(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の伝送方式のうちいずれか一つを用いてデータ信号を複数の端末局装置に伝送する場合における、制御信号の送受信を含むオーバーヘッドと、データ信号のデータ長と、変調方式と、符号化率と、伝送に用いるサブキャリア数とに基づいて伝送速度を伝送方式ごとに算出する伝送速度算出部と、
前記端末局装置に伝送するデータ信号を前記複数の伝送方式それぞれに応じた無線パケット信号に変調する伝送信号生成部と、
前記伝送速度算出部が算出した複数の伝送速度のうち最大の伝送速度に対応する伝送方式に応じて前記伝送信号生成部に無線パケット信号を生成させることを選択する伝送方式選択部と、
前記伝送方式選択部による選択に応じて生成された無線パケット信号を無線信号に変換して送信する送信部と
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【背景技術】
【0002】
5GHz(ギガヘルツ)帯を用いた高速無線アクセスシステムとして、IEEE802.11a規格がある。このシステムは、マルチパスフェージング環境での特性を安定化させるための技術である直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式を用い、最大で54Mbps(メガビット毎秒)のスループットを実現している(例えば、非特許文献1)。
【0003】
更に、IEEE802.11nでは、複数のアンテナを用いて同一時刻及び同一周波数チャネルを用いて空間多重を実現することが可能なMIMO(Multiple input multiple output)技術や、これまで個別に用いられていた20MHz(メガヘルツ)の周波数チャネルを2つ同時に利用して40MHzの周波数チャネルを利用するチャネルボンディング技術によって高速通信の実現を目指し、最大600Mbpsの伝送速度を実現することが可能である(例えば、非特許文献1)。
【0004】
更に、規格が策定中であるIEEE802.11acでは、20MHzの周波数チャネル4つを同時に利用して80MHzの周波数チャネルとして利用するチャネルボンディング技術や、マルチユーザMIMO技術を用いて同一周波数チャネル及び同一時刻に、複数の無線局に対して同時に伝送を行う空間分割多元接続(SDMA:spatial division multiple access)伝送技術が採用される予定であり、IEEE802.11nより高速かつ高効率な無線通信の実現を目指している(例えば、非特許文献2)。
【0005】
また、次世代無線LAN標準化では、周波数帯域の柔軟な割り当てを実現することでさらなる高効率化が可能な複数の無線局のデータを異なるサブキャリアに割り当て伝送を行う直交周波数分割多元接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)伝送技術の検討が行われている(例えば、非特許文献3)。
【0006】
ここで、無線LANシステムを想定した場合のSDMA伝送及びOFDMA伝送について図を用いて具体的に説明する.
図16は、無線LANシステムモデルの一例を示す図である。
図16に示す無線LANシステムは、基地局装置91と、基地局装置91と無線パケット通信をする端末局装置92−1及び端末局装置92−2とを備えている。
図16に示す基地局装置91は、SDMA伝送もしくはOFDMA伝送を用いて、同一時刻に複数の端末局装置92−1及び端末局装置92−2に対して伝送を行うことができる。
【0007】
図17は、IEEE802.11acで採用されているSDMA伝送の動作例を示すタイムチャートである。
図17に示す動作例では、他の無線局が通信を行っているかを確認するキャリアセンス(CS:Carrier Sense)と、ヌルデータパケットの送信を知らせるヌルデータパケットアナウンスメント(NDPA:Null Data Packet Announcement)と、ヌルデータで構成されるヌルデータパケット(NDP:Null Data Packet)と、NDPから推定された伝搬チャネル情報を通知するビームフォーミングレポート(BR:Beamforming Report)と、伝搬チャネル情報を要求するビームフォーミングレポートポール(BRP:Beamforming Report Poll)と、端末局装置92−1及び端末局装置92−2に対するデータ(Data1及びData2)と、信号が正しく受信されたかを通知するブロックACK(BA:Block Acknowledgment)と、ブロックACKを要求するブロックACKリクエストBAR(Block Acknowledgment Request)との各フレームを用いてSDMA伝送が行われる。
【0008】
基地局装置91において、端末局装置92−1及び端末局装置92−2に対して送信すべきパケットのデータ(送信対象データ)が発生したとする。これに応じて、基地局装置91は、ランダムな時間間隔でCSを実行する。CSにより、通信周波数帯域が使用されていないアイドル状態と、通信周波数帯域が使用されているビジー状態のいずれであるのかが判定される。
【0009】
図17における時刻t1において実行したCSにより、通信周波数帯域が使用されていないアイドル状態であることを基地局装置91が検出する。これに応じて、基地局装置91は、時刻t3から時刻t4までの期間においてNDPAを生成して送信する。
【0010】
時刻t5から時刻t6までの期間において、基地局装置91は伝搬チャネル推定用のNDPを生成して送信する。また、基地局装置91は、上記送信対象データの宛先が端末局装置92−1及び端末局装置92−2であることを検出し、端末局装置92−1及び端末局装置92−2を宛先として指定した測定用信号を送信する。基地局装置91から送信された測定用信号の受信に応じて、端末局装置92−1及び端末局装置92−2は時刻t5から時刻t6の期間内において伝搬チャネル特性を測定する。端末局装置92−1及び端末局装置92−2は、測定した伝搬チャネル特性を量子化した伝搬チャネル情報を含むBRを生成する。
【0011】
時刻t7から時刻t8の期間において、端末局装置92−1は、生成したBRを送信する。時刻t9から時刻t10の期間において、基地局装置91は、端末局装置92−2に対してBRを要求するBRPを生成して送信する。時刻t11から時刻t12の期間において、端末局装置92−2は、基地局装置91からのBRPに応じて、生成したBRを送信する。基地局装置91は、端末局装置92−1及び端末局装置92−2から通知されたBRを用いた送信ウエイトの算出と、送信対象データ(Data1及びData2)を含む送信信号の生成とを行う。
【0012】
時刻t13から時刻t14の期間において、基地局装置91は、算出した送信ウエイトを用いて送信信号を送信することにより、送信対象データを端末局装置92−1及び端末局装置92−2に向けて送信する。この期間において送信されるデータは、例えば無線通信に適合したフレームに変換されている。また、フレームアグリゲーションが適用されている場合、時刻t13から時刻t14の期間において送信されるデータは、所定数のフレームが連結されたデータユニットとなる。
