(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶性化合物は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶性化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と略すことがある。液晶表示素子は、液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。透明点は、液晶性化合物における液晶相−等方相の転移温度である。液晶相の下限温度は、液晶性化合物における固体−液晶相(スメクチック相、ネマチック相など)の転移温度である。ネマチック相の上限温度は、液晶組成物におけるネマチック相−等方相の転移温度であり、上限温度と略すことがある。ネマチック相の下限温度を下限温度と略すことがある。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と略すことがある。この略記は式(2)などで表される化合物にも適用することがある。式(1)から式(14)において、六角形で囲んだA
1、B
1、C
1などの記号はそれぞれ環A
1、環B
1、環C
1などに対応する。百分率で表した化合物の量は、組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。複数のR
1が、異なる式に使用されている。これらの化合物において、任意の2つのR
1が表わす2つの基は、同一であってもよいし、異なってもよい。このルールは、環A
1、Z
1などの記号にも適用される。
【0026】
「少なくとも1つの“A”は、“B”で置き換えられてもよい」の表現は、“A”が1つのとき、“A”の位置は任意であり、“A”の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できることを意味する。「少なくとも1つのAが、B、CまたはDで置き換えられてもよい」という表現は、任意のAがBで置き換えられる場合、任意のAがCで置き換えられる場合、および任意のAがDで置き換えられる場合、さらに複数のAがB、C、Dの少なくとも2つで置き換えられる場合を含むことを意味する。例えば、少なくとも1つの−CH
2−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキルには、
アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルが含まれる。なお、連続する2つの−CH
2−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。アルキルなどにおいて、メチル部分(−CH
2−H)の−CH
2−が−O−で置き換えられて−O−Hになることも好ましくない。
【0030】
式(1)において、
R
1は、炭素数1〜15のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH
2)
2−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
環A
1、環A
2、環A
3、環A
4、および環B
1は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルであり;
Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は独立して、単結合、−(CH
2)
2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2O−、−OCH
2−、または−CF=CF−であり;
l、m、n、およびoは独立して、0または1であり、l、m、nおよびoの和が1以上である。
【0031】
[2] 項[1]に記載の式(1)において、環B
1が、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレンである、項[1]に記載の化合物。
【0032】
[3] 項[1]に記載の式(1)において、R
1が、炭素数1〜15のアルキル、炭素数2〜15のアルケニル、炭素数1〜14のアルコキシ、または炭素数2〜14のアルケニルオキシであり;Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4が独立して、単結合、−(CH
2)
2−、−CH=CH−、−COO−、−OCO−、−CF
2O−、−OCF
2−、または−CF=CF−である、項[1]に記載の化合物。
【0033】
[4] 項[1]に記載の式(1)において、R
1が、炭素数1〜15のアルキルまたは炭素数2〜15のアルケニルであり;Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4が独立して、単結合、−(CH
2)
2−、−CH=CH−、−COO−、または−CF
2O−である、項[1]に記載の化合物。
【0034】
[5] 項[1]に記載の式(1)において、R
1が、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;環A
1、環A
2、環A
3、および環A
4が独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり、環B
1が1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレンであり、;Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4が独立して、単結合、−(CH
2)
2−、または−CH=CH−である、項[1]に記載の化合物。
【0035】
[6] 式(1−1)〜(1−3)のいずれか1つで表される、項[1]に記載の化合物。
【0037】
式(1−1)〜(1−3)において、
R
1は、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;
環A
1、環A
2、および環A
3は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;
環B
1は1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレンであり;
Z
1、Z
2、およびZ
3は独立して、単結合、−(CH
2)
2−、または−CH=CH−である。
【0038】
[7] 式(1−4)〜(1−19)のいずれか1つで表される、項[1]に記載の化合物。
【0040】
式(1−4)〜(1−19)において、R
1は炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;L
1、L
2、L
3、およびL
4は水素またはフッ素である。
【0041】
[8] 式(1−20)〜(1−31)のいずれか1つで表される、項[1]に記載の化合物。
【0043】
式(1−20)〜(1−31)において、R
1は炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;L
1は水素またはフッ素である。
【0044】
[9] 式(1−32)〜(1−39)のいずれか1つで表される、項[1]に記載の化合物。
【0046】
式(1−32)〜(1−39)において、R
1は炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6、およびL
7は独立して、
水素またはフッ素である。
【0047】
[10] 式(1−40)〜(1−47)のいずれか1つで表される、項[1]に記載の化合物。
【0049】
式(1−40)〜(1−47)において、R
1は炭素数1〜10のアルキルであり;L
1、L
2、およびL
3は独立して、水素またはフッ素である。
【0050】
[11] 項[1]〜[10]のいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1つ含有する液晶組成物。
【0051】
[12] 式(2)〜(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[11]に記載の液晶組成物。
【0053】
式(2)〜(4)において、
R
2は独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく;
X
1は、フッ素、塩素、−OCF
3、−OCHF
2、−CF
3、−CHF
2、−CH
2F、−CF=F
2、−OCF
2CHF
2、または−OCF
2CHFCF
3であり;
環C
1、環C
2、および環C
3は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
Z
5およびZ
6は独立して、単結合、−(CH
2)
2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2O−、または−(CH
2)
4−であり;
L
8およびL
9は独立して、水素またはフッ素である。
[13] 式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[11]に記載の液晶組成物。
【0055】
式(5)において、
R
3は、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく;
X
2は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環D
1、環D
2、および環D
3は独立して、1,4−シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
Z
7は、単結合、−(CH
2)
2−、−C≡C−、−COO−、−CF
2O−、−OCF
2−、または−CH
2O−であり;
L
10およびL
11は独立して、水素またはフッ素であり;
rは、0、1または2であり、sは0または1であり、rとsの和は、0、1、2または3である。
【0056】
[14] 式(6)〜(11)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[11]に記載の液晶組成物。
【0058】
式(6)〜(11)において、
R
4およびR
5は独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく;
環E
1、環E
2、環E
3、および環E
4は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
Z
8、Z
9、Z
10、およびZ
11は独立して、単結合、−(CH
2)
2−、−COO−、−CH
2O−、−OCF
2−、または−OCF
2(CH
2)
2−であり;
L
12およびL
13は独立して、フッ素または塩素であり;
t、u、v、w、x、およびyは独立して0または1であり、u、v、w、およびxの和は、1または2である。
【0059】
[15] 式(12)〜(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[11]に記載の液晶組成物。
【0061】
式(12)〜(14)において、
R
6およびR
7は独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく;
環F
1、環F
2、および環F
3は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイル、であり;
Z
12およびZ
13は独立して、単結合、−(CH
2)
2−、−CH=CH−、−C≡C−、または−COO−である。
【0062】
[16] 項[13]に記載の式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[12]に記載の液晶組成物。
【0063】
[17] 項[15]に記載の式(12)〜(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[12]に記載の液晶組成物。
【0064】
[18] 項[15]に記載の式(12)〜(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[13]に記載の液晶組成物。
【0065】
[19] 項[15]に記載の式(12)〜(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[14]に記載の液晶組成物。
【0066】
[20] 少なくとも1つの光学活性化合物および/または重合可能な化合物をさらに含有する、項[11]〜[19]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0067】
[21] 少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤をさらに含有する、項[11]〜[20]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[22] 項[11]〜[21]のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【0068】
本発明の化合物、液晶組成物、液晶表示素子について、順に説明する。
1−1.本発明の化合物
本発明の化合物(1)、化合物(1)の好ましい例について説明をする。化合物(1)における末端基、環構造、結合基、および置換基の好ましい例は、化合物(1)の下位式にも適用される。
【0070】
式(1)において、R
1は、炭素数1〜15のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH
2)
2−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【0071】
このようなR
1の例は、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アルキルチオ、アルキルチオアルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、アルコキシアルケニル、およびアルケニルチオである。これらの基において分岐よりも直鎖の方が好ましい。R
1が分岐の基であっても光学活性であるときは好ましい。
【0072】
アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH
3、−CH=CHC
2H
5、−CH=CHC
3H
7、−CH=CHC
4H
9、−C
2H
4CH=CHCH
3、および−C
2H
4CH=CHC
2H
5のような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。−CH
2CH=CHCH
3、−CH
2CH=CHC
2H
5、および−CH
2CH=CHC
3H
7のような偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い透明点または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327に詳細な説明がある。
【0073】
アルキルの例は、−CH
3、−C
2H
5、−C
3H
7、−C
4H
9、−C
5H
11、−C
6H
13、−C
7H
15、−C
8H
17、−C
9H
19、−C
10H
21、−C
11H
23、−C
12H
25、−C
13H
27、−C
14H
29、および−C
15H
31である。
【0074】
アルコキシの例は、−OCH
3、−OC
2H
5、−OC
3H
7、−OC
4H
9、−OC
5H
11、−OC
6H
13および−OC
7H
15、−OC
8H
17、−OC
9H
19、−OC
10H
21、−OC
11H
23、−OC
12H
