特許第6098825号(P6098825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6098825重合体及びそれを含む組成物並びに接着剤用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6098825
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】重合体及びそれを含む組成物並びに接着剤用組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20170313BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20170313BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20170313BHJP
   C08F 299/02 20060101ALN20170313BHJP
【FI】
   C09J163/00
   C08G59/42
   C08G59/50
   !C08F299/02
【請求項の数】3
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2013-532639(P2013-532639)
(86)(22)【出願日】2012年9月6日
(86)【国際出願番号】JP2012072747
(87)【国際公開番号】WO2013035787
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2015年8月25日
(31)【優先権主張番号】特願2011-196318(P2011-196318)
(32)【優先日】2011年9月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-196319(P2011-196319)
(32)【優先日】2011年9月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100163360
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 知篤
(72)【発明者】
【氏名】田村 護
(72)【発明者】
【氏名】大橋 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】岸岡 高広
(72)【発明者】
【氏名】榎本 智之
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−143954(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/098542(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/049045(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/06−73/22
C08G 59/42−59/64
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(6)で表される構造単位を有する重合体及び有機溶剤を含む、接着剤用組成物。
【化1】
[式中、Qはアリル基、ビニル基、エポキシ基又はグリシジル基を表し、Rは下記式(7):
【化2】
〔式中、2つのmはそれぞれ独立に0又は1を表し、Qは炭素原子数6乃至14のアリーレン基、炭素原子数4乃至10の脂環式炭化水素基、又は下記式(8):
【化3】
{式中、A及びAはそれぞれ独立に炭素原子数6乃至14のアリーレン基又は炭素原子数4乃至10の脂環式炭化水素基を表し、Qはスルホニル基、カルボニル基又は下記

(9):
【化4】
(式中、R及びRはそれぞれ独立に炭素原子数1又は2のアルキル基を表し、該アルキル基の少なくとも1つの水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。)で表されるアルキレン基を表す。}
で表される基を表す。〕
で表される基を表す。]
【請求項2】
前記アリーレン基はフェニレン基であり、前記脂環式炭化水素基はシクロヘキシレン基である、請求項1に記載の接着剤用組成物。
【請求項3】
前記アルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されていてもよいメチル基である、請求項1に記載の接着剤用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な重合体に関する。さらには、前記重合体を含む接着剤用、絶縁膜形成用、レジスト下層膜形成用などの用途に使われる組成物に関する。
また本発明は、LED、CMOSイメージセンサなどの光学デバイス、ICチップなどに代表される半導体デバイスを製造する工程において、被積層物間を接着する接着剤用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機、ICカードなどの電子機器の高機能化及び小型化に伴い、半導体デバイスの高集積化が求められている。その手法として、半導体素子そのものの微細化、半導体素子間を縦方向に積み上げるスタック構造が検討されている。スタック構造の作製においては、半導体素子間の接合に接着剤が使用される。しかし、公知の接着剤として知られているアクリル樹脂、エポキシ樹脂及びシリコーン樹脂は耐熱性が250℃程度しかなく、メタルバンプの電極接合、イオン拡散工程など、250℃以上もの高温が求められるような工程では使用できないという問題がある。
【0003】
特許文献1には、光半導体用接着剤に用いられるイソシアヌル環含有重合体、及びそれを含有する組成物が開示されている。該イソシアヌル環含有重合体は、アルカリ金属化合物の存在下でN−モノ置換イソシアヌル酸とジハロゲン化合物とを反応させるか、N,N’,N”−トリ置換イソシアヌル酸とシラン化合物とをヒドロシリル化反応させることにより得られることが記載されている。さらに、前記組成物は、光半導体用接着剤として、50℃〜250℃のオーブンで30分〜4時間加熱して接着させることができる、と記載されている。
【0004】
一方、液晶ディスプレイ(LCD)、有機EL(OLED) ディスプレイに代表される薄型ディスプレイ(FPD)の市場が急速に拡大している。液晶ディスプレイは、表示パネルの基材としてガラス基板が用いられているが、さらに薄型化、軽量化、フレキシブル化、ロールトゥロール(Roll−to−Roll)プロセスによる加工コストの低減を目指し、プラスチック基板を用いたフレキシブルディスプレイの開発が行われている。しかし、公知のプラスチック基板に用いられる樹脂材料として知られているPET樹脂、PEN樹脂、PC樹脂は耐熱性が250℃程度しかなく、従来、薄膜トランジスタ(TFT)形成プロセスに必要とされた250℃以上の高温が求められる工程では使用できないという問題がある。
【0005】
薄膜トランジスタ形成プロセスには、ゲート絶縁膜などの絶縁膜形成工程がある。特許文献2には、180℃以下の温度でゲート絶縁膜を作製可能な、薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜形成剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−143954号公報
【特許文献2】国際公開第2008/146847号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の組成物から作製された硬化物は、470nmでの光線透過率が測定され90%以上であると評価され、さらに耐熱性の評価が行われている。しかしながら、前記硬化物を150℃のオーブンに120時間放置した後の470nmでの透過率を測定した旨記載されているが、250℃以上の温度での耐熱性は不明である。
【0008】
