(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記散水手段により散水される水の中に、マイクロバブルを含む微細気泡を混入させるマイクロバブル発生手段をさらに有する請求項1乃至3のいずれかに記載の悪臭ガスの脱臭装置。
【背景技術】
【0002】
堆肥化装置等から発生するアンモニアを主成分とする悪臭ガスを生物脱臭装置で脱臭する場合は、微生物担体となる脱臭材料を湿潤状態に維持することが必要である。このため、散水装置と水槽が設置され、1日に2回程度、脱臭槽(微生物が生育している担体が充填された槽)の表面から散水し、余剰水を水槽内に回収している。
【0003】
このような構成は、例えば特許文献1の生物脱臭システムに開示されている。特許文献1の生物脱臭システムは、硝化作用を有する微生物によりアンモニアを硝酸および/または亜硝酸に変えて脱臭する生物脱臭装置と、その生物脱臭装置と別体に設けられ脱窒作用を有する微生物により硝酸および/または亜硝酸を窒素に変える脱窒装置と、脱窒作用を有する微生物の養分となる有機物を脱窒装置に供給する有機物供給装置と、有機物供給装置から脱窒装置に供給する養分の量を調整するための制御装置からなる。
【0004】
ここで、脱臭装置は、微生物を担持させた充填担体を充填した担体保持部と担体保持部のすぐ下方にガス導入室が配置されている。また担体保持部の上側領域には、散水室が配備されており、散水室の内部には排気ダクトが接続されている。排気ダクトからは、脱臭処理済ガスが外部に放出される。
【0005】
つまり、生物脱臭装置と脱窒装置は別々に設けられ、分解する悪臭ガスは、微生物のいる担体保持部の下方側から供給され、単体保持部上方の排気ダクトから放出される。一方、担体保持部の微生物に対して行う散水は、担体保持部の上方から行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、生物脱臭装置と脱窒装置は別々に設けられており、一方の装置で他方の装置を保温する関係になく、また、生物脱臭槽はアンモニア酸化菌、亜硝酸酸化菌などのいわゆる硝化菌による硝化反応、すなわち、酸化反応、発熱反応であるが、その反応熱を有効に利用していない。
【0008】
したがって、硝化脱窒が効率的に行われず、装置の小型化が図れないという課題があった。また、生物脱臭装置と脱窒装置は別々に設けられており、トラック輸送に扱い難く、使い勝手の良い悪臭ガスの脱臭装置を提供できないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みて想到されたもので、一方の装置で他方の装置を保温し、硝化反応時の反応熱の有効利用を図り、硝化脱窒を効率的に行い、装置の小型化を図ることを特徴とする脱臭装置を提供する。また、内筒の周りに外筒を設けることで、硝化装置と脱窒装置との一体化およびコンパクト化を図り、トラック輸送が可能で、使い勝手の良い、悪臭ガスの脱臭装置を提供する。
【0010】
より具体的には、本願請求項1に係る発明の脱臭装置は、
内筒と、
前記内筒の周りに設けられ、前記内筒と下端で連通した外筒と、
前記内筒内に充当配置された微生物担持材と、
前記外筒と内筒の間の外側空間内に充当された炭素源と、
前記内筒と前記外筒の下方に備えられた
一つの散水受け槽と、
前記微生物担持材と前記炭素源に前記散水受け槽の水を循環散水する散水手段と、
前記散水手段側から前記内筒に悪臭ガスを送風する送風手段とを備え、
前記送風手段により悪臭ガスは前記内筒内を下降流で通過し、前記内筒の下端から前記外側空間に送られ、前記外側空間を上昇流で通過後、前記外側空間から排出され、
好気状態の前記内筒内で前記悪臭ガスとしてのアンモニアガスの硝化を行い、
嫌気状態の前記外側空間で脱窒を行
い、
前記一つの散水受け槽の水は、前記内筒と前記外筒を通過した前記散水同士で中和されることを特徴とする。
【0011】
