特許第6097219号(P6097219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6097219シート状ニオブ酸チタン酸リチウム(Li−Nb−Ti−O)のテンプレート結晶粒、それを含む組織化ニオブ酸チタン酸リチウム(Li−Nb−Ti−O)のマイクロ波媒質セラミックス、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097219
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】シート状ニオブ酸チタン酸リチウム(Li−Nb−Ti−O)のテンプレート結晶粒、それを含む組織化ニオブ酸チタン酸リチウム(Li−Nb−Ti−O)のマイクロ波媒質セラミックス、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 33/00 20060101AFI20170306BHJP
   C04B 35/00 20060101ALI20170306BHJP
   H01B 3/12 20060101ALI20170306BHJP
   C04B 35/462 20060101ALI20170306BHJP
   H03H 3/08 20060101ALN20170306BHJP
   H03H 9/25 20060101ALN20170306BHJP
【FI】
   C01G33/00 A
   C04B35/00
   H01B3/12 313Z
   H01B3/12 304
   C04B35/462
   !H03H3/08
   !H03H9/25 C
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-538053(P2013-538053)
(86)(22)【出願日】2011年11月10日
(65)【公表番号】特表2014-504246(P2014-504246A)
(43)【公表日】2014年2月20日
(86)【国際出願番号】CN2011082014
(87)【国際公開番号】WO2012062211
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年11月6日
(31)【優先権主張番号】201010537668.1
(32)【優先日】2010年11月10日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201010537689.3
(32)【優先日】2010年11月10日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510087966
【氏名又は名称】中国科学院上海硅酸塩研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】李 永祥
(72)【発明者】
【氏名】盧 志遠
(72)【発明者】
【氏名】王 依琳
(72)【発明者】
【氏名】呉 文駿
【審査官】 大城 公孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−221360(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101654367(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101244933(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 33/00
C04B 35/00
C04B 35/46−35/478
C04B 35/49−35/493
C04B 35/622,35/626
H01B 3/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式がLiNb0.6Ti0.5で、結晶粒の形態がシート状の三角形または多角形であり、前記結晶粒の直径方向の長さが5〜80μmで、平均の長さが40μmで、厚さが0.5〜6.0μmである、組成がM−相のLi−Nb−Ti−Oの粉体である、シート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶粒。
【請求項2】
請求項1に記載のシート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶粒を製造する方法であって、
LiCO、Nb及びTiOを原料とし、LiClの溶融塩系で、シート状のLiNb0.6Ti0.5粉体を合成し、
得られたシート状のLiNb0.6Ti0.5粉体に対して超音波で分散させ、加熱した脱イオン水で洗浄し、吸引ろ過し、純粋なM−相のLi−Nb−Ti−O粉体を得ることで、シート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶粒を得ること、
を含み、
前記LiClの溶融塩系において、1:1〜1:3の溶融塩の比率を使用し、850℃〜1000℃に3〜9時間保持する、製造方法。
【請求項3】
原料であるLiCO、Nb及びTiOは、モル比で5:3:5になるように配合されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
織化Li−Nb−Ti−Oのマイクロ波媒質セラミックスを製造する方法であって、