また特許文献1のイソシアヌル環含有重合体は、ヒドロキシ基を有することを排除しておらず、特許文献2に記載のゲート絶縁膜形成剤に含まれるオリゴマー化合物又はポリマー化合物は、繰り返し単位中にヒドロキシ基が導入されている。しかしながら、重合体がヒドロキシ基を有する場合、吸湿性を示し、絶縁性が重要となる用途では所望の絶縁性が得られないことがある。さらに、特許文献1のイソシアヌル環含有重合体は、珪素を含有しているため、シリコンウェハー等の基板上に形成した膜のリワーク及びフォトリソグラフィープロセスによる加工を行う際、エッチングガスにフッ素系ガスを混合しなければならず、基板にダメージを与え得るという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、下記式(1)で表される構造単位を有する重量平均分子量1,000乃至100,000の重合体である。
【化12】
{式中、Qは下記式(2)又は式(3):
【化13】
(式中、Q1は炭素原子数1乃至6のアルキル基、アリル基、ビニル基、エポキシ基又は
グリシジル基を表し、Q2及びQ3はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、アリル基、ビニル基、エポキシ基又はグリシジル基を表し、nは0又は1を表す。)
で表される二価の基であって、前記Qが前記式(2)で表される二価の基又は式(3)で表され且つnが1を表す二価の基である場合、該式(2)及び式(3)の一部を構成するカルボニル基は前記式(1)の窒素原子と結合し、
1は炭素原子数1乃至10のアルキレン基、炭素原子数2乃至10のアルケニレン基若
しくはアルキニレン基、炭素原子数6乃至14のアリーレン基、炭素原子数4乃至10の環状アルキレン基、又は下記式(4)若しくは式(5):
【化14】
(式中、A1、A2及びA3はそれぞれ独立に炭素原子数6乃至14のアリーレン基又は炭
素原子数4乃至10の環状アルキレン基を表し、R2はスルホニル基、カルボニル基又は
炭素原子数1乃至5のアルキレン基を表し、該アルキレン基の少なくとも1つの水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、R3及びR4はそれぞれ独立に炭素原子数1乃至5のアルキレン基を表す。)
で表される基を表す。}
【0010】
本発明の第二の態様は、下記式(6)で表される構造単位を有する重量平均分子量1,000乃至100,000の重合体である。
【化4】
(式中、Qはアリル基、ビニル基、エポキシ基又はグリシジル基を表し、Rは炭素原子のみからなる主鎖又は炭素原子と酸素原子、窒素原子及び硫黄原子の少なくとも一種とからなる主鎖を有する二価の有機基を表す。)
【0011】
本発明の第三の態様は、前記本発明に係る重合体を含む組成物である。
【0012】
本発明の第四の態様は、前記本発明に係る式(6)で表される構造単位を有する重合体及び有機溶剤を含む接着剤用組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の前記式(1)で表される構造単位を有する重合体を含む組成物を用いることで、高い耐熱性を有し、可視光の透過率が高く、リワーク性に優れ、接着性及び所望の絶縁性を有する硬化膜が得られる。
【0014】
また本発明の接着剤用組成物から形成される硬化膜は、95%以上の透過率(波長500nm)、250℃以上での耐熱性、接着性及び耐溶剤性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[重合体]
本発明に係る前記式(1)で表される構造単位を有する重合体(ポリマー)の重量平均分子量は、後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCと略称する。)分析による、標準ポリスチレン換算値で、1,000乃至100,000であり、好ましくは1,000乃至50,000ある。重量平均分子量が100,000より大きいと、溶剤に対する溶解性が悪くなり、逆に重量平均分子量が1,000より小さいと、得られる膜に対するクラックの発生という問題及び組成物の塗布性が悪くなるという問題がある。前記重合体の末端は、該重合体の原料モノマーが、例えば、モノ置換イソシアヌル酸とジハロゲン化合物なら、水素原子及びハロゲン原子である。
【0016】
前記式(1)で表される構造単位において、アルキル基及びアルキレン基は直鎖状、分岐鎖状いずれでもよく、アルケニレン基及びアルキニレン基としては例えばエテン−1,2−ジイル基(−CH=CH−基)、2−ブテン−1,4−ジイル基(−CH−CH=CH−CH−基)及びエチン−1,2−ジイル基(−C≡C−基)が挙げられ、アリーレン基としては例えばフェニレン基、ナフチレン基及びアントリレン基が挙げられ、環状アルキレン基としては例えばシクロヘキシレン基が挙げられる。アルキレン基の少なくとも1つの水素原子が置換されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。
また本発明において、前記重合体は、前記式(1)で表される構造単位1種類のみからなる重合体であってもよいし、前記式(1)で表される構造単位を2種類以上含む重合体(共重合体)であってもよい。
【0017】
前記式(1)のRが表す基を以下に例示する。下記式の括弧内がRに該当する。
【化5】
【0018】
また、本発明に係る前記式(6)で表される構造単位を有する重合体は、前記式(6)で表される構造単位1種類のみからなる重合体であってもよいし、前記式(6)で表される構造単位を2種類以上含む重合体(共重合体)であってもよい。該重合体の重量平均分子量は、GPC分析による、標準ポリスチレン換算値で、例えば1,000乃至100,000である。該式(6)において、Rで表される炭素原子のみからなる主鎖又は炭素原子と酸素原子、窒素原子及び硫黄原子の少なくとも一種とからなる主鎖を有する二価の有機基は、すなわち珪素原子を主鎖に有さない二価の有機基であり、例えば、炭素原子数1乃至10の二価の炭化水素基又は下記式(7)で表される基である。
【化6】
(式中、2つのmはそれぞれ独立に0又は1を表し、Qは二価の有機基を表す。)
【0019】
前記式(6)において、二価の炭化水素基としては例えばアルキレン基が挙げられ、炭素原子数1乃至10の範囲内で、フェニレン基又はカルボニル基を含むことができる。
【0020】
上記式(7)において、Qは、例えば、炭素原子数6乃至14のアリーレン基、炭素原子数4乃至10の脂環式炭化水素基、炭素原子数2乃至6のアルケニレン基若しくはアルキニレン基、又は下記式(8)で表される基を表す。
【化7】
{式中、A及びAはそれぞれ独立に炭素原子数6乃至14のアリーレン基又は炭素原子数4乃至10の脂環式炭化水素基を表し、Qはスルホニル基、カルボニル基又は下記式(9):
【化8】
(式中、R及びRはそれぞれ独立に炭素原子数1又は2のアルキル基を表し、該アルキル基の少なくとも1つの水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。)で表されるアルキレン基を表す。}
【0021】
上記式(7)及び式(8)において、アリーレン基は例えばフェニレン基であり、脂環式炭化水素基は例えばシクロヘキシレン基であるが、必ずしもこれらの基に限定されない。ノルボルネン及びアダマンタンも脂環式炭化水素の一種であるから、前記脂環式炭化水素基として、例えば、ノルボルネン−2,3−ジイル基、アダマンタン−1,3−ジイル基を挙げることもできる。
【0022】
前記式(7)において、アルケニレン基又はアルキニレン基としては、例えば、エテン−1,2−ジイル基(−CH=CH−基)、2−ブテン−1,4−ジイル基(−CH−CH=CH−CH−基)、エチン−1,2−ジイル基(−C≡C−基)が挙げられる。
【0023】
さらに上記式(9)において、アルキル基は、例えば、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されていてもよいメチル基である。少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたメチル基としては、例えば−CF基が挙げられる。
【0024】
前記式(6)で表される構造単位を有する重合体は、例えば下記式(6−1)乃至式(6−9)で表される構造単位を有し、該式(6)においてRが前記式(7)を表す構造単位を有する重合体は下記式(6−2)乃至式(6−8)で表される構造単位を有する重合体に相当する。
【化9】
【化10】
【0025】
[重合体を含む組成物]
本発明に係る上記式(1)で表される構造単位を有する重合体を含む組成物は、前記重合体以外に、必要に応じて界面活性剤、熱酸発生剤及び溶剤の少なくとも一つを含有してもよい。