【0013】
時刻t15から時刻t16の期間において、基地局装置91が送信するデータの受信が時刻t14で終了するのに対応して、端末局装置92−1はBAを送信する。基地局装置91は、端末局装置92−1からBAを受信するとともに、当該BAの受信に応じた所定の処理を実行する。具体的には、基地局装置91は、例えばBAの受信によりデータが正常に受信側で受信されたものと判断し、次のデータ送受信のための処理に遷移する。また、BAが受信されることなくタイムアウトした場合には、基地局装置91は送信対象データを再送するなどの処理を実行する。
【0014】
時刻t17から時刻t18の期間において、基地局装置91は、端末局装置92−2に対してBAの送信を要求するBARを生成し、生成したBARを送信する。時刻t19から時刻t20の期間において、端末局装置92−2は、基地局装置91が送信したBARに応じて、BAを送信する。基地局装置91は、端末局装置92−2からBAを受信するとともに、当該BAの受信に応じた所定の処理を実行する。
以上のようなタイムチャートに従い、無線LANシステムはSDMA伝送を行うこととなる。
【0015】
図18は、OFDMA伝送の動作例を示すタイムチャートである。
図18では、他の無線局が通信を行っているかを確認するCSと、端末局装置92−1及び端末局装置92−2に送信するデータ(Data1及びData2)と、データが正しく受信されたか否かを通知するBAと、BAを要求するBARとの各フレームを用いてOFDMA伝送が行われる。
【0016】
基地局装置91において、端末局装置92−1及び端末局装置92−2に対して送信すべきパケットのデータ(送信対象データ)が発生したとする。これに応じて、基地局装置91は、ランダムな時間間隔でCSを実行する。CSにより、通信周波数帯域が使用されていないアイドル状態と、通信周波数帯域が使用されているビジー状態のいずれであるかが判定される。
【0017】
図18における時刻t1において実行したCSにより、通信周波数帯域が使用されていないアイドル状態であることを基地局装置91が検出する。これに応じて時刻t3から時刻t4までの期間において、基地局装置91は送信対象データを送信する。なお、時刻t3から時刻t4の期間において送信されるデータは、例えば無線通信に適合したフレームに変換されている。また、フレームアグリゲーションが適用されている場合、時刻t3から時刻t4の期間において送信されるデータは、所定数のフレームが連結されたデータユニットとなる。
【0018】
時刻t5から時刻t6の期間において、基地局装置91が送信データの受信が時刻t4で終了するのに応じて、端末局装置92−1はBAを送信する。基地局装置91は、端末局装置92−1が送信したBAを受信するとともに、当該BAの受信に応じた所定の処理を実行する。
【0019】
時刻t7から時刻t8の期間において、基地局装置91は、端末局装置92−2に対してBAを要求するBARを生成し、生成したBARを送信する。基地局装置91は、端末局装置92−2が送信したBAを受信するとともに、当該BAの受信に応じた所定の処理を実行する。
以上のようなタイムチャートに従い、無線LANシステムはOFDMA伝送を行うこととなる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態における無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法を説明する。
【0035】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る第1の実施形態における無線通信システムの一例を示す図である。同図に示すように、無線通信システムは、基地局装置100と、基地局装置100と無線パケット通信をする2つの端末局装置200(200−1、200−2)とを備えている。基地局装置100と端末局装置200−1及び端末局装置200−2とは、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access / Collision Avoidance;搬送波検知多重アクセス/衝突回避)方式を用いて同一周波数チャネルを用いて無線パケット通信を行う。
【0036】
無線パケット通信において、送受信される無線パケットには、送信局、宛先局を示す識別子が含まれる。ここで、送信局は無線パケットを生成し送信した装置であり、宛先局は無線パケットの宛先となる装置である。基地局装置100は、例えば無線LANにおけるアクセスポイントなどであり、端末局装置200−1及び端末局装置200−2はコンピュータや携帯型の情報電子機器などである。本実施形態では、無線通信システムが2台の端末局装置200を備える例を示すが、端末局装置200が3台以上備えられていてもよい。ここで、基地局装置100と端末局装置200−1との間のサブキャリア番号kの伝搬チャネル情報はH
1,kで表し、基地局装置100と端末局装置200−2との間の伝搬チャネル情報はH
2,kで表す。
【0037】
図2は、第1の実施形態における基地局装置100の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、基地局装置100は、アンテナ101−1〜101−N、受信部102−1〜102−N、復調部103、ネットワークインターフェース104、オーバーヘッド算出部105、記憶部106、TDMA伝送速度算出部107、OFDMA伝送速度算出部108、伝送方式選択部109、TDMA伝送信号生成部110、OFDMA伝送信号生成部111、及び、送信部112−1〜112−Nを備えている。
【0038】
受信部102−1〜102−Nは、それぞれがアンテナ101−1〜101−Nのいずれか一つのアンテナと一対一に接続されている。受信部102−1〜102−Nは、接続されているアンテナ101−1〜101−Nを介して受信した受信信号の周波数変換(ダウンコンバート)や受信電力の調整などを施して得られた信号を復調部103に出力する。
【0039】
復調部103は、受信部102−1〜102−Nから入力される信号の復調を行い、取得したデータ信号をネットワークインターフェース104に出力する。
【0040】
ネットワークインターフェース104は、復調部103から入力されたデータ信号を外部のネットワークにおいて用いられるパケットに変換して外部のネットワークに送信する。また、ネットワークインターフェース104は、外部のネットワークから受信したパケットをデータ信号に変換する。ネットワークインターフェース104は、パケットから変換したデータ信号を、TDMA伝送信号生成部110とOFDMA伝送信号生成部111とオーバーヘッド算出部105とに出力する。
