(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ウェーハ搬送系統から前記反応炉への雰囲気ガスの混入を、製品となるエピタキシャルウェーハの製造時と同じにして、前記反応炉にてウェーハ上にエピタキシャル層を気相成長させてサンプルウェーハを製造する第2のサンプル製造工程と、
その第2のサンプル製造工程で製造されたサンプルウェーハである第2ウェーハの金属不純物による汚染度を取得する第2の取得工程とを備え、
前記評価工程では、前記第2ウェーハの汚染度と前記第1ウェーハの汚染度との比較に基づき、前記エピタキシャル成長装置の前記ウェーハ搬送系統に起因した金属不純物による汚染度を評価することを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャル成長装置の汚染評価方法。
前記評価工程では、前記第2ウェーハの汚染度からの前記第1ウェーハの汚染度の増加の度合いを、前記エピタキシャル成長装置の前記ウェーハ搬送系統に起因した金属不純物による汚染度として評価することを特徴とする請求項2に記載のエピタキシャル成長装置の汚染評価方法。
前記ウェーハ搬送系統は、搬送されるウェーハが投入されて不活性ガスにより雰囲気ガスの置換が行われる搬送チャンバと、その搬送チャンバと前記反応炉との間に設けられて前記反応炉を前記搬送チャンバから隔離するための開閉可能な隔離弁とを備え、前記隔離弁を閉じた状態で前記搬送チャンバの雰囲気ガスの置換を行った後に、前記隔離弁を開けて前記搬送チャンバから前記反応炉へのウェーハの搬送又は前記反応炉から前記搬送チャンバへのウェーハの搬送が行われ、
前記混入促進工程では、前記搬送チャンバにおける不活性ガスの流量を、製品となるエピタキシャルウェーハの製造時よりも増加させることを特徴とする請求項4に記載のエピタキシャル成長装置の汚染評価方法。
前記第1の取得工程では、前記第1ウェーハに対してICP−MSによる金属定量分析を行い、その金属定量分析の結果を前記第1ウェーハの金属不純物の汚染度として取得し、
前記第2の取得工程では、前記第2ウェーハに対してICP−MSによる金属定量分析を行い、その金属定量分析の結果を前記第2ウェーハの金属不純物の汚染度として取得することを特徴とする請求項2又は3に記載のエピタキシャル成長装置の汚染評価方法。
請求項1〜6のいずれか1項に記載のエピタキシャル成長装置の汚染評価方法により評価した汚染度が基準値を下まわるエピタキシャル成長装置を用いてエピタキシャルウェーハを製造することを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、CCDやCISなどの撮像素子用基板として、シリコンウェーハ上にシリコン膜をエピタキシャル成長(気相成長)させたシリコンエピタキシャルウェーハが使用されるようになってきている。このような撮像素子用のエピタキシャルウェーハでは、ウェーハ中の金属不純物のレベルを低くすることが重要である。ウェーハ内に金属不純物が存在すると白キズ(白点)と呼ばれる不良が発生してしまうからである。
【0003】
一般に、エピタキシャルウェーハを製造するためには、高温でエピタキシャル層を気相成長させる。そのため、エピタキシャル層を成膜する時、気相成長装置の反応炉内に金属不純物が存在すると、製造されたエピタキシャルウェーハが金属不純物による汚染を受けてしまう。これらの金属の汚染源としては、例えば、原料として用いるシリコン結晶やシリコン含有化合物の他に、エピタキシャル成長装置のメンテナンス(洗浄)時に付着した金属不純物、反応炉を構成する素材に含まれる金属不純物、装置及び配管系に通常用いられるステンレス成分等が考えられる。
【0004】
