特許第6097146号(P6097146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097146
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】光デバイスウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20170306BHJP
   B23K 26/062 20140101ALI20170306BHJP
   B23K 26/04 20140101ALI20170306BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20170306BHJP
【FI】
   H01L21/78 B
   H01L21/78 Q
   B23K26/062
   B23K26/04
   B23K26/00
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-104045(P2013-104045)
(22)【出願日】2013年5月16日
(65)【公開番号】特開2014-225562(P2014-225562A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 智裕
(72)【発明者】
【氏名】武田 昇
【審査官】 儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−160374(JP,A)
【文献】 特開2011−192934(JP,A)
【文献】 特開2011−166183(JP,A)
【文献】 特開2004−165227(JP,A)
【文献】 特開2007−317747(JP,A)
【文献】 特表2003−533871(JP,A)
【文献】 特開2005−279680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/00
B23K 26/04
B23K 26/062
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶基板の表面に発光層が形成され格子状の複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域に光デバイスが形成された光デバイスウエーハを分割予定ラインに沿って個々の光デバイスに分割する光デバイスウエーハの加工方法であって、
パルスレーザー光線を集光する集光レンズの開口数(NA)を単結晶基板の屈折率(N)で除した値が0.05〜0.2の範囲で集光レンズの開口数(NA)を設定する開口数設定工程と、
光デバイスウエーハを構成する単結晶基板の裏面側からパルスレーザー光線の集光点を単結晶基板の表面側近傍に位置付ける集光点位置付け工程と、
該集光点位置付け工程を実施した後にパルスレーザー光線を照射して単結晶基板の表面側近傍に位置付けられた集光点からパルスレーザー光線が入射された側に細孔と該細孔をシールドする非晶質とを成長させてシールドトンネルを分割予定ラインに沿って隣接して形成するシールドトンネル形成工程と、
該シールドトンネル形成工程が実施された光デバイスウエーハを構成する単結晶基板の裏面に反射膜を形成する反射膜形成工程と、
該反射膜形成工程が実施された光デバイスウエーハに外力を付与して光デバイスウエーハをシールドトンネルが形成された分割予定ラインに沿って破断し、個々の光デバイスに分割するウエーハ分割工程と、を含む、
ことを特徴とする光デバイスウエーハの加工方法。
【請求項2】
該開口数設定工程においては、単結晶基板がサファイア(Al2O3)基板の場合には集光レンズの開口数(NA)は0.1〜0.35に設定され、単結晶基板が炭化珪素(SiC)基板の場合には集光レンズの開口数(NA)は0.15〜0.55に設定され、単結晶基板が窒化ガリウム(GaN)基板の場合には集光レンズの開口数(NA)は0.1〜0.5に設定される、請求項1記載の光デバイスウエーハの加工方法。
【請求項3】
該反射膜形成工程を実施する前に、該シールドトンネル形成工程が実施された光デバイスウエーハを構成する単結晶基板の裏面を研削して光デバイスウエーハを所定の厚みに形成する裏面研削工程を実施する、請求項1又は2記載の光デバイスウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サファイア等の単結晶基板の表面に発光層が形成され格子状の複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域に光デバイスが形成された光デバイスウエーハを分割予定ラインに沿って個々の光デバイスに分割する光デバイスウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光デバイス製造工程においては、略円板形状であるサファイア基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体からなる発光層が積層され格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域に発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスを形成して光デバイスウエーハを構成する。そして、光デバイスウエーハをストリートに沿って切断することにより光デバイスが形成された領域を分割して個々の光デバイスを製造している。