【0041】
オーバーヘッド算出部105は、ネットワークインターフェース104からデータ信号を入力する。オーバーヘッド算出部105は、データ信号に含まれる端末局装置200のデータに基づいて、端末局装置200の組み合わせごとに当該組み合わせ宛にデータ信号を送信する際における制御信号等の送受信に要する時間(オーバーヘッド)を伝送方式ごとに算出する。また、オーバーヘッド算出部105は、算出したオーバーヘッドと、データ信号に含まれる端末局装置200それぞれに対応する変調方式、符号化率、伝送に用いるサブキャリア数とを端末局装置200の組み合わせに対応付けて記憶部106に記憶させる。
【0042】
なお、ネットワークインターフェース104を介して外部のネットワークから伝送方式それぞれにおける端末局装置200の組み合わせごとのオーバーヘッド、変調方式、符号化率、サブキャリア数などの伝送速度を算出するために必要なパラメータが入力される場合、オーバーヘッド算出部105は、入力されるパラメータを記憶部106に記憶させる。
【0043】
記憶部106は、端末局装置200の組み合わせ及び伝送方式ごとのオーバーヘッドと、端末局装置200それぞれに対する変調方式、符号化率、伝送に用いるサブキャリア数とを記憶する。
【0044】
TDMA伝送速度算出部107は、TDMA伝送を用いて伝送を行った場合における制御信号等のオーバーヘッド、送信するデータ信号のデータ長、変調方式、符号化率、及び、伝送に用いるサブキャリア数を記憶部106から読み出す。TDMA伝送速度算出部107は、記憶部106から読み出した各パラメータを用いて、TDMA伝送における伝送速度R
TDMAを次式(1)で算出する。TDMA伝送速度算出部107は、算出した伝送速度R
TDMAを伝送方式選択部109に出力する。
【0046】
式(1)において、T
dataはデータ長で単位は時間である。T
oTDMAはTDMA伝送を用いた場合の制御信号等のオーバーヘッド長である。mは端末局装置200を識別する番号である(m=1,2,…,N)。N
sub,mはm番目の端末局装置200に対して割り当てるサブキャリア数である。C
mはm番目の端末局装置200宛のデータ信号を送信する際の符号化率である。M
mはm番目の端末局装置200宛のデータ信号を送信する際の変調多値指数である。T
sはOFDMシンボル長である。これらすべてのパラメータは、TDMA伝送を用いた場合のパラメータである。
【0047】
図3は、第1の実施形態の無線通信システムにおけるTDMA伝送のオーバーヘッド長を示す図である。オーバーヘッド長T
oTDMAは、
図3に示すように、CSとBAと各フレーム間の間隔とを合計した時間であり、次式(2)で算出される。
【0049】
式(2)において、T
CSはキャリアセンス時間である。T
SIFSは無線LANシステムで規定されるSIFS(Short InterFrame Space)時間である。T
BAは応答確信信号の送信時間である。
【0050】
OFDMA伝送速度算出部108は、OFDMA伝送を用いて伝送を行った場合における制御信号等のオーバーヘッド、送信するデータ信号のデータ長、変調方式、符号化率、及び、伝送に用いるサブキャリア数を記憶部106から読み出す。OFDMA伝送速度算出部108は、記憶部106から読み出した各パラメータを用いて、OFDMA伝送における伝送速度R
OFDMAを次式(3)で用いて算出する。OFDMA伝送速度算出部108は、算出した伝則速度R
OFDMAを伝送方式選択部109に出力する。
【0052】
式(3)において、T
dataはデータ長で単位は時間である。T
oOFDMAはOFDMA伝送を用いた場合の制御信号等のオーバーヘッド長である。mは端末局装置200を識別する番号である(m=1,2,…,N)。N
sub,mはm番目の端末局装置200に対して割り当てるサブキャリア数である。C
mはm番目の端末局装置200宛のデータ信号を送信する際の符号化率である。M
mはm番目の端末局装置200宛のデータ信号を送信する際の変調多値指数である。T
sはOFDMシンボル長である。これらすべてのパラメータは、OFDMA伝送を用いた場合のパラメータである。
【0053】
図4は、第1の実施形態の無線通信システムにおけるOFDMA伝送のオーバーヘッド長を示す図である。
図4に示す例では、無線通信システムが2台の端末局装置200(200−1、200−2)を備える場合が示されている。オーバーヘッド長T
oOFDMAは、
図4に示すように、CSとBAとBARと各フレーム間の間隔とを合計した時間であり、次式(4)で算出される。
【0055】
式(4)における、T
BARは応答確信の要求信号の送信時間である。また、無線通信システムがN台の端末局装置200を備える場合には、オーバーヘッド長T
oOFDMAは次式(5)で算出される。
【0057】
伝送方式選択部109は、TDMA伝送速度算出部107が算出した伝送速度R
TDMAと、OFDMA伝送速度算出部108が算出した伝送速度R
OFDMAとを入力する。伝送方式選択部109は、伝送速度R
TDMAと伝送速度R
OFDMAとを比較し、伝送速度が高い無線伝送方式を選択する。伝送方式選択部109は、選択結果を示す選択信号をTDMA伝送信号生成部110とOFDMA伝送信号生成部111とに出力する。
【0058】
TDMA伝送信号生成部110は、ネットワークインターフェース104からデータ信号を入力し、伝送方式選択部109から選択信号を入力する。TDMA伝送信号生成部110は、選択信号がTDMA伝送を示す場合、入力したデータ信号であって複数の端末局装置200宛のデータ信号からいずれかの端末局装置200宛のデータ信号を無線パケット信号に変調する。TDMA伝送信号生成部110は、変調により得られた無線パケット信号に、当該無線パケット信号がTDMA伝送方式に対応する無線パケット信号であることを示す識別信号を加える。TDMA伝送信号生成部110は、識別信号を含む無線パケット信号を送信部112−1〜112−Nに出力する。また、TDMA伝送信号生成部110は、選択信号がTDMA伝送方式を示さない場合、入力したデータ信号に対する処理を行わずに、送信部112−1〜112−Nへの無線パケット信号の出力も行わない。
【0059】
OFDMA伝送信号生成部111は、ネットワークインターフェース104からデータ信号を入力し、伝送方式選択部109から選択信号を入力する。OFDMA伝送信号生成部111は、選択信号がOFDMA伝送を示す場合、入力したデータ信号であって複数の端末局装置200宛のデータ信号それぞれを異なる周波数帯域を用いた無線パケット信号に変調する。OFDMA伝送信号生成部111は、変調により得られた無線パケット信号に、当該無線パケット信号がOFDMA伝送方式に対応する無線パケット信号であることを示す識別信号を加える。OFDMA伝送信号生成部111は、識別信号を含む無線パケット信号を送信部112−1〜112−Nに出力する。また、OFDMA伝送信号生成部111は、選択信号がOFDMA伝送方式を示さない場合、入力したデータ信号に対する処理を行わずに、送信部112−1〜112−Nへの無線パケット信号の出力も行わない。
