特許第6097566号(P6097566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6097566ワイヤーハーネスの接続構造及び接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097566
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネスの接続構造及び接続方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/62 20060101AFI20170306BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20170306BHJP
   H01R 4/22 20060101ALI20170306BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   H01R4/62 A
   H01R4/02 Z
   H01R4/22
   H01R43/02 A
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-2953(P2013-2953)
(22)【出願日】2013年1月10日
(65)【公開番号】特開2014-135209(P2014-135209A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(72)【発明者】
【氏名】太田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】高村 聡
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓郎
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−033383(JP,A)
【文献】 特開2011−054536(JP,A)
【文献】 特開昭63−264879(JP,A)
【文献】 特開2013−122880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/62
H01R 4/02
H01R 4/22
H01R 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム導体を絶縁被覆で被覆した被覆アルミニウム線と、銅導体を絶縁被覆で被覆した被覆銅線とで構成されたワイヤーハーネスにおいて、前記絶縁被覆から露出する前記アルミニウム導体及び前記銅導体接続されたワイヤーハーネスの接続構造であって、
前記絶縁被覆から露出する前記アルミニウム導体及び前記銅導体、溶融させた接続金属によって、該接続金属がこれら導体の間に介在した状態で溶融金属接続され、
前記接続金属が、
前記アルミニウム導体の耐食性以下の耐食性である標準電極電位が低い金属を含む低耐食接続金属で構成された
ワイヤーハーネスの接続構造。
【請求項2】
前記接続金属は、
Sn−Zn系はんだ、あるいはZn−Al系はんだで構成された
請求項に記載のワイヤーハーネスの接続構造。
【請求項3】
前記アルミニウム導体と前記銅導体とを、これら導体の両先端部が、同方向を向き且つこれら導体の長手方向において略同位置に配置され、
前記アルミニウム導体と前記銅導体とを溶融金属接続する溶融金属接続部が、この内部に前記アルミニウム導体と前記銅導体との両先端部が収まるように形成された
請求項1または2に記載のワイヤーハーネスの接続構造。
【請求項4】
溶融金属接続した前記アルミニウム導体及び前記銅導体は、絶縁キャップで覆われた
請求項に記載のワイヤーハーネスの接続構造。
【請求項5】
前記アルミニウム導体、アルミニウム素線を撚って構成されるとともに、
前記銅導体、銅素線を撚って構成された
請求項1乃至4のうちいずれかに記載のワイヤーハーネスの接続構造。
【請求項6】
前記アルミニウム素線及び前記銅素線のそれぞれと前記接続金属との接続界面の全面積が、各素線の断面積以上となるように設定され
請求項1乃至5のうちいずれかに記載のワイヤーハーネスの接続構造。
【請求項7】
前記接続金属
前記アルミニウム導体より融点が低い低融点金属成分を含む低融点接続金属で構成され
請求項1乃至のうちいずれかに記載のワイヤーハーネスの接続構造。
【請求項8】
前記アルミニウム導体及び前記銅導体のそれぞれ、溶融させた前記接続金属で予備溶融接続処理を施され
請求項1乃至のうちいずれかに記載のワイヤーハーネスの接続構造。
【請求項9】
前記接続金属、成型手段で成型して溶融金属接続され
請求項1乃至のうちいずれかに記載のワイヤーハーネスの接続構造。
【請求項10】
アルミニウム導体を絶縁被覆で被覆した被覆アルミニウム線と、銅導体を絶縁被覆で被覆した被覆銅線とで構成するワイヤーハーネスにおいて、前記絶縁被覆から露出する前記アルミニウム導体及び前記銅導体を接続するワイヤーハーネスの接続方法であって、
前記絶縁被覆から露出する前記アルミニウム導体及び前記銅導体を、接続金属をこれら導体の間に介在させた状態で、溶融させた接続金属によって溶融金属接続する溶融金属接続工程を行い、
前記溶融金属接続工程では、
前記接続金属として、前記アルミニウム導体の耐食性以下の耐食性である標準電極電位が低い金属を含む低耐食接続金属を用いた
ワイヤーハーネスの接続方法。
【請求項11】
前記アルミニウム導体と前記銅導体とを、これら導体の両先端部が同方向を向き且つこれら導体の長手方向において略同位置に配置する同方向配置工程を行うとともに、
