特許第6096418号(P6096418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096418
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】X線検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/223 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   G01N23/223
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-91311(P2012-91311)
(22)【出願日】2012年4月12日
(65)【公開番号】特開2013-221744(P2013-221744A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智
(72)【発明者】
【氏名】駒田 世志人
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 嘉之
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−256036(JP,A)
【文献】 特開昭60−078309(JP,A)
【文献】 特開平11−037960(JP,A)
【文献】 特開昭63−140950(JP,A)
【文献】 特開2006−329944(JP,A)
【文献】 特開昭57−197454(JP,A)
【文献】 特開平06−308060(JP,A)
【文献】 特開2000−199748(JP,A)
【文献】 特開2000−249667(JP,A)
【文献】 米国特許第06292532(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/227
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線照射部と、
該X線照射部からX線を照射される試料を支持する試料支持部と、
試料から発生するX線を検出するX線検出器と、
大きさの異なる複数の絞り孔を有し、X線が通過する絞り孔を変更すべく移動することが可能なコリメータと、
前記試料支持部が支持する試料の光学像を取得する撮像部とを備え、
前記コリメータは、
前記試料の光学像のための光が直線状に通過できる窓部を有し、
前記撮像部が前記窓部を通して前記試料の光学像を取得できるように、前記試料へ照射される光及び前記試料で反射した光が前記窓部を直線状に通過する位置に前記窓部の位置を変更すべく移動することが可能なようにしてあり、
前記試料へ照射される光の経路及び前記試料で反射した光の経路は、前記窓部以外は前記コリメータの移動に応じた位置の変更をしない部位を経由すること
を特徴とするX線検出装置。
【請求項2】
前記コリメータは、
一の方向に沿って前記複数の絞り孔及び前記窓部を並べてあり、
前記方向へ移動することが可能なようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載のX線検出装置。
【請求項3】
前記方向に平行なシャフトと、
該シャフトに平行な駆動軸を有し、該駆動軸を長手方向に直線駆動する直線駆動モータとを備え、
前記シャフトは前記駆動軸に連結してあり、
前記コリメータは前記シャフトに連結してあること
を特徴とする請求項2に記載のX線検出装置。
【請求項4】
前記X線照射部のX線が出射する端部、前記X線検出器のX線が入射する端部、及び前記コリメータは、密閉箱内に配置されており、
前記シャフトは、
前記密閉箱の壁を貫通しており、密閉状態を保つための軸シールが設けられていること
を特徴とする請求項3に記載のX線検出装置。
【請求項5】
前記試料支持部は、水平板状であり、試料が載置されるX線透過窓を有しており、
前記撮像部は、前記試料支持部の直下に配置されており、
前記コリメータは、前記試料支持部の下面に沿って移動するようにしてあり、
前記X線照射部は、前記X線透過窓に対して斜め下側からX線を照射する位置に配置されており、
前記X線検出器は、前記X線透過窓を斜め下方向へ透過したX線を検出する位置に配置されていること
を特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載のX線検出装置。
