(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097639
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C11D 1/62 20060101AFI20170306BHJP
C11D 3/04 20060101ALI20170306BHJP
C11D 1/86 20060101ALI20170306BHJP
C11D 1/94 20060101ALI20170306BHJP
C11D 1/75 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
C11D1/62
C11D3/04
C11D1/86
C11D1/94
C11D1/75
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-121545(P2013-121545)
(22)【出願日】2013年6月10日
(65)【公開番号】特開2014-237777(P2014-237777A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(73)【特許権者】
【識別番号】593085808
【氏名又は名称】ADEKAクリーンエイド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】森下 望
【審査官】
古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−534596(JP,A)
【文献】
特開2004−161940(JP,A)
【文献】
特表平10−507469(JP,A)
【文献】
特表平11−500180(JP,A)
【文献】
特開2004−231959(JP,A)
【文献】
特開昭62−070495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/62
C11D 1/75
C11D 1/86
C11D 1/94
C11D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン化合物又は水酸化アルカリ金属塩から選択される1種又は2種以上のアルカリ剤(A)、下記の一般式(1)で表される第四級アンモニウム化合物(B)、アニオン界面活性剤(C)、炭素数
14の炭化水素基を有するジメチルアミンオキサイド(D)、及び金属イオン封鎖剤(E)を含有する、
垂直面を洗浄するための硬質表面用洗浄剤組成物。
【化1】
(式中、R
1〜R
3は炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す、但し、R
1〜R
3のいずれか1つ以上は炭素数8〜18のアルキル基でなければならない。)
【請求項2】
前記炭素数14の炭化水素基を有するジメチルアミンオキサイド(D)がテトラデシルジメチルアミンオキサイドである、請求項1に記載の垂直面を洗浄するための硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項3】
アミン化合物又は水酸化アルカリ金属から選択される1以上のアルカリ剤(A)10質量部に対して、一般式(1)で表される第四級アンモニウム化合物(B)が0.5〜30質量部、アニオン界面活性剤(C)が1〜50質量部、炭素数14の炭化水素基を有するジメチルアミンオキサイド(D)が0.5〜30質量部、金属イオン封鎖剤(E)が0.5〜30質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の垂直面を洗浄するための硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項4】
更に、アルカリ剤(A)10質量部に対して、可溶化剤(F)を0.1〜30質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項5】
更に、アルカリ剤(A)10質量部に対して、両性界面活性剤(G)を0.01〜5質量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の垂直面を洗浄するための硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記一般式(1)のR1〜R3のいずれか1つのみが炭素数8〜18のアルキル基であり、他の2つが炭素数1〜3のアルキル基の第四級アンモニウム化合物(B)である、請求項1〜5のいずれかに記載の垂直面を洗浄するための硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかに記載の垂直面を洗浄するための硬質表面用洗浄剤組成物を被洗浄物に塗布し、10分以上放置した後に水ですすぐことを特徴とする洗浄方法。
【請求項8】
前記垂直面を洗浄するための硬質表面用洗浄剤組成物が水で最大100倍まで希釈される、請求項7に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に食品製造現場や台所で使用することができる、洗浄効果及び除菌効果が高く、且つ不快な臭気のない洗浄剤組成物及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品製造現場や台所に使用される洗剤には、高い洗浄効果が要求されるが、食中毒やその他の病原菌への対策として除菌効果も要求されている。また、こうした洗浄剤は垂直面に使用される場合も多く、垂直面からの液だれを防ぐために、一定の粘度を付与することも必要である。
【0003】
