【実施例】
【0041】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0042】
以下に記載する合成例で得られたポリマーのGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析は、下記の装置を用い、測定条件は下記のとおりである。
装置:一体型高速GPCシステム HLC−8220GPC 東ソー(株)製
カラム:KF−G,KF804L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:1.0mL/分
標準試料:ポリスチレン
ディテクター:RI
【0043】
<合成例1>
水素化ナトリウム(油状パラフィン中に60質量%含有)10.0gをN−メチル−2−ピロリドン200g中に懸濁させた後、モノブチルイソシアヌル酸21.9gを分割添加し、40℃に加温し1時間攪拌した。その後、1,4−ジブロモブタン25.5gをゆっくり添加した後、100℃で2時間反応させた。その後、水にて反応を停止かつポリマーを析出させた。その後再沈殿作業を行って下記式[A]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は7,100であった。
【化11】
【0044】
<合成例2>
水素化ナトリウム(油状パラフィン中に60質量%含有)10.0gをN−メチル−2−ピロリドン200g中に懸濁させた後、モノアリルイソシアヌル酸19.5gを分割添加し、40℃に加温し1時間攪拌した。その後、1,4−ジクロロブタン15.0gをゆっくり添加した後、90℃で24時間反応させた。その後、水にて反応を停止かつポリマーを析出させた。その後再沈殿作業を行って下記式[B]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は4,000であった。
【化12】
【0045】
<合成例3>
合成例2で得られたポリマー8gを塩化メチレン32gに溶解させ、その後m−クロロ過安息香酸9.3g(0.054mol)を分割添加し、窒素中、室温で2日間反応させた。その後、得られた反応溶液をジエチルエーテル/メタノール混合溶媒に滴下し、析出した沈殿物を濾過し、白色粉末を得た。反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は5,200であった。また、アリルからエポキシへの転化率は52%であった。得られた反応生成物は下記式[C]に示す2つの式で表される構造単位を有するポリマーである。
【化13】
【0046】
<合成例4>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸67.66g、1,2−ジブロモエタン74.39g、炭酸カリウム121.62g及びN−メチル−2−ピロリドン213.07gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後メタノールに投入し再沈精製を行って下記式[D]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は9,500であった。
【化14】
【0047】
<合成例5>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸67.66g、1,4−ジブロモブタン77.73g、炭酸カリウム121.62g及びN−メチル−2−ピロリドン581.53gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後メタノールに投入し再沈精製を行って下記式[E]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は9,500であった。
【化15】
【0048】
<合成例6>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸67.66g、1,6−ジブロモヘキサン87.83g、炭酸カリウム121.62g及びN−メチル−2−ピロリドン621.94gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後酢酸エチルと水の二層分離溶液に投入して分液操作を行うことで、目的のポリマーのみを酢酸エチル層に抽出し、酢酸エチルをエバポレーターで蒸留させることで、下記式[F]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は5,600であった。
【化16】
【0049】
<合成例7>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸11.84g、1,8−ジブロモオクタン17.14g、炭酸カリウム21.28g及びN−メチル−2−ピロリドン115.91gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後酢酸エチルと水の二層分離溶液に投入して分液操作を行うことで、目的のポリマーのみを酢酸エチル層に抽出し、酢酸エチルをエバポレーターで蒸留することで、下記式[G]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は11,300であった。
【化17】
【0050】
