(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097555
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】エア抜きチャンバー
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
A61M1/36 111
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-281336(P2012-281336)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-124240(P2014-124240A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】507365204
【氏名又は名称】旭化成メディカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】下出 浩治
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】二宮 伸治
(72)【発明者】
【氏名】徳嶺 朝子
(72)【発明者】
【氏名】末田 泰二郎
【審査官】
松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−095841(JP,A)
【文献】
米国特許第05591251(US,A)
【文献】
登録実用新案第3124924(JP,U)
【文献】
特開平04−061866(JP,A)
【文献】
特開2004−329793(JP,A)
【文献】
特開平07−204408(JP,A)
【文献】
特開平08−336590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
A61M 1/14−1/26
A61M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外循環血液回路で使用されるエア抜きチャンバーであって、
略円筒形のチャンバー本体と、
エアを抜くためのアクセス部と、
血液等の液体を前記チャンバー本体に導入するための流入口であって、チャンバー本体の内壁の少なくとも一部に対し対面する角度で当該チャンバー本体に接続されている流入口と、
血液等の液体を前記チャンバー本体から排出するための流出口と、
前記チャンバー本体の内壁のうち前記流入口に対面する対面部に形成された、当該流入口に向かって隆起する隆起部と、
を備え、
前記チャンバー本体は、当該エア抜きチャンバーの使用状態で鉛直方向に沿う長軸と、水平方向に沿う短軸とを有する細長形状であり、
前記隆起部は、前記流入口の対面方向の正面もしくは下側に位置し、前記流入口から噴出した血液の噴流が前記隆起部にぶつかり、前記噴流を前記短軸方向に分岐させる
ことを特徴とするエア抜きチャンバー。
【請求項2】
前記隆起部により、前記チャンバー本体内での高い圧力勾配と滞留領域の発生および液面の隆起による気泡巻き込みを防ぐことにより血液凝固を抑制することを特徴とする、請求項1に記載のエア抜きチャンバー。
【請求項3】
前記噴流の動圧から前記対面部に発生する低流速領域の静圧への変換を減少させ、低流速領域における静圧の上昇を防止すると共に、前記隆起部が、前記対面部から前記流出口に至る前記内壁の壁面近傍の流速を減少させ、前記長軸方向の剥離流れを抑制することを特徴とする、請求項1または2に記載のエア抜きチャンバー。
【請求項4】
前記隆起部が、前記チャンバー本体の中央の噴流直径を含む領域において、前記噴流を前記短軸方向に分岐させることにより、前記対面部に発生する液流淀み領域の圧力を減少させることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のエア抜きチャンバー。
【請求項5】
前記隆起部は、前記チャンバー本体の中央の噴流直径を含む領域において、前記噴流の淀み点を先端部に固定することで、前記噴流により誘導される横渦中心位置を安定化させることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のエア抜きチャンバー。
【請求項6】
前記隆起部は、前記チャンバー本体の中央の前記流入口からの噴流直径を含む領域において、当該隆起部により前記噴流から誘導される前記長軸方向の攪乱を防ぐよう滑らかに成形されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のエア抜きチャンバー。
【請求項7】
前記隆起部と前記チャンバー本体の内壁面とが滑らかに成形されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のエア抜きチャンバー。
