.8≦a’+b≦3.0を満足する正数である。)
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることが更に好ましい。
【0023】
このような(B)成分であれば、架橋剤としてより好適に作用するため好都合である。
【0024】
更に、前記硬化性シリコーン樹脂組成物が、光半導体素子を封止するものとして用いられるものであることが好ましい。
【0025】
このような硬化性シリコーン樹脂組成物であれば、リフロー工程において高い信頼性を与えて、優れた光取り出し効率を有し、光半導体素子を封止するものとして好適である。
【0026】
更に本発明は、前記硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化して得られる硬化物を提供する。
【0027】
このような硬化物であれば、リフロー工程における加熱時のクラックの発生を抑制して高い信頼性を与えて、光取り出し効率の優れた硬化物として好適に使用することができる。
【0028】
前記硬化性シリコーン樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止・加熱硬化して得られるものである光半導体デバイスを提供する。
【0029】
このような光半導体デバイスであれば、光取り出し効率の良い、信頼性の高い光半導体デバイスとなる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、高い光取り出し効率を有し、リフロー工程において信頼性の高い硬化物を与えるものである。よって、より信頼性の高い光半導体デバイス用の材料、光学デバイス・光学部品用材料、電子デバイス・電子部品用絶縁材料、コーティング材料等として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、
付加硬化型シリコーン組成物であって、
(A)
(A−1)下記一般式(1)で表され、一分子あたり少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有する化合物、
【化2】
(式中、R
1は脂肪族不飽和基、R
2は同一でも異なっていてもよい脂肪族不飽和基以外の炭素数1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基、Rf
1はCF
3−(CF
2)
m−(CH
2)
n−基(ただし、mは0以上の整数、nは1以上の整数である)であり、aは1〜3の整数、x,y,zは、それぞれx≧0、y≧1、z≧0の整数である。)、
(B)1分子あたり少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を有し、脂肪族不飽和基を有さない有機ケイ素化合物、
(C)白金族金属を含むヒドロシリル化触媒、
(D)平均粒径0.5〜100μmのシリコーンパウダー:(A)、(B)成分の合計100質量部に対し0.1〜500質量部、
を含むことを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物が上記目的を達成できることを見出した。
【0033】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物であれば、リフロー工程における加熱時のクラックが抑止可能な信頼性の高い、高い光取り出し効率を有する硬化物を与えることができる。すなわち、本発明の付加硬化型シリコーン組成物を光半導体素子(光学素子)用封止材として使用することで、リフロー工程において信頼性に優れるものとすることができ、高い光取り出し効率を実現することできる。また、光半導体素子からの発光は、高透明、低屈折率である前記硬化物表面によって全反射が抑えられることから、光半導体素子特にLED素子の輝度を向上させることできる。
【0034】
本発明は、上記(A)成分〜(D)成分の組み合わせにおいて、シリコーンパウダーの粒径が大きいので、比表面積が小さくなり、高温時、酸化による変色を受けにくい。従って、近年一層高輝度化したLED素子(光半導体素子)からの発熱量の増加により、駆動時のLED素子表面温度の高温化の状況の中でも、本発明のように、粒径の大きなシリコーンパウダー(シリコーン微粒子)を含むシリコーン樹脂組成物をシリコーン封止材に使用すると、シリコーンパウダーの酸化による封止材の変色が進行しにくいため、光取り出し効率が優れたものとなり、リフロー工程において信頼性に優れるものとなる。
【0035】
以下、本発明について詳細に説明する。
[硬化性シリコーン樹脂組成物]
<(A)成分>
(A−1)下記一般式(1)で表され、一分子あたり少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有する化合物である。
【化3】
(式中、R
1は脂肪族不飽和基、R
2は同一でも異なっていてもよい脂肪族不飽和基以外の炭素数1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基、Rf
1はCF
3−(CF
2)
m−(CH
2)
n−基(ただし、mは0以上の整数、nは1以上の整数である)であり、aは1〜3の整数、x,y,zは、それぞれx≧0、y≧1、z≧0の整数である。)
