(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶性化合物は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶性化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と略すことがある。液晶表示素子は、液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。透明点は、液晶性化合物における液晶相−等方相の転移温度である。液晶相の下限温度は、液晶性化合物における固体−液晶相(スメクチック相、ネマチック相など)の転移温度である。ネマチック相の上限温度は、液晶組成物におけるネマチック相−等方相の転移温度であり、上限温度と略すことがある。ネマチック相の下限温度を下限温度と略すことがある。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と略すことがある。この略記は式(2)などで表される化合物にも適用することがある。式(1)から(14)において、六角形で囲んだA
1、B
1、C
1などの記号はそれぞれ環A
1、環B
1、環C
1などに対応する。複数のR
2を同一の式または異なった式に記載した。これらの化合物において、任意の2つのR
2が表わす2つの基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。このルールは、環A
1、Z
1などの記号にも適用される。百分率で表した化合物の量は、組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。
【0018】
「少なくとも1つの"A"は、"B"で置き換えられてもよい」の表現は、"A"が1つのとき、"A"の位置は任意であり、"A"の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できることを意味する。「少なくとも1つのAが、B、CまたはDで置き換えられてもよい」という表現は、任意のAがBで置き換えられる場合、任意のAがCで置き換えられる場合、および任意のAがDで置き換えられる場合、さらに複数のAがB、C、Dの少なくとも2つで置き換えられる場合を含むことを意味する。例えば、少なくとも1つの−CH
2−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルが含まれる。なお、連続する2つの−CH
2−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。アルキルなどにおいて、メチル部分(−CH
2−H)の−CH
2−が−O−で置き換えられて−O−Hになることも好ましくない。
【0019】
2−フルオロ−1,4−フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向き(L)であってもよいし、右向き(R)であってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルのような、非対称の二価の環にも適用される。
【0020】
【化3】
本発明は、下記項1〜項17に記載された内容を包含する。
項1. 式(1)で表される化合物。
【0021】
【化4】
(式中、
R
1は、炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH
2)
2−は−CH=CH−で置き換えられてもよく;
環A
1、環A
2および環A
3は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、水素がハロゲンで置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;
Z
1およびZ
3は独立して、単結合、−(CH
2)
2−、−CH=CH−、−CF
2O−、−CH
2O−、−CF=CF−、−(CH
2)
2CF
2O−、−CH=CHCF
2O−、−CF
2O(CH
2)
2−、−CF
2OCH=CH−、−CH=CH−(CH
2)
2−または−(CH
2)
2−CH=CH−であり;
Z
2は、−CF
2O−であり;
L
1、L
2およびL
3は独立して、水素またはハロゲンであり;
mおよびnは独立して、0、1、2または3であり、mとnの和は、0、1、2または3であり、mまたはnが2または3であるとき、複数の環A
1または環A
3は同一であっても異なってもよく、複数のZ
1またはZ
3は同一であっても異なってもよい。
【0022】
但し、環A
2が1,4−フェニレンまたは1つの水素がハロゲンで置換された1,4−フェニレンであり、m=1であり、かつn=0であるとき、環A
1は、水素がハロゲンで置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;
m+n=0であるとき、環A
2は1,4−シクロヘキシレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルである。)
項2. R
1が、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数2〜20のアルケニルであり;
環A
1、環A
2および環A
3が独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;
Z
1およびZ
3が独立して、単結合、−CH=CH−または−CF
2O−であり;
L
1、L
2およびL
3が独立して、水素またはフッ素である、項1に記載の化合物。
【0023】
項3. m=1または2である、項1または2に記載の化合物。
項4. 環A
2が、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである、項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【0024】
項5. Z
1が単結合である、項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
項6. n=0である、項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
項7. 式(1−1)〜式(1−6)のいずれか1つで表される化合物。
【0025】
【化5】
(式中、R
2は炭素数1〜5のアルキル、炭素数2〜6のアルケニルまたは炭素数1〜5のアルコキシであり;
L
1'、L
2'、L
3'、L
4、L
5、L
6およびL
7は独立して水素またはフッ素である。)
項8. 式(1−7)〜式(1−12)のいずれか1つで表される化合物。
【0026】
【化6】
(式中、R
2は炭素数1〜5のアルキル、炭素数2〜6のアルケニルまたは炭素数1〜5のアルコキシであり;
L
1'、L
2'、L
3'、L
4、L
5、L
6、L
7、L
8およびL
9は独立して水素またはフッ素である。)
項9. 項1〜8のいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1つを含有する液晶組成物。
【0027】
項10. 式(2)〜(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項9に記載の液晶組成物。
【0028】
【化7】
(式中、
R
3は、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく;
X
1は、フッ素、塩素、−OCF
3、−OCF
2H、−CF
3、−CHF
2、−CH
2F、−CF=CF
2、−OCF
2CHF
2または−OCF
2CHFCF
3であり;
環B
1、環B
2および環B
3は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルまたはピリミジン−2,5−ジイルであり;
Z
4およびZ
5は独立して、単結合、−(CH
2)
2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2O−または−(CH
2)
4−であり、Z
4およびZ
5は同時に−CF
2O−または−OCF
2−であることはなく;
L
10およびL
11は独立して、水素またはフッ素である。)
項11. 式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項9に記載の液晶組成物。
【0029】
【化8】
(式中、
R
4は、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく;
X
2は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環C
1、環C
2および環C
3は独立して、1,4−シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルまたはピリミジン−2,5−ジイルであり;
Z
6は、単結合、−(CH
2)
2−、−C≡C−、−COO−、−CF
2O−、−OCF
2−または−CH
2O−であり;
L
12およびL
13は独立して、水素またはフッ素であり;
pは、0、1または2であり、qは0または1であり、pとqの和は、0、1、2または3である。)
項12. 式(6)〜(11)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項9に記載の液晶組成物。
【0030】
【化9】
(式中、
R
5およびR
6は独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく;
環D
1、環D
2、環D
3および環D
4は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルまたはデカヒドロ−2,6−ナフタレンであり;
