(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096419
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】X線検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/223 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
G01N23/223
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-91312(P2012-91312)
(22)【出願日】2012年4月12日
(65)【公開番号】特開2013-221745(P2013-221745A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智
(72)【発明者】
【氏名】青山 朋樹
【審査官】
比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭47−037696(JP,A)
【文献】
特開平11−174007(JP,A)
【文献】
特開2000−199750(JP,A)
【文献】
特開昭60−078309(JP,A)
【文献】
実開昭62−199666(JP,U)
【文献】
特開2012−013423(JP,A)
【文献】
特開平04−372845(JP,A)
【文献】
特開2001−083105(JP,A)
【文献】
米国特許第06337897(US,B1)
【文献】
特開昭63−140950(JP,A)
【文献】
米国特許第06718008(US,B1)
【文献】
特表2010−518406(JP,A)
【文献】
特開平10−048398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/227
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料支持部と、該試料支持部が支持する試料へX線を照射するX線照射部と、前記試料から発生するX線を検出するX線検出器と、前記X線照射部が試料へ照射するX線を絞るコリメータとを備えるX線検出装置において、
前記X線照射部のX線の出射口と前記X線検出器のX線の入射口とを前記試料支持部の共通する所定の部分に向けて、前記X線照射部及び前記X線検出器を配置してあり、
前記出射口と前記入射口とを結んだ経路を通るX線、及び前記コリメータの任意の部分と前記入射口とを結んだ経路を通るX線を遮蔽する遮蔽体を備え、
該遮蔽体は、
前記出射口と前記入射口とを結んだ経路を通るX線を遮蔽する第1遮蔽部材、並びに該第1遮蔽部材及び前記コリメータと前記入射口とを結んだ経路を通るX線を遮蔽する第2遮蔽部材を有すること
を特徴とするX線検出装置。
【請求項2】
前記コリメータは平板状であり、
前記遮蔽体は前記コリメータの両面から突出してあること
を特徴とする請求項1に記載のX線検出装置。
【請求項3】
前記遮蔽体は、前記試料支持部が支持する試料から前記入射口までのX線の経路を遮断しない形状であること
を特徴とする請求項1又は2に記載のX線検出装置。
【請求項4】
前記遮蔽体及び前記コリメータが結合してあることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載のX線検出装置。
【請求項5】
前記コリメータは、X線を絞るための複数の絞り孔を有し、
前記遮蔽体及び前記コリメータは、X線が通過する絞り孔を変更するように移動することが可能になっていること
を特徴とする請求項4に記載のX線検出装置。
【請求項6】
前記試料支持部が支持する試料を撮影する撮像素子を更に備え、
前記コリメータは、
光を通過させる窓部を有しており、
前記試料からの光が前記窓部を通過して前記撮像素子へ入射する位置に前記窓部の位置を変更すべく移動することが可能になっていること
を特徴とする請求項5に記載のX線検出装置。
【請求項7】
前記第1遮蔽部材及び前記第2遮蔽部材は、互いに異なる材料で構成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一つに記載のX線検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を試料へ照射し、試料から発生する蛍光X線を検出するX線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光X線分析は、X線を試料へ照射し、試料から発生する蛍光X線を検出し、蛍光X線のスペクトルから、試料に含有される元素の定性分析又は定量分析を行う分析手法である。X線検出装置には、一般的に、X線を絞ってX線の範囲を限定するために、X線を遮断する物体に絞り孔を形成したコリメータが設けられている。試料の違い又は分析目的の違い等に応じて絞り孔の径を変更することができるように、径の異なる複数の絞り孔を有するコリメータを備え、コリメータを移動させることができるX線検出装置が開発されている。
