(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096776
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】ウェハー搬送器
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20170306BHJP
B65D 85/86 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
H01L21/68 T
B65D85/38 R
【請求項の数】16
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-526117(P2014-526117)
(86)(22)【出願日】2012年8月13日
(65)【公表番号】特表2014-527721(P2014-527721A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】US2012050624
(87)【国際公開番号】WO2013025629
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2015年8月6日
(31)【優先権主張番号】61/523,254
(32)【優先日】2011年8月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エス・アダムズ
(72)【発明者】
【氏名】バリー・グレガーソン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・エイ・フラー
【審査官】
中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5270668(JP,B2)
【文献】
特表2011−510491(JP,A)
【文献】
特表2007−511098(JP,A)
【文献】
特開2004−247467(JP,A)
【文献】
特開2006−332261(JP,A)
【文献】
特開2005−320028(JP,A)
【文献】
特開2005−294386(JP,A)
【文献】
特開2005−101518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65D 85/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前開きウェハー搬送器であって、ドア枠と、このドア枠で受け止めてウェハー搬送器を密封状態に閉めることのできるドアとを備えた収容部が設けられており、
この収容部が複数の列をなすウェハー棚板を備え、複数枚のウェハーを縦に間隔を空けて揃えて積まれた状態で受けられるように配置されており、
ドアが内側面と外側面と周縁とを有し、ドア枠に掛かることでドアを内部の装着位置に固定するラッチ部を複数備えたラッチ機構がドアに設けられており、
ドアの内側面にウェハー保持具が取り付けられており、このウェハー保持具が骨格を備え、骨格から一対の列をなす片持ちの指状体が突き出ており、
隣り合う2つの片持ち指状体の間にそれぞれ隙間があることにより複数の隙間が形成され、片持ち指状体が骨格に接続している固定端部のところに各隙間の終端があり、これによって各片持ち指状体に上縁部と下縁部が形成されており、
各片持ち指状体が固定端部では実質平面的かつ厚さが実質均一で、固定端部から遠い側では折り目の付いた形状を帯び、この折り目の付いた形状によって片持ち指状体の先端部から中間部にわたってウェハー受け溝部が形成されており、
ウェハー受け溝部の谷線が先端では上縁部寄りの位置を通り、中間部では片持ち指状体の縦方向の中央寄りを通っている、搬送器。
【請求項2】
請求項1に記載した前開きウェハー搬送器であって、450mmウェハー用の大きさとなっており、
ウェハーを収容部に搭載した状態でドアをドア枠に挿入していく際に各ウェハーがまず固定端部よりも先端寄りで片持ち指状体に掛かるように、各片持ち指状体の先端の位置が設定されている、搬送器。
【請求項3】
請求項2に記載した前開きウェハー搬送器であって、
各ウェハー受け溝が先端から固定端部側の溝の終端まで延びる長さを有しており、
ドアが完全に装着された際にウェハーが各ウェハー受け溝のほぼ全長に掛かるように各片持ち指状体が形成されている、搬送器。
【請求項4】
請求項1に記載した前開きウェハー搬送器であって、各列の片持ち指状体が他の列の片持ち指状体に向けて片持ち支持されているもの。
【請求項5】
請求項4に記載した前開きウェハー搬送器であって、ウェハー保持具がさらに固定ウェハー支持体を一列備えており、各固定ウェハー支持体がV字状のウェハー縁受け面を備えている、搬送器。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載した前開きウェハー搬送器であって、
各片持ち指状体がドアから離れる方向を向いたウェハー係合面を有しており、
このウェハー係合面がウェハー受け溝によって上側面と下側面に分割され、上側面の面積が下側面よりも小さくなっており、片持ち指状体の固定端部に向かうにつれ下側面の縦方向の幅が狭まっている、搬送器。
【請求項7】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載した前開きウェハー搬送器であって、各片持ち指状体が骨格から横方向に片持ち支持され、その後先端近くで下向きに曲がるように形成されているもの。
【請求項8】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載した前開きウェハー搬送器であって、ウェハー保持具の骨格が周枠を備えており、上部横方向フレーム部材と、これに対し間隔を空けて配置した下部横方向フレーム部材と、これら2本の横方向フレーム部材から延びる互いに側方に間隔を空けた4本の縦方向支持部とで周枠が形成されており、横方向支持部材のうちの2本が2列の片持ち指状体に対応している、搬送器。