Z
7、Z
8、Z
9およびZ
10は独立して、単結合、−(CH
2)
2−、−COO−、−CH
2O−、−OCF
2−または−OCF
2(CH
2)
2−であり;
L
14およびL
15は独立して、フッ素または塩素であり;
j、k、l、s、tおよびuは独立して、0または1であり、k、l、sおよびtの和は、1または2である。)
項13. 式(12)〜(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項9〜12のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0031】
【化10】
(式中、
R
7およびR
8は独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく;
環E
1、環E
2および環E
3は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンまたはピリミジン−2,5−ジイルであり;
Z
11およびZ
12は独立して、単結合、−(CH
2)
2−、−CH=CH−、−C≡C−または−COO−である。)
【0032】
項14. R
7およびR
8が独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよいものである、項13に記載の液晶組成物。
項15. 少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有する、項9に記載の液晶組成物。
項16. 少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤をさらに含有する、項9に記載の液晶組成物。
項17. 項9〜16のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
本発明の化合物、液晶組成物、液晶表示素子について、順に説明する。
【0033】
1−1.化合物(1)
本発明の化合物は、2、2−ジフルオロビニルオキシ基と−CF
2O−を構造中に持つことにより、小さな粘度で大きな誘電率異方性、高い透明点といった効果を発現する。
【0034】
本発明の化合物(1)、化合物(1)の好ましい例について説明をする。化合物(1)における末端基、環構造、結合基、および置換基の好ましい例は、化合物(1)の下記式にも適用される。
【0035】
【化11】
式(1)において、R
1は、炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH
2)
2−は−CH=CH−で置き換えられてもよい。
【0036】
これらの基は、直鎖であり、シクロヘキシルのような環状基を含まない。これらの基が直鎖であるときは、化合物の液晶相の温度範囲が広く、粘度が小さい。
アルキルとしては、通常炭素数1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜5の直鎖のものが挙げられ、具体的には、−CH
3、−C
2H
5、−C
3H
7、−C
4H
9、−C
5H
11、−C
6H
13、−C
7H
15、−C
8H
17、−C
9H
19、−C
10H
21、−C
11H
23、−C
12H
25、−C
13H
27、−C
14H
29および−C
15H
31である。
【0037】
このアルキルにおいて少なくとも1つの−(CH
2)
2−が−CH=CH−で置き換えられたものとしては、例えばアルケニルが挙げられる。当該アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH
3、−CH=CHC
2H
5、−CH=CHC
3H
7、−CH=CHC
4H
9、−C
2H
4CH=CHCH
3および−C
2H
4CH=CHC
2H
5のような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。−CH
2CH=CHCH
3、−CH
2CH=CHC
2H
5および−CH
2CH=CHC
3H
7のような偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い透明点または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109 および Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327、に詳細な説明がある。
【0038】
アルケニルとしては、通常炭素数2〜20、好ましくは2〜15、より好ましくは2〜6のものが挙げられ、具体的には、−CH=CH
2、−CH=CHCH
3、−CH
2CH=CH
2、−CH=CHC
2H
5、−CH
2CH=CHCH
3、−(CH
2)
2−CH=CH
2、−CH=CHC
3H
7、−CH
2CH=CHC
2H
5、−(CH
2)
2−CH=CHCH
3および−(CH
2)
3−CH=CH
2である。
【0039】
このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH
2−が−O−で置き換えられたものとしては、例えばアルコキシ、アルコキシアルキルが挙げられる。当該アルコキシとしては、通常炭素数1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜5のものが挙げられ、具体的には、−OCH
3、−OC
2H
5、−OC
3H
7、−OC
4H
9、−OC
5H
11、−OC
6H
13、−OC
7H
15、−OC
8H
17、−OC
9H
19、−OC
10H
21、−OC
11H
23、−OC
12H
25、−OC
13H
27、−OC
14H
29および−OC
15H
31である。当該アルコキシアルキルとしては、例えば上記アルキル中に1つの酸素原子が導入されたものが挙げられ、通常炭素数2〜20、好ましくは2〜15、より好ましくは2〜6のものが挙げられ、具体的には、−CH
2OCH
3、−CH
2OC
2H
5、−CH
2OC
3H
7および−(CH
2)
2OC
2H
5である。
【0040】
R
1で示されるアルキルは、該アルキルにおける少なくとも1つの−(CH
2)
2−が−CH=CH−で置き換えられ、且つ、該アルキルにおける少なくとも1つの−CH
2−が−O−で置き換えられたものも含まれ、このような具体例としては、−OCH
2CH=CH
2および−OCH
2CH=CHCH
3である。
【0041】
R
1の好ましい例は、炭素数1〜15のアルキルおよび炭素数2〜15のアルケニルである。R
1のさらに好ましい例は、−CH
3、−C
2H
5、−C
3H
7、−C
4H
9、−C
5H
11、−C
6H
13、−C
7H
15、−C
8H
17、−C
9H
19、−C
10H
21−C
11H
23、−C
12H
25、−C
13H
27、−C
14H
29、−C
15H
31、−CH=CH
2、−CH=CHCH
3、−CH
2CH=CH
2、−CH=CHC
2H
5、−CH
2CH=CHCH
3、−(CH
2)
2−CH=CH
2、−CH=CHC
3H
7、−CH
2CH=CHC
2H
5、−(CH
2)
2−CH=CHCH
3および−(CH
2)
3−CH=CH
2である。R
1の特に好ましい例は、−CH
3、−C
2H
5、−C
3H
7、−C
4H
9、−C
5H
11、−CH=CH
2、−(CH
2)
2−CH=CH
2である。
【0042】
式(1)において、環A
1は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、水素がハロゲンで置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルである。
【0043】
環A
1の好ましい例は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルである。
【0044】
式(1)において、環A
2は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、水素がハロゲンで置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルである。
【0045】
環A
2の好ましい例は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
環A
2の最も好ましい例は、1,4−シクロヘキシレンまたは2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
【0046】
式(1)において、環A
3は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、水素がハロゲンで置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルである。
【0047】
環A
3の好ましい例は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
環A
3の最も好ましい例は、1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンである。
【0048】
環A
1、環A
2および環A
3における、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの好ましい例は、基(R−1)〜(R−4)である。
【0049】
【化12】
式(1)において、Z
1は、単結合、−(CH
2)
2−、−CH=CH−、−CF
2O−、−CH
2O−、−CF=CF−、−(CH
2)
2CF
2O−、−CH=CHCF
2O−、−CF
2O(CH
2)
2−、−CF
2OCH=CH−、−CH=CH−(CH
2)
2−または−(CH
2)
2−CH=CH−である。
【0050】