<合成例8>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸11.84g、1,10−ジブロモデカン17.14g、炭酸カリウム21.28g及びN−メチル−2−ピロリドン115.91gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後酢酸エチルと水の二層分離溶液に投入して分液操作を行うことで、目的のポリマーのみを酢酸エチル層に抽出し、酢酸エチルをエバポレーターで蒸留することで、下記式[H]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は10,600であった。
【化18】
【0051】
<合成例9>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸11.84g、p−ジクロロキシレン12.13g、炭酸カリウム21.28g及びN−メチル−2−ピロリドン95.89gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後メタノールに投入し再沈精製を行って、下記式[I]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は17,000であった。
【化19】
【0052】
<合成例10>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにジエチルバルビツール酸12.89g、1,4−ジブロモエタン13.02g、炭酸カリウム21.28g及びN−メチル−2−ピロリドン103.65gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後メタノールに投入し再沈精製を行って、下記式[J]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は2,400であった。
【化20】
【0053】
<合成例11>
攪拌装置、還流器、温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸11.84g、1,4−ジブロモ−2−ブテン14.83g、炭酸カリウム21.28g 、N−メチル−2−ピロリドン106.65gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後メタノールに投入し再沈精製を行って、下記式[K]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は8,900であった。
【化21】
【0054】
<合成例12>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸16.91g、1,3−ジクロロ−2−プロパノン12.57g、炭酸カリウム30.41g及びN−メチル−2−ピロリドン88.45gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後メタノールに投入し再沈精製を行って、下記式[L]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は1,300であった。
【化22】
【0055】
<合成例13>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸25.37g、o−ジクロロキシレン22.32g、炭酸カリウム45.61g及びN−メチル−2−ピロリドン111.28gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後メタノールに投入し再沈精製を行って、下記式[M]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は7,800であった。
【化23】
【0056】
<合成例14>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコにモノアリルイソシアヌル酸84.57g、m−ジクロロキシレン39.38g、1,5−ジブロモペンタン45.99g、アリルブロミド6.05g、炭酸カリウム106.62g及びN−メチル−2−ピロリドン410.66gを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで加熱し20時間反応させた。その後溶液を室温まで冷却させた後、ろ過してろ液を回収し、N−メチル−2−ピロリドンと1mol/L塩酸の体積比が90:10の混合液をpHが酸性となるまで加えた。その後メタノールに投入し再沈精製を行って、下記[N]に示す2つの式で表される構造単位を50:50のモル比で有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は3,900であった。
【化24】
【0057】
<比較合成例1>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコに、ジアリルモノグリシジルイソシアヌル酸21.22g、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン10.64g、及びカルステッド触媒(白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の0.1Mキシレン溶液)20μLを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃で1時間及び90℃で20時間反応させることで、下記式[X]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は7,800であった。