こうした要求を満たすために、従来、洗浄成分としてアニオン界面活性剤、一定の粘度を付与するためにアミンオキサイド、更に除菌効果を付与するために次亜塩素酸ナトリウム等の塩素化合物を配合した洗浄剤が使用されてきた(例えば、特許文献1〜3を参照)。アミンオキサイドはアニオン界面活性剤とコンプレックスを形成してチクソトロピー性の増粘物を得ることができる。しかしながら除菌性を付与するために添加されている次亜塩素酸ナトリウム等には刺激臭があり、使用者を不快な気分にさせるだけでなく、密閉空間での使用により使用者の健康面での悪影響も指摘されている。
【0004】
そこで、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素化合物を使用せずに除菌効果を得るために、カチオン界面活性剤の使用が検討されてきた。ほとんどのカチオン界面活性剤は一定の除菌効果を持っているが、アニオン界面活性剤とアミンオキサイドが配合された系に通常のカチオン界面活性剤を添加すると、アニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤との間にコンプレックスが生じ、洗浄効果が低下し、更に系の粘度も低下してしまう。一方、アニオン界面活性剤を使用せず、カチオン界面活性剤とアミンオキサイドからなる系では、十分な洗浄効果を得ることができない。また、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素化合物やカチオン界面活性剤以外の除菌剤は、除菌効果が弱い場合や人体に対して刺激性が強い場合、あるいは洗浄剤の原料として使用するには高価で現実的でない場合があり、食品等を扱う場所の洗浄剤の原料として使用するには不適当であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−256798号公報
【特許文献2】特開平11−036000号公報
【特許文献3】特開2005−281651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明が解決しようとする課題は、高い洗浄効果と除菌効果を有し、更に不快な臭気を有さず、垂直面の洗浄に適した一定の粘度を有する洗浄剤組成物及びその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者等は鋭意検討し、本発明に至った。即ち、本発明は、アミン化合物又は水酸化アルカリ金属塩から選択される1種以上のアルカリ剤(A)、下記の一般式(1)で表される第四級アンモニウム化合物(B)、アニオン界面活性剤(C)、炭素数
14の炭化水素基を有するジメチルアミンオキサイド(D)、及び金属イオン封鎖剤(E)を含有する、
垂直面を洗浄するための硬質表面用洗浄剤組成物である。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R
1〜R
3は炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す、但し、R
1〜R
3のいずれか1つ以上は炭素数8〜18のアルキル基でなければならない。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果は、高い洗浄効果と除菌効果を有し、更に不快な臭気を有さず、垂直面の洗浄に適した一定の粘度を有する洗浄剤組成物及びその使用方法を提供したことにある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に使用するアルカリ剤(A)は、アミン化合物あるいは水酸化アルカリ金属塩から選択される。アミン化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。これらの中でも、臭気が低いことから、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミンが好ましい。
【0012】
水酸化アルカリ金属塩としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。これらの中でも容易に入手でき安価なことから、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。なお、これらのアルカリ剤は1種または2種以上を併用してもよい。
【0013】
本発明に使用する第四級アンモニウム化合物(B)は、下記の一般式(1)で表すことができる。
【0015】
(式中、R
1〜R
3は炭素数1〜18のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す、但し、R
1〜R
3のいずれか1つ以上は炭素数8〜18のアルキル基でなければならない。)
【0016】
R
1〜R
3は炭素数1〜18のアルキル基を表すが、こうしたアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、イソウンデシル基、ドデシル基、イソドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基等が挙げられる。また、R
1〜R
3のいずれか1つ以上は炭素数8〜18のアルキル基でなければならない。R
1〜R
3が全て炭素数7以下のアルキル基の場合、効果的な除菌効果を得ることができない。更に、R
1〜R
3の中で炭素数8〜18のアルキル基は1つであることが好ましい。また、それ以外のアルキル基は炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0017】
Xはハロゲン原子を表す。使用できるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、汎用性が高いことから塩素原子または臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。具体的には、ラウリルジメチルハイドロキシエチルアンモニウムクロライド(塩化モノドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム)、ミリスチルジメチルハイドロキシエチルアンモニウムクロライド(塩化モノテトラデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム)などが挙げられる。そして、これらは単独で用いても、または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