Z
1の好ましい例は、単結合、−(CH
2)
2−、−CH=CH−、−CF
2O−または−CH
2O−である。
Z
1の最も好ましい例は、単結合または−CF
2O−である。
【0051】
式(1)において、Z
2は−CF
2O−である。
式(1)において、Z
3は、単結合、−(CH
2)
2−、−CH=CH−、−CF
2O−、−CH
2O−、−CF=CF−、−(CH
2)
2CF
2O−、−CH=CHCF
2O−、−CF
2O(CH
2)
2−、−CF
2OCH=CH−、−CH=CH−(CH
2)
2−または−(CH
2)
2−CH=CH−である。
【0052】
Z
3の好ましい例は、単結合、−(CH
2)
2−、−CH=CH−、−CF
2O−または−CH
2O−である。
Z
3の最も好ましい例は、単結合または−CF
2O−である。
【0053】
式(1)において、L
1、L
2およびL
3は独立して、水素またはハロゲンである。好ましいL
1、L
2およびL
3は独立して、水素、フッ素、または塩素であり、さらに好ましいL
1、L
2およびL
3は独立して、水素またはフッ素である。
【0054】
式(1)において、mおよびnは独立して、0、1、2または3であり、mまたはnが2であるとき、2つの環A
1または環A
3は同一であっても異なってもよく、2つのZ
1またはZ
3は同一であっても異なってもよい。
また、m+nの和は、通常0、1、2または3、好ましくは1または2である。
【0055】
1−2.化合物(1)の物性
化合物(1)において、R
1、環A
1、環A
2、環A
3、Z
1、Z
2、Z
3、L
1、L
2、mおよびnの種類を適切に組み合わせることによって、透明点、光学的異方性、誘電率異方性などの物性を任意に調整することが可能である。化合物の物性に大きな差異がないので、化合物(1)は、
2H(重水素)、
13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。R
1などの種類が化合物(1)の物性に及ぼす主要な効果を以下に説明する。
【0056】
左末端基R
1が直鎖アルキルであるときは、液晶相の温度範囲が広く、粘度が小さく、組成物の成分として有用である。R
1がアルケニルであるとき、好ましい立体配置は二重結合の位置に依存する。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。
【0057】
環A
1、環A
2および環A
3が全て、1,4−シクロヘキシレンであるときは、透明点が高く、粘度が小さい。環A
1、環A
2および環A
3の少なくとも1つが1,4−フェニレンであるときは、または、少なくとも1つの水素がハロゲン(例えばフッ素または塩素)で置き換えられた1,4−フェニレンであるときは、光学的異方性が比較的大きく、そして配向秩序パラメーター(orientational order parameter)が比較的大きい。環A
1、環A
2および環A
3の少なくとも1つが2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンであるときは、誘電率異方性が正に大きい。
【0058】
結合基が、単結合、−(CH
2)
2−、−CH=CH−、−CF
2O−、−CH
2O−、−CF=CF−、−(CH
2)
2−CF
2O−または−OCF
2−(CH
2)
2−であるときは、粘度が小さい。結合基が、単結合、−(CH
2)
2−、−CF
2O−または−CH=CH−であるときは、粘度がより小さい。結合基が−CH=CH−であるときは、液晶相の温度範囲が広く、そして弾性定数(K)が大きく、単結合または−(CH
2)
2−であるときは、化学的安定性が高い。
【0059】
L
1およびL
2の両方がフッ素であり、L
3が水素であるときは、化学的安定性が高く、液晶相の温度範囲が広く、そして誘電率異方性が大きい。
nおよびmの和が0であるときは粘度が小さい。nおよびmの和が3であるときは上限温度が高い。
【0060】
以上のように、環構造、末端基、結合基などの種類を適切に選択することによって目的の物性を有する化合物を得ることができる。したがって、化合物(1)は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VAのようなモードの液晶表示素子に用いられる液晶組成物の成分として有用である。
【0061】
1−3.好ましい化合物
化合物(1)の好ましい例は、前述したように、化合物(1−1)〜(1−6)(nおよびmの和が2である場合)、および化合物(1−7)〜(1−12)(nおよびmの和が3である場合)である。
【0062】
【化13】
(式中、R
2は炭素数1〜5のアルキル、炭素数2〜6のアルケニルまたは炭素数1〜5のアルコキシであり;
L
1'、L
2'、L
3'、L
4、L
5、L
6およびL
7は独立して水素またはフッ素である。)
【0063】
【化14】
(式中、R
2は炭素数1〜5のアルキル、炭素数2〜6のアルケニルまたは炭素数1〜5のアルコキシであり;
L
1'、L
2'、L
3'、L
4、L
5、L
6、L
7、L
8およびL
9は独立して水素またはフッ素である。)
【0064】
1−4.化合物(1)の合成
化合物(1)の合成法について説明する。化合物(1)は有機合成化学の方法を適切に組み合わせることにより合成できる。出発物に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、「オーガニックシンセシス」(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、「オーガニック・リアクションズ」(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、「コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス」(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、「新実験化学講座」(丸善)などの成書に記載されている。
【0065】
1−4−1.結合基の生成
化合物(1)における結合基を生成する方法の例は、下記のスキームのとおりである。このスキームにおいて、MSG
1(またはMSG
2)は、少なくとも1つの環を有する一価の有機基である。複数のMSG
1(またはMSG
2)が表わす一価の有機基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)〜(1i)は、化合物(1)に相当する。
【0073】
(I)単結合の生成(化合物(1A)の合成)
アリールホウ酸(21)と公知の方法で合成される化合物(22)とを、炭酸塩水溶液中、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成される化合物(23)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で化合物(22)を反応させることによっても合成される。
【0074】
(II)−CF
2O−の生成(化合物(1B)の合成)
化合物(23)にn−ブチルリチウムを、次いで二酸化炭素を反応させてカルボン酸(24)を得る。化合物(24)と、公知の方法で合成されるフェノール(25)とをDCC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて−COO−を有する化合物(26)を合成する。化合物(26)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理して化合物(27)を得る。化合物(27)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、−CF
2O−を有する化合物(1B)を合成する。M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照。化合物(1B)は化合物(27)を(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(DAST)でフッ素化しても合成される。W. H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照。
【0075】
(III)−CH=CH−の生成(化合物(1Cの合成))
化合物(22)をn−ブチルリチウムで処理した後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのホルムアミドと反応させてアルデヒド(28)を得る。公知の方法で合成されるホスホニウム塩(29)をカリウムtert−ブトキシドのような塩基で処理して発生させたリンイリドを、アルデヒド(28)に反応させて化合物(1C)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0076】
(IV)−(CH
2)
2−の生成(化合物(1D)の合成)
化合物(1C)をパラジウム炭素のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1D)を合成する。
【0077】
(V)−CH
2O−の生成(化合物(1E)の合成)
化合物(28)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元して化合物(30)を得る。これを臭化水素酸などでハロゲン化して化合物(31)を得る。炭酸カリウムなどの存在下で、化合物(31)を化合物(25)と反応させて化合物(1E)を合成する。
【0078】
(VI)−CF=CF−の生成(化合物(1F)の合成)
化合物(23)をn−ブチルリチウムで処理したあと、テトラフルオロエチレンを反応させて化合物(32)を得る。化合物(32)をn−ブチルリチウムで処理したあと化合物(3)と反応させて化合物(1F)を合成する。
【0079】
(VII)−CH=CHCF
2O−の生成(化合物(1G)の合成)