【請求項6】
前記窓部は、透明の平板を用いて構成されていること
を特徴とする請求項5に記載のX線検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を試料へ照射し、試料から発生する蛍光X線を検出するX線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光X線分析は、X線を試料へ照射し、試料から発生する蛍光X線を検出し、蛍光X線のスペクトルから、試料に含有される元素の定性分析又は定量分析を行う分析手法である。X線検出装置には、一般的に、試料の分析対象部分から発生した蛍光X線以外のX線が検出されることを抑制するために、照射用のX線又は蛍光X線を絞るコリメータが設けられている。コリメータは、X線を遮断する物体に絞り孔を形成したものであり、試料の分析対象部分へ照射されるX線又は試料の分析対象部分から発生した蛍光X線を通過させて他のX線を遮断することにより、試料の分析対象部分からの蛍光X線を選択的にX線検出器へ入射させる。試料の分析対象部分の大きさは、試料の違い又は分析目的の違い等によって異なり、X線又は蛍光X線を絞る範囲の大きさも異なる。そこで、径の異なる複数の絞り孔を有するコリメータを備えたX線検出装置が開発されており、コリメータが移動することで絞り孔の大きさを変更することができるようになっている。特許文献1には、このようなX線検出装置が開示されている。また、X線検出装置には、試料を撮影するための撮像部が備えられていることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−214167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回路基板等の試料の微少化に伴い、X線検出装置には小型化の必要がある。また、より手軽に蛍光X線分析を行うために、X線検出装置の小型化のニーズがある。小型化したX線検出装置では、X線照射部、X線検出器、試料支持部及びコリメータを可及的に近接して配置することになる。このようなX線検出装置では、X線照射部、X線検出器又はコリメータの何れかに試料が遮られ、試料を撮影することが困難である。試料支持部を移動させて試料の撮影を可能にする技術もあるものの、この技術にはX線を照射される位置での試料を撮影することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、小型化をした上で試料の撮影を可能にしたX線検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るX線検出装置は、X線照射部と、該X線照射部からX線を照射される試料を支持する試料支持部と、試料から発生するX線を検出するX線検出器と、大きさの異なる複数の絞り孔を有し、X線が通過する絞り孔を変更すべく移動することが可能なコリメータと、前記試料支持部が支持する試料の光学像を取得する撮像部とを備え、前記コリメータは、前記試料の光学像のための光が直線状に通過できる窓部を有し、前記撮像部が前記窓部を通して前記試料の光学像を取得できるように、前記試料へ照射される光及び前記試料で反射した光が前記窓部を直線状に通過する位置に前記窓部の位置を変更すべく移動することが可能なようにしてあり、前記試料へ照射される光の経路及び前記試料で反射した光の経路は、前記窓部以外は前記コリメータの移動に応じた位置の変更をしない部位を経由することを特徴とする。
【0007】
本発明においては、X線照射部及びX線検出器を備え、試料からのX線を検出するX線検出装置は、移動可能なコリメータに窓部を設けており、窓部を通して撮像部が試料の光学像を取得することができる位置にコリメータが移動する。X線を絞るための位置にコリメータがある場合は試料の撮影が不可能であるものの、コリメータが所定の位置にまで移動した場合は、窓部を通して試料の撮影が可能である。
【0008】
本発明に係るX線検出装置は、前記コリメータは、一の方向に沿って前記複数の絞り孔及び前記窓部を並べてあり、前記方向へ移動することが可能なようにしてあることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、コリメータは、複数の絞り孔及び窓部を同一の方向に並べてあり、この方向に往復移動する。絞り孔の径の変更と撮影が可能な位置への窓部の移動とが一つの動作で実行される。