また、エピタキシャル成長装置は定期的にメンテナンスする必要があり、そのメンテナンスでは、例えばエピタキシャル成長装置を大気開放して反応炉や配管の洗浄等が行われる。また、エピタキシャルウェーハの製造を繰り返すと、次第に反応炉内にシリコン堆積物が堆積し、この堆積物がパーティクル等の発生原因となってしまう。そのため、定期的に反応炉内に堆積したシリコン堆積物を除去(炉内クリーニング)する必要がある。そのシリコン堆積物の除去方法として、反応炉内にHClガスを流して、そのHClガスで反応炉内をベーパーエッチングする方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、エピタキシャル成長装置の汚染度の評価に関連して、特許文献2では、被処理基板(ウェーハ)を処理する減圧処理室内の部材の清浄度を評価する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、エピタキシャル成長装置のメンテナンスやベーパーエッチングの直後では、エピタキシャル成長装置の汚染度が一時的に悪化する。また、反応炉への微量な酸素混入によってもエピタキシャルウェーハの金属不純物汚染が悪化することが分かっている。エピタキシャル成長装置のメンテナンスでは、エピタキシャル成長が行われる反応炉だけでなく、その反応炉に付随するウェーハ搬送系統(搬送チャンバ)の大気開放を伴う作業を行う場合がある。この場合、ウェーハ搬送系統内への大気(特に酸素)の残留の可能性があり、エピタキシャルウェーハの金属不純物汚染が懸念される。
【0008】
大気混入に対する対策として、エピタキシャル成長装置内に酸素濃度を計測する酸素濃度計による管理も可能だが、微量な酸素濃度検出のための計器導入や対象装置が多数存在する場合、そのコストは高くなり、展開は困難である。また、酸素濃度に対してのみの管理となり、その他に汚染源が存在する場合、検知することはできない。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、エピタキシャル成長装置全体の汚染度を高感度かつ簡便に検出できる方法及び汚染の少ない高品位なエピタキシャルウェーハを製造できる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、反応炉内でのエピタキシャルウェーハの金属汚染は、反応炉の金属製構成材が塩化水素(HCl)等のプロセスガスとウェーハ搬送系統からの大気または別の汚染源の混入によって腐食され引き起こされていると考えた。そこで、ウェーハ搬送系統に大気または別の汚染源が残留する場合、ウェーハ搬送系統から反応炉への雰囲気ガスの混入量を意図的に増加させることで、エピタキシャルウェーハの金属不純物濃度が増幅されることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明のエピタキシャル成長装置の汚染評価方法は、ウェーハ搬送系統から反応炉への雰囲気ガスの混入を、製品となるエピタキシャルウェーハの製造時よりも促進させる混入促進工程と、
その混入促進工程により前記雰囲気ガスの混入が促進された前記反応炉にてウェーハ上にエピタキシャル層を気相成長させてサンプルウェーハを製造する第1のサンプル製造工程と、
その第1のサンプル製造工程で製造されたサンプルウェーハである第1ウェーハの金属不純物による汚染度を取得する第1の取得工程と、
その第1の取得工程で取得した汚染度に基づき、前記ウェーハ搬送系統及び前記反応炉を備えたエピタキシャル成長装置の金属不純物による汚染度を評価する評価工程と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、ウェーハ搬送系統から反応炉への汚染源混入(雰囲気ガスの混入)を促進した状態でサンプルウェーハを製造するので、製品製造時よりウェーハ搬送系統内の残留汚染源の影響を受けたサンプルウェーハを得ることができる。その結果、ウェーハ搬送系統内の残留汚染源が多い場合は、製品製造時と同じ条件でエピタキシャル層を成長させてサンプルウェーハを製造する方法に比べて、エピタキシャル層に取り込まれる金属汚染量を増幅させることができる。そして、評価工程では、このサンプルウェーハ(第1ウェーハ)の金属不純物の汚染度に基づいて、エピタキシャル成長装置の金属不純物による汚染度を評価するので、ウェーハ搬送系統から反応炉への汚染源の混入を考慮した、エピタキシャル成長装置全体の汚染度を高感度かつ簡便に検出できる。