化合物(23)にn−ブチルリチウムを、次いでN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのホルムアミドを反応させてアルデヒド(33)を得る。化合物(33)にPPh
3=CHCO
2Hを反応させてカルボン酸(34)を合成する。化合物(34)に、−CF
2O−と同様の方法によりフェノール(25)との脱水縮合反応、フッ素化などで化合物(1G)を合成する。
【0080】
(VIII)−(CH
2)
2CF
2O−の生成(化合物(1H)の合成)
化合物(35)をパラジウム炭素のような触媒の存在下で水素化することにより化合物(37)を得る。化合物(37)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理して化合物(38)を得る。化合物(38)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化し化合物(1H)を合成する。
【0081】
(IX)−CH=CH−(CH
2)
2−の生成(化合物(1i)の合成)
公知の方法で合成されるホスホニウム塩(39)をカリウムtert−ブトキシドのような塩基で処理して発生させたリンイリドを、アルデヒド(28)に反応させて化合物(1i)を合成する。
【0082】
1−4−2.環A
1、A
2、およびA
3の生成
1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルなどの環に関しては出発物が市販されているか、または合成法がよく知られている。
【0083】
1−4−3.合成例
化合物(1)を合成する方法の例は、次のとおりである。既存の方法により合成できる化合物(41)にn−ブチルリチウム、ついでトリメトキシボラン、さらに過酸化水素水と反応させることによりフェノール(42)を得る。化合物(42)に1−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ベンゼンおよび炭酸カリウムを反応させて化合物(43)を得る。化合物(43)をLDA(リチウムジイソプロピルアミド)と反応させて化合物(1)を合成する。
【0084】
【化22】
これらの化合物において、R
1、環A
1、環A
2、環A
3、Z
1、Z
2、Z
3、L
1、L
2、mおよびnの定義は、前記と同じである。
【0085】
2−1.組成物(1)
本発明の液晶組成物(1)について説明をする。この組成物(1)は、少なくとも1つの化合物(1)を成分Aとして含む。組成物(1)は、2つ以上の化合物(1)を含んでいてもよい。液晶性化合物の成分が化合物(1)のみであってもよい。組成物(1)は、化合物(1)の少なくとも1つを1〜99重量%の範囲で含有することが、優良な物性を発現させるために好ましい。さらに好ましい割合は、5〜60重量%の範囲である。組成物(1)は、化合物(1)と、本明細書中に記載しなかった種々の液晶性化合物とを含んでもよい。
【0086】
好ましい組成物は、以下に示す成分B、C、D、およびEから選択された化合物を含む。組成物(1)を調製するときには、例えば、化合物(1)の誘電率異方性を考慮して成分を選択することもできる。成分を適切に選択した組成物は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな誘電率異方性、および適切な弾性定数を有する。
【0087】
成分Bは、化合物(2)〜(4)である。成分Cは化合物(5)である。成分Dは、化合物(6)〜(11)である。成分Eは、化合物(12)〜(14)である。これらの成分について、順に説明する。
【0088】
成分Bは、右末端にハロゲンまたはフッ素含有基を有する化合物である。成分Bの好ましい例として、化合物(2−1)〜(2−16)、化合物(3−1)〜(3−112)、化合物(4−1)〜(4−54)を挙げることができる。なお、式(3)および(4)において、Z
4およびZ
5の両方が−CF
2O−および/または−OCF
2−であることはない。これは、Z
4とZ
5の両方が−CF
2O−である化合物、Z
4とZ
5の両方が−OCF
2−である化合物、一方が−CF
2O−であり、他方が−OCF
2−である化合物を成分Bが含まないことを意味する。
【0097】
これらの化合物(成分B)において、R
3およびX
1の定義は、前記と同じである。
成分Bは、誘電率異方性が正であり、熱、光などに対する安定性が非常に優れているので、TFTモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分Bの含有量は、組成物の全重量に対して1〜99重量%の範囲が適するが、好ましくは10〜97重量%の範囲、より好ましくは40〜95重量%の範囲である。この組成物は、化合物(12)〜(14)(成分E)をさらに添加することにより粘度を調整することができる。
【0098】
成分Cは、右末端基が−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nである化合物(5)である。成分Cの好ましい例として、化合物(5−1)〜(5−64)を挙げることができる。
【0101】
【化33】
これらの化合物(成分C)において、R
4およびX
2の定義は、前記と同じである。
【0102】
成分Cは、誘電率異方性が正であり、その値が大きいのでSTNモード用、TNモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合に主として用いられる。この成分Cを添加することにより、組成物の誘電率異方性を大きくすることができる。成分Cは、液晶相の温度範囲を広げる、粘度を調整する、または光学的異方性を調整する、という効果がある。成分Cは、素子の電圧−透過率曲線の調整にも有用である。
【0103】
STNモード用またはTNモード用の組成物を調製する場合には、成分Cの含有量は、組成物の全重量に対して1〜99重量%の範囲が適しているが、好ましくは10〜97重量%の範囲、より好ましくは40〜95重量%の範囲である。この組成物は、成分Eを添加することにより液晶相の温度範囲、粘度、光学的異方性、誘電率異方性などを調整できる。
【0104】
成分Dは、化合物(6)〜(11)である。これらの化合物は、2、3−ジフルオロ−1,4−フェニレンのように、ラテラル位が2つのハロゲンで置換されたベンゼン環を有する。成分Dの好ましい例として、化合物(6−1)〜(6−6)、化合物(7−1)〜(7−15)、化合物(8−1)、化合物(9−1)〜(9−3)、化合物(10−1)〜(10−11)、および化合物(11−1)〜(11−10)を挙げることができる。
【0106】
【化35】
これらの化合物(成分D)において、R
5およびR
6の定義は、前記と同じである。
【0107】
成分Dは、誘電率異方性が負の化合物である。成分Dは、主としてVAモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分Dの含有量を増加させると組成物の誘電率異方性が大きくなるが、粘度が大きくなる。そこで、誘電率異方性の要求値を満たす限り、含有量は少ないほうが好ましい。したがって、誘電率異方性の絶対値が5程度であることを考慮すると、充分な電圧駆動をさせるには、含有量が40重量%以上であることが好ましい。
【0108】
成分Dのうち、化合物(6)は2環化合物であるので、主として、粘度の調整、光学的異方性の調整、または誘電率異方性の調整の効果がある。化合物(7)および(8)は3環化合物であるので、上限温度を高くする、光学的異方性を大きくする、または誘電率異方性を大きくするという効果がある。化合物(9)〜(11)は、誘電率異方性を大きくするという効果がある。
【0109】
VAモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合には、成分Dの含有量は、組成物の全重量に対して、好ましくは40重量%以上であり、より好ましくは50〜95重量%の範囲である。成分Dを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。成分Dを誘電率異方性が正である組成物に添加する場合は、成分Dの含有量が組成物の全重量に対して30重量%以下が好ましい。
【0110】
成分Eは、2つの末端基がアルキルなどである化合物である。成分Eの好ましい例として、化合物(12−1)〜(12−11)、化合物(13−1)〜(13−19)、および化合物(14−1)〜(14−6)を挙げることができる。
【0112】
【化37】
これらの化合物(成分E)において、R
7およびR
8の定義は、前記と同じである。
【0113】
成分Eは、誘電率異方性の絶対値が小さいので、中性に近い化合物である。化合物(12)は、主として粘度の調整または光学的異方性の調整の効果がある。化合物(13)および(14)は、上限温度を高くすることによってネマチック相の温度範囲を広げる効果、または光学的異方性の調整の効果がある。
【0114】
成分Eの含有量を増加させると組成物の粘度が小さくなるが、誘電率異方性が小さくなる。そこで、誘電率異方性の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが好ましい。したがって、VAモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合には、成分Eの含有量は、組成物の全重量に対して、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上である。
【0115】
2−2.組成物(1)の調製と添加物
組成物(1)の調製は、必要な成分を高い温度で溶解させるなどの方法により行われる。用途に応じて、この組成物に添加物を添加してよい。添加物の例は、光学活性化合物、重合可能な化合物、重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などである。このような添加物は当業者によく知られており、文献に記載されている。