【0036】
(A−1)成分において、上記一般式(1)中のR
1の脂肪族不飽和基としてはアルケニル基が好ましく、ビニル基、アリル基、エチニル基等の炭素数2〜10、特に2〜6のアルケニル基が好ましく、特にビニル基が好ましい。
【0037】
R
2の脂肪族不飽和基以外の炭素数1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、クロロメチル基、クロロプロピル基、クロロシクロヘキシル基等のハロゲン化炭化水素基等が例示される。好ましくは、非置換の炭素数1〜6の一価炭化水素基であり、特に好ましいのはメチル基である。
【0038】
Rf
1はCF
3−(CF
2)
m−(CH
2)
n−(mは0以上の整数、nは1以上の整数)で定義され、mは好ましくは0≦m≦9を満たす整数であり、nは好ましくは1≦n≦10を満たす整数である。Rf
1は、複数ある場合(yが2以上の場合)には、それぞれ同一の基であっても異なる基であってもよい。
【0039】
本発明として合成面から特に好ましいのは、CF
3−(CH
2)
2−、CF
3−(CF
2)
3−(CH
2)
2−、CF
3−(CF
2)
5−(CH
2)
2−基であり、この中でも、上記m=0であり、かつn=2であるCF
3−(CH
2)
2−が更に好ましい。
【0040】
(A−1)成分において、xは0以上の整数であり、好ましくは0〜50の整数、yは1以上の整数であり、好ましくは2〜5,000、より好ましくは5〜1,000の整数である。zは0以上の整数、好ましくは0〜10,000、より好ましくは0〜5,000の整数である。x+y+zは、好ましくは5〜10,000、より好ましくは10〜3,000、特に好ましくは20〜500である。また、y/(x+y+z)の値は好ましくは1/50〜1/1、より好ましくは1/10〜1/1、特に好ましくは1/5〜1/1の範囲であることが好適である。
【0041】
(A−1)成分のオルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が100〜10,000,000mPa・s、特に200〜500,000mPa・sの範囲にあるものが好適であり、これらのオルガノポリシロキサンは、1種単独でも2種以上の組み合わせでも使用することができる。尚、粘度は回転粘度計にて測定する粘度である。
【0042】
(A−1)成分のオルガノポリシロキサンは、それ自体公知の方法で製造することができる。例えば、下記一般式(i)で表されるシクロトリシロキサンと下記一般式(ii)で表されるシクロトリシロキサンと下記一般式(iii)で表されるオルガノシロキサン、及び必要により下記一般式(iv)で表されるシクロトリシロキサンとを、アルカリ又は酸触媒存在下で共重合させることによって得ることができる。
【化4】
(式中、R
1、R
2、Rf
1、aは前記の通りである。)
【0043】
(A−2)成分
本発明に使用される硬化性シリコーン樹脂組成物は、得られる硬化物の硬度をより優れたものとするために、(A−2)成分を上記(A−1)成分に添加することが好ましい。
【0044】
使用される(A−2)成分は、一分子中に、2個以上のケイ素原子結合脂肪族不飽和基及び1個以上のケイ素原子結合CF
3−(CF
2)
m−(CH
2)
n−基を有し、かつSiO
4/2及び/又はRSiO
3/2で示されるシロキサン単位の分岐構造を有するオルガノポリシロキサン(mは0以上の整数、nは1以上の整数である。Rは置換又は非置換の一価炭化水素基である。Rを有するシロキサン単位が複数ある場合には、Rはそれぞれ同一の基であっても異なる基であってもよい。)である。
【0045】
(A−2)成分のオルガノポリシロキサンは、SiO
4/2単位及び/又はRSiO
3/2単位からなる分岐構造を必須とするが、さらにメチルビニルシロキシ単位、ジメチルシロキシ単位等のR
2SiO
2/2、ジメチルビニルシロキシ単位、トリメチルシロキシ単位等のR
3SiO
1/2単位を含んでもよい(式中、Rは前記の通りである)。
【0046】
SiO
4/2単位及び/又はRSiO
3/2単位の含有量は、好ましくは(A−2)成分のオルガノポリシロキサン樹脂中の全シロキサン単位の5モル%以上、より好ましくは10モル〜95モル%、特に好ましくは25〜80モル%である。
【0047】
またこのオルガノポリシロキサンは、単離の面から重量平均分子量が500〜100,000の範囲であるものが好適である。
【0048】
<(B)成分>
(B)成分は、1分子あたり少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を有し、そして脂肪族不飽和基を有さない有機ケイ素化合物(SiH基含有有機ケイ素化合物)であり、(A)成分とヒドロシリル化付加反応し、架橋剤として作用する。(B)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0049】