【請求項8】
前記内壁の壁面近傍における液流淀み領域が血液に影響を及ぼさない程度に小さい場合には、前記滑らかに成形された面に、当該液流淀み領域に向けて突出する突起物が装着されている、請求項7に記載のエア抜きチャンバー。
【請求項9】
前記隆起部と前記チャンバー本体の内壁面とが滑らかに成形された部位は、面と面の接続部が曲率の連続により成形されていることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載のエア抜きチャンバー。
【請求項10】
前記隆起部の底面部の長径は、前記噴流が当該隆起部に到達した際の当該噴流の拡散した長径と同等もしくはそれより大きく、かつ、前記隆起部の底面部から尖端部までの高さ(H)と当該隆起部の底面部の長径(D)との比(H/D)が1〜2の範囲であり、前記隆起部の前記尖端部は前記底面部の長径(D)の1/10以下の直径である平坦部を備えることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のエア抜きチャンバー。
【請求項11】
前記隆起部の底面部は、当該エア抜きチャンバーの使用時における水平方向軸長さ(W)と垂直方向軸長さ(Z)の関係がW≧Zの形状であることを特徴とする、請求項10に記載のエア抜きチャンバー。
【請求項12】
前記隆起部が前記液体の液面下にあり、該隆起部と液面が接近した時に液面の隆起を抑制し、血栓生成の原因となる気泡の巻き込みを抑制することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のエア抜きチャンバー。
【請求項13】
前記隆起部に、抗凝固薬を前記チャンバー本体内へ注入するための注入口が形成されていることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載のエア抜きチャンバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液などの流体を循環させる体外循環回路に設けられるエア抜きチャンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析回路などの体外循環回路には、流体への気泡の混入を防ぐ、流体内の気泡を取り除く、異物を除去するといったことなどを目的として、チャンバーが設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の体外循環回路用チャンバーは、液体が貯留されるチャンバー本体と、チャンバー本体の下端部に設けられた液体流出口と共に、チャンバー本体の外周接線方向に液体を流入させる形態を備える流入口を設置することで、液体に与える刺激の程度を低く抑える工夫がなされている。
【0004】
また、特許文献2に記載の体外循環回路用チャンバーは、血液などの液体を貯留すると共に上方に空気層が形成されるチャンバー本体と、チャンバー本体の底部に設けられた液体の流入口と、チャンバー本体の底部に設けられた液体の流出口とを備えている。さらに、このチャンバーでは液体の流入口の上方に隆起した突出部を形成することで、流入した液体を旋回させ、チャンバー内部に形成される液表面への噴き上がりを抑制している。
【0005】
さらに、特許文献3に記載の体外循環回路用チャンバーは、特許文献1と同様に液体の流入口がチャンバー本体の側方に、液体の流出口がチャンバーの下方にそれぞれ形成されており、さらに流出口の対面側を横断する形で突起が形成され、液流を上下方向に分割し液体中に含まれる気泡の除去の効率を上げる工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3938557号公報
【特許文献2】特許第2980647号公報
【特許文献3】米国特許第5591251号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のチャンバーでは、効率的に気泡を抜くために血液等の液体の流れを制御することと、刺激を受けたり長時間体外に滞留したりすることで血栓などを発生する血液のような液体に対する対策を施すこととの両方を実現する構造は見られない。
【0008】
特に血液透析時の血液回路内における血栓の発生は、回路を交換することによる透析の中断、塞栓症発症のリスクの発生など、透析患者のQOLを著しく損なう。例えば血栓生成を抑制する手法としては、抗凝固薬(ヘパリン、アルガトロバン等)の投与および医用材料(ヘパリンコーティング等)の改良が代表的なものである。しかし、ヘパリンの投与は出血傾向を増加させるほか、ヘパリン依存性の自己抗体の出現によるヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を引き起こすなど重大な副作用があるため、至適投与量の管理が重要であり、できれば投与量を可能な限り少なくすることが望ましい。
