【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、アルミニウム導体を絶縁被覆で被覆した被覆アルミニウム線と、銅導体を絶縁被覆で被覆した被覆銅線とで構成
されたワイヤーハーネスにおいて、前記絶縁被覆から露出する前記アルミニウム導体及び前記銅導体
が接続
されたワイヤーハーネスの接続構造であって、前記絶縁被覆から露出する前記アルミニウム導体及び前記銅導体
が、溶融させた接続金属
によって、該接続金属がこれら導体の間に介在した状態で溶融金属接続
され、前記接続金属が、前記アルミニウム導体の耐食性以下の耐食性である標準電極電位が低い金属を含む低耐食接続金属で構成されたことを特徴とする。
【0009】
上述の溶融した接続金属で溶融金属接続は、はんだによるはんだ付けや硬ろうによるろう付けとすることができ、さらには、アルミニウム及び銅の両方と相性の良いはんだや硬ろうとすることができる。
【0010】
この発明により、ワイヤーハーネスを構成する被覆アルミニウム電線及び被覆銅電線におけるアルミニウム導体及び銅導体を容易かつ確実に接続することができる。
詳述すると、ワイヤーハーネスを構成する被覆アルミニウム電線及び被覆銅電線におけるアルミニウム導体及び銅導体とを接続する場合、アルミニウム導体を構成するアルミ系材料は、銅導体を構成する銅系材料に対して標準電極電位が低い金属、つまり卑な金属(低耐食性金属ともいう)であるため、アルミニウム導体と銅導体とを接続すると、アルミニウム導体が腐食しやすく、一旦アルミニウム導体が腐食して、銅導体との接続状態が破壊されると、ち密で安定した絶縁性の高い酸化膜がアルミニウム導体表面に形成され導電性が低下する。
【0011】
これに対し、ワイヤーハーネスを構成する被覆アルミニウム電線及び被覆銅電線におけるアルミニウム導体及び銅導体とを、溶融した接続金属で溶融金属接続することにより、容易かつ確実に、長期信頼性の高い接続を実現することができる。
したがって、このように容易かつ確実に接続するため、アルミニウム導体の腐食が抑制され、接続部分における導電性を確保することができる。
【0012】
なお、本明細書において、界面とは液体や固体の相が他の均一な相と接している境界とし、表面とは空気と物体の界面とし、さらに、以下で用いる接続界面とは表面のうち他の物体と接続した界面としている。
【0013】
また上述したように、前記接続金属を、前記アルミニウム導体の耐食性以下の耐食性である標準電極電位が低い金属を含む低耐食接続金属で構成することにより、さらに長期信頼性の高い接続を実現することができる。詳しくは、前記接続金属を、前記アルミニウム導体の耐食性以下の耐食性である標準電極電位が低い金属、つまり、イオン化傾向の大きい金属を含む低耐食接続金属で構成することにより、低耐食接続金属が犠牲材として機能するため、絶縁性の高い酸化被膜が形成される接続界面を犠牲材で保護し、長期にわたる接続信頼性の高い接続を実現することができる。
【0014】
上述のアルミニウム導体の耐食性以下の耐食性である標準電極電位が低い金属とは、ZnやMgなどで構成することができる。
【0015】
この発明の態様として、前記接続金属は、Sn−Zn系はんだ、あるいはZn−Al系はんだで構成されたものである。
【0016】
この発明により、例えば、塩水雰囲気などの過酷な環境において、Sn−Zn系はんだ、あるいはZn−Al系はんだで構成する前記接続金属が犠牲材として機能し、腐食しやすい前記アルミニウム導体の耐食性を向上し、長期にわたる接続信頼性の高い接続を実現することができる。
【0017】
なお、仮に、はんだ自体を、アルミニウム導体を構成するアルミニウム系材料に対して標準電極電位が高い金属で構成されたSn−Ag系はんだやSn−Cu系はんだを用いた場合、はんだとアルミニウム導体との接続界面で電食が生じて、アルミニウム導体の接続界面が集中的に腐食するおそれがあるが、Sn−Zn系はんだ、あるいはZn−Al系はんだを用いることで、はんだとアルミニウム導体との接続界面における集中的な腐食を防止することができる。
また、Sn−Zn系はんだ、あるいはZn−Al系はんだは、銅導体やアルミニウム導体との接続性が高いため、溶融金属接続部分の耐食性を向上することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記アルミニウム導体と前記銅導体とを、これら導体の両先端部が、同方向を向き且つこれら導体の長手方向において略同位置に配置され、前記アルミニウム導体と前記銅導体とを溶融金属接続する溶融金属接続部が、この内部に前記アルミニウム導体と前記銅導体との両先端部が収まるように形成されたものである。
【0019】
また、この発明の態様として、溶融金属接続した前記アルミニウム導体及び前記銅導体は、絶縁キャップで覆われたものである。