(B)成分としては、1分子あたり少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を有し、そして脂肪族不飽和基を有さない有機ケイ素化合物である限り、公知のいかなる化合物でも使用することができるが、例えば、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、オルガノハイドロジェンシラン類、有機オリゴマー又は有機ポリマーが挙げられる。
【0050】
(B)成分中のケイ素原子に結合した有機基は、脂肪族不飽和基を有さず、非置換の一価炭化水素基又はハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)、エポキシ基含有基(例えば、エポキシ基、グリシジル基、グリシドキシ基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基)等で置換された一価炭化水素基である。このような一価炭化水素基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、より好ましくはメチル基又はエチル基が挙げられ、あるいはこれらの基が上記例示の置換基によって置換された基を挙げることができる。また、該一価炭化水素基の置換基としてエポキシ基含有基及び/又はアルコキシ基を有する場合、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物に接着性を付与することができる。
【0051】
さらに上述した(A−1)、(A−2)成分中のCF
3−(CF
2)
m−(CH
2)
n−(mは0以上の整数、nは1以上の整数)で定義された置換基を(B)成分に導入すると、さらに光半導体素子からの発光が高透明となり、前記硬化物表面により全反射を抑えることから、特にLEDの輝度を向上するのでより好ましい。本発明として合成面から特に好ましいのは、CF
3−(CH
2)
2−、CF
3−(CF
2)
3−(CH
2)
2−、CF
3−(CF
2)
5−(CH
2)
2−基である。
【0052】
(B)成分は、一分子あたり少なくとも2個のSiH基を有する有機ケイ素化合物である限り、該有機ケイ素化合物の分子構造に特に制限はなく、例えば、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状構造(樹脂状)等の、従来製造されている各種の有機ケイ素化合物を使用することができる。
【0053】
(B)成分の有機ケイ素化合物は、一分子中に少なくとも2個(通常、2〜300個程度)、好ましくは3個以上(通常、3〜200個、好ましくは4〜100個程度)のSiH基を有する。(B)成分の有機ケイ素化合物が直鎖状構造又は分岐鎖状構造を有する場合、これらのSiH基は、分子鎖末端及び分子鎖非末端部分のどちらか一方にのみ位置していても、その両方に位置していてもよい。
【0054】
(B)成分の有機ケイ素化合物の一分子中のケイ素原子の数(重合度)は、好ましくは2〜1,000個、より好ましくは3〜200個、更により好ましくは4〜100個程度である。更に、(B)成分の有機ケイ素化合物は25℃で液状であることが好ましく、回転粘度
計により測定された25℃における粘度は、好ましくは1〜1,000mPa・s、より好ましくは10〜100mPa・s程度である。
【0055】
(B)成分の有機ケイ素化合物としては、例えば、下記平均組成式(2)で示されるものを用いることができる。
R
3a’H
bSiO
(4−a’−b)/2 ・・・(2)
(式中、R
3は、互いに同一又は異種の、脂肪族不飽和基以外の置換又は非置換の、ケイ素原子結合一価炭化水素基であり、a’及びbは、0.7≦a’≦2.1、0.001≦b≦1.0、かつ0.8≦a’+b≦3.0、好ましくは1.0≦a’≦2.0、0.01≦b≦1.0、かつ1.5≦a’+b≦2.5を満足する正数である。)
【0056】
R
3の脂肪族不飽和基以外の置換又は非置換の、ケイ素原子結合一価炭化水素基としては、上記脂肪族不飽和基以外の非置換又は置換の1価炭化水素基として具体的に例示した炭素数1〜6のアルキル基又はハロアルキル基、及び炭素数6〜10のアリール基等
の置換又は非置換の基が挙げられる。R
3は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、又はハロアルキル基である。
【0057】
上記平均組成式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、式:R
3HSiOで示されるオルガノハイドロジェンシロキサン単位を少なくとも4個含む環状化合物、式:R
33SiO(HR
3SiO)
cSiR
33で示される化合物、式:HR
32SiO(HR
3SiO)
cSiR
32Hで示される化合物、式:HR
32SiO(HR
3SiO)
c(R
32SiO)
dSiR
32Hで示される化合物等が挙げられる。上記式中、R
3は前記の通りであり、c及びdは少なくとも1である。
【0058】
あるいは、上記平均組成式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、式:H
3SiO
1/2で示されるシロキサン単位、式:R
3HSiOで示されるシロキサン単位及び/又は式:R
32HSiO