【0013】
また本発明は、前記ウェーハ搬送系統から前記反応炉への雰囲気ガスの混入を、製品となるエピタキシャルウェーハの製造時と同じにして、前記反応炉にてウェーハ上にエピタキシャル層を気相成長させてサンプルウェーハを製造する第2のサンプル製造工程と、
その第2のサンプル製造工程で製造されたサンプルウェーハである第2ウェーハの金属不純物による汚染度を取得する第2の取得工程とを備え、
前記評価工程では、前記第2ウェーハの汚染度と前記第1ウェーハの汚染度との比較に基づき、前記エピタキシャル成長装置の前記ウェーハ搬送系統に起因した金属不純物による汚染度を評価する。
【0014】
このように、製品製造時と同じ条件で製造されたサンプルウェーハ(第2ウェーハ)と、製品製造時よりもウェーハ搬送系統からの雰囲気ガスの混入を促進した状態で製造されたサンプルウェーハ(第1ウェーハ)とを比較することで、エピタキシャル成長装置のウェーハ搬送系統に起因した汚染度を高感度かつ簡便に検出できる。
【0015】
また、本発明における評価工程では、前記第2ウェーハの汚染度からの前記第1ウェーハの汚染度の増加の度合いを、前記エピタキシャル成長装置の前記ウェーハ搬送系統に起因した金属不純物による汚染度として評価することができる。これによって、エピタキシャル成長装置のウェーハ搬送系統に起因した金属不純物による汚染度を簡便に得ることができる。
【0016】
また、本発明において、前記ウェーハ搬送系統内の圧力は、前記反応炉内の圧力よりも大きくなるように調整され、前記混入促進工程では、前記ウェーハ搬送系統内と前記反応炉内との圧力差を、製品となるエピタキシャルウェーハの製造時よりも大きくする。このように、ウェーハ搬送系統内と反応炉との圧力差を製品製造時よりも大きくすることで、ウェーハ搬送系統から反応炉への雰囲気ガスの混入を簡便に促進させることができる。
【0017】
また、本発明におけるウェーハ搬送系統は、搬送されるウェーハが投入されて不活性ガスにより雰囲気ガスの置換が行われる搬送チャンバと、その搬送チャンバと前記反応炉との間に設けられて前記反応炉を前記搬送チャンバから隔離するための開閉可能な隔離弁とを備え、前記隔離弁を閉じた状態で前記搬送チャンバの雰囲気ガスの置換を行った後に、前記隔離弁を開けて前記搬送チャンバから前記反応炉へのウェーハの搬送又は前記反応炉から前記搬送チャンバへのウェーハの搬送が行われ、
前記混入促進工程では、前記搬送チャンバにおける不活性ガスの流量を、製品となるエピタキシャルウェーハの製造時よりも増加させる。
【0018】
このように、搬送チャンバにおける不活性ガスの流量を製品製造時よりも増加させることで、ウェーハ搬送系統内と反応炉内との圧力差を簡便に大きくすることができ、結果、ウェーハ搬送系統から反応炉への雰囲気ガスの混入を簡便に促進させることができる。
【0019】
また、本発明において、前記第1の取得工程では、前記第1ウェーハに対してICP−MSによる金属定量分析を行い、その金属定量分析の結果を前記第1ウェーハの金属不純物の汚染度として取得し、前記第2の取得工程では、前記第2ウェーハに対してICP−MSによる金属定量分析を行い、その金属定量分析の結果を前記第2ウェーハの金属不純物の汚染度として取得する。これによって、簡便かつ高感度にサンプルウェーハ(第1ウェーハ、第2ウェーハ)の汚染度(エピタキシャル成長装置の汚染度)に相関する値を得ることができる。
【0020】