【0009】
また、透析回路は感染リスク回避の観点からディスポーザブルであることが要求され、さらに使用頻度も高いことから、材質そのものが抗凝固性を示すなどの高価な医用材料を適用することは実用上難しいという現状がある。
【0010】
一方、透析回路における血栓の好発部位は、空気接触、高せん断流れおよび滞留部が発生する恐れがある気泡除去及び異物除去のために設けられるチャンバーであると推測される。このチャンバー装置における抗血栓性の向上は、透析回路全体の抗血栓性を向上させる可能性がある。
【0011】
従来、一般的に使用されて来た上部流入型チャンバーでは、流入口の自由噴流は流出口に直接流入し、その流れに誘導される緩やかな縦渦と淀み領域が形成されている。同じく従来使用されている側部流入型では、流入口対面の高圧部から流出口に向かう流れが発生し、その流線は途中で剥離(具体的には、壁面に沿った下向きの流れが、そのエネルギーを失い壁面から剥離する(離れる)現象のことをいう。剥離点より下の壁面近傍の流れは逆流し、剥離流線内では渦が発生する)してチャンバー下部に淀み領域を形成すると共に、該淀み領域の反対側には緩やかな縦渦が形成される。これらチャンバー内部に形成される淀みは血栓の形成領域となり、その存在は好ましくない。
【0012】
例えば、特許文献1に示されるスパイラル型では、流入口の自由噴流により発生する強い横渦(強制渦)がチャンバー下方まで持続する。この渦は強制渦であるため中央に滞留領域(液体の流れが他の箇所よりも鈍くて滞留した領域。以下同じ)が発生し、これも血栓形成の温床となり好ましい形態とは言えない。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、血栓などの凝集物の発生防止とエア抜きとを両立することができるエア抜きチャンバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明では、体外循環回路の気泡除去チャンバーとして、従来技術である側部流入型気泡除去チャンバーの流入口対面部に、淀み点の高圧を分散させ、横渦を発生させる形状を持つ突起を設けることで生じる整流効果と攪拌効果により、血栓の生成を抑制する構造を提供する。
【0015】
上述のごとき構造を実現するため、本発明者は、血栓生成の原因となる滞留領域が小さく、流入口対面の高圧部位以外に血小板を活性化させる強いせん断流れが発生しないと考えられる側部流入型チャンバーの血栓抑制効果に着目し、検討を重ねた結果、チャンバー内における血栓生成好発部位である流入口対面に整流効果を持つ形状の突起部を設置することにより、高い抗血栓性を実現するという知見を得るに至った。
【0016】
従来型の側部流入型チャンバーでは、流入口対面で発生する淀み点で高い圧力が発生し、流出口の流速増加により動圧が増加して発生する低圧部に向かう強い下降流が側面に沿って生じる。さらに、この流れに誘起されてtumble flow(縦渦)が発生する。一方、本発明者の知見に基づけば、流入口対面に高圧部を左右に分散する形状の凸形状のコーン(隆起部)を設置し、流入口対面の高圧部をコーン周囲に分散することで、一対のswirl flow(横渦)を発生させることが可能となる。この一対の横渦により全体の流れは下流方向に緩やかに下降する。この構造によれば、血栓好発部位である流入口対面における淀みとせん断流れが抑制され、チャンバー内における滞留領域は消滅する。
【0017】
上述のごとき種々の検討と知見に基づく本発明は、体外循環血液回路で使用されるエア抜きチャンバーであって、
略円筒形のチャンバー本体と、
エアを抜くためのアクセス部と、
血液等の液体を前記チャンバー本体に導入するための流入口であって、チャンバー本体の内壁の少なくとも一部に対し対面する角度で当該チャンバー本体に接続されている流入口と、
血液等の液体を前記チャンバー本体から排出するための流出口と、
前記チャンバー本体の内壁のうち前記流入口に対面する対面部に形成された、当該流入口に向かって隆起する隆起部と、
を備え、
前記隆起部は、前記流入口の対面方向の正面もしくは下側に位置し、前記流入口から噴出した血液の噴流が前記隆起部にぶつかる
ことを特徴としている。
【0018】
本発明に係るエア抜きチャンバーにおいては、前記隆起部により、前記チャンバー本体内での高い圧力勾配と滞留領域の発生および液面の隆起による気泡巻き込みを防ぐことにより血液凝固を抑制することが好ましい。
【0019】
また、本発明に係るエア抜きチャンバーにおいて、前記チャンバー本体は、当該エア抜きチャンバーの使用状態で鉛直方向に沿う長軸と、水平方向に沿う短軸とを有する細長形状であり、
