(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、上記の目的を達成するため、従来のノンハロゲン難燃樹脂組成物の機械的強度や難燃性などの諸物性を保持しながら、優れた可とう性及び低摩擦性、さらには材料同士の低粘着性を実現するための樹脂組成や架橋方式、添加剤の種類や量、並びにシースの厚さを鋭意検討した。その結果、以下の
LANケーブルを得た。
【0016】
すなわち、本発明の実施形態に係る
LANケーブルは、ケーブルコアの外周を被覆するシースを備えた
LANケーブルであって、
前記ケーブルコアは、複数の電線を撚り合わせた構成であり、前記シースは、(A)成分:酢酸ビニル含有量が14〜29質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体と、(B)成分:結晶性ポリオレフィン系樹脂とを含むベースポリマー100質量部のうち、前記(A)成分が40〜80質量部であり、前記ベースポリマー100質量部に対して、(C)成分:金属水酸化物を30〜150質量部、(D)成分:アクリル系化合物を1〜10質量部、(E)成分:脂肪酸アミド系化合物を0.01〜2質量部含有し、前記(A)成分が、シラン架橋されているノンハロゲン難燃樹脂組成物からなり、前記シースの厚さが、0.2〜0.45mmであ
り、前記ケーブルコアの撚り目がシース表面に浮き出る構造である。なお、後述する
図4に示されるように、ケーブルコアとシースの間には、押さえテープ等が設けられていてもよい。
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を
図1〜4に基づいて詳述する。
【0018】
図1は、第1の実施形態に係るケーブルの横断面図であり、導体1に絶縁体2を被覆した電線を2本撚り合わせた対撚線をさらに4対撚り合わせたケーブルコアの外周にノンハロゲン難燃樹脂組成物からなるシース3を押出被覆したケーブル10を示している。
【0019】
導体1は、汎用の材料、例えば、純銅、錫めっき銅等からなる。また、絶縁体2は、ノンハロゲン難燃樹脂組成物からなることが好ましい。絶縁体2の厚さは、特に限定されるものではないが、0.05〜0.5mmであることが好ましい。また、絶縁体2は単層であっても複層であってもよいが、単層であることが好ましい。
【0020】
図2は、第2の実施形態に係るケーブルの横断面図であり、導体1に絶縁体2を被覆した電線を2本撚り合わせた対撚線を4対、十字型の介在4によってそれぞれ独立させたケーブルコアの外周にノンハロゲン難燃樹脂組成物からなるシース3を押出被覆したケーブル20を示している。介在4には、汎用の材料を使用できる。
【0021】
図3は、第3の実施形態に係るケーブルの横断面図であり、導体1に絶縁体2を被覆した電線を2本撚り合わせた対撚線をさらに4対撚り合わせたケーブルコアの外周に押さえテープ5及びシールド6が順に巻かれ、その外周にノンハロゲン難燃樹脂組成物からなるシース3を押出被覆したケーブル30を示している。テープ5とシールド6の間には、接地線7が設けられている。
【0022】
図4は、第4の実施形態に係るケーブルの横断面図であり、
図1に示したケーブル10を複数本(図では6本)、中央に配置した断面円形の介在14とともに撚り合わせたケーブルコアの外周に、押さえテープ5が巻かれ、その外周にノンハロゲン難燃樹脂組成物からなるシース3を押出被覆したケーブル40を示している。介在14には、汎用の材料を使用できる。
【0023】
〔シース3を構成するノンハロゲン難燃樹脂組成物〕
シース3を構成するノンハロゲン難燃樹脂組成物は、柔らかいエチレン−酢酸ビニル共重合体を多量に含むため、結晶性ポリオレフィン系樹脂を主成分とした従来のノンハロゲン難燃樹脂組成物と比べ、可とう性に優れるという特徴を持つ。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量が多いほど結晶性が低下し可とう性に優れるが、材料同士が粘着しやすくなる。そこで、可とう性及び低粘着性を両立できる最適な酢酸ビニル含有量を検討した。その結果、酢酸ビニル含有量が14〜29質量%であり、かつ、エチレン−酢酸ビニル共重合体のみを選択的に架橋させることで、ケーブルの可とう性を低下させずに、ケーブル同士の接触面積が増大しても粘着しないことを見出した。
【0024】
また、適量のアクリル系化合物を添加することで押出時の表面平滑性が向上し、さらに適量の脂肪酸アミド系化合物を添加することでその平滑な表面に低摩擦性の膜が形成されることにより、低摩擦性の材料を得ることが可能となった。
【0025】