【0010】
本発明に係るX線検出装置は、前記方向に平行なシャフトと、該シャフトに平行な駆動軸を有し、該駆動軸を長手方向に直線駆動する直線駆動モータとを備え、前記シャフトは前記駆動軸に連結してあり、前記コリメータは前記シャフトに連結してあることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、コリメータは、直線駆動モータによって長手方向に往復運動するシャフトに連結されており、直線駆動モータの動作によって移動する。
【0012】
本発明に係るX線検出装置は、前記X線照射部のX線が出射する端部、前記X線検出器のX線が入射する端部、及び前記コリメータは、密閉箱内に配置されており、前記シャフトは、前記密閉箱の壁を貫通しており、密閉状態を保つための軸シールが設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、X線照射部のX線が出射する端部、X線検出器のX線が入射する端部、及びコリメータは、密閉箱内に配置され、シャフトには軸シールが設けられており、密閉下でX線検出が行われる。
【0014】
本発明に係るX線検出装置は、前記試料支持部は、水平板状であり、試料が載置されるX線透過窓を有しており、前記撮像部は、前記試料支持部の直下に配置されており、前記コリメータは、前記試料支持部の下面に沿って移動するようにしてあり、前記X線照射部は、前記X線透過窓に対して斜め下側からX線を照射する位置に配置されており、前記X線検出器は、前記X線透過窓を斜め下方向へ透過したX線を検出する位置に配置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、X線検出装置は、X線照射部、X線検出器及びコリメータ等の蛍光X線の検出に必要な機構を全て試料支持部の下側に配置してあり、試料は試料支持部に載置される。試料の載置及び交換を邪魔する構造物が無い。
【0016】
本発明に係るX線検出装置は、前記窓部は、透明の平板を用いて構成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、窓部は透明の部材を用いて構成されており、X線透過窓からの試料の落下が窓部によって防止される。
【発明の効果】
【0018】
本発明にあっては、X線を照射される位置から試料が移動せずとも、試料の撮影が可能であるので、X線を照射される位置での試料を撮影することが可能である。X線照射部、X線検出器及びコリメータが近接した状態であっても、試料の撮影が可能となり、蛍光X線の検出と共に試料の撮影も可能にするX線検出装置の小型化が可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】X線検出装置の要部の構成を示す模式的斜視図である。
図2図1のII−II断面を示す模式的断面図である。
図3】コリメータを上側から見た模式的平面図である。
図4】コリメータを上側から見た模式的平面図である。
図5図1のV−V断面を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、X線検出装置の要部の構成を示す模式的斜視図である。X線検出装置は、X線を試料へ照射して発生する蛍光X線を検出し、蛍光X線スペクトルの測定又は試料に含有される元素を分析する蛍光X線分析を行うための装置である。X線検出装置は、試料を支持するための試料支持部1を備えている。試料支持部1は、水平板状であり、試料が載置されることによって試料を支持する。試料支持部1には、貫通孔11が設けられている。図1に図示していない試料は、貫通孔11を塞いで載置される。実際には、図1に示した要部は、電源部等の図示しない他の部分と共に図示しない筐体内に納められている。
【0021】
図2は、図1のII−II断面を示す模式的断面図である。試料支持部1の貫通孔11を塞ぐ位置には、試料Sが載置される。試料支持部1の下側には、載置された試料SへX線を照射するX線照射部3、X線照射部3からのX線を絞るコリメータ2、試料Sから発生する蛍光X線を検出するX線検出器4が配置されている。図2中には、X線照射部3及びX線検出器4を簡略化して断面で示しているが、実際には、X線照射部3及びX線検出器4は複数の部品で構成され内部には空洞も含まれている。
【0022】