【0003】
X線検出装置では、コリメータで発生する散乱X線又は蛍光X線等、試料から発生する蛍光X線以外のX線が検出されることがある。これらのX線を検出した場合は蛍光X線分析の精度が悪化するので、精度の良い蛍光X線分析のためには、試料から発生する蛍光X線以外のX線をできるだけ検出しないようにすることが望ましい。特許文献1には、X線回折装置において、余分なX線を遮蔽するための遮蔽体を備えた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−66121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回路基板等の試料の微少化に伴い、X線検出装置には小型化の必要がある。また、より手軽に蛍光X線分析を行うために、X線検出装置の小型化のニーズがある。小型化したX線検出装置では、X線照射部、X線検出器、試料支持部及びコリメータを可及的に近接して配置することになる。このようなX線検出装置では、X線照射部からX線検出器へ直接に入射するX線等、試料から発生する蛍光X線以外のX線がよりX線検出器へ入射し易くなる。そこで、試料からの蛍光X線以外のX線を効果的に遮蔽する必要がある。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、遮蔽体を適切に配置することによって、小型化をした上で試料からの蛍光X線以外のX線を効果的に遮蔽することができるX線検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るX線検出装置は、試料支持部と、該試料支持部が支持する試料へX線を照射するX線照射部と、前記試料から発生するX線を検出するX線検出器と、前記X線照射部が試料へ照射するX線を絞るコリメータとを備えるX線検出装置において、前記X線照射部のX線の出射口と前記X線検出器のX線の入射口とを前記試料支持部の
共通する所定の部分に向けて、前記X線照射部及び前記X線検出器を配置してあり、前記出射口と前記入射口とを結んだ経路を通るX線、及び前記コリメータの任意の部分と前記入射口とを結んだ経路を通るX線を遮蔽する遮蔽体を備え、該遮蔽体は、前記出射口と前記入射口とを結んだ経路を通るX線を遮蔽する第1遮蔽部材、並びに該第1遮蔽部材及び前記コリメータと前記入射口とを結んだ経路を通るX線を遮蔽する第2遮蔽部材を有することを特徴とする。
【0008】
本発明においては、X線照射部及びX線検出器を備え、試料からのX線を検出するX線検出装置は、X線を遮蔽する遮蔽体を備える。遮蔽体は、X線照射部からX線検出器へ直接に入射しようとするX線、並びにコリメータで発生する蛍光X線及び散乱X線を遮蔽する。
【0010】
本発明においては、遮蔽体は、X線照射部からX線検出器へ直接に入射しようとするX線を遮蔽する第1遮蔽部材と、コリメータ及び第1遮蔽部材からのX線をX線検出器へ入射しないように遮蔽する第2遮蔽部材とを有している。
【0011】
本発明に係るX線検出装置は、前記コリメータは平板状であり、前記遮蔽体は前記コリメータの両面から突出してあることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、遮蔽体は、平板状のコリメータの両面側に突出している。コリメータの何れの面からのX線も、遮蔽体で遮蔽されることになる。
【0013】
本発明に係るX線検出装置は、前記遮蔽体は、前記試料支持部が支持する試料から前記入射口までのX線の経路を遮断しない形状であることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、遮蔽体は、試料で発生してX線検出器に検出される蛍光X線を遮蔽しない。これにより、試料の蛍光X線が効率的に検出される。
【0015】
本発明に係るX線検出装置は、前記遮蔽体及び前記コリメータが結合してあることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、遮蔽体は、コリメータに結合して配置されている。
【0017】
本発明に係るX線検出装置は、前記コリメータは、X線を絞るための複数の絞り孔を有し、前記遮蔽体及び前記コリメータは、X線が通過する絞り孔を変更するように移動することが可能になっていることを特徴とする。