さらに、従来のシースの被覆厚0.5mmから0.45mmに薄くすることで粘着性等の問題が顕著に表れることが明らかとなった。これは、シースの被覆厚が0.45mmより薄くなると、ポリエチレン絶縁電線を撚り合わせたケーブルコアの撚り目がシース表面に浮き出ることにより、従来のケーブルと比べてケーブルシース同士の接触面積が増大するためと考えられる。
【0026】
すなわち、上記材料は優れた可とう性及び低摩擦性を持ち、さらには材料同士の粘着性が低いことから、細径化のために被覆厚を0.45mm以下に薄くしたLANケーブルなどのシース材料として適用したときに、ボビンや箱からの引出時にケーブル同士の粘着がなく、配線作業性などの取扱性に優れているとの知見を得て本発明に至った。
【0027】
<(A)成分>
本実施の形態における(A)成分:エチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含有量が14〜29質量%のものである。酢酸ビニル含有量が14質量%より少ない場合、材料が硬くなってしまうため、ケーブルのシース材料として適用したときに、ケーブルも硬くなり巻き癖が残ってしまう。29質量%を超えると粘着性が高くなり、ケーブル同士が粘着する現象が起きる。酢酸ビニル含有量は、17〜28質量%であることが好ましく、25〜28質量%であることがより好ましい。
【0028】
(A)成分としては、分子量、溶融粘度等に特に限定はなく、任意のエチレン−酢酸ビニル共重合体が使用できる。
【0029】
(A)成分:エチレン−酢酸ビニル共重合体には、シラン架橋させるためにシラン化合物がグラフト共重合される。
【0030】
シラン化合物には、ポリマーと反応可能な基とシラノール縮合により架橋を形成するアルコキシ基をともに有していることが要求される。具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等のビニルシラン化合物、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン化合物、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリルシラン化合物、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシラン化合物、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン化合物等を挙げることができる。
【0031】
シラン化合物をグラフト共重合させるには既知の一般的手法、すなわちベースのエチレン−酢酸ビニル共重合体に所定量のシラン化合物、遊離ラジカル発生剤を混合し、80〜200℃の温度で溶融混練する方法を用いることができる。遊離ラジカル発生剤としては、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物が主として使用できる。
【0032】
シラン化合物の添加量は、特に規定しないが、良好な物性を得るためにはエチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.5〜10.0質量部が好適である。0.5質量部より少ないと十分な架橋効果が得られず、組成物の強度、耐熱性が劣る。10.0質量部を超えると加工性が著しく低下する。
【0033】
また、遊離ラジカル発生剤である有機過酸化物の最適な添加量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.001〜3.0質量部である。0.001質量部より少ないとシラン化合物が十分にグラフト共重合せず、十分な架橋効果が得られない。3.0質量部を超えるとエチレン−酢酸ビニル共重合体のスコーチが起きやすくなる。
【0034】
また、本発明において、シラン化合物がグラフト共重合されたエチレン−酢酸ビニル共重合体を架橋させるために、シラノール縮合触媒を添加することができる。このようなシラノール縮合触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクタエート、酢酸第1錫、カプリル酸第1錫、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト等の金属化合物や、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物などの酸類やアミン系化合物などのアルカリ類を使用することができる。
【0035】