【0116】
組成物(1)は、少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有してもよい。光学活性化合物として、公知のキラルド−プ剤を添加することができる。このキラルド−プ剤は液晶のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与えることによって逆ねじれを防ぐ、という効果を有する。キラルド−プ剤の好ましい例として、下記の光学活性化合物(Op−1)〜(Op−13)を挙げることができる。
【0118】
組成物(1)は、このような光学活性化合物を添加して、らせんピッチを調整する。らせんピッチは、TFTモード用およびTNモード用の組成物であれば40〜200μmの範囲に調整するのが好ましい。STNモード用の組成物であれば6〜20μmの範囲に調整するのが好ましい。BTNモード用の組成物の場合は、1.5〜4μmの範囲に調整するのが好ましい。らせんピッチの温度依存性を調整する目的で2つ以上の光学活性化合物を添加してもよい。
【0119】
組成物(1)は、重合可能な化合物を添加することによってPSAモード用に使用することもできる。重合可能な化合物の例は、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなどである。重合可能な化合物は、好ましくは光重合開始剤などの適切な開始剤存在下でUV照射などにより重合する。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。
【0120】
酸化防止剤は、大きな電圧保持率を維持するために有効である。酸化防止剤の好ましい例は、2,6−ジ−tert−ブチル−4−アルキルフェノールなどである。紫外線吸収剤は、上限温度の低下を防ぐために有効である。紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた好ましい。
【0121】
組成物(1)は、メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、テトラジン系などの二色性色素を添加すれば、GH(guest host)モード用に使用することもできる。
【0122】
3.液晶表示素子
組成物(1)は、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード、PSAモードなどの動作モードを有し、アクティブマトリックス(AM方式)で駆動する液晶表示素子に使用できる。組成物(1)は、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード、VAモード、IPSモードなどの動作モードを有し、パッシブマトリクス(PM)方式で駆動する液晶表示素子にも使用することができる。これらのAM方式およびPM方式の素子は、反射型、透過型、半透過型のいずれのタイプにも適用ができる。
【0123】
組成物(1)は、ネマチック液晶をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子、液晶中に三次元網目状高分子を形成して作製したポリマー分散型液晶表示素子(PDLCD)、ポリマーネットワーク液晶表示素子(PNLCD)にも使用できる。
【実施例】
【0124】
実施例により本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、これらの実施例によっては制限されない。
1−1.化合物(1)の実施例
化合物(1)は、下記の手順により合成した。合成した化合物は、NMR分析などの方法により同定した。化合物の物性は、下記に記載した方法により測定した。
【0125】
NMR分析
測定装置は、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)社製)を用いた。
1H−NMRの測定では、試料をCDCl
3などの重水素化溶媒に溶解させ、測定は、室温で、500MHz、積算回数16回の条件で行った。テトラメチルシランを内部標準として用いた。
19F−NMRの測定では、CFCl
3を内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
【0126】
[測定試料]
相構造および転移温度を測定するときには、液晶性化合物そのものを試料として用いた。ネマチック相の上限温度、粘度、光学的異方性、誘電率異方性などの物性を測定するときには、化合物を母液晶に混合して調製した組成物を試料として用いた。
【0127】
化合物を母液晶と混合した試料を用いる場合には、次の方法で測定を行った。化合物15重量%と母液晶85重量%とを混合して試料を調製した。この試料の測定値から、次の式で表わされる外挿法にしたがって、外挿値を計算し、この値を記載した。
〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉)/〈化合物の重量%〉。
【0128】
化合物と母液晶との割合がこの割合であっても、結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出する場合には、化合物と母液晶との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出しなくなった割合で試料の物性を測定した。なお、特に断りのない限り、化合物と母液晶との割合は、15重量%:85重量%である。
【0129】
母液晶としては、下記の母液晶(i)を用いた。母液晶(i)の成分の割合を重量%で示す。
【0130】
【化39】
【0131】
[測定方法]
物性の測定は下記の方法で行った。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(Japan Electronics and Information Technology Industries Association;以下、JEITAと略す)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED−2521A)に記載された方法、またはこれを修飾した方法であった。測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0132】
(1)相構造
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、相の種類を特定した。
【0133】
(2)転移温度(℃)
パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め、転移温度を決定した。化合物が固体からスメクチック相、ネマチック相などの液晶相に転移する温度を「液晶相の下限温度」と略すことがある。化合物が液晶相から液体に転移する温度を「透明点」と略すことがある。
【0134】
結晶はCと表した。結晶の種類区別がつく場合は、それぞれC
1またはC
2と表した。スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。スメクチック相の中で、スメクチックA相、スメクチックB相、スメクチックC相、またはスメクチックF相の区別がつく場合は、それぞれS
A、S
B、S
C、またはS
Fと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。転移温度は、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」のように表記した。これは、結晶からネマチック相への転移温度が50.0℃であり、ネマチック相から液体への転移温度が100.0℃であることを示す。
【0135】
(3)低温相溶性
化合物の割合が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、および1重量%となるように母液晶と化合物とを混合した試料を調製し、試料をガラス瓶に入れた。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管したあと、結晶またはスメクチック相が析出しているかどうか観察をした。
【0136】
(4)ネマチック相の上限温度(T
NIまたはNI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。試料が化合物と母液晶との混合物であるときは、T
NIの記号で示した。試料が化合物と成分Bなどとの混合物であるときは、NIの記号で示した。
【0137】
(5)ネマチック相の下限温度(T
C;℃)
ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、T
Cを≦−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0138】
(6)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s)
E型回転粘度計を用いて測定した。
【0139】
(7)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s)
測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。この素子に16Vから19.5Vの範囲で0.5V毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度を測定した素子を用い、下に記載した方法で求めた。
【0140】
(8)光学的異方性(屈折率異方性;25℃で測定;Δn)
測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学的異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0141】