この発明により、前記アルミニウム導体と前記銅導体との接続部分を絶縁キャップで覆うため、接続部分における絶縁性を確保でき、不用意に接続部分がショートすることを防止できる。また、例えば、接続部分に水分が付着して異種金属腐食(以下において電食という)が生じた場合であっても、アルミニウム導体の接続界面における集中的な腐食を防止し、耐食性を向上し、長期にわたって、接続信頼性を持続させることができる。また、前記アルミニウム導体と前記銅導体との接続部分とともに、樹脂を絶縁キャップ内に封入することによって、容易に防水処理を施してもよい。
【0020】
またこの発明の態様として、前記アルミニウム導体
が、アルミニウム素線を撚って構成
されるとともに、前記銅導体
が、銅素線を撚って構成
されたものである。
この発明により、前記アルミニウム導体及び前記銅導体を、より確実に接続することができる。
【0021】
詳述すると、銅素線を撚って構成した銅導体と、アルミニウム素線を撚って構成したアルミニウム導体とを接続する場合、導体を素線で構成しているため、接続界面が多くなり接続が困難となる。したがって、接続のための圧着圧力などのエネルギを大きくする必要があるが、素線自体は細いため、接続のためのエネルギによる負荷が作用すると損傷して、導電性が低下するおそれがある。また、接続界面が増えるということは、絶縁性の高い酸化膜が形成されやすく、導電性が低下するおそれが高くなる。これに対し、銅素線を撚って構成する銅導体と、アルミニウム素線を撚って構成するアルミニウム導体とを、溶融した接続金属で溶融金属接続することにより、例えば、抵抗溶接や超音波溶接で接続する場合のような素線に作用する負荷がなく、また、接続のためのエネルギを大きくすることなく、確実に、長期信頼性の高い接続を実現することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記アルミニウム素線及び前記銅素線のそれぞれと前記接続金属との接続界面の全面積が、各素線の断面積以上となるように設定
されたものである。
この発明により、接続金属との各素線の導電性を確保することができる。
【0023】
詳述すると、前記アルミニウム素線と接続金属との接続界面、及び前記銅素線と接続金属との接続界面には、反応層(合金層)が形成されるが、反応層の面積が、各素線の断面積より小さいと、接続界面における抵抗が増大し、各素線と接続金属との導電性が低下する。これに対し、反応層が形成される各素線と接続金属との接続界面の面積を各素線の断面積以上となるように設定したため、例えば、10mΩ以下というように、各素線と接続金属との接続界面における抵抗を小さくすることができ、各素線と接続金属との導電性を確保することができる。したがって、接続金属によって接続されたアルミニウム導体と銅導体との導電性を確保することができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記接続金属
が、前記アルミニウム導体より融点が低い低融点金属成分を含む低融点接続金属で構成
されたものである。
この発明により、アルミニウム素線の表面の溶融を抑制するとともに、融点が低い低融点接続金属が素線の間に浸入して、接続信頼性の高い接続を実現することができる
。
【0025】
また、この発明の態様として、前記アルミニウム導体及び前記銅導体のそれぞれ
が、溶融させた前記接続金属で予備溶融接続処理を施
されたものである。
上記予備溶融接続処理は、導体同士を溶融金属接続するために予め、導体に施す予備的な処理であり、溶融した前記接続金属で、素線で構成する前記アルミニウム導体及び前記銅導体のそれぞれを固める処理を施すことをいう。
【0026】
この発明により、さらに確実に溶融金属接続することができる。
詳しくは、前記アルミニウム導体と前記銅導体とでは、溶融した接続金属との溶融金属で接続する接続条件が異なるものの、前記アルミニウム導体及び前記銅導体のそれぞれに対して、溶融した前記接続金属で予備溶融接続処理を施すことにより、接続金属で予備溶融接続処理を施した前記アルミニウム導体及び前記銅導体を、確実に溶融した接続金属で確実に溶融金属接続することができる。
【0027】
また、各導体に対して予備溶融接続処理を施してから溶融金属接続するため、前記アルミニウム導体と前記銅導体とを直接溶融金属接続する場合に比べて、低エネルギで溶融金属接続することができ、前記アルミニウム導体と前記銅導体に対する溶融金属接続のための負荷を低減することができる。
【0028】
また、溶融金属接続する接続界面は、接続しやすい面同士による接続金属同士の接続となり、溶融金属接続する接続金属との接続性も高く、容易かつ確実に接続することができる。
なお、前記接続金属による予備溶融接続処理は、導体表面をわずかに溶融する処理、あるいは溶融しない処理であることを含む。
【0029】
また、この発明の態様として、前記アルミニウム導体と前記銅導体とを、長手方向が同方向となるように配置し、溶融金属接続することができる。
上述の同方向に向けて配置とは、先端側が同じ方向、あるいは反対方向となるように、略同方向となるように配置することを含む概念である。