シラノール縮合触媒の添加量は、触媒の種類によるがエチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部当たり0.001〜0.5質量部に設定される。
【0036】
シラノール縮合触媒の添加方法としては、そのまま添加する方法以外にエチレン−酢酸ビニル共重合体や結晶性ポリオレフィン系樹脂に予め混ぜたマスターバッチを使用する方法などがある。
【0037】
<(B)成分>
本実施の形態における(B)成分:結晶性ポリオレフィン系樹脂としては既知のものが使用でき、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、ポリブテン、ポリ−4−メチル−ペンテン−1、エチレン−ブテン−ヘキセン三元共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の中から選ばれる少なくとも1種を含み、単独もしくは2種以上をブレンドして用いるのが望ましい。ケーブルの可とう性の点から、(B)成分は未架橋であることが好ましい。
【0038】
上記ポリプロピレンとしては、ホモポリマーの他にエチレンに代表されるα−オレフィンを共重合したブロック共重合体やランダム共重合体及びエチレンプロピレンゴムに代表されるゴム成分を重合段階で導入したポリプロピレンを含むものとする。
【0039】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体としては、結晶性を有したものが使用でき、例えば酢酸ビニル含有量が29質量%より少ないものを用いることができる。
【0040】
また、上記(B)成分の一部に、不飽和カルボン酸又はその誘導体を共重合させた結晶性ポリオレフィン系樹脂を用いることも可能である。これにより、(C)成分:水酸化マグネシウムと不飽和カルボン酸又はその誘導体との間で反応が起き、密着性が高まることによって樹脂組成物の機械的強度が向上する。ここでの結晶性ポリオレフィンには、前述したものがそのまま使用できる。
【0041】
不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、特に限定されるものではないが、無水マレイン酸が好適である。また、置き換える量は任意であるが、0.5〜10質量部が望ましい。0.5質量部より少ないと強度向上の効果は得られず、10質量部を超えると加工性が著しく低下する。
【0042】
本実施の形態において、上記(A)成分の配合割合は、上記(A)成分と上記(B)成分とを含むベースポリマー100質量部のうち、40〜80質量部である。50〜70質量部であることが好ましい。(A)成分が80質量部を超えると、押出外観が著しく悪化する。また、(A)成分が40質量部より少ないと、良好な可とう性が得られない。
【0043】
また、本実施の形態において、上記(B)成分の配合割合は、上記ベースポリマー100質量部のうち、60〜20質量部であることが好ましく、50〜30質量部であることがより好ましい。(A)成分の相は、(B)成分の相中に分散していることが好ましい。本発明の効果を奏する限りにおいて、更に他のポリマーをベースポリマーにブレンドしても良い。
【0044】
他のポリマーとしては、非晶性樹脂、未架橋ゴムなどのポリマーを使用できる。非晶性樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリフェニレンエーテルなどが挙げられる。未架橋ゴムとしては、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1−ジエン共重合体、エチレン−オクテン−1−ジエン共重合体、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴムやスチレンイソプレンゴムに代表されるスチレン−ジエン共重合体やスチレン−ブタジエン−スチレンゴムやスチレン−イソプレン−スチレンゴムに代表されるスチレン−ジエン−スチレン共重合体及びこれらを水素添加して得られるスチレン系ゴムなどが挙げられる。
【0045】
<(C)成分>
本実施の形態における(C)成分:金属水酸化物は、樹脂組成物に難燃性を付与するものである。このような金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、中でも難燃効果の最も高い水酸化マグネシウムが好適である。これらは、単独で使用しても2種以上を併用しても良い。金属水酸化物は、分散性の観点から表面処理されていることが望ましい。
【0046】
表面処理剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、脂肪酸又は脂肪酸金属塩等が使用でき、中でも樹脂組成物と金属水酸化物との密着性を高める点でシラン系カップリング剤が望ましい。