これにより、外筒で内筒が外気の影響を受け難く外気と断熱され易くなり、内筒が保温される。内筒内の好気状態でのアンモニア酸化菌によるアンモニア酸化反応は発熱反応である。
【0012】
また、硝化脱窒反応の律速はアンモニア酸化菌によるアンモニア酸化反応であり、反応熱が外気に逃げ難い保温された内筒内でアンモニア酸化反応を起こし、生成する反応熱を利用してアンモニア酸化菌を暖めアンモニア酸化菌をより活性化させる。
【0013】
硝化脱窒反応の律速であるアンモニア酸化菌によるアンモニア酸化反応を促進させて、硝化脱窒反応の効率を向上させる。アンモニア酸化菌の最適温度は略30℃程度であり、特に、冬季、あるいは寒冷地での硝化脱窒反応の効率向上に繋がる。
【0014】
また、アンモニア酸化、亜硝酸酸化の硝化反応により発生する反応熱を送風により外筒内の脱窒菌に供給するとともに、内筒の壁面を通じて、外筒内の脱窒菌を暖めることができ、脱窒菌の加温による活性化が図られ、硝化反応熱の有効利用、硝化脱窒反応の効率向上に繋がる。
【0015】
特に、内筒と外筒が縦長の場合、内筒と外筒を区分けする壁の面積が大きくなり、したがって、内筒内の反応熱の外筒への移行面積が大きく外筒内の脱窒菌が加温され易くなり、硝化反応熱の有効利用が図られ、硝化脱窒反応の速度の向上、硝化脱窒反応の効率向上に寄与することとなる。
【0016】
また、内筒の周りに外筒を設けることで、硝化装置と脱窒装置との一体化が図られ、トラック輸送が可能で、使い勝手の良い、悪臭ガスの脱臭装置を提供することとなる。装置を特に縦長にすると、処理容量が大でもトラック輸送が可能となる。
【0017】
また、本願請求項2に係る発明の脱臭装置は、
内筒と、
前記内筒の周りに設けられ、前記内筒と下端で連通した外筒と、
前記外筒と前記内筒の間の外側空間内に充当配置された微生物担持材と、
前記内筒内に充当された炭素源と、
前記内筒と前記外筒の下方に備えられた
一つの散水受け槽と、
前記微生物担持材と前記炭素源に前記散水受け槽の水を循環散水する散水手段と、
前記散水手段側から前記外側空間に悪臭ガスを送風する送風手段とを備え、
前記送風手段により悪臭ガスは前記外側空間内を下降流で通過し、前記外側空間の下端から前記内筒に送られ、前記内筒を上昇流で通過後、前記内筒から排出され、
好気状態の前記外側空間で前記悪臭ガスとしてのアンモニアガスの硝化を行い、
嫌気状態の前記内筒内で脱窒を行
い、
前記一つの散水受け槽の水は、前記内筒と前記外筒を通過した前記散水同士で中和されることを特徴とする。
【0018】
また、上記の脱臭装置は、
前記悪臭ガスをアンモニアガスとし、前記微生物担持材をロックウールとし、前記炭素源をハスクチップとしたことを特徴とする。
【0019】
また、上記の脱臭装置は、前記散水手段により散水される水の中に、マイクロバブルを含む微細気泡を混入させるマイクロバブル発生手段をさらに有することを特徴とする。
【0020】
また、上記の脱臭装置は、前記散水される水中に通常バブルを混入させる通常バブル発生装置をさらに有することを特徴とする。
【0021】
また、上記の脱臭装置の、前記散水手段は、点滴方式としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の脱臭装置は、内筒の周りに外筒を設けることで、外筒により外気の影響を受け難く外気と断熱され易くなり内筒が保温され、硝化反応時の反応熱の有効利用が図られ、硝化脱窒が効率的に行われ、装置の小型化が図られる悪臭ガスの脱臭装置を提供できる。また、内筒の周りに外筒を設けることで、硝化装置と脱窒装置との一体化、およびコンパクト化が図られ、トラック輸送が可能で、使い勝手の良い、悪臭ガスの脱臭装置を提供できる。
また、散水受け槽内の水のpHは、脱臭装置の硝化菌および脱窒菌の処理能力のバランスを検知するのに有用である。また、請求項2に係る発明によれば、外側空間内での硝化反応熱による内側空間の加温により脱窒菌の活性化が図られ、硝化反応熱の有効利用、硝化脱窒反応の効率向上に繋がる。