【0003】
上述した光デバイスウエーハのストリートに沿った切断は、通常、ダイサーと呼ばれている切削装置によって行われている。この切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削するための切削手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に移動せしめる切削送り手段とを具備している。切削手段は、回転スピンドルと該スピンドルに装着された切削ブレードおよび回転スピンドルを回転駆動する駆動機構を含んでいる。切削ブレードは円盤状の基台と該基台の側面外周部に装着された環状の切れ刃からなっており、切れ刃は例えば粒径3μm程度のダイヤモンド砥粒を電鋳によって基台に固定し厚さ20μm程度に形成されている。
【0004】
しかるに、光デバイスウエーハを構成するサファイア基板はモース硬度が高いため、上記切削ブレードによる切断は必ずしも容易ではない。更に、切削ブレードは20μm程度の厚さを有するため、デバイスを区画するストリートとしては幅が50μm程度必要となる。このため、ストリートの占める面積比率が高くなり、生産性が悪いという問題がある。
【0005】
上述した問題を解消するために、光デバイスウエーハをストリートに沿って分割する方法として、ウエーハに対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線をストリートに沿って照射することにより破断の起点となるレーザー加工溝を形成し、この破断の起点となるレーザー加工溝が形成されたストリートに沿って外力を付与することにより割断する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかるに、光デバイスウエーハを構成するサファイア基板の表面に形成されたストリートに沿ってレーザー光線を照射してレーザー加工溝を形成すると、発光ダイオード等の光デバイスの外周がアブレーションされてデブリと呼ばれる溶融物が付着するため輝度が低下し、光デバイスの品質が低下するという問題がある。このような問題を解消するために、光デバイスウエーハを個々の光デバイスに分割する前にエッチングによりデブリを除去する工程が必要となり生産性が悪いという問題がある。
【0007】
このような問題を解消するために、発光層(エピ層)が形成されていないサファイア基板の裏面側からサファイア基板に対して透過性を有する波長のレーザー光線を集光点を内部に位置付けてストリートに沿って照射し、サファイア基板の内部にストリートに沿って改質層を形成することにより、サファイア基板を改質層が形成されたストリートに沿って分割する加工方法が下記特許文献2に開示されている。
【0008】
近年、サファイア基板の表面に発光層が形成された光デバイスウエーハとして、発光層から発光された光を反射して光の取り出し効率を向上させるために、サファイア基板の裏面に反射膜(DBR膜)を積層する技術が提案されている。
しかるに、サファイア基板の裏面に反射膜(DBR膜)特に金、アルミニウム等の金属膜からなる反射膜が積層された光デバイスウエーハは、反射膜がレーザー光線の妨げとなりサファイア基板の裏面側からレーザー光線を照射することができないという問題がある。
【0009】
このような問題を解消するために、サファイアウエーハの裏面側から分割予定ラインに沿ってサファイアに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線をサファイアウエーハの内部に集光して照射し、内部に分割予定ラインに沿って改質層を形成した後、サファイアウエーハの裏面に反射膜を形成し、その後、サファイアウエーハに外力を作用することにより改質層が形成された分割予定ラインに沿って分割するサファイアウエーハの分割方法が下記特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【特許文献2】特許第3408805号公報
【特許文献3】特開2011−243875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
而して、サファイアウエーハのように単結晶基板の内部に改質層を形成するには、レーザー光線のピークパワー密度を高く設定する必要があり、開口数(NA)が0.8以上の集光レンズが用いられるとともに、単結晶基板を改質層が形成された分割予定ラインに沿って分割できる厚みとして150μm以下に薄くする必要がある。
しかるに、厚みが150μm以下と薄くなった単結晶基板の内部に改質層を形成すると、単結晶基板に反りが生じて反射膜の形成に支障をきたすという問題がある。
一方、単結晶基板の厚みを150μm以上、例えば300μmに設定して内部に改質層を形成すると反りは生じないものの、単結晶基板の厚みに対して十分な厚みの改質層を形成することができないため、単結晶基板を改質層が形成された分割予定ラインに沿って確実に分割することができないという問題がある。