請求項2または3に記載の方法で、シート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶を製造し、
LiCO、Nb、TiOを基体の粉末原料とし、LiNb0.6Ti0.5の粉末原料を予備合成し、
バインダーと溶媒を加熱し撹拌して、透明な溶液を形成し、
シート状LiNb0.6Ti0.5のテンプレート結晶粒と予備合成したLiNb0.6Ti0.5の粉末原料を前述透明な溶液に入れ、均一に混合してスラリーが得られ、
前述スラリーを基板にスクリーン印刷し、加熱して乾燥させ、得られたスラリー膜を切断、積層、プレスして成形し、600〜800°Cで有機物を除去し、さらに冷間等方圧加圧処理を行い、焼結し、組織化Li−Nb−Ti−Oのマイクロ波媒質セラミックスを得ること、
を含む製造方法。
【請求項5】
850°Cで2時間保持して、LiNb0.6Ti0.5の粉末原料を予備合成することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
重量で計算すると、バインダー:溶媒:スラリー=1:12〜25:5〜15で、前述スラリーにおけるシート状LiNb0.6Ti0.5のテンプレート結晶粒が占める比率が5〜15%であることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
前述バインダーは、エチルセルロース、メチルセルロース及びニトロセルロースから選ばれ、前述溶媒は、テルピネオール及びエチレングリコールから選ばれることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前述混合は、ボールミルによる混合で、前述スクリーン印刷は、300メッシュのスクリーンで印刷することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前述焼結は、3〜6°C/分間の昇温速度で、1000〜1150°Cで焼結し、そして2〜5時間温度を保持することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織化マイクロ波媒質セラミックスのテンプレート結晶粒およびそれを含む組織化マイクロ波媒質セラミックスの製造分野に属し、シート状結晶形態を有するニオブ酸チタン酸リチウム(Li−Nb−Ti−O)の粉体、それを含む組織化ニオブ酸チタン酸リチウム(Li−Nb−Ti−O)のマイクロ波媒質セラミックス及びその製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
低温同時焼成セラミックス(LTCC)のマイクロ波媒質とは、マイクロ波の周波数帯(300〜3000GHz)の回路において媒質材料として用いられて1つ又は複数の機能を果たすセラミックスで、損耗が少ない、周波数温度係数が低い、誘電率が高いなどの特徴があり、媒質共振器、媒質フィルタ、デュプレクサ、マイクロ波媒質アンテナ、媒質共振発振器、媒質導波路などの素子に用いられる。これらの素子は、移動通信、衛星テレビ、放送通信、レーダー、衛星測位ナビゲーションシステムなどの多くの分野に幅広く応用されている。通信、コンピューター及びその周辺製品が高周波数化、デジタル化に発展し続けるにつれ、電子素子は小型化、集積化、そしてモジュール化が日々進んでいる。LTCCは、優れた電気学、機械、熱学及びプロセス特性のため、将来、電子素子の集積化、モジュール化の一番の選択となる。LiO−Nb−TiO系(LNT)のマイクロ波媒質セラミックスは、誘電率可同調性(20〜78)、高いQ値、及び0に近い共振周波数温度係数などの特徴で、研究者に広く注目されている。高機能のマイクロ波媒質セラミックスは、現代の通信、軍事技術などの分野に注目を集め、応用の価値と発展の潜在力がある材料である。
【0003】
組織化技術とは、プロセスに対するコントロールによって、単結晶に近い性能を持つように元々ランダム配向のセラミックスを一定方向に配列させることである。現在、最も使われているセラミックス組織化技術として、テンプレート結晶粒成長(TGG)技術と反応性テンプレート結晶粒成長(RTGG)技術があるが、そのキーになる工程はテンプレート結晶粒の製造である。テンプレート結晶粒成長技術(TGG)は、形態異方性の単結晶粒子をテンプレート(Template)として利用し、テンプレート結晶粒成長法、熱処理技術に続いて発展してきたテンプレート結晶粒で配向を誘導する組織化方法である。一般的に、溶融塩法で異方性のテンプレート結晶粒を製造し、さらにキャスト又はプレスの方法を使用し、異方性粒子をせん断力の作用で粒子同士の相互作用によって結晶粒の配向を実現させる。テンプレート結晶粒成長法は、まず異方性のテンプレート結晶粒を製造するが、テンプレート結晶粒の製造は長期の模索過程が必要であるため、時間がかかり、プロセスも煩雑である。
【0004】
しかし、今まで、本分野では、強い配向性と大きいアスペクト比を有し、組織化マイクロ波媒質セラミックスの製造に好適に使用できるテンプレート結晶粒も、強い配向性と組織化の特徴を有する組織化マイクロ波媒質セラミックスを製造することができ、且つプロセスが簡単な方法も、まだ開発されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、本分野では、強い配向性と大きいアスペクト比を有し、組織化マイクロ波媒質セラミックスの製造に好適に使用できるテンプレート結晶粒、及び強い配向性と組織化の特徴を有する組織化マイクロ波媒質セラミックスを製造することができ、且つプロセスが簡単な方法の開発が切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、新規なシート状ニオブ酸チタン酸リチウム(Li−Nb−Ti−O)のテンプレート結晶、それを含む組織化ニオブ酸チタン酸リチウム(Li−Nb−Ti−O)のマイクロ波媒質セラミックス、及びその製造方法を提供することによって、既存技術にある問題を解決した。