【0023】
さらに硝化部と脱窒部に供給する水は点滴状に供給するので、悪臭ガスと水の供給を継続的に行っていても、上記のような課題は発生することはない。
【0024】
また、硝化と脱窒を同心状の容器で行うため、脱臭装置を小型化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下図を用いて、本発明の脱臭装置について説明する。なお、下記の説明は本発明の一例を示すものであり、本発明の趣旨の範囲内において、変更することができる。
【0027】
(実施の形態1)
図1に本発明の脱臭装置の構成を示す。本発明の脱臭装置1は、内筒10と、外筒11と、散水手段12と、送風手段13と、散水受け槽14を少なくとも備える。また、さらにバッファ槽15をさらに備えてもよい。
【0028】
外筒11は、断面略円形をした筒状構造をしている。なお、外筒11の断面形状は特に円形に限定させるものではなく、楕円であっても、三角形、四角形、六角形、あるいは八角形などの多角形であってもよい。また、外筒11の下方端には、散水受け槽14が設けられる。外筒11と散水受け槽14は、連続して形成されていてもよいし、それぞれが接続されていてもよい。
【0029】
外筒11の内部には外筒11より断面径が小さい内筒10が配置される。したがって、内筒10と外筒11の間には、空間が形成される。内筒10で囲まれた内部空間を内側空間20と呼び内筒10と外筒11の間の空間を外側空間21と呼ぶ。内筒10と外筒11の下端より下側には、共通の空間が形成され、そのさらに下方に散水受け槽14が設けられる。この共通の空間は、内側空間20と外側空間21を連通するので、連通空間22と呼ぶ。すなわち、内筒10と外筒11は下端の連通空間22で連通している。
【0030】
内側空間20には、硝化菌を担持させた微生物担持材30が充填される。硝化菌は、アンモニアを酸化し亜硝酸イオンにするアンモニア酸化菌、亜硝酸イオンを酸化する亜硝酸酸化菌が少なくとも含まれる。微生物担持材30としては、ロックウールなどが好適に用いられる。
【0031】
外側空間21には、脱窒菌が繁殖担持された炭素源31が充当される。脱窒菌は、亜硝酸イオンおよび硝酸イオンを脱窒反応により窒素と水に浄化する。
【0032】
連通空間22の下方には、散水受け槽14が形成される。散水受け槽14は、内筒10と外筒11の上方から散水された水を下方で受ける槽である。また、連通空間22を気密に維持するため、外筒11と気密に接続される。
【0033】
内筒10と外筒11の上端には、蓋部16が設けられる。蓋部16には、被処理ガスである悪臭ガスGの取入口16inと、処理された結果生成する窒素ガスの排出口16otが設けられる。なお、蓋部16は、内側空間20と外側空間21を気密状態で分離する分離手段24が設けられる。
【0034】
分離手段24は、蓋部16の内側に内筒10の外径と同様のリブを立て、リブの先端を内筒10の先端と突き合わせることで構成することができる。または、内筒10の先端を蓋部16の内面まで延設することで、内側空間20と外側空間21を気密に分離してもよい。悪臭ガスGの取入口16inと処理後の窒素ガスの排出口16otを気密に分離するためである。
【0035】
散水受け槽14には液密に形成された排出口(14a、14b)が設けられる。排出口14aには配管40aが連結され、蓋部16内側にまで延設される。蓋部16内部の配管40aには散水口41aが設けられる。この配管40aの途中にはポンプPaが配置され、散水受け槽14内の液体を内筒10、外筒11の上部に配置された散水口41aから散水させることができる。この配管40aの途中には、マイクロバブル発生装置46および通常バブル発生装置47が連結される。少なくとも散水受け槽14、配管40a、ポンプPaによって散水手段12は構成される。
【0036】
また、排出口(14a、14b)、配管40、ポンプPaおよび散水口41aは複数あってもよい。