25、−OC
13H
27、および−OC
14H
29である。
【0075】
アルコキシアルキルの例は、−CH
2OCH
3、−CH
2OC
2H
5、−CH
2OC
3H
7、−(CH
2)
2−OCH
3、−(CH
2)
2−OC
2H
5、−(CH
2)
2−OC
3H
7、−(CH
2)
3−OCH
3、−(CH
2)
4−OCH
3、および−(CH
2)
5−OCH
3である。
【0076】
アルケニルの例は、−CH=CH
2、−CH=CHCH
3、−CH
2CH=CH
2、−CH=CHC
2H
5、−CH
2CH=CHCH
3、−(CH
2)
2−CH=CH
2、−CH=CHC
3H
7、−CH
2CH=CHC
2H
5、−(CH
2)
2−CH=CHCH
3、および−(CH
2)
3−CH=CH
2である。
【0077】
アルケニルオキシの例は、−OCH
2CH=CH
2、−OCH
2CH=CHCH
3、および−OCH
2CH=CHC
2H
5である。
【0078】
少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられたアルキルの例は、−CH
2F、−CHF
2、−CF
3、−(CH
2)
2−F、−CF
2CH
2F、−CF
2CHF
2、−CH
2CF
3、−CF
2CF
3、−(CH
2)
3−F、−(CF
2)
3−F、−CF
2CHFCF
3、−CHFCF
2CF
3、−(CH
2)
4−F、−(CF
2)
4−F、−(CH
2)
5−F、−(CF
2)
5−F、−CH
2Cl、−CHCl
2、−CCl
3、−(CH
2)
2−Cl、−CCl
2CH
2Cl、−CCl
2CHCl
2、−CH
2CCl
3、−CCl
2CCl
3、−(CH
2)
3−Cl、−(CCl
2)
3−Cl、−CCl
2CHClCCl
3、−CHClCCl
2CCl
3、−(CH
2)
4−Cl、−(CCl
2)
4−Cl、−(CH
2)
5−Cl、および−(CCl
2)
5−Clである。
【0079】
少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられたアルコキシの例は、−OCH
2F、−OCHF
2、−OCF
3、−O−(CH
2)
2−F、−OCF
2CH
2F、−OCF
2CHF
2、−OCH
2CF
3、−O−(CH
2)
3−F、−O−(CF
2)
3−F、−OCF
2CHFCF
3、−OCHFCF
2CF
3、−O(CH
2)
4−F、−O−(CF
2)
4−F、−O−(CH
2)
5−F、−O−(CF
2)
5−F、−OCH
2Cl、−OCHCl
2、−OCCl
3、−O−(CH
2)
2−Cl、−OCCl
2CH
2Cl、−OCCl
2CHCl
2、−OCH
2CCl
3、−O−(CH
2)
3−Cl、−O−(CCl
2)
3−Cl、−OCCl
2CHClCCl
3、−OCHClCCl
2CCl
3、−O(CH
2)
4−Cl、−O−(CCl
2)
4−Cl、−O−(CH
2)
5−Cl、および−O−(CCl
2)
5−Clである。
【0080】
少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられたアルケニルの例は、−CH=CHF、−CH=CF
2、−CF=CHF、−CH=CHCH
2F、−CH=CHCF
3、−(CH
2)
2−CH=CF
2、−CH
2CH=CHCF
3、−CH=CHCF
2CF
3、−CH=CHCl、−CH=CCl
2、−CCl=CHCl、−CH=CHCH
2Cl、−CH=CHCCl
3、−(CH
2)
2−CH=CCl
2、−CH
2CH=CHCCl
3、および−CH=CHCCl
2CCl
3である。
【0081】
R
1は、炭素数1〜15のアルキル、炭素数2〜15のアルケニル、炭素数1〜14のアルコキシ、炭素数2〜14のアルケニルオキシが好ましく、さらには、炭素数1〜15のアルキル、炭素数2〜15のアルケニルがより好ましく、特に炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニルが好ましい。
【0082】
R
1のより好ましい例は、−CH
3、−C
2H
5、−C
3H
7、−C
4H
9、−C
5H
11、−C
6H
13、−C
7H
15、−C
8H
17、−C
9H
19、−C
10H
21、−CH=CH
2、−CH=CHCH
3、−CH
2CH=CH
2、−CH=CHC
2H
5、−CH
2CH=CHCH
3、−(CH
2)
2−CH=CH
2、−CH=CHC
3H
7、−CH
2CH=CHC
2H
5、−(CH
2)
2−CH=CHCH
3、および−(CH
2)
3−CH=CH
2である。
【0083】
式(1)において、環A
1、環A
2、環A
3、環A
4、および環B
1は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルである。
【0084】
環A
1、環A
2、環A
3、および環A
4の好ましい例は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、およびテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。少なくとも1つの水素がハロゲンに置き換えられた1,4−フェニレンの好ましい例は、基(15−1)〜(15−18)である。
【0086】
2−フルオロ−1,4−フェニレンは、左右対称ではない。ラテラル位のフッ素が左末端基の側に位置する場合(左向き;15−1)と、右末端基の側に位置する場合(右向き;15-2)とがある。好ましい2−フルオロ−1,4−フェニレンは、右向き(15−2)である。2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン(15−4および15−6)も左右対称ではない。好ましい2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンは、右向き(15−4)である。その他の基においても、左右対称ではない場合は、右向きが好ましい。
【0087】
少なくとも1つの水素がハロゲンに置き換えられた1,4−フェニレンのさらに好ましい例は、2−フルオロ−1,4−フェニレンおよび2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
【0088】
1,3−ジオキサン−2,5−ジイルは、左右対称ではない。−O−が左末端基の側に位置する場合(左向き;15−19)と、右末端基の側に位置する場合(右向き;15-20)とがある。好ましい1,3−ジオキサン−2,5−ジイルは、右向き(15−20)である。テトラヒドロピラン−2,5−ジイル(15−21および15−22)も左右対称ではない。好ましいテトラヒドロピラン−2,5−ジイルは、右向き(15−22)である。ピリミジン−2,5−ジイルおよびピリジン−2,5−ジイルにおいても、右向き(15−24および15−26)が好ましい。すなわち、右向きとは、OやNがテトラフルオロプロペニルの方にあることである。
【0090】
環A
1、環A
2、環A
3、および環A
4のより好ましい例は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、およびテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。
【0091】
環B
1の好ましい例は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、ハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレンである。ハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレンとしては、前記環A
1、環A
2、環A
3、および環A
4と同様である。
【0092】
式(1)において、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は独立して、単結合、−(CH
2)
2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2O−、−OCH
2−、または−CF=CF−である。
【0093】
Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4の好ましい例は、単結合、−(CH
2)
2−、−CH=CH−、−COO−、および−CF
2O−である。Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4のより好ましい例は、単結合、−(CH
2)
2−、および−CH=CH−である。Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4の全てが単結合である場合、あるいは単結合と1つの−(CH
2)
2−、または1つの−CH=CH−との組み合わせが特に好ましい。
【0094】
式(1)において、l、m、n、およびoは独立して、0または1であり、その和は1以上である。l、m、n、およびoの和の好ましい例は、1、2、および3である。l、m、n、およびoの和のより好ましい例は、1および2である。
1−2.化合物(1)の物性とその調整
化合物(1)において、R
1、環A
1、環A
2、環A
3、環A
4、環B
1、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4の種類とl、m、n、およびoの和を適切に組み合わせることによって、透明点、光学的異方性、誘電率異方性などの物性を任意に調整することが可能である。化合物の物性に大きな差異がないので、化合物(1)は、
2H(重水素)、
13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。R
1などの種類が化合物(1)の物性に及ぼす主要な効果を以下に説明する。
【0095】
左末端基R
1が直鎖であるときは、液晶相の温度範囲が広く、そして粘度が小さい。R
1が分岐鎖であるときは、他の液晶性化合物との相溶性がよい。R
1が光学活性である化合物は、キラルドーパントとして有用である。この化合物を組成物に添加することによって、液晶表示素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(reverse twisted domain)を防止することができる。R
1が光学活性でない化合物は、組成物の成分として有用である。R
1がアルケニルであるとき、好ましい立体配置は、前記したように二重結合の位置に依存する。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。
【0096】
環A
1、環A
2、環A
3、および環A
4の総てが1,4−シクロヘキシレンであるときは、透明点が高く、粘度が小さい。環A
1、環A
2、環A
3、および環A
4の少なくとも1つが1,4−フェニレン、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレンであるときは、光学的異方性が比較的大きく、そして配向秩序パラメーター(orientational order parameter)が比較的大きい。環A
1、環A
2、環A
3および環A
4の総てが、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレン、またはこれらの組み合わせであるときは、光学的異方性が特に大きい。環A
1、環A
2、環A
3、および環A
4の少なくとも1つが1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであるときは、誘電率異方性が大きい。環A
1、環A
2、環A
3、および環A
4の少なくとも1つがテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであるときは、他の液晶性化合物との相溶性が良好である。
【0097】
環B
1が1,4−シクロヘキシレンであるときは、熱、光などに対する安定性が高く、粘度が小さい。環B
1が1,4−フェニレン、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレンであるときは、透明点が高く、光学的異方性が大きく、誘電率異方性が大きい。
【0098】
結合基Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4が、単結合、−(CH
2)
2−、−CH=CH−、−CF
2O−、−OCF
2−、または−CF=CF−であるときは、粘度が小さい。結合基が、単結合、−(CH
2)
2−、または−CH=CH−であるときは、粘度がより小さい。結合基が−CH=CH−であるときは、液晶相の温度範囲が広く、そして弾性定数(K)が大きい。結合基が−C≡C−であるときは、光学的異方性が大きい。特に、結合基が−CF
2O−または−COO−であるときは、誘電率異方性が大きい。
【0099】
l、m、n、およびoの和が1であるときは、粘度が小さく、他の液晶性化合物との相溶性が良好である。l、m、n、およびoの和が2であるときは、粘度が小さく、透明点が高い。l、m、n、およびoの和が3または4であるときは、粘度が小さく、透明点が特に高い。
【0100】
以上のように、環構造、末端基、結合基などの種類と環構造の数を適切に選択することによって目的の物性を有する化合物を得ることができる。したがって、化合物(1)は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VAのようなモードの液晶表示素子に用いられる液晶組成物の成分として有用である。
1−3.化合物(1)の例
化合物(1)の好ましい例は、化合物(1−1)〜(1−3)である。より好ましい例は、化合物(1−4)〜(1−19)、化合物(1−20)〜(1−31)、および化合物(1−32)〜(1−39)である。最も好ましい例は、化合物(1−40)〜(1−47)である。
【0102】
式(1−1)〜(1−3)において、R
1は、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;環A
1、環A
2、および環A
3は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;環B
1は1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレンであり;Z
1、Z
2、およびZ
3は独立して、単結合、−(CH
2)
2−、または−CH=CH−である。
【0104】
式(1−4)〜(1−19)において、R
1は炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;L
1、L
2、L
3、およびL
4は水素またはフッ素である。
【0106】
式(1−20)〜(1−31)において、R
1は炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;L
1は水素またはフッ素である。
【0108】
式(1−32)〜(1−39)において、R
1は炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6、およびL
7は水素またはフッ素である。
【0109】
本発明の液晶性化合物は、前記R
1、環A
1、環A
2、環A
3、環A
4、および環B
1、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4とともに、テトラフルオロプロペニルを有しているので熱、光などに対する高い安定性、高い透明点、液晶相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな誘電率異方性、適切な弾性定数、他の液晶性化合物との優れた相溶性などにバランスよく優れ、しかも特に大きな誘電率異方性を有する。