前記噴流を前記短軸方向に分岐させることにより、前記噴流の動圧から前記対面部に発生する低流速領域の静圧への変換を減少させ、低流速領域における静圧の上昇を防止すると共に、前記隆起部が、前記対面部から前記流出口に至る前記内壁の壁面近傍の流速を減少させ、前記長軸方向の剥離流れを抑制することを特徴としている。
【0020】
さらに本発明に係るエア抜きチャンバーにおいては、前記隆起部が、前記チャンバー本体の中央の噴流直径を含む領域において、前記噴流を前記短軸方向に分岐させることにより、前記対面部に発生する液流淀み領域の圧力を減少させることを特徴としている。
【0021】
さらに本発明に係るエア抜きチャンバーにおいて、前記隆起部は、前記チャンバー本体の中央の噴流直径を含む領域において、前記噴流の淀み点を先端部に固定することで、前記噴流により誘導される横渦中心位置を安定化させることを特徴としている。
【0022】
さらに本発明に係るエア抜きチャンバーにおいて、前記隆起部は、前記チャンバー本体の中央の前記流入口からの噴流直径を含む領域において、当該隆起部により前記噴流から誘導される前記長軸方向の攪乱を防ぐよう滑らかに成形されていることを特徴としている。
【0023】
さらに本発明に係るエア抜きチャンバーは、前記隆起部と前記チャンバー本体の内壁面とが滑らかに成形されていることを特徴としている。また、このエア抜きチャンバーにおいて、前記内壁の壁面近傍における液流淀み領域が血液に影響を及ぼさない程度に小さい場合には、前記滑らかに成形された面に、当該液流淀み領域に向けて突出する突起物が装着されていてもよい。
【0024】
さらに、本発明に係るエア抜きチャンバーにおいて、前記滑らかに成形された部位は、面と面の接続部が曲率の連続により成形されていることが好ましい。
【0025】
さらに本発明に係るエア抜きチャンバーにおいて、前記隆起部の底面部の長径は、前記噴流が当該隆起部に到達した際の当該噴流の拡散した長径と同等もしくはそれより大きく、かつ、前記隆起部の底面部から尖端部までの高さ(H)と当該隆起部の底面部の長径(D)との比(H/D)が1〜2の範囲であり、前記隆起部の前記尖端部は前記底面部の長径(D)の1/10以下の直径である平坦部を備えることを特徴としている。
【0026】
さらに本発明に係るエア抜きチャンバーにおいて、前記隆起部の底面部は、当該エア抜きチャンバーの使用時における水平方向軸長さ(W)と垂直方向軸長さ(Z)の関係がW≧Zの形状であることを特徴としている。
【0027】
さらに、本発明に係るエア抜きチャンバーは、前記隆起部が前記液体の液面下にあり、該隆起部と液面が接近した時に液面の隆起を抑制し、血栓生成の原因となる気泡の巻き込みを抑制することを特徴としている。
【0028】
また、本発明に係るエア抜きチャンバーは、前記隆起部に、抗凝固薬を前記チャンバー本体内へ注入するための注入口が形成されていることを特徴としている。
【0029】
ここで、流入口に対面する領域の圧力を分散するコーン形状の隆起部について、線形理論による検討例を以下に示す(
図3参照)。
【0030】
断面積S
0の衝突噴流を理想流体による一様流と仮定し、コーンの投影面積をS
1、コーン片側の衝突角をθ、コーンにより拡大した噴流の流管が壁面に衝突して与える力をFx、コーンの質量排除効果により衝突壁面の接線方向にコーンが受ける力をFyとする。コーンの存在により軽減される圧力と噴流が壁面に衝突して生じる圧力が等しい場合にコーン周辺の平均圧力分布が均一になると仮定すると、
【数1】
よって、
【数2】
また、運動量保存則が成り立つと仮定し、コーン壁面の流速をV、流体の密度をρ、噴流の流量をQとすると
【数3】
【数4】
よって、
【数5】
【0031】
コーン形状を円錐状とし、流体を理想流体とし、2次元流場とする場合、コーン先端の片側角度が上式を満足する時に最もコーン周辺領域の圧力分布が平坦になる。上式で
【数6】
とすると、
【数7】
となるため、噴流の断面積とコーンの投影面積が等しい場合には、
コーンの高さ:直径=1:1
とする時に最も高い圧力分散効果が得られると考えられる。
【0032】
実際の流場は3次元・粘性流場であるため、噴流は縮流効果により断面積が減少し、乱流遷移により拡散するため、流入口とコーンの位置関係により有効断面積を補正する必要がある。また、コーン壁面摩擦力あるいは渦生成によるエネルギー損失を考慮して圧力Fx,Fyを補正する必要がある。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、血栓などの凝集物の発生防止とエア抜きとを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】従来のエア抜き装置の一例を示す(A)側面図と(B)背面図である。
【
図2】本発明に係るエア抜きチャンバーを示す(A)側面図と(B)背面図である。
【
図3】線形理論による検討例における数式1〜数式7の記号類の説明をするための図である。
【
図4】