本発明に係るX線検出装置は、前記試料支持部が支持する試料を撮影する撮像素子を更に備え、前記コリメータは、光を通過させる窓部を有しており、前記試料からの光が前記窓部を通過して前記撮像素子へ入射する位置に前記窓部の位置を変更すべく移動することが可能になっていることを特徴とする。
本発明に係るX線検出装置は、前記第1遮蔽部材及び前記第2遮蔽部材は、互いに異なる材料で構成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、コリメータはX線を絞るための絞り孔を変更するために移動することが可能であり、コリメータ及び遮蔽体は一体になって移動する。
【発明の効果】
【0019】
本発明にあっては、X線照射部、X線検出器、試料支持部及びコリメータが近接して配置された状態でも、試料から発生する蛍光X線以外のX線がX線検出器へ入射することが遮蔽体によって防止され、蛍光X線分析の精度の悪化が防止される。従って、高精度の蛍光X線分析に利用できるX線検出装置の小型化が可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】X線検出装置の要部の構成を示す模式的斜視図である。
【
図2】
図1のII−II断面を示す模式的断面図である。
【
図3】コリメータを上側から見た模式的平面図である。
【
図4】
図1のIV−IV断面を示す模式的断面図である。
【
図5】
図2のコリメータ及び遮蔽体を含む部分を拡大した拡大図である。
【
図7】蓋部を開放した状態のX線検出装置を示す斜視図である。
【
図8】
図6のVIII−VIII断面を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、X線検出装置の要部の構成を示す模式的斜視図である。X線検出装置は、X線を試料へ照射して発生する蛍光X線を検出し、蛍光X線スペクトルの測定又は試料に含有される元素を分析する蛍光X線分析を行うための装置である。X線検出装置は、試料を支持するための試料支持部1を備えている。試料支持部1は、水平板状であり、試料が載置されることによって試料を支持する。試料支持部1には、貫通孔11が設けられている。
図1に図示していない試料は、貫通孔11を塞いで載置される。
【0022】
図2は、
図1のII−II断面を示す模式的断面図である。試料支持部1の貫通孔11を塞ぐ位置には、試料Sが載置される。試料支持部1の下側には、載置された試料SへX線を照射するX線照射部4、X線照射部4からのX線を絞るコリメータ2、試料Sから発生する蛍光X線を検出するX線検出器5が配置されている。また、コリメータ2には、X線を遮蔽する遮蔽体3が結合している。
図2中には、X線照射部4及びX線検出器5を簡略化して断面で示しているが、実際には、X線照射部4及びX線検出器5は複数の部品で構成され内部には空洞も含まれている。
【0023】
試料支持部1は、基部13と、基部13に対して着脱が可能な着脱部12とを有している。基部13及び着脱部12は、共に貫通孔11が形成され、ほぼ平板状になっている。貫通孔11を塞ぐようにX線透過膜14が張られており、X線透過膜14は基部13と着脱部12とで挟まれて固定されている。着脱部12を外した状態で、基部13の貫通孔11にX線透過膜14を張り、着脱部12を基部13に装着することで、X線透過膜14が固定される。試料Sは、X線透過膜14の上側に載置される。
【0024】
X線照射部4は、試料支持部1上に載置された試料Sの下面に対して斜め下側からX線を照射する位置に配置されている。X線照射部4は、X線管を用いて構成されており、X線の出射端を試料支持部1の貫通孔11へ向けて配置されている。X線検出器5は、試料支持部1上に載置された試料Sの下面から斜め下方向へ放射された蛍光X線を検出することができる位置に配置されている。X線検出器5は、Si素子等のX線検出素子を用いて構成されており、蛍光X線の入射端を試料支持部1の貫通孔11へ向けて配置されている。即ち、X線照射部4及びX線検出器5は、平板状の試料支持部1に対して同一の面側に配置され、X線の出射口と蛍光X線の入射口とを、試料支持部1の共通する所定の部分に向けて配置されている。なお、X線照射部4の照射軸とX線検出器5の入射軸とが試料支持部1の一点で重なる必要は無く、試料支持部1上へのX線照射部4からのX線の照射範囲と試料支持部1上からのX線検出器5へのX線の入射範囲とが重なっていればよい。また、X線照射部4及びX線検出器5は、平板状の試料支持部1に直交して貫通孔11の中心を通る仮想的な中心軸に対して対称な位置に配置され、可及的に試料支持部1に近づけて配置されている。
図2中には、仮想的な中心軸を一点鎖線で示している。X線照射部4から試料SへX線が照射され、試料Sでは蛍光X線が発生し、蛍光X線はX線検出器5に検出される。