【化25】
【0058】
<比較合成例2>
攪拌装置、還流器及び温度計を備えたフラスコに、ジアリルモノグリシジルイソシアヌル酸18.57g、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン19.59g、及びカルステッド触媒(白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の0.1Mキシレン溶液)20μLを入れた。その後フラスコ内を窒素置換した後、70℃で1時間及び150℃で20時間反応させることで、下記式[Y]で表される構造単位を有するポリマーを得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は5,500であった。
【化26】
【0059】
<実施例1>
合成例1で得られたポリマー1g、界面活性剤としてメガファック(登録商標)R−30(DIC(株)製)0.01gをプロピレングリコールモノメチルエーテル2.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.0g及びγ−ブチロラクトン1gに溶解させ溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して組成物を調製した。
【0060】
<実施例2>
合成例1で得られたポリマーにかえて合成例2で得られたポリマーを用いた以外は、上記実施例1と同様に組成物を調製した。
【0061】
<実施例3>
合成例3で得られたポリマー1g、界面活性剤としてメガファック(登録商標)R−30(DIC(株)製)0.01g、熱酸発生剤としてTAG−N(三新化学工業(株)製)0.03gをプロピレングリコールモノメチルエーテル2.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.0g及びγ−ブチロラクトン1gに溶解させ溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して組成物を調製した。
【0062】
<実施例4>
合成例4で得られたポリマーをシクロヘキサノンに溶解させ、その後、孔径1.0μmのポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと略称する。)製ミクロフィルターを用いてろ過して、固形分として35質量%含有する組成物を調製した。
【0063】
<実施例5>
合成例4で得られたポリマーにかえて合成例5で得られたポリマーを用いた以外は、上記実施例4と同様に組成物を調製した。
【0064】
<実施例6>
合成例4で得られたポリマーにかえて合成例6で得られたポリマーを用いた以外は、上記実施例4と同様に組成物を調製した。
【0065】
<実施例7>
合成例4で得られたポリマーにかえて合成例7で得られたポリマーを用いた以外は、上記実施例4と同様に組成物を調製した。
【0066】
<実施例8>
合成例4で得られたポリマーにかえて合成例8で得られたポリマーを用いた以外は、上記実施例4と同様に組成物を調製した。
【0067】
<比較例1>
ポリイミド前駆体である、ポリ(ピロメリット酸二無水物−co−4,4’−オキシジアニリン)アミック酸溶液(Pyre−ML RC−5019 16質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液、シグマアルドリッチジャパン(株)))5gに、界面活性剤としてメガファック(登録商標)R−30(DIC(株)製)0.01gを加え溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して組成物を調製した。
【0068】
<比較例2>
比較合成例1で得られたポリマーをシクロヘキサノンに溶解させ、その後、熱酸発生剤K−PURE TAG2689(キングインダストリーズ社製)をポリマー質量に対して1質量%加え、孔径1.0μmのPTFE製ミクロフィルターを用いてろ過して、固形分として35.35質量%含有する組成物を調製した。
【0069】
<比較例3>
比較合成例2で得られたポリマーをシクロヘキサノンに溶解させ、その後、熱酸発生剤K−PURE TAG2689(キングインダストリーズ社製)をポリマー質量に対して1質量%加え、孔径1.0μmのPTFE製ミクロフィルターを用いてろ過して、固形分として40.40質量%含有する組成物を調製した。
【0070】
<比較例4>
アクリル樹脂であるポリメタクリル酸メチル(和光純薬工業(株)製)をシクロヘキサノン中に溶解させ、その後、孔径1.0μmのPTFE製ミクロフィルターを用いてろ過して、固形分として20質量%含有する組成物を調製した。
【0071】
〔透過率測定〕