図2に示すエア抜きチャンバーのIV-IV線における断面図である。
【
図5】
図2に示すエア抜きチャンバーの計算格子を示す図である。
【
図6】(A)は
図1に示す従来のエア抜きチャンバーでの液流速分布を示す図であり、(B)は
図2に示す本発明に係るエア抜きチャンバーに液体を流入させて際の液流速分布を示す図である。
【
図7】コーンの直径φ=0〜12mmの間で3mm刻みで直径を変化させた場合の定常流線分布を示す図である。
【
図8】コーンの直径φ=3mmとφ=6mmでのコーン周辺の圧力分布の比較を示す図である。
【
図9】血栓生成過程の可視化手法に用いた装置を示す図である。
【
図10】コーンの有無で凝固までに掛かる時間の違いを調べた結果を示すグラフである。
【
図11】第2実施形態に係るエア抜きチャンバーを示す図である。
【
図12】
図11に示すエア抜きチャンバーのXII-XII線における断面図である。
【
図13】
図12のエア抜きチャンバーに液体を流した際の液流の様子を示す図である。
【
図14】コーンの側面に流入した噴流の流れ方向を示す図であり、(A)はコーンの底面部の水平方向軸長さ(長径)W=6mm、(B)はW=9mmの場合を示す。
【
図15】(A)円形の底面部を有する場合と(B)楕円形の底面部を有する場合の、底面部近傍の圧力分布の比較を示す図である。
【
図16】ポリスチレン粒子をトレーサとして用いた懸濁法およびレーザーライトシート法により可視化した結果を(A)のエア抜きチャンバーの側面図とともに示す図であり、(B)はコーンが円錐の場合、(C)はコーン無しの場合、(D)はコーンが楕円錐の場合である。
【
図17】実施例4に係るエア抜きチャンバーの図である。
【
図18】
図17の流入口の直上部断面の圧力分布を計算した結果の比較を示す図であり、(A)はD=0mm、H=0mmの場合、(B)はD=3mm、H=4.2mmの場合である。
【
図19】実施例4に係る実験に用いた閉鎖回路の概略を示す図である。
【
図20】コーン無し時の波面を示す図(流量200mL/min)である。
【
図21】コーン無し時の波面を示す図(流量400mL/min)である。
【
図22】コーン有り時の波面を示す図(流量200mL/min)である。
【
図23】コーン有り時の波面を示す図(流量400mL/min)である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。なお、必要な場合には、Z軸を鉛直軸としXY平面を水平面とするXYZ座標系を設定し、X、Y、Zを便宜的に説明に用いる場合がある。また、Z方向を上向きとして、「上」、「下」の概念を含む語を説明に用いる場合がある。
【0036】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は従来使用されているエア抜きチャンバーの形態を示す図である。
図2は本発明に係るエア抜きチャンバーを示す図であるが、
図1に見られない隆起部15が設けられている。
【0037】
エア抜きチャンバー10の本体(以下、チャンバー本体という)13は、一例として、略円筒形であって両端がドーム状の筐体からなる細長形状である(
図1等参照)。細長形状である該チャンバー本体13の長軸は、当該エア抜きチャンバー10の使用状態でZ軸(鉛直軸)に沿う軸であり、直交する短軸は、X軸、Y軸(水平軸)のそれぞれに沿う軸である。該チャンバー本体13には、液体の流入口11、流出口12がそれぞれ設けられている。また、チャンバー本体13の内壁14には、隆起部15が設けられている。
【0038】
流入口11は、血液等の液体をチャンバー本体13に導入するための液体流通口である。本実施形態の流入口11は、チャンバー本体13の内壁14の少なくとも一部に対し対面する角度で(換言すれば、該流入口11を通った液体が、内壁14のいずれかに向かって流れ込む角度で)、チャンバー本体13に接続されている(
図2等参照)。また、流入口11は、該流入口11からの噴流が、チャンバー本体13内の液面(使用状態におけるエア抜きチャンバー10の内部液体の液面)に対して平行となる状態で流入するように設けられている。
【0039】
流出口12は、チャンバー本体13から血液等の液体を排出するための液体流通口である。本実施形態の流出口12は、チャンバー本体13の底部に設けられている(
図2等参照)。
【0040】
隆起部15は、チャンバー本体13の内壁14のうち流入口11に対面する部分に、当該流入口11に向かって隆起するように例えば円錐状に形成されている(
図2等参照)。本実施形態では、隆起部(以下、コーンともいう)15を、流入口11が対面する方向における液体の液位(液面)よりも当該隆起部(コーン)15の全体が下側に位置するように配置している。隆起部15は、チャンバー本体13の肉厚を全体として維持したまま、当該部分のみ曲折変形させることによって形成されていてもよいし、当該部分のみ肉厚を変化させることにより形成されていてもよい(