【0012】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、単結晶基板からなる光デバイスウエーハの厚みが厚くても単結晶基板の裏面に反射膜を形成した後に光デバイスウエーハを分割予定ラインに沿って個々のデバイスに確実に分割することができる光デバイスウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、単結晶基板の表面に発光層が形成され格子状の複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域に光デバイスが形成された光デバイスウエーハを分割予定ラインに沿って個々の光デバイスに分割する光デバイスウエーハの加工方法であって、
パルスレーザー光線を集光する集光レンズの開口数(NA)を単結晶基板の屈折率(N)で除した値が0.05〜0.2の範囲で集光レンズの開口数(NA)を設定する開口数設定工程と、
光デバイスウエーハを構成する単結晶基板の裏面側からパルスレーザー光線の集光点を単結晶基板の表面側近傍に位置付ける集光点位置付け工程と、
該集光点位置付け工程を実施した後にパルスレーザー光線を照射して単結晶基板の表面側近傍に位置付けられた集光点からパルスレーザー光線が入射された側に細孔と該細孔をシールドする非晶質とを成長させてシールドトンネルを分割予定ラインに沿って隣接して形成するシールドトンネル形成工程と、
該シールドトンネル形成工程が実施された光デバイスウエーハを構成する単結晶基板の裏面に反射膜を形成する反射膜形成工程と、
該反射膜形成工程が実施された光デバイスウエーハに外力を付与して光デバイスウエーハをシールドトンネルが形成された分割予定ラインに沿って破断し、個々の光デバイスに分割するウエーハ分割工程と、を含む、
ことを特徴とする光デバイスウエーハの加工方法が提供される。
【0014】
上記開口数設定工程においては、単結晶基板がサファイア(Al2O3)基板の場合には集光レンズの開口数(NA)は0.1〜0.35に設定され、単結晶基板が炭化珪素(SiC)基板の場合には集光レンズの開口数(NA)は0.15〜0.55に設定される。
また、上記反射膜形成工程を実施する前に、シールドトンネル形成工程が実施された光デバイスウエーハを構成する単結晶基板の裏面を研削して光デバイスウエーハを所定の厚みに形成する裏面研削工程を実施する。
【発明の効果】
【0015】
本発明による光デバイスウエーハの加工方法においては、パルスレーザー光線を集光する集光レンズの開口数(NA)を単結晶基板の屈折率(N)で除した値が0.05〜0.2の範囲で集光レンズの開口数(NA)を設定し、パルスレーザー光線を照射して光デバイスウエーハを構成する単結晶基板の表面側近傍に位置付けられた集光点とパルスレーザー光線が入射された側との間に細孔と該細孔をシールドする非晶質とを成長させてシールドトンネルを分割予定ラインに沿って隣接して形成するので、厚みが例えば300μmの光デバイスウエーハであっても表面側近傍に位置付けられた集光点からパルスレーザー光線が入射された表面側に亘ってシールドトンネルを形成することができるため、光デバイスウエーハの厚みが厚くてもパルスレーザー光線を1回照射すればよいため、生産性が極めて良好となる。このように光デバイスウエーハの厚みが厚くても表面側から入射面である裏面に亘ってシールドトンネルを形成することができるので、光デバイスウエーハに反りが生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による光デバイスウエーハの加工方法によって個々の光デバイスに分割される光デバイスウエーハの斜視図および要部を拡大して示す断面図。
図2図1に示す光デバイスウエーハの表面に保護テープを貼着した状態を示す斜視図。
図3】本発明による光デバイスウエーハの加工方法におけるシールドトンネル形成工程を実施するためのレーザー加工装置の要部斜視図。
図4】本発明による光デバイスウエーハの加工方法におけるシールドトンネル形成工程の説明図。
図5】集光レンズの開口数(NA)と光デバイスウエーハの屈折率(N)と開口数(NA)を屈折率(N)で除した値(S=NA/N)との関係を示す図。
図6】サファイア基板と炭化珪素(SiC)基板と窒化ガリウム(GaN)基板においてシールドトンネルが形成された状態におけるパルスレーザー光線のエネルギーとシールドトンネルの長さとの関係を示すグラフ。
図7】本発明による光デバイスウエーハの加工方法における裏面研削工程を実施するための研削装置の要部斜視図。
図8】本発明による光デバイスウエーハの加工方法における裏面研削工程を示す説明図。
図9】本発明による光デバイスウエーハの加工方法における反射膜積層工程の説明図。
図10図8に示す反射膜積層工程が実施された光デバイスウエーハの斜視図。
図11】本発明による光デバイスウエーハの加工方法におけるウエーハ支持工程および保護テープ剥離工程を示す説明図。
図12】本発明による光デバイスウエーハの加工方法におけるウエーハ分割工程を実施するためのテープ拡張装置の斜視図。
図13】本発明による光デバイスウエーハの加工方法おけるウエーハ分割工程を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による光デバイスウエーハの加工方法について添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0018】
図1の(a)および(b)には、本発明による光デバイスウエーハの加工方法によって個々の光デバイスに分割される光デバイスウエーハの斜視図が示されている。図1に示す光デバイスウエーハ2は、厚みが300μmの単結晶基板であるサファイア基板20の表面20aに窒化物半導体からなる発光層(エピ層)21が積層されている。そして、発光層(エピ層)21が格子状に形成された複数の分割予定ライン22によって区画され、この区画された複数の領域に発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイス23が形成されている。