前記溶融金属接続工程に際して溶融した溶融した前記接続金属を、成型手段で成型する成型工程を行い、
前記成型工程では、前記成型手段を、その内周面が前記アルミニウム導体及び前記銅導体との間隔を空けた配置で前記アルミニウム導体及び前記銅導体の外側に遊嵌する
請求項10に記載のワイヤーハーネスの接続方法。
【請求項12】
前記成型工程では、前記アルミニウム導体及び前記銅導体の両先端部が前記成型手段の内部に収まった配置で前記接続金属を成形する
請求項11に記載のワイヤーハーネスの接続方法。
【請求項13】
前記アルミニウム導体を、アルミニウム素線を撚って構成するとともに、
前記銅導体を、銅素線を撚って構成した
請求項10乃至12のうちいずれかに記載のワイヤーハーネスの接続方法。
【請求項14】
前記アルミニウム素線及び前記銅素線のそれぞれと前記接続金属との接続界面の全面積が、各素線の断面積以上となるように設定した
請求項10乃至13のうちいずれに記載のワイヤーハーネスの接続方法。
【請求項15】
前記溶融金属接続工程の前に、
前記アルミニウム導体及び前記銅導体のそれぞれを、溶融させた前記接続金属で予備溶融接続処理を施す予備溶融接続処理工程を行う
請求項10乃至14のうちいずれかに記載のワイヤーハーネスの接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、複数の被覆電線で構成する自動車用ワイヤーハーネスの接続構造及び接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車には、様々な電装機器が装備されており、各機器の電気回路が複雑化する傾向にあるため、安定した電気的接続状態の確保が必要不可欠となっている。このような様々な電装機器の電気回路は、複数本の被覆電線を束ねて構成するワイヤーハーネスを自動車に配索している。
【0003】
このようなワイヤーハーネスについて、これまで銅導体を絶縁被覆で被覆した被覆銅電線を用いていたが、車体重量の軽量化に伴って、アルミニウム導体を絶縁被覆で被覆した被覆アルミニウム電線を用いることがある。
【0004】
このような被覆アルミニウム電線と被覆銅電線とでワイヤーハーネスを構成するとともに、被覆銅電線における絶縁被覆から露出する銅導体と、被覆アルミニウム電線における絶縁被覆から露出するアルミニウム導体とを接続するワイヤーハーネスである場合、銅導体と、アルミニウム導体とは異種金属であるため、物性が異なり、導電性を確保できるように接続することは困難であった。
【0005】
例えば、特許文献1では、アルミニウム電線の外周側に、銅電線を構成する銅素線を配置し、抵抗溶接や超音波溶接で溶接接続する被覆電線の接続構造が提案されている。
しかしながら、特許文献1で提案された被覆電線の接続構造の場合、アルミニウム電線の外周側に、銅電線を構成する銅素線を配置することに非常に手間がかかり、製造効率が悪かった。
また、アルミニウム導体は表面に絶縁性の高い酸化膜が形成されるため、確実に接続されていないと、酸化膜が形成され、導電性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−113946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、ワイヤーハーネスを構成する被覆銅電線及び被覆アルミニウム電線におけるアルミニウム導体及び銅導体を容易かつ確実に接続するワイヤーハーネスの接続構造及び接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、アルミニウム導体を絶縁被覆で被覆した被覆アルミニウム線と、銅導体を絶縁被覆で被覆した被覆銅線とで構成されたワイヤーハーネスにおいて、前記絶縁被覆から露出する前記アルミニウム導体及び前記銅導体接続されたワイヤーハーネスの接続構造であって、前記絶縁被覆から露出する前記アルミニウム導体及び前記銅導体、溶融させた接続金属によって、該接続金属がこれら導体の間に介在した状態で溶融金属接続され、前記接続金属が、前記アルミニウム導体の耐食性以下の耐食性である標準電極電位が低い金属を含む低耐食接続金属で構成されたことを特徴とする。
【0009】
上述の溶融した接続金属で溶融金属接続は、はんだによるはんだ付けや硬ろうによるろう付けとすることができ、さらには、アルミニウム及び銅の両方と相性の良いはんだや硬ろうとすることができる。
【0010】
この発明により、ワイヤーハーネスを構成する被覆アルミニウム電線及び被覆銅電線におけるアルミニウム導体及び銅導体を容易かつ確実に接続することができる。
詳述すると、ワイヤーハーネスを構成する被覆アルミニウム電線及び被覆銅電線におけるアルミニウム導体及び銅導体とを接続する場合、アルミニウム導体を構成するアルミ系材料は、銅導体を構成する銅系材料に対して標準電極電位が低い金属、つまり卑な金属(低耐食性金属ともいう)であるため、アルミニウム導体と銅導体とを接続すると、アルミニウム導体が腐食しやすく、一旦アルミニウム導体が腐食して、銅導体との接続状態が破壊されると、ち密で安定した絶縁性の高い酸化膜がアルミニウム導体表面に形成され導電性が低下する。
【0011】
これに対し、ワイヤーハーネスを構成する被覆アルミニウム電線及び被覆銅電線におけるアルミニウム導体及び銅導体とを、溶融した接続金属で溶融金属接続することにより、容易かつ確実に、長期信頼性の高い接続を実現することができる。
したがって、このように容易かつ確実に接続するため、アルミニウム導体の腐食が抑制され、接続部分における導電性を確保することができる。