この発明により、接続強度が高く、長期信頼性の高い接続を実現することができる
。
【0030】
また、この発明の態様として、前記接続金属
が、成型手段で成型して溶融金属接続
されたものである。
この発明により、アルミニウム導体と銅導体との間隔を成型手段で規制することができるため、アルミニウム導体と銅導体との間隔が広がりすぎて、アルミニウム導体と銅導体とを前記接続金属で接続できないという不具合が生じることなく、溶融金属接続することができる。
さらには、成型手段で接続金属を成型するため、接続部分において、接続金属が局所的に薄くなるなどの不具合が生じることなく、安定した溶融金属接続を実現できる。
【0031】
また、この発明は、アルミニウム導体を絶縁被覆で被覆した被覆アルミニウム線と、銅導体を絶縁被覆で被覆した被覆銅線とで構成するワイヤーハーネスにおいて、前記絶縁被覆から露出する前記アルミニウム導体及び前記銅導体を接続するワイヤーハーネスの接続方法であって、前記絶縁被覆から露出する前記アルミニウム導体及び前記銅導体を、
接続金属をこれら導体の間に介在させた状態で、溶融させた
該接続金属
によって溶融金属接続する溶融金属接続工程を行
い、前記溶融金属接続工程では、前記接続金属として、前記アルミニウム導体の耐食性以下の耐食性である標準電極電位が低い金属を含む低耐食接続金属を用いたことを特徴とする。
【0032】
この発明により、ワイヤーハーネスを構成する被覆アルミニウム電線及び被覆銅電線におけるアルミニウム導体及び銅導体を、溶融金属接続工程によって、容易かつ確実に接続することができる。
【0033】
この発明の態様として、前記アルミニウム導体と前記銅導体とを、これら導体の両先端部が同方向を向き且つこれら導体の長手方向において略同位置に配置する同方向配置工程を行うとともに、前記溶融金属接続工程に際して溶融した溶融した前記接続金属を、成型手段で成型する成型工程を行い、前記成型工程では、前記成型手段を、その内周面が前記アルミニウム導体及び前記銅導体との間隔を空けた配置で前記アルミニウム導体及び前記銅導体の外側に遊嵌することができる。
【0034】
この発明により、接続強度が高く、溶融した接続金属を成型手段で成型するため、安定した溶融金属接続を実現できる。
【0035】
またこの発明の態様として、前記成型工程では、前記アルミニウム導体及び前記銅導体の両先端部が前記成型手段の内部に収まった配置で前記接続金属を成形することができる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記アルミニウム導体を、アルミニウム素線を撚って構成するとともに、前記銅導体を、銅素線を撚って構成することができる。
この発明により、前記アルミニウム導体及び前記銅導体を、より確実に接続することができる。
【0037】
詳しくは、溶融金属接続工程において、アルミニウム電線における絶縁被覆から露出するアルミニウム導体と、被覆銅電線における絶縁被覆から露出する銅導体とを、溶融した接続金属で溶融金属接続することにより、例えば、抵抗溶接や超音波溶接で接続する場合のような素線に作用する負荷がなく、容易かつ確実に、長期信頼性の高い接続を実現することができる。
【0038】
また、このように、容易かつ確実に接続するため、表面に電気抵抗の高い酸化膜が形成されるアルミニウム素線と銅素線とを確実に接続し、接続部分における導電性を確保することができる。
【0039】
またこの発明の態様として、前記アルミニウム素線及び前記銅素線のそれぞれと前記接続金属との接続界面の全面積が、各素線の断面積以上となるように設定することができる。
この発明により、接続金属との各素線の導電性を確保することができる。
【0040】
また、この発明の態様として、前記溶融金属接続工程の前に、前記アルミニウム導体及び前記銅導体のそれぞれを、溶融した前記接続金属で予備溶融接続処理を施す予備溶融接続処理工程を行うことができる。
この発明により、さらに確実に溶融金属接続することができる。
【0041】
詳しくは、前記アルミニウム導体と前記銅導体とでは、溶融した接続金属との溶融金属で接続する接続条件が異なるものの、予備溶融接続処理工程において、前記アルミニウム導体及び前記銅導体のそれぞれに対して、溶融した前記接続金属で予備溶融接続処理を施すことにより、接続金属で予備溶融接続処理を施した前記アルミニウム導体及び前記銅導体を、溶融した接続金属で接続信頼性の高い溶融金属接続を実現することができる。
【0042】
また、各導体に対して予備溶融接続処理工程を施してから溶融金属接続工程を行うため、前記アルミニウム導体と前記銅導体とを直接溶融金属接続する場合に比べて、低エネルギで溶融金属接続することができ、前記アルミニウム導体と前記銅導体に対する溶融金属接続のための負荷を低減することができる。また、溶融金属接続する接続界面は、予備溶融接続処理によって、接続しやすい面同士による接続金属同士の接続となり、溶融金属接続する接続金属との接続性も高く、容易かつ確実に接続することができる
。