1/2で示されるシロキサン単位を含むものであってもよい。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、SiH基を含まないモノオルガノシロキサン単位、ジオルガノシロキサン単位、トリオルガノシロキサン単位及び/又はSiO
4/2単位を含んでいてもよい。上記式中のR
3は前記の通りである。
【0059】
上記平均組成式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンに含まれる全オルガノシロキサン単位のうち、30〜100モル%がメチルハイドロジェンシロキサン単位であることが好ましい。
【0060】
(B)成分が一分子あたり少なくとも2個のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである場合、その具体例としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、これらの各例示化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基で置換されたオルガノハイドロジェンポリシロキサン、式:R
33SiO
1/2で示されるシロキサン単位と式:R
32HSiO
1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO
4/2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R
32HSiO
1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO
4/2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R
3HSiO
2/2で示されるシロキサン単位と式:R
3SiO
3/2で示されるシロキサン単位及び式:H
3SiO
1/2で示されるシロキサン単位のどちらか一方又は両方とからなるオルガノシロキサン共重合体、及び、これらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。上記式中のR
3は、前記と同様の意味を有する。
【0061】
(B)成分の配合量は、(C)成分のヒドロシリル化触媒の存在下に本発明の組成物を硬化させるのに十分な量であればよく、好ましくは(A)成分中の脂肪族不飽和基に対する(B)成分中のSiH基のモル比が0.2≦SiH基/脂肪族不飽和基≦5.0、更に好ましくは0.5≦SiH基/脂肪族不飽和基≦2.0となる量である。
【0062】
<(C)成分>
(C)成分は、(A)成分と(B)成分とのヒドロシリル化付加反応を促進する、白金族金属系触媒である。
【0063】
(C)成分の白金族金属系触媒としては、(A)成分中のケイ素原子結合脂肪族不飽和基と(B)成分中のSiH基とのヒドロシリル化付加反応を促進するものであれば、いかなる触媒を使用してもよい。(C)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。(C)成分としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の白金族金属や、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との配位化合物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属化合物が挙げられるが、特に好ましくは白金化合物である。
【0064】
(C)成分の配合量はヒドロシリル化触媒としての有効量でよく、好ましくは(A)及び(B)成分の合計質量に対して白金族金属元素の質量換算で0.1〜1000ppmの範囲であり、より好ましくは1〜500ppmの範囲である。
【0065】
<(D)成分>
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分と共に、シリコーンパウダー((D)成分)を含むことを特徴とする。
【0066】
(D)成分としてシリコーンパウダーを添加することで得られる利点は、光取り出し効率の向上およびリフロー工程において高い信頼性を与えることである。シリコーンパウダーを添加することによって、封止材の屈折率が変化することにより光取り出し効率が向上し、また熱衝撃に対する機械特性が向上することによってリフロー工程におけるクラックが抑制可能な封止樹脂を与える。
【0067】
該シリコーンパウダーとしては、ポリオルガノシルセスキオキサン微粉末であるシリコーンレジンパウダー、例えば特公昭40−16917号公報、特開昭54−72300号公報、特開昭60−13813号公報、特開平3−244636号公報、特開平4−88023号公報記載のもの、及びシリコーンゴムパウダーの表面にポリオルガノシルセスキオキサン微粉末(樹脂)を被覆した構造のシリコーン複合パウダー、例えば特開平7−196815号公報記載のものなどがある。
【0068】
前記シリコーンパウダーは、ポリオルガノシルセスキオキサン樹脂からなるものでもよく、又は表面の一部又は全部にポリオルガノシルセスキオキサン樹脂を有するものでもよい。これらシリコーンパウダーは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。上記シリコーンパウダーは、公知の製造方法によって作製することができ、市販品として入手可能である。