【0019】
上述した光デバイスウエーハ2を構成する発光層(エピ層)21の表面21aには、光デバイス23を保護するために図2に示すように保護テープ3を貼着する(保護テープ貼着工程)。従って、保護テープ3が貼着された光デバイスウエーハ2は、サファイア基板20の裏面20bが露出される。
【0020】
図3には、上述した保護テープ貼着工程が実施された光デバイスウエーハ2の分割予定ライン22に沿ってレーザー加工を施すレーザー加工装置が示されている。図3に示すレーザー加工装置4は、被加工物を保持するチャックテーブル41と、該チャックテーブル41上に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段42と、チャックテーブル41上に保持された被加工物を撮像する撮像手段43を具備している。チャックテーブル41は、被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない加工送り手段によって図3において矢印Xで示す加工送り方向に移動せしめられるとともに、図示しない割り出し送り手段によって図3において矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。
【0021】
上記レーザー光線照射手段42は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング421を含んでいる。ケーシング421内には図示しないパルスレーザー光線発振器や繰り返し周波数設定手段を備えたパルスレーザー光線発振手段が配設されている。上記ケーシング421の先端部には、パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光するための集光レンズ422aを備えた集光器422が装着されている。この集光器422の集光レンズ422aは、開口数(NA)が次のよう設定されている。即ち、集光レンズ422aの開口数(NA)は、開口数(NA)を単結晶基板の屈折率(N)で除した値が0.05〜0.2の範囲に設定される(開口数設定工程)。なお、レーザー光線照射手段42は、集光器422の集光レンズ422aによって集光されるパルスレーザー光線の集光点位置を調整するための集光点位置調整手段(図示せず)を備えている。
【0022】
上記レーザー光線照射手段42を構成するケーシング421の先端部に装着された撮像手段43は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0023】
上述したレーザー加工装置4を用いて、上述した保護テープ貼着工程が実施された光デバイスウエーハ2の分割予定ライン22に沿ってレーザー加工を施すには、先ず、上述した図3に示すレーザー加工装置4のチャックテーブル41上に光デバイスウエーハ2に貼着された保護テープ3側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、保護テープ3を介して光デバイスウエーハ2をチャックテーブル41上に保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル41に保持された光デバイスウエーハ2は、単結晶基板であるサファイア基板20の裏面20bが上側となる。このようにして、光デバイスウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル41は、図示しない加工送り手段によって撮像手段43の直下に位置付けられる。
【0024】
チャックテーブル41が撮像手段43の直下に位置付けられると、撮像手段43および図示しない制御手段によって光デバイスウエーハ2のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段43および図示しない制御手段は、光デバイスウエーハ2の所定方向に形成されている分割予定ライン22と、該分割予定ライン22に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段42の集光器422との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する(アライメント工程)。また、光デバイスウエーハ2に上記所定方向と直交する方向に形成された分割予定ライン22に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。このとき、光デバイスウエーハ2の分割予定ライン22が形成されている発光層(エピ層)21の表面21aは下側に位置しているが、撮像手段43が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、単結晶基板であるサファイア基板20の裏面20bから透かして分割予定ライン22を撮像することができる。
【0025】