【請求項9】
前開きウェハー搬送器であって、ドア枠と、このドア枠で受け止めてウェハー搬送器を密封状態に閉めることのできるドアとを備えた収容部が設けられており、
この収容部が複数の列をなすウェハー棚板を備え、複数枚のウェハーを縦に間隔を空けて揃えて積まれた状態で受けられるように配置されており、
ドアが内側面と外側面と周縁とを有し、ドア枠に掛かることでドアを内部の装着位置に固定するラッチ部を複数備えたラッチ機構がドアに設けられており、
ドアの内側面にウェハー保持具が取り付けられており、このウェハー保持具が骨格を備え、骨格から一対の列をなす片持ちの指状体が突き出ており、
各片持ち指状体がある長さと上縁部と下縁部とを有し、各片持ち指状体が骨格に接続する固定端部と、中間部と、先端を含む先端部とを備え、
各片持ち指状体がさらに、先端側から中間部に向かって延びるウェハー受け溝部を有し、ウェハー受け溝部の長さが対応する片持ち指状体の長さの半分以上であり、
各片持ち指状体が先端部で横方向に対して下方に向かっている、搬送器。
【請求項10】
請求項9に記載した前開きウェハー搬送器であって、450mmウェハー用の大きさとなっており、
ウェハーを収容部に搭載した状態でドアをドア枠に挿入していくにつれ、各ウェハーが最初に片持ち指状体の固定端部よりも先端に近い箇所に架かるように、各片持ち指状体の先端部の位置が決められているもの。
【請求項11】
請求項10に記載した前開きウェハー搬送器であって、各ウェハー受け溝が先端部から固定端部近くの溝の終端まで延びる長さであり、ドアを完全に装着したときにウェハーが各ウェハー受け溝のほぼ全長に架かるように各片持ち指状体が構成されているもの。
【請求項12】
請求項9に記載した前開きウェハー搬送器であって、各列の片持ち指状体が他の列の片持ち指状体に向けて片持ち支持されており、ウェハー保持具に2列の固定ウェハー支持体が2列の片持ち指状体の中間に配置されて設けられているもの。
【請求項13】
請求項9から請求項12までのいずれか一項に記載した前開きウェハー搬送器であって、ウェハー受け溝部の谷線が、先端部では上端部寄りにあり、中間部では片持ち指状体の縦幅の中央寄りの位置を通っているもの。
【請求項14】
450mmウェハー用の前開きウェハー容器であって、前面のドア枠と、このドア枠で受け止めてウェハー搬送器を密封状態に閉めることのできるドアとを備えた収容部が設けられており、
この収容部が複数の列をなすウェハー棚板を備え、複数枚のウェハーを縦に間隔を空けて揃えて積まれた状態で受けられるように配置されており、
ドアが内側面と外側面と周縁とを有し、ドア枠に掛かることでドアを内部の装着位置に固定するラッチ部を周縁に複数備えたラッチ機構がドアに設けられており、
ドアの内側面にウェハー保持具が取り付けられており、
ウェハー拘束具が縦方向に揃えて設けた固定状態の非片持ち状態のウェハー支持体を少なくとも1列備えており、このウェハー支持体が間隔を空けて積まれた各ウェハーに対応するウェハー係合凹部を有しており、ウェハー拘束具がさらにこれよりも外側に一対の列をなす片持ち指状体を備えており、各列のウェハー支持体と片持ち指状体に縦方向支持部材が付属しており、
各片持ち指状体が、対応する縦方向支持部材に接続する固定端部と、この固定端部の支持する中間部と、この中間部の支持する先端部とを有し、中間部が横方向に延び、先端部が横方向に対して鋭角をなして下方に延びており、
各片持ち指状体がウェハー係合溝を有し、このウェハー係合溝が各片持ち指状体の先端部の上部マージンに対し平行でない向きに先端部を横断している、容器。
【請求項15】
請求項14に記載した前開きウェハー容器であって、各列の片持ち指状体のそれぞれが、他の列の片持ち指状体に向かって片持ち支持するような向きになっているもの。
【請求項16】
請求項14に記載した前開きウェハー容器であって、溝が各片持ち指状体の先端部のところで片持ち指状体の先端部の上部マージンに平行でないもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は2011年8月12日に出願されたWAFER CARRIER(ウェハー搬送器)と題する米国仮特許出願第61/523,254号の利益を主張するとともに、その出願全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、半導体ウェハー等のような繊細な基材のための容器に関するものであり、特に部品やその部品の容器への組み付けに関するものである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
コンピュータチップ等の集積回路は半導体ウェハーから製造される。このウェハーは集積回路の製造過程で数多くの工程を経る。これには一般に、ひとつの作業場から複数のウェハーを特殊な装置で加工するため別の作業場に搬送する作業が伴う。その加工過程の一部として、ウェハーは容器で一時的に保管されたり、他の工場やエンドユーザに配送されたりする。このような施設内での移動や施設外への移動は、ウェハーを害するおそれのある汚染物質を発生させたり、ウェハーを汚染物質に晒したりする可能性がある。汚染物質によるウェハーへの有害な影響を低減するため、これまで特殊な容器を開発することで汚染物質の発生を最小限に抑えたりウェハーを容器外部の汚染物質から隔離したりしてきた。こういった容器に共通する最大の特徴は、内部のウェハーまでの出入りを可能にするための取り外し可能なドアないし閉塞部材を備えている点である。
【0004】