図1では、排出口14b、ポンプPb、散水口41bがある構成を示している。これらは、外側空間21の炭素源31に循環水を送っている。このように内側空間20と外側空間21への散水手段12をそれぞれ配置することで、微生物担持材30と炭素源31への循環水の供給量を別々に調整することができる。
【0037】
散水受け槽14には、さらにpHセンサ48が配置されるのが望ましい。後述するように、散水受け槽14内の水のpHは、脱臭装置1の硝化菌および脱窒菌の処理能力のバランスを検知するのに有用だからである。
【0038】
また、pH制御剤投入手段50が設けられていても良い。pH制御剤投入手段50は、酸性若しくはアルカリ性の溶液を内側空間20若しくは外側空間21に供給する手段である。図では、散水手段12を構成する配管40a、40bの途中に酸性若しくはアルカリ性の溶液を保持する容器およびバルブで構成したpH制御剤投入手段50を示したが、この構成に限定されるものではない。
【0039】
蓋部16の悪臭ガスGの取入口16inには、悪臭源からの悪臭ガスGを送るブロア17が連結される。ブロア17は送風手段13を構成する。
図1ではブロア17は蓋部16の外側に構成されている状態を示すが、蓋部16内に設けてあっても良い。
【0040】
また、ブロア17の上流には、バッファ槽15を設けても良い。バッファ槽15は、内部に水を貯留したタンクであり、悪臭ガスGを一度内部の水を通過させることで、悪臭ガスG中のアンモニアを溶解させ、悪臭ガスGの平準化を行う。本発明の脱臭装置1は、微生物を利用して悪臭ガスGを浄化させる。したがって、微生物の反応を連続的に継続させることが効率がよい。バッファ槽15を通過させることによって、悪臭ガスG中のアンモニア量が多い場合は、バッファ槽15中の貯留水に吸収され、少ない場合は、逆に貯留水から供給される。このようにして悪臭ガスG中のアンモニア等の悪臭源を平準化させることができる。もちろん、バッファ槽15を通過させず直接脱臭装置1に悪臭ガスGを送ってもよい。
【0041】
以上の構成を有する脱臭装置1の動作を説明する。送風手段13により堆肥化装置等(図示せず)から発生するアンモニアを主成分とする悪臭ガスGは、直接またはバッファ槽15を通過した後、内筒10内の内側空間20に流入する。また、散水受け槽14からポンプPaによってくみ上げられる循環水中に含まれる悪臭ガスG由来のアンモニアも内側空間20に供給される。内筒10内に充当配置、充填され微生物担持材30に繁殖担持された硝化菌の一種であるアンモニア酸化菌は、これらのアンモニアを酸化し、亜硝酸イオンを生成する。また、微生物担持材30に繁殖担持された硝化菌の一種である亜硝酸酸化菌は、亜硝酸イオンを酸化し、硝酸イオンを生成する。
【0042】
亜硝酸イオンと硝酸イオンの生成により、内側空間20内の微生物担持材30の水分は酸性となりpHは下がる。しかし、散水手段12によって供給される循環散水が、亜硝酸イオンと硝酸イオンを洗い流し、下方の散水受け槽14に落下させる。また、内筒10内に流入した悪臭ガスGの主成分であるアンモニアは、内側空間20に供給された水に溶解してアンモニア水となる。このアンモニア水も、亜硝酸イオンと硝酸イオンを中和する。このようにして、内側空間20内に充当された微生物担持材30中の水分は、硝化菌の生育に適した中性乃至は弱アルカリに維持される。
【0043】
また、本発明の脱臭装置1では、内側空間20は、外側空間21の存在により外気から断熱され、保温されている。そして、内側空間20内で生じる硝化反応は発熱反応であるので、内側空間20内は、加熱される。外側空間21で断熱、保温された内側空間20内で硝化反応を起こし、その硝化反応熱が外気に逃げ難く、冷え難くなっている。つまり、アンモニア酸化菌を暖めてアンモニア酸化菌の活性を向上させる。すなわち、内筒10と外筒11で構成される本脱臭装置1は、硝化脱窒反応の律速がアンモニア酸化菌によるアンモニア酸化反応である点を考えると、硝化脱窒反応の処理速度を向上させることができる。特に冬季や寒冷地など、外気温が低い環境でも、処理速度の向上に繋がる。硝化脱窒反応の処理速度が向上し装置の小型化が図られる。