図2中には、X線照射部4から試料Sへ照射されるX線、及び試料Sで発生してX線検出器5に検出される蛍光X線を破線で示している。
【0025】
コリメータ2は、試料支持部1の直下、X線照射部4から試料支持部1までのX線の経路上に配置されている。
図3は、コリメータ2を上側から見た模式的平面図である。実際には、コリメータ2の更に上側に試料支持部1が配置されている。コリメータ2は、タンタルを材料として板状に形成されており、径が異なる複数の絞り孔21,22,23が形成されている。絞り孔21,22,23の直径は、例えば、1.2mm、3mm及び7mmである。なお、絞り孔の数は三個に限定されるものではなく、二個であってもよく四個以上であってもよい。また、複数の絞り孔の径は、全てが異なっている必要はなく、少なくとも一つの絞り孔の径が他と異なっていればよい。複数の絞り孔21,22,23は、水平面内で、X線照射部4及びX線検出器5が並んだ方向とは交差する方向に沿って並んでいる。
【0026】
図4は、
図1のIV−IV断面を示す模式的断面図である。
図4に示す面は、
図2に示す面に直交する面である。
図4中には、貫通孔11の中心を通る仮想的な中心軸を一点鎖線で示している。X線検出装置は、コリメータ2の移動機構として直線駆動モータ7を備えている。直線駆動モータ7は試料支持部1よりも下側に配置されている。直線駆動モータ7は、駆動軸71を備えており、駆動軸71には、平行なシャフト72が連結板73を介して連結している。直線駆動モータ7は駆動軸71を直線駆動させ、駆動軸71に連動して、シャフト72は長手方向に往復運動を行う。シャフト72には、コリメータ2が連結している。シャフト72が往復運動を行うことによって、コリメータ2は試料支持部1の下面に沿って移動する。
【0027】
コリメータ2は、複数の絞り孔21,22,23が並んだ方向へ移動することができる。移動方向は、
図2に示す面に直交する方向であり、
図3の縦方向であり、
図4の横方向である。コリメータ2が移動することによって、絞り孔21,22,23の位置が変更され、絞り孔21,22,23の何れかがX線の経路上に位置するようにすることができる。絞り孔21,22,23の何れかがX線の経路上に位置した場合、絞り孔21,22,23の何れかを通過してX線がX線照射部4から試料Sへ照射される。絞り孔を通過しないX線はコリメータ2で遮蔽される。
図3には、絞り孔22がX線の経路上に位置した状態を示している。コリメータ2が移動することによって、X線が通過する絞り孔が変更され、X線が通過する絞り孔の径が変化する。絞り孔の径が変化することによって、試料Sへ照射されるX線の大きさが変化し、試料Sの分析対象部分の大きさが変化する。絞り孔21,22,23を選択することによって、目的に応じて、試料Sの分析対象部分の大きさを選択することができる。絞り孔21,22,23は、X線照射部3からのX線の経路上に配置されるので、貫通孔11の中心を通る仮想的な中心軸からは離れた位置にある。
【0028】
また、コリメータ2には、光を通過させる窓部62が連結している。窓部62は、アクリル板等の透明部材を用いて構成されている。窓部62は、絞り孔21,22,23が並んだ方向に沿った位置に設けられている。貫通孔11の直下には、CCD(Charge Coupled Device )イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal OxideSemiconductor )イメージセンサ等の撮像素子61が備えられている。また、X線検出装置は、発光ダイオード等の発光素子63,63を備えている。シャフト72が往復運動を行うことによって、窓部62は貫通孔11の直下に位置することができる。窓部62が貫通孔11の直下に位置した状態で、発光素子63,63が発光し、光は窓部62を通過して試料Sで反射し、窓部62を通過して撮像素子61へ入射する。このようにして、試料Sの撮影が行われる。
【0029】
X線検出装置は、X線照射部4及び直線駆動モータ7の動作を制御する図示しない制御部を備えている。制御部は、直線駆動モータ7の動作を制御することによって、コリメータ2の位置を制御する。制御部は、必要に応じて、コリメータ2の位置を、予め定められた複数の位置の内の一つの位置になるように制御する。制御可能な複数の位置には、絞り孔21,22,23の夫々がX線照射部4からのX線の経路上にある位置、及び窓部62が貫通孔11の直下にある位置が含まれる。制御部は、絞り孔21,22,23の何れかがX線照射部4からのX線の経路上にある場合に、X線照射部4にX線を照射させる。窓部62が貫通孔11の直下にある場合は、制御部は、X線照射部4にX線を照射させない。なお、X線検出器装置は、撮像素子61、窓部62及び発光素子63,63を備えていない形態であってもよい。