加工工程間でのウェハーの搬送・保管には、何十年もの間、プラスチック容器が使用されてきた。このような容器の公差は、容器を輸送する設備・ロボットのみならず、加工設備と接触するためにも高度に制御されている。またこのようなプラスチック容器では、ねじなどの金属製の固定具を使用せずに着脱できるような部品を使用するのが望ましい。金属製の固定具では差し入れ・取り出しの際に粒子の生成が起きることがあるためである。
【0005】
他にも、半導体ウェハーを輸送・保管するために必要となる、もしくは望ましい容器の特性には、軽量で、剛性があり、清潔で、気体の排出量に限度があり、製造の対費用効果が高いという点がある。容器を閉めるとウェハーが密閉状態もしくは密閉に近い状態に隔離される。簡単に言えば、このような容器はウェハーを清潔で、汚染されず、破損しない状態に維持できる必要がある。さらに、ロボット処理中、搬送器を持ち上げる際にロボットのフランジが容器の頂部に置かれたり、搬送器をコンベヤシステムで運ぶ際にコンベヤのフランジが容器側壁の外面に掛けられたりするといった過酷な環境にあっても、搬送器は機能を維持できる必要がある。
【0006】
300mm大径ウェハーの搬送・保管には前開きのウェハー容器が業界標準となっている。このような容器では前面ドアが収容部のドア枠内に嵌めてラッチ機構でロックすることが可能となっており、ロボットでウェハーを差し入れ・取り出しするための前面の出入用開口をこのドアで閉じる。容器にウェハーが全部搭載されると、ドアが収容部のドア枠に差し込まれてラッチ機構でロックされる。ドアが装着されるとドアに付けられたクッションがウェハーを上方、下方、内方に抑えるように機能する。
【0007】
半導体産業ではいま、直径450mmのさらに大きなウェハーを用いる傾向にある。直径の大きいウェハーは対費用効果は良いものの、壊れやすく、重さが増えるうえに、プラスチック製の容器内での大径ウェハーの取り扱い・保管には未発見の問題が伴う。上面、底面、側面、前面、背面のプラスチックの膨張に伴うたわみやこれに関連する問題は悪化する。大きな部品の組み立てや組み立てる部品の製造公差は、さらに問題をはらんでいる。重さが増えた基板によって大型の部品に掛かる力は大きな応力を引き起こし、製造公差は大きくなり、従来の部品結合の技術では不十分であったり最適でなかったりする。例えば負荷がある部品から他の部品に伝わるような小さなウェハー搬送器では、多くの場合、戻り止め等のロック構造を一方か他方の部品の上に直接置いている。例えば、米国特許第7370764号を見ると、ハンドルと一体の戻り止めを使用して殻体にスライド可能に取り付け可能とした耐荷重ハンドルが説明されている。この特許は本出願の名義人が権利を所有している。大荷重と大型部品を扱う場合には、このような構成では最適でないことがある。
【0008】
また大きな寸法のウェハーには著しく大きなたわみがあることにより取り扱い・輸送中に損傷を受けやすくなり、小さなウェハーには必要なかった独自の支持体が必要となる。この大きなたわみは、ロボット制御によりロボットアームでウェハーの配置および除去を可能にしつつもウェハー間の所望の間隔を維持する上での課題となる。
【0009】
従来の300mmウェハー容器、特にFOSBS(front opening shipping boxes(前開き出荷箱))として知られているものでは、前面ドアを収容部に対してラッチ機構でロックすることで、ウェハーをロボットで挿入・取り出しする際に通る前面の出入用開口を閉じることができるようになっている。容器に全部のウェハーが搭載されると、ドアが収容部のドア枠に嵌め込まれてラッチ機構でロックされる。この種の構造では、ウェハーは側面に配置された棚に乗ることで最初の水平な搭載位置をとるが、ドアの内側の表面にウェハー支持体(「クッション」と呼ばれることが多い)を設けているとともに、ウェハー容器の背面に角度をつけて配置した複数の斜面を備えるウェハー支持体を設けていることにより、続いてドアを差し込む段階ではウェハーが次の搭載位置まで縦に持ち上がる。その後は出荷のために容器を後方に90度回転させてウェハーを縦向きにすることもできる。本出願の名義人が権利を有する米国特許第6267245号および第6010008号を参照されたい。これらの特許は参照により本明細書に組み込む。ここでは前記の折れ曲がった斜面が90度倒れたV字状の複数の溝の一部となっていることにより、ドアを挿入していくにつれウェハーの縁がV字の下側の分岐面に当たって乗り上げ、最終的にはV字の溝の頂角の内側に至って安定する。安定すると今度はドアに設けたクッションが上方、下方、内方への拘束力を発揮する。しかし450mmのウェハーはたわみが大きくなるので、特許第6010008号で説明されているような従来の斜面は最適ではない。
【0010】
半導体ウェハーが大型化するとともにウェハーに形成される回路の密度も上がってきており、回路が極めて小さなパーティクル等の汚染物質からも影響を受けやすくなっている。つまり、ウェハーのサイズが大きくなるにつれ容器のサイズも同様に大型化してきており、ウェハーが小さなパーティクル等の汚染物質の影響をさらに受けやすくなっていることに起因して、ウェハーを清潔で汚染物質の無い状態に保つための要件はますます厳しくなってきている。
【0011】
したがって、本業界ではこれらの問題、特に直径が450mm以上のウェハーのための容器に対して要求されるような問題を一つ以上対処できるウェハー容器が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第7370764号
【特許文献2】米国特許第6267245号
【特許文献3】米国特許第6010008号
【発明の概要】
【0013】