試料支持部1は、基部13と、基部13に対して着脱が可能な着脱部12とを有している。基部13及び着脱部12は、共に貫通孔11が形成され、ほぼ平板状になっている。貫通孔11を塞ぐようにX線透過膜14が張られており、X線透過膜14は基部13と着脱部12とで挟まれて固定されている。着脱部12を外した状態で、基部13の貫通孔11にX線透過膜14を張り、着脱部12を基部13に装着することで、X線透過膜14が固定される。貫通孔11及びX線透過膜14は、X線透過窓に対応する。試料Sは、X線透過膜14の上側に載置される。
【0023】
X線照射部3は、試料支持部1上に載置された試料Sの下面に対して斜め下側からX線を照射する位置に配置されている。X線照射部3は、X線管を用いて構成されており、X線の出射端を試料支持部1の貫通孔11へ向けて配置されている。X線検出器4は、試料支持部1上に載置された試料Sの下面から斜め下方向へ放射された蛍光X線を検出することができる位置に配置されている。X線検出器4は、Si素子等のX線検出素子を用いて構成されており、蛍光X線の入射端を試料支持部1の貫通孔11へ向けて配置されている。また、X線照射部3及びX線検出器4は、平板状の試料支持部1に直交して貫通孔11の中心を通る仮想的な中心軸に対して対称な位置に配置され、可及的に試料支持部1に近づけて配置されている。図2中には、仮想的な中心軸を一点鎖線で示している。X線照射部3から試料SへX線が照射され、試料Sでは蛍光X線が発生し、蛍光X線はX線検出器4に検出される。図2中には、X線照射部3から試料Sへ照射されるX線、及び試料Sで発生してX線検出器4に検出される蛍光X線を破線で示している。
【0024】
コリメータ2は、試料支持部1の直下、X線照射部3から試料支持部1までのX線の経路上に配置されている。図3及び図4は、コリメータ2を上側から見た模式的平面図である。実際には、コリメータ2の更に上側に試料支持部1が配置されている。コリメータ2は、X線を遮蔽する部材で形成されており、径が異なる複数の絞り孔21,22,23が形成されている。絞り孔21,22,23の直径は、例えば、1.2mm、3mm及び7mmである。なお、絞り孔の数は三個に限定されるものではなく、二個であってもよく四個以上であってもよい。また、複数の絞り孔の径は、全てが異なっている必要はなく、少なくとも一つの絞り孔の径が他と異なっていればよい。複数の絞り孔21,22,23は、水平面内で、X線照射部3及びX線検出器4が並んだ方向とは交差する方向に沿って並んでいる。
【0025】
コリメータ2は、試料支持部1の下面に沿って、複数の絞り孔21,22,23が並んだ方向へ移動することができるようになっている。移動方向は、図2に示す面に直交する方向であり、図3及び図4の縦方向である。コリメータ2が移動することによって、絞り孔21,22,23の位置が変更され、絞り孔21,22,23の何れかがX線の経路上に位置するようにすることができる。絞り孔21,22,23の何れかがX線の経路上に位置した場合、絞り孔21,22,23の何れかを通過してX線がX線照射部3から試料Sへ照射される。図2及び図3には、絞り孔22がX線の経路上に位置した状態を示している。コリメータ2が移動することによって、X線が通過する絞り孔が変更され、X線が通過する絞り孔の径が変化する。絞り孔の径が変化することによって、試料Sへ照射されるX線の大きさが変化し、試料Sの分析対象部分の大きさが変化する。絞り孔21,22,23を選択することによって、目的に応じて、試料Sの分析対象部分の大きさを選択することができる。絞り孔21,22,23は、X線照射部3からのX線の経路上に配置されるので、貫通孔11の中心を通る仮想的な中心軸からは離れた位置にある。
【0026】
コリメータ2は、更に、光を通過させる窓部24を有している。窓部24は、アクリル板等の透明部材を用いて構成されている。窓部24は、絞り孔21,22,23が並んだ方向に沿った位置に設けられている。コリメータ2は、移動することによって、窓部24が貫通孔11の直下に位置するようにすることができる。図4には、窓部24が貫通孔11の直下に位置した状態を示している。この状態では、窓部24は、貫通孔11の中心を通る仮想的な中心軸上に位置している。
【0027】