【0030】
また、X線検出装置は、蛍光X線測定のための信号処理を実行する図示しない信号処理部を備えている。X線検出器4は、検出した蛍光X線のエネルギーに比例した信号を信号処理部へ出力し、信号処理部は、各値の信号をカウントし、X線検出器4が検出した蛍光X線のエネルギーとカウント数との関係、即ち蛍光X線のスペクトルを取得する処理を行う。なお、X線検出器4は、蛍光X線を波長別に分離して検出する形態であってもよい。また、信号処理部は、蛍光X線のスペクトルに基づいて試料に含有される元素の定性分析又は定量分析を行う蛍光X線分析の処理をも実行する形態であってもよい。
【0031】
更に、コリメータ2には、X線を遮蔽する遮蔽体3が結合している。
図5は、
図2のコリメータ2及び遮蔽体3を含む部分を拡大した拡大図である。コリメータ2と結合した遮蔽体3は、コリメータ2と共に移動するようになっている。絞り孔21,22,23の何れかがX線照射部4からのX線の経路上にある状態では、遮蔽体3は、X線照射部4とX線検出器5との中間の位置に配置されている。より詳しくは、この状態では、X線照射部4のX線の出射口41の任意の部分とX線検出器5の蛍光X線の入射口51の任意の部分とを結んだ中間の位置に、遮蔽体3が配置されている。この位置に遮蔽体3が配置されることにより、出射口41と入射口51とを結んだ経路を通るX線が遮蔽され、X線照射部4からX線検出器5へX線が直接に入射することが防止される。
【0032】
遮蔽体3は、銅製の第1遮蔽部材31と、アルミニウム製の第2遮蔽部材32とが結合して構成されている。第1遮蔽部材31と第2遮蔽部材32とは別体であり、ネジ等で結合されている。遮蔽体3の部分の内、X線照射部4の出射口41に近い部分が第1遮蔽部材31であり、X線検出器5の入射口51に近い部分が第2遮蔽部材32になっている。第1遮蔽部材31は、出射口41の任意の部分と入射口51の任意の部分とを結んだ中間の位置に存在し、第2遮蔽部材32は、コリメータ2及び第1遮蔽部材31の任意の部分と入射口51の任意の部分とを結んだ中間の位置に存在するようになっている。銅製の第1遮蔽部材31は、アルミニウム製の第2遮蔽部材32に比べて、より高い強度のX線を吸収し易い。X線照射部4の出射口41から出射したX線は、第1遮蔽部材31で吸収される。X線を吸収したことに応じて、第1遮蔽部材31から銅の蛍光X線が発生するものの、この蛍光X線はX線照射部4からのX線よりも低い強度となっている。第1遮蔽部材31から発生した蛍光X線は、第2遮蔽部材32で吸収される。第2遮蔽部材32からも蛍光X線は発生するものの、更に低い強度となっているので、入射口51へ入射するまでに減衰する。第2遮蔽部材32からの蛍光X線が蛍光X線分析に与える影響は、X線照射部4からのX線に比べて大幅に小さくなっている。
【0033】
また、遮蔽体3は、コリメータ2の任意の部分と入射口51の任意の部分とを結んだ中間の位置に設けられている。絞り孔21,22,23の何れかがX線照射部4からのX線の経路上にある状態では、コリメータ2の全ての部分と入射口51との間に遮蔽体3が存在している。絞り孔を通過できないX線は、コリメータ2に照射され、コリメータ2から蛍光X線及び散乱X線が発生する。この蛍光X線及び散乱X線がX線検出器5へ入射しないように、第1遮蔽部材31は、コリメータ2から発生したX線の一部を遮蔽し、第2遮蔽部材32は、コリメータ2から発生したX線の内で第1遮蔽部材31に遮蔽されないX線を遮蔽する。このように、コリメータ2からのX線は遮蔽体3によって遮蔽され、コリメータ2からのX線がX線検出器5へ入射することが防止される。従って、試料Sから発生する蛍光X線以外のX線がX線検出器5へ入射することが効果的に防止され、蛍光X線分析の精度の悪化が防止される。X線検出装置は、高精度の蛍光X線分析に利用することが可能となる。
【0034】
遮蔽体3は、板状のコリメータ2のX線検出器5に近い一端に連結している。X線検出器5の入射口51はコリメータ2の上面よりも下面に近い位置にあるので、遮蔽体3は、コリメータ2から入射口51へのX線を遮蔽するために、コリメータ2の下面側へ突出した構成となっている。また、第2遮蔽部材32は、コリメータ2の上面側へ一部が突出した形状になっている。第2遮蔽部材32がコリメータ2の両面側へ突出していることで、遮蔽体3は、コリメータ2の下面側へ出てきたX線だけでは無く、コリメータ2の上面側へ出たX線をも確実に遮蔽する。このため、試料Sから発生する蛍光X線以外のX線がX線検出器5へ入射することがより効果的に防止される。また、遮蔽体3は、窓部62の下側には設けられていない。
【0035】