上述したアライメント工程を実施したならば、図4で示すようにチャックテーブル41をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段42の集光器422が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定の分割予定ライン22を集光器422の直下に位置付ける。このとき、図4の(a)で示すように光デバイスウエーハ2は、分割予定ライン22の一端(図4の(a)において左端)が集光器422の直下に位置するように位置付けられる。そして、図示しない集光点位置調整手段を作動して集光器422を光軸方向に移動し、光デバイスウエーハ2を構成する単結晶基板であるサファイア基板20の裏面20b側からパルスレーザー光線LBの集光点Pをサファイア基板20の表面20a側(発光層(エピ層)21側)の近傍に位置付ける(集光点位置付け工程)。
【0026】
上述したように集光点位置付け工程を実施したならば、レーザー光線照射手段42を作動して集光器422からパルスレーザー光線LBを照射して、光デバイスウエーハ2を構成する単結晶基板であるサファイア基板20に位置付けられた集光点Pからパルスレーザー光線が入射された側(サファイア基板20の裏面20b側)に細孔と該細孔をシールドする非晶質とを形成させてシールドトンネルを形成するシールドトンネル形成工程を実施する。即ち、集光器422から光デバイスウエーハ2を構成する単結晶基板としてのサファイア基板に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線LBを照射しつつチャックテーブル41を図4の(a)において矢印X1で示す方向に所定の送り速度で移動せしめる(シールドトンネル形成工程)。そして、図4の(b)で示すようにレーザー光線照射手段42の集光器422の照射位置に分割予定ライン22の他端(図4の(a)において右端)が達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル41の移動を停止する。
【0027】
上述したシールドトンネル形成工程を実施することにより、光デバイスウエーハ2を構成する単結晶基板であるサファイア基板20の内部には、図4の(c)に示すようにパルスレーザー光線LBの集光点Pが位置付けられた単結晶基板20の表面20a側から入射面である単結晶基板20の裏面20bに亘って細孔241と該細孔241の周囲に形成された非晶質242が成長し、分割予定ライン22に沿って所定の間隔(図示の実施形態においては10μmの間隔(加工送り速度:500mm/秒)/(繰り返し周波数:50kHz))で非晶質のシールドトンネル24が形成される。このシールドトンネル24は、図4の(d)および(e)に示すように中心に形成された直径がφ1μm程度の細孔241と該細孔241の周囲に形成された直径がφ10μmの非晶質242とからなり、図示の実施形態においては隣接する非晶質242同士がつながるように形成される形態となっている。なお、上述したシールドトンネル形成工程において形成される非晶質のシールドトンネル24は、光デバイスウエーハ2を構成する単結晶基板であるサファイア基板20の表面20a側から入射面である単結晶基板であるサファイア基板20の裏面20bに亘って成長させて形成することができるため、ウエーハの厚みが厚くてもパルスレーザー光線を1回照射すればよいので、生産性が極めて良好となる。このように光デバイスウエーハ2の厚みが例えば300μmと厚くても表面(下面)側から入射面であるサファイア基板20の表面20a側から裏面20bに亘ってシールドトンネル24を形成することができるので、光デバイスウエーハ2に反りが生じることはない。また、シールドトンネル形成工程においてはデブリが飛散しないので、デバイスの品質を低下させるという問題も解消される。
【0028】
上述したように所定の分割予定ライン22に沿って上記シールドトンネル形成工程を実施したら、チャックテーブル41を矢印Yで示す方向に光デバイスウエーハ2に形成された分割予定ライン22の間隔だけ割り出し移動し(割り出し工程)、上記シールドトンネル形成工程を遂行する。このようにして所定方向に形成された全ての分割予定ライン22に沿って上記シールドトンネル形成工程を実施したならば、チャックテーブル41を90度回動せしめて、上記所定方向に形成された分割予定ライン22に対して直交する方向に延びる分割予定ライン22に沿って上記シールドトンネル形成工程を実行する。
【0029】
上述したシールドトンネル形成工程において、良好なシールドトンネル24を形成するには、上述したように集光レンズ422aの開口数(NA)は、開口数(NA)を単結晶基板の屈折率(N)で除した値(S=NA/N)が0.05〜0.2の範囲に設定されていることが重要である。
ここで、開口数(NA)と屈折率(N)と開口数(NA)を屈折率(N)で除した値(S=NA/N)との関係について、図5を参照して説明する。図5において集光レンズ422aに入光したパルスレーザー光線LBは光軸に対して角度(θ)をもって集光される。このとき、sinθが集光レンズ422aの開口数(NA)である(NA=sinθ)。集光レンズ422aによって集光されたパルスレーザー光線LBが単結晶基板からなる光デバイスウエーハ2に照射されると、光デバイスウエーハ2を構成する単結晶基板は空気より密度が高いのでパルスレーザー光線LBは角度(θ)から角度(α)に屈折し集光点Pに集光される。このとき、光軸に対する角度(α)は、光デバイスウエーハ2を構成する単結晶基板の屈折率(N)によって異なる。屈折率(N)は(N=sinθ/sinα)であるから、開口数(NA)を単結晶基板の屈折率(N)で除した値(S=NA/N)はsinαとなる。従って、sinαを0.05〜0.2の範囲(0.05≦sinα≦0.2)に設定することが重要である。