図5は、図1のV−V断面を示す模式的断面図である。図5に示す面は、図2に示す面に直交する面である。コリメータ2の下側には、光を通過させるための導光孔51が設けられている。導光孔51は、貫通孔11の直下に垂直に設けられた孔である。導光孔51の下端には導光管52が連結され、導光管52の下端には、CCD(Charge Coupled Device )イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal OxideSemiconductor )イメージセンサ等の撮像素子53が備えられている。撮像素子53は撮像部に対応する。導光孔51の両脇には、導光孔54,54が斜め方向に設けられている。導光孔54,54の下端には、発光ダイオード等の発光素子55,55が備えられている。
【0028】
図5には、貫通孔11の直下に窓部24が位置している状態を示している。この状態では、発光素子55,55からの光は、導光孔54,54を通って窓部24を通過し、試料Sの下面に照射される。試料Sの下面で反射した光は、窓部24を通過し、導光孔51及び導光管52を通り、撮像素子53へ入射する。このようにして、試料Sが撮影される。窓部24の大きさは、試料Sの光学像を撮像素子53で取得するための光が通過できる大きさになっている。即ち、窓部24の大きさは、貫通孔11の上側に載置された試料Sを撮像素子53で撮影するための視野が確保できるだけの大きさである。窓部24の大きさは、絞り孔21,22,23の大きさよりも大きいことが望ましい。図5中には、光の経路を破線で示している。試料Sから撮像素子53までの光は、貫通孔11の中心を通る仮想的な中心軸にほぼ重なった光路を通る。なお、導光孔51及び導光孔54,54中には、図示しないレンズ等の光学系が設けられており、また導光孔51及び導光孔54,54の上端には、アクリル等の透光材製の図示しない蓋が設けられている。
【0029】
X線検出装置は、コリメータ2の移動機構として直線駆動モータ6を備えている。直線駆動モータ6は試料支持部1よりも下側に配置されている。直線駆動モータ6は、駆動軸61を備えており、駆動軸61を長手方向に直線駆動する動作を行う。駆動軸61には、連結板63を介して、平行なシャフト62が連結している。直線駆動モータ6が駆動軸61を駆動させるのに伴って、シャフト62は、駆動軸61に連動して、駆動軸61と平行に長手方向に往復運動を行う。シャフト62は、図5中の横方向に往復運動を行う。シャフト62には、コリメータ2が連結している。シャフト62が往復運動を行うことによって、コリメータ2は試料支持部1の下面にそって移動する。また、試料支持部1の下側は、密閉された密閉箱7になっている。コリメータ2、X線照射部3のX線が出射する端部、及びX線検出器4の蛍光X線が入射する端部は、密閉箱7の中に配置されている。シャフト62は密閉箱7の壁を貫通しており、密閉状態を保つためのオーリング等の軸シール64がシャフト62に設けられている。図示しない真空ポンプを用いて密閉箱7の中を減圧するか、又は密閉箱7内の空気を他の気体で置換することが可能である。蛍光X線の検出は、密閉箱7内が減圧された状態で行われるのが望ましい。
【0030】
X線検出装置は、直線駆動モータ6の動作を制御する図示しない制御部を備えている。制御部は、直線駆動モータ6の動作を制御することによって、コリメータ2の位置を制御する。制御部は、必要に応じて、コリメータ2の位置を、予め定められた複数の位置の内の一つの位置になるように制御する。制御可能な複数の位置には、絞り孔21,22,23の夫々がX線照射部3からのX線の経路上にある位置、及び窓部24が貫通孔11の直下にある位置が含まれる。このように直線駆動モータ6の動作を制御することにより、コリメータ2の絞り孔の径の変更と撮影が可能な位置への窓部24の移動とが可能となる。また、X線検出装置は、蛍光X線測定のための信号処理を実行する図示しない信号処理部を備えている。X線検出器4は、検出した蛍光X線のエネルギーに比例した信号を信号処理部へ出力し、信号処理部は、各値の信号をカウントし、X線検出器4が検出した蛍光X線のエネルギーとカウント数との関係、即ち蛍光X線のスペクトルを取得する処理を行う。なお、X線検出器4は、蛍光X線を波長別に分離して検出する形態であってもよい。また、信号処理部は、蛍光X線のスペクトルに基づいて試料に含有される元素の定性分析又は定量分析を行う蛍光X線分析の処理をも実行する形態であってもよい。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態に係るX線検出装置は、移動可能なコリメータ2に窓部24を設けてある。X線照射部3からのX線を絞るための位置にコリメータ2がある場合は撮影が不可能であるものの、コリメータ2が所定の位置にまで移動した場合は、窓部24を通して試料Sの撮影が可能である。撮像素子53は、試料Sが載置される貫通孔11の直下に配置されており、窓部24が貫通孔11の直下に位置した場合は、他の部品に遮られること無く試料Sの撮影が可能となる。X線を照射される位置から試料Sが移動せずとも、試料Sの撮影が可能であるので、X線を照射される位置での試料Sを撮影することが可能である。X線照射部3、X線検出器4及びコリメータ2が近接した状態であっても、試料Sの撮影が可能となり、蛍光X線分析と共に試料Sの撮影も可能にするX線検出装置の小型化が可能となる。