【0044】
散水受け槽14に落下し貯留される循環水中には、酸化反応によって生成し、洗い流された亜硝酸イオンと硝酸イオンの他、循環水中に溶解したアンモニア成分、悪臭ガスG成分も含まれる。
【0045】
硝化菌による硝化反応により、アンモニアが酸化されると、アンモニア成分が浄化され、アンモニア臭気の脱臭が行われる。すなわち、アンモニアを主成分とする悪臭ガスGが浄化される。
【0046】
堆肥化装置等から発生するアンモニアを主成分とする悪臭ガスGが内筒10内で硝化菌により酸化され浄化されると、悪臭ガスG中からはアンモニアと共に酸素も消費される。酸素が消費された悪臭ガスGは、内筒10の下方端から連通空間22に抜け、次に外側空間21に流入する。つまり、外側空間21は、酸素含有量の少ない気体が供給され、脱窒反応に適した嫌気状態にされる。このような状態の外側空間21に充填された炭素源31に、散水受け槽14の循環水を散水すると、炭素源31に繁殖担持された脱窒菌が循環水中に洗い流された亜硝酸イオン、硝酸イオンを使って脱窒反応を行い、窒素ガスと水および水酸基を生成する。窒素ガスは、浄化ガスとして外筒11から脱臭装置1の外に排出されることとなる。
【0047】
また、外側空間21に流入する処理されたガスは、硝化反応によって暖められている。したがって、外側空間21に充填された炭素源31をも暖め、脱窒菌の加熱による活性化が促進する。なお、外側空間21への加熱は、内側空間20内で生じた発熱反応による熱が、内筒10の外壁面を通じた熱伝導によってももたらされる。
【0048】
脱窒反応による水酸イオンの生成で、pHが上昇する。しかし、散水受け槽14から散水手段12によって供給される循環水が、生成するアルカリを洗い流す。洗い流されたアルカリ性の水は、下方の散水受け槽14に落下し貯留される。すると、アルカリ性の水は、内筒10から落下し貯留される亜硝酸イオン、硝酸イオンとで中和され、散水受け槽14の循環水は略中性となる。外側空間21内に充当され微生物を担持する炭素源31中の水分は、炭素源31に繁殖担持された脱窒菌の生育に適した中性乃至は弱アルカリに維持される。
【0049】
なお、硝化反応と脱窒反応のアンバランスが生じて、pHが低下し過ぎたり、あるいはpHが上昇し過ぎると、硝化反応、あるいは脱窒反応に悪影響を与える場合もある。したがって、散水受け槽14に貯留される循環水のpHをpHセンサ48により検知しておき、pH制御剤投入手段50を用いて、硝化菌による硝化反応している内側空間20内に、あるいは脱窒菌による脱窒反応している外側空間21内に、酸あるいはアルカリを供給して、散水受け槽14に貯留される循環水を略pH7〜8程度の略中性付近に制御しても良い。
【0050】
酸としては、循環水のpHを略7乃至は8程度に略中和できれば良い。例えば、希塩酸などが利用でき、微生物の栄養塩類を兼ねて燐酸なども好適に利用することができる。アルカリとしても同様に、pHを略7乃至は8程度に略中和できれば良い。例えば、苛性ソーダなどが利用でき、微生物の栄養塩類を兼ねて水酸化カリウムなども好適に利用することができる。
【0051】
循環水中の亜硝酸イオンと硝酸イオンは、主に嫌気状態の外側空間21内の炭素源31に担持された脱窒菌によって脱窒、浄化される。一部は、内側空間20内の嫌気部分で脱窒、浄化されるが、大部分は内側空間20内では洗い流される。
【0052】
また、循環水中に溶解したアンモニア成分、悪臭ガスG成分は、主に好気状態の内側空間20内の微生物担持材30に担持された硝化菌によって酸化、浄化される。一部は、循環水中の溶存酸素等を使って、外側空間21内でも好気酸化、浄化されるが、大部分は外側空間21内では洗い流され、下方の散水受け槽14に落下し貯留される。すなわち、内側空間20と外側空間21から落下する循環水は、1つの散水受け槽14に貯留し、そこから内側空間20と外側空間21に供給しても、循環水中の亜硝酸イオン、硝酸イオン、アンモニア成分、悪臭ガスG成分の浄化が進むこととなる。