本発明の組成物が界面活性剤を含む場合、その界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップ(登録商標)EF301、同EF303、同EF352(三菱マテリアル電子化成(株)(旧(株)ジェムコ)製)、メガファック(登録商標)F171、同F173、同R30(DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード(登録商標)AG710、サーフロン(登録商標)S−382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、及びオルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)を挙げることができる。これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、二種以上の組合せで添加することもできる。配合量は溶剤を除く全固形分中で例えば0.01質量%乃至10質量%である。
本発明の組成物が熱酸発生剤を含む場合、その熱酸発生剤としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウム−p−トルエンスルホナート、サリチル酸、5−スルホサリチル酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸などの酸性化合物及び/又は、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシラート、2−ニトロベンジルトシラート等を配合することができる。配合量は溶剤を除く全固形分中で、例えば、0.02質量%乃至10質量%であり、又は0.04質量%乃至5質量%である。
本発明の組成物が溶剤を含む場合、その溶剤としては半導体デバイス製造工程で使用できる有機溶剤であれば特に限定はないが、例えばシクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ブタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール又はジプロピレングリコールモノアセテート、並びにこれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、モノフェニルエーテル等の多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサン等の環式エーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;及び乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。上記有機溶剤を含む場合、本発明の組成物から該有機溶剤を除いた成分を固形分とすると、該固形分の前記組成物に占める割合は例えば1質量%乃至70質量%である。
【0026】
本発明に係る重合体を含む組成物は、必ずしも必要としないが、もし必要ならば無機フィラー、シランカップリング剤、レオロジー調整剤、架橋剤などの添加剤をさらに含有していてもよい。
【0027】
上記無機フィラーとしては、例えば、窒化アルミ、窒化ボロン、アルミナ及びシリカが挙げられる。
上記シラン系カップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン及び3−アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
上記レオロジー調整剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルイソデシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジノルマルブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソオクチルアジペート、オクチルデシルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジノルマルブチルマレート、ジエチルマレート、ジノニルマレート等のマレイン酸誘導体、メチルオレート、ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート等のオレイン酸誘導体、又はノルマルブチルステアレート、グリセリルステアレート等のステアリン酸誘導体を挙げることができる。
【0028】
上記架橋剤としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、ブトキシメチル基、ヘキシルオキシメチル基等のアルコキシメチル基又はヒドロキシメチル基で置換された窒素原子を有する含窒素化合物が挙げられる。さらに、エポキシ基含有化合物、エポキシ基含有ポリマー、アリル基含有化合物、アリル基含有ポリマー、イソシアネート基含有化合物、イソシアネート基含有ポリマー又はアジド基(アジ基)含有化合物を架橋剤として用いることができる。
上記含窒素化合物としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6−テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(ブトキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(メトキシメチル)尿素、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリノン、1,3−ビス(メトキシメチル)−4,5−ジメトキシ−2−イミダゾリノンが挙げられる。アジド基(アジ基)含有化合物としては、例えば、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)シクロヘキサノンが挙げられる。
上記架橋剤としては、また、日本サイテックインダストリーズ(株)製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:CYMEL(登録商標)300、同301、同303、同350)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:マイコート(登録商標)506、同508)、グリコールウリル化合物(商品名:CYMEL(登録商標)1170、POWDERLINK(登録商標)1174)、メチル化尿素樹脂(商品名:UFR65)、ブチル化尿素樹脂(商品名:UFR300、U−VAN10S60、U−VAN10R、U−VAN11HV)、DIC(株)製尿素/ホルムアルデヒド系樹脂(高縮合型、商品名:ベッカミン(登録商標)J−300S、同P−955、同N)等の市販されている化合物を挙げることができる。
エポキシ基を含有する架橋剤としては、例えば、1個乃至6個、又は2個乃至4個のエポキシ環を有する化合物を使用することができ、例えば、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−4−(エポキシエチル)シクロヘキサン、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、2,6−ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル、1,1,3−トリス[p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、4,4’−メチレンビス(N,N−ジグリシジルアニリン)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルレゾルシノールジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサフルオロアセトンジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、トリス−(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジグリセロールポリジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−ターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエーテル、o−フタル酸ジグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,6−ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)ジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオキシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−3’,4’−エポキシ−1,3−ジオキサン−5−スピロシクロヘキサン、1,2−エチレンジオキシ−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメタン)、4’,5’−エポキシ−2’−メチルシクロヘキシルメチル−4,5−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレングリコール−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、及びビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテルを挙げることができる。
上記架橋剤は、一種の化合物のみを使用することができ、また、二種以上の化合物を組み合わせて用いることもできる。本発明の組成物に含まれる重合体に対して、1質量%乃至50質量%、又は8質量%乃至40質量%、又は15質量%乃至30質量%の架橋剤を使用することができる。
【0029】
本発明に係る重合体を含む組成物は架橋触媒を含むことができる。
架橋触媒を使用することにより、上記架橋剤の反応が促進される。架橋触媒としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、ピリジニウム−p−トルエンスルホナート、サリチル酸、カンファースルホン酸、5−スルホサリチル酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、及び1−ナフタレンスルホン酸を挙げることができる。
上記架橋触媒は、一種のみを使用することができ、また、二種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明の組成物に含まれる重合体に対して0.01質量%乃至10質量%、又は0.05質量%乃至8質量%、又は0.1質量%乃至5質量%、又は0.3質量%乃至3質量%、又は0.5質量%乃至1質量%の架橋触媒を使用することができる。
【0030】
本発明に係る重合体を含む組成物には、本発明における本質的な特性を損なわない範囲で、さらに、混和性のある添加剤、例えば組成物の性能を改良するための付加的樹脂、粘着付与剤、可塑剤、接着助剤、安定剤、着色剤、消泡材などの慣用されているものを添加することができる。
【0031】
上記組成物の性能を改良するための付加的樹脂(ポリマー)としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリビニルエーテル、フェノールノボラック、ナフトールノボラック、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート等の付加重合ポリマー又は縮重合ポリマーを使用することができ、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の芳香環構造を有するポリマーが好ましく使用される。
【0032】
上記のような付加的樹脂(ポリマー)としては、例えば、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、スチレン、ヒドロキシスチレン、ベンジルビニルエーテル、N−フェニルマレイミド等の付加重合性モノマーをその構造単位として含む付加重合ポリマー、及びフェノールノボラック、ナフトールノボラック等の縮重合ポリマーが挙げられる。また、付加的樹脂(ポリマー)としては芳香環構造を有さないポリマーを使用することができる。そのようなポリマーとしては、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、ビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、アクリロニトリル、マレイミド、N−アルキルマレイミド、マレイン酸無水物等の芳香環構造を有さない付加重合性モノマーのみをその構造単位として含む付加重合ポリマーが挙げられる。付加的樹脂(ポリマー)として付加重合ポリマーが使用される場合、そのポリマーは単独重合体でもよく共重合体であってもよい。
【0033】
本発明に係る重合体を含む組成物に使用される付加的樹脂(ポリマー)の分子量としては、重量平均分子量として、例えば、1,000乃至1,000,000、又は3,000乃至300,000、又は5,000乃至200,000、又は10,000乃至100,000である。本発明の組成物に付加的樹脂(ポリマー)が含まれる場合、その含有量としては、固形分中で例えば40質量%以下、又は20質量%以下、又は1質量%乃至19質量%である。
【0034】
上記粘着付与剤は、弾性率、粘性及び表面状態の制御のために添加される。かかる粘着付与剤の種類は、粘性を考慮して定めることが好ましいが、具体的に、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族・芳香族共重合系石油樹脂、脂環族系水添石油樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素化テルペン樹脂、ロジン系樹脂、水添ロジン系樹脂、不均化ロジン系樹脂、二量化ロジン系樹脂、エステル化ロジン系樹脂等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。この粘着付与剤は、本発明の組成物に含まれる重合体に対して、例えば100質量%以下、又は50質量%以下の割合で含有することができる。
【0035】
本発明に係る重合体を含む組成物は、接着剤用、絶縁膜形成用又はレジスト下層膜形成用に使われる。接着剤用とは、例えば、ICチップなどの三次元積層体を形成するプロセスにおいて、被積層物間を接着する用途である。絶縁膜形成用とは、例えば、薄膜トランジスタのゲート絶縁膜又は層間絶縁膜を形成する用途である。レジスト下層膜形成用とは、例えば、所望の形状のレジストパターンを基板上に形成させるために、基板とレジスト膜との間にレジスト下層膜を形成する用途である。
【0036】
さらに前記組成物が溶剤を含む場合、絶縁インクに使われる。絶縁インクとは、例えば、プラスチック基板を用いたフレキシブルディスプレイの製造プロセスにおいて、スクリーン印刷、インクジェットなどの方法により絶縁膜を形成するものである。
【0037】
[接着剤用組成物]
本発明の接着剤用組成物は、前記式(6)で表される構造単位を有する重合体及び溶剤を必須の成分として含む。該重合体は、前記式(6)で表される構造単位1種類のみからなる重合体であってもよいし、前記式(6)で表される構造単位を2種類以上含む重合体(共重合体)であってもよい。該重合体の重量平均分子量は、GPC分析による、標準ポリスチレン換算値で、例えば1,000乃至100,000である。式(6)で表される構造単位における各基の定義は前述したとおりである。
【0038】
本発明の接着剤用組成物は、上記式(6)で表される重合体を有機溶剤に溶解し、溶液粘度が0.001乃至5,000Pa・sの粘度を示す範囲で、スピンコート性を示す塗布液とすることができる。
上記有機溶剤としては、半導体デバイス製造工程で使用できる溶剤であれば特に限定はないが、例えばシクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ブタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール又はジプロピレングリコールモノアセテート、並びにこれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、モノフェニルエーテル等の多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサン等の環式エーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;及び乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