【0012】
なお、本明細書において、界面とは液体や固体の相が他の均一な相と接している境界とし、表面とは空気と物体の界面とし、さらに、以下で用いる接続界面とは表面のうち他の物体と接続した界面としている。
【0013】
また上述したように、前記接続金属を、前記アルミニウム導体の耐食性以下の耐食性である標準電極電位が低い金属を含む低耐食接続金属で構成することにより、さらに長期信頼性の高い接続を実現することができる。詳しくは、前記接続金属を、前記アルミニウム導体の耐食性以下の耐食性である標準電極電位が低い金属、つまり、イオン化傾向の大きい金属を含む低耐食接続金属で構成することにより、低耐食接続金属が犠牲材として機能するため、絶縁性の高い酸化被膜が形成される接続界面を犠牲材で保護し、長期にわたる接続信頼性の高い接続を実現することができる。
【0014】
上述のアルミニウム導体の耐食性以下の耐食性である標準電極電位が低い金属とは、ZnやMgなどで構成することができる。
【0015】
この発明の態様として、前記接続金属は、Sn−Zn系はんだ、あるいはZn−Al系はんだで構成されたものである。
【0016】
この発明により、例えば、塩水雰囲気などの過酷な環境において、Sn−Zn系はんだ、あるいはZn−Al系はんだで構成する前記接続金属が犠牲材として機能し、腐食しやすい前記アルミニウム導体の耐食性を向上し、長期にわたる接続信頼性の高い接続を実現することができる。
【0017】
なお、仮に、はんだ自体を、アルミニウム導体を構成するアルミニウム系材料に対して標準電極電位が高い金属で構成されたSn−Ag系はんだやSn−Cu系はんだを用いた場合、はんだとアルミニウム導体との接続界面で電食が生じて、アルミニウム導体の接続界面が集中的に腐食するおそれがあるが、Sn−Zn系はんだ、あるいはZn−Al系はんだを用いることで、はんだとアルミニウム導体との接続界面における集中的な腐食を防止することができる。
また、Sn−Zn系はんだ、あるいはZn−Al系はんだは、銅導体やアルミニウム導体との接続性が高いため、溶融金属接続部分の耐食性を向上することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記アルミニウム導体と前記銅導体とを、これら導体の両先端部が、同方向を向き且つこれら導体の長手方向において略同位置に配置され、前記アルミニウム導体と前記銅導体とを溶融金属接続する溶融金属接続部が、この内部に前記アルミニウム導体と前記銅導体との両先端部が収まるように形成されたものである。
【0019】
また、この発明の態様として、溶融金属接続した前記アルミニウム導体及び前記銅導体は、絶縁キャップで覆われたものである。
この発明により、前記アルミニウム導体と前記銅導体との接続部分を絶縁キャップで覆うため、接続部分における絶縁性を確保でき、不用意に接続部分がショートすることを防止できる。また、例えば、接続部分に水分が付着して異種金属腐食(以下において電食という)が生じた場合であっても、アルミニウム導体の接続界面における集中的な腐食を防止し、耐食性を向上し、長期にわたって、接続信頼性を持続させることができる。また、前記アルミニウム導体と前記銅導体との接続部分とともに、樹脂を絶縁キャップ内に封入することによって、容易に防水処理を施してもよい。
【0020】
またこの発明の態様として、前記アルミニウム導体、アルミニウム素線を撚って構成されるとともに、前記銅導体、銅素線を撚って構成されたものである。
この発明により、前記アルミニウム導体及び前記銅導体を、より確実に接続することができる。
【0021】
詳述すると、銅素線を撚って構成した銅導体と、アルミニウム素線を撚って構成したアルミニウム導体とを接続する場合、導体を素線で構成しているため、接続界面が多くなり接続が困難となる。したがって、接続のための圧着圧力などのエネルギを大きくする必要があるが、素線自体は細いため、接続のためのエネルギによる負荷が作用すると損傷して、導電性が低下するおそれがある。また、接続界面が増えるということは、絶縁性の高い酸化膜が形成されやすく、導電性が低下するおそれが高くなる。これに対し、銅素線を撚って構成する銅導体と、アルミニウム素線を撚って構成するアルミニウム導体とを、溶融した接続金属で溶融金属接続することにより、例えば、抵抗溶接や超音波溶接で接続する場合のような素線に作用する負荷がなく、また、接続のためのエネルギを大きくすることなく、確実に、長期信頼性の高い接続を実現することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記アルミニウム素線及び前記銅素線のそれぞれと前記接続金属との接続界面の全面積が、各素線の断面積以上となるように設定されたものである。
この発明により、接続金属との各素線の導電性を確保することができる。
【0023】
詳述すると、前記アルミニウム素線と接続金属との接続界面、及び前記銅素線と接続金属との接続界面には、反応層(合金層)が形成されるが、反応層の面積が、各素線の断面積より小さいと、接続界面における抵抗が増大し、各素線と接続金属との導電性が低下する。これに対し、反応層が形成される各素線と接続金属との接続界面の面積を各素線の断面積以上となるように設定したため、例えば、10mΩ以下というように、各素線と接続金属との接続界面における抵抗を小さくすることができ、各素線と接続金属との導電性を確保することができる。したがって、接続金属によって接続されたアルミニウム導体と銅導体との導電性を確保することができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記接続金属、前記アルミニウム導体より融点が低い低融点金属成分を含む低融点接続金属で構成されたものである。