【0069】
このようなシリコーンパウダーは、平均粒径0.5〜100μmの範囲内のものであり、好ましくは1〜15μmである。平均粒径が0.5μm未満であると、組成物中に分散させた場合にパウダー同士の凝集が起こりやすくなり、樹脂硬化物の強度低下を招き、更に、比表面積増大に伴い熱時の酸化による変色の原因となり耐熱変色性の低下を起こす恐れがある。また、平均粒径が100μmを超えると、硬化物中への均一な分散・ディスペンス作業性の低下(具体的には糸引き、ディスペンスノズルの詰り)という観点から好ましくない。なお、上記平均粒径はレーザー光回折による粒度分布測定における累積重量平均値D
50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0070】
このようなシリコーンパウダーとしては、シリコーンレジンパウダーであれば例えば、信越化学工業(株)製 KMP590、KMP701、X−52−854、X−52−1621が挙げられ、シリコーン複合パウダーであれば例えば、信越化学工業(株)製 KMP600、KMP601、KMP602、KMP605、X−52−7030が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0071】
このようなシリコーンパウダーの添加量は、(A)、(B)成分の合計100質量部に対し0.1〜500質量部であり、好ましくは1〜100重量部である。添加量が0.1重量部未満であると、高い光取り出し効率が得られ難い。また、添加量が500重量部を超えると、ディスペンス作業性の低下の観点から好ましくない。
【0072】
<その他の成分>
本発明の組成物には、前記(A)〜(C)成分及び(D)成分以外にも、その他の任意の成分を配合することができる。その具体例としては、以下のものが挙げられる。これらのその他の成分は、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0073】
(A)成分以外の脂肪族不飽和基含有化合物
本発明の組成物には、(A)成分以外にも、(B)成分と付加反応する脂肪族不飽和基含有化合物を配合してもよい。(A)成分以外のこのような脂肪族不飽和基含有化合物としては、硬化物の形成に関与するものが好ましく、1分子あたり少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有する(A)成分以外のオルガノポリシロキサンが挙げられる。その分子構造は、例えば、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状等、いずれでもよい。
【0074】
本発明においては、上記オルガノポリシロキサン以外の脂肪族不飽和基含有有機化合物を配合することが可能である。該脂肪族不飽和基含有化合物の具体例としては、ブタジエン、多官能性アルコールから誘導されたジアクリレートなどのモノマー;ポリエチレン、ポリプロピレン又はスチレンと他のエチレン性不飽和化合物(例えば、アクリロニトリル又はブタジエン)とのコポリマーなどのポリオレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、又はマレイン酸のエステル等の官能性置換有機化合物から誘導されたオリゴマー又はポリマーが挙げられる。(A)成分以外の脂肪族不飽和基含有化合物は室温で液体であっても固体であってもよい。
【0075】
付加反応制御剤
本発明の組成物には、ポットライフを確保するために、付加反応制御剤を本発明組成物に配合することができる。付加反応制御剤は、上記(C)成分のヒドロシリル化触媒に対して硬化抑制効果を有する化合物であれば特に限定されず、従来から公知のものを用いることもできる。その具体例としては、トリフェニルホスフィンなどのリン含有化合物;トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物;硫黄含有化合物;アセチレンアルコール類(例えば、1−エチニルシクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール)等のアセチレン系化合物;アルケニル基を2個以上含む化合物;ハイドロパーオキシ化合物;マレイン酸誘導体などが挙げられる。
【0076】
上記付加反応制御剤による硬化抑制効果の度合は、その付加反応制御剤の化学構造によって異なる。よって、使用する付加反応制御剤の各々について、その添加量を最適な量に調整することが好ましい。最適な量の付加反応制御剤を添加することにより、本発明の組成物は室温での長期貯蔵安定性及び加熱硬化性に優れたものとなる。
【0077】
シランカップリング剤
また、本発明の組成物は、その接着性を向上させるための接着付与剤を含有してもよい。この接着付与剤としては、シランカップリング剤やその加水分解縮合物等が例示される。シランカップリング剤としては、エポキシ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤、イソシアヌレート基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤等公知のものが例示され、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.3〜10質量部用いることができる。