特に300mm以上の大径ウェハー、とりわけ450mmウェハーのための、収容部とドアを備えた前開きウェハー容器であって、その構成部品とは別体の留め具を利用することで、強固な結合とコスト効率を得るのに都合の良い方法で構成部品同士を固定することができる。収容部は前面が開放しており、底面でベース板を受けてねじりロック式コネクタで固定する。このねじりロック式コネクタは、パージ用グロメットを設けるための凹部も備える。このベース板にはキネマティックカップリング部品が容易かつ確実にロックされる。内部のウェハー支持部材がブラケットで側壁に留められ、タブとロック戻り止めを保持する別体のロック用挿入体を使用している。ウェハー保持具が支持体として、ドアを装着した際の450mmウェハーに伴う大きなウェハーのたわみの対策となる。
【0014】
ウェハー保持具は前面ドアの内側を向いた表面に取り外し可能に取り付けられるとともに、縦方向の部材から突き出した片持ち指状体の列を一対備えている。各指状体には、固定端部ないし基端部と、中間部と、先端の可撓端部とがあり、ウェハー容器の内方を向いてむき出し状態となったウェハー係合面がある。指状体は初め縦方向の部材から横に延びるが、続く中間部と端部では横方向に対し若干下方に向かう。むき出し状態のウェハー係合面には、上面部と下面部が交わることによって線状の凹部、すなわち溝ないし谷が形成されている。この溝ないし谷はドアを収納部のドア枠に完全に装着させるときのためのウェハーの架設溝となる。各指状体の端部のところではウェハー架設溝が指状体の上側マージン寄りにあり、固定端部に近づくにつれウェハー架設溝は指状体の上側マージンと下側マージンの間のほぼ中央に来る。むき出し状態のウェハー係合面の下面部は各指状体の先端部で縦に幅広になっており、固定端部に向かって狭くなっていく。ウェハー保持具にはさらにウェハー架設溝に対して横方向に揃えた固定ウェハー架設部の列がさらにある。
【0015】
ドアを収容部のドア枠に挿入していくと、ウェハーの前縁はまず、ウェハーのたわみに起因して、各指状体の先端部の下側の一点で各指状体に架かる。ドアをドア枠に嵌め込んでいくいくにつれ、各指状体の下面部が縦方向に対して傾斜していることによって、各ウェハーの前端を上に付勢する。各ウェハーが各指状体に対して架かる部分の横方向の長さは増加していき、ドアを装着位置に達するまでさらに嵌め込んでいくと、その長さは各指状体の固定端部の方まで及ぶ。この時点で、各ウェハーはウェハー係合溝の大部分にわたって最大限指状体に架かり、これとは別の固定ウェハー架設部の列にも架かる。ひとつの実施例として、各ウェハーはドアに対して2本の指状体と別の2個の固定ウェハー架設部で架かる。したがって、ひとつの実施例として、ウェハーが架かる縦2列の片持ち指状体と、2列の固定ウェハー架設部とが設けられる。
【0016】
ひとつの実施例として、ウェハー支持棚は、複数の協働するブラケット、すなわち挿入部とポケット部の組み合わせを用いて両側壁に固定する。挿入部とポケット部は、一方が殻体に、一方がウェハー支持棚部品の後側に設けられる。また、ウェハー支持棚部品の前側では、3パーツ固定を使用する。3パーツ固定は、ウェハー棚部品にブラケットを設け、殻体にこれと協動する対応ブラケットを一体に設け、2つのブラケットをロック部材で固定することで構成できる。ロック部材は戻り止めを備えたクリップとし、その戻り止めでクリップを定位置に保持するよう構成することができる。このクリップによってウェハー棚部品が殻体に固定される。部品同士を固定する戻り止めは、主体となる2つの部品にではなく、これらをひとつに結合して固定するための部品に設ける。このように第3の部品も含めてロックするラッチ機構は、主体となる2つの部品に対して実質的に独立しており、部品間で荷重が伝わるのが実質的に防止される。このように、本発明の実施例のひとつの特徴と利点はウェハー棚のための接続アセンブリであり、棚部品を殻体に係合させ、別体の部品でその係合状態を維持するとともに、一体に備えるタブの弾性を利用して戻り止めでこの別体の部品を固定位置にロックするものである。
【0017】
また、キネマティックカップリング部を設けたベース板を、ねじりロック式コネクタを含む別の固定部品を用いて固定することもできる。ねじりロック式コネクタは、ベース板の固定を強固にするとともに、組み立て作業、パーティクル生成を最小限にし、接合部をパージ用孔として使用できるようにするものである。ベース板については、ベース板に設けた対応開口部に容易・確実・正確に取り付く嵌めこみ式のキネマティックカップリング部品を利用することもできる。ここでもまた、コネクタは、2つの部品間の荷重伝達が固定するコネクタ部品を通って及ぶことが実質的にないように、主体となる2つの部品を互いに係合した状態に固定する。
【0018】
このとおり、450mmウェハーを含む大径ウェハーとの使用に適したウェハー容器を、新しい部品構成と取り付け手段を設けて提示する。この新規な点により、性能の強化、製造の便宜、コストの削減が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】
図1Aは本発明の実施例を含むウェハー搬送器の斜視図である。
【
図IB】
図IBはドアは除去した状態の
図1Aのウェハー搬送器の斜視図であり、本発明を実施する部品の取り付けを示す。
【
図1C】
図1Cはドアは除去した状態の
図1Aのウェハー搬送器の斜視図であり、本発明を実施する部品の取り付けを示す。
【
図2】
図2は本発明の実施例を含むウェハー搬送器の底面側の斜視図である。
【
図3】
図3は本発明の実施例を含むウェハー搬送器の収容部の
図1Cの線3−3での正面断面図である。
【
図3A】
図3Aは、
図3の断面の一部の詳細に示す斜視断面図である。本発明の各種実施例を示す。
【
図3B】
図3Bは本発明の実施例を含む運動学的カップリング部品の斜視図である。
【
図3C】
図3Cは本発明の実施例を含むウェハー搬送器の収容部を、
図1Cの線3C−3C、YZ平面で切断した詳細な立面断面図である。
【
図4A】
図4Aは本発明の実施例としてのウェハー支持部材の斜視図である。
【
図4B】
図4Bは本発明の実施例としてのロッククリップの斜視図である。
【
図5A】