【0060】
送信部112−1〜112−Nは、受信部102−1〜102−Nと同様に、それぞれがアンテナ101−1〜101−Nのいずれか一つのアンテナと一対一に接続されている。すなわち、アンテナ101−1〜101−Nそれぞれには、一つずつの受信部102と送信部112とが接続されている。送信部112−1〜112−Nは、TDMA伝送信号生成部110又はOFDMA伝送信号生成部111のいずれかから入力される無線パケット信号に対して、無線通信システムで規定される周波数への変換(アップコンバート)や送信電力の調整などを行うことにより無線信号を生成する。送信部112−1〜112−Nは、生成した無線信号をアンテナ101−1〜101−Nから送信する。
【0061】
図5は、第1の実施形態における端末局装置200の構成を示すブロック図である。
図5に示すように、端末局装置200は、アンテナ201、受信部202、伝送方式判定部203、復調部204、ネットワークインターフェース205、変調部206、及び、送信部207を備えている。
【0062】
受信部202は、アンテナ201を介して受信した受信信号に対して、周波数の変換(ダウンコンバート)や受信電力の調整などを行って得られた信号を伝送方式判定部203と復調部204とに出力する。
伝送方式判定部203は、受信部202から入力される信号に含まれる識別信号を検出し、検出した識別信号を復調部204に出力する。
【0063】
復調部204は、伝送方式判定部203から識別信号を入力する。復調部204は、識別信号が示す伝送方式に基づいて復調の処理を切り替える。復調部204は、識別信号が示す伝送方式に応じた復調を、受信部202から入力する信号に対して行う。復調部204は、復調により得られたデータ信号をネットワークインターフェース205に出力する。
【0064】
ネットワークインターフェース205は、復調部204から入力されるデータ信号を外部のネットワークにおいて用いられるパケット形式に変換して外部のネットワークに送信する。また、ネットワークインターフェース205は、外部のネットワークから入受信するパケットをデータ信号に変換して変調部206に出力する。
【0065】
変調部206は、ネットワークインターフェース205から入力されるデータ信号を、無線通信システムにおいて定められている形式の無線パケット信号に変調し、変調により得られた無線パケット信号を送信部207に出力する。
【0066】
送信部207は、変調部206から入力される無線パケット信号に対して、無線通信システムで規定される周波数への変換(アップコンバート)や送信電力の調整などを行うことにより無線信号を生成する。送信部207は、生成した無線信号をアンテナ201から送信する。
【0067】
図6は、第1の実施形態における基地局装置100が行う伝送方式選択処理を示すフローチャートである。基地局装置100において伝送方式選択処理が開始されると、TDMA伝送速度算出部107が、TDMA伝送における伝送速度R
TDMAを算出する際に用いる各パラメータを記憶部106から読み出して取得する(ステップS101)。
【0068】
TDMA伝送速度算出部107は、読み出した各パラメータに基づいてTDMA伝送における伝送速度R
TDMAを算出し、算出した伝送速度R
TDMAを伝送方式選択部109に出力する(ステップS102)。
【0069】
OFDMA伝送速度算出部108は、OFDMA伝送における伝送速度R
OFDMAを算出する際に用いる各パラメータを記憶部106から読み出して取得する(ステップS103)。
【0070】
OFDMA伝送速度算出部108は、読み出した各パラメータに基づいてOFDMA伝送における伝送速度R
OFDMAを算出し、算出した伝送速度R
OFDMAを伝送方式選択部109に出力する(ステップS104)。
【0071】
伝送方式選択部109は、TDMA伝送速度算出部107が算出した伝送速度R
TDMAと、OFDMA伝送速度算出部108が算出した伝送速度R
OFDMAとを比較する(ステップS105)。
【0072】
伝送速度R
TDMAの値が伝送速度R
OFDMAの値以上の場合(ステップS105:YES)、伝送方式選択部109は、基地局装置100が端末局装置200への伝送にTDMA伝送を用いることを選択し(ステップS106)、処理をステップS108に進める。
【0073】
伝送速度R
TDMAの値が伝送速度R
OFDMAの値未満の場合(ステップS105:NO)、伝送方式選択部109は、基地局装置100が端末局装置200への伝送にOFDMA伝送を用いることを選択し(ステップS107)、処理をステップS108に進める。
【0074】
伝送方式選択部109は、基地局装置100が端末局装置200への伝送に用いる伝送方式(TDMA伝送又はOFDMA伝送のいずれか)を示す選択信号を生成し、生成した選択信号をTDMA伝送信号生成部110とOFDMA伝送信号生成部111とに出力し(ステップS108)、伝送方式選択処理を終了させる。
【0075】
なお、
図6では、TDMA伝送速度算出部107が伝送速度を算出した後に、OFDMA伝送速度算出部108が伝送速度を算出する手順を示したが、TDMA伝送速度算出部107とOFDMA伝送速度算出部108とが並行して伝送速度を算出するようにしてもよい。
【0076】
伝送方式選択部109が出力する選択信号に応じて、TDMA伝送信号生成部110とOFDMA伝送信号生成部111とのいずれかが、ネットワークインターフェース104が出力するデータ信号を無線パケット信号に変換して送信部112−1〜112−Nに出力する。各パラメータから算出された実際の伝送速度の予想値に基づいた伝送方式の選択を伝送方式選択部109が行うことにより、複数の伝送方式のうちいずれかを用いて端末局装置200にデータを送信する際の伝送速度を向上させる伝送方式の選択を行うことができる。
【0077】
[第2の実施形態]
第2の実施形態における無線通信システムは、第1の実施形態における無線通信システム(
図1)が備える基地局装置100及び端末局装置200に代えて
図7に示す基地局装置300と
図9に示す端末局装置400を備える。すなわち、以下に説明する第2の実施形態における無線通信システムは、基地局装置300と複数の端末局装置400とを備える。
【0078】
図7は、第2の実施形態における基地局装置300の構成例を示すブロック図である。基地局装置300は、アンテナ101−1〜101−N、受信部102−1〜102−N、復調部321、ネットワークインターフェース104、オーバーヘッド算出部105、記憶部106、TDMA伝送速度算出部107、SDMA伝送速度算出部322、伝送方式選択部323、TDMA伝送信号生成部110、SDMA伝送信号生成部324、送信ウエイト算出部325、及び、ウエイト演算部326を備えている。
【0079】