【0007】
一方、本発明は、化学式がLiNb0.6Ti0.5で、結晶粒の形態がシート状で、組成がM−相のLi−Nb−Ti−Oの粉体である、シート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶粒を提供した。
【0008】
1つの好適な実施様態において、前述シート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶の結晶粒の形態がシート状の三角形または多角形である。
【0009】
もう1つの好適な実施様態において、前述シート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶粒の直径方向の長さが5〜80μmで、平均の長さが40μmで、厚さが0.5〜6.0μmである。
【0010】
一方、本発明は、前述シート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶粒を製造する方法であって、
LiCO、Nb及びTiOを原料とし、LiClの溶融塩系で、シート状のLiNb0.6Ti0.5粉体を合成し、
得られたシート状のLiNb0.6Ti0.5粉体に対して超音波で分散させ、加熱した脱イオン水で洗浄し、吸引ろ過し、純粋なM−相のLi−Nb−Ti−O粉体を得ることで、シート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶粒を得ること、
を含む製造方法を提供した。
【0011】
1つの好適な実施様態において、原料であるLiCO、Nb及びTiOは、重量比で0.5:0.3:0.5になるように配合される。
【0012】
もう1つの好適な実施様態において、LiClの溶融塩系において、1:1〜1:3の溶融塩の比率を使用する。
【0013】
もう1つの好適な実施様態において、LiClの溶融塩系において、850°C〜1000°Cに3〜9時間保持する。
【0014】
また、本発明は、前述シート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶粒を含む、組織化Li−Nb−Ti−Oのマイクロ波媒質セラミックスを提供した。
【0015】
また、本発明は、前述組織化Li−Nb−Ti−Oのマイクロ波媒質セラミックスを製造する方法であって、
前述方法でシート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶粒を製造し、
LiCO、Nb、TiOを基体の粉末原料とし、LiNb0.6Ti0.5の粉末原料を予備合成し、
バインダーと溶媒を加熱して撹拌し、透明な溶液を形成し、
シート状LiNb0.6Ti0.5のテンプレート結晶粒と予備合成したLiNb0.6Ti0.5の粉末原料を前述透明な溶液に入れ、均一に混合してスラリーが得られ、
前述スラリーを基板にスクリーン印刷し、加熱して乾燥させ、得られたスラリー膜を切断、積層、プレスして成形し、600°C〜800°Cで有機物を除去し、さらに冷間等方圧加圧処理を行い、焼結して、組織化Li−Nb−Ti−Oのマイクロ波媒質セラミックスを得ること、
を含む製造方法を提供した。
【0016】
1つの好適な実施様態において、850°Cで2時間保持して、LiNb0.6Ti0.5の粉末原料を予備合成する。
【0017】
もう1つの好適な実施様態において、重量で計算すると、バインダー:溶媒:スラリー=1:12〜25:5〜15で、前述スラリーにおけるシート状LiNb0.6Ti0.5のテンプレート結晶粒が占める比率が5〜15%である。
【0018】
もう1つの好適な実施様態において、前述バインダーは、エチルセルロース、メチルセルロース及びニトロセルロースから選ばれ、前述溶媒は、テルピネオール及びエチレングリコールから選ばれる。
【0019】
もう1つの好適な実施様態において、前述混合は、ボールミルによる混合で、前述スクリーン印刷は、300メッシュのスクリーンで印刷する。
【0020】
もう1つの好適な実施様態において、前述焼結は、3〜6°C/分間の昇温速度で、1000〜1150°Cで焼結し、そして2〜5時間温度を保持する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の1つの実施様態による、溶融塩の比率が1:2、保温時間が3時間で、異なる温度で合成されたM−相LiNb0.6Ti0.5のテンプレート結晶粒のXRD(X線回折)スペクトルである。ここで、(a)は850°Cで合成されたテンプレート結晶粒のXRDスペクトルで、(b)は950°Cで合成されたテンプレート結晶粒のXRDスペクトルで、(C)は1000°Cで合成されたテンプレート結晶粒のXRDスペクトルで、(d)は1050°Cで合成されたテンプレート結晶粒のXRDスペクトルである。