【0110】
化合物(1−4)〜(1−19)は、熱、光などに対する高い安定性、高い透明点、および小さな粘度という観点から好ましい。化合物(1−20)〜(1−31)は、高い透明点および優れた相溶性という観点から好ましい。化合物(1−32)〜(1−39)は、高い透明点、大きな光学的異方性、および大きな誘電率異方性という観点から好ましい。
【0112】
これらの式において、R
1は炭素数1〜10のアルキルであり;L
1、L
2、およびL
3は独立して、水素またはフッ素である。
1−4.化合物(1)の合成
化合物(1)の合成法について説明する。化合物(1)は有機合成化学の方法を適切に組み合わせることにより合成できる。出発物に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、「オーガニックシンセシス」(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、「オーガニック・リアクションズ」(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、「コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス」(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、「新実験化学講座」(丸善)などの成書に記載されている。
1−4−1.結合基の生成
化合物(1)における結合基を生成する方法の例は、下記のスキームのとおりである。このスキームにおいて、MSG
1(またはMSG
2)は、少なくとも1つの環を有する一価の有機基である。複数のMSG
1(またはMSG
2)が表わす一価の有機基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。
【0115】
(I)単結合の生成
所定の環を有するホウ酸(16)と公知の方法で合成されるハロゲン化合物(17)とを、炭酸塩水溶液中、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成される化合物(18)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で化合物(17)を反応させることによっても合成される。
(II)−COO−と−OCO−の生成
化合物(18)にn−ブチルリチウムを、次いで二酸化炭素を反応させてカルボン酸(19)を得る。化合物(19)と、公知の方法で合成されるフェノール(20)とをDCC(N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて−COO−を有する化合物(1B)を合成する。この方法によって−OCO−を有する化合物も合成する。
(III)−CF
2O−と−OCF
2−の生成
化合物(1B)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理して化合物(21)を得る。化合物(21)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、−CF
2O−を有する化合物(1C)を合成する。M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照。化合物(1C)は化合物(21)を(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(DAST)でフッ素化しても合成される。W. H. Bunnelle et al.,J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照。この方法によって−OCF
2−を有する化合物も合成する。Peer. Kirsch et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1480.に記載の方法によってこれらの結合基を生成させることも可能である。
(IV)−CH=CH−の生成
化合物(18)をn−ブチルリチウムで処理した後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのホルムアミドと反応させてアルデヒド(23)を得る。公知の方法で合成されるホスホニウム塩(22)をカリウムtert−ブトキシドのような塩基で処理して発生させたリンイリドを、アルデヒド(23)に反応させて化合物(1D)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
(V)−(CH
2)
2−の生成
化合物(1D)をパラジウム炭素のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1E)を合成する。
(VI)−C≡C−の生成
ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下で、化合物(18)に2−メチル−3−ブチン−2−オールを反応させたのち、塩基性条件下で脱保護して化合物(24)を得る。ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(24)を化合物(17)と反応させて、化合物(1F)を合成する。
(VII)−CH
2O−と−OCH
2−の生成
化合物(23)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元して化合物(25)を得る。これを臭化水素酸などでハロゲン化して化合物(26)を得る。炭酸カリウムなどの存在下で、化合物(26)を化合物(20)と反応させて化合物(1G)を合成する。
(VIII)−CF=CF−の生成
化合物(18)をn−ブチルリチウムで処理したあと、テトラフルオロエチレンを反応させて化合物(27)を得る。化合物(17)をn−ブチルリチウムで処理したあと化合物(27)と反応させて化合物(1H)を合成する。
【0116】
以上を組み合わせて臭化物(28)を合成する。
1−4−2.環A
1、環A
2、環A
3、環A
4、および環B
1の生成
1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイルなどの環に関しては出発物が市販されているか、または合成法がよく知られている。このような環に相当する、MSG化合物(16)〜(18)を使用する。
1−4−3.化合物(1)を合成する方法
化合物(1)を合成する方法の例は、次のとおりである。公知の方法により合成される臭化物(28)とメルカプトフェニルテトラゾール(29)をKOHなどの塩基の存在下で反応させてスルフィド(30)を得る。このスルフィド(30)をMCPBA(メタクロロ過安息香酸)などの酸化剤で酸化してスルホン(31)を得る。スルホン(31)にLDA(リチウムジイソプロピルアミド)、ついでNFSI(N−フルオロベンゼンスルホンイミド)を反応させてフッ素化スルホン(32)を得る。このフッ素化スルホン(32)を、KHMDS(ヘキサメチルジシラザンカリウム)の存在下、トリフルオロアセトアルデヒド(33)と反応させて化合物(1)を合成する。なお、この反応に用いるトリフルオロアセトアルデヒド(33)は、エチルヘミアセタール(34)を濃硫酸中で加熱することにより得られる。
【0118】
これらの化合物において、R
1、環A
1、環A
2、環A
3、環A
4、環B
1、Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、l、m、n、およびoの定義は、前記と同じである。
2.組成物(1)
本発明の液晶組成物(1)について説明をする。この組成物(1)は、少なくとも1つの化合物(1)を成分として含む。組成物(1)は、2つ以上の化合物(1)を含んでいてもよい。液晶性化合物の成分が化合物(1)のみであってもよい。組成物(1)は、化合物(1)の少なくとも1つを1〜99重量%の範囲で含有することが、優良な特性を発現させるために好ましい。より好ましい割合は、5〜60重量%の範囲である。組成物(1)は、化合物(1)と、化合物(1)以外の種々の液晶性化合物とを含んでもよい。
【0119】
好ましい組成物は、以下に示す成分B、C、D、およびEから選択された化合物を含む。組成物(1)を調製するときには、例えば、化合物(1)の誘電率異方性を考慮して成分を選択することもできる。成分を適切に選択した組成物は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな誘電率異方性、および適切な弾性定数を有する。
【0120】
成分Bは、化合物(2)、(3)および(4)である。成分Cは化合物(5)である。成分Dは、化合物(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、および(11)である。
【0121】
成分Eは、化合物(12)、(13)および(14)である。これらの成分について、順に説明する。
【0122】
成分Bは、式(2)〜(4)の右末端にハロゲンまたはフッ素含有基を有する化合物である。(末端の一方が、ベンゼン環に結合したフッ素含有基である)
成分Bの好ましい例として、化合物(2−1)〜(2−16)、化合物(3−1)〜(3−112)、化合物(4−1)〜(4−54)を挙げることができる。
【0131】
これらの化合物(成分B)において、R
2およびX
1の定義は、前記と同じである。
【0132】
成分Bは、誘電率異方性が正であり、熱、光などに対する安定性が非常に優れているので、TFTモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分Bの含有量は、組成物の全重量に対して1〜99重量%の範囲が適するが、好ましくは10〜97重量%の範囲、より好ましくは40〜95重量%の範囲である。この組成物は、化合物(12)、(13)、および(14)(成分E)をさらに添加することにより粘度を調整することができる。
【0133】
成分Cは、式(5)の右末端基が−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nである化合物(5)である。
(末端の一方が、ベンゼン環に結合したシアノ含有基である)
成分Cの好ましい例として、化合物(5−1)〜(5−64)を挙げることができる。
【0137】
これらの化合物(成分C)において、R
3およびX
2の定義は、前記と同じである。
【0138】
成分Cは、誘電率異方性が正であり、その値が大きいのでSTNモード用、TNモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合に主として用いられる。この成分Cを添加することにより、組成物の誘電率異方性を大きくすることができる。成分Cは、液晶相の温度範囲を広げる、粘度を調整する、または光学的異方性を調整する、という効果がある。成分Cは、素子の電圧−透過率曲線の調整にも有用である。
【0139】
STNモード用またはTNモード用の組成物を調製する場合には、成分Cの含有量は、組成物の全重量に対して1〜99重量%の範囲が適しているが、好ましくは10〜97重量%の範囲、より好ましくは40〜95重量%の範囲である。この組成物は、成分Eを添加することにより液晶相の温度範囲、粘度、光学的異方性、誘電率異方性などを調整できる
成分Dは、化合物(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、および(11)である。これらの化合物は、2、3−ジフルオロ−1,4−フェニレンのように、ラテラル位が2つのハロゲンで置換されたベンゼン環を有する。
【0140】
成分Dの好ましい例として、化合物(6−1)〜(6−6)、化合物(7−1)〜(7−15)、化合物(8−1)、化合物(9−1)〜(9−3)、化合物(10−1)〜(10−11)、および化合物(11−1)〜(11−10)を挙げることができる。
【0143】
これらの化合物(成分D)において、R
4およびR
5の定義は、前記と同じである。
【0144】
成分Dは、誘電率異方性が負の化合物である。成分Dは、主としてVAモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分Dの含有量を増加させると組成物の誘電率異方性が大きくなるが、粘度が大きくなる。そこで、誘電率異方性の要求値を満たす限り、含有量は少ないほうが好ましい。したがって、誘電率異方性の絶対値が5程度であることを考慮すると、充分な電圧駆動をさせるには、含有量が40重量%以上であることが好ましい。
【0145】
成分Dのうち、化合物(6)は2環化合物であるので、主として、粘度の調整、光学的異方性の調整、または誘電率異方性の調整の効果がある。化合物(7)および(8)は3環化合物であるので、上限温度を高くする、光学的異方性を大きくする、または誘電率異方性を大きくするという効果がある。化合物(9)、(10)および(11)は、誘電率異方性を大きくするという効果がある。
【0146】
VAモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合には、成分Dの含有量は、組成物の全重量に対して、好ましくは40重量%以上であり、より好ましくは50〜95重量%の範囲である。成分Dを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。成分Dを誘電率異方性が正である組成物に添加する場合は、成分Dの含有量が組成物の全重量に対して30重量%以下が好ましい。
【0147】
成分Eは、2つの末端基がアルキルなどである化合物である。成分Eの好ましい例として、化合物(12−1)〜(12−11)、化合物(13−1)〜(13−19)、および化合物(14−1)〜(14−6)を挙げることができる。
【0150】
これらの化合物(成分E)において、R
6およびR
7の定義は、前記と同じである。
【0151】
成分Eは、誘電率異方性の絶対値が小さいので、中性に近い化合物である。化合物(12)は、主として粘度の調整または光学的異方性の調整の効果がある。化合物(13)および(14)は、上限温度を高くすることによってネマチック相の温度範囲を広げる効果、または光学的異方性の調整の効果がある。
【0152】
成分Eの含有量を増加させると組成物の粘度が小さくなるが、誘電率異方性が小さくなる。そこで、誘電率異方性の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが好ましい。したがって、VAモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合には、成分Eの含有量は、組成物の全重量に対して、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上である。
液晶組成物の調製
組成物(1)の調製は、必要な成分を高い温度で溶解させるなどの方法により行われる。用途に応じて、この組成物に添加物を添加してよい。添加物の例は、光学活性化合物、重合可能な化合物、重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などである。このような添加物は当業者によく知られており、文献に記載されている。
【0153】
組成物(1)は、少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有してもよい。光学活性化合物として、公知のキラルド−プ剤を添加することができる。このキラルド−プ剤は液晶のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与えることによって逆ねじれを防ぐ、という効果を有する。キラルド−プ剤の好ましい例として、下記の光学活性化合物(Op−1)〜(Op−13)を挙げることができる。
【0155】