本発明の接着剤用組成物から上記有機溶剤を除いた成分を固形分とすると、該固形分の前記接着剤組成物に占める割合は例えば1質量%乃至70質量%である。
【0039】
本発明の接着剤用組成物は、必要に応じて界面活性剤、熱酸発生剤、無機フィラー、シランカップリング剤、レオロジー調整剤、架橋剤、架橋触媒などの添加剤をさらに含有していてもよい。
これら添加剤として、前述の[重合体を含む組成物]において界面活性剤、熱酸発生剤、並びに無機フィラー、シランカップリング剤、レオロジー調整剤、架橋剤、架橋触媒として具体的に挙げた各種化合物を、当該記載された使用量にて用いることができる。
【0040】
さらに本発明の接着剤用組成物には、本発明における本質的な特性を損なわない範囲で、さらに、混和性のある添加剤、例えば接着剤の性能を改良するための付加的樹脂、粘着付与剤、可塑剤、接着助剤、安定剤、着色剤、消泡材などの慣用されているものを添加することができる。
これらの添加剤についても、前述の[重合体を含む組成物]において具体的に挙げた化合物を、当該記載された使用量にて用いることができる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0042】
以下に記載する合成例で得られたポリマーのGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析は、下記の装置を用い、測定条件は下記のとおりである。
装置:一体型高速GPCシステム HLC−8220GPC 東ソー(株)製
カラム:KF−G,KF804L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:1.0mL/分
標準試料:ポリスチレン
ディテクター:RI
【0043】
<合成例1>
水素化ナトリウム(油状パラフィン中に60質量%含有)10.0gをN−メチル−2−ピロリドン200g中に懸濁させた後、モノブチルイソシアヌル酸21.9gを分割添加し、40℃に加温し1時間攪拌した。その後、1,4−ジブロモブタン25.5gをゆっくり添加した後、100℃で2時間反応させた。その後、水にて反応を停止かつポリマーを析出させた。その後再沈殿作業を行って下記式[A]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は7,100であった。
【化11】
【0044】
<合成例2>
水素化ナトリウム(油状パラフィン中に60質量%含有)10.0gをN−メチル−2−ピロリドン200g中に懸濁させた後、モノアリルイソシアヌル酸19.5gを分割添加し、40℃に加温し1時間攪拌した。その後、1,4−ジクロロブタン15.0gをゆっくり添加した後、90℃で24時間反応させた。その後、水にて反応を停止かつポリマーを析出させた。その後再沈殿作業を行って下記式[B]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は4,000であった。
【化12】
【0045】
<合成例3>
合成例2で得られたポリマー8gを塩化メチレン32gに溶解させ、その後m−クロロ過安息香酸9.3g(0.054mol)を分割添加し、窒素中、室温で2日間反応させた。その後、得られた反応溶液をジエチルエーテル/メタノール混合溶媒に滴下し、析出した沈殿物を濾過し、白色粉末を得た。反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は5,200であった。また、アリルからエポキシへの転化率は52%であった。得られた反応生成物は下記式[C]に示す2つの式で表される構造単位を有するポリマーである。
【化13】
【0046】
<合成例4>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸67.66g、1,2−ジブロモエタン74.39g、炭酸カリウム121.62g及びN−メチル−2−ピロリドン213.07gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後メタノールに投入し再沈精製を行って下記式[D]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は9,500であった。
【化14】
【0047】
<合成例5>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸67.66g、1,4−ジブロモブタン77.73g、炭酸カリウム121.62g及びN−メチル−2−ピロリドン581.53gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後メタノールに投入し再沈精製を行って下記式[E]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は9,500であった。
【化15】
【0048】
<合成例6>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸67.66g、1,6−ジブロモヘキサン87.83g、炭酸カリウム121.62g及びN−メチル−2−ピロリドン621.94gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後酢酸エチルと水の二層分離溶液に投入して分液操作を行うことで、目的のポリマーのみを酢酸エチル層に抽出し、酢酸エチルをエバポレーターで蒸留させることで、下記式[F]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は5,600であった。
【化16】
【0049】
<合成例7>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸11.84g、1,8−ジブロモオクタン17.14g、炭酸カリウム21.28g及びN−メチル−2−ピロリドン115.91gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後酢酸エチルと水の二層分離溶液に投入して分液操作を行うことで、目的のポリマーのみを酢酸エチル層に抽出し、酢酸エチルをエバポレーターで蒸留することで、下記式[G]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は11,300であった。
【化17】
【0050】
<合成例8>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸11.84g、1,10−ジブロモデカン17.14g、炭酸カリウム21.28g及びN−メチル−2−ピロリドン115.91gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後酢酸エチルと水の二層分離溶液に投入して分液操作を行うことで、目的のポリマーのみを酢酸エチル層に抽出し、酢酸エチルをエバポレーターで蒸留することで、下記式[H]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は10,600であった。
【化18】
【0051】
<合成例9>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸11.84g、p−ジクロロキシレン12.13g、炭酸カリウム21.28g及びN−メチル−2−ピロリドン95.89gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後メタノールに投入し再沈精製を行って、下記式[I]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は17,000であった。
【化19】
【0052】
<合成例10>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにジエチルバルビツール酸12.89g、1,4−ジブロモエタン13.02g、炭酸カリウム21.28g及びN−メチル−2−ピロリドン103.65gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後メタノールに投入し再沈精製を行って、下記式[J]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は2,400であった。