図4参照)。
【0041】
以上のように形成された隆起部15は、チャンバー本体13内での高い圧力勾配と滞留領域の発生および液面の隆起による気泡の巻き込みを防ぐことにより、血液凝固や該血液凝固に起因する血栓の発生を抑制する。
【0042】
なお、隆起部15に、持続的ヘパリン等の抗凝固薬をチャンバー本体13内へ注入するための注入口が形成されていることも好ましい。このような注入口を利用することで、チャンバー本体13における血栓生成の抑制効果をより向上させることが可能となる。
【0043】
また、上述のごときエア抜きチャンバー10において、隆起部15とチャンバー本体13の内壁14とは、滑らかに成形されていることが好ましい。本実施形態のエア抜きチャンバー10における隆起部15は、チャンバー本体13の中央の流入口11からの噴流直径を含む領域(噴流の断面がすべて含まれる領域)において、当該隆起部15により噴流から誘導される長軸方向の攪乱を防ぐよう滑らかに成形されている。これら隆起部15とチャンバー本体13の内壁14との間に凹凸や急変する部分などがなく、両者が滑らかに連なることによって、血栓生成の要因となる隆起部15とチャンバー本体13の接続部に生じる淀みを抑制することができる。また、このエア抜きチャンバー10において、内壁14の壁面近傍における液流淀み領域が血液に影響を及ぼさない程度に小さい場合には、滑らかに成形された面に、当該液流淀み領域に向けて突出する突起物が装着されていてもよい。
【0044】
アクセス部16は、エアを抜くための部位である。本実施形態では、チャンバー本体13の頂部に設置したエア抜き用のチューブをアクセス部16としている(
図2参照)。
【0045】
上述のごときエア抜きチャンバー10においては、血液等の液体が流入口11から噴流となってチャンバー本体13へと流れ込む。該噴流は、チャンバー本体13の中央の噴流を含む領域において、短軸方向(エア抜きチャンバー10の使用状態における水平方向)に分岐する。この際、噴流の動圧から対面部(流入口11と対面する部分)に発生する低流速領域の静圧への変換が減少し、低流速領域における静圧の著しい上昇が抑制される。また、隆起部15が、対面部から流出口12に至る内壁14の壁面近傍の噴流方向の流速を減少させ、液体の長軸方向の剥離流れを抑制する。このように、液体の噴流に対しては隆起部15が作用し、チャンバー本体13の中央の噴流直径を含む領域において噴流を短軸方向に分岐させ、対面部に発生する液流淀み領域の圧力を減少させる。また、隆起部15は、チャンバー本体13の中央の噴流直径を含む領域において、液体の噴流の淀み点を先端部に固定することで、噴流により誘導される横渦中心位置を安定化させる。一般に、流入口11の対面部から流出口12に至る壁面近傍の流速が減少することは、血液に対して血栓生成や溶血といったような有害な影響を及ぼす可能性があるが、本実施形態に係るエア抜きチャンバー10によれば、このような影響を抑えることができる。
【0046】
上述の、液体の噴流の淀み点を先端部に固定することについてさらに説明を加えると以下のとおりである。すなわち、流体中に置かれた物体において、物体に対する相対流速が0になる点が物体表面上のどこかに生じる。その部分を淀み点という。流線は淀み点を中心にして周辺に分岐するので、淀み点の位置が変動すると、その後流の安定性に大きな影響を与える。これは後流の不安定性が淀み点の位置に影響を与えると考えることもできるが、形状の工夫により淀み点(あるいは剥離点)を固定することで流れを安定化させる効果があることが知られている。
【0047】
[実施例1]
上述した第1の実施形態のごとく形成されたエア抜きチャンバー10において、シミュレーションと実験を行ったので、その結果を実施例1として説明する。
【0048】
流体解析ソフトウェア Phoenics ver.3.5.1(CHAM社製)を用いてコーン15の有無による流入口11の対面の圧力分布の差およびコーン直径による流場(血液等の流体が流通する領域)の差を比較した。計算モデルとして、Large Eddy Simulation modelを適用した。エア抜きチャンバー10の形状を
図2、計算格子の一例を
図5に示す。計算格子は不等間隔直交格子(スタガードメッシュ)とし、高さ×幅×奥行=100×60×150とした。粘度3mPa・s (3cP)、流量は200ml/minとし、流入口11と流出口12の両方に、流量の連続条件を満足する定常流速値を境界条件として与えた。
【0049】
図6に、コーン15の直径と高さの比を1、直径6mm(流入口11の直径の2倍)とした場合の、コーン15の有無に対する流入口対面の圧力分布の比較を示す。コーン15の設置により、流入口対面の淀み点近傍の圧力は顕著に低下する。
【0050】