組成物(1)は、このような光学活性化合物を添加して、らせんピッチを調整する。らせんピッチは、TFTモード用およびTNモード用の組成物であれば40〜200μmの範囲に調整するのが好ましい。STNモード用の組成物であれば6〜20μmの範囲に調整するのが好ましい。BTNモード用の組成物の場合は、1.5〜4μmの範囲に調整するのが好ましい。らせんピッチの温度依存性を調整する目的で2つ以上の光学活性化合物を添加してもよい。
【0156】
組成物(1)は、重合可能な化合物を添加することによってPSAモード用に使用することもできる。重合可能な化合物の例はアクリレート、メタクリレート、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、エポキシ、ビニルケトン、オキセタンなどである。重合可能な化合物は、好ましくは光重合開始剤などの適切な開始剤存在下でUV照射などにより重合する。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。
【0157】
酸化防止剤は、大きな電圧保持率を維持するために有効である。酸化防止剤の好ましい例は、2,6−ジ−tert−ブチル−4−アルキルフェノールなどである。紫外線吸収剤は、上限温度の低下を防ぐために有効である。紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた好ましい。
【0158】
組成物(1)は、メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、テトラジン系などの二色性色素を添加すれば、GH(guest host)モード用に使用することもできる。
【0159】
光学活性化合物、重合可能な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素などの添加量は特に制限されない。
【0160】
この組成物を含有する素子は大きな電圧保持率を有する。この組成物は、AM素子、特に透過型のAM素子に適する。成分化合物の割合を制御することによって、またはその他の液晶性化合物を混合することによって、約0.08から約0.25の範囲の光学異方性を有する組成物、さらには約0.10から約0.30の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。この組成物は、ネマチック相を有する組成物としての使用、光学活性な化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用が可能である。
【0161】
発明の液晶組成物の好ましいネマチック相の下限温度は、少なくとも約−20℃以下であり、より好ましいネマチック相の下限温度は約−30℃以下であり、特により好ましいネマチック相の下限温度は約−40℃以下である。本発明の液晶組成物の好ましいネマチック相の上限温度は、少なくとも約70℃以上であり、より好ましいネマチック相の上限温度は約80℃以上であり、特により好ましいネマチック相の上限温度は約90℃以上である。本発明の液晶組成物の589nmで25℃における好ましい光学異方性は、約0.07から約0.20の範囲であり、より好ましい光学異方性は約0.07から約0.16の範囲であり、特により好ましい光学異方性は約0.08から約0.13の範囲である。本発明の液晶組成物の25℃における好ましい誘電率異方性は、少なくとも約2以上であり、より好ましい誘電率異方性は約3以上であり、特により好ましい誘電率異方性は約3.5以上である。
3.液晶表示素子
組成物(1)は、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード、PSAモードなどの動作モードを有し、アクティブマトリックス(AM方式)で駆動する液晶表示素子に使用できる。組成物(1)は、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード、VAモード、IPSモードなどの動作モードを有し、パッシブマトリクス(PM)方式で駆動する液晶表示素子にも使用することができる。これらのAM方式およびPM方式の素子は、反射型、透過型、半透過型のいずれのタイプにも適用ができる。
【0162】
組成物(1)は、ネマチック液晶をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子、液晶中に三次元網目状高分子を形成して作製した
ポリマ−分散型液晶表示素子(PDLCD)、ポリマ−ネットワ−ク液晶表示素子(PNLCD)にも使用できる。
【実施例】
【0163】
実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。特に断りのない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0164】
合成した化合物は、NMR分析などの方法により同定した。
NMR分析
測定装置は、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)社製)を用いた。
1H−NMRの測定では、試料をCDCl
3などの重水素化溶媒に溶解させ、測定は、室温で、500MHz、積算回数16回の条件で行った。テトラメチルシランを内部標準として用いた。
19F−NMRの測定では、CFCl
3を内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
[測定試料]
相構造および転移温度を測定するときには、液晶性化合物そのものを試料として用いた。ネマチック相の上限温度、粘度、光学的異方性、誘電率異方性などの物性を測定するときには、化合物を母液晶に混合して調製した組成物を試料として用いた。
【0165】
化合物を母液晶と混合した試料を用いる場合には、次の方法で測定を行った。化合物15重量%と母液晶85重量%とを混合して試料を調製した。この試料の測定値から、次の式で表わされる外挿法にしたがって、外挿値を計算し、この値を記載した。〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉)/〈化合物の重量%〉
化合物と母液晶との割合がこの割合であっても、結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出する場合には、化合物と母液晶との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出しなくなった割合で試料の物性を測定した。なお、特に断りのない限り、化合物と母液晶との割合は、15重量%:85重量%である。
【0166】
母液晶としては、下記の母液晶(i)を用いた。母液晶(i)の成分の割合を重量%で示す。
【0167】
【化41】
【0168】
[測定方法]
物性の測定は下記の方法で行った。それらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electronic Industries Association of Japan)、EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0169】
(1)相構造
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料(化合物)を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、相の種類を特定した。
【0170】
(2)転移温度(℃)
パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料(化合物)の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め、転移温度を決定した。化合物が固体からスメクチック相、ネマチック相などの液晶相に転移する温度を「液晶相の下限温度」と略すことがある。化合物が液晶相から液体に転移する温度を「透明点」と略すことがある。
【0171】
結晶はCと表した。結晶の種類区別がつく場合は、それぞれC
1またはC
2と表した。スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。スメクチック相の中で、スメクチックA相、スメクチックB相、スメクチックC相、またはスメクチックF相の区別がつく場合は、それぞれS
A、S
B、S
C、またはS
Fと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。転移温度は、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」のように表記した。これは、結晶からネマチック相への転移温度(CN)が50.0℃であり、ネマチック相から液体への転移温度(透明点)が100.0℃であることを示す。
【0172】
(3)低温相溶性
化合物の割合が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、および1重量%となるように母液晶と化合物とを混合した試料を調製し、試料をガラス瓶に入れた。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管したあと、結晶またはスメクチック相が析出しているかどうか観察をした。
【0173】
(4)ネマチック相の上限温度(T
NIまたはNI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0174】
(5)ネマチック相の下限温度(T
C;℃)
ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、T
Cを≦−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0175】
(6)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s)
E型回転粘度計を用いて測定した。
【0176】
(7)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s)
測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。このTN素子に16Vから19.5Vの範囲で0.5V毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)と
ピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度を測定した素子を用い、下に記載した方法で求めた。
【0177】
(8)光学的異方性(屈折率異方性;25℃で測定;Δn)
測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学的異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥の式から計算した。
【0178】
(9)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0179】
(10)弾性定数(K;25℃で測定;pN)
測定には横河・ヒューレットパッカード株式会社製のHP4284A型LCRメータを用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである水平配向素子に試料を入れた。このセルに0ボルトから20ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。測定した静電容量(C)と印加電圧(V)の値を「液晶デバイスハンドブックク」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.99)からK
11およびK
33の値を得た。次に171頁にある式(3.18)に、先ほど求めたK
11およびK
33の値を用いてK
22を算出した。弾性定数は、このようにして求めたK
11、K
22、およびK
33の平均値である。
【0180】
(11)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)
測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が約0.45/Δn(μm)であり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(32Hz、矩形波)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧である。
〔原料〕
ソルミックス(登録商標)A−11は、エタノール(85.5%),メタノール(13.4%)とイソプロパノール(1.1%)の混合物であり、日本アルコール販売(株)から入手した。テトラヒドロフランをTHFと略すことがある。N−フルオロベンゼンスルホンイミドをNFSIと略すことがある。
[実施例1]
化合物(No.1−1−1)の合成
【0181】
【化42】
【0182】
第1工程
窒素雰囲気下、化合物(T−1)(21.0g)、メルカプトフェニルテトラゾール(13.7g)、およびTBAHS(テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩)(1.18g)を反応器に入れ、トルエン(80.0ml)に溶解させた。そこへ、水酸化カリウム(5.56g)の水(40.0ml)溶液をゆっくりと加え、70℃で8時間攪拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮して、化合物(T−2)(27.8g;100%)を得た。
【0183】
第2工程
窒素雰囲気下、化合物(T−2)(27.8g)を反応器に入れ、ソルミックス(登録商標)A−11(400ml)に溶解させ、0℃に冷却した。そこへ、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(8.62g)の35%過酸化水素水(67.8g)溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつ24時間攪拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、トルエン:酢酸エチル=9:1)で精製した。さらにトルエンからの再結晶により精製して、化合物(T−3)(17.0g;56.6%)を得た。
【0184】
第3工程
窒素雰囲気下、化合物(T−3)(8.49g)を反応器に入れて、トルエン(250ml)に溶解させ、−70℃に冷却した。そこへ、LDA(1.12M;THF溶液;24.6ml)をゆっくりと加え、12分間攪拌した。次に、NFSI(9.32g)を加え、50分間攪拌し、室温に戻しつつさらに50分間攪拌した。反応混合物を−70℃に再び冷却したのち、トリフルオロアセトアルデヒド(7.77g)のTHF(50.0ml)溶液、およびKHMDS(1.00M;THF溶液;39.4ml)をゆっくりと加え、1時間攪拌し、室温に戻しつつさらに3時間攪拌した。なお、反応に用いたトリフルオロアセトアルデヒドは、トリフルオロアセトアルデヒドエチルヘミアセタール(14.2g)と濃硫酸(100ml)を混合し、80℃で攪拌することにより得られた。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製した。さらにソルミックス(登録商標)A−11からの再結晶により精製して、化合物(No.1−1−1)(1.74g;27.5%)を得た。
【0185】
化学シフトδ(ppm;CDCl
3):4.93(dq,J=34.4Hz,J=7.5Hz,1H)、2.16−2.04(m,1H)、1.98−1.91(m,2H)、1.86−1.66(m,6H)、1.35−1.19(m,4H)、1.19−1.10(m,3H)、1.10−0.91(m,6H)、0.91−0.79(m,5H).