【化20】
【0053】
<合成例11>
攪拌装置、還流器、温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸11.84g、1,4−ジブロモ−2−ブテン14.83g、炭酸カリウム21.28g 、N−メチル−2−ピロリドン106.65gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後メタノールに投入し再沈精製を行って、下記式[K]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は8,900であった。
【化21】
【0054】
<合成例12>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸16.91g、1,3−ジクロロ−2−プロパノン12.57g、炭酸カリウム30.41g及びN−メチル−2−ピロリドン88.45gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後メタノールに投入し再沈精製を行って、下記式[L]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は1,300であった。
【化22】
【0055】
<合成例13>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸25.37g、o−ジクロロキシレン22.32g、炭酸カリウム45.61g及びN−メチル−2−ピロリドン111.28gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後メタノールに投入し再沈精製を行って、下記式[M]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は7,800であった。
【化23】
【0056】
<合成例14>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸84.57g、m−ジクロロキシレン39.38g、1,5−ジブロモペンタン45.99g、アリルブロミド6.05g、炭酸カリウム106.62g及びN−メチル−2−ピロリドン410.66gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後メタノールに投入し再沈精製を行って、下記[N]に示す2つの式で表される構造単位を50:50のモル比で有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は3,900であった。
【化24】
【0057】
<比較合成例1>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコに、ジアリルモノグリシジルイソシアヌル酸21.22g、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン10.64g、及びカルステッド触媒(白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の0.1Mキシレン溶液)20μLを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃で1時間及び90℃で20時間反応させることで、下記式[X]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は7,800であった。
【化25】
【0058】
<比較合成例2>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコに、ジアリルモノグリシジルイソシアヌル酸18.57g、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン19.59g、及びカルステッド触媒(白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の0.1Mキシレン溶液)20μLを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃で1時間及び150℃で20時間反応させることで、下記式[Y]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は5,500であった。
【化26】
【0059】
<実施例1>
合成例1で得られたポリマー1g、界面活性剤としてメガファック(登録商標)R−30(DIC(株)製)0.01gをプロピレングリコールモノメチルエーテル2.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.0g及びγ−ブチロラクトン1gに溶解させ溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して組成物を調製した。
【0060】
<実施例2>
合成例1で得られたポリマーにかえて合成例2で得られたポリマーを用いた以外は、上記実施例1と同様に組成物を調製した。
【0061】
<実施例3>
合成例3で得られたポリマー1g、界面活性剤としてメガファック(登録商標)R−30(DIC(株)製)0.01g、熱酸発生剤としてTAG−N(三新化学工業(株)製)0.03gをプロピレングリコールモノメチルエーテル2.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.0g及びγ−ブチロラクトン1gに溶解させ溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して組成物を調製した。
【0062】
<実施例4>
合成例4で得られたポリマーをシクロヘキサノンに溶解させ、その後、孔径1.0μmのポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと略称する。)製ミクロフィルターを用いてろ過して、固形分として35質量%含有する組成物を調製した。
【0063】
<実施例5>
合成例4で得られたポリマーにかえて合成例5で得られたポリマーを用いた以外は、上記実施例4と同様に組成物を調製した。
【0064】
<実施例6>
合成例4で得られたポリマーにかえて合成例6で得られたポリマーを用いた以外は、上記実施例4と同様に組成物を調製した。
【0065】
<実施例7>
合成例4で得られたポリマーにかえて合成例7で得られたポリマーを用いた以外は、上記実施例4と同様に組成物を調製した。
【0066】
<実施例8>
合成例4で得られたポリマーにかえて合成例8で得られたポリマーを用いた以外は、上記実施例4と同様に組成物を調製した。
【0067】
<比較例1>
ポリイミド前駆体である、ポリ(ピロメリット酸二無水物−co−4,4’−オキシジアニリン)アミック酸溶液(Pyre−ML RC−5019 16質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液、シグマアルドリッチジャパン(株)))5gに、界面活性剤としてメガファック(登録商標)R−30(DIC(株)製)0.01gを加え溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して組成物を調製した。
【0068】
<比較例2>
比較合成例1で得られたポリマーをシクロヘキサノンに溶解させ、その後、熱酸発生剤K−PURE TAG2689(キングインダストリーズ社製)をポリマー質量に対して1質量%加え、孔径1.0μmのPTFE製ミクロフィルターを用いてろ過して、固形分として35.35質量%含有する組成物を調製した。
【0069】
<比較例3>
比較合成例2で得られたポリマーをシクロヘキサノンに溶解させ、その後、熱酸発生剤K−PURE TAG2689(キングインダストリーズ社製)をポリマー質量に対して1質量%加え、孔径1.0μmのPTFE製ミクロフィルターを用いてろ過して、固形分として40.40質量%含有する組成物を調製した。
【0070】
<比較例4>