【0053】
内側空間20の微生物担持材30と外側空間21の炭素源31を洗い流す循環水の量は、洗い流し量が多いと送風抵抗、送風機の圧力損失の上昇に繋がる。散水は、微生物担持材30や炭素源31に含まれる循環水中に溶解した亜硝酸イオン、硝酸イオン、アンモニア成分、悪臭ガスG成分を洗い流し、浄化用に供給するために行う。従って、それほど多くは必要なく、例えば、微生物担持材30や炭素源31を通過後、下方の散水受け槽14に滴下する程度であれば良い。
【0054】
なお、
図1では、循環散水の散水受け槽14を一つとしたが、散水受け槽14を2つに分けて、外側空間21からの散水を受ける外筒散水受け槽14tおよび、内側空間20からの散水を受ける内筒散水受け槽14iを設けても良い。
図2には、散水受け槽14を仕切14dによって2つに分けた場合の脱臭装置2の構成を示す。なお、
図1と同じ部分には同じ符号を付与している。
【0055】
図2を参照して、内側空間20の微生物担持材30を洗い流し、内筒散水受け槽14iに落下し貯水された循環水を外側空間21の炭素源31に散水すると、微生物担持材30から循環水に流れ出た亜硝酸イオン、硝酸イオンが外側空間21の炭素源31の脱窒菌に供給される。そして、脱窒反応により進行するアルカリ化を中和し、生成するアルカリを洗い流し下方の外筒散水受け槽14tに落下し貯水される。
【0056】
外筒散水受け槽14tに貯水された循環水を内側空間20の微生物担持材30に担持した硝化菌に散水すれば、硝化菌により生成する亜硝酸イオン、硝酸イオンによるpHの低下を中和することができる。また、硝化菌が生成する亜硝酸イオン、硝酸イオンを下方の内筒散水受け槽14iに落下させ循環水として貯水し、貯水された循環水を外側空間21内に再び散水すれば、硝化脱窒反応が効率よく進行し、堆肥化装置等から発生するアンモニアを主成分とする臭気ガスの脱臭浄化を促進させることができる。
【0057】
また、散水する循環水中にマイクロバブル発生装置46若しくは通常バブル発生装置47によってマイクロバブル若しくは通常バブルを混入させてもよい。特に硝化菌は好気雰囲気中で硝化反応を行うため、内側空間20の微生物担持材30にマイクロバブルや通常バブルを含ませた循環水を供給することで、微生物をさらに活性化することができる。このような構成は
図2のように、散水受け槽14を2分した場合により効果的である。
【0058】
本発明の脱臭装置1としてより具体的な構成を例示する。脱臭装置1の内筒10を、例えば、縦長のφ1.9m×4mH、外筒11を縦長のφ2.3m×4mHとし、内筒10と外筒11の下方に設けられた連通空間22と散水受け槽14の合計の高さを、1mHとすれば、脱臭装置1の外形寸法は縦長のφ2.3m×5mHとなる。一般道路の積載可能高さは地上高さ3.8mHであるので、この高さであれば、10tトラックに脱臭装置1を一体化して寝かせて載せることができ、移動が容易となり、使い勝手が向上する。なお、ここでφ2.3mは直径が2.3mであることを表し、5mHは高さが5mであることを示す。
【0059】
また、脱臭装置1の内筒10を、例えば、縦長のφ2m×4mH、外筒11を縦長のφ2.4m×4mHとし、内筒10と外筒11の下方に設けられた連通空間22と散水受け槽14の合計の高さを、1mHとすれば、脱臭装置1の外形寸法は縦長のφ2.4m×5mHとなり、15tトラックに脱臭装置1を一体化して載せることができ、同様に、移動が容易となり、使い勝手が向上する。
【0060】
次に具体的な運転状態を例示する。例えば、脱臭装置1の内筒10をφ2m×4mH、外筒11をφ2.4m×4mHとし、内筒10と外筒11の下方に設けられた連通空間22と散水受け槽14の合計の高さを1mHとすれば、脱臭装置1の外形寸法は、縦長のφ2.4m×5mHとなる。ここで、内側空間20内の微生物担持材30を、例えば、ロックウールとする。