実施例1乃至実施例3、及び比較例1で調製した組成物を、石英基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において、200℃で5分間ベークを行い、膜厚0.75μmの膜を形成した。この膜を紫外線可視分光光度計UV−2550((株)島津製作所製)を用いて波長400nmの透過率を測定した。さらにこの膜を260℃で3分間加熱した後、波長400nmの透過率を測定した。測定結果を下記表1に示す。表1に示すように、本発明の組成物から得られた膜は、比較例の組成物から得られた膜と比べて透過率が高く、260℃という高温でもほとんど着色せず高い透過率を維持し、耐熱性を有することを示唆するという結果が得られた。
【表1】
【0072】
〔耐光性試験〕
実施例1乃至実施例3で調製した組成物を、スピンコーターにより石英板上に塗布した。ホットプレート上において220℃で5分間ベークし、膜厚0.75μmの膜を形成した。そして、これらの膜をキセノンアークランプによる耐光性試験(JIS B7754)を24時間行い、この膜を紫外線可視分光光度計UV−2550((株)島津製作所製)を用いて波長400nmの透過率を測定した。測定結果を下記表2に示す。表2に示すように、本発明の組成物から得られた膜は紫外線照射後も透過率が高く、耐光性が高い(着色しにくい)とする結果が得られた。
【表2】
【0073】
〔溶剤への溶出試験〕
実施例3及び比較例1で調製した組成物を、シリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において200℃で5分間ベークを行い、膜厚1μmの膜を形成した。この膜を、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン、2−プロパノール、及び2−ヘプタノンに、それぞれ23℃にて10分間浸漬した。実施例3の組成物から得られた膜では浸漬前後での膜厚変化が5%以下であることを確認したが、比較例1の組成物から得られた膜ではN−メチル−2−ピロリドンに浸漬後、全部溶解してしまった。
【0074】
〔リワーク性評価〕
実施例4乃至実施例6及び比較例2及び比較例3で調製した組成物をシリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で100℃及び150℃でそれぞれ2分間ベークし、更に窒素置換されたオーブンにおいて250℃で1時間ベークして膜を形成した。この膜のリワーク性について、反応性イオンエッチング装置(サムコ(株)製、RIE−10NR)にて酸素流量50sccm、圧力12Pa、RF出力250Wの条件下で、2分間エッチングを行い、1分間当たりに減少した膜厚量から評価した。その結果を下記表3に示す。表3に示すように、本発明の組成物から得られた膜は、エッチングにより容易に除去可能であり、リワーク性に優れるのに対し、比較例の組成物から得られた膜ではほとんど除去できずリワーク性に欠けるとする結果が得られた。
【表3】
【0075】
〔絶縁性評価〕
実施例4乃至実施例8及び比較例4で調製した組成物に、シリコンウェハー上にスピンコーターを用いて膜を形成した際に膜厚が500nmとなるよう、シクロヘキサノンを加えて希釈溶液を作製した。作製した希釈溶液をシリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で100℃及び150℃でそれぞれ2分間ベークし、更に窒素置換されたオーブンにおいて250℃で1時間ベークして膜を形成した。この膜の絶縁性について、水銀プローバ(Four Dimensions社製、CVmap92−B)による2MV/cmの電圧をかけた際のリーク電流値を測定した。その結果を下記表4に示す。表4に示すように、本発明の組成物から得られた膜はリーク電流値が低く、絶縁性が高いのに対し、比較例の組成物から得られた膜はリーク電流値が高く、絶縁性に乏しいとする結果が得られた。
【表4】
【0076】
〔耐熱性評価〕
実施例4乃至実施例8及び比較例4で調製した組成物をシリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において100℃及び150℃でそれぞれ2分間ベークして形成した膜の耐熱性について、TG−DTA(ブルカーエイエックスエス社製、TG/DTA2010SR)にて、10℃/分で昇温し5質量%の質量減少を生ずる温度から評価した。その結果を下記表5に示す。表5に示すように、本発明の組成物から得られた膜は5質量%質量減少温度が高く、比較例の組成物から得られた膜よりも高い耐熱性を示すとする結果が得られた。
【表5】
【0077】
〔接着性評価〕
(接着力評価サンプルの作製)
実施例4及び実施例5で調製した組成物を、ウェハー径4インチのシリコンウェハー上に、スピンコーターを用いて膜を形成した際の膜厚が5μmとなるようそれぞれ塗布し、ホットプレート上において100℃で2分間及び150℃で2分間ベークして膜を形成した。その後、貼り合せ装置(アユミ工業(株)製、VJ−300)を使用して、真空度10Pa以下、温度160℃、貼り合せ圧力400Kgの条件下で、前記シリコンウェハー上に形成した膜とウェハー径4インチのガラスウェハーとを接着させた。その後、接着したウェハーをオーブンにて250℃で1時間ベークし、ダイシングソー((株)ディスコ製、DAD321)を使用して1cm角に切断し、接着力評価用サンプルを作製した。