化合物(No.1−1−1)の物性は、次のとおりであった。
【0186】
転移温度:C 68.4 (S
B 65.7) I.
上限温度(T
NI)=22.4℃;誘電率異方性(Δε)=13.2;光学的異方性(Δn)=0.050;粘度(η)=16.2mPa・s.
[実施例2]
化合物(No.1−2−3)の合成
【0187】
【化43】
【0188】
第1工程
窒素雰囲気下、化合物(T−4)(16.0g)、メルカプトフェニルテトラゾール(8.31g)、およびTBAHS(テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩)(0.720g)を反応器に入れ、トルエン(80.0ml)に溶解させた。そこへ、水酸化カリウム(3.39g)の水(40.0ml)溶液をゆっくりと加え、70℃で8時間攪拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮して、化合物(T−5)(20.1g;100%)を得た。
【0189】
第2工程
窒素雰囲気下、化合物(T−5)(21.6g)を反応器に入れ、クロロホルム(300ml)に溶解させ、−10℃に冷却した。そこへ、MCPBA(23.6g)のクロロホルム(300ml)溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつ24時間攪拌した。反応混合物を2N水酸化ナトリウム水溶液に注ぎ込み、水層をジクロロメタンで抽出した。一緒にした有機層を2N水酸化ナトリウム水溶液、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製した、さらにトルエンからの再結晶により精製して、化合物(T−6)(18.2g;78.8%)を得た。
【0190】
第3工程
窒素雰囲気下、化合物(T−6)(10.0g)を反応器に入れて、トルエン(400ml)に溶解させ、−70℃に冷却した。そこへ、LDA(1.12M;THF溶液;24.6ml)をゆっくりと加え、12分間攪拌した。次に、NFSI(9.34g)を加え、50分間攪拌し、室温に戻しつつさらに50分間攪拌した。反応混合物を−70℃に再び冷却したのち、トリフルオロアセトアルデヒド(7.51g)のTHF(50.0ml)溶液、およびKHMDS(1.00M;THF溶液;39.5ml)をゆっくりと加え、1時間攪拌し、室温に戻しつつさらに3時間攪拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製した。さらにヘプタンとソルミックス(登録商標)A−11との混合溶媒(体積比、1:1)からの再結晶により精製して、化合物(No.1−2−3)(2.27g;29.0%)を得た。
【0191】
化学シフトδ(ppm;CDCl
3):7.13−7.03(m,4H)、4.95(dq,J=34.4Hz,J=7.5Hz,1H)、2.55(t,J=7.6Hz,2H)、2.42(tt,J=12.1Hz,J=3.5Hz,1H)、2.18−2.05(m,1H)、2.01−1.78(m,8H)、1.68−1.57(m,2H)、1.49−1.36(m,2H)、1.33−1.21(m,2H)、1.21−1.12(m,6H)、0.94(t,J=7.3Hz,3H).
化合物(No.1−2−3)の物性は、次のとおりであった。
【0192】
転移温度:C 105 S
B 134 N 147 I.
上限温度(T
NI)=100℃;誘電率異方性(Δε)=13.8;光学的異方性(Δn)=0.102;粘度(η)=52.3mPa・s.
[実施例3]
化合物(No.1−2−43)の合成
【0193】
【化44】
【0194】
第1工程
化合物(T−7)(18.2g)を原料として用い、実施例1の第1工程と同様の手法により、化合物(T−8)(22.4g;100%)を得た。
【0195】
第2工程
化合物(T−8)(22.4g)を原料として用い、実施例2の第2工程と同様の手法により、化合物(T−9)(21.4g;89.9%)を得た。
【0196】
第3工程
窒素雰囲気下、化合物(T−9)(18.3g)を反応器に入れて、トルエン(730ml)に溶解させ、−70℃に冷却した。そこへ、LDA(1.12M;THF溶液;41.7ml)をゆっくりと加え、12分間攪拌した。次に、NFSI(15.8g)を加え、50分間攪拌し、室温に戻しつつさらに50分間攪拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製した。さらにトルエンからの再結晶により精製して、化合物(T−10)(12.6g;66.6%)を得た。
【0197】
第4工程
窒素雰囲気下、化合物(T−10)(13.2g)を反応器に入れて、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)(200ml)およびDMPU(N,N'−ジメチルプロピレン尿素)(200ml)に溶解させ、−70℃に冷却した。そこへ、KHMDS(1.00M;THF溶液;46.6ml)、およびトリフルオロアセトアルデヒド(13.2g)のTHF(10.0ml)溶液をゆっくりと加え、1時間攪拌し、室温に戻しつつさらに3時間攪拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、ヘプタン:トルエン=10:1)で精製した。さらにソルミックス(登録商標)A−11からの再結晶により精製して、化合物(No.1−2−43)(1.68g;16.5%)を得た。
【0198】
化学シフトδ(ppm;CDCl
3):7.56−7.52(m,2H)、7.52−7.46(m,2H)、7.45−7.40(m,1H)、7.32−7.27(m,4H)、5.69(dq,J=32.2Hz,J=7.3Hz,1H)、2.65(t,J=7.9Hz,2H)、1.75−1.65(m,2H)、0.98(t,J=7.5Hz,3H).
化合物(No.1−2−43)の物性は、次のとおりであった。
【0199】
転移温度:C 91.4 N 108 I.
上限温度(T
NI)=84.4℃;誘電率異方性(Δε)=45.1;光学的異方性(Δn)=0.239;粘度(η)=69.8mPa・s.
[実施例4]
化合物(No.1−2−30)の合成
【0200】
【化45】
【0201】
第1工程
化合物(T−11)(17.6g)を原料として用い、実施例1の第1工程と同様の手法により、化合物(T−12)(21.8g;99.1%)を得た。
【0202】
第2工程
化合物(T−12)(20.3g)を原料として用い、実施例2の第2工程と同様の手法により、化合物(T−13)(16.4g;75.9%)を得た。
【0203】
第3工程
化合物(T−13)(15.4g)を原料として用い、実施例3の第3工程と同様の手法により、化合物(T−14)(10.9g;68.6%)を得た。
【0204】
第4工程
窒素雰囲気下、化合物(T−14)(9.86g)を反応器に入れて、THF(400ml)に溶解させ、−70℃に冷却した。そこへトリフルオロアセトアルデヒド(13.3g)のTHF(10.0ml)溶液、およびKHMDS(1.00M;THF溶液;36.9ml)をゆっくりと加え、1時間攪拌し、室温に戻しつつさらに3時間攪拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、ヘプタン:酢酸エチル=10:1)で精製した。さらにイソプロパノールと酢酸エチルとの混合溶媒(体積比、1:1)からの再結晶により精製して、化合物(No.1−2−30)(2.62g;34.9%)を得た。
【0205】
化学シフトδ(ppm;CDCl
3):4.94(dq,J=34.3Hz,J=7.4Hz,1H)、4.19−4.12(m,3H)、3.38(dd,J=11.5Hz,J=11.5Hz,2H)、2.18−2.05(m,1H)、2.00−1.89(m,4H)、1.78−1.60(m,5H)、1.55−1.46(m,1H)、1.33−1.09(m,9H)、1.02−0.90(m,3H)、0.90−0.76(m,5H).
化合物(No.1−2−30)の物性は、次のとおりであった。なお、上限温度、粘度、光学的異方性、誘電率異方性の測定には、化合物と母液晶との割合が5重量%:95重量%である試料を用いた。
【0206】
転移温度:C 74.4 S
B 183 I.
上限温度(T
NI)=134℃;誘電率異方性(Δε)=14.1;光学的異方性(Δn)=0.103;粘度(η)=80.0mPa・s.
[実施例5]
化合物(No.1−2−71)の合成
【0207】
【化46】
【0208】
第1工程
化合物(T−15)(18.1g)を原料として用い、実施例1の第1工程と同様の手法により、化合物(T−16)(24.1g;97.2%)を得た。
【0209】
第2工程
化合物(T−16)(24.1g)を原料として用い、実施例2の第2工程と同様の手法により、化合物(T−17)(16.3g;62.2%)を得た。
【0210】
第3工程
化合物(T−17)(16.3g)を原料として用い、実施例3の第3工程と同様の手法により、化合物(T−18)(13.0g;76.2%)を得た。
【0211】
第4工程
化合物(T−18)(13.0g)を原料として用い、実施例4の第4工程と同様の手法により、化合物(T−19)(4.39g;49.1%)を得た。
【0212】
第5工程
窒素雰囲気下、化合物(T−19)(4.39g)、蟻酸(21.9ml)、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド)(1.50g)、およびトルエン(45.0ml)を反応器に入れて、室温で12時間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、炭酸水素ナトリウムを用いて中和した後、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、化合物(T−20)(2.76g;79.1%)を得た。
【0213】
第6工程
窒素雰囲気下、化合物(T−3)(1.56g)、および化合物(T−20)(0.750g)を反応器に入れて、DME(エチレングリコールジメチルエーテル)(60.0ml)に溶解させ、−70℃に冷却した。そこへKHMDS(1.00M;THF溶液;4.01ml)をゆっくりと加え、1時間攪拌し、室温に戻しつつさらに1時間攪拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製した。さらにヘプタンとソルミックス(登録商標)A−11との混合溶媒(体積比、1:1)からの再結晶により精製して、化合物(No.1−2−71)(0.550g;38.5%)を得た。
【0214】
化学シフトδ(ppm;CDCl
3):5.37−5.23(m,2H)、4.94(dq,J=34.3Hz,J=7.5Hz,1H)、2.18−2.05(m,1H)、1.98−1.91(m,2H)、1.91−1.65(m,12H)、1.35−1.24(m,4H)、1.18−1.06(m,5H)、1.05−0.91(m,8H)、0.91−0.79(m,5H).