基地局装置300は、復調部103に代えて復調部321を備える点と、OFDMA伝送速度算出部108に代えてSDMA伝送速度算出部322を備える点と、伝送方式選択部109に代えて伝送方式選択部323を備える点と、OFDMA伝送信号生成部111に代えてSDMA伝送信号生成部324を備える点と、送信ウエイト算出部325及びウエイト演算部326を更に備える点とが第1の実施形態における基地局装置100(
図2)と異なる。基地局装置300では、オーバーヘッド算出部105はTDMA伝送とSDMA伝送とに関する各パラメータを記憶部106に記憶させることになる。基地局装置300において、基地局装置100が備える機能部と同じ機能部に対しては同じ符号を付して説明を省略する。
【0080】
復調部321は、受信部102−1〜102−Nから入力される信号の復調を行い、取得したデータ信号をネットワークインターフェース104に出力する。復調部321は、復調により取得したデータ信号から伝搬チャネル情報を検出し、検出した伝搬チャネル情報を送信ウエイト算出部325に出力する。
【0081】
SDMA伝送速度算出部322は、SDMA伝送を用いて伝送を行った場合における制御信号等のオーバーヘッド、送信するデータ信号のデータ長、変調方式、符号化率、及び、伝送に用いるサブキャリア数を記憶部106から読み出す。SDMA伝送速度算出部322は、記憶部106から読み出した各パラメータを用いて、SDMA伝送における伝送速度R
SDMAを次式(6)で算出する。SDMA伝送速度算出部322は、算出した伝送速度R
SDMAを伝送方式選択部323に出力する。
【0083】
式(6)において、T
dataはデータ長で単位は時間である。T
oSDMAはSDMA伝送を用いた場合の制御信号等のオーバーヘッド長である。mは端末局装置400を識別する番号である(m=1,2,…,N)。N
sub,mはm番目の端末局装置400に対して割り当てるサブキャリア数である。C
mはm番目の端末局装置400を宛のデータ信号を送信する際の符号化率である。M
mはm番目の端末局装置400を宛のデータ信号を送信する際の変調多値指数である。T
sはOFDMシンボル長である。これらすべてのパラメータは、SDMA伝送を用いた場合のパラメータである。
【0084】
図8は、第2の実施形態の無線通信システムにおけるSDMA伝送のオーバーヘッド長を示す図である。
図8に示す例では、無線通信システムが2台の端末局装置400(400−1、400−2)を備える場合が示されている。オーバーヘッド長T
oSDMAは、
図8に示すように、CSとNDPAとNDPとBRとBRPとBAとBARと各フレーム間の間隔を合計した時間であり、次式(7)で算出される。
【0086】
式(7)における、TNDPAはNDP信号送信の通知信号の送信時間である。TNDPは伝搬チャネルの推定用のNDP信号の送信時間である。TBRは伝搬チャネル情報を通知するための信号の送信時間である。TBRPは伝搬チャネル情報を送信してもらうための要求信号の送信時間である。また、無線通信システムがN台の端末局装置400を備える場合には、オーバーヘッド長T
oSDMAは次式(8)で算出される。
【0088】
伝送方式選択部323は、TDMA伝送速度算出部107が算出した伝送速度R
TDMAと、SDMA伝送速度算出部322が算出した伝送速度R
SDMAとを入力する。伝送方式選択部323は、伝送速度R
TDMAと伝送速度R
SDMAとを比較し、伝送速度が高い無線伝送方式を選択する。伝送方式選択部323は、選択結果を示す選択信号をTDMA伝送信号生成部110とSDMA伝送信号生成部324とに出力する。
【0089】
SDMA伝送信号生成部324は、ネットワークインターフェース104からデータ信号を入力し、伝送方式選択部323から選択信号を入力する。SDMA伝送信号生成部324は、選択信号がSDMA伝送を示す場合、入力したデータ信号を端末局装置400ごとに送信信号に変調する。SDMA伝送信号生成部324は、変調により得られた送信信号に、当該無線パケット信号がSDMA伝送方式に対応する無線パケットであることを示す識別信号を加える。SDMA伝送信号生成部324は、識別信号を含む送信信号をウエイト演算部326に出力する。また、SDMA伝送信号生成部324は、選択信号がSDMA伝送方式を示さない場合、入力したデータ信号に対する処理を行わずに、ウエイト演算部326への送信信号の出力も行わない。
【0090】
送信ウエイト算出部325は、復調部321から入力される伝搬チャネル情報に基づいて、端末局装置400ごとに対応する送信ウエイトを算出する。送信ウエイト算出部325は、算出した端末局装置400それぞれの送信ウエイトをウエイト演算部326に出力する。送信ウエイト算出部325が送信ウエイトを算出する方法としては、線形演算又は非線形演算のいずれかが用いられる。線形演算には、例えばZF(Zero Forcing)法やMMSE(Minimum Mean Squared Error)法などがある。非線形演算には、例えばTHP(Tomlinson Harashima Precoding)法やVP(Vector Perturbation)法などがある。なお、送信ウエイト算出部325が送信ウエイトを算出する際には、前述の方法以外の方法を用いてもよい。
【0091】
ウエイト演算部326は、SDMA伝送信号生成部324から入力される送信信号に、送信ウエイト算出部325から入力される送信ウエイトを乗算して無線パケット信号を生成する。ウエイト演算部326は、無線パケット信号を生成する際、入力される送信ウエイトのうち乗算対象の送信信号の宛先となっている端末局装置400に対応する送信ウエイトを当該送信信号に乗算する。ウエイト演算部326は、生成した無線パケット信号を送信部112−1〜112−Nに出力する。
【0092】
図9は、第2の実施形態における端末局装置400の構成例を示すブロック図である。
端末局装置400は、アンテナ201、受信部202、復調部404、ネットワークインターフェース205、伝搬チャネル情報取得部408、変調部406、及び、送信部207を備えている。
【0093】
端末局装置400は、伝送方式判定部203を備えていない点と、伝搬チャネル情報取得部408を備えている点と、復調部204に代えて復調部404を備えている点と、変調部206に代えて変調部406を備えている点とが第1の実施形態の端末局装置200と異なる。端末局装置400において、端末局装置200が備える機能部と同じ機能部に対しては同じ符号を付して説明を省略する。
【0094】
復調部404は、受信部202から入力する信号からデータ信号などを復調する。復調部404は、復調したデータ信号をネットワークインターフェース205に出力する。また、復調部404は、入力する信号に含まれるNDP(ヌルデータパケット)を伝搬チャネル情報取得部408に出力する。
【0095】