【0078】
その他の任意成分
硬化物の着色、酸化劣化等の発生を抑えるために、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等の従来公知の酸化防止剤を本発明の組成物に配合することができる。また、光劣化に対する抵抗性を付与するために、ヒンダードアミン系安定剤等の光安定剤を本発明組成物に配合することもできる。更に、本発明の組成物から得られる硬化物の透明性に影響を与えない範囲で、強度を向上させ、粒子の沈降を抑えるためにヒュームドシリカ、ナノアルミナ等の無機質充填剤を本発明組成物に配合してもよいし、必要に応じて、染料、顔料、難燃剤等を本発明組成物に配合してもよい。
【0079】
[硬化物]
本発明のシリコーン組成物は、公知の硬化条件下で公知の硬化方法により硬化させることができる。具体的には、通常、80〜200℃、好ましくは100〜160℃で加熱することにより、該組成物を硬化させることができる。加熱時間は、0.5分〜5時間程度、特に1分〜3時間程度でよいが、LED封止用等精度が要求される場合は、硬化時間を長めにすることが好ましい。得られる硬化物の形態は特に制限されず、例えば、ゲル硬化物、エラストマー硬化物及び樹脂硬化物のいずれであってもよい。
【0080】
[光半導体デバイス]
本発明の組成物の硬化物は、通常の付加硬化性シリコーン組成物の硬化物と同様に耐熱性、耐寒性、電気絶縁性に優れる。本発明の組成物からなる封止材によって封止される光半導体素子(光学素子)としては、例えば、LED、半導体レーザー、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、CCD等が挙げられる。このような光半導体素子に本発明の組成物からなる封止材を塗布し、塗布された封止材を公知の硬化条件下で公知の硬化方法により、具体的には上記した通りに硬化させることによって、光半導体素子を封止した光半導体デバイスを得ることができる。例えば
図1に示す発光半導体装置(光半導体デバイス)10において、筐体1にダイボンド材5を介して、発光素子(光半導体素子)2がダイボンディングされている。リード電極3、4に金線6が接続されており、発光素子(光半導体素子)2及び金線6は、本発明の組成物の硬化物である封止樹脂7によって封止されている。
【実施例】
【0081】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例等に制限されるものではない。なお、下記の例において、シリコーンオイル又はシリコーンレジンの平均組成を示す記号は以下の通りの単位を示す。また、各シリコーンオイル又は各シリコーンレジンのモル数は、各成分中に含有されるビニル基又はSiH基のモル数を示すものである。
M
H:(CH
3)
2HSiO
1/2
M
Vi:(CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2
D
H:(CH
3)HSiO
2/2
D
F:CF
3(CH
2)
2CH
3SiO
2/2
D
Vi:(CH
2=CH)(CH
3)SiO
2/2
T:CH
3SiO
3/2
T
F:CF
3(CH
2)
2SiO
3/2
T
F13:CF
3(CF
2)
5(CH
2)
2SiO
3/2
D
F13:CF
3(CF
2)
5(CH
2)
2CH
3SiO
2/2
【0082】
[配合例1]
((A)成分)
((A−1)成分)平均組成式:M
Vi2D
F22.7のシリコーンオイル:50質量部
((A−2)成分)平均組成式:D
Vi2T
F8のシリコーンレジン:50質量部
((B)成分)平均組成式:M
H3T
Fで表されるハイドロジェンシロキサン:5.4質量部および下記式(V)で表されるハイドロジェンシロキサン:5.4質量部
【化5】
((C)成分)塩化白金酸/1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するトルエン溶液0.25質量部をよく撹拌してシリコーン組成物1を調製した。
【0083】
[配合例2]
(A成分)
((A−1)成分)平均組成式:M
Vi2D
F134D
F12のシリコーンオイル:90質量部
((A−2)成分)平均組成式:D
Vi2T
9T
F136のシリコーンレジン:10質量部
(B成分)
((B)成分)平均組成式:M
H3T
F13で表されるハイドロジェンシロキサン12.3質量部
((C)成分)塩化白金酸/1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として0.5質量%含有するトルエン溶液0.1質量部および制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.01質量部をよく撹拌してシリコーン組成物2を調製した。
【0084】
[実施例1]
配合例1の組成物100質量部にシリコーン複合パウダー(信越化学工業(株)製、品名KMP−600、平均粒径5μm)5.0質量部を均一混合して、組成物(a)を調製した。