この発明により、アルミニウム素線の表面の溶融を抑制するとともに、融点が低い低融点接続金属が素線の間に浸入して、接続信頼性の高い接続を実現することができる
【0025】
た、この発明の態様として、前記アルミニウム導体及び前記銅導体のそれぞれ、溶融させた前記接続金属で予備溶融接続処理を施されたものである。
上記予備溶融接続処理は、導体同士を溶融金属接続するために予め、導体に施す予備的な処理であり、溶融した前記接続金属で、素線で構成する前記アルミニウム導体及び前記銅導体のそれぞれを固める処理を施すことをいう。
【0026】
この発明により、さらに確実に溶融金属接続することができる。
詳しくは、前記アルミニウム導体と前記銅導体とでは、溶融した接続金属との溶融金属で接続する接続条件が異なるものの、前記アルミニウム導体及び前記銅導体のそれぞれに対して、溶融した前記接続金属で予備溶融接続処理を施すことにより、接続金属で予備溶融接続処理を施した前記アルミニウム導体及び前記銅導体を、確実に溶融した接続金属で確実に溶融金属接続することができる。
【0027】
また、各導体に対して予備溶融接続処理を施してから溶融金属接続するため、前記アルミニウム導体と前記銅導体とを直接溶融金属接続する場合に比べて、低エネルギで溶融金属接続することができ、前記アルミニウム導体と前記銅導体に対する溶融金属接続のための負荷を低減することができる。
【0028】
また、溶融金属接続する接続界面は、接続しやすい面同士による接続金属同士の接続となり、溶融金属接続する接続金属との接続性も高く、容易かつ確実に接続することができる。
なお、前記接続金属による予備溶融接続処理は、導体表面をわずかに溶融する処理、あるいは溶融しない処理であることを含む。
【0029】
また、この発明の態様として、前記アルミニウム導体と前記銅導体とを、長手方向が同方向となるように配置し、溶融金属接続することができる。
上述の同方向に向けて配置とは、先端側が同じ方向、あるいは反対方向となるように、略同方向となるように配置することを含む概念である。
この発明により、接続強度が高く、長期信頼性の高い接続を実現することができる
【0030】
た、この発明の態様として、前記接続金属、成型手段で成型して溶融金属接続されたものである。
この発明により、アルミニウム導体と銅導体との間隔を成型手段で規制することができるため、アルミニウム導体と銅導体との間隔が広がりすぎて、アルミニウム導体と銅導体とを前記接続金属で接続できないという不具合が生じることなく、溶融金属接続することができる。
さらには、成型手段で接続金属を成型するため、接続部分において、接続金属が局所的に薄くなるなどの不具合が生じることなく、安定した溶融金属接続を実現できる。
【0031】
また、この発明は、アルミニウム導体を絶縁被覆で被覆した被覆アルミニウム線と、銅導体を絶縁被覆で被覆した被覆銅線とで構成するワイヤーハーネスにおいて、前記絶縁被覆から露出する前記アルミニウム導体及び前記銅導体を接続するワイヤーハーネスの接続方法であって、前記絶縁被覆から露出する前記アルミニウム導体及び前記銅導体を、接続金属をこれら導体の間に介在させた状態で、溶融させた接続金属によって溶融金属接続する溶融金属接続工程を行い、前記溶融金属接続工程では、前記接続金属として、前記アルミニウム導体の耐食性以下の耐食性である標準電極電位が低い金属を含む低耐食接続金属を用いたことを特徴とする。
【0032】
この発明により、ワイヤーハーネスを構成する被覆アルミニウム電線及び被覆銅電線におけるアルミニウム導体及び銅導体を、溶融金属接続工程によって、容易かつ確実に接続することができる。
【0033】
この発明の態様として、前記アルミニウム導体と前記銅導体とを、これら導体の両先端部が同方向を向き且つこれら導体の長手方向において略同位置に配置する同方向配置工程を行うとともに、前記溶融金属接続工程に際して溶融した溶融した前記接続金属を、成型手段で成型する成型工程を行い、前記成型工程では、前記成型手段を、その内周面が前記アルミニウム導体及び前記銅導体との間隔を空けた配置で前記アルミニウム導体及び前記銅導体の外側に遊嵌することができる。
【0034】
この発明により、接続強度が高く、溶融した接続金属を成型手段で成型するため、安定した溶融金属接続を実現できる。
【0035】
またこの発明の態様として、前記成型工程では、前記アルミニウム導体及び前記銅導体の両先端部が前記成型手段の内部に収まった配置で前記接続金属を成形することができる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記アルミニウム導体を、アルミニウム素線を撚って構成するとともに、前記銅導体を、銅素線を撚って構成することができる。
この発明により、前記アルミニウム導体及び前記銅導体を、より確実に接続することができる。
【0037】
詳しくは、溶融金属接続工程において、アルミニウム電線における絶縁被覆から露出するアルミニウム導体と、被覆銅電線における絶縁被覆から露出する銅導体とを、溶融した接続金属で溶融金属接続することにより、例えば、抵抗溶接や超音波溶接で接続する場合のような素線に作用する負荷がなく、容易かつ確実に、長期信頼性の高い接続を実現することができる。
【0038】
また、このように、容易かつ確実に接続するため、表面に電気抵抗の高い酸化膜が形成されるアルミニウム素線と銅素線とを確実に接続し、接続部分における導電性を確保することができる。
【0039】