図5Aは本発明の実施例としての収容部の殻体の斜視図である。
【
図5B】
図5Bは
図5Aの殻体の斜視図である。本発明の実施例として挿入され、ウェハー支持部材と。
【
図5C】
図5Cは
図5Aと5Bの殻体に本発明の実施例としてのロッククリップでウェハー支持部材を固定した斜視図である。
【
図5D】
図5Dは本発明の実施例としてのロッククリップの斜視図である。
【
図5F】
図5Fは、本発明の実施例としての後方ブラケット部のあるウェハー支持部材の斜視図である。
【
図5G】
図5Gは、本発明の実施例としての前方ブラケットとウェハー支持部材の斜視図である。
【
図5H】
図5Hは収容部内の立面図であり、本発明としての協働ブラケットで殻体に固定されたウェハー支持部材を示すものである。
【
図6】
図6は本発明の実施例としての前面ドアの内側面に取り付けたウェハー拘束体のウェハー係合側の斜視図である。
【
図6B-6E】
図6B〜6Eは、片持ち指状体を
図6Aの各線で切断した種々の断面における厚さや形状を比較した模式的な側面図である。
【
図6F-6H】
図6F〜6Hは、本発明の実施例としてウェハーが片持ち指状体に係合していく進行を
図6Aの線6F−6Fの位置で切断した平断面で模式的に示す。
【
図6I】
図6Iは、本発明の実施例としての定位置にウェハー拘束体のある前面ドアの内側面の立面図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の実施例としての半回転未満でロックするねじりロック式コネクタの斜視図である。
【
図7B】
図7Bは本発明の実施例としての
図7Aのねじりロック式コネクタを反対側から見上げた斜視図である。
【
図8】
図8は本発明の実施例としてのベース板の底面側の斜視図であって、殻体と一体のボスがその内部に見えている。
【
図9A】
図9Aは本発明の実施例としての底から出る一体のボスを示す収容部の殻体の斜視図である。
【
図9B】
図9Bは
図9Aの殻体の底に設けたボスの詳細な斜視図である。表示の都合上、この図では殻体が逆さになっている。
【
図9C】
図9Cは本発明の実施例としての
図9Bのボスとねじりロック式コネクタの詳細な斜視図である。
【
図9D】
図9Dは、パージ用孔として使用されるコネクタとボスに使用するのに適した、内部に逆止弁を有するエラストマー製グロメットの断面図である。
【
図10A-10B】
図10Aおよび10Bは、ベース板を間に挟んだ状態でコネクタを殻体から突き出たボス部に取り付けた状態を説明する図である。
【
図10C】
図10Cは、本発明の実施例としての仮想線で示した逆止弁を備えたパージ用グロメットとボスとねじりロック式コネクタを通る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
図1A、1B、1Cを見ると、多用途搬送器(MAC)30が本発明の実施例として描かれている。MAC30の収容部32は、上部36、天井37、下部38、底39、両側部40、両側壁41、後壁42、後部45を含む殻体33を備えている。上部36、下部38、両側部40は、前面開口部43まで延びており、ドア44で密閉することのできるドア枠47として構成されている。ひとつの実施例として、収容部32の後部42には取り付けブラケットとして構成されたポケット46が形成される。一対のウェハー支持部材50にはそれぞれ一対の協動ブラケットが一体に成形される。このブラケットは殻体に設けたブラケットと協動する。ロッククリップによってウェハー支持部材を所定の位置に固定してもよい。収容部32の外側には、下部38側にベース板52を取り付けることもできる。ひとつの実施例として、ベース板52には、キネマティックカップリングの3個の溝部品56と、ベース板52を収容部32の下部38に結合するねじりロック式コネクタ58を複数設ける。方向を示すためいくつもの図にxyz座標系を描いている。
【0021】
図2および
図3を見ると、
図1Cのベース板52とキネマティックカップリングの溝部品56が単独で描かれている。キネマティックカップリングの溝部品56はベース板52の取り付け開口部62に固定されるとともに、枠部64から谷底66までが途切れず連続して形成された面でつながっている。ひとつの実施例として、枠部64は長円形の形状として、直線状に伸長した側辺部65と半円状の端部66を備えている。キネマティックカップリングの溝56には、一対の係止突起68を、直線状に伸長した側辺部のところで枠部64から突き出すように一体に形成することができる。ひとつの実施例として、係止突起68の先端76に爪72とテーパ面74を設ける。
図3、
図3A、
図3Cに示すように、枠部は半円状の端部のところがベース板52の外向き面77に重なり、直線状に伸長した側辺部のところでは係止突起がこれと対向するベース板の係止部79の内向き面78に引っ掛かる。
【0022】
機能的には、キネマティックカップリングの溝部品56の連続的な構造によって、固定用の突起とカップリングした際の収容部32を支持するのに必要な強度が得られる。また、係止突起68(ひとつまたは複数)のテーパ面74によって、キネマティックカップリングの溝部品56をそれぞれの取り付け孔62に摺りながら挿入できるようになる。各テーパ面74の付け根に形成された爪72は、各取り付け開口62に係合する位置に設定することで、所定位置に係止突起68がスナップしてベース板52にキネマティックカップリングの溝56を固定できるようにする。ひとつの実施例として、キネマティックカップリングの溝部品56は、事前に収容部32からベース板52を除去することなくベース板52から取り外すことができないようにする。これは、キネマティックカップリングの溝部品56が不用意に取り付け開口部62から外れたり弄られたりするのを防ぐことができる。
【0023】
図4A、
図4B、
図5G、
図5Hには、
図1Bと