【0061】
ロックウールは、内側空間20内に略1〜3.3m
3を充填する。ロックウールには、硝化菌であるアンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌を繁殖担持させる。また、外側空間21内には、炭素源31として、
ハスクチップとし、略0.5〜1.7m
3を外側空間21内に充填する。炭素源31には、脱窒菌を繁殖担持させる。炭素源31としては、
ハスクチップの他に、籾殻などがある。
【0062】
散水は、内側空間20内と外側空間21内での反応生成物が洗い流され、下方の散水受け槽14に循環水がぼたぼたと落ちる程度に、内側空間20内と外側空間21内に循環散水する。循環散水量は、上記の大きさの脱臭装置であれば、略15〜30L/m
2・日程度であり、およそ略20L/m
2・日程度循環散水する。このような運転状態の脱臭装置1であれば、3〜10m
3/分程度の悪臭ガスGを送風し、浄化することができる。
【0063】
(実施の形態2)
図3には本実施の形態に係る脱臭装置3の構成を示す。なお、実施の形態1と同じ部分については、同じ番号を付与して、詳細な説明は省略する。本実施の形態では、内側空間20に炭素源31を配置し、外側空間21に微生物担持材30を充填配置する。すなわち、本実施の形態では、被処理ガスである悪臭ガスGは、外側空間21を上端から下端に流れ、連通空間22に抜ける。そして、連通空間22を内側空間20の下端に進み、内側空間20の下端から上端に抜ける。
【0064】
また、悪臭ガスGの流れ方が異なるので、蓋部16に設けられる悪臭ガスGの取入口16inと浄化されたガスの排出口16otは、それぞれ連通する先が異なる。すなわち、取入口16inは、外側空間21と連通し、排出口16otは、内側空間20と連通している。しかし、硝化脱窒、浄化については、実施の形態1の場合と同一である。
【0065】
このような構成を有することで、外側空間21によって内側空間20は外気の影響を受けにくい。すなわち、内側空間20は外気から断熱され保温される。
【0066】
本実施の形態の脱臭装置3についてその特徴となる動作を説明する。外側空間21内に充填した微生物担持材30に担持させた硝化菌のアンモニア酸化、亜硝酸酸化の硝化反応により熱が発生する。この熱は、送風手段13によって送られる悪臭を含んだガスを暖める。もちろん、実施の形態1の場合同様に、硝化反応によって悪臭ガスG中のアンモニアおよび酸素は消費され、浄化される。
【0067】
そして、温度が高く、また酸素含有量が低いガスは、連通空間22を通って内側空間20に送られ、内側空間20の炭素源31に担持させた脱窒菌を暖める。また、外側空間21の熱は、外側空間21の内側面(つまり内筒10の外壁面)を通じても内側空間20を暖める。この内側空間20の加温によって脱窒菌の活性化が図られ、硝化反応熱の有効利用、硝化脱窒反応の効率向上に繋がる。
【0068】
特に、内筒10と外筒11が縦長の場合、内筒10と外筒11を区分けする壁の面積が大きくなるため、外側空間21内の反応熱の内側空間20への移行面積が大きく内側空間20内の脱窒菌が加温され易くなり、硝化反応熱の有効利用が図られ、硝化脱窒反応の速度の向上、硝化脱窒反応の効率向上に寄与することとなる。
【0069】
図4には、散水受け槽14に仕切14dを設け、内筒散水受け槽14iと外筒散水受け槽14tを構成した場合の脱臭装置4の構成を示す。散水受け槽14を2分した時の作用は、実施の形態1で説明したのと同じである。したがって、本実施の形態では、散水手段12は、2系統の配管とポンプで形成され、内筒散水受け槽14iに貯水された循環水を外側空間21の上端から散水し、外筒散水受け槽14tに貯水された循環水を内側空間20の上端から散水する。