伝搬チャネル情報取得部408は、復調部404から入力されるNDPに基づいて、自装置と基地局装置300との間の伝搬チャネルにおける伝搬チャネル情報を推定する。伝搬チャネル情報取得部408は、推定した伝搬チャネル情報を記憶するとともに、推定した伝搬チャネル情報を変調部406に出力する。
【0096】
変調部406は、ネットワークインターフェース104から入力されるデータ信号と、伝搬チャネル情報取得部408から入力される伝搬チャネル情報とを無線パケット信号に変調する。変調部406は、変調により得られた無線パケット信号を送信部207に出力する。
【0097】
図10は、第2の実施形態における基地局装置300が行う伝送方式選択処理を示すフローチャートである。基地局装置300において、伝送方式選択処理が開始されると、TDMA伝送速度算出部107が、TDMA伝送における伝送速度R
TDMAを算出する際に用いる各パラメータを記憶部106から読み出して取得する(ステップS201)。
【0098】
TDMA伝送速度算出部107は、読み出した各パラメータに基づいてTDMA伝送における伝送速度R
TDMAを算出し、算出した伝送速度R
TDMAを伝送方式選択部323に出力する(ステップS202)。
【0099】
SDMA伝送速度算出部322は、SDMA伝送における伝送速度R
SDMAを算出する際に用いる各パラメータを記憶部106から読み出して取得する(ステップS203)。
【0100】
SDMA伝送速度算出部322は、読み出した各パラメータに基づいてSDMA伝送における伝送速度R
SDMAを算出し、算出した伝送速度R
SDMAを伝送方式選択部323に出力する(ステップS204)。
【0101】
伝送方式選択部323は、TDMA伝送速度算出部107が算出した伝送速度R
TDMAと、SDMA伝送速度算出部322が算出した伝送速度R
SDMAとを比較する(ステップS205)。
【0102】
伝送速度R
TDMAの値が伝送速度R
SDMAの値以上の場合(ステップS205:YES)、伝送方式選択部323は、基地局装置300が端末局装置400への伝送にTDMA伝送を用いることを選択し(ステップS206)、処理をステップS208に進める。
【0103】
伝送速度R
TDMAの値が伝送速度R
SDMAの値未満の場合(ステップS205:NO)、伝送方式選択部323は、基地局装置300が端末局装置400への伝送にSDMA伝送を用いることを選択し(ステップS207)、処理をステップS208に進める。
【0104】
伝送方式選択部323は、基地局装置300が端末局装置400への伝送に用いる伝送方式(TDMA伝送又はSDMA伝送のいずれか)を示す選択信号を生成し、生成した選択信号をTDMA伝送信号生成部110とSDMA伝送信号生成部324とに出力し(ステップS208)、伝送方式選択処理を終了させる。
【0105】
上述のように、伝送方式選択部323が出力する選択信号に応じて、TDMA伝送信号生成部110とSDMA伝送信号生成部324とのいずれかが、ネットワークインターフェース104が出力するデータ信号を無線パケット信号に変換して送信部112−1〜112−Nに出力する。各パラメータから算出された実際の伝送速度の予想値に基づいた伝送方式の選択を伝送方式選択部323が行うことにより、複数の伝送方式のうちいずれかを用いて端末局装置400にデータを送信する際の伝送速度を向上させる伝送方式の選択を行うことができる。
【0106】
なお、
図10では、TDMA伝送速度算出部107が伝送速度を算出した後に、SDMA伝送速度算出部322が伝送速度を算出する手順を示したが、TDMA伝送速度算出部107とSDMA伝送信号生成部324とが並行して伝送速度を算出するようにしてもよい。
【0107】
[第3の実施形態]
第3の実施形態における無線通信システムは、第1の実施形態における無線通信システム(
図1)が備える基地局装置100及び端末局装置200に代えて
図11に示す基地局装置500及び
図12に示す端末局装置600を備える。すなわち、以下に説明する第3の実施形態における無線通信システムは、基地局装置500と複数の端末局装置600とを備える。
【0108】
図11は、第3の実施形態における基地局装置500の構成例を示すブロック図である。基地局装置500は、アンテナ101−1〜101−N、受信部102−1〜102−N、復調部321、ネットワークインターフェース104、オーバーヘッド算出部105、記憶部106、TDMA伝送速度算出部107、OFDMA伝送速度算出部108、SDMA伝送速度算出部322、伝送方式選択部531、TDMA伝送信号生成部110、OFDMA伝送信号生成部111、SDMA伝送信号生成部324、送信ウエイト算出部325、ウエイト演算部326、及び、送信部112−1〜112−Nを備えている。
【0109】
基地局装置500は、第1の実施形態の基地局装置100(
図1)と以下の点が異なる。基地局装置500は、復調部103に代えて復調部321を備える点、伝送方式選択部109に代えて伝送方式選択部531を備える点、及び、SDMA伝送速度算出部322とSDMA伝送信号生成部324と送信ウエイト算出部325とウエイト演算部326とを更に備えている点が基地局装置100と異なる。基地局装置500では、オーバーヘッド算出部105はTDMA伝送とOFDMA伝送とSDMA伝送とに関する各パラメータを記憶部106に記憶させることになる。基地局装置500において、第1の実施形態の基地局装置100又は第2の実施形態の基地局装置300(
図7)が備える機能部と同じ機能部に対しては同じ符号を付して説明を省略する。
【0110】
伝送方式選択部531は、TDMA伝送速度算出部107が算出した伝送速度R
TDMAと、OFDMA伝送速度算出部108が算出した伝送速度R
OFDMAと、SDMA伝送速度算出部322が算出した伝送速度R
SDMAとを入力する。伝送方式選択部531は、伝送速度R
TDMAと伝送速度R
OFDMAと伝送速度R
SDMAとを比較し、伝送速度が高い無線伝送方式を選択する。伝送方式選択部531は、選択結果を示す選択信号をTDMA伝送信号生成部110とOFDMA伝送信号生成部111とSDMA伝送信号生成部324とに出力する。
【0111】
図12は、第3の実施形態における端末局装置600の構成例を示すブロック図である。端末局装置600は、アンテナ201、受信部202、伝送方式判定部203、復調部604、ネットワークインターフェース205、伝搬チャネル情報取得部408、変調部406、及び、送信部207を備えている。
【0112】
端末局装置600は、復調部404に代えて復調部604を備えている点と、伝送方式判定部203を更に備えている点とが第2の実施形態の端末局装置400と異なる。端末局装置600において、第1の実施形態の端末局装置200(
図5)又は第2の実施形態の端末局装置400(
図9)が備える機能部と同じ機能部に対しては同じ符号を付して説明を省略する。
【0113】