またこの発明の態様として、前記アルミニウム素線及び前記銅素線のそれぞれと前記接続金属との接続界面の全面積が、各素線の断面積以上となるように設定することができる。
この発明により、接続金属との各素線の導電性を確保することができる。
【0040】
また、この発明の態様として、前記溶融金属接続工程の前に、前記アルミニウム導体及び前記銅導体のそれぞれを、溶融した前記接続金属で予備溶融接続処理を施す予備溶融接続処理工程を行うことができる。
この発明により、さらに確実に溶融金属接続することができる。
【0041】
詳しくは、前記アルミニウム導体と前記銅導体とでは、溶融した接続金属との溶融金属で接続する接続条件が異なるものの、予備溶融接続処理工程において、前記アルミニウム導体及び前記銅導体のそれぞれに対して、溶融した前記接続金属で予備溶融接続処理を施すことにより、接続金属で予備溶融接続処理を施した前記アルミニウム導体及び前記銅導体を、溶融した接続金属で接続信頼性の高い溶融金属接続を実現することができる。
【0042】
また、各導体に対して予備溶融接続処理工程を施してから溶融金属接続工程を行うため、前記アルミニウム導体と前記銅導体とを直接溶融金属接続する場合に比べて、低エネルギで溶融金属接続することができ、前記アルミニウム導体と前記銅導体に対する溶融金属接続のための負荷を低減することができる。また、溶融金属接続する接続界面は、予備溶融接続処理によって、接続しやすい面同士による接続金属同士の接続となり、溶融金属接続する接続金属との接続性も高く、容易かつ確実に接続することができる
【発明の効果】
【0043】
この発明によれば、ワイヤーハーネスを構成する被覆アルミニウム電線及び被覆銅電線におけるアルミニウム導体及び銅導体を容易かつ確実に接続するワイヤーハーネスの接続構造及び接続方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】ワイヤーハーネスの一部平面図。
図2】接続電線組の説明図。
図3】接続部についての説明図。
図4】接続部の接続方法についての説明図。
図5】予備はんだを行った接続部についての説明図。
図6】予備はんだの形成方法についての説明図。
図7】別の実施形態の接続電線組の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
図1はワイヤーハーネス1の一部平面図を示し、図2は接続電線組2の説明図を示している。詳しくは、図2(a)は接続電線組2の拡大平面図を示し、図2(b)は接続電線組2における接続はんだ部sの拡大横断面図を示している。なお、図1及ぶ図2(a)では、接続部Jに被せる絶縁キャップ30を破線で示している。
図3(a)は接続はんだ部sを成型治具50で成型した接続部Jの拡大平面図を示し、図3(b)は成型治具50で成型した接続はんだ部sの拡大横断面図を示している。
【0046】
接続部Jの接続方法についての説明図を示す図4において、左から順に、図4(a)は接続前のアルミ電線10及び銅電線20を示し、図4(b)は成型治具50を装着した状態、図4(c)は溶融はんだ漕100に成型治具50ごと浸けた状態、図4(d)は溶融はんだ漕100から取り出した状態を示している。また、図4(e)は図4(b)の状態における成型治具50部分の拡大横断面図を示し、図4(f)は図4(d)の状態における成型治具50部分の拡大横断面図を示している。
【0047】
ワイヤーハーネス1は、アルミ電線10や銅電線20をテープ40でひとまとめにし、車両内部に配索して、電装機器や制御部等を電気的に接続する電線束であり、端部に、図示省略するコネクタ等を備えている。なお、図1には、ワイヤーハーネス1において主となる幹線部1aの一部を図示している。
【0048】
このように構成したワイヤーハーネス1において、幹線部1aに、アルミ電線10と銅電線20とをはんだで溶融金属接続した接続電線組2を取り付けて、テープ40で固定している。
【0049】
ワイヤーハーネス1や接続電線組2を構成するアルミ電線10は、複数本のアルミ素線13を撚って構成したアルミ導体12を絶縁被覆11で被覆した電線であり、絶縁被覆11の被覆先端11aより先端側において、アルミ電線露出部12aとしてアルミ導体12が露出している。
【0050】
ワイヤーハーネス1や接続電線組2を構成する銅電線20は、複数本の銅素線23を撚って構成した銅導体22を絶縁被覆21で被覆した電線であり、絶縁被覆21の被覆先端21aより先端側において、銅電線露出部22aとして銅導体22が露出している。
【0051】
接続電線組2は、このように構成したアルミ電線10及び銅電線20を沿わせるとともに、アルミ電線露出部12a及び銅電線露出部22aを、同方向に向けて配置するとともに、はんだで溶融金属接続(はんだ付けともいう)して接続部Jを構成している。
【0052】
詳しくは、接続電線組2の接続部Jは、アルミ電線露出部12aと銅電線露出部22aとをはんだで接続して接続はんだ部sを構成している。
この接続はんだ部sを構成するはんだは、アルミ導体12及び銅導体22の両方と相性がよく、アルミ導体12より融点及び耐食性が低い、つまり標準電極電位が低い金属であるZnを含有するSn−Zn系はんだ、あるいはZn−Al系はんだで構成している。
【0053】
また、接続はんだ部sは、アルミ素線13及び銅素線23のそれぞれとはんだとの接続界面の全面積が、アルミ素線13及び銅素線23におけるそれぞれの断面積以上となるように形成している。
【0054】