【0032】
また、X線検出装置では、コリメータ2を移動させるだけで、撮影に必要な光学系を移動させる必要は無いので、安定した撮影が可能になる。コリメータ2は、絞り孔21,22,23及び窓部24を同一の方向に沿って並べており、この方向に往復移動するので、絞り孔の径の変更と撮影が可能な位置への窓部24の移動とを一つの動作で容易に実行することができる。コリメータ2は、連結したシャフト62が直線駆動モータ6によって長手方向に移動することによって、移動が可能になっている。直線駆動モータ6を用いた移動機構は、ラック、ピニオン及びギア等を用いた他の移動機構に比べて、構造が簡単である。コリメータ2の移動に必要な機構が簡単になり、X線検出装置の小型化が容易になる。また、長手方向に移動するシャフト62がコリメータ2に連結した移動機構では、オーリング等の軸シール64をシャフト62に設けるだけで密閉状態を保つためのシーリングが可能であり、ギア等を用いた他の移動機構に比べて、シーリングが容易である。このため、密閉箱7内の密閉状態を容易に保つことができ、密閉箱7内が減圧された状態又は密閉箱7の空気が他の気体で置換された状態で蛍光X線の検出を行うことが可能となる。減圧下で蛍光X線の検出を行うことにより、空気によるX線の吸収、及び空気からの蛍光X線の発生を抑制することができ、試料Sに含まれる軽元素の分析が容易となる。
【0033】
また、X線検出装置は、X線照射部3、X線検出器4及びコリメータ2等の蛍光X線の検出に必要な機構を全て試料支持部1の下側に配置してあり、試料Sは試料支持部1に載置されるようになっている。試料Sの載置及び交換を邪魔する構造物が無いので、使用者による試料Sの取り扱いが容易であり、X線検出装置の利便性は高い。X線検出装置は、蛍光X線の検出が終了し、X線照射部3及びX線検出器4が動作しない状態では、窓部24が貫通孔11の直下に位置するようにコリメータ2の位置を制御してもよい。窓部24は、アクリル板等の透明部材を用いて構成されているので、貫通孔11の直下に配置された蓋の役目を果たす。例えば、X線透過膜14が破れた場合、又は着脱部12を外してX線透過膜14を交換する場合でも、試料Sの落下が窓部24によって防止される。X線透過膜14は、蛍光X線の検出が終了して試料Sを交換する際に特に破れ易い。蛍光X線の検出が終了したときに窓部24を貫通孔11の直下に位置させる制御を行うことによって、X線透過膜14が破れ易い状況での試料Sの落下を防止することが可能である。なお、窓部24は、透明部材を用いない孔であってもよい。この形態では、試料Sの落下を防止することはできないものの、試料Sの撮影は可能である。
【0034】
なお、本実施の形態においては、X線照射部3が照射するX線をコリメータ2で絞る形態を示したが、X線検出装置は、試料Sから発生した蛍光X線をコリメータ2で絞る形態であってもよい。また、X線検出装置は、赤外線等の可視光以外の光で試料Sを撮影する形態であってもよい。また、本実施の形態においては、試料Sの光学像を取得する方法として試料Sを撮影する方法を示したが、X線検出装置は、他の方法で試料Sの光学像を取得する形態であってもよい。例えば、X線検出装置は、試料Sの光学像を撮像素子53で電気信号に変換し、撮像素子53が出力する電気信号に基づいて試料Sの画像を生成し、内部又は外部のディスプレイに試料Sの画像を表示する処理を行うことにより、試料Sの観察を可能にする形態であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 試料支持部
11 貫通孔
14 X線透過膜
2 コリメータ
21、22、23 絞り孔
24 窓部
3 X線照射部
4 X線検出器
53 撮像素子
6 直線駆動モータ
62 シャフト
64 軸シール
7 密閉箱
図1
図2
図3
図4
図5