復調部604は、伝送方式判定部203から識別信号を入力する。復調部604は、識別信号が示す伝送方式に基づいて復調の処理を切り替える。復調部604は、識別信号が示す伝送方式に応じた復調を、受信部202から入力する信号に対して行う。復調部604は、復調により得られたデータ信号をネットワークインターフェース205に出力する。また、復調部604は、入力信号に含まれるNDP(ヌルパケットデータ)を伝搬チャネル情報取得部408に出力する。
【0114】
図13は、第3の実施形態における基地局装置500が行う伝送方式選択処理を示すフローチャートである。基地局装置500において、伝送方式選択処理が開始されると、TDMA伝送速度算出部107が、TDMA伝送における伝送速度R
TDMAを算出する際に用いる各パラメータを記憶部106から読み出して取得する(ステップS301)。
【0115】
TDMA伝送速度算出部107は、読み出した各パラメータに基づいてTDMA伝送における伝送速度R
TDMAを算出し、算出した伝送速度R
TDMAを伝送方式選択部531に出力する(ステップS302)。
【0116】
OFDMA伝送速度算出部108は、OFDMA伝送における伝送速度R
OFDMAを算出する際に用いる各パラメータを記憶部106から読み出して取得する(ステップS303)。
【0117】
OFDMA伝送速度算出部108は、読み出した各パラメータに基づいてOFDMA伝送における伝送速度R
OFDMAを算出し、算出した伝送速度R
OFDMAを伝送方式選択部531に出力する(ステップS304)。
【0118】
SDMA伝送速度算出部322は、SDMA伝送における伝送速度R
SDMAを算出する際に用いる各パラメータを記憶部106から読み出して取得する(ステップS305)。
【0119】
SDMA伝送速度算出部322は、読み出した各パラメータに基づいてSDMA伝送における伝送速度R
SDMAを算出し、算出した伝送速度R
SDMAを伝送方式選択部531に出力する(ステップS306)。
【0120】
伝送方式選択部531は、TDMA伝送速度算出部107が算出した伝送速度R
TDMAと、OFDMA伝送速度算出部108が算出した伝送速度R
OFDMAとを比較する(ステップS307)。
【0121】
伝送速度R
TDMAの値が伝送速度R
OFDMAの値以上の場合(ステップS307:YES)、伝送方式選択部531は、基地局装置500が端末局装置600への伝送にTDMA伝送を用いることを選択し(ステップS308)、処理をステップS312に進める。
【0122】
伝送速度R
TDMAの値が伝送速度R
OFDMAの値未満の場合(ステップS307:NO)、伝送方式選択部531は、OFDMA伝送速度算出部108が算出した伝送速度R
OFDMAと、SDMA伝送速度算出部322が算出した伝送速度R
SDMAとを比較する(ステップS309)。
【0123】
伝送速度R
OFDMAの値が伝送速度R
SDMAの値以上である場合(ステップS309:YES)、伝送方式選択部531は、基地局装置500が端末局装置600への伝送にOFDMA伝送を用いることを選択し(ステップS310)、処理をステップS312に進める。
【0124】
伝送速度R
OFDMAの値が伝送速度R
SDMAの値未満である場合(ステップS309:NO)、伝送方式選択部531は、基地局装置500が端末局装置600への伝送にSDMA伝送を用いることを選択し(ステップS311)、処理をステップS312に進める。
【0125】
伝送方式選択部531は、基地局装置500が端末局装置600への伝送に用いる伝送方式(TDMA伝送、OFDMA伝送又はSDMA伝送のいずれか)を示す選択信号を生成する。伝送方式選択部531は、生成した選択信号をTDMA伝送信号生成部110とOFDMA伝送信号生成部111とSDMA伝送信号生成部324とに出力し(ステップS312)、伝送方式選択処理を終了させる。
【0126】
上述のように、伝送方式選択部531が出力する選択信号に応じて、TDMA伝送信号生成部110とOFDMA伝送信号生成部111とSDMA伝送信号生成部324とのいずれかが、ネットワークインターフェース104が出力するデータ信号を無線パケット信号に変換して送信部112−1〜112−Nに出力する。各パラメータから算出された実際の伝送速度の予想値に基づいた伝送方式の選択を伝送方式選択部531が行うことにより、複数の伝送方式のうちいずれかを用いて端末局装置600にデータを送信する際の伝送速度を向上させる伝送方式の選択を行うことができる。
【0127】
なお、
図13では、伝送速度R
TDMA、伝送速度R
OFDMA、伝送速度R
SDMAの順に算出する手順を示したが、各伝送速度を並列して算出するようにしてもよい。
【0128】
[第4の実施形態]
第4の実施形態における無線通信システムは、第1の実施形態における無線通信システム(
図1)が備える基地局装置100及び端末局装置200に代えて、
図14に示す基地局装置700及び
図9に示した端末局装置400を備える。すなわち、以下に説明する第4の実施形態における無線通信システムは、基地局装置700と複数の端末局装置400とを備える。
【0129】
図14は、第4の実施形態における基地局装置700の構成例を示すブロック図である。基地局装置700は、アンテナ101−1〜101−N、受信部102−1〜102−N、復調部321、ネットワークインターフェース104、オーバーヘッド算出部105、記憶部106、TDMA伝送速度算出部107、SDMA伝送速度算出部743、伝送方式選択部323、TDMA伝送信号生成部110、SDMA伝送信号生成部324、送信ウエイト算出部325、ウエイト演算部326、伝搬チャネル記憶部741、伝搬チャネル相関算出部742、及び、送信部112−1〜112−Nを備えている。
【0130】
基地局装置700は、第2の実施形態の基地局装置300(
図7)と以下の点が異なる。基地局装置700は、SDMA伝送速度算出部322に代えてSDMA伝送速度算出部743を備える点と、伝搬チャネル記憶部741及び伝搬チャネル相関算出部742を更に備える点とが基地局装置300と異なる。また、復調部321が出力する伝搬チャネル情報は、伝搬チャネル記憶部741及び伝搬チャネル相関算出部742にも入力される。基地局装置700において、第1の実施形態の基地局装置100(
図2)、第2の実施形態の基地局装置300又は第3の実施形態の基地局装置500(
図11)が備える機能部と同じ機能部に対しては同じ符号を付して説明を省略する。
【0131】
伝搬チャネル記憶部741は、復調部321が出力する伝搬チャネル情報を記憶する。伝搬チャネル記憶部741において、伝搬チャネル情報は、無線通信システムに含まれる端末局装置400及びサブキャリアの組み合わせそれぞれに対応付けられて記憶される。
【0132】
伝搬チャネル相関算出部742は、復調部321から入力される伝搬チャネル情報と、伝搬チャネル記憶部741に記憶されている伝搬チャネル情報とに基づいて、サブキャリア間における相関を次式(9)で端末局装置400ごとに算出する。
【0134】