【0047】
使用できるシラン系カップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等のビニルシラン化合物、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン化合物、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリルシラン化合物、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシラン化合物、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン化合物が挙げられる。
【0048】
これらの表面処理剤を金属水酸化物に処理させる方法としては、湿式法、乾式法、直接混練法などの既知の方法を用いることができる。
【0049】
処理量は特に限定されるものではないが、金属水酸化物に対して、0.1〜5質量%の範囲であることが望ましい。処理量が0.1質量%より少ないと樹脂組成物の強度が低下し、5質量%より多いと加工性が悪くなる。
【0050】
また、金属水酸化物の平均粒子径は、機械的特性、分散性、難燃性の点から4μm以下のものがより好適である。
【0051】
上記(C)成分の添加量は、上記ベースポリマー100質量部に対して、30〜150質量部である。50〜100質量部であることがより好ましい。30質量部より少ないと優れた難燃効果が得られず、150質量部を超えると可とう性や機械的強度が著しく低下する。
【0052】
<(D)成分>
本実施の形態における(D)成分:アクリル系化合物は、加工助剤であり、具体的にはメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルを1種又は2種以上を共重合させたものが使用できる。また、上記以外にも(メタ)アクリル酸、ヒドロキシ基を含有した(メタ)アクリル酸アルキルエステルも使用することができる。
【0053】
上記のようなアクリル系化合物の市販品としては、例えば、三菱レイヨン製のメタブレンP−531A、メタブレンP−530A、メタブレンP−700、メタブレンP−1050、メタブレンL−1000、カネカ製のカネエースPA−20、カネエースPA−60、カネエースPA−100等が挙げられる。
【0054】
上記(D)成分の添加量は、上記ベースポリマー100質量部に対して、1〜10質量部である。1〜5質量部であることがより好ましい。1質量部より少ないと押出成形において平滑な表面が得られず動摩擦係数が高くなり、10質量部を超えると難燃性が著しく低下する。
【0055】
<(E)成分>
本実施の形態における(E)成分:脂肪酸アミド系化合物は、滑剤であり、具体的には、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、モンタン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、ラウリン酸アミド、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、N,N′−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N′−ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。
【0056】
上記(E)成分の添加量は、上記ベースポリマー100質量部に対して、0.01〜2質量部である。0.05〜1質量部であることがより好ましい。0.01質量部より少ないと材料の動摩擦係数が高くなり、2質量部を超えると滑剤が材料表面に析出するため成形物の外観が著しく損なわれる。
【0057】
<その他の添加物>
本発明の実施形態に使用されるノンハロゲン樹脂組成物には、上記以外にも必要に応じて、プロセス油、加工助剤、難燃助剤、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、相溶化剤、安定剤、カーボンブラック、着色剤等の添加物を加えることも可能である。
【0058】
〔ノンハロゲン難燃樹脂組成物の製造方法〕