第四級アンモニウム化合物は、一般式(1)で表される化合物以外にも多数存在する。一般式(1)以外の第四級アンモニウム化合物でも一般的に除菌効果を有しているが、本発明に使用すると、アニオン界面活性剤とジメチルアミンオキサイドとのコンプレックスによって増粘した系が、一般式(1)以外の第四級アンモニウム化合物による新たなコンプレックスによって阻害され、粘度が極端に低くなり、垂直面の洗浄に適した洗浄剤が得られなくなるとともに、洗浄効果も悪化する。
【0019】
本発明に使用するアニオン界面活性剤(C)は、洗浄剤として一般的に使用されているアニオン界面活性剤でよく、例えば、高級脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、硫酸化オレフィン塩、高級アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、硫酸化脂肪酸塩、スルホン化脂肪酸塩、リン酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、グリセライド硫酸エステル塩、脂肪酸エステルのスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩、スルホコハク酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸塩、N−アシル−N−メチルタウリンの塩、N−アシルグルタミン酸又はその塩、アシルオキシエタンスルホン酸塩、アルコキシエタンスルホン酸塩、N−アシル−β−アラニン又はその塩、N−アシル−N−カルボキシエチルタウリン又はその塩、N−アシル−N−カルボキシメチルグリシン又はその塩、アシル乳酸塩、N−アシルサルコシン塩、及びアルキル又はアルケニルアミノカルボキシメチル硫酸塩等の1種または2種以上の混合物を挙げることができる。これらの中でも洗浄力が高いことから、炭素数10〜20の硫酸エステル塩及びスルホン酸塩が好ましく、直鎖もしくは分岐の炭素数10〜20の硫酸エステル塩及びスルホン酸塩がより好ましく、加水分解しないスルホン酸塩が更に好ましい。また、キシレンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、クメンスルホン酸塩、サリチル酸塩、安息香酸塩、ジメチル安息香酸塩等は可溶化剤としての性質も持つ。これらの可溶化剤は洗浄剤の系全体を均一化し、系全体の安定性に寄与する効果を持つので、洗浄性の高いアニオン界面活性剤と併用することが好ましい。併用する場合は、可溶化剤をアニオン界面活性剤(C)とは別に考え、アルカリ剤(A)10質量部に対して可溶化剤を0.1〜30質量部配合することが好ましい。なお、塩の対イオンとしては、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられ、中でもナトリウム塩及びカリウム塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0020】
本発明に使用するジメチルアミンオキサイド(D)は、炭素数12〜18の炭化水素基を有するジメチルアミンオキサイドである。こうしたジメチルアミンオキサイドとしては、例えば、ドデシルジメチルアミンオキサイド、トリデシルジメチルアミンオキサイド、テトラデシルジメチルアミンオキサイド、ペンタデシルジメチルアミンオキサイド、ヘキサデシルジメチルアミンオキサイド、ヘプタデシルジメチルアミンオキサイド、オクタデシルジメチルアミンオキサイド等のアルキルジメチルアミンオキサイド;ドデセニルジメチルアミンオキサイド、トリデセニルジメチルアミンオキサイド、テトラデセニルジメチルアミンオキサイド、ペンタデセニルジメチルアミンオキサイド、ヘキサデセニルジメチルアミンオキサイド、ヘプタデセニルジメチルアミンオキサイド、オクタデセニルジメチルアミンオキサイド等のアルケニルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。これらの中でも汎用性が高く垂直面の洗浄に適した粘度が得られることから、炭素数12〜14のアルキルジメチルアミンオキサイドが好ましく、炭素数14のアルキルジメチルアミンオキサイドがより好ましい。
【0021】
本発明に使用する金属イオン封鎖剤(E)としては、公知のキレート剤であれば種類を選ばず、例えば、ニトリロ三酢酸塩、トリポリリン酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、グルタミン酸二酢酸塩、メチルグリシン二酢酸塩、グルコン酸塩、オルトリン酸塩、ピロリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸塩、ジエチレントリアミノ五酢酸塩、トリエチレンテトラアミン六酢酸塩、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸塩、ジヒドロキシエチルグリシン、アスパラギン酸二酢酸塩、β-アラニン二酢酸塩、セリン二酢酸塩およびこれらのキレート剤の2種以上の混合物等が挙げられる。これらの中でも、洗浄効果が良好なことからニトリロ三酢酸塩、トリポリリン酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、グルタミン酸二酢酸塩、メチルグリシン二酢酸塩およびグルコン酸塩が好ましく、ニトリロ三酢酸塩、トリポリリン酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、グルタミン酸二酢酸塩がより好ましい。なお、これらのキレート剤の塩となる対イオンは、ナトリウムまたはカリウムが好ましく、汎用性が高いことからナトリウムであることがより好ましい。