(9)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0142】
(10)弾性定数(K;25℃で測定;pN)
測定には横河・ヒューレットパッカード株式会社製のHP4284A型LCRメータを用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである水平配向素子に試料を入れた。このセルに0ボルトから20ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。測定した静電容量(C)と印加電圧(V)の値を「液晶デバイスハンドブックク」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.99)からK
11およびK
33の値を得た。次に171頁にある式(3.18)に、先ほど求めたK
11およびK
33の値を用いてK
22を算出した。弾性定数は、このようにして求めたK
11、K
22、およびK
33の平均値である。
【0143】
(11)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)
測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が約0.45/Δn(μm)であり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(32Hz、矩形波)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧である。
【0144】
(12)電圧保持率(VHR−1;25℃で測定;%)
測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0145】
(13)電圧保持率(VHR−2;80℃で測定;%)
測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0146】
原料
ソルミックスA−11(登録商標)は、エタノール(85.5%),メタノール(13.4%)とイソプロパノール(1.1%)の混合物であり、日本アルコール販売(株)から入手した。テトラヒドロフランをTHFと略すことがある。
【0147】
[実施例1]
化合物(No.13)の合成
【0148】
【化40】
【0149】
第一工程
窒素雰囲気下、化合物(e−1)(210g)とTHF(1200mL)とを反応容器に入れて、−20℃に冷却した。そこへ、−20℃で塩化イソプロピルマグネシウム(20%;THF溶液;350g)をゆっくりと滴下し、さらに30分間撹拌した。次いで−20℃でホウ酸トリメチル(70g)を加え、30分間撹拌した後、室温まで戻した。反応終了後、10%塩酸水溶液で後処理した。水層を酢酸エチルで抽出し、一緒にした有
機層を減圧下で濃縮し、残渣をヘプタンで洗浄することにより、化合物(e−2)を得た。
【0150】
第二工程
化合物(e−2)を塩化メチレン(600mL)に溶かしてから1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)(6g)を加え、20℃で過酸化水素水(27%;水溶液;100mL)をゆっくりと滴下した。30℃で30分間撹拌した後、反応溶液を純水に注ぎ込み、水層をジクロロメタンで抽出した。一緒にした有機層をチオ硫酸ナトリウム水溶液、純水で順次洗浄した。この溶液を減圧下で濃縮し、化合物(e−3)(110g)を得た。化合物(e−1)からの収率は66.7%であった。
【0151】
第三工程
窒素雰囲気下、化合物(e−3)(100g)に1−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ベンゼン(70g)、炭酸カリウム(90g)、ヨウ化カリウム(3g)、DMF(500mL)を入れて、120℃で4時間加熱撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、15%塩酸水溶液で後処理した。水層を酢酸エチルで抽出し、一緒にした有機層を減圧下で濃縮した。残渣をエタノールからの再結晶により精製して、化合物(e−4)(85g;70.6%)を得た。
【0152】
第四工程
窒素雰囲気下、化合物(e−4)(48g)とTHF(240mL)とを反応容器に入れて、−75℃に冷却した。そこへ、−75℃でLDA(ジイソプロピルアミン(70g)とn−ブチルリチウム(385mL)より調節)をゆっくりと滴下した。その後、反応溶液を室温まで戻し、純水で後処理し、水層をヘキサンで抽出した。一緒にした有機層を純水で洗浄し、この溶液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに通した後、再結晶により精製して、化合物(No.13)(6g:13.0%)を得た。
【0153】
1H−NMR(δppm;CDCl
3):6.80(d,2H,J=8.7Hz)、6.20(dd,1H,J=3.2Hz,14.5Hz)、2.05−1.92(m,3H)、1.88−1.81(m,2H)、1.79−1.67(m,4H)、1.38−1.24(m,4H)、1.19−1.11(m,3H)、1.10−0.92(m,6H)、0.90−0.80(m,2H)、0.87(t,3H,J=7.4Hz).
19F−NMR(δppm;CFCl
3):−79.25(d,2F,J=8.8Hz)、−96.28、−96.50(m,1F)、−118.28(dd,1F,J=3.2Hz,73.1Hz)、−127.39(dd,2F,J=2.0Hz,8.7Hz).
化合物(No.13)の物性は、次のとおりであった。
【0154】
付記したデータは前記の方法に従って求めた。転移温度を測定するときには、化合物そのものを試料として用いた。上限温度(T
NI)、粘度(η)、光学的異方性(Δn)および誘電率異方性(Δε)を測定するときは、化合物(15重量%)と母液晶(i)(85重量%)との混合物を試料として用いた。これらの測定値から、上記の外挿法に従って外挿値を算出して記載した。
転移温度:C 32.8 N 138.9 I.T
NI=105.7℃;η=25.4mPa・s;Δn=0.0903;Δε=17.4.
【0155】
[実施例2]
化合物(No.22)の合成
【0156】
【化41】
化合物(No.22)は、実施例1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(δppm;CDCl
3):7.73(d,2H,J=8.3Hz)、7.68(d,2H,J=8.3Hz)、7.53(d,2H,J=8.1Hz)、7.28(d,2H,J=8.1Hz)、6.94(d,2H,J=9.7Hz)、6.23(dd,1H,J=3.3Hz,14.3Hz)、2.65(t,2H,J=7.6Hz)、1.69(tq,2H,J=7.6、Hz,J=7.3Hz)、0.98(t,3H,J=7.3Hz).
19F−NMR(δppm;CFCl
3):−66.52(s,2F)、−96.13−−96.35(m,1F)、−118.12(dd,1F,J=3.2Hz,74.2Hz)、−126.89(d,2F,J=9.7Hz).
化合物(No.22)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 87.7 I.T
NI=57.7℃;η=20.9mPa・s;Δn=0.157;Δε=23.9.
【0157】
[実施例3]
化合物(No.25)の合成
【0158】
【化42】
化合物(No.25)は、実施例1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(δppm;CDCl
3):7.48(d,2H,J=8.0Hz)、7.29(d,2H,J=8.0Hz)、7.20(d,2H,J=11.0Hz)、6.95(d,2H,J=8.6Hz)、6.23(dd,1H,J=3.3Hz,14.3Hz)、、2.65(t,2H,J=7.7Hz)、1.68(tq,2H,J=7.7Hz,J=7.4Hz)、0.97(t,3H,J=7.4Hz).
19F−NMR(δppm;CFCl
3):−61.94(t,2F,J=27.8Hz)、−96.09−−96.30(m,1F)、−111.10(dt,2F,J=11.0Hz,27.8Hz)、−118.07(dd,1F,J=3.3Hz,73.1Hz)、−126.89(d,2F,J=8.6Hz).
化合物(No.25)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 32.7 I.T
NI=15.7℃;η=30.4mPa・s;Δn=0.137;Δε=32.6.
【0159】
[実施例4]
化合物(No.67)の合成
【0160】
【化43】
化合物(No.67)は、実施例1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(δppm;CDCl
3):6.80(d,2H,J=8.7Hz)、6.20(dd,1H,J=3.1Hz,14.4Hz)、4.19(d,1H,J=5.1Hz)、4.08(dd,2H,J=4.5Hz,11.3Hz)、3.29(dd,2H,J=11.2Hz,11.2Hz)、2.08−1.92(m,6H)、1.59−1.49(m,1H)、1.39−1.25(m,4H)、1.19−1.08(m,2H)、1.05−0.98(m,2H)、0.90(t,3H,J=7.2Hz).
19F−NMR(δppm;CFCl
3):−79.21(d,2F,J=8.75Hz)、−96.28−−96.50(m,1F)、−118.28(dd,1F,J=3.1Hz,74.2Hz)127.35(d,2F,J=9.8Hz).
化合物(No.67)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 45.5 SB 64.5 N 101.9 I.T
NI=71.7℃;η=44.5mPa・s;Δn=0.0837;Δε=29.9.