図2図2は、本発明の1つの実施様態による、溶融塩の比率が1:2で、保温時間が3時間で、異なる温度で合成されたM−相LiNb0.6Ti0.5のテンプレート結晶粒のSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。ここで、(a)は850°Cで合成されたテンプレート結晶粒のSEM写真で、(b)は950°Cで合成されたテンプレート結晶粒のSEM写真で、(C)は1000°Cで合成されたテンプレート結晶粒のSEM写真で、(d)は1050°Cで合成されたテンプレート結晶粒のSEM写真である。
図3図3は、本発明の1つの実施様態による、溶融塩の比率が1:2で、1000°Cの温度で、異なる保温時間で合成されたM−相LiNb0.6Ti0.5のテンプレート結晶粒のXRDスペクトルである。ここで、(e)は保温時間3時間で合成されたテンプレート結晶粒のXRDスペクトルで、(f)は保温時間6時間で合成されたテンプレート結晶粒のXRDスペクトルで、(g)は保温時間9時間で合成されたテンプレート結晶粒のXRDスペクトルである。
図4図4は、本発明の1つの実施様態による、溶融塩の比率が1:2で、1000°Cの温度で、異なる保温時間で合成されたM−相LiNb0.6Ti0.5のテンプレート結晶粒のSEM写真である。ここで、(e)は保温時間3時間で合成されたテンプレート結晶粒のSEM写真で、(f)は保温時間6時間で合成されたテンプレート結晶粒のSEM写真で、(g)は保温時間9時間で合成されたテンプレート結晶粒のSEM写真である。
図5図5は、本発明の1つの実施様態による、1000°Cの温度で、保温時間が6時間で、異なる溶融塩の比率で合成されたM−相LiNb0.6Ti0.5のテンプレート結晶粒のXRDスペクトルである。ここで、(h)は溶融塩の比率が1:1で合成されたテンプレート結晶粒のXRDスペクトルで、(i)は溶融塩の比率が1:2で合成されたテンプレート結晶粒のXRDスペクトルで、(j)は溶融塩の比率が1:3で合成されたテンプレート結晶粒のXRDスペクトルである。
図6図6は、本発明の1つの実施様態による、1000°Cの温度で、保温時間が6時間で、異なる溶融塩の比率で合成されたM−相LiNb0.6Ti0.5のテンプレート結晶粒のSEM写真である。ここで、(h)は溶融塩の比率が1:1で合成されたテンプレート結晶粒のSEM写真で、(i)は溶融塩の比率が1:2で合成されたテンプレート結晶粒のSEM写真で、(j)は溶融塩の比率が1:3で合成されたテンプレート結晶粒のSEM写真である。
図7図7は、従来の方法で製造されたLNTセラミックスのXRD(X線回折)スペクトルである。
図8図8は、本発明の方法で製造された組織化LNTセラミックスのXRDスペクトルである。ここで、bはスクリーン印刷の表面と垂直の組織化LNTセラミックスのXRDスペクトルで、Cはスクリーン印刷の表面と平行の組織化LNTセラミックスのXRDスペクトルである。図8から、組織化LNTセラミックスの平行と垂直の回折ピークは位置が同じであるが、強さが明らかに異なり、スクリーン印刷の表面と平行の(202)ピークが顕著に増強し、強い組織化の特徴があることがわかる。
図9図9は、本発明で使用されるテンプレート結晶粒のSEM(走査型電子顕微鏡)図である。図9から、SEM解析したところ、LNT結晶粒がシート状で、直径方向の長さが5〜30μmで、厚さが0.5〜2.0μmで、大きいアスペクト比を持ち、理想的なTGG及び反応性テンプレート結晶粒成長(RTGG)技術の応用に適するテンプレート結晶粒であることがわかる。
図10図10は、本発明の1つの実施様態による、スクリーン印刷の表面と平行の組織化LNTセラミックスのSEM図(1100°C、2時間で焼結)である。図10から、シート状のセラミックスのテンプレートがその方向で顕著に増大し、結晶粒の直径が50〜60μmになることがわかる。
図11図11は、本発明の1つの実施様態による、スクリーン印刷の表面と垂直の組織化LNTセラミックスのSEM図(1100°C、2時間で焼結)である。図11から、シート状のセラミックスのテンプレートが直径方向と厚さ方向でともに顕著に増大し、結晶粒の直径が60〜80μmになり、平均の長さが約40μmで、厚さが2〜6.0μmで、且つ配列が揃って、顕著な組織化の特徴があることがわかる。
図12図12は、本発明の1つの実施様態による、焼結したマイクロ波媒質セラミックの垂直及び平行の方向に沿ったスライスを銀メッキ電極で測定した誘電率温度スペクトルである。ここで、aは結晶粒の配列方向と垂直のもので、bは結晶粒の配列方向と平行のものである。図12から、1MHzの周波数で、結晶粒の配列方向と垂直の方向で、誘電率ε=55.75で、正値の誘電率温度係数を持つが、結晶粒の配列方向と平行の方向で、誘電率ε=84.40で、負値の誘電率温度係数を持つことがわかる。共振周波数温度係数τと材料の誘電率温度係数τε及び熱膨張係数αはτ=−1/2τε−α関係が存在し、通常αが6〜9ppm/°Cであるため、結晶粒の配列方向と垂直の方向で負値の0に近い共振周波数温度係数を持ち、結晶粒の配列方向と平行の方向で正値の0に近い共振周波数温度係数を持つことが推測される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の発明者は、幅広く深く研究したところ、M−相LiNb0.6Ti0.5(LNT)のマイクロ波媒質セラミックスは、高い誘電率(約70)を持ち、焼結温度が約1100°Cと低く、同時に高いQ値と0に近い共振周波数温度係数(約8ppm/°C)を持つことが見出された。組織化技術によって、セラミックスの結晶粒が一定方向に配列し、優れた異方性を示す。1MHzの周波数で、結晶粒の配列方向と垂直の方向で、誘電率ε=55.8であり、結晶粒の配列方向と平行の方向で、誘電率ε=84.4である。