【0022】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、上記(A)〜(E)成分を任意の割合で含有するものであるが、洗浄力、除菌効果及び垂直面での洗浄性等が良好なことから、各成分を特定の割合で含有することが好ましい。
【0023】
具体的には、アルカリ剤(A)10質量部に対して、第四級アンモニウム化合物(B)が0.5〜30質量部、アニオン界面活性剤(C)が1〜50質量部、炭素数12〜18の炭化水素基を有するジメチルアミンオキサイド(D)が0.5〜30質量部、金属イオン封鎖剤(E)が0.5〜30質量部である必要があるが、アルカリ剤(A)10質量部に対して、第四級アンモニウム化合物(B)が1〜15質量部、アニオン界面活性剤(C)が3〜25質量部、炭素数12〜18のジメチルアミンオキサイド(D)が1〜15質量部、金属イオン封鎖剤(E)が1〜15質量部であることが好ましい。
【0024】
第四級アンモニウム化合物(B)が0.5質量部未満になると良好な除菌効果が得られず、30質量部を超えると垂直面の洗浄に適した粘度を付与することができない。アニオン界面活性剤(C)が1質量部未満になると良好な洗浄効果が得られず、50質量部を超えると垂直面の洗浄に適した粘度を付与することができない。炭素数12〜18の炭化水素基を有するジメチルアミンオキサイド(D)が0.5質量部未満になると、垂直面の洗浄に適した粘度を付与することができず、30質量部を超えても垂直面の洗浄に適した粘度を付与することができない。金属イオン封鎖剤が0.5質量部未満になると良好な洗浄効果が得られず、30質量部を超えると配合量に見合った効果が得られない。
【0025】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物の具体的な配合量は、上記の割合であれば特に規定されないが、組成物全量に対して、アミン化合物又は水酸化アルカリ金属から選択される1以上のアルカリ剤(A)が0.1〜10質量%、一般式(1)で表される第四級アンモニウム化合物(B)が0.1〜10質量%、アニオン界面活性剤(C)が0.1〜10質量%、炭素数12〜18のジメチルアミンオキサイド(D)が0.1〜10質量%、金属イオン封鎖剤(E)が0.1〜10質量%及び水を含有することが好ましい。
【0026】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、製品安定性を向上させるために、更に(F)成分として可溶化剤を含有させることが好ましい。可溶化剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、(モノ、ジ、トリ)エチレングリコール(モノ、ジ、トリ)プロピレングリコールモノメチルエーテル、(モノ、ジ、トリ)エチレングリコール(モノ、ジ、トリ)プロピレングリコールモノエチルエーテル、(モノ、ジ、トリ)エチレングリコール(モノ、ジ、トリ)プロピレングリコールモノプロピルエーテル、(モノ、ジ、トリ)エチレングリコール(モノ、ジ、トリ)プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール系溶剤が挙げられる。これらの中でもグリコール系溶剤が好ましい。これらの可溶化剤は、アルカリ剤(A)10質量部に対して、可溶化剤(F)を0.1〜30質量部含有させることが好ましく、1〜15質量部含有させることがより好ましい。
【0027】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、洗浄性を向上させるために、更に(G)成分として両性界面活性剤を含有させることが好ましい。両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジエチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、オレイルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等のアルキルベタイン型両性界面活性剤;N−ヤシ脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム(2−ヤシアルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン)、N−ヤシ脂肪酸アシル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N−牛脂脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N−牛脂脂肪酸アシル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリウムベタイン型両性界面活性剤;ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ステアリン酸アミドプロピルベタイン、オレイン酸アミドプロピルベタイン等のアミドプロピルベタイン型両性界面活性剤;ラウリルアミノプロピオン酸塩、オレイルアミノプロピオン酸塩、ラウリルアミノジプロピオン酸塩、オレイルアミノジプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤が挙げられる。なお、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。これらの両性界面活性剤の中でも、洗浄性に優れることから、アミノ酸型両性界面活性剤が好ましい。これらの両性界面活性剤は、アルカリ剤(A)10質量部に対して、両性界面活性剤(G)を0.01〜5質量部含有させることが好ましく、0.1〜2質量部含有させることがより好ましい。