【0161】
[実施例5]
化合物(No.70)の合成
【0162】
【化44】
化合物(No.70)は、実施例1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(δppm;CDCl
3):7.13(d,2H,J=10.1Hz)、6.91(d,2H,J=8.4Hz)、6.22(dd,1H,J=3.3Hz,14.2Hz)、5.36(s,1H)、4.24(dd,2H,J=4.6Hz,11.8Hz)、3.52(d,2H,J=11.8Hz)、2.17−2.07(m,1H)、1.38−1.29(m,2H)、1.12−1.06(m,2H)、0.93(t,3H,J=7.3Hz).
19F−NMR(δppm;CFCl
3):−62.07(t,2F,J=28.5Hz)、−96.17(dd,1F,J=14.2Hz,73.0Hz)、−110.62(dt,2F,J=10.1Hz,28.5Hz)、−118.04(dd,2F,J=3.3Hz,73.0Hz)、−126.66(dd,2F,J=2.0Hz,8.4Hz).
化合物(No.70)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 31.3 I.T
NI=6.4℃;η=27.9mPa・s;Δn=0.0837;Δε=33.7.
【0163】
[実施例6]
化合物(No.148)の合成
【0164】
【化45】
化合物(No.148)は、実施例1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(δppm;CDCl
3):7.61(d,2H,J=8.2Hz)、7.33(d,2H,J=8.2Hz)、6.93(d,2H,J=8.6Hz)、6.24(dd,1H,J=3.5Hz,14.4Hz)、2.54(tt,1H,J=3.2Hz,12.2Hz)、1.98−1.92(m,2H)、1.92−1.86(m,2H)、1.83−1.74(m,4H)、1.52−1.42(m,2H)、1.38−1.29(m,2H)、1.22−1.14(m,6H)、1.12−0.98(m,3H)、0.94−0.84(m,2H)、0.90(t,3H,J=7.4Hz).
19F−NMR(δppm;CFCl
3):−66.51(s,2F)、−96.15−−96.35(m,1F)、−118.12(dd,1F,J=3.5Hz,74.2Hz)、−127.01(d,2F,J=8.6Hz).
化合物(No.148)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 76.7 C 82.2 C 90.7 N 211.4 I.T
NI=161.7℃;η=42.5mPa・s;Δn=0.137;Δε=19.6.
【0165】
[実施例7]
化合物(No.151)の合成
【0166】
【化46】
化合物(No.151)は、実施例1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(δppm;CDCl
3):6.95(d,2H,J=8.5Hz)、6.85(d,2H,J=10.8Hz)、6.24(dd,1H,J=3.3Hz,14.5Hz)、2.49(tt,1H,J=3.2Hz,12.2Hz)、1.97−1.85(m,4H)、1.83−1.72(m,4H)、1.45−1.29(m,4H)、1.22−0.97(m,9H)、0.93−0.84(m,2H)、0.90(t,3H,J=7.3Hz).
19F−NMR(δppm;CFCl
3):−62.09(t,2F,J=27.8Hz)、−96.10−−96.29(m,1F)、−112.11(dt,2F,J=10.8Hz,27.8Hz)、−118.03(dd,1F,J=3.3Hz,73.1Hz)、−126.82(d,2F,J=8.5Hz).
化合物(No.151)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 54.4 C 75.9 N 183.3 I.T
NI=124.4℃;η=53.2mPa・s;Δn=0.1237;Δε=27.6.
【0167】
[実施例8]
化合物(No.155)の合成
【0168】
【化47】
化合物(No.155)は、実施例1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(δppm;CDCl
3):7.73(d,2H,J=8.3Hz)、7.68(d,2H,J=8.3Hz)、7.54(d,2H,J=8.2Hz)、7.32(d,2H,J=8.2Hz)、6.94(d,2H,J=8.4Hz)、6.23(dd,1H,J=3.2Hz,14.0Hz)、2.53(tt,1H,J=3.2Hz,12.2Hz)、1.97−1.85(m,4H)、1.54−1.44(m,2H)、1.41−1.27(m,3H)、1.27−1.20(m,2H)、1.13−1.02(m,2H)、0.91(t,3H,J=7.1Hz).
19F−NMR(δppm;CFCl
3):−66.54(s,2F)、−96.10−−96.31(m,1F)、−118.08(dd,1F,J=3.2Hz,73.0Hz)、−126.80(d,2F,J=8.4Hz).
化合物(No.155)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 67.3 C 80.2 SG 98.6 SF 106 SB 109 SA 152.4 N 208.5 I.T
NI=163.7℃;η=48.7mPa・s;Δn=0.177;Δε=21.8.
【0169】
[実施例9]
化合物(No.157)の合成
【0170】
【化48】
化合物(No.157)は、実施例1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(δppm;CDCl
3):7.49(d,2H,J=8.3Hz)、7.32(d,2H,J=8.3Hz)、7.20(d,2H,J=10.5Hz)、6.95(d,2H,J=8.4Hz)、6.22(dd,1H,J=3.3Hz,14.1Hz)、2.53(tt,1H,J=3.1Hz,12.1Hz)、1.96−1.86(m,4H)、1.54−1.42(m,2H)、1.41−1.28(m,3H)、1.28−1.20(m,2H)、1.13−1.02(m,2H)、0.91(t,3H,J=7.4Hz).
19F−NMR(δppm;CFCl
3):−61.95(t,2F,J=27.8Hz)、
−96.08−−96.29(m,1F)、−111.12(dt,2F,J=10.5Hz,27.7Hz)、−118.11(dd,1F,J=3.3Hz,73.0Hz)、−126.71(d,2F,J=8.4Hz).
化合物(No.157)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 81 N 164 I.T
NI=94.4℃;η=34.9mPa・s;Δn=0.1503;Δε=27.23.
【0171】
[実施例10]
化合物(No.163)の合成
【0172】
【化49】
化合物(No.163)は、実施例1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(δppm;CDCl
3):7.54(d,2H,J=8.2Hz)、7.49(d,2H,J=4.3Hz)、7.42(d,1H,J=12.3Hz)、7.32−7.23(m,4H)、6.97(d,2H,J=8.2Hz)、6.24(dd,1H,J=3.2Hz,14.3Hz)、2.65(t,3H,J=7.7Hz)、1.69(tq,2H,J=7.7Hz,7.4Hz)、0.98(d,3H,J=7.4Hz).
19F−NMR(δppm;CFCl
3):−62.11(t,2F,J=27.8Hz)、−96.02−−96.24(m,1F)、−111.16(dt,2F,J=11.0Hz,27.9Hz)、−118.03(dd,1F,J=3.2Hz,73.0Hz)、−117.30−−117.37(m,1F)、−126.64(d,2F,J=8.2Hz).
化合物(No.163)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 86.2 SA 126.9 N 156.9.T
NI=104.4℃;η=53.9mPa・s;Δn=0.2103;Δε=39.23.