異なる方法の裁断によって、異なる誘電率のセラミックスを得ることができ、そして共振周波数温度係数が0であり、損耗が低く、電気学的機能が優れたマイクロ波媒質セラミックスを得ることが可能である。LNTマイクロ波媒質セラミックスに使用されるテンプレート材料はシート状の形態を持つLNT粉体である。溶融塩法で製造されるM−相LiNb0.6Ti0.5粉体は、LiNbOと類似の構造を持ち、擬三方晶系に属し、その粉体の構造は、n層のLiNbO(LN層)及び層間に介在する成分が[Ti2+に近いコランダム型構造で共に構成され、シート状で三角形または三角形で組合せてなる多角形の結晶粒の形態で、大きいアスペクト比および強い配向性を持ち、理想的なLNTマイクロ波媒質セラミックスに使用するテンプレート結晶粒である。しかも、テンプレート結晶粒の配向生長技術は、セラミックスの顕微構造の改善によって、結晶粒の成長方向を制御し、高い配向度および組織化度を持つセラミックスを形成することができるため、溶融塩マイクロ反応法で構成されたシート状LiNb0.6Ti0.5をテンプレートとして、予備焼結したLiCO、Nb、TiOと混合し、さらに焼結助剤を入れ、スラリーを調製し、スクリーン印刷で得られたセラミックス厚膜を裁断、積層、バインダー除去、焼結することで、組織化したLi−Nb−Ti−Oセラミックスが得られ、且つ組織化マイクロ波媒質セラミックスの緻密度、配向度を向上させることができ、セラミックスの誘電率、誘電率温度係数、共振周波数温度係数のいずれも顕著な異方性を示し、異なる方向の裁断によって、誘電率がシリーズ化になり、機能が優れたマイクロ波媒質セラミックスを得ることができる。以上の知見に基づき、本発明が完成された。
【0023】
本発明の第一は、化学式がLiNb0.6Ti0.5で、結晶粒の形態がシート状で、直径方向の長さが5〜80μmで、厚さが0.5〜6.0μmで、大きいアスペクト比および強い配向性を持ち、理想的なTGGおよびRTGG技術に適するテンプレート結晶粒であるLi−Nb−Ti−O粉体を提供した。
【0024】
本発明の第二は、前述Li−Nb−Ti−O粉体を製造する方法であって、
LiCO、Nb及びTiOを原料粉体とし、以下の反応方程式で配合し、
0.5LiCO+0.3Nb+0.5TiO → LiNb0.6Ti0.5
混合原料:無水エタノール:ZrOボール=1:2:3の比率でボールミルで混合し、加熱乾燥、分粒した後、重量比が1:1〜1:3のLiClを入れ、研磨して均一に混合し、5°C/分の昇温速度で850〜1100°Cに昇温させ、温度を3〜9時間保持することによってシート状のLiNb0.6Ti0.5粉体が得られ、
合成されたLiNb0.6Ti0.5粉体に対して、超音波による分散、加熱した脱イオン水による洗浄、数回の吸引ろ過を行った後、体系におけるLiCl溶融塩をろ過除去し、オーブンで乾燥し、所期のシート状LiNb0.6Ti0.5のテンプレート結晶粒を得ること、
を含む製造方法を提供した。
【0025】
本発明において、XRDで異なる条件下のLiNb0.6Ti0.5テンプレートの結晶相構造を、そしてSEMでこれらの粉体の顕微構造を分析した。その結果、本発明の製造方法によって、シート状の結晶粒という形態特徴を持つLiNb0.6Ti0.5のテンプレート結晶粒の製造に成功したことがわかった。SEM解析によって、LNT結晶粒がシート状で、直径方向の長さが5〜30μmで、厚さが0.5〜2.0μmで、大きいアスペクト比を持ち、理想的なTGG及びRTGG技術の応用に適するテンプレート結晶粒であることがわかった。
【0026】
本発明の方法で製造されたニオブ酸チタン酸リチウムの粉体は、各種類の組成の組織化Li−Nb−Ti−Oのマイクロ波媒質セラミックスのテンプレート結晶粒にすることができ、マイクロ波媒質セラミックスの密度、機械的強度の向上に積極的な作用があり、顕著な異方性を持ち、損耗が低い誘電性が優れたマイクロ波媒質セラミックスを得ることができる。
【0027】
本発明の第三は、化学式がLiNb0.6Ti0.5で、結晶粒の形態がシート状で、直径方向の長さが最長で80μmに達し、平均の長さが約40μmで、厚さが2〜6.0μmで、強い配向性および組織化の特徴を持つLi−Nb−Ti−Oのマイクロ波媒質セラミックスを提供した。
【0028】
本発明では、テンプレートを添加した条件下で、高密度、高配向度のLi−Nb−Ti−Oのマイクロ波媒質セラミックス材料を製造することができるため、このようなセラミックスの組織化の製造プロセスを簡単化した。本発明では、予備合成されたLNT粉体に所定の比率でLiNb0.6Ti0.5のテンプレート結晶粒を添加することで、高配向度および異方性を有する純粋なM−相LiNb0.6Ti0.5マイクロ波媒質セラミックスを製造する。前述LiNb0.6Ti0.5は、n層のLiNbO(LN)及び層間に介在する成分が[Ti2+に近いコランダム型構造で共に構成される。
【0029】
本発明で得られるLi−Nb−Ti−Oマイクロ波媒質セラミックスは、誘電性が垂直および平行の方向で顕著な異方性を有する。それを垂直および平行の方向でそれぞれスライスに切り、両面に銀ペーストを塗り、700〜750°Cの温度で30分間銀メッキ電極に焼結した。ネットワークアナライザで測定したところ、1MHzの周波数で、結晶粒の配列方向と垂直の方向で、誘電率ε=55.75で、正値の誘電率温度係数を持つが、結晶粒の配列方向と平行の方向で、誘電率ε=84.40で、負値の誘電率温度係数を持つことがわかった。