以下、集光レンズ422aの開口数(NA)を単結晶基板の屈折率(N)で除した値(S=NA/N)が0.05〜0.2の範囲に設定された理由について説明する。
【0030】
[実験1]
厚みが300μmのサファイア(Al2O3)基板(屈折率:1.7)を次の加工条件でシールドトンネルを形成し、シールドトンネルの良不良を判定した。

加工条件
波長 :1030nmのパルスレーザー
繰り返し周波数 :50kHz
パルス幅 :10ps
平均出力 :3W
集光スポット径 :φ10μm
加工送り速度 :500mm/秒

集光レンズの開口数(NA) シールドトンネルの良不良 S=NA/N
0.05 なし
0.1 やや良好 0.058
0.15 良好 0.088
0.2 良好 0.117
0.25 良好 0.147
0.3 良好 0.176
0.35 やや良好 0.205
0.4 不良
0.45 不良:ボイドができる
0.5 不良:ボイドができる
0.55 不良:ボイドができる
0.6 不良:ボイドができる

以上のようにサファイア(Al2O3)基板(屈折率:1.7)においては、パルスレーザー光線を集光する集光レンズ422aの開口数(NA)を単結晶基板の屈折率(N)で除した値(S=NA/N)が0.05〜0.2の範囲に設定することにより、シールドトンネルが形成される。従って、サファイア(Al2O3)基板(屈折率:1.7)においては、パルスレーザー光線を集光する集光レンズ422aの開口数(NA)は、0.1〜0.35に設定することが重要である。
【0031】
[実験2]
厚みが300μmの炭化珪素(SiC)基板(屈折率:2.63)を次の加工条件でシールドトンネルを形成し、シールドトンネルの良不良を判定した。

加工条件
波長 :1030nmのパルスレーザー
繰り返し周波数 :50kHz
パルス幅 :10ps
平均出力 :3W
集光スポット径 :φ10μm
加工送り速度 :500mm/秒

集光レンズの開口数(NA) シールドトンネルの良不良 S=NA/N
0.05 なし
0.1 なし
0.15 やや良好 0.057
0.2 良好 0.076
0.25 良好 0.095
0.3 良好 0.114
0.35 良好 0.133
0.4 良好 0.153
0.45 良好 0.171
0.5 良好 0.19
0.55 やや良好 0.209
0.6 不良:ボイドができる

以上のように炭化珪素(SiC)基板(屈折率:2.63)においては、パルスレーザー光線を集光する集光レンズ422aの開口数(NA)を単結晶基板の屈折率(N)で除した値(S=NA/N)が0.05〜0.2の範囲に設定することにより、シールドトンネルが形成される。従って、炭化珪素(SiC)基板においては、パルスレーザー光線を集光する集光レンズ422aの開口数(NA)は、0.15〜0.55に設定することが重要である。
【0032】
[実験3]
厚みが300μmの窒化ガリウム(GaN)基板(屈折率:2.3)を次の加工条件でシールドトンネルを形成し、シールドトンネルの良不良を判定した。

加工条件
波長 :1030nmのパルスレーザー
繰り返し周波数 :50kHz
パルス幅 :10ps
平均出力 :3W
集光スポット径 :φ10μm
加工送り速度 :500mm/秒

集光レンズの開口数(NA) シールドトンネルの良不良 S=NA/N
0.05 なし
0.1 やや良好 0.043
0.15 良好 0.065
0.2 良好 0.086
0.25 良好 0.108
0.3 良好 0.130
0.35 良好 0.152
0.4 良好 0.173
0.45 良好 0.195
0.5 やや良好 0.217
0.55 不良:ボイドができる
0.6 不良:ボイドができる

以上のように窒化ガリウム(GaN)基板(屈折率:2.3)においては、パルスレーザー光線を集光する集光レンズ422aの開口数(NA)を単結晶基板の屈折率(N)で除した値(S=NA/N)が0.05〜0.2の範囲に設定することにより、シールドトンネルが形成される。従って、窒化ガリウム(GaN)基板においては、パルスレーザー光線を集光する集光レンズ422aの開口数(NA)は、0.1〜0.5に設定することが重要である。
【0033】
上述した実験1、実験2、実験3から、パルスレーザー光線を集光する集光レンズ422aの開口数(NA)は、開口数(NA)を単結晶基板の屈折率(N)で除した値(S=NA/N)が0.05〜0.2の範囲に設定することにより、シールドトンネルが形成されることが確認できた。
【0034】
図6には、本発明者等の実験によって得られたサファイア(Al2O3)基板、炭化珪素(SiC)基板、窒化ガリウム(GaN)基板においてシールドトンネルが形成された状態におけるパルスレーザー光線のエネルギー(μJ/1パルス)とシールドトンネルの長さ(μm)との関係が示されている。図6に示すグラフから例えば厚みが300μmのサファイア(Al2O3)基板に下面から上面に亘ってシールドトンネルを形成するためには、パルスレーザー光線のエネルギーは85μJ/1パルス以上となる。従って、パルスレーザー光線の繰り返し周波数を50kHzとすると、サファイア(Al2O3)基板に長さが300μmのシールドトンネルを形成するためには、パルスレーザー光線の平均出力を4.5Wに設定すればよい。
【0035】