本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、本発明のエピタキシャル成長装置の汚染評価方法により評価した汚染度が基準値を下まわるエピタキシャル成長装置を用いてエピタキシャルウェーハを製造することを特徴とする。これにより、汚染の少ない高品位なエピタキシャルウェーハを歩留まり良く製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明のエピタキシャル成長装置の汚染度を評価する方法の詳細を説明する。汚染度の評価対象となるエピタキシャル成長装置(気相成長装置)の好適な一例である一般的な枚葉式のエピタキシャル成長装置全体の側面断面概略図を
図1に示す。
図1のエピタキシャル成長装置1は、シリコンウェーハの表面上にシリコン単結晶膜を気相成長(エピタキシャル成長)させる装置(シリコンエピタキシャルウェーハを製造する装置)である。エピタキシャル成長装置1では、例えばCCDやCISなどの撮像素子用基板に使用されるエピタキシャルウェーハが製造される。
【0023】
エピタキシャル成長装置1は、エピタキシャル成長を行うための反応炉3(以下、エピ反応炉という)を備える。そのエピ反応炉3は、SUSや石英部材などから構成されている。エピ反応炉3の内部には、投入されたシリコンウェーハを載置するためのサセプタ31が配置されている。また、エピ反応炉3の周囲には、エピタキシャル成長時にシリコンウェーハを所定の反応温度に加熱するヒータ4が配置されている。
【0024】
また、エピ反応炉3には、エピタキシャル成長時にシリコン単結晶薄膜の原料となる反応ガス(具体的にはトリクロロシラン(TCS)等のシラン系ガス)、反応ガスを希釈するためのキャリアガス(例えば水素)、及び薄膜に導電型を付与するドーパントガス(例えばボロンやリンを含むガス)を含む気相成長用ガスをエピ反応炉3内に導入するガス導入管32が接続されている。なお、エピ反応炉3の洗浄時には、ガス導入管32からは、気相成長用ガスの代わりに、塩化水素ガス(HClガス)が導入されて、その塩化水素ガスによりエピ反応炉3内の洗浄(ベーパーエッチング)が行われる。また、エピ反応炉3には、エピ反応炉3内からガス(エピタキシャル反応後のガス)を排出するガス排出管33が接続されている。
【0025】
エピタキシャル成長装置1は、シリコンウェーハをエピ反応炉3に搬入(搬送)するためのウェーハ搬送系統2を備えている。また、エピタキシャル成長装置1は、エピ反応炉3から、エピタキシャル成長後のウェーハ(シリコンエピタキシャルウェーハ)を搬出(搬送)するためのウェーハ搬送系統も備えている。その搬出用のウェーハ搬送系統は、搬入用のウェーハ搬送系統2と兼用しても良いし、ウェーハ搬送系統2とは別に設けられたとしても良い。
【0026】
ウェーハ搬送系統2は、エピ反応炉3の前段に設けられている。そのウェーハ搬送系統2は、第1の搬送チャンバ21(搬入チャンバ)と、その第1の搬送チャンバ21とエピ反応炉3の間に設けられる第2の搬送チャンバ22とを備える。それら搬送チャンバ21、22は、エピ反応炉3に投入する前のシリコンウェーハを一時的に待機させるチャンバである。
【0027】
各搬送チャンバ21、22の出入り口には、それぞれ、各搬送チャンバ21、22の内部を外部から隔離するための開閉可能な隔離弁23〜25が設けられている。すなわち、第1の搬送チャンバ21の入口には第1の隔離弁23が設けられる。第1の搬送チャンバ21の出口(第2の搬送チャンバ22の入口でもある)には第2の隔離弁24が設けられている。また、第2の搬送チャンバ22の出口(エピ反応炉3の入口でもある)には第3の隔離弁25が設けられている。
【0028】
また、第1の搬送チャンバ21には、第1の搬送チャンバ21内に窒素等の不活性ガスを導入するガス導入管26及び第1の搬送チャンバ21からガスを排出するガス排出管27が接続されている。同様に、第2の搬送チャンバ22には、第2の搬送チャンバ22内に窒素等の不活性ガスを導入するガス導入管28及び第2の搬送チャンバ22からガスを排出するガス排出管29が接続されている。
【0029】