このように、アルミ導体12及び銅導体22の両方と相性のよいSn−Zn系はんだ、あるいはZn−Al系はんだで溶融接続した接続部Jの接続はんだ部sでは、図2(b)に示すように、低融点接続金属であるZn−Al系はんだを用いることにより、アルミ導体12を構成するアルミ素線13における接続界面に形成された酸化膜を溶融させるとともに、アルミ導体12自体の溶融量を抑制しながら、アルミ素線13及び銅素線23の素線間にはんだが浸透し、確実に、アルミ導体12と銅導体22とを接続している。
【0055】
アルミ導体12及び銅導体22を溶融接続した接続部Jには、図1及び図2(a)において点線で示すように、接続はんだ部s、アルミ電線露出部12a並びに銅電線露出部22aが露出しないよう絶縁キャップ30を被せている。なお、絶縁キャップ30は、接続はんだ部sから被覆先端11a及び被覆先端21aまでを一体的に被覆するキャップ状であり、後端側に固定片31を備えており、接続部Jに被せた状態で、アルミ電線10及び銅電線20の絶縁被覆11,21とともに、テープ40を巻き回して固定している。
【0056】
続いて、成型治具50で成型された接続はんだ部sの形成方法について、図3及び図4に基づいて説明する。
接続はんだ部sが成型治具50で成型された接続部Jを形成するためには、図4(a)に示すように、まず、アルミ電線10のアルミ電線露出部12aと、銅電線20の銅電線露出部22aとが、軸線方向に沿って略同方向かつ略同じ位置となるように配置する。
【0057】
そして、アルミ電線露出部12aと、銅電線露出部22aとの外側に略長楕円リング状の成型治具50を遊嵌させる(図4(b)参照)。このとき、図4(e)に示すように、アルミ電線露出部12a及び銅電線露出部22aと、成型治具50の内周面51との間隔が適宜の間隔となるように配置する。
なお、成型治具50は、溶融はんだ101に溶けにくい材質で構成している。
【0058】
このように遊嵌させた成型治具50とともに、アルミ電線露出部12a及び銅電線露出部22aを、溶融はんだ漕100内において溶融状態の溶融はんだ101に、所定長さ分浸けた後(図4(c)参照)、図4(d)に示すように取り出して、溶融はんだ101が硬化後、成型治具50を取り外して、接続はんだ部sを形成する。
【0059】
このように、アルミ素線13を撚って構成したアルミ導体12を絶縁被覆11で被覆したアルミ電線10と、銅素線23を撚って構成した銅導体22を絶縁被覆21で被覆した銅電線20とで構成するワイヤーハーネス1において、絶縁被覆11,21の被覆先端11a,21aから露出するアルミ電線露出部12a及び銅電線露出部22aを接続するワイヤーハーネス1のワイヤーハーネスの接続構造、つまり接続電線組2は、絶縁被覆11,21の被覆先端11a,21aから露出するアルミ電線露出部12a及び銅電線露出部22aを、はんだで溶融金属接続したことにより、ワイヤーハーネス1を構成する銅電線20及びアルミ電線10におけるアルミ導体12及び銅導体22を容易かつ確実に接続することができる。
【0060】
詳述すると、アルミ素線13を撚って構成したアルミ導体12と、銅素線23を撚って構成した銅導体22とを接続する場合、導体(12,22)を素線(13,23)で構成しているため接続界面が多くなり接続が困難となる。したがって、接続のための圧着圧力などのエネルギを大きくする必要があるが、素線自体(13,23)は細いため、接続のためのエネルギによる負荷が作用すると損傷して、導電性が低下するおそれがある。また、アルミ導体12における接続界面が増えるということは、絶縁性の高い酸化膜が形成されやすく、導電性が低下するおそれが高くなる。これに対し、アルミ素線13を撚って構成するアルミ導体12と、銅素線23を撚って構成する銅導体22とを、低融点接続金属であるZn−Al系はんだを溶融して溶融金属接続することにより、例えば、抵抗溶接や超音波溶接で接続する場合のような素線自体(13,23)に作用する負荷がなく、また、接続のためのよりエネルギを大きくすることなく、確実に、長期信頼性の高い接続を実現することができる。
【0061】
また、アルミ素線13を構成するアルミ系材料は、銅素線23を構成する銅系材料に対して標準電極電位が低い金属であるため、アルミ素線13で構成するアルミ導体12と、銅素線23で構成する銅導体22とを接続すると、アルミ導体12が腐食しやすく、導電性が低下するおそれがある。
【0062】
しかしながら、アルミニウム電線における絶縁被覆11から露出するアルミ導体12と、銅電線20における絶縁被覆21から露出する銅導体22とを、低融点接続金属であるZn−Al系はんだで溶融金属接続することにより、例えば、抵抗溶接や超音波溶接で接続する場合のような素線(13,23)に負荷が作用することがなく、容易かつ確実に、長期信頼性の高い接続を実現することができる。
【0063】
また、このように、容易かつ確実に接続するため、表面に電気抵抗の高い酸化膜が形成されるアルミ素線13と銅素線23とを確実に接続し、接続部Jにおける導電性を確保することができる。
【0064】
さらには、接続部Jにおいて、アルミ素線13及び銅素線23のそれぞれとはんだとの接続界面の全面積が、アルミ素線13及び銅素線23におけるそれぞれの断面積以上となるように接続はんだ部sを形成することにより、アルミ素線13及び銅素線23のそれぞれとはんだとの導電性を確保することができる。
【0065】
詳述すると、アルミ素線13及び銅素線23のそれぞれと接続はんだ部sを構成するはんだとの接続界面には、それぞれ反応層(合金層)が形成されるが、反応層の面積が、アルミ素線13及び銅素線23のそれぞれの断面積より小さいと、接続界面における抵抗が増大し、アルミ素線13及び銅素線23のそれぞれとはんだとの導電性が低下する。