図7に、直径φ=0mm、3mm、6mm、9mm、12mmの5種類の直径における場合の定常流線分布を示す。ここでは、流入口11の近傍で生成された横渦が下流まで保存されることによりコーン15より流出口12に向かう流線の壁面からの剥離(具体的には、壁面に沿った下向きの流れが、そのエネルギーを失い壁面から剥離する(離れる)現象のことをいう。剥離点より下の壁面近傍の流れは逆流し、剥離流線内では渦が発生する)を抑制し、高い攪拌効果があることが確認された。また流入口直径(φ=3mm)の2〜3倍(φ=6mm、9mm)の径を有するコーン15の整流効果が最も高くなることが確認された。
【0051】
図8に、直径φ=3mmとφ=6mmのコーン周辺の圧力分布の比較を示す。コーン15の内径と流入口11の内径が等しい場合(φ=3mm)、淀み点の高い圧力場(圧力が作用する領域)がコーン周辺に保存されているが、コーン15の内径が流入口11の内径より大きくなる場合(φ=6mm)、圧力場はコーン頂点部および周辺に分散する。この圧力分散効果が流場に大きな影響を与えると推察できる。
【0052】
本発明に係るエア抜きチャンバー10の抗血栓性に対する効果を検討するため、本発明者らが考案した血栓生成過程の可視化手法を適用した(
図9参照)。ここでは、新鮮凍結血漿を生理食塩水で2倍希釈し、エア抜きチャンバー10を含む閉鎖回路に充填した後、18.5℃まで冷却し、37℃においてACT(activated clotting time)=170秒となるよう調整したカルチコールを注入して凝固抑制を解除した。本実施形態に係るコーン付きのエア抜きチャンバー10およびこれと同じ外形を有する、コーン15が形成されていないエア抜きチャンバー10において、徐々に37℃まで復温し、凝固開始時刻を比較した。凝固開始時刻が遅いほど凝固抑制効果が高くなる。
【0053】
コーン付き(φ=6mm)エア抜きチャンバー10では、測定開始時刻(18.5℃)より1280秒(35.8℃)で凝固開始した。コーン15がない場合、凝固開始までの時間は990秒(34.6℃)であった。なお、Φ=3mmのコーン15では930秒(34.9℃)で凝固開始した。φ=6mmのコーン15付きエア抜きチャンバー10において、顕著に凝固開始時間が延長したことから、本発明によるコーン15を従来のエア抜きチャンバー10に加えることにより、血液凝固を抑制する効果があることが確認された。(
図10参照)
【0054】
[第2の実施形態]
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。
図11は、第2の実施形態に係るエア抜きチャンバー10を示す図である。
図12は、
図11に示すエア抜きチャンバー10のXII-XII線における断面図である。
【0055】
エア抜きチャンバー10における隆起部15の底面部15bが略円形である場合、当該底面部15bの平均直径は、液体の噴流が当該隆起部15に到達した際の当該噴流の直径と略同等もしくはそれより大きいことが好ましい。また、隆起部15の底面部15bから尖端部15aまでの高さ(H)と当該隆起部15の底面部15bの平均直径(D)との比(H/D)が1〜2の範囲であることが好ましい。さらに、隆起部15の尖端部15aは底面部15bの平均直径(D)の1/10以下の直径である平坦部を備えることが、コーン先端部の淀み点の位置を固定し、横渦の変動を抑制する上で好ましい。以下では、実施例2として、隆起部15の底面部15bの平均的直径(底面の形状を楕円形とした場合の長径と短径との平均)に対し、隆起部15の高さHをH1,H2,H3と変化させて、チャンバー本体13内の液流、液圧分布の変化を第1の実施形態と同様にシミュレーションにより求めた結果を示す。
【0056】
[実施例2]
第1の実施形態と同一の計算条件でコーン直径D=6mmに対して、高さHを、H=3mm〜12mmの間で3mm刻みに変化させ、液体が上昇する方向を正とする縦方向流速が0となる等高面により、横渦の保存効果を検討した。この等高面の下限位置により、横渦が保存されて渦中央の上昇流が維持される効果の程度を確認することができる。つまり、等高面の下限が下流側に存在するほど、横渦の攪拌効果がよく保存されていることとなる。
【0057】
図13に結果を示す。D=6mm、H=6mmつまりコーン直径と高さの比が1:1の時に最も等流速面が下方に分布することが明らかになった。このとき、等高面外側部は下向き、中心部は上向きの流場(横旋回流場)が形成され、この安定した流場の形成が剥離を防ぎ血液凝固を抑制する。本計算結果では、この効果はD:Hが1:0.5〜1:2まで確認され、それ以上のD:H(1:3)では消失することも確認された。
【0058】
[第3の実施形態]
本発明において、コーン15の側面に流入した噴流は、チャンバー本体13の形状(円筒形状)に依存する旋回流となり、その運動量損失がコーン15の側面(円錐面)の圧力を増加させる。したがって、