本発明の実施形態に係るノンハロゲン難燃樹脂組成物を製造する装置としては、限定はないが、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、二軸押出機などの汎用のものが使用できる。製造工程には、(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体にシラン化合物をグラフト共重合させる工程、(2)エチレン−酢酸ビニル共重合体、結晶性ポリオレフィン系樹脂、金属水酸化物、アクリル系化合物、脂肪酸アミド系化合物及びシラノール縮合触媒等の配合剤を混練しながらエチレン−酢酸ビニル共重合体をシラン架橋させる工程の二つがあり、これらを別々に分けて行う手法や、例えば二軸押出機などで両工程を一度の押出で行う手法などがあり、特に限定はされない。
【0059】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体、結晶性ポリオレフィン系樹脂、金属水酸化物、アクリル系化合物、脂肪酸アミド系化合物の各成分を混練する時の順序は任意であり、(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体、金属水酸化物、アクリル系化合物、脂肪酸アミド系化合物を先に混練し、結晶性ポリオレフィン系樹脂を後に加える方法、(2)エチレン−酢酸ビニル共重合体と結晶性ポリオレフィンを先に混練し、金属水酸化物、アクリル系化合物、脂肪酸アミド系化合物を後に加える方法、(3)全てを一括して混練する方法などがある。なお、シラノール縮合触媒は最後に加えるのが最適である。その他、酸化防止剤や着色剤などの配合剤はどのタイミングで加えても良い。
【0060】
〔シースの厚さ〕
上記ノンハロゲン難燃樹脂組成物は、LANケーブ
ルのシースとして適用される。シースの厚さは0.2〜0.45mmである。0.3〜0.4mmであることがより好ましい。0.2mmより薄いと、ケーブルとして十分な難燃性が得られない。0.45mmより厚いとケーブルの外径が太くなり、敷設できるケーブルの本数が少なくなるとともに可とう性も低下する。
【0061】
シースの被覆方法としては、既知の押出機による電線被覆方法が使用できる。
【実施例】
【0062】
以下に本発明の実施例を具体的に説明する。
【0063】
〔実施例及び比較例のケーブルの作製〕
ノンハロゲン難燃樹脂組成物は、エチレン−酢酸ビニル共重合体にシラン化合物をグラフト共重合させる工程、及び、シラン化合物をグラフト共重合させたエチレン−酢酸ビニル共重合体、結晶性ポリオレフィン系樹脂、金属水酸化物、アクリル系化合物、脂肪酸アミド系化合物、シラノール縮合触媒等の配合剤を混練し、エチレン−酢酸ビニル共重合体をシラン架橋させる工程によって作製した。
【0064】
エチレン−酢酸ビニル共重合体にシラン化合物をグラフト共重合させる工程では、原料のエチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量:12、14、28、33質量%)、ビニルトリメトキシシラン、ジクミルパーオキサイドを100/3/0.02質量部の比率で含浸混合したものを準備し、これらを200℃の40mm押出機(L/D=24)で滞留時間が約5分となるように押出し、グラフト反応させた。
【0065】
次の工程では、表1及び2の各例に示した配合の各成分を37mm二軸押出機(L/D=60)に一括して投入することで混練し、混練中にシラン化合物がグラフト共重合されたエチレン−酢酸ビニル共重合体を架橋させることで混練物を作製した。温度は180℃とし、スクリュー回転数は150rpmとした。これをペレット化し、ケーブル作製用のシース材料とした。
【0066】
評価用ケーブルは、180℃に予熱した40mm押出機(L/D=24)を用い、表1及び2の各例に示した厚さとなるようチューブ状にシースを押出被覆して作製した。ケーブルコアとして、外径0.5mmの銅導体にポリエチレンを厚さ0.2mmで被覆したものを2本撚り合わせ、さらにこれを4対撚り合わせたものを使用した。押出したケーブルは、胴径500mmのボビンに巻き取った。ケーブルの全長は、3000mとした。
【0067】
〔実施例及び比較例のケーブルの評価〕
上記手順で作製したケーブルを次に示す方法で評価した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0068】
ケーブルの機械的強度、難燃性をJIS C 3005に準拠して評価した。ケーブルシースの引張強さは8MPa以上、破断伸びは200%以上を合格とした。難燃性評価には60度傾斜燃焼試験を行い、炎を取り去った後の延焼時間を測定し、60秒以内に自然消火したものを合格とした。
【0069】
ケーブルの押出外観、巻き癖、及び粘着性の評価方法として、押出時にボビンに巻き取ったケーブルを1週間放置した後、引き出したときの外観(表面の平滑さ、ブルームの有無)、巻き癖の有無、粘着の有無を目視により確認した。