図1Cのウェハー支持部材50のひとつが単独で描かれており、これと併せて、ウェハー支持部材50を殻体32のいずれかの側壁41に固定するためのクリップ82がウェハー支持部材50に係合できるように設計される。ウェハー支持部材50は前縁86と後縁88があって、その間にウェハー支持体が複数設けられている。後縁88には後方に突き出た後部突起90が複数設けられる。後部突起90は、収容部32の後部42の取り付けポケット46に嵌合できるように形成されている。前縁86には殻体にある協働ブラケット110と協働するブラケットが設けられ、このウェハー支持部材側のブラケットには前縁ポケット92が整列している。
【0024】
クリップ82は把持部84を備えており、この把持部84からは複数のウェハー支持棚部品の殻体への係合状態を維持するための複数の保持タブ98、100が後方に延びており、またこの把持部84にはクリップを定位置に固定するための戻り止めとなるよう構成された複数の係止タブ101が設けられている。保持タブ98、100はウェハー支持部材50前縁のポケット92に嵌合するように構成されている。図示した実施例では、一部の保持タブ100が自由端104側に戻り止め102を備えている。
【0025】
図5Aから
図5Cにかけて、組み立ての様々な段階におけるMAC30が描かれている。
図5Dから5Hまでには、棚アセンブリ50として構成したウェハー支持部材が描かれており、さらにロック挿入体ないしロッククリップ82も描かれている。
図5Aに描かれているのは、ウェハー支持アセンブリ50の一方を取り出した状態の収容部32である。この図では、受け凹部47のある取り付けポケット46として構成されたブラケットが2つ見えている。
図5Aにはまた、一体に形成する等の方法で側部40に設けることができる取り付けブラケット110が描かれているが、この取り付けブラケット110には後方縁部112があるとともに、側壁41に隣接する開口部113が複数形成されている。さらに、殻体に一体で成形された側部ブラケット114も、ウェハー支持部材50に溝として形成された協働する機能部材115によって受けられる。
【0026】
組み立てる際には、ウェハー支持部材50を側部40の一方に寄せて置き、協働ブラケット同士を係合させる。具体的には、
図5Bに示すように、ウェハー支持部材50の後部突起90を収容部32の後部42にある取り付けポケット46に差し込む。ウェハー支持部材50の前縁86側をy方向の縦軸周りに回転させることにより、ウェハー支持部材の前側を取り付けブラケット110のすぐ後で側壁41に隣接させる。ウェハー支持部材50をこの向きに置いたままでクリップ82を取り付けブラケット110内に挿入し、保持タブ98、100が
図5Cに示すように取り付けブラケット110の開口部111を通り抜けて、ウェハー支持部材50の前縁にあるポケット92まで届くようにする。ロッククリップ82を完全に挿入すると、戻り止め102のある保持タブ100が定位置にスナップして、戻り止め102が取り付けブラケット110の後方縁112あるいはウェハー支持棚のブラケットの後方縁と係合する。ロッククリップは取っ手部115を用いて手作業で差し込んだり取り外したりすることができる。
【0027】
ひとつの実施例として、複数ある取り付けポケット46や後部突起90のうちのひとつは精密嵌合するための寸法にするが、残りの取り付けポケット46や後部突起90は緩い嵌合となる寸法とすることもできる。精密嵌合によれば後部42に対してウェハー支持部材50を位置合わせできる一方で、残りの緩く嵌合した取り付けポケット46と後部突起90からは安定性が得られる。例えば、図示する実施例では、後部42にある3個の取り付けポケット46が、ウェハー支持部材50にある3個の後部突起90と嵌合している。中央の取り付けポケット46と後部突起90は、きつく嵌合させるために密接公差することができる一方で、上下の取り付けポケット46とこれに対応する後部突起90は緩く嵌合している。上下の組が緩い嵌合であってもピッチ・ヨー・ロールの安定性はなお得られ、中央の取り付けポケット46・後部突起90の組に過度の曲げ応力が加わるのを防ぐことができる。この構成では、公差取り付けポケット46・後部突起90の組のみを慎重に位置合わせればよいため、ウェハー支持部材50を複数の取り付けポケット46に取り付けるのが容易になる。
【0028】
図6から
図6Eと
図6Hを見ると、本発明の実施例としてウェハー保持具120が描かれている。ウェハー保持具120は、ドアから突き出したボス122等、従来の手段を利用してドア44の内面121に取り付けられる。ウェハー保持具は、上部部材126と下部部材128が2つの対向する側部部材130で隔てられたほぼ矩形の外側フレーム124を備えており、ドアの内側壁面が受け止める概ね矩形の枠組を形成している。上部部材126と下部部材128の間には少なくとも1本のガイドブロック134が架け渡される。それぞれの側部部材からは複数の片持ち指状体138が片持ち状態でガイドブロック134に向かって突き出している。ガイドブロックは、非片持ち状の固定されたウェハー支持体135が並べられた縦方向の支持部材を1本または2本含んでおり、各ウェハー支持体によってドアが完全にドア枠に嵌め込まれたときの各ウェハーの前縁の架設位置136が決まる。
【0029】
隣り合う片持ち指状体138の間には隙間142が形成され、この隙間142は片持ち指状体138の固定端部144のところで終わる。各片持ち指状体138は、固定端部144ではほぼ平面的であり、厚みがほぼ均一である。固定端部144から離れた箇所では片持ち指状体138が折り目の付いた形を帯び、角ないし溝143を形成するようになる。
【0030】