図14(A)に対し
図14(B)に示すようにコーン15の側面の勾配を小さくする(具体的には流入時の勾配と流出時の勾配が等しくなるように設定する)ことにより、運動量損失の減少効果が期待される。また、コーン15の底面部15bの水平方向軸長さ(長径)がWであり、垂直方向軸長さ(短径)がZである場合に、W≧Zであることが好ましい。W≧Zとなるような横に偏平した形状は、噴流による圧力を左右に分散させる効果が高くなるため、横渦を発生させやすくする。
【0059】
[実施例3]
第1の実施形態と同じ計算条件において、直径6mm、高さ6mmのコーンの横幅を9mmとした楕円形の底面部15bを有する場合の、底面部近傍の圧力分布の比較を
図15に示す。圧力が高くなる領域が楕円型コーンでは狭くなることから、横長断面をもつコーン15の側面の圧分散効果が確認された。
【0060】
また、コーン15の横幅が渦流形成に与える影響を実験的に評価するため、流入口11直下の横断面の流場を、ポリスチレン粒子をトレーサとして用いた懸濁法およびレーザーライトシート法により可視化した。測定位置および観察結果の概要を
図16に示す。コーン15の有無に関わらず淀み点の周辺には横渦が生じる。しかしコーン無しの場合は渦中心が大きく変動することに対し、円錐コーンがある場合には渦中心の変動が小さくなり、さらに楕円錐コーンの場合には渦中心の移動はなくなり、安定した強い横渦が形成されることが確認された。エア抜きチャンバー10内における横渦は反対方向に旋回する一対の渦として形成されるが、この渦は相互干渉することにより周期的に渦中心位置が変動し、渦構造は消滅しやすくなる。本実施例3の結果より、流入口11の対面のコーン15の設置は渦構造の動的な安定性を高めることに寄与している可能性が示唆される。またこの効果は、コーン先端で淀み点となる高圧部の位置が固定されることによってもたらされると推測され、コーン横幅の最適化はその効果を高めると考えられる。
【0061】
[第4実施形態]
液面位置が流入口11に接近する場合、流入口11の対面の淀み領域に生じる圧力は水面を上昇させ(フォーミング)、気泡の巻き込みにより血液凝固因子を活性化させ血栓を発生させる可能性がある。こうした事象に対し、本発明に係るエア抜きチャンバー10によれば、コーン15による圧力分散、整流効果に基づいてフォーミングを抑制する効果が期待される。
【0062】
[実施例4]
この効果を確認するため、
図17に示す流入口11の直上部を計算領域の上端として、流入口11の直上部断面の圧力分布を計算した結果の比較を
図18に示す。この結果、コーン15は液面の圧力上昇を緩和する効果があることが確認された。
【0063】
また、本効果を実験的に検証するため、
図19に示す閉鎖回路において、色素としてコンデンスミルクを混和させ、血液と同様の粘度となる3mPa・s (3cP)に濃度調整したグリセリン水溶液を流量200mlおよび400mlで循環させ、レーザーライトシートにより波面を可視化し、コーン15の有無がフォーミングに与える影響を検討した。
【0064】
図20、
図21に、コーン無しの場合、
図22、
図23にコーン付(直径6mm)の場合の波面可視化結果と最大波高を示す。この結果、流量400mL/minではコーン15のない場合約14mmの波高となるのに対し、コーン15を設置した場合には約5mmと、顕著に波高が減少した。この結果より、本発明に係るエア抜きチャンバー10によれば、コーン15の圧分散効果に基づき、流入口11の対面における波面の増高(フォーミング)を防止する効果が期待されることが明らかになった。
【0065】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述した実施形態では、隆起部の一具体例としてのコーン15を例示したがこれは好適例にすぎず、楕円形の底面部15bを有するコーンや、頂点位置が底面部15bの中心位置に一致しないような非対称形のコーンなどであってもよい。あるいは、底面部15bや側面に凹凸がある等、厳密な意味での錐体になっていない場合でも構わない。要は、チャンバー本体13の内壁14のうち流入口11に対面する部分に、当該流入口11に向かって隆起するように形成されており、チャンバー本体13内での高い圧力勾配と滞留領域の発生および液面の隆起による気泡巻き込みを防ぐことにより血液凝固(血栓)を抑制する隆起部15であれば、その具体的形状が特に限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、体外循環血液回路で使用されるエア抜きを行うチャンバーに適用して有用である。
【符号の説明】
【0067】
10…エア抜きチャンバー
11…流入口
12…流出口
13…チャンバー本体
14…内壁
15…コーン(隆起部)
15a…尖端部
15b…底面部
16…アクセス部