式(9)における、Sは相関値である。Aは伝搬チャネル情報H
d,kにおける行数である。Bは伝搬チャネル情報H
d,kにおける列数である。h
d,k,a,bは伝搬チャネル情報H
d,kにおけるa行b列の要素である。伝搬チャネル情報H
d,kは、基地局装置700とd番目の端末局装置400との間におけるサブキャリア番号kの伝送チャネル情報である。また、「^(ハット)」が上に付されているh
d,k,a,b(以下、^h
d,k,a,bと記載する。)は、伝搬チャネル情報^H
d,kにおけるa行b列の要素である。伝搬チャネル情報^H
d,kは、伝搬チャネル記憶部741に記憶されている伝搬チャネル情報である。伝搬チャネル情報H
d,kは、復調部321から入力される伝搬チャネル情報である。
【0135】
伝搬チャネル相関算出部742は、算出した相関値SをSDMA伝送速度算出部743に出力する。なお、伝搬チャネル相関算出部742は、式(9)に示したように、伝搬チャネル記憶部741に記憶されている伝搬チャネル情報を用いずに、復調部321から入力される伝搬チャネル情報を用いて相関値Sを算出してもよい。
【0136】
SDMA伝送速度算出部743は、SDMA伝送を用いて伝送を行った場合における制御信号等のオーバーヘッド、送信するデータ信号のデータ長、変調方式、符号化率、及び、伝送に用いるサブキャリア数を記憶部106から読み出す。SDMA伝送速度算出部743は、記憶部106から読み出した各パラメータと、伝搬チャネル相関算出部742において算出された相関値とに基づいて、SDMA伝送における伝送速度R
SDMAを次式(10)で算出する。
【0138】
式(10)における、αは0から1までの間の値であり、相関値Sに対応して定められる値である。相関値Sが高いほど係数αの値を小さくし、相関値Sが低いほど係数αの値を大きくするように、相関値Sに応じてαの値が定められる。すなわち、SDMA伝送速度算出部743は、伝搬チャネル相関算出部742が算出する相関値S、すなわち基地局装置700と端末局装置400との間の伝搬チャネル情報の状態を反映した伝送速度R
SDMAを算出する。
【0139】
第4の実施形態における基地局装置700が行う伝送方式選択処理は、第2の実施形態における基地局装置300が行う伝送方式選択処理(
図10)と同様であるので、説明を省略する。基地局装置700では、前述のように、基地局装置700と端末局装置400との間の伝搬チャネル情報の状態を反映した伝送速度R
SDMAを算出することができ、パラメータ等に基づいて複数の伝送方式から伝送速度を向上させる伝送方式を選択する精度を向上させることができる。
【0140】
[第5の実施形態]
第5の実施形態における無線通信システムは、第1の実施形態における無線通信システム(
図1)が備える基地局装置100及び端末局装置200に代えて
図15に示す基地局装置800及び
図12に示した端末局装置600を備える。すなわち、以下に説明する第5の実施形態における無線通信システムは、基地局装置800と複数の端末局装置600とを備える。
【0141】
図15は、第5の実施形態における基地局装置800の構成例を示すブロック図である。基地局装置800は、アンテナ101−1〜101−N、受信部102−1〜102−N、復調部321、ネットワークインターフェース104、オーバーヘッド算出部105、記憶部106、TDMA伝送速度算出部107、OFDMA伝送速度算出部108、SDMA伝送速度算出部743、伝送方式選択部531、TDMA伝送信号生成部110、OFDMA伝送信号生成部111、SDMA伝送信号生成部324、送信ウエイト算出部325、ウエイト演算部326、伝搬チャネル記憶部741、伝搬チャネル相関算出部742、及び、送信部112−1〜112−Nを備えている。
【0142】
基地局装置800は、第4の実施形態の基地局装置700(
図14)と以下の点が異なる。基地局装置800は、伝送方式選択部323に代えて伝送方式選択部531を備える点と、OFDMA伝送速度算出部108及びOFDMA伝送信号生成部111を更に備える点とが基地局装置700と異なる。基地局装置800において、第1の実施形態の基地局装置100(
図2)、第2の実施形態の基地局装置300(
図7)、第3の実施形態の基地局装置500(
図11)又は第4の実施形態の基地局装置700が備える機能部と同じ機能部に対しては同じ符号を付して説明を省略する。
【0143】
第5の実施形態における基地局装置800は、第4の実施形態の基地局装置700と同様に、相関値Sに応じた伝送速度R
SDMAを算出し、伝送方式選択部531が伝送速度R
TDMA、伝送速度R
OFDMA及び伝送速度R
SDMAを比較することを特徴としている。基地局装置800が行う伝送方式選択処理は、第3の実施形態における基地局装置500が行う伝送方式選択処理(
図13)と同様であるので、説明を省略する。
【0144】
基地局装置800では、基地局装置800と端末局装置600との間の伝搬チャネル情報の状態を反映した伝送速度R
SDMAを算出することができ、パラメータ等に基づいて複数の伝送方式から伝送速度を向上させる伝送方式を選択する精度を向上させることができる。
【0145】
以上のように、各実施形態の無線通信システムでは、複数の伝送方式を用いて端末局装置にデータ信号を送信することができる基地局装置が、制御信号等のオーバーヘッド、データ長、変調方式、符号化率、及び、伝送帯域の情報に基づいて、複数の伝送方式のうち伝送速度が最大となる伝送方式を選択することにより、高速かつ高効率な無線通信を実現することができる。
【0146】
また、第4及び第5の実施形態の無線通信システムでは、制御信号等のオーバーヘッド、データ長、変調方式、符号化率、及び、伝送帯域の情報と、基地局装置と端末局装置との間の伝搬チャネル情報の相関値とに基づいて、複数の伝送方式のうち伝送速度が最大となる伝送方式を選択する。伝搬チャネル情報の状態を反映した選択を行うことができ、実際の伝送速度を最大にする伝送方式を選択する精度を向上させることができる。
【0147】
なお、上述した各実施形態では、複数の伝送方式それぞれに応じた伝送速度を算出する処理と、複数の伝送方式からいずれか一つを選択して選択信号を生成する処理とを基地局装置において行う構成を示した。しかし、伝送速度の算出と伝送方式の選択とを行う伝送方式選択装置を基地局装置とは別に無線通信システムに設け、基地局装置と伝送方式選択装置とを通信可能に接続して基地局装置において用いる伝送方式を決定するようにしてもよい。
【0148】
上述した実施形態における基地局装置、端末局装置をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、更に前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
【0149】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。