【0070】
ケーブルの可とう性は、長さ200mmのケーブルの片端を固定し、もう一方に50gの荷重をかけたときのたわみ量(水平に対して低下した距離)により評価した。たわみ量が大きいほど可とう性は良好である。目標値はポリ塩化ビニルシースを用いたときのケーブルのたわみ量とした(たわみ量120mm以上)。
【0071】
また、同一材料を用いたケーブル同士の滑り性(引き出し性)は、JIS K7125に準拠した動摩擦係数測定により評価した。
図5に示したように、上下2本ずつの固定された固定ケーブル12の間に試験ケーブル11をセットし、上から荷重(19.6N)をかけ、試験ケーブル11を引き抜くときの引き抜き力から動摩擦係数を計算し、ポリ塩化ビニルを被覆したケーブルと同等である0.7以下のものを合格とした。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
〔使用材料〕(数字は表1及び2中の数字に対応)
1)三井デュポンポリケミカル製、エバフレックスEV270(酢酸ビニル含有量28質量%、熔指(MI) 1g/10min(以下、単位省略))
2)<ベース>三井デュポンポリケミカル製、エバフレックスP1205(酢酸ビニル含有量 12質量%、MI 2.5)、<シラングラフト量>3%
3)<ベース>三井デュポンポリケミカル製、エバフレックスP1403(酢酸ビニル含有量 14質量%、MI 1.3)、<シラングラフト量>3%
4)<ベース>三井デュポンポリケミカル製、エバフレックスEV270(酢酸ビニル含有量 28質量%、MI 1)、<シラングラフト量>3%
5)<ベース>三井デュポンポリケミカル製、エバフレックスEV170(酢酸ビニル含有量 33質量%、MI 1)、<シラングラフト量>3%
6)日本ポリプロ製、ノバテックBC6C(密度 0.90g/cm
3、MI 2.5)
7)プライムポリマー製、エボリューSP2510(密度 0.923g/cm
3、MI 1.5)
8)三井デュポンポリケミカル製、エバフレックスP1403(酢酸ビニル含有量 14質量%、MI 1.3)
9)日本ポリエチレン製、レクスパールA3100(エチルアクリレート量 10%、MI 3)
10)プライムポリマー製、ハイゼックス5305E(密度 0.951g/cm
3、MI 0.8)
11)住友化学製、エクセレンVL200(密度 0.90g/cm
3、MI 2)
12)協和化学工業製、キスマ5L(シラン処理)
13)三菱レイヨン製、メタブレンP−1050
14)日本化成製、スリパックスO
15)日東化成製、ネオスタンU−810
16)チバジャパン製、イルガノックス1010
【0075】
表1に示すように、本発明に係る実施例1〜12においては、機械的強さ、難燃性、押出外観に優れ、巻き癖が無く、低粘着性、可とう性、低摩擦性にも優れたケーブルが得られている。
【0076】
一方、表2に示すように、(A)成分の比率が本発明の規定より多い比較例1では、押出外観が凸凹となった。
【0077】
(A)成分の比率が規定より少ない比較例2及び酢酸ビニル含有量が規定より少ない(A)成分を用いた比較例3では、十分な可とう性が得られず、ケーブルに巻き癖が残ってしまった。
【0078】
酢酸ビニル含有量が規定より多い(A)成分を用いた比較例4及び(A)成分がシラン架橋していない比較例5では、引出時の粘着性が不合格となり、動摩擦係数も高くなった。比較例5では、引張強さも低下した。
【0079】
比較例6では、シースの厚さが規定より薄いため、難燃性が不合格となり、比較例7では規定より厚いため、ケーブルが硬くなり、巻き癖が残った。
【0080】
(C)成分の添加量が規定より少ない比較例8では、難燃性が低く、規定量を上回る比較例9では、可とう性、機械的特性が目標値を満足することができなかった。また、巻き癖が残った。
【0081】
(D)成分の添加量が規定より少ない比較例10では、押出外観が平滑でなく、動摩擦係数が高くなった。(D)成分の添加量が規定量より多い比較例11では、難燃性が不十分となった。
【0082】
(E)成分の添加量が規定より少ない比較例12では、材料の滑り性が劣り、動摩擦係数が高くなった。(E)成分の添加量が規定量を上回る比較例13では脂肪酸アミド系化合物のブルームによりケーブル表面が白化する現象が見られ外観が劣ってしまった。
【0083】
以上見てきたように、本発明では、シースの被覆厚を薄くしてケーブルを細径化したときにおいても、優れた可とう性及び低摩擦性を持ち、巻き癖が残らず、ケーブル同士の粘着もないことから、配線作業性が従来のケーブルと比べ大幅に改善されており、その工業的な有用性は極めて高い。