さらに、比較例4で調製した組成物を、ウェハー径4インチのシリコンウェハー上に、スピンコーターを用いて膜を形成した際に膜厚が5μmとなるよう塗布し、ホットプレート上において100℃で2分間及び200℃で2分間ベークして膜を形成し、その後、貼り合せ装置(アユミ工業(株)製、VJ−300)を使用して、真空度10Pa以下、温度270℃、貼り合せ圧力400Kgの条件下で、前記シリコンウェハー上に形成した膜とウェハー径4インチのガラスウェハーとを接着させた。その後、ダイシングソー((株)ディスコ製、DAD321)を使用して1cm角に切断し、接着力評価用サンプルを作製した。
【0078】
(接着力評価)
実施例4、実施例5及び比較例4の組成物を用いて得られた接着力評価サンプルの両面に、アラルダイト(登録商標)2014(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)を塗布し、接着力(せん断)測定用専用冶具に両面を接着後、オートグラフ((株)島津製作所製、オートグラフAGS−100NX)で接着力(せん断)を評価試験した。接着力は1mm/分の引っ張り速度で測定した。その結果を下記表6に示す。表6中、接着力の値が1000N以上とは、上記接着力測定機(試験装置)の測定限界以上であることを示す。実施例4及び実施例5の組成物を用いて得られたサンプルは、比較例4の組成物から得られたサンプルより、高い接着力を示した。
【表6】
【0079】
<合成例15>
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸グリシジルエステル25.00g、モノアリルイソシアヌル酸15.43g、及びベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.93gをシクロヘキサノン62.05gに溶解させた後、140℃で4時間反応させポリマーを含む溶液を得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は5,500であった。なお、得られたポリマーは、下記式[O]で表される構造単位を有し且つポリマー末端に水素原子を有するポリマーであると考えられる。
【化27】
【0080】
<合成例16>
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸15.86g、モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸25.00g、及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド3.35gをシクロヘキサノン54.03gに溶解させた後、140℃で4時間反応させポリマーを含む溶液を得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は3,300であった。得られたポリマーは、下記式[P]で表される構造単位を有し且つポリマー末端にカルボキシル基を有するポリマーであると考えられる。なお、本合成例で得られたポリマーと合成例15で得られたポリマーとは、末端が相違する。
【化28】
【0081】
<合成例17>
2,2−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキサン)プロパン25.00g、モノアリルイソシアヌル酸9.67g、及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド1.04gをシクロヘキサノン53.57gに溶解させた後、140℃で4時間反応させポリマーを含む溶液を得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は8,200であった。なお、得られたポリマーは、下記式[Q]で表される構造単位を有し且つポリマー末端に水素原子を有するポリマーであると考えられる。
【化29】
【0082】
<合成例18>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸2.0g及びモノアリルイソシアヌル酸1.2gをシクロヘキサノン13.2gに溶解させた後、120℃に加温して、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.08gを添加し、窒素雰囲気下120℃で21時間反応させた。その後、得られた反応溶液をメタノールに滴下し、析出した沈殿物をろ過し、白色粉末を得た。反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は5,800であった。得られた反応生成物は下記式[R]で表される構造単位を有するポリマーである。
【化30】
【0083】
<実施例9>
合成例15で得られたポリマーを含む溶液を、陽イオン交換樹脂(15JWET、オルガノ(株))及び陰イオン交換樹脂(モノスフィアー(登録商標)550A、ムロマチテクノス(株))が充填されたボトル中に注入し、4時間撹拌させた。その後、孔径3μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、接着剤用組成物を調製した。
【0084】
<実施例10>
合成例16で得られたポリマーを含む溶液を、陽イオン交換樹脂(15JWET、オルガノ(株))及び陰イオン交換樹脂(モノスフィアー(登録商標)550A、ムロマチテクノス(株))が充填されたボトル中に注入し、4時間撹拌させた。その後、孔径3μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、接着剤用組成物を調製した。
【0085】
<実施例11>