上述したようにシールドトンネル形成工程を実施したならば、必要に応じて該シールドトンネル形成工程が実施された光デバイスウエーハ2を構成する単結晶基板であるサファイア基板20の裏面20bを研削して光デバイスウエーハ2を所定の厚みに形成する裏面研削工程を実施する.この裏面研削工程は、図7に示す研削装置5を用いて実施する。図7に示す研削装置5は、被加工物を保持するチャックテーブル51と、該チャックテーブル51に保持された被加工物を研削する研削手段52を具備している。チャックテーブル51は、保持面である上面に被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない回転駆動機構によって図7において矢印51aで示す方向に回転せしめられる。研削手段52は、スピンドルハウジング521と、該スピンドルハウジング521に回転自在に支持され図示しない回転駆動機構によって回転せしめられる回転スピンドル522と、該回転スピンドル522の下端に装着されたマウンター523と、該マウンター523の下面に取り付けられた研削ホイール524とを具備している。この研削ホイール524は、円環状の基台525と、該基台525の下面に環状に装着された研削砥石526とからなっており、基台525がマウンター523の下面に締結ボルト527によって取り付けられている。
【0036】
上述した研削装置5を用いて上記裏面研削工程を実施するには、図7に示すようにチャックテーブル51の上面(保持面)に上記シールドトンネル形成工程が実施された光デバイスウエーハ2の保護テープ3側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによってチャックテーブル51上に光デバイスウエーハ2を保護テープ3を介して吸着保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル51上に保持された光デバイスウエーハ2は、単結晶基板であるサファイア基板20の裏面20bが上側となる。このようにチャックテーブル51上に光デバイスウエーハ2を保護テープ3を介して吸引保持したならば、チャックテーブル51を図7において矢印51aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削手段52の研削ホイール524を図7において矢印524aで示す方向に例えば6000rpmで回転せしめて、図7に示すように研削砥石526を被加工面である光デバイスウエーハ2を構成する単結晶基板であるサファイア基板の裏面2bに接触せしめ、研削ホイール524を図7および図8において矢印524bで示すように例えば1μm/秒の研削送り速度で下方(チャックテーブル51の保持面に対し垂直な方向)に所定量研削送りする。この結果、光デバイスウエーハ2を構成する単結晶基板であるサファイア基板20の裏面20bが研削されて光デバイスウエーハ2は所定の厚み(例えば200μm)に形成される。
【0037】
次に、上記シールドトンネル形成工程(および裏面研削工程)が実施された光デバイスウエーハ2を構成する単結晶基板であるサファイア基板20の裏面20bに反射膜を形成する反射膜形成工程を実施する。この反射膜形成工程は、図9に示すスパッタ装置6を用いて実施する。図9に示すスパッタ装置6は、スパッタチャンバー61を形成するハウジング62と、該ハウジング62のスパッタチャンバー61内に配設され被加工物を保持する陽極となる静電吸着式の保持テーブル63と、該保持テーブル63と対向して配設され積層する金属(例えば金、アルミニウム)または酸化物(例えばSiO2、TiO2、ZnO)からなるターゲット64を取り付ける陰極65と、ターゲット64を励磁する励磁手段66と、陰極65に高周波電圧を印加する高周波電源67とからなっている。なお、ハウジング62には、スパッタチャンバー61内を図示しない減圧手段に連通する減圧口621と、スパッタチャンバー61内を図示しないスパッタガス供給手段に連通する導入口622が設けられている。
【0038】
上記のように構成されたスパッタ装置6を用いて上述した反射膜形成工程を実施するには、保持テーブル63上に上述したシールドトンネル形成工程(および裏面研削工程)が実施された光デバイスウエーハ2の表面に貼着された保護テープ3側を載置し、静電吸着保持する。従って、保持テーブル63上に静電吸着保持された光デバイスウエーハ2を構成する単結晶基板であるサファイア基板20の裏面20bが上側となる。次に、励磁手段66を作動してターゲット64を励磁するとともに、陰極65に高周波電源67から例えば40kHzの高周波電圧を印加する。そして、図示しない減圧手段を作動してスパッタチャンバー61内を10−2Pa〜10−4Pa程度に減圧するとともに、図示しないスパッタガス供給手段を作動してスパッタチャンバー61内にアルゴンガスを導入してプラズマを発生させる。従って、プラズマ中のアルゴンガスが陰極65に取り付けられた金、アルミニウム等の金属またはSiO2、TiO2、ZnO等の酸化物からなるターゲット64に衝突し、この衝突によって飛散する金属粒子または酸化物粒子は光デバイスウエーハ2を構成するサファイア基板20の裏面20bに金属層または酸化物層が堆積する。この結果、図10に示すように光デバイスウエーハ2を構成するサファイア基板20の裏面20bには、金属膜または酸化膜からなる反射膜210が形成される。この金属膜または酸化膜からなる反射膜210は、厚みが0.5〜2μmに設定されている。
【0039】