化合物(No.1−2−71)の物性は、次のとおりであった。なお、上限温度、粘度、光学的異方性、誘電率異方性の測定には、化合物と母液晶との割合が3重量%:97重量%である試料を用いた。
【0215】
転移温度:C 78.3 S
G 150 S
B 172 N 229 I.
上限温度(T
NI)=168℃;誘電率異方性(Δε)=12.1;光学的異方性(Δn)=0.137;粘度(η)=60.0mPa・s.
[実施例6]
化合物(No.1−2−116)の合成
【0216】
【化47】
【0217】
第1工程
窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(10.1g)、およびTHF(300ml)を反応器に入れて、0℃に冷却した。そこへ化合物(T−21)(30.0g)のTHF(200ml)溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつ1時間撹拌した。反応混合物を0℃に再び冷却したのち、クロロメチルメチルエーテル(18.7g)のTHF(30.0ml)溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつさらに12時間攪拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、化合物(T−22)(30.5g;79.2%)を得た。
【0218】
第2工程
窒素雰囲気下、化合物(T−22)(30.5g)、およびトルエン(500ml)を反応器に入れて、−70℃に冷却した。そこへDIBAL(水素化ジイソブチルアルミニウム)(1.00M;トルエン溶液;161ml)をゆっくりと加え室温に戻しつつ12時間撹拌した。反応混合物を1N塩酸に注ぎ込み、不溶物を濾別したのち、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、トルエン:酢酸エチル=5:1)で精製して、化合物(T−23)(29.8g;96.1%)を得た。
【0219】
第3工程
窒素雰囲気下、水素化ホウ素ナトリウム(5.86g)、メタノール(150ml)、およびTHF(50.0ml)を反応器に入れて、0℃に冷却した。そこへ化合物(T−23)(29.8g)のTHF(100ml)溶液をゆっくりと加え室温に戻しつつ2時間撹拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮して、化合物(T−24)(30.1g;100%)を得た。
【0220】
第4工程
窒素雰囲気下、化合物(T−24)(30.1g)、トリフェニルホスフィン(42.5g)、およびジクロロメタン(300ml)を反応器に入れて、0℃に冷却した。そこへ四臭化炭素(53.8g)のジクロロメタン(280ml)溶液をゆっくりと加え室温に戻しつつ3時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、ヘプタン:トルエン=1:1)で精製して、化合物(T−25)(32.1g;81.5%)を得た。
【0221】
第5工程
化合物(T−25)(32.1g)を原料として用い、実施例1の第1工程と同様の手法により、化合物(T−26)(43.1g;98.4%)を得た。
【0222】
第6工程
化合物(T−26)(43.1g)を原料として用い、実施例2の第2工程と同様の手法により、化合物(T−27)(35.3g;75.3%)を得た。
【0223】
第7工程
化合物(T−27)(33.5g)を原料として用い、実施例3の第3工程と同様の手法により、化合物(T−28)(34.1g;97.4%)を得た。
【0224】
第8工程
化合物(T−28)(31.0g)を原料として用い、実施例3の第4工程と同様の手法により、化合物(T−29)(3.20g;15.0%)を得た。
【0225】
第9工程
窒素雰囲気下、化合物(T−29)(3.20g)、エタノール(50.0ml)、および2N塩酸(15.0ml)を反応器に入れて、60℃で6時間撹拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、トルエン:酢酸エチル=5:1)で精製して、化合物(T−30)(2.71g;100%)を得た。
【0226】
第10工程
窒素雰囲気下、化合物(T−30)(2.71g)、化合物(T−31)(4.85g)、炭酸カリウム(4.64g)、TBAB(0.722g)、およびDMF(80.0ml)を反応器に入れて、90℃で2時間撹拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、ヘプタン:トルエン=20:1)で精製した。さらにソルミックス(登録商標)A−11からの再結晶により精製して、化合物(No.1−2−116)(3.26g;55.7%)を得た。
【0227】
化学シフトδ(ppm;CDCl
3):7.51−7.48(m,2H)、7.33−7.28(m,2H)、7.25−7.20(m,2H)、7.01−6.96(m,2H)、5.62(dq,J=32.0Hz,J=7.3Hz,1H)、2.65(t,J=7.8Hz,2H)、1.74−1.65(m,2H)、0.97(t,J=7.5Hz,3H).
化合物(No.1−2−116)の物性は、次のとおりであった。
【0228】
転移温度:C 59.4 I.
上限温度(T
NI)=23.7℃;誘電率異方性(Δε)=55.2;光学的異方性(Δn)=0.144;粘度(η)=54.3mPa・s.
[実施例7]
化合物(No.1−3−115)の合成
【0229】
【化48】
【0230】
第1工程
化合物(T−32)(24.2g)を原料として用い、実施例1の第1工程と同様の手法により、化合物(T−33)(30.3g;88.6%)を得た。
【0231】
第2工程
化合物(T−33)(30.3g)を原料として用い、実施例2の第2工程と同様の手法により、化合物(T−34)(20.4g;61.4%)を得た。
【0232】
第3工程
化合物(T−34)(20.4g)を原料として用い、実施例3の第3工程と同様の手法により、化合物(T−35)(20.1g;93.9%)を得た。
【0233】
第4工程
化合物(T−35)(20.1g)を原料として用い、実施例4の第4工程と同様の手法により、化合物(T−36)(5.82g;43.6%)を得た。
【0234】
第5工程
化合物(T−36)(5.82g)を原料として用い、実施例5の第5工程と同様の手法により、化合物(T−37)(4.81g;100%)を得た。
【0235】
第6工程
窒素雰囲気下、化合物(T−38)(25.0g)、トルエン(50.0ml)、および2,2,4−トリメチルペンタン(50.0ml)を反応器に入れて、60℃に加熱した。そこへプロパンジチオール(10.9ml)を加え1時間撹拌したのち、トリフルオロメタンスルホン酸(19.4ml)をゆっくりと加え1時間撹拌した。続いて留出してくる水を除去しつつ、さらに2時間加熱還流を行った。反応混合物を室温まで冷却したのち、減圧下で濃縮し、残渣をt−ブチルメチルエーテルからの再結晶により精製して、化合物(T−39)(40.8g;86.8%)を得た。
【0236】
第7工程
窒素雰囲気下、化合物(T−40)(2.41g)、トリエチルアミン(1.91ml)、およびジクロロメタン(150ml)を反応器に入れて、−70℃に冷却した。そこへ化合物(T−39)(5.00g)のジクロロメタン(150ml)溶液をゆっくりと加え1時間撹拌した。次にフッ化水素トリエチルアミン錯体(5.13ml)をゆっくりと加え30分間撹拌した。続いて臭素(2.70ml)をゆっくりと加えさらに1時間撹拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、炭酸水素ナトリウムを用いて中和したのち、水層をジクロロメタンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製して、化合物(T−41)(3.61g;76.6%)を得た。
【0237】
第8工程
窒素雰囲気下、化合物(T−41)(2.09g)、およびジエチルエーテル(60.0ml)を反応器に入れて、−70℃に冷却した。そこへn−ブチルリチウム(1.65M;n−ヘキサン溶液;3.12ml)をゆっくりと加え2時間撹拌した。次に化合物(T−37)(1.18g)のジエチルエーテル(5.00ml)溶液をゆっくりと加え室温に戻しつつ12時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、化合物(No.T−42)(1.91g;70.7%)を得た。
【0238】
第9工程
窒素雰囲気下、化合物(T−42)(1.80g)、およびジクロロメタン(16.0ml)を反応器に入れて、−70℃に冷却した。そこへトリエチルシラン(0.540ml)、および三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(0.430ml)をゆっくりと加え0℃まで昇温しつつ2時間撹拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製した。さらにヘプタンとソルミックス(登録商標)A−11との混合溶媒(体積比、1:1)からの再結晶により精製して、化合物(No.1−3−115)(0.900g;51.4%)を得た。
【0239】
化学シフトδ(ppm;CDCl
3):7.16−7.10(m,1H)、6.93−6.85(m,2H)、5.00(dq,J=34.3Hz,J=7.4Hz,1H)、2.82(tt,J=11.7Hz,J=3.3Hz,1H)、2.33−2.22(m,1H)、2.10−1.95(m,7H)、1.89−1.80(m,2H)、1.80−1.68(m,4H)、1.57−1.45(m,4H)、1.40−1.26(m,4H)、1.20−1.11(m,3H)、1.10−0.92(m,6H)、0.92−0.80(m,5H).
化合物(No.1−3−115)の物性は、次のとおりであった。なお、上限温度、粘度、光学的異方性、誘電率異方性の測定には、化合物と母液晶との割合が10重量%:90重量%である試料を用いた。
【0240】
転移温度:C 150 S
B 159 N 276 I.
上限温度(T
NI)=174℃;誘電率異方性(Δε)=14.9;光学的異方性(Δn)=0.127;粘度(η)=77.2mPa・s.
[実施例8]
化合物(No.1−1−13)の合成
【0241】
【化49】
【0242】
第1工程
窒素雰囲気下、化合物(T−20)(1.09g)、化合物(T−43)(0.690g)、6N塩酸(1.65ml)、およびアセトン(5.00ml)を反応器に入れて、3時間加熱還流を行った。反応混合物を食塩水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、ヘプタン:酢酸エチル=7:1)で精製した。さらにヘプタンとソルミックス(登録商標)A−11との混合溶媒(体積比、1:1)からの再結晶により精製して、化合物(No.1−1−13)(0.842g;54.0%)を得た。
【0243】
化学シフトδ(ppm;CDCl
3):4.94(dq,J=34.3Hz,J=7.5Hz,1H)、4.18(d,J=5.1Hz,1H)、4.07(dd,J=11.8Hz,J=4.7Hz,2H)、3.28(dd,J=11.5Hz,J=11.5Hz,2H)、2.18−2.06(m,1H)、2.02−1.90(m,5H)、1.56−1.47(m,1H)、1.34−1.09(m,6H)、1.05−0.96(m,2H)、0.89(t,J=7.4Hz,3H).