【0028】
具体的な洗浄方法としては、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を1〜100倍に希釈した原液又は希釈液を被洗浄物に塗布し、10分以上、好ましくは30分以上放置して、洗浄成分を被洗浄物に付着した汚れに十分浸透させた後に水ですすげばよい。
【0029】
本発明の硬質洗浄剤組成物は、原液あるいは水で希釈して使用することができる。水で希釈する場合は、任意の希釈率で希釈して使用することができるが、希釈率が高すぎると良好な洗浄効果が得られないため、アルカリ剤が0.01〜1質量%になるように希釈することが好ましい。
具体的な希釈率としては、1〜100倍に希釈(希釈率1は原液)することが好ましい。
【0030】
本発明の硬質洗浄剤組成物は、洗浄剤に使用できる公知の添加剤の添加を拒むものではなく、本発明の効果を損なわない範囲内で使用目的に応じて、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸マレイン酸コポリマー及びこれらの塩等のポリカルボン酸あるいはポリカルボン酸塩;硫酸ナトリウム(芒硝)、硫酸カリウム等の無機塩;硫酸アンモニウム、尿素、塩酸グアジニン、炭酸グアジニン、スルファミン酸グアジニン、二酸化チオ尿素、モノエタノールアミン等の塩素捕捉剤、色素、香料等を配合することができる。
【実施例】
【0031】
以下本発明を実施例により、具体的に説明する。
<使用サンプル>
下記のサンプルを使用して各種試験を行った。サンプルの配合は表1及び表2に記載する。
A−1:水酸化ナトリウム
A−2:モノイソプロパノールアミン
B−1:塩化モノドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム
B−2:塩化モノテトラデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム
B’−1:次亜塩素酸ナトリウム
B’−2:塩化ジデシルジメチルアンモニウム
【0032】
C−1:αオレフィンスルホン酸ナトリウム
C−2:ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム
D−1:ドデシルジメチルアミンオキサイド
D−2:テトラデシルジメチルアミンオキサイド
E−1:エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム
E−2:グルタミン酸二酢酸ナトリウム
F−1:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
F−2:プロピレングリコール
G−1:βラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム
G−2:ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン
【0033】
実施例1〜25、比較例1〜6
表1〜2に示す配合に基づき硬質表面用洗浄剤組成物を調製した。各高濃度洗浄剤組成物の洗浄性、泡保持性、除菌性、臭気を以下に示す方法で測定した結果を、表1〜2にあわせて示す。尚、表中における実施例および比較例の数値は純分の質量%を表す。
また、実施例22は参考例である。
【0034】
<試験>
下記の方法で各種試験を行った。試験結果は表1及び表2に記載する。なお、試験に使用した洗浄剤は、表1及び表2に配合を記載した組成を有する洗浄剤を固形分5質量%となるように水で希釈したものである。
【0035】
(洗浄性)
テストピース(SUS304、10×5cm)にモデル汚れ(牛脂と大豆油とを体積比1:1で混合した油脂20g、モノオレイン酸グリセリンエステル0.25g及びオレイン酸レッド0.1gをクロロホルム60mlに均一溶解して調製したもの)を塗布し、25℃、2時間乾燥したものを試験片とした。各5質量%洗浄剤希釈液を試験片に吹き付け、5分後にすすぎを実施し、その時の汚れの落ち具合(汚れが除去された面積)を目視により以下の基準で評価した。
◎:汚れが完全に除去された(目視で100%の除去率)
○:汚れがほぼ除去された(95%以上除去率)
△:汚れがわずかに残る(85〜95%未満の除去率)
×:汚れの除去が不十分である(85%未満の除去率)
【0036】
(垂直面の泡保持性)
各5質量%洗浄剤希釈液をエアー駆動式ダイアフラムポンプを備えた泡洗浄剤用洗浄装置を用いて垂直面に設置したステンレス板(2m×2m)へ発泡を行い、3分経過後の泡の保持(泡が残っている面積)を目視により以下の基準で評価した。
○:泡の保持が85%以上ある
△:泡の保持が70〜85%未満である
×:泡の保持が70%未満である
【0037】
(除菌性)
防菌防黴ハンドブック(日本防菌防黴学会編、技報堂出版)のp.686に記載されている浮遊試験法(定量的検査法)に準じて除菌力を評価した。具体的には、試験薬剤10ml中に10
8〜10
10cfu/mlの大腸菌浮遊液100μlを加え、良く混合した後所定時間放置する。続いて、その混合液100μlを10mlのSCDLP液体培地中に加え、良く混合し37℃で48時間培養後、培地の混濁状況を目視判定した。
○:培地が濁っていない。
×:培地が濁っている。
【0038】
(臭気)
各5重量%洗浄剤希釈液2Lをエアー駆動式ダイアフラムポンプを備えた泡洗浄剤用洗浄装置を用いて垂直面に設置したステンレス板(2m×2m)へ発泡を行った。この時、雰囲気中の臭気を5人のパネラーにて5段階の評価(5:ほとんど臭わない、4:わずかに臭う、3:臭う、2:強い不快臭、1:激しい不快臭)を行い、全パネラーの評価の平均点より以下の基準で評価した。
○:平均点3以上
×:平均点3未満
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】