機能的に見ると、片持ち指状体138の固定端部144は平坦になっていることにより、固定端部144から遠い側にある片持ち指状体138の折れ曲がった部分よりも、曲げに対して寛容である。したがって固定端部144は、ウェハーないし基板がこれに対応する片持ち指状体138に当たる際、リビングヒンジとして機能することができる。固定端部は続く中間部145とその先の可撓端部146を支持する。この設計により、ひとつの実施例として、各片持ち指状体138は、指状体自体の剛性は比較的保ったまま、片持ち指状体138の両側にある隙間142の端点、先端149、同士を結んでできる各軸148をおよその中心として曲がる。
【0031】
このことから、片持ち指状体138は、特にドアが装着されたときに保持されるウェハーないし基板の外縁の曲率とほぼ一致するように成形することもできる。片持ち指状体138に形成されている折り目の付いた表面は、ウェハーを片持ち指状体138で中央に寄せる助けにもなる。
【0032】
各指状体には、固定端部ないし基端部144と、中間部145と、先端の可撓端部146とがあり、ウェハー容器の内方、すなわちドアから離れる方向を向いてむき出し状態となっているウェハー係合面147がある。指状体は最初縦方向の部材から横に延びるが、続く中間部145と端部146では横方向に対し若干下方に向かう。むき出し状態のウェハー係合面には溝143ないし谷を成す直線状の凹部があり、この溝の頂部150はむき出し状態のウェハー係合面の下面部152と上面部151との交線を成す。この溝ないし谷は、ドアを収納部のドア枠に完全に装着させるときのウェハーの架設溝となる。各指状体の端部のところではウェハー架設溝が指状体の上縁154ないし上側マージン寄りにあり、固定端部に近づくにつれウェハー架設溝は指状体の上側マージンと下側マージン155の間のほぼ中央に来る。
図6Fから
図6Gには、2本の矢印156で示すように、片持ちの指状体が破線で示す元の位置からたわむにつれウェハーWが次第に掛かっていくところを示す。むき出し状態のウェハー係合面の下面部は各指状体の先端部で縦方向に幅広になり、固定端部に向かって狭くなっていく。
【0033】
上述のように、保持具にはさらに、ウェハー架設溝と横方向に揃えて設けた固定状態のウェハー架設部の列がもう1列または2列ある。
【0034】
ドアを収容部のドア枠に挿入していくと、ウェハーの前縁はまず、ウェハーのたわみに起因して、各指状体の先端部の下側の一点で各指状体に架かる。ドアをドア枠に嵌め込んでいくいくにつれ、各指状体の下面部が縦方向に対して傾斜していることによって、各ウェハーの前端を上に付勢する。各ウェハーが各指状体に対して架かる部分の横方向の長さは増加していき、ドアを装着位置に達するまでさらに嵌め込んでいくと、その長さは各指状体の固定端部の方まで及ぶ。この時点で、各ウェハーはウェハー係合溝の大部分にわたって最大限指状体に架かり、これとは別の固定ウェハー架設部の列にも架かる。ひとつの実施例として、各ウェハーはドアに対して2本の指状体と別の2個の固定ウェハー架設部で架かる。したがって、ひとつの実施例として、ウェハーに係合する縦2列の片持ち指状体と、2列の固定ウェハー架設部とが設けられる。
【0035】
片持ち指状体の先端部の下方への傾きは、ウェハー保持部が前面ドアの内側面に取り付けられている
図6Hにも示されている。
【0036】
図7Aから
図7Cまでを見ると、本発明の実施例としてのねじりロック式コネクタ58がひとつ描かれている。ねじりロック式コネクタのひとつの機能は、ねじを利用せず、180度に満たない部分的な回転を使用してベース板52を容器に固定することである。別の実施例では約90度の回転を利用する。またコネクタは、実施例によっては出入口として用いることもできる。図示した実施例のねじりロック式コネクタ58は、フランジ付き端部162とフランジ無し端部164のあるほぼ円筒状の本体160で構成されており、フランジ付き端部162のフランジ166には、上位面ないし外向き面170と、下位面ないし内向き面172とがある。円筒状の本体160は内部に貫通孔173を形成している。フランジ166には、外周部178ないしその付近に穴ないし切欠き176を複数設けることができる。ひとつの実施例として、切欠き176は、外向き面170側からはその一部のみにしか入ることができないように形成されており、切欠き176の残りの部分は内向き面172側からしか入れない凹部180となっている(
図7C)。
【0037】
ねじりロック式コネクタ58にはまた、円筒状の本体160のフランジ無し端部164側に弧状のアーム184を形成することができる。この弧状のアーム184によって、フランジ無し端部164から入ることのできる周方向の長孔186が形成される。ひとつの実施例として、円筒状の本体160からは上位ないし外側のタブ188を径方向に延ばし、弧状アーム184からは下位ないし内側のタブ190を径方向に延ばし、両タブは周方向の長孔186の両側に来るように配置する。ねじりロック式コネクタ58はさらに、円筒状の本体160にボス192を設けることもできる。図示した実施例では、ボス192が周方向の長孔186に対しおよそ直径を挟んだ反対側にある。
【0038】
図8を見ると、本発明の実施例としてベース板52上にあるロック孔200が描かれている。このロック孔200はねじりロック式コネクタ58に選択的に結合できるように設計する。ロック孔200は、ロック孔200の内周206に、対向する内フランジ202,204を設けることができる。ひとつの実施例として、少なくとも一方の内フランジ202は、内フランジ202から片持ち状態で周方向に突き出したロックアーム208を形成しており、このロックアーム208の自由端側に戻り止め209が設けられる。ロックアーム208の自由端の近くには突起210も配置することができる。内フランジ202、204と突起210によって、第1の隙間212と第2の隙間214が形成される。
【0039】
図9Aと