化合物(No.1−1−13)の物性は、次のとおりであった。
【0244】
転移温度:C 64.7 I.
上限温度(T
NI)=−26.3℃;誘電率異方性(Δε)=23.8;光学的異方性(Δn)=0.024;粘度(η)=42.9mPa・s.
[実施例9]
化合物(No.1−2−18)の合成
【0245】
【化50】
【0246】
第1工程
窒素雰囲気下、化合物(T−44)(1.00g)、およびTHF(15.0ml)を反応器に入れて、−70℃に冷却した。そこへsec−ブチルリチウム(1.06M;シクロヘキサン、n−ヘキサン溶液;4.75ml)をゆっくりと加え2時間撹拌した。次に化合物(T−37)(1.18g)のTHF(5.00ml)溶液をゆっくりと加え室温に戻しつつ2時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、化合物(T−45)(1.59g;80.3%)を得た。
【0247】
第2工程
化合物(T−45)(1.59g)を原料として用い、実施例7の第9工程と同様の手法により、化合物(1−2−18)(0.541g;35.4%)を得た。
【0248】
化学シフトδ(ppm;CDCl
3):7.49−7.45(m,2H)、7.34−7.30(m,1H)、7.26−7.21(m,4H)、5.02(dq,J=34.2Hz,J=7.4Hz,1H)、2.88(tt,J=11.9Hz,J=3.4Hz,1H)、2.62(t,J=7.9Hz,2H)、2.35−2.24(m,1H)、2.13−2.00(m,4H)、1.73−1.45(m,6H)、0.97(t,J=7.3Hz,3H).
化合物(No.1−2−18)の物性は、次のとおりであった。
【0249】
転移温度:C 128 I.
上限温度(T
NI)=76.4℃;誘電率異方性(Δε)=20.5;光学的異方性(Δn)=0.157;粘度(η)=73.9mPa・s.
[実施例10]
化合物(No.1−1−42)の合成
【0250】
【化51】
【0251】
第1工程
窒素雰囲気下、化合物(T−46)(2.56g)、化合物(T−20)(1.50g)、およびDME(30.0ml)を反応器に入れて、−70℃に冷却した。そこへKHMDS(1.00M;THF溶液;8.03ml)をゆっくりと加え、1時間攪拌し、室温に戻しつつさらに1時間攪拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製した。さらにソルミックス(登録商標)A−11からの再結晶により精製して、化合物(No.1−1−42)(0.673g;29.0%)を得た。
【0252】
化学シフトδ(ppm;CDCl
3):5.37−5.24(m,2H)、4.95(dq,J=34.5Hz,J=7.5Hz,1H)、2.17−2.05(m,1H)、1.97−1.65(m,10H)、1.37−1.23(m,4H)、1.20−0.98(m,7H)、0.95−0.84(m,5H).
化合物(No.1−1−42)の物性は、次のとおりであった。
【0253】
転移温度:C 52.2 S
B 65.7 I.
上限温度(T
NI)=24.4℃;誘電率異方性(Δε)=11.9;光学的異方性(Δn)=0.057;粘度(η)=13.5mPa・s.
[実施例11]
化合物(No.1−1−4)の合成
【0254】
【化52】
【0255】
第1工程
化合物(T−47)(17.8g)を原料として用い、実施例1の第1工程と同様の手法により、化合物(T−48)(22.8g;100%)を得た。
【0256】
第2工程
化合物(T−48)(22.8g)を原料として用い、実施例2の第2工程と同様の手法により、化合物(T−49)(17.1g;69.8%)を得た。
【0257】
第3工程
化合物(T−49)(17.1g)を原料として用い、実施例3の第3工程と同様の手法により、化合物(T−50)(14.1g;79.2%)を得た。
【0258】
第4工程
化合物(T−50)(13.0g)を原料として用い、実施例4の第4工程と同様の手法により、化合物(T−51)(4.46g;46.4%)を得た。
【0259】
第5工程
化合物(T−51)(4.64g)を原料として用い、実施例5の第5工程と同様の手法により、化合物(T−52)(3.62g;92.8%)を得た。
【0260】
第6工程
窒素雰囲気下、メチルトリフェニルホスフィンブロミド(2.52g)、およびTHF(26.0ml)を反応器に入れて、−30℃に冷却した。そこへカリウムt-ブトキシド(0.760g)をゆっくりと加え、30分間攪拌した。次に化合物(T−52)(1.80g)のTHF(10.0ml)溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつさらに3時間攪拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製した。さらにソルミックス(登録商標)A−11からの再結晶により精製して、化合物(No.1−1−4)(0.657g;36.7%)を得た。
【0261】
化学シフトδ(ppm;CDCl
3):5.81−5.72(m,1H)、5.02−4.85(m,3H)、2.16−2.04(m,1H)、2.00−1.70(m,9H)、1.31−1.19(m,2H)、1.13−0.98(m,8H).
化合物(No.1−1−4)の物性は、次のとおりであった。
【0262】
転移温度:C 38.9 S
B 47.7 I.
上限温度(T
NI)=0.4℃;誘電率異方性(Δε)=10.8;光学的異方性(Δn)=0.050;粘度(η)=13.6mPa・s.
[実施例12]
化合物(No.1−1−5)の合成
【0263】
【化53】
【0264】
第1工程
窒素雰囲気下、化合物(T−52)(1.80g)、化合物(T−53)(1.82g)、およびDME(36.0ml)を反応器に入れて、−70℃に冷却した。そこへKHMDS(1.00M;THF溶液;7.64ml)をゆっくりと加え、室温に戻しつつ4時間攪拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製した。さらにソルミックス(登録商標)A−11からの再結晶により精製して、化合物(No.1−1−5)(0.443g;23.7%)を得た。
【0265】
化学シフトδ(ppm;CDCl
3):5.43−5.32(m,2H)、4.93(dq,J=34.4Hz,J=7.5Hz,1H)、2.15−2.03(m,1H)、1.99−1.91(m,2H)、1.88−1.68(m,7H)、1.64(d,J=4.7Hz,3H)、1.30−1.19(m,2H)、1.12−0.97(m,8H).
化合物(No.1−1−5)の物性は、次のとおりであった。
【0266】
転移温度:S
B 101 I.
上限温度(T
NI)=33.7℃;誘電率異方性(Δε)=15.4;光学的異方性(Δn)=0.070;粘度(η)=19.5mPa・s.
実施例1〜12に記載された合成方法と同様の方法により、以下に示す化合物(No.1−1−1)〜(No.1−1−68)、化合物(No.1−2−1)〜(No.1−2−120)、および化合物(No.1−3−1)〜(No.1−3−140)を合成することができた。
【0267】
【化54】
【0268】
【化55】
【0269】
【化56】
【0270】
【化57】
【0271】
【化58】
【0272】
【化59】
【0273】
【化60】
【0274】
【化61】
【0275】
【化62】
【0276】
【化63】
【0277】
【化64】
【0278】
【化65】
【0279】
【化66】
【0280】
【化67】
【0281】
【化68】
【0282】
【化69】
【0283】
【化70】
【0284】
[比較例1]
比較化合物として、化合物(S−1)を合成した。この化合物は、EP480217Aに記載されたものであり、本発明の化合物からフッ素が水素に置き換わったトリフルオロメチルビニルを有するものである。
【0285】
【化71】
【0286】
化学シフトδ(ppm;CDCl
3):6.31(m,1H)、5.53(m,1H)、2.04−1.95(m,1H)、1.84−1.65(m,9H)、1.35−1.26(m,2H)、1.20−0.91(m,10H)、0.91−0.80(m,5H).
比較化合物(S−1)の物性は、次のとおりであった。
【0287】
転移温度:C 55.7 S
B 62.8 I.
上限温度(T
NI)=25.0℃;誘電率異方性(Δε)=7.40;光学的異方性(Δn)=0.057;粘度(η)=8.70mPa・s.
【0288】
【表1】
【0289】
実施例1で得られた化合物(No.1−1−1)と比較化合物(S−1)の物性を表1にまとめた。表1から、化合物(No.1−1−1)は、比較化合物(S−1)と比較して、誘電率異方性が大きい点で優れていることが分かった。
[比較例2]
比較化合物として、化合物(S−2)を合成した。この化合物は、特開2005−298466号公報に記載され、本発明の化合物の水素がフッ素に置き換わった、パーフルオロプロペニルを有するものである。
【0290】
【化72】
【0291】
化学シフトδ(ppm;CDCl
3):2.65−2.50(m,1H)、1.90−1.67(m,8H)、1.55−1.44(m,2H)、1.35−1.28(m,2H)、1.20−0.80(m,14H).
比較化合物(S−2)の物性は、次のとおりであった。
【0292】
転移温度:C 49.5 S
B 62.6 I.
上限温度(T
NI)=27.7℃;誘電率異方性(Δε)=8.10;光学的異方性(Δn)=0.057;粘度(η)=7.30mPa・s.
【0293】
【表2】
【0294】
実施例1で得られた化合物(No.1−1−1)と比較化合物(S−2)の物性を表2にまとめた。表2から、化合物(No.1−1−1)は、比較化合物(S−2)と比較して、誘電率異方性が大きい点で優れていることが分かった。化合物(No.1−1−1)は比較化合物(S−2)よりもフッ素置換基が1つ少ないにも拘らず、誘電率異方性が大きいということは、特筆に値する。
〔組成物(1)の実施例〕
実施例により本発明の液晶組成物を詳細に説明する。本発明は下記の実施例によって限定されない。実施例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。表3において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、組成物の特性値をまとめた。特性は、先に記載した方法にしたがって測定し、測定値を外挿することなくそのまま記載した。
【0295】
【表3】
【0296】
[実施例13]
3−HH−FVCF3 (1−1−1) 3%
5−HB−CL (2−2) 16%
3−HH−4 (12−1) 12%
3−HH−5 (12−1) 4%
3−HHB−F (3−1) 4%
3−HHB−CL (3−1) 3%
4−HHB−CL (3−1) 4%
3−HHB(F)−F (3−2) 10%
4−HHB(F)−F (3−2) 7%
5−HHB(F)−F (3−2) 8%
7−HHB(F)−F (3−2) 8%
5−HBB(F)−F (3−23) 4%
1O1−HBBH−5 (14−1) 3%
3−HHBB(F,F)−F (4−6) 2%
4−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
5−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
3−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
4−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
NI=112.6℃;Δn=0.090;Δε=4.0;Vth=2.45V;η=19.2mPa・s.