【0030】
本発明の第四は、前述Li−Nb−Ti−Oマイクロ波媒質セラミックスを製造する方法であって、
LiCO、Nb及びTiOを原料粉体とし、以下の反応方程式で配合し、
0.5LiCO+0.3Nb+0.5TiO →LiNb0.6Ti0.5
混合原料:無水エタノール:ZrOボール=1:2:3の比率でボールミルで混合し、加熱乾燥、分粒した後、700〜900°Cで予備合成し、
LiNb0.6Ti0.5の反応方程式で計算し、モル比がLiCO:Nb:TiO=5:3:5になるように原料を秤量し、LiCl溶融塩の環境で溶融塩法でM−相のシート状LiNb0.6Ti0.5テンプレートを合成し、
バインダーとしてエチルセルロースを、溶媒としてテルピネオールを使用し、透明な溶液になるまで80°Cで加熱して撹拌し、予備合成した粉体を上述溶液に入れ、ボールミルで2〜4時間均一に混合し、最後に所定の比率でテンプレート結晶粒を入れ、2時間ボールミルを続け、所要のスラリーが得られた。該スラリーを300メッシュのスクリーンで直接基板に印刷し、80〜100°Cのオーブンで乾燥した。上述工程を50〜80回繰り返し、厚さが0.5〜1mmの混合原料厚膜(スクリーンのせん断力の作用によって、種結晶が基板と平行の方向に配列)を得てから、最後にセラミックス厚膜を80〜100°Cのオーブンで10〜20時間乾燥した。セラミックス膜を所要の大きさに裁断し、基板から取り、研磨具に重ねてプレス成形し、成形された生地を熱処理炉に置いて600〜800°Cで有機物を除去すること、を含む製造方法を提供した。
【0031】
本発明において、焼結プロセスは、5〜10°C/分の速度で1100〜1140°Cに昇温し、試料を焼結し、そして2〜10時間温度を保持する。
【0032】
本発明では、組織化Li−Nb−Ti−Oマイクロ波媒質セラミックスの製造に成功したが、セラミックスに対して平行の結晶粒界および垂直方向でXRD解析したところ、セラミックス材料は(202)面(図2を参照)に沿って顕著な組織化現象があることがわかった。また、SEM解析では、結晶粒の形態がシート状で、直径方向の長さが最長で80μmまで達し、平均の長さが約40μmで、厚さが2〜6.0μmで、強い配向性および組織化の特徴を持つことが見られた。
【0033】
本発明の主な利点は以下の通りである。
【0034】
1、本発明は、初めてLiNbO構造と類似のM−相LiNb0.6Ti0.5テンプレート結晶粒を製造したが、その結晶粒は、強い配向性および大きいアスペクト比を持ち、組織化LiNb0.6Ti0.5マイクロ波媒質セラミックスの製造に使用することで、組織化マイクロ波媒質セラミックスの緻密度、配向度を向上させることができ、製造されたセラミックスは、裁断によって、低い損耗、0に近い共振周波数温度係数を持ち、誘電率が一定の範囲内で調整可能なマイクロ波媒質セラミックスを得ることができ、フィルタ、シート型媒質共振器およびアンテナなどの多層マイクロ波周波数素子の製造に適し、幅広い応用の将来性がある。
【0035】
2、本発明に用いられる原料は、低価で、製造方法が簡単で、普及しやすい。
【0036】
3、本発明で製造されるLi−Nb−Ti−Oマイクロ波セラミックス膜層の厚さは数ミクロンに抑えられ、単一の膜層では、結晶粒が印刷のせん断力の作用で好適に配向することができる。
【0037】
4、本発明で製造されるLi−Nb−Ti−Oマイクロ波セラミックスは、従来の方法で製造されるLi−Nb−Ti−Oマイクロ波セラミックスと比較すると、結晶粒のサイズが大きくなり、異方性が顕著で、高い配向度を持ち、同時に優れた電気学的性能を有する。
【0038】
5、キャストのプロセスと比較すると、本発明は、スラリーの調製が簡単で、プロセスも簡単で、コントロールが容易で、コストが低い。
【0039】
6、本発明の方法は、組織化マイクロ波媒質セラミックスの緻密度、配向度を向上させることができ、セラミックスの誘電率、誘電率温度係数、共振周波数温度係数のいずれも顕著な異方性を示し、異なる方向の裁断によって、誘電率がシリーズ化になり、性能が優れたマイクロ波媒質セラミックスを得ることができ、フィルタ、シート型媒質共振器およびアンテナなどの多層マイクロ波周波数素子の製造に適し、移動通信、衛星測位ナビゲーションシステムなどの多くの分野に応用されることが期待され、幅広い発展の潜在力および応用の将来性がある。
【実施例】
【0040】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。しかし、これらの実施例は本発明の説明のためのもので、本発明の範囲に対する制限にならないことが理解されるべきである。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない試験方法は、通常、通常の条件、或いはメーカーの薦めの条件で行われた。別の説明がない限り、すべての百分率と部は、重量で計算される。
【0041】
・実施例1
(i)テンプレート結晶粒の合成:LiNb0.6Ti0.5の反応方程式で計算し、モル比がLiCO:Nb:TiO=5:3:5になるように原料を秤量し、エタノール、ZrOボールと1:2:3の比率でボールミルで24時間混合した後、ガラス容器に移して90°Cで加熱乾燥した。乾燥した原料粉体を分粒した後、1:2の比率でLiCl塩を入れ、均一に混合するまで10分間研磨した。混合原料をAl坩堝に入れて蓋をかけ、3°C/分の昇温速度で、850〜1050°Cの高温炉で3時間合成した。