図9Bを見ると、本発明の実施例としてオス型の固定部材213が描かれている。このオス型の固定部材213は、収容部の底から突き出した筒状のボス215として構成することができる。本発明のひとつの実施例として、このボス215は収容部の殻体と一体的に形成される。すなわち、殻体と一体とすることで収容部32のパージ用孔ないし出入口216として構成することができ、本発明の実施例として示している。他の実施例として、固定部材は、殻体33を貫通する孔の中に設置したフランジ付きの部材としてもよい。コネクタが出入口に付属している実施例では、収容部32の内部と流体が行き来できる通路219をボスに設ける。図示している4つのコネクタは、いずれかひとつ、あるいはすべてを出入口に付属させることができる。出入口216は特徴として基部220と自由端222を備えたものであるということもでき、容器の下部38から固定部材213の基部220に沿って延びる控え壁223を設けることもできる。図示する実施例では、出入口216にはさらに、本体218の自由端222側から径方向外側に延びる二次的なボスないし突起ないしピン224が設けられる。
【0040】
図9Cを見ると、出入口216にねじりロック式コネクタ58を結合した状態が本発明の実施例として示されている。(ねじりロック式コネクタ58と出入口216との相互作用をわかりやすくするため、
図9Aから
図9Cではベース板52を取り除いている。操作時にはベース板52も用いられる。)出入口216の突起224はねじりロック式コネクタ58の周方向の長孔186と連携してバヨネット式の結合構造を成す。ひとつの実施例として、ねじりロック式コネクタ58のフランジ無し端部164は控え壁223の端部に当たって位置合わせができる。
【0041】
図9Dを見ると、本発明の実施例と共に使用するためのパージ弁230が描かれている。パージ弁230は、グロメット232の通路234に、その通路234を通る流れを制御するための逆止弁236を収容することで構成することができる。グロメット232はまた外側にリブ238を設けて、グロメット232を固定部材213の出入口216内に密封状態に摩擦嵌合するのを容易にすることもできる。出入口216内のパージ弁やグロメットは数ある中でもいかなるものを利用してもよいが、例えばティーベン(Tieben)らによる米国特許出願第7328727号にあるようなものを用いることができる。この米国特許出願の開示内容は、明示的な定義を除き、全体を参照により本明細書に援用する。
【0042】
図10Aと
図10Bを見ると、操作時のねじりロック式コネクタ58が描かれている。まず、ねじりロック式コネクタ58のボス192がロック孔200の2つの内フランジ202、204間にある第一の隙間212の位置に、外側と内側のタブ188、190が第二の隙間214の位置に来るように、ねじりロック式コネクタ58の向きを合わせる(
図10A)。次に、ボス192と外側/内側のタブ188、190が第1および第2の隙間212、214をに入り、出入口216のピン224がねじりロック式コネクタの周方向の長孔186に入るように、ねじりロック式コネクタ58をロック孔200内に入れている。そして、ねじりロック式コネクタのフランジ166の内向き面172を、ロック孔200の内フランジ202、204と突起210に当てる。
【0043】
この時、ねじりロック式コネクタのフランジ166の内向き面172は、ロックアーム208の先端にある戻り止め209にも接触するので、ロックアーム208が内向き面172から遠ざかる方向に曲がる。次に、ピン224が外側と内側のタブ188,190の間にある周方向の長孔186に入っていくように、ねじりロック式コネクタ58を回転させる(
図10B)。この回転により、ねじりロック式コネクタのフランジ166の内向き面172にある凹部180のうちの1つがロックアーム208の先端の戻り止め209と位置が合う。そしてロックアーム208の弾力により戻り止め209が凹部180に嵌り込む。
【0044】
機能的に見ると、ねじりロック式コネクタ58は、ねじりロック式コネクタにあるフランジ166の内向き面172と、ねじりロック式コネクタ58のボス192および外側のタブ188との間に、ベース板52の内フランジ202、204を挟み込む。周方向の長孔186とピン224の相互作用によって、ねじりロック式コネクタ58が控え壁223の端部に当たって保持され、出入口216に対するねじりロック式コネクタの軸方向に関する位置が決まる。
【0045】
弧状アーム184とこれが接する控え壁223とが相互作用することによりコネクタは安定し、ねじりロック式コネクタが傾いて出入口216に当たるのを妨げる。また、控え壁223とピン224が弧状アーム184を所定の位置に保持することで、ベース板の荷重によって弧状アーム184が曲げモーメントを受けないようになる。その代わり、弧状アーム184に力が伝わることで、改良された強度のため、主に剪断応力の。また、ボス192および内側のタブ190とこれらが通る対応する隙間212、214の周方向の寸法は、異なる寸法とすることにより、ベース板52を所定の位置にロックする際にねじりロック式コネクタ58を確実に適切な向きに合わせることができるようにしてもよい。
【0046】
ロックアーム208の先端の戻り止め209によって、通常の使用時にねじりロック式コネクタ58が回転運動するのを防ぐことができる。突起210があることによりロックアーム208の先端部が過度に伸ばされるのが抑制され、ねじりロック式コネクタ58の位置合わせがさらに安定する。ねじりロック式コネクタ58を取り外すため、ねじりロック式コネクタの切り欠き176のうちフランジ166の外向き面170から出入り可能な部分にピンを差し込めるようになっている。この差し込みによりロックアーム208が押し下げられて戻り止め209が凹部180から抜け、ねじりロック式コネクタ58を回転させて所定の位置から外すことができるようになる。
【0047】
上述したウェハー搬送器の各種部品は、ポリマーの射出成形や複数の部材の組み立てによる従来の方法で形成することができる。