【0066】
これに対し、反応層が形成されるアルミ素線13及び銅素線23のそれぞれとはんだとの接続界面の面積を、アルミ素線13及び銅素線23のそれぞれの断面積以上となるように設定したため、例えば、10mΩ以下というように、アルミ素線13及び銅素線23のそれぞれとはんだとの接続界面における抵抗を小さくすることができ、アルミ素線13及び銅素線23のそれぞれとはんだとの導電性を確保することができる。したがって、接続はんだ部sによって接続されたアルミ導体12と銅導体22との導電性を確保された接続部Jを構成することができる。
【0067】
また、アルミ導体12を構成するアルミ素線13と、銅導体22を構成する銅素線23とを、接続はんだ部sを構成するはんだを介在させた状態で接続するため、つまり、アルミ素線13と銅素線23とが直接接触しないため、仮に、接続はんだ部sに水分が付着したとしても、いわゆる電食(または、ガルバニック腐食ともいう)の集中的な発生を抑制することができる。
【0068】
詳しくは、アルミ素線13を構成するアルミ系材料と、アルミ系材料に対して、貴な金属といわれる標準電極電位が高い金属である銅素線23との接触により、卑な金属といわれる標準電極電位が低い金属であるアルミ系材料が腐食される現象、すなわち電食が問題となる。
【0069】
なお、電食とは、標準電極電位が高い金属と標準電極電位が低い金属とが接触している部位に水分が付着すると、腐食電流が生じ、標準電極電位が低い金属が腐食、溶解、消失等する現象である。この現象により、銅素線23に対して標準電極電位が低い金属であるアルミ素線13が腐食、溶解、消失し、やがては電気抵抗が上昇する。その結果、十分な導電機能を果たせなくなる。
【0070】
しかし、はんだを、アルミ素線13より融点が低く、アルミ素線13の耐食性以下の標準電極電位が低い金属であるZnを含む低融点且つ低耐食性のはんだで構成することにより、融点が低い低融点なはんだが、アルミ素線13の接続界面に形成された酸化膜を溶融するとともに、素線(13,23)の間に浸入して、接続信頼性の高い接続を実現することができる。
【0071】
また、はんだを、アルミ素線13より標準電極電位が低い金属であるZnを含む、つまりイオン化傾向の大きな金属を元素として含む低耐食性のはんだで構成することにより、低耐食性のはんだが犠牲材として機能するため、絶縁性の高い酸化被膜が形成されるアルミ素線13の表面を犠牲材で保護でき、腐食しやすいアルミ素線13の耐食性を向上し、長期にわたる接続信頼性の高い接続を実現することができる。
なお、犠牲材とは、塩水中(食塩水(塩化ナトリウム水溶液)中)において、アルミニウムよりも電極電位が小さいものをいい、ZnのみならずMgなども含まれる。
【0072】
具体的には、低融点で低耐食性なはんだとして、Sn−Zn系はんだ、あるいはZn−Al系はんだを用いることにより、例えば、塩水雰囲気などの過酷な環境において、Sn−Zn系はんだ、あるいはZn−Al系はんだで構成するはんだが犠牲材として機能し、腐食しやすいアルミ素線13の耐食性を向上し、長期にわたる接続信頼性の高い接続を実現することができる。
【0073】
なお、仮に、はんだ自体を、アルミ素線13を構成するアルミニウム系材料に対して標準電極電位が高い金属で構成されたSn−Ag系はんだやSn−Cu系はんだを用いた場合、はんだとアルミ素線13との接続界面で電食が生じて、アルミ素線13が腐食するおそれがあるが、Sn−Zn系はんだ、あるいはZn−Al系はんだを用いることで、電食が生じたとしても、犠牲材として機能するはんだが腐食し、もっとも導電性に影響のあるアルミ素線13の接続界面の腐食を防止し、アルミ導体12の耐食性を向上することで、導電性が低下することを防止できる。
【0074】
また、Sn−Zn系はんだ、あるいはZn−Al系はんだは、アルミ素線13や銅素線23との接続性が高いため、溶融金属接続部分の耐食性を向上することができる。
【0075】
また、接続電線組2では、アルミ電線10と銅電線20とを沿わせるとともに、アルミ電線露出部12aと銅電線露出部22aとを、同方向に向けて配置し、はんだで溶融金属接続することにより、銅電線露出部22aとアルミ電線露出部12aとの配置による素線へのダメージが少なく、長期信頼性の高い接続を実現することができる。
【0076】
また、アルミ電線露出部12a及び銅電線露出部22aを接続した接続電線組2を形成した接続部Jを絶縁キャップ30で覆うため、銅電線露出部22aとアルミ電線露出部12aとの接続部分における絶縁性を確保でき、不用意に接続部分がショートすることを防止できる。また、例えば、接続部分に水分が付着して電食が生じた場合であっても、アルミ素線13の接続界面における集中的な腐食を防止し、耐食性を向上し、長期にわたって、接続信頼性を持続させることができる。
【0077】
なお、図7に示すように、銅電線露出部22aとアルミ電線露出部12aとの接続部分とともに、絶縁キャップ30内に樹脂32を封入することによって、容易に防水処理を行うこともできる。
【0078】
また、接続はんだ部sを成型治具50で成型して溶融金属接続することにより、アルミ導体12と銅導体22との間隔を成型治具50で規制することができるため、アルミ導体12と銅導体22との間隔が広がりすぎて、アルミ導体12と銅導体22とを接続はんだ部sで接続できないという不具合が生じることなく、溶融金属接続することができる。
さらには、成型治具50で接続はんだ部sを成型するため、接続はんだ部sにおいて、はんだの肉厚が局所的に薄くなるなどの不具合が生じることなく、安定した溶融金属接続を実現できる。