(ii)テンプレート結晶粒のろ過:合成されたLiNb0.6Ti0.5結晶粒を粉砕し、超音波で分散させ、加熱した脱イオン水で10回洗浄し、その中のLiCl溶融塩を除去した。その間、AgNO溶液でろ液におけるCl-イオンの含有量を測定し、ろ過が完全かどうか判断した。図1は、製造されたLiNb0.6Ti0.5のテンプレート結晶粒のXRDスペクトルで、図1から、850°Cの結晶粒XRDスペクトルですこし不純物のピークがある以外、他の温度で合成された結晶粒はいずれも単一のM−相であったことがわかる。そのSEM写真を図2に示したが、図2から、LiNb0.6Ti0.5の結晶粒がシート状で、結晶面が三角形または三角形で組合せてなる多角形の形状で、これもLiNbOの三方晶構造と類似の構造に属するからである。合成温度が高くなるにつれ、結晶粒は直径方向、厚さ方向でいずれもある程度増大した。
【0042】
・実施例2
LiNb0.6Ti0.5の反応方程式で計算し、モル比がLiCO:Nb:TiO=5:3:5になるように原料を秤量し、エタノール、ZrOボールと1:2:3の比率でボールミルで24時間混合した後、ガラス容器に移して90°Cで加熱乾燥した。乾燥した原料粉体を分粒した後、1:2の比率でLiCl塩を入れ、均一に混合するまで10分間研磨した。混合原料をAl坩堝に入れて蓋をかけ、高温炉で3°C/分の昇温速度で1000°Cに上昇させ、温度をそれぞれ3時間、6時間、9時間保持し、取り出した後、実施例1の方法でろ過した。図3は、異なる保温時間で得られたLiNb0.6Ti0.5のテンプレート結晶粒のXRDスペクトルで、図3から、合成された結晶粒はいずれも単一のM−相であったことがわかる。そのSEM写真を図4に示したが、結晶粒は階段状の成長傾向を示し、保温時間の増加につれ、結晶粒は直径方向、厚さ方向でいずれもある程度増大した。
【0043】
・実施例3
LiNb0.6Ti0.5の反応方程式で計算し、モル比がLiCO:Nb:TiO=5:3:5になるように原料を秤量し、エタノール、ZrOボールと1:2:3の比率でボールミルで24時間混合した後、ガラス容器に移して90°Cで加熱乾燥した。乾燥した原料粉体を分粒した後、それぞれ1:1、1:2、1:3の比率でLiCl塩を入れ、均一に混合するまで10分間研磨した。混合原料をAl坩堝に入れて蓋をかけ、高温炉で3°C/分の昇温速度で1000°Cに上昇させ、温度を6時間保持し、取り出した後、実施例1の方法でろ過した。図5は、異なる溶融塩の比率で得られたLiNb0.6Ti0.5のテンプレート結晶粒のXRDスペクトルであり、図3から、合成された結晶粒はいずれも単一のM−相であったことがわかる。そのSEM写真を図6に示したが、結晶粒は階段状の成長傾向を示し、溶融塩の比率の増加につれ、結晶粒は直径方向、厚さ方向でいずれもある程度増大し、特に厚さ方向では増大が顕著である。溶融塩の比率が1:3の時、得られたLNTテンプレートの結晶粒が2〜3μmに達した。当該LiNb0.6Ti0.5粉体結晶粒は充分に完成されたが、溶融塩の比率が1:2で、1000°Cで温度を6時間保持して得られた結晶粒は、シート状の多角形の形態で、直径方向の長さが5〜30μmで、厚さが0.5〜2.0μmで、アスペクト比が大きく、理想的なテンプレート結晶粒である。
【0044】
・実施例4
従来の方法によるLiNb0.6Ti0.5マイクロ波媒質セラミックスの製造:LiNb0.6Ti0.5の反応方程式で計算し、モル比がLiCO:Nb:TiO=5:3:5になるように原料を秤量し、エタノール、ZrOボールと1:2:3の比率でボールミルで24時間混合した後、ガラス容器に移して90°Cで加熱乾燥した。乾燥した原料粉体を分粒した後、坩堝に入れ、700〜1000°Cで5〜7時間予備焼結し、主結晶相を合成した。混合原料とエタノールの重量比が1:2になるようにエタノールを入れ、湿式ボールミルで24時間混合し、100〜120°Cで加熱乾燥し、8−12%PVB(ポリビニルブチラール)で造粒し、100〜200MPaの圧力でφ16×8mmの小さい円柱にプレスし、600〜700°Cでバインダーを除去し、860〜960°Cで1〜3時間焼結し、自然冷却してLiNb0.6Ti0.5マイクロ波媒質セラミックスを得た。Hakki−Coleman円柱媒質共振法でセラミックスサンプルの誘電性を測定したところ、誘電率が71で、共振周波数温度係数が10.5ppm/°Cであった(図7を参照)。
【0045】
・実施例5
スクリーン印刷によるLNT組織化マイクロ波媒質セラミックスの製造:
(1)スラリーの調製:3.43gのエチルセルロースを76.54gのテルピネオールに溶解させ、エチルセルロースが完全に溶解して透明な溶液になるまで、80°Cで加熱して撹拌した。31.59gの850°Cで予備合成したLiNb0.6Ti0.5粉体を秤量し、上述溶液に入れ、ボールミルで4時間均一に混合した。さらに、3.51gのシート状LiNb0.6Ti0.5テンプレート結晶粒をスラリーに入れ、引き続きボールミルで2時間混合した。
(2)スクリーン印刷:調製したスラリーを300メッシュのスクリーンでテリレンフィルムに印刷し、100°Cのオーブンに入れて乾燥し、上述工程を50〜80回繰り返し、最後に約1mmのセラミックス膜が形成された。
(3)成形:得られたセラミックス膜を11mm×11mmの正方形シートに裁断し、基板から膜を取り、約50層重ね、プレス成形した。
(4)バインダー除去と焼結:上述セラミックス生地を熱処理炉に入れて650°Cで有機物を除去した。バインダー除去したサンプルに冷間等方圧加圧処理を行い、高温炉に入れ、10°C/分の速度で1135°Cに昇温させ、温度を2時間保持した。