【0085】
[実施例2]
配合例1の組成物100質量部にシリコーンレジンパウダー(信越化学工業(株)製、品名X−52−1621、平均粒径5μm)5.0質量部を均一混合して、組成物(b)を調製した。
【0086】
[実施例3]
配合例2の組成物100質量部にシリコーン複合パウダー(信越化学工業(株)製、品名KMP−600、平均粒径5μm)5.0質量部を均一混合して、組成物(c)を調製した。
【0087】
[実施例4]
配合例2の組成物100質量部にシリコーンレジンパウダー(信越化学工業(株)製、品名X−52−1621、平均粒径5μm)5.0質量部を均一混合して、組成物(d)を調製した。
【0088】
[比較例1]
シリコーンパウダーを添加することなく、配合例1の組成物をそのまま用い、組成物(e)を調製した。
【0089】
[比較例2]
シリコーンパウダーを添加することなく、配合例2の組成物をそのまま用い、組成物(f)を調製した。
【0090】
[比較例3]
配合例1の組成物100質量部にゴムパウダー(信越化学工業(株)製、品名KMP−590、平均粒径5μm)5.0質量部を均一混合して、組成物(g)を調製した。
【0091】
[比較例4]
配合例1の組成物100質量部にシリコーンレジンパウダー(信越化学工業(株)製、品名X−52−854の粗粒をカットし、平均粒径0.4μmとしたもの)5.0質量部を均一混合して、組成物(h)を調製した。
【0092】
[比較例5]
配合例1の組成物100質量部にシリコーンレジンパウダー(信越化学工業(株)製、品名X−52−1621、平均粒径5μm)600質量部を均一混合して、組成物(i)を調製した。
【0093】
上記実施例及び比較例で調製したシリコーン組成物(a)〜(i)における評価を、下記の要領にて行った。
[評価方法]
光半導体パッケージ
光半導体素子として、InGaNからなる発光層を有し、主発光ピークが450nmのLEDチップを、SMD3020パッケージ及びSMD5050パッケージ(I−CHIUN PRECISION INDUSTRY CO.,社製、樹脂部PPA)にそれぞれ搭載しワイヤーボンディングした、
図1に示すような構造の発光半導体装置(光半導体デバイス)10を使用した。ここで、
図1中、上述の通り1が筐体、2が発光素子(光半導体素子)、3、4がリード電極、5がダイボンド材、6が金線、7が封止樹脂である。封止樹脂7の硬化条件は150℃、4時間である。封止樹脂7として、上記組成物(a)〜(i)を用いて評価した。
作製した発光半導体装置10個を全光束測定システム HM−9100(大塚電子(株)製)を用い、全光束値を測定し、平均値を求めた(印加電流IF=20mA)。各シリコーンパウダー添加による光取り出し効率の良否を求めるため、上記で測定した値を比較した(下式)。
(光取り出し効率)={(パウダー添加後の全光束値)
/(パウダー添加前の全光束値)}×100−100(ポイント)
上式からわかるように、光取り出し効率は正の値を取るものが基準と比較して明るいことを意味し、負の値を取るものは基準と比較して暗いことを意味する。
【0094】
リフロー耐クラック性
作製した発光半導体装置5個を260℃、3分の条件下に暴露し、クラックが発生し不点灯となったLED数をカウントした。即ち、数値が0であるときリフロー時における耐クラック性に優れ、5であるときパッケージは全て不点灯となり信頼性に劣ることを意味する。
これらの結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示されるように、実施例1〜2は、光取り出し効率が優れたものであった。さらに、ディスペンス性およびリフロー耐クラック性は良好であり、製品信頼性に優れるものであった。加えて、実施例3〜4に示すように、CF
3(CF
2)
5(CH
2)
2を有するポリオルガノシロキサンを用いた場合においても、光取り出し効率は優れるものであり、かつディスペンス性およびリフロー耐クラック性は良好であった。
一方、比較例1は、光取り出し効率が実施例1〜2と比較して低かった。さらに、リフローによるクラック不良が発生し、封止材料として従来のものを用いた場合では、LEDの信頼性が悪くなってしまうことがわかる。
比較例2では、光取り出し効率が実施例3〜4と比較して低かった。さらに、リフローによるクラック不良が発生し、封止材料として従来のものを用いた場合では、LEDの信頼性が悪くなってしまうことがわかる。
比較例4は、平均粒径の小さなシリコーンパウダーを添加した場合であるが、シリコーンパウダー添加後の光取り出し効率が低下した。これにより、封止材料として従来のものを用いた場合、LEDの輝度が悪くなってしまうことが分かる。
比較例3および比較例5は、ディスペンス時にノズル詰まりを発生し、パッケージへの安定塗布が行えなかった。
以上のことから、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物であれば、光取り出し効率に優れ、リフロー工程におけるクラックを抑制することが可能であり、LED用封止材料として有用なものであることが実証された。
【0097】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。