合成例17で得られたポリマーを含む溶液を、陽イオン交換樹脂(15JWET、オルガノ(株))及び陰イオン交換樹脂(モノスフィアー(登録商標)550A、ムロマチテクノス(株))が充填されたボトル中に注入し、4時間撹拌させた。その後、孔径3μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、接着剤用組成物を調製した。
【0086】
<実施例12>
合成例18で得られた粉末状のポリマー5gをシクロヘキサノン45gに投入し、4時間攪拌させた。その後、孔径3μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、接着剤用組成物を調製した。
【0087】
<実施例13>
合成例15で得られたポリマーを含む溶液を、陽イオン交換樹脂(15JWET、オルガノ(株))及び陰イオン交換樹脂(モノスフィアー(登録商標)550A、ムロマチテクノス(株))が充填されたボトル中に注入し、4時間撹拌させた。その後、孔径3μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過した。ろ液に、前記溶液中のポリマー(固形分)質量に対し9分の1の質量のオルガノシリカゾル(MEK−AC−2101、日産化学工業(株)製)を加え、攪拌し接着剤用組成物を調製した。
【0088】
<実施例14>
合成例16で得られたポリマーを含む溶液を、陽イオン交換樹脂(15JWET、オルガノ(株))及び陰イオン交換樹脂(モノスフィアー(登録商標)550A、ムロマチテクノス(株))が充填されたボトル中に注入し、4時間撹拌させた。その後、孔径3μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過した。ろ液に、前記溶液中のポリマー(固形分)質量に対し9分の1の質量のオルガノシリカゾル(MEK−AC−2101、日産化学工業(株)製)を加え、攪拌し接着剤用組成物を調製した。
【0089】
<比較例5>
ポリイミド前駆体である、ポリ(ピロメリット酸二無水物−co−4,4’−オキシジアニリン)アミック酸溶液(Pyre−ML RC−5019 16質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液、シグマアルドリッチジャパン(株))10gに、N−メチル−2−ピロリドン10gを加え、接着剤用組成物を調製した。
【0090】
〔透過率測定〕
実施例9、10、11、13、14及び比較例5で調製した接着剤用組成物を、石英基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において、200℃で5分間ベークを行い、膜厚1μmの膜を形成した。この膜を紫外線可視分光光度計UV−2550((株)島津製作所製)を用いて波長500nmの透過率を測定した。
さらに、前記実施例9及び10及び比較例5で調製した接着剤用組成物から形成した膜を270℃で5分間ベークした後、波長500nmの透過率を測定した。
測定結果を下記表7に示す。表7に示すように、実施例9及び10で調製した接着剤用組成物から形成した膜は、比較例5で調製した接着剤用組成物から形成した膜よりも高い透過率を示し、且つ270℃でベーク後も高い透過率を維持し、耐熱性を有することを示唆する結果を得た。
【表7】
【0091】
〔溶剤への溶出試験〕
実施例9、10、11、13、14及び比較例5で調製した接着剤用組成物を、シリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において200℃で5分間ベークを行い、膜厚1μmの膜を形成した。この膜をN−メチル−2−ピロリドンに、23℃にて2分間浸漬した。実施例9、10、11、13、14で調製した接着剤用組成物から形成された膜は浸漬前後での膜厚変化が1%以下であることを確認したが、比較例5で調製した接着剤用組成物から形成された膜はN−メチル−2−ピロリドンに浸漬後、浸漬前の膜厚の20%以上が溶解してしまった。
【0092】
〔接着力評価〕
実施例9、10、11で調製した接着剤用組成物を、シリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布し、100℃及び160℃でそれぞれ4分間ずつベークを行って、膜厚5μmの膜を形成した。その後、貼り合せ装置(アユミ工業(株)製、VJ−300)を使用して、真空度10Pa以下、温度160℃、貼り合せ圧力800Kgの条件下で、前記シリコンウェハー上に形成した膜とウェハー径4インチのガラスウェハーとを接着させた。その後、接着したウェハーをダイシング装置(ディスコ(株)製、DAD321)で1cm角に切断し、接着力評価サンプルを作製した。
得られた接着力評価サンプルの両面にアラルダイト(登録商標)2014(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)を塗布し、接着力(せん断)測定用専用冶具に両面を接着後、オートグラフ((株)島津製作所製、オートグラフAGS−100NX)で接着力(せん断)を評価試験した。接着力は1mm/分の引っ張り速度で測定した。その結果を下記表8に示す。表8中、接着力の値が1000N以上とは、上記接着力測定機の測定限界以上であることを示す。実施例9、10、11で調製した接着剤用組成物を用いて得られたサンプルは、十分な接着性を有することが確認された。
【表8】