エピタキシャル成長装置1を用いてエピタキシャルウェーハを製造する手順を説明すると、シリコンウェーハはまず第1の搬送チャンバ1に大気−搬入チャンバ間の第1の隔離弁23より搬入される。その後、第1の隔離弁23が閉められたのち、第1の搬送チャンバ21内はエピ反応炉3内への大気混入を防ぐため、不活性ガス、ここでは窒素によって雰囲気置換が行われる。この雰囲気置換は、ガス導入管26による所定流量の窒素の導入と、ガス排出管27による大気を含んだガスの排出とによって行われる。
【0030】
一定時間の置換が完了すると、第2の隔離弁24が開けられ、シリコンウェーハは第2の搬送チャンバ22に搬送される。第2の搬送チャンバ22は、ガス導入管28によるガス導入と、ガス排出管29によるガス排出とにより、常時、窒素ガスで置換されている。また、メンテナンス以外で第2の搬送チャンバ22内部と大気とが直接に接することは無い。
【0031】
また、搬送チャンバ21、22の圧力はエピ反応炉3からの反応性ガス逆流を防ぐためにエピ反応炉3の圧力よりも高くなるように設定されている。そのため、シリコンウェーハをエピ反応炉3に搬送する場合には、搬送チャンバ21、22中の雰囲気ガスはエピ反応炉3に流れ込むようにされている。
【0032】
シリコンウェーハを第2の搬送チャンバ22に搬送した後、第2の隔離弁24が閉まると、第3の隔離弁25が開き、シリコンウェーハはエピ反応炉3に搬送される。そして、そのエピ反応炉3にてエピタキシャル反応処理が行われる。エピ反応炉3についても、メンテナンス以外でエピ反応炉3内部と大気とが直接に接することは無い。
【0033】
エピタキシャル反応処理においては、エピ反応炉3に搬送されたシリコンウェーハはサセプタ31に載置される。この際、エピ反応炉3には、シリコンウェーハを投入する前段階から、ガス導入管32を介して水素を導入しておく。次に、サセプタ31上のシリコンウェーハをヒータ4により熱処理温度(例えば1050〜1200℃)まで加熱する。次に、シリコンウェーハの表面に形成されている自然酸化膜を除去する為の気相エッチングを行う。なお、この気相エッチングは、具体的には、次工程である気相成長の直前まで行われる。次に、シリコンウェーハを所望の反応温度(例えば1050〜1180℃)に合わせ、ガス導入管32からは気相成長用ガスを導入することによって、シリコンウェーハの表面上にシリコン単結晶薄膜を気相成長させシリコンエピタキシャルウェーハとする。最後に、エピ反応炉3を取り出し温度まで降温した後、シリコンエピタキシャルウェーハをエピ反応炉3外に搬出する。エピ反応炉3からシリコンエピタキシャルウェーハを搬出する際に、エピ反応炉3内に大気が混入するのを防止するために、搬出用のウェーハ搬送系統内は窒素等の不活性ガスにより置換がされている。
【0034】
シリコンウェーハの搬入時と大気開放を伴うメンテナンス時は外部から大気または別の汚染源を各チャンバ21、22内に持ち込む可能性があり、それがエピ反応炉3に持ち込まれるとエピタキシャルウェーハに金属不純物汚染が発生する恐れがある。撮像素子などのデバイスは、エピタキシャル層中の金属不純物に非常に強い影響を受けるので、ウェーハ搬送系統2(搬送チャンバ21、22)を含めたエピタキシャル成長装置1全体の汚染を高感度に検出する必要があり、そのために本発明の汚染検出方法が実施される。
【0035】
次に、本発明のエピタキシャル成長装置1の汚染検出方法の詳細を説明する。
図2は、その方法の概略の一例を示したフローチャートである。なお、この図の汚染評価方法はいつ実施されたとしても良いが、例えば、汚染レベルが悪化するメンテナンス又はベーパーエッチング(炉内クリーニング)直後に実施される。先ず、汚染評価用の半導体ウェーハの基板となるシリコンウェーハを準備する(S11)。ここで準備するシリコンウェーハの直径、面方位、導電型、及び抵抗率等は特に限定されないが、例えば直径は、評価対象となるエピタキシャル成長装置1で処理されるシリコンウェーハ(製品製造時のシリコンウェーハ)と同じにすることができる。また、このシリコンウェーハの表面の加工条件は標準的な条件でよいが、サンドブラスト処理や多結晶シリコン膜の形成など、汚染評価に影響を与える処理は避けることが好ましい。