【0297】
[実施例14]
3−BHH−FVCF3 (1−2−3) 3%
3−dhHH−FVCF3 (1−2−27) 3%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 8%
3−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
4−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
5−H2HB(F,F)−F (3−15) 5%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 20%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 20%
3−H2BB(F,F)−F (3−27) 10%
5−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
5−HHEBB−F (4−17) 2%
3−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
1O1−HBBH−4 (14−1) 4%
1O1−HBBH−5 (14−1) 3%
【0298】
[実施例15]
1−BHH−FVCF3 (1−2−1) 3%
3−GHH−FVCF3 (1−2−24) 3%
5−HB−F (2−2) 12%
6−HB−F (2−2) 9%
7−HB−F (2−2) 7%
2−HHB−OCF3 (3−1) 7%
3−HHB−OCF3 (3−1) 7%
4−HHB−OCF3 (3−1) 5%
5−HHB−OCF3 (3−1) 5%
3−HH2B−OCF3 (3−4) 4%
3−HHB(F,F)−OCF2H (3−3) 4%
3−HHB(F,F)−OCF3 (3−3) 5%
3−HH2B(F)−F (3−5) 3%
3−HBB(F)−F (3−23) 10%
5−HBB(F)−F (3−23) 10%
5−HBBH−3 (14−1) 3%
3−HB(F)BH−3 (14−2) 3%
【0299】
[実施例16]
3−HGH−FVCF3 (1−2−30) 3%
3−BB(F)B(F,F)−FVCF3 (1−2−43) 5%
5−HB−CL (2−2) 11%
3−HH−4 (12−1) 8%
3−HHB−1 (13−1) 5%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 8%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 15%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 15%
3−HHEB(F,F)−F (3−12) 10%
4−HHEB(F,F)−F (3−12) 3%
5−HHEB(F,F)−F (3−12) 3%
2−HBEB(F,F)−F (3−39) 3%
3−HBEB(F,F)−F (3−39) 5%
5−HBEB(F,F)−F (3−39) 3%
3−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
NI=72.0℃;Δn=0.092;Δε=7.7;Vth=1.45V;η=18.5mPa・s.
【0300】
[実施例17]
3−BB(F)B(F,F)−FVCF3 (1−2−43) 4%
5−HB(F)HH−FVCF3 (1−3−2) 3%
3−HB−CL (2−2) 6%
5−HB−CL (2−2) 4%
3−HHB−OCF3 (3−1) 5%
3−H2HB−OCF3 (3−13) 5%
5−H4HB−OCF3 (3−19) 10%
V−HHB(F)−F (3−2) 5%
3−HHB(F)−F (3−2) 5%
5−HHB(F)−F (3−2) 5%
3−H4HB(F,F)−CF3 (3−21) 8%
5−H4HB(F,F)−CF3 (3−21) 10%
5−H2HB(F,F)−F (3−15) 5%
5−H4HB(F,F)−F (3−21) 5%
2−H2BB(F)−F (3−26) 5%
3−H2BB(F)−F (3−26) 10%
3−HBEB(F,F)−F (3−39) 5%
【0301】
[実施例18]
3−HH−FVCF3 (1−1−1) 3%
3−BB(F)−FVCF3 (1−1−25) 4%
5−HB−CL (2−2) 3%
7−HB(F)−F (2−3) 6%
3−HH−4 (12−1) 9%
3−HH−EMe (12−2) 20%
3−HHEB−F (3−10) 8%
5−HHEB−F (3−10) 8%
3−HHEB(F,F)−F (3−12) 10%
4−HHEB(F,F)−F (3−12) 5%
4−HGB(F,F)−F (3−103) 3%
5−HGB(F,F)−F (3−103) 6%
2−H2GB(F,F)−F (3−106) 4%
3−H2GB(F,F)−F (3−106) 4%
5−GHB(F,F)−F (3−109) 7%
【0302】
[実施例19]
5−HH−FVCF3 (1−1−3) 3%
5−HGH−FVCF3 (1−2−31) 3%
2−HB−C (5−1) 5%
3−HB−C (5−1) 10%
3−HB−O2 (12−5) 15%
2−BTB−1 (12−10) 3%
3−HHB−1 (13−1) 7%
3−HHB−F (3−1) 4%
3−HHB−O1 (13−1) 5%
3−HHB−3 (13−1) 12%
3−HHEB−F (3−10) 4%
5−HHEB−F (3−10) 4%
2−HHB(F)−F (3−2) 7%
3−HHB(F)−F (3−2) 7%
5−HHB(F)−F (3−2) 7%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 4%
【0303】
[実施例20]
3−BHH−FVCF3 (1−2−3) 5%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 9%
3−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
4−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
5−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 20%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 16%
3−H2BB(F,F)−F (3−27) 10%
5−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
5−HHEBB−F (4−17) 2%
3−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
1O1−HBBH−4 (14−1) 4%
1O1−HBBH−5 (14−1) 4%
NI=100.1℃;Δn=0.115;Δε=9.1;Vth=1.79V;η=35.6mPa・s.
上記組成物100部にOp−05を0.25部添加したときのピッチは62.3μmであった。
【0304】
[実施例21]
3−HHVH−FVCF3 (1−2−71) 3%
3−HB−O2 (12−5) 7%
2−HHB(F)−F (3−2) 10%
3−HHB(F)−F (3−2) 10%
5−HHB(F)−F (3−2) 10%
2−HBB(F)−F (3−23) 9%
3−HBB(F)−F (3−23) 9%
5−HBB(F)−F (3−23) 16%
2−HBB−F (3−22) 4%
3−HBB−F (3−22) 4%
5−HBB−F (3−22) 3%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 5%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 10%
NI=92.5℃;Δn=0.119;Δε=6.4;η=26.4mPa・s.
【0305】
[実施例22]
3−BB(F,F)XB(F,F)−FVCF3 (1−2−116)5%
1V2−BEB(F,F)−C (5−15) 6%
3−HB−C (5−1) 18%
2−BTB−1 (12−10) 10%
5−HH−VFF (12−1) 30%
3−HHB−1 (13−1) 4%
VFF−HHB−1 (13−1) 8%
VFF2−HHB−1 (13−1) 11%
3−H2BTB−3 (13−17) 4%
3−H2BTB−4 (13−17) 4%
NI=74.1℃;Δn=0.125;Δε=9.1;η=13.6mPa・s.
【0306】
[実施例23]
3−HHXB(F)H−FVCF3 (1−3−115)3%
3−HH−4 (12−1) 4%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 33%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 32%
3−H2HB(F,F)−F (3−15) 10%
4−H2HB(F,F)−F (3−15) 10%
5−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
NI=64.1℃;Δn=0.104;Δε=8.8;η=30.2mPa・s.
【0307】
[実施例24]
3−GH−FVCF3 (1−1−13)5%
7−HB(F,F)−F (2−4) 3%
3−HB−O2 (12−5) 7%
2−HHB(F)−F (3−2) 10%
3−HHB(F)−F (3−2) 10%
5−HHB(F)−F (3−2) 10%
2−HBB(F)−F (3−23) 9%
3−HBB(F)−F (3−23) 9%
5−HBB(F)−F (3−23) 16%
2−HBB−F (3−22) 4%
3−HBB−F (3−22) 4%
5−HBB−F (3−22) 3%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 10%
NI=81.5℃;Δn=0.110;Δε=6.4;η=25.2mPa・s.
【0308】
[実施例25]
3−BB(F)H−FVCF3 (1−2−18)5%
1V2−BEB(F,F)−C (5−15) 6%
3−HB−C (5−1) 18%
2−BTB−1 (12−10)10%
5−HH−VFF (12−1) 30%
3−HHB−1 (13−1) 4%
VFF−HHB−1 (13−1) 8%
VFF2−HHB−1 (13−1) 11%
3−H2BTB−3 (13−17) 4%
3−H2BTB−4 (13−17) 4%
NI=76.7℃;Δn=0.126;Δε=7.3;η=14.6mPa・s.
【0309】
[実施例26]
3−HVH−FVCF3 (1−1−42)3%
3−HH−4 (12−1) 4%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 30%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 32%
3−H2HB(F,F)−F (3−15) 10%
4−H2HB(F,F)−F (3−15) 10%
5−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
3−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
NI=63.9℃;Δn=0.103;Δε=8.7;η=29.3mPa・s.
【0310】
[実施例27]
V−HH−FVCF3 (1−1−4) 5%
7−HB(F,F)−F (2−4) 3%
3−HB−O2 (12−5) 7%
2−HHB(F)−F (3−2) 10%
3−HHB(F)−F (3−2) 10%
5−HHB(F)−F (3−2) 10%
2−HBB(F)−F (3−23) 9%
3−HBB(F)−F (3−23) 9%
5−HBB(F)−F (3−23) 16%
2−HBB−F (3−22) 4%
3−HBB−F (3−22) 4%
5−HBB−F (3−22) 3%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 10%
NI=82.9℃;Δn=0.112;Δε=5.8;η=23.7mPa・s.
【0311】
[実施例28]
1V−HH−FVCF3 (1−1−5) 5%
1V2−BEB(F,F)−C (5−15) 6%
3−HB−C (5−1) 18%
2−BTB−1 (12−10)10%
5−HH−VFF (12−1) 30%
3−HHB−1 (13−1) 4%
VFF−HHB−1 (13−1) 8%
VFF2−HHB−1 (13−1) 11%
3−H2BTB−3 (13−17) 4%
3−H2BTB−4 (13−17) 4%
NI=74.6℃;Δn=0.121;Δε=7.1;η=11.9mPa・s.
いずれの実施例も、上限温度が低く、粘度も低く、適切な光学的異方性を有し、かつ大きな誘電率異方性を示すものであった。