アクリル樹脂であるポリメタクリル酸メチル(和光純薬工業(株)製)をシクロヘキサノン中に溶解させ、その後、孔径1.0μmのPTFE製ミクロフィルターを用いてろ過して、固形分として20質量%含有する組成物を調製した。
【0071】
〔透過率測定〕
実施例1乃至実施例3、及び比較例1で調製した組成物を、石英基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において、200℃で5分間ベークを行い、膜厚0.75μmの膜を形成した。この膜を紫外線可視分光光度計UV−2550((株)島津製作所製)を用いて波長400nmの透過率を測定した。さらにこの膜を260℃で3分間加熱した後、波長400nmの透過率を測定した。測定結果を下記表1に示す。表1に示すように、本発明の組成物から得られた膜は、比較例の組成物から得られた膜と比べて透過率が高く、260℃という高温でもほとんど着色せず高い透過率を維持し、耐熱性を有することを示唆するという結果が得られた。
【表1】
【0072】
〔耐光性試験〕
実施例1乃至実施例3で調製した組成物を、スピンコーターにより石英板上に塗布した。ホットプレート上において220℃で5分間ベークし、膜厚0.75μmの膜を形成した。そして、これらの膜をキセノンアークランプによる耐光性試験(JIS B7754)を24時間行い、この膜を紫外線可視分光光度計UV−2550((株)島津製作所製)を用いて波長400nmの透過率を測定した。測定結果を下記表2に示す。表2に示すように、本発明の組成物から得られた膜は紫外線照射後も透過率が高く、耐光性が高い(着色しにくい)とする結果が得られた。
【表2】
【0073】
〔溶剤への溶出試験〕
実施例3及び比較例1で調製した組成物を、シリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において200℃で5分間ベークを行い、膜厚1μmの膜を形成した。この膜を、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン、2−プロパノール、及び2−ヘプタノンに、それぞれ23℃にて10分間浸漬した。実施例3の組成物から得られた膜では浸漬前後での膜厚変化が5%以下であることを確認したが、比較例1の組成物から得られた膜ではN−メチル−2−ピロリドンに浸漬後、全部溶解してしまった。
【0074】
〔リワーク性評価〕
実施例4乃至実施例6及び比較例2及び比較例3で調製した組成物をシリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で100℃及び150℃でそれぞれ2分間ベークし、更に窒素置換されたオーブンにおいて250℃で1時間ベークして膜を形成した。この膜のリワーク性について、反応性イオンエッチング装置(サムコ(株)製、RIE−10NR)にて酸素流量50sccm、圧力12Pa、RF出力250Wの条件下で、2分間エッチングを行い、1分間当たりに減少した膜厚量から評価した。その結果を下記表3に示す。表3に示すように、本発明の組成物から得られた膜は、エッチングにより容易に除去可能であり、リワーク性に優れるのに対し、比較例の組成物から得られた膜ではほとんど除去できずリワーク性に欠けるとする結果が得られた。
【表3】
【0075】
〔絶縁性評価〕
実施例4乃至実施例8及び比較例4で調製した組成物に、シリコンウェハー上にスピンコーターを用いて膜を形成した際に膜厚が500nmとなるよう、シクロヘキサノンを加えて希釈溶液を作製した。作製した希釈溶液をシリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で100℃及び150℃でそれぞれ2分間ベークし、更に窒素置換されたオーブンにおいて250℃で1時間ベークして膜を形成した。この膜の絶縁性について、水銀プローバ(Four Dimensions社製、CVmap92−B)による2MV/cmの電圧をかけた際のリーク電流値を測定した。その結果を下記表4に示す。表4に示すように、本発明の組成物から得られた膜はリーク電流値が低く、絶縁性が高いのに対し、比較例の組成物から得られた膜はリーク電流値が高く、絶縁性に乏しいとする結果が得られた。
【表4】
【0076】
〔耐熱性評価〕
実施例4乃至実施例8及び比較例4で調製した組成物をシリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において100℃及び150℃でそれぞれ2分間ベークして形成した膜の耐熱性について、TG−DTA(ブルカーエイエックスエス社製、TG/DTA2010SR)にて、10℃/分で昇温し5質量%の質量減少を生ずる温度から評価した。その結果を下記表5に示す。表5に示すように、本発明の組成物から得られた膜は5質量%質量減少温度が高く、比較例の組成物から得られた膜よりも高い耐熱性を示すとする結果が得られた。
【表5】
【0077】
〔接着性評価〕
(接着力評価サンプルの作製)
実施例4及び実施例5で調製した組成物を、ウェハー径4インチのシリコンウェハー上に、スピンコーターを用いて膜を形成した際の膜厚が5μmとなるようそれぞれ塗布し、ホットプレート上において100℃で2分間及び150℃で2分間ベークして膜を形成した。その後、貼り合せ装置(アユミ工業(株)製、VJ−300)を使用して、真空度10Pa以下、温度160℃、貼り合せ圧力400Kgの条件下で、前記シリコンウェハー上に形成した膜とウェハー径4インチのガラスウェハーとを接着させた。その後、接着したウェハーをオーブンにて250℃で1時間ベークし、ダイシングソー((株)ディスコ製、DAD321)を使用して1cm角に切断し、接着力評価用サンプルを作製した。
さらに、比較例4で調製した組成物を、ウェハー径4インチのシリコンウェハー上に、スピンコーターを用いて膜を形成した際に膜厚が5μmとなるよう塗布し、ホットプレート上において100℃で2分間及び200℃で2分間ベークして膜を形成し、その後、貼り合せ装置(アユミ工業(株)製、VJ−300)を使用して、真空度10Pa以下、温度270℃、貼り合せ圧力400Kgの条件下で、前記シリコンウェハー上に形成した膜とウェハー径4インチのガラスウェハーとを接着させた。その後、ダイシングソー((株)ディスコ製、DAD321)を使用して1cm角に切断し、接着力評価用サンプルを作製した。
【0078】
(接着力評価)
実施例4、実施例5及び比較例4の組成物を用いて得られた接着力評価サンプルの両面に、アラルダイト(登録商標)2014(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)を塗布し、接着力(せん断)測定用専用冶具に両面を接着後、オートグラフ((株)島津製作所製、オートグラフAGS−100NX)で接着力(せん断)を評価試験した。接着力は1mm/分の引っ張り速度で測定した。その結果を下記表6に示す。表6中、接着力の値が1000N以上とは、上記接着力測定機(試験装置)の測定限界以上であることを示す。実施例4及び実施例5の組成物を用いて得られたサンプルは、比較例4の組成物から得られたサンプルより、高い接着力を示した。
【表6】
【0079】
<合成例15>
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸グリシジルエステル25.00g、モノアリルイソシアヌル酸15.43g、及びベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.93gをシクロヘキサノン62.05gに溶解させた後、140℃で4時間反応させポリマーを含む溶液を得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は5,500であった。なお、得られたポリマーは、下記式[O]で表される構造単位を有し且つポリマー末端に水素原子を有するポリマーであると考えられる。
【化27】
【0080】
<合成例16>
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸15.86g、モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸25.00g、及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド3.35gをシクロヘキサノン54.03gに溶解させた後、140℃で4時間反応させポリマーを含む溶液を得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は3,300であった。得られたポリマーは、下記式[P]で表される構造単位を有し且つポリマー末端にカルボキシル基を有するポリマーであると考えられる。なお、本合成例で得られたポリマーと合成例15で得られたポリマーとは、末端が相違する。