コリメータ2の材料はタンタルであり、第1遮蔽部材31の材料である銅よりも、発生する蛍光X線のエネルギーが高い。また第1遮蔽部材31の材料である銅は、第2遮蔽部材32の材料であるアルミニウムよりも、発生する蛍光X線のエネルギーが高い。X線照射部4からのX線が最も当たるコリメータ2から発生する蛍光X線のエネルギーよりも、次にX線が当たる第1遮蔽部31から発生する蛍光X線のエネルギーが小さく、第2遮蔽部材32から発生する蛍光X線のエネルギーは更に小さい。試料Sからの蛍光X線以外のX線がX線検出器5へ入射する経路において、X線のエネルギーが順次減衰され、効果的にX線が遮蔽される。なお、コリメータ2から発生する蛍光X線のエネルギーが最大であり、第2遮蔽部材32から発生する蛍光X線のエネルギーが最小であれば、コリメータ2、第1遮蔽部材31及び第2遮蔽部材32の材料は他の材料の組み合わせであってもよい。
【0036】
また、第2遮蔽部材32の上端部33は、試料SからX線検出器5の入射口51までの蛍光X線の経路を遮断しない形状になっている。具体的には、上端部33は、貫通孔11の上端と入射口61とを結んだ経路を避けた形状になっている。このため、試料Sからの蛍光X線は、入射口51へ効率的に入射され、X線検出器5で検出される。また、遮蔽体3はコリメータ2に結合してコリメータ2と共に移動するようになっているので、遮蔽体3をコリメータ2とは別に固定するための構造が不必要である。このため、X線照射部4、X線検出器5、試料支持部1及びコリメータ2が可及的に近接した状態でも、効果的にX線を遮蔽する遮蔽体3を配置することが可能である。小型化したX線検出装置内でも遮蔽体3の位置が確保できるので、高精度の蛍光X線分析に利用できるX線検出装置を小型化することが可能となる。
【0037】
図6は、X線検出装置の外観を示す斜視図である。X線検出装置の要部は、電源部等の図示しない他の部分と共に筐体内に納められており、筐体の一部は樹脂部材82で形成されている。筐体には、金属製の蓋部81が被さっている。
図7は、蓋部81を開放した状態のX線検出装置を示す斜視図である。蓋部81は、平板の一端部を屈曲させた形状をしており、屈曲させた端部が可動端になっている。屈曲させた端部とは逆の端部は、ヒンジによって筐体に連結した連結端になっており、蓋部81は、ヒンジの動作によって筐体に対して開閉可能になっている。蓋部81が閉じた状態では、蓋部81の可動端はストッパによって筐体に固定される。X線検出装置は、平面部83を設けており、樹脂部材82の上面が平面部83となっている。蓋部81を閉じた状態では平面部83の上側が蓋部81に覆われることになり、蓋部81を開放した状態では平面部83の上側が開放されることになる。平面部83には開口部が形成されており、開口部の位置に、試料支持部1が配置されている。着脱部12の上面は、平面部83とほぼ同一面になっている。X線検出装置の要部の試料支持部1以外の部分は、平面部83よりも下側に配置されている。
【0038】
図8は、
図6のVIII−VIII断面を示す模式的断面図である。平面部83よりも下側に金属板85が備えられている。金属板85は樹脂部材82の裏側に沿って配置されている。金属板85の試料支持部1が配置されている部分は、開口部となっている。金属板85の正面方向の端部は、下方に屈曲させた形状をしており、金属板85の背面方向の端部は、上方に屈曲させた形状をしている。筐体の内側には、金属製の遮蔽箱84が設けられており、X線検出装置の要部の試料支持部1以外の部分は、
図8中には示していないものの、遮蔽箱84の内側に配置されている。X線検出装置の要部の試料支持部1以外の部分は、上方及び側方を金属製の遮蔽箱84で囲まれている。このため、これらの方向へのX線は遮蔽箱84で遮蔽される。試料支持部1の上方へ漏洩したX線は、金属製の蓋部81によって遮蔽される。また、試料支持部1の上側でX線検出装置の正面方向へ放射されたX線は、金属板85及び蓋部81の端部によって遮蔽される。蓋部81が閉鎖される場合には、蓋部81の可動端と金属板85とが正面方向に重なっている。このため、試料支持部1の上側でX線検出装置の正面方向へ放射されたX線は、金属板85又は蓋部81の端部の何れかに衝突し、確実に遮蔽される。このような構造とすることで、X線検出装置は、筐体の一部を樹脂部材82としながらも、X線を確実に遮蔽し、安全性が保たれている。筐体の一部を樹脂製としたことで、X線検出装置の軽量化が可能となる。X線検出装置が軽量化されることで、X線検出装置の可搬性が向上し、利便性が向上する。
【符号の説明】
【0039】
1 試料支持部
11 貫通孔
14 X線透過膜
2 コリメータ
21、22、23 絞り孔
3 遮蔽体
31 第1遮蔽部材
32 第2遮蔽部材
4 X線照射部
5 X線検出器
61 撮像素子
62 窓部
7 直線駆動モータ
81 蓋部
82 樹脂部材