組織化技術によって、セラミックスの結晶粒が一定方向に配列し、優れた異方性を示した。1MHzの周波数で、配列方向と垂直の方向で、誘電率ε=55.75で、正値の誘電率温度係数および負値の共振周波数温度係数を持ったが、配列方向と平行の方向において、誘電率ε=84.40で、負値の誘電率温度係数および正値の共振周波数温度係数を持った。異なる方法の裁断によって、異なる誘電率のセラミックスを得ることができ、そして共振周波数温度係数が0であり、損耗が低く、電気学的性能が優れたマイクロ波媒質セラミックスを得ることが可能である(図8〜12を参照)。
【0046】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、この分野の技術者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の様態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるべきである。
なお、本願発明は以下の態様を含む。
・態様1
化学式がLiNb0.6Ti0.5で、結晶粒の形態がシート状で、組成がM−相のLi−Nb−Ti−Oの粉体である、シート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶粒。
・態様2
前述シート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶粒の結晶粒の形態がシート状の三角形または多角形であることを特徴とする態様1に記載のシート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶粒。
・態様3
前述シート状Li−Nb−Ti−Oテンプレート結晶粒の直径方向の長さが5〜80μmで、平均の長さが40μmで、厚さが0.5〜6.0μmであることを特徴とする態様1又は2に記載のシート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶粒。
・態様4
態様1〜3のいずれかに記載のシート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶粒を製造する方法であって、
LiCO、Nb及びTiOを原料とし、LiClの溶融塩系で、シート状のLiNb0.6Ti0.5粉体を合成し、
得られたシート状のLiNb0.6Ti0.5粉体に対して超音波で分散させ、加熱した脱イオン水で洗浄し、吸引ろ過し、純粋なM−相のLi−Nb−Ti−O粉体を得ることで、シート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶粒を得ること、
を含む製造方法。
・態様5
原料であるLiCO、Nb及びTiOは、モル比で5:3:5になるように配合されることを特徴とする態様4に記載の方法。
・態様6
LiClの溶融塩系において、1:1〜1:3の溶融塩の比率を使用することを特徴とする態様4に記載の方法。
・態様7
LiClの溶融塩系において、850°C〜1000°Cに3〜9時間保持することを特徴とする態様4に記載の方法。
・態様8
態様1〜3のいずれかに記載のシート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶粒を含む、組織化Li−Nb−Ti−Oのマイクロ波媒質セラミックス。
・態様9
態様8に記載の組織化Li−Nb−Ti−Oのマイクロ波媒質セラミックスを製造する方法であって、
態様4〜7のいずれかに記載の方法で、シート状Li−Nb−Ti−Oのテンプレート結晶を製造し、
LiCO、Nb、TiOを基体の粉末原料とし、LiNb0.6Ti0.5の粉末原料を予備合成し、
バインダーと溶媒を加熱し撹拌して、透明な溶液を形成し、
シート状LiNb0.6Ti0.5のテンプレート結晶粒と予備合成したLiNb0.6Ti0.5の粉末原料を前述透明な溶液に入れ、均一に混合してスラリーが得られ、
前述スラリーを基板にスクリーン印刷し、加熱して乾燥させ、得られたスラリー膜を切断、積層、プレスして成形し、600〜800°Cで有機物を除去し、さらに冷間等方圧加圧処理を行い、焼結し、組織化Li−Nb−Ti−Oのマイクロ波媒質セラミックスを得ること、
を含む製造方法。
・態様10
850°Cで2時間保持して、LiNb0.6Ti0.5の粉末原料を予備合成することを特徴とする態様9に記載の方法。
・態様11
重量で計算すると、バインダー:溶媒:スラリー=1:12〜25:5〜15で、前述スラリーにおけるシート状LiNb0.6Ti0.5のテンプレート結晶粒が占める比率が5〜15%であることを特徴とする態様9に記載の方法。
・態様12
前述バインダーは、エチルセルロース、メチルセルロース及びニトロセルロースから選ばれ、前述溶媒は、テルピネオール及びエチレングリコールから選ばれることを特徴とする態様9〜11のいずれかに記載の方法。
・態様13
前述混合は、ボールミルによる混合で、前述スクリーン印刷は、300メッシュのスクリーンで印刷することを特徴とする態様9〜11のいずれかに記載の方法。
・態様14
前述焼結は、3〜6°C/分間の昇温速度で、1000〜1150°Cで焼結し、そして2〜5時間温度を保持することを特徴とする態様9〜11のいずれかに記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12