【化28】
【0081】
<合成例17>
2,2−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキサン)プロパン25.00g、モノアリルイソシアヌル酸9.67g、及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド1.04gをシクロヘキサノン53.57gに溶解させた後、140℃で4時間反応させポリマーを含む溶液を得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は8,200であった。なお、得られたポリマーは、下記式[Q]で表される構造単位を有し且つポリマー末端に水素原子を有するポリマーであると考えられる。
【化29】
【0082】
<合成例18>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸2.0g及びモノアリルイソシアヌル酸1.2gをシクロヘキサノン13.2gに溶解させた後、120℃に加温して、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.08gを添加し、窒素雰囲気下120℃で21時間反応させた。その後、得られた反応溶液をメタノールに滴下し、析出した沈殿物をろ過し、白色粉末を得た。反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は5,800であった。得られた反応生成物は下記式[R]で表される構造単位を有するポリマーである。
【化30】
【0083】
<実施例9>
合成例15で得られたポリマーを含む溶液を、陽イオン交換樹脂(15JWET、オルガノ(株))及び陰イオン交換樹脂(モノスフィアー(登録商標)550A、ムロマチテクノス(株))が充填されたボトル中に注入し、4時間撹拌させた。その後、孔径3μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、接着剤用組成物を調製した。
【0084】
<実施例10>
合成例16で得られたポリマーを含む溶液を、陽イオン交換樹脂(15JWET、オルガノ(株))及び陰イオン交換樹脂(モノスフィアー(登録商標)550A、ムロマチテクノス(株))が充填されたボトル中に注入し、4時間撹拌させた。その後、孔径3μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、接着剤用組成物を調製した。
【0085】
<実施例11>
合成例17で得られたポリマーを含む溶液を、陽イオン交換樹脂(15JWET、オルガノ(株))及び陰イオン交換樹脂(モノスフィアー(登録商標)550A、ムロマチテクノス(株))が充填されたボトル中に注入し、4時間撹拌させた。その後、孔径3μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、接着剤用組成物を調製した。
【0086】
<実施例12>
合成例18で得られた粉末状のポリマー5gをシクロヘキサノン45gに投入し、4時間攪拌させた。その後、孔径3μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、接着剤用組成物を調製した。
【0087】
<実施例13>
合成例15で得られたポリマーを含む溶液を、陽イオン交換樹脂(15JWET、オルガノ(株))及び陰イオン交換樹脂(モノスフィアー(登録商標)550A、ムロマチテクノス(株))が充填されたボトル中に注入し、4時間撹拌させた。その後、孔径3μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過した。ろ液に、前記溶液中のポリマー(固形分)質量に対し9分の1の質量のオルガノシリカゾル(MEK−AC−2101、日産化学工業(株)製)を加え、攪拌し接着剤用組成物を調製した。
【0088】
<実施例14>
合成例16で得られたポリマーを含む溶液を、陽イオン交換樹脂(15JWET、オルガノ(株))及び陰イオン交換樹脂(モノスフィアー(登録商標)550A、ムロマチテクノス(株))が充填されたボトル中に注入し、4時間撹拌させた。その後、孔径3μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過した。ろ液に、前記溶液中のポリマー(固形分)質量に対し9分の1の質量のオルガノシリカゾル(MEK−AC−2101、日産化学工業(株)製)を加え、攪拌し接着剤用組成物を調製した。
【0089】
<比較例5>
ポリイミド前駆体である、ポリ(ピロメリット酸二無水物−co−4,4’−オキシジアニリン)アミック酸溶液(Pyre−ML RC−5019 16質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液、シグマアルドリッチジャパン(株))10gに、N−メチル−2−ピロリドン10gを加え、接着剤用組成物を調製した。
【0090】
〔透過率測定〕
実施例9、10、11、13、14及び比較例5で調製した接着剤用組成物を、石英基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において、200℃で5分間ベークを行い、膜厚1μmの膜を形成した。この膜を紫外線可視分光光度計UV−2550((株)島津製作所製)を用いて波長500nmの透過率を測定した。
さらに、前記実施例9及び10及び比較例5で調製した接着剤用組成物から形成した膜を270℃で5分間ベークした後、波長500nmの透過率を測定した。
測定結果を下記表7に示す。表7に示すように、実施例9及び10で調製した接着剤用組成物から形成した膜は、比較例5で調製した接着剤用組成物から形成した膜よりも高い透過率を示し、且つ270℃でベーク後も高い透過率を維持し、耐熱性を有することを示唆する結果を得た。
【表7】
【0091】
〔溶剤への溶出試験〕
実施例9、10、11、13、14及び比較例5で調製した接着剤用組成物を、シリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において200℃で5分間ベークを行い、膜厚1μmの膜を形成した。この膜をN−メチル−2−ピロリドンに、23℃にて2分間浸漬した。実施例9、10、11、13、14で調製した接着剤用組成物から形成された膜は浸漬前後での膜厚変化が1%以下であることを確認したが、比較例5で調製した接着剤用組成物から形成された膜はN−メチル−2−ピロリドンに浸漬後、浸漬前の膜厚の20%以上が溶解してしまった。
【0092】
〔接着力評価〕
実施例9、10、11で調製した接着剤用組成物を、シリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布し、100℃及び160℃でそれぞれ4分間ずつベークを行って、膜厚5μmの膜を形成した。その後、貼り合せ装置(アユミ工業(株)製、VJ−300)を使用して、真空度10Pa以下、温度160℃、貼り合せ圧力800Kgの条件下で、前記シリコンウェハー上に形成した膜とウェハー径4インチのガラスウェハーとを接着させた。その後、接着したウェハーをダイシング装置(ディスコ(株)製、DAD321)で1cm角に切断し、接着力評価サンプルを作製した。
得られた接着力評価サンプルの両面にアラルダイト(登録商標)2014(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)を塗布し、接着力(せん断)測定用専用冶具に両面を接着後、オートグラフ((株)島津製作所製、オートグラフAGS−100NX)で接着力(せん断)を評価試験した。接着力は1mm/分の引っ張り速度で測定した。その結果を下記表8に示す。表8中、接着力の値が1000N以上とは、上記接着力測定機の測定限界以上であることを示す。実施例9、10、11で調製した接着剤用組成物を用いて得られたサンプルは、十分な接着性を有することが確認された。
【表8】