【0079】
なお、上述の説明では、アルミ電線10のアルミ電線露出部12aと銅電線20の銅電線露出部22aとを、直接、はんだで溶融金属接続したが、予め、アルミ電線露出部12a及び銅電線露出部22aに予備はんだ処理を施して予備はんだ部12b,22bを形成してから、予備はんだ部12b,22bを、溶融金属接続してもよい。
【0080】
予備はんだ部12b,22bを備えた接続部J1の説明図である図5及び、予備はんだ部12b,22bの形成方法についての説明図である図6とともに、予備はんだ部12b,22bについて以下で詳しく説明する。
【0081】
なお、予備はんだ部12bは、アルミ電線10におけるアルミ電線露出部12aに対して仕様を満足する程度の長さ分形成し、同様に、予備はんだ部22bは、銅電線20における銅電線露出部22aに対して仕様を満足する程度の長さ分形成する。
【0082】
予備はんだ部12b,22bを形成するはんだは、接続はんだ部sを構成するはんだと同じ、アルミ導体12及び銅導体22の両方と相性のよいSn−Zn系はんだ、あるいはZn−Al系はんだを用いるが、接続はんだ部sを構成するはんだと、予備はんだ部12b,22bを構成するはんだとを、異なるはんだを用いてもよい。
【0083】
続いて、予備はんだ部12b,22bの形成方法について、図6に基づいて説明する。
例えば、アルミ電線10のアルミ電線露出部12aに予備はんだ部12bを形成するためには、アルミ電線露出部12aを、溶融はんだ漕100内において溶融状態の溶融はんだ101に、所定長さ分浸けた後(図6(b)参照)、図6(c)に示すように取り出して、はんだを硬化させて予備はんだ部12bを形成する。このとき、図6(e)に示すように、溶融した溶融はんだ101は、アルミ導体12のアルミ素線13の素線間にも浸入するため、堅牢な予備はんだ部12bを形成することができる。また、銅電線露出部22aに予備はんだ部22bを形成する場合も同様である。
【0084】
なお、図6(d)に示すような、予備はんだ部12b,22bを形成したアルミ電線10及び銅電線20を用いて接続部J1を構成する方法は、上述の接続部Jの形成方法と同様であるため、説明を省略する。
【0085】
このように、アルミ電線露出部12a及び銅電線露出部22aに、予備はんだ部12b,22bを形成することにより、さらに確実にはんだで溶融金属接続することができる。
詳しくは、アルミ導体12と銅導体22とでは、はんだで接続する接続条件が異なるものの、アルミ導体12及び銅導体22のそれぞれに、はんだで予備はんだ部12b,22bを形成することにより、予備はんだ部12b,22bが形成されたアルミ導体12及び銅導体22を、確実にはんだで溶融金属接続することができる。
【0086】
また、アルミ導体12及び銅導体22に予備はんだ部12b,22bを形成してから、アルミ導体12及び銅導体22をはんだで溶融金属接続するため、アルミ導体12と銅導体22とを直接、はんだで溶融金属接続に比べて、低エネルギで溶融金属接続することができ、アルミ導体12を構成するアルミ素線13と銅導体22を構成する銅素線23に作用する溶融金属接続のための負荷を低減することができる。また、アルミ導体12及び銅導体22の接続界面は、接続しやすい面によるはんだ同士の接続となり、また、アルミ導体12及び銅導体22を溶融金属接続するはんだとの接続性も高く、容易かつ確実に接続することができる。
【0087】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明の被覆銅線は、銅電線20に対応し、
以下同様に、
アルミニウム素線は、アルミ素線13に対応し、
アルミニウム導体は、アルミ導体12に対応し、
被覆アルミニウム線は、アルミ電線10に対応し、
溶融金属接続部は、接続はんだ部sに対応し、
接続金属は、はんだに対応し、
低融点金属成分、及び標準電極電位が低い金属は、Znに対応し、
予備溶融接続処理は、予備はんだ部12b,22bを形成する予備はんだ処理に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0088】
なお、上述の説明では、上述のはんだで溶融金属接続や予備はんだ処理を行ったが、硬ろうによるろう付けで行ってもよい。
また、接続はんだ部sの形成の際に、成型治具50を用いずに形成してもよい。
【0089】
また、幹線部1aに取り付ける接続電線組2を、1本ずつのアルミ電線10と銅電線20とで構成したが、これに限定されず、1本のアルミ電線10と複数本の銅電線20、複数本のアルミ電線10と1本の銅電線20、あるいは複数本のアルミ電線10と複数本の銅電線20とを接続してもよい。さらには、接続電線組2のみでワイヤーハーネス1を構成してもよい。
【0090】
さらには、アルミ素線13を撚ってアルミ導体12を構成し、銅素線23を撚って銅導体22を構成したが、単線で構成するアルミ導体12や銅導体22を用いてもよく、単線で構成する導体同士を接続する、あるいは素線で構成した導体と単線で構成する導体とを接続しても、上述の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0091】
1…ワイヤーハーネス
10…アルミ電線
11,21…絶縁被覆
12…アルミ導体
12a…アルミ電線露出部
12b,22b…予備はんだ部
13…アルミ素線
20…銅電線
22…銅導体
22a…銅電線露出部
23…銅素線
30…絶縁キャップ
50…成型治具
s…接続はんだ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7