【0173】
[実施例11]
化合物No.205の合成
【0174】
【化50】
化合物(No.205)は、実施例1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(δppm;CDCl
3):7.38(dd,1H,J=7.9Hz,7.9Hz)、7.25−7.18(m,4H)、6.95(d,2H,J=8.4Hz)、6.23(dd,1H,J=3.1Hz,14.1Hz)、4.32−4.30(m,1H)、4.11(ddd,1H,J=1.8Hz,4.1Hz,11.2Hz)、3.22(dd,1H,J=11.2Hz,11.2Hz)、2.05−1.98(m,1H)、1.95−1.88(m,1H)、1.74−1.63(m,1H)、1.62−1.52(m,1H)、1.45−1.24(m,3H)、1.23−1.09(m,2H)、0.93(t,3H,J=7.3Hz).
19F−NMR(δppm;CFCl
3):−62.14(t,2F,J=27.8Hz)、−96.04−−96.25(m,1F)、−111.28(dt,2F,J=11.6Hz,27.8Hz)、−117.56(dd,1F,J=7.9Hz,12.3Hz)、−117.99(dd,1F,J=3.1Hz,73.0Hz)、−126.66(dd,2F,J=2.3Hz,8.4Hz).
化合物(No.205)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 63.2 N 128.2 I.T
NI=95.0℃;η=55.9mPa・s;Δn=0.1437;Δε=37.4.
【0175】
[実施例12]
化合物(No.212)の合成
【0176】
【化51】
化合物(No.212)は、実施例1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(δppm;CDCl
3):7.45(dd,1H,J=7.4Hz,7.4Hz)、7.00(d,1H,J=7.4Hz)、7.38(d,1H,J=10.1Hz)、7.22(d,2H,J=10.6Hz)、6.98(d,2H,J=8.4Hz)、6.25(dd,1H,J=3.2Hz,14.4Hz)、5.47(s,1H)、4.28(dd,2H,J=4.5Hz,11.6Hz)、3.58(dd,2H,J=11.6Hz,11.6Hz)、2.24−2.13(m,1H)、1.43−1.33(m,2H)、1.17−1.10(m,2H)、0.96(t,3H,J=7.3Hz).
19F−NMR(δppm;CFCl
3):−62.17(d,2F,J=27.9Hz)、−96.04−−96.24(m,1F)、−111.11(dt,2F,J=10.6Hz,27.9Hz)、−117.33(dd,1F,J=7.4Hz,11.6Hz)、−117.98(dd,1F,J=3.2Hz,73.0Hz)、−126.64(d,2F,J=8.4Hz).
化合物(No.212)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 78.4 N 129.9 I.T
NI=101.7℃;η=64.2mPa・s;Δn=0.157;Δε=41.7.
【0177】
[実施例13]
化合物(No.446)の合成
【0178】
【化52】
化合物(No.446)は、実施例1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(δppm;CDCl
3):6.84(d,2H,J=8.4Hz)、2.05−1.92(m,3H)、1.88−1.81(m,2H)、1.79−1.67(m,4H)、1.38−1.24(m,4H)、1.19−1.11(m,3H)、1.10−0.91(m,6H)、0.90−0.80(m,2H)、0.87(t,3H,J=7.5Hz).
19F−NMR(δppm;CFCl
3):−79.38(d,2F,J=8.9Hz)、−121.39−−121.75(dd,1F,J=65.2Hz,103.8Hz)、−125.39−−125.88(m,1F)、−126.87−−126.94(m,1F)、−135.67−−136.09(m,1F).
化合物(No.446)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 32.1 N 93.4 I.T
NI=73.7℃;η=53.2mPa・s;Δn=0.077;Δε=13.2.
【0179】
[実施例14]
化合物(No.694)の合成
【0180】
【化53】
化合物(No.694)は、実施例1と同様の方法で合成した。
1H−NMR(δppm;CDCl
3):7.81(d,2H,J=8.3Hz)、7.72(d,2H,J=8.3Hz)、7.57(d,2H,J=8.1Hz)、7.41(dd,1H,J=8.1Hz)、7.32(d,2H,J=8.1Hz)、7.23−7.15(m,4H)、6.33(dd,1H,J=3.2Hz,14.1Hz)、2.68(t,2H,J=7.6Hz)、1.72(tq,2H,J=7.6、Hz,J=7.5Hz)、1.01(t,3H,J=7.5Hz).
19F−NMR(δppm;CFCl
3):−66.07(s,2F)、−96.23−−96.44(m,1F)、−115.00(dd,1F,J=8.1Hz)、−118.14(dd,1F,J=3.2Hz,73.2Hz)、−128.61(d,2F,J=9.7Hz).
【0181】
化合物(No.694)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 106.3 SA 153.3 N 181.7.T
NI=131.7℃;η=49.2mPa・s;Δn=0.2103;Δε=29.23.
実施例1に記載された合成方法と同様の方法により、以下に示す化合物(No.1)〜(No.696)を合成することができる。
【0182】
【化54】
【0183】
【化55】
【0184】
【化56】
【0185】
【化57】
【0186】
【化58】
【0187】
【化59】
【0188】
【化60】
【0189】
【化61】
【0190】
【化62】
【0191】
【化63】
【0192】
【化64】
【0193】
【化65】
【0194】
【化66】
【0195】
【化67】
【0196】
【化68】
【0197】
【化69】
【0198】
【化70】
【0199】
【化71】
【0200】
【化72】
【0201】
【化73】
【0202】
【化74】
【0203】
【化75】
【0204】
【化76】
【0205】
【化77】
【0206】
【化78】
【0207】
【化79】
【0208】
【化80】
【0209】
【化81】
【0210】
【化82】
【0211】
[比較例1]
比較化合物として、化合物(A)を実施例1と同様の方法で合成した。この化合物は、DE19531165(特許文献10)に記載された化合物(S−3)に相当する。
【0212】
【化83】
比較例化合物(A)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:T
NI=41.7℃.
【0213】
【表1】
実施例1で得られた化合物(No.13)と比較化合物(A)の物性を表1にまとめた。表1から、化合物(No.13)は、上限温度が高い点で優れていることが分かった。
【0214】
1−2.組成物(1)の実施例
実施例により本発明の液晶組成物(1)を詳細に説明する。本発明は下記の実施例によって限定されない。実施例における化合物は、下記の表の定義に基づいて記号により表した。表において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、組成物の物性値をまとめた。物性は、先に記載した方法にしたがって測定し、測定値を外挿することなくそのまま記載した。
【0215】
【表2】
[実施例15](使用例1)
【0216】
【表3】
[実施例16](使用例2)
【0217】
【表4】
[実施例17](使用例3)
【0218】
【表5】
上記組成物100部に(Op−05)を0.25部添加したときのピッチは59.8μ
mであった。
[実施例18](使用例4)
【0219】
【表6】
[実施例19](使用例5)
【0220】
【表7】
[実施例20](使用例6)
【0221】
【表8】
[実施例21](使用例7)
【0222】
【表9】
[実施例22](使用例8)
【0223】
【表10】
[実施例23](使用例9)
【0224】
【表11】
[実施例24](使用例10)
【0225】
【表12】