上述した反射膜形成工程を実施したならば、反射膜210が形成された光デバイスウエーハ2を構成するサファイア基板20の裏面20bを環状のフレームに装着された粘着テープに貼着するウエーハ支持工程を実施する。即ち、図11に示すように環状のフレームFの開口部を覆うように外周部が装着された粘着テープTの表面に光デバイスウエーハ2を構成するサファイア基板20の裏面20bに形成された反射膜210側を貼着する。そして、光デバイスウエーハ2の表面に貼着されている保護テープ3を剥離する(保護テープ剥離工程)。
【0040】
次に、反射膜形成工程が実施された光デバイスウエーハ2に外力を付与して光デバイスウエーハ2をシールドトンネル23が形成された分割予定ライン22に沿って破断し、個々の光デバイス21に分割するウエーハ分割工程を実施する。この分割工程は、図12に示すウエーハ分割装置7を用いて実施する。図12に示すウエーハ分割装置7は、上記環状のフレームFを保持するフレーム保持手段71と、該フレーム保持手段71に保持された環状のフレームFに装着された粘着テープTを拡張するテープ拡張手段72を具備している。フレーム保持手段71は、環状のフレーム保持部材711と、該フレーム保持部材711の外周に配設された固定手段としての複数のクランプ712とからなっている。フレーム保持部材711の上面は環状のフレームFを載置する載置面711aを形成しており、この載置面711a上に環状のフレームFが載置される。そして、載置面711a上に載置された環状のフレームFは、クランプ712によってフレーム保持部材711に固定される。このように構成されたフレーム保持手段71は、テープ拡張手段72によって上下方向に進退可能に支持されている。
【0041】
上記テープ拡張手段72は、上記環状のフレーム保持部材711の内側に配設される押圧部材としての円筒状の拡張ドラム721を具備している。この拡張ドラム721は、環状のフレームFの内径より小さく該環状のフレームFに装着された粘着テープTに貼着される光デバイスウエーハ2の外径より大きい内径および外径を有している。また、拡張ドラム721は、下端に支持フランジ722を備えている。図示の実施形態におけるテープ拡張手段72は、上記環状のフレーム保持部材711を上下方向に進退可能な支持手段73を具備している。この支持手段73は、上記支持フランジ722上に配設された複数のエアシリンダ731からなっており、そのピストンロッド732が上記環状のフレーム保持部材711の下面に連結される。このように複数のエアシリンダ731からなる支持手段73は、環状のフレーム保持部材711を載置面711aが拡張ドラム721の上端と略同一高さとなる基準位置と、拡張ドラム721の上端より所定量下方の拡張位置の間を上下方向に移動せしめる。従って、複数のエアシリンダ731からなる支持手段73は、拡張ドラム721とフレーム保持部材711とを上下方向に相対移動する拡張移動手段として機能する。
【0042】
以上のように構成されたウエーハ分割装置7を用いて実施する分割工程について図13を参照して説明する。即ち、光デバイスウエーハ2を構成するサファイア基板20の裏面20bに形成された反射膜210側が貼着されている粘着テープTが装着された環状のフレームFを、図13の(a)に示すようにフレーム保持手段71を構成するフレーム保持部材711の載置面711a上に載置し、クランプ712によってフレーム保持部材711に固定する。このとき、フレーム保持部材711は図13の(a)に示す基準位置に位置付けられている。次に、テープ拡張手段72を構成する支持手段73としての複数のエアシリンダ731を作動して、環状のフレーム保持部材711を図13の(b)に示す拡張位置に下降せしめる。従って、フレーム保持部材711の載置面711a上に固定されている環状のフレームFも下降するため、図13の(b)に示すように環状のフレームFに装着された粘着テープTは、光デバイスウエーハ2と環状のフレームFの内周との間の環状領域が押圧部材としての円筒状の拡張ドラム721の上端縁に接して押圧され拡張せしめられる。この結果、粘着テープTに貼着されている光デバイスウエーハ2には放射状に引張力が作用するため、光デバイスウエーハ2はシールドトンネル24が形成されることによって強度が低下せしめられた分割予定ライン22に沿って破断され個々の光デバイス23に分割される。このとき、光デバイスウエーハ2を構成するサファイア基板20の裏面20bに形成されている反射膜210は、厚みが1μm以下と薄いため分割予定ライン22に沿って破断される。
【0043】
上述したように分割工程を実施したならば、図13の(c)に示すようにピックアップ機構8を作動しピックアップコレット81によって所定位置に位置付けられた光デバイス21をピックアップ(ピックアップ工程)し、図示しないトレーまたはダイボンディング工程に搬送する。
【符号の説明】
【0044】
2:光デバイスウエーハ
21:光デバイス
22:分割予定ライン
23:シールドトンネル
210:反射膜
3:保護テープ
4:レーザー加工装置
41:レーザー加工装置のチャックテーブル
42:レーザー光線照射手段
422:集光器
5:研削装置
51:研削装置のチャックテーブル
52:研削手段
524:研削ホイール
526:研削砥石
6:スパッタ装置
61:スパッタチャンバー
63:保持テーブル
64:ターゲット
7:ウエーハ分割装置
71:フレーム保持手段
72:テープ拡張手段
721:拡張ドラム
F:環状のフレーム
T:粘着テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13