【0036】
本発明実施のためには、搬送チャンバ21、22からエピ反応炉3への雰囲気ガス混入を製品製造時より増加させる(促進させる)必要がある。雰囲気ガス混入量を増加させる方法であれば、その手法に制限は無い。例えば、雰囲気ガス混入量を増加させる方法の一つとして、搬送チャンバ21、22の置換ガス流量(ガス導入管26、28から導入されるガスの流量)を予め定めた分だけ増やす(S12)。この「予め定めた分」はどのような値であっても良いが、大きくなるほど、搬送チャンバ21、22からエピ反応炉3への雰囲気ガス混入を促進できる。置換ガス流量を製品製造時よりも増加させることで、搬送チャンバ21、22とエピ反応炉3の圧力差が大きくなり、雰囲気ガス混入量を増加させることができる。また、この方法では設定流量を変えるだけで簡便で任意にガス混入量を変化せることができる。それ以外にも搬送チャンバ21、22の排気ライン(ガス排出管27、28)に抵抗を設置することにより搬送チャンバ21、22内の圧力を上げるなどの方法がある。
【0037】
なお、S12では、第1の搬送チャンバ21のみ置換ガス流量を増加させても良いし、第2の搬送チャンバ22のみ置換ガス流量を増加させても良いし、両方の搬送チャンバ21、22の置換ガス流量を増加させても良い。第1の搬送チャンバ21のみ置換ガス流量を増加させた場合には、第1の搬送チャンバ21から第2の搬送チャンバ22への雰囲気ガス混入量が増加し、この増加に伴い第2の搬送チャンバ22からエピ反応炉3への雰囲気ガス混入量が増加する。また、第2の搬送チャンバ22のみ置換ガス流量を増加させた場合には、第2の搬送チャンバ22からエピ反応炉3への雰囲気ガス混入量が増加する。なお、S12の工程が本発明の「混入促進工程」に相当する。
【0038】
搬送チャンバ21、22の圧力設定後、準備したシリコンウェーハをウェーハ搬送系統2を介してエピ反応炉3に搬入する(S13)。次に、TCS等の原料ガスとキャリアガスである水素を流して製品製造と同じ反応温度でシリコンウェーハの表面上にエピタキシャル層を気相成長させ、汚染評価用の半導体ウェーハ(サンプルウェーハ、第1ウェーハ)を作製する(S14)。エピタキシャル層の厚み、導電型、抵抗率などには特に制限されないが、例えば、ノンドープのエピタキシャル層を1〜10μmの厚みで成長させることができる。また、原料ガスの種類は特に制限は無いが、原料ガスとして最も広く使用されているTCSを使用することができる。
【0039】
S12で製品製造時よりも搬送チャンバ21、22の圧力を高くして、S13のウェーハ搬入時に搬送チャンバ21、22からエピ反応炉3への雰囲気ガス混入量を増加させているので、S14のサンプルウェーハ作製時に製品製造時に比べて炉内酸素濃度や別の汚染源の混入量を高くできる。その結果、エピタキシャル成長装置1内の汚染源(特に、ウェーハ搬送系統2の汚染源)からの金属不純物放出を加速させることができる。その結果、エピタキシャル層に取り込まれる金属不純物(金属汚染量)を増幅できる。
【0040】
その後、エピ反応炉3内から、作製したサンプルウェーハ(第1ウェーハ)を搬出する(S15)。なお、S13〜S15の工程が本発明の「第1のサンプル製造工程」に相当する。その後、搬出したサンプルウェーハの金属汚染度として、このサンプルウェーハのICP−MS分析(誘導結合プラズマ質量分析)を行う(S16)。ICP−MS分析を行うことで、サンプルウェーハ中の金属濃度の定量分析が可能となる。この分析で得られた金属濃度値は、エピタキシャル成長装置1の汚染度に相当する。なお、S16ではMo、Fe、Cu、Ni等どの種類の金属不純物に着目してICP−MS分析を行っても良い。例えば、Moに着目してICP−MS分析を行った場合には、Mo濃度が得られる。なお、S16の工程が本発明の「第1の取得工程」に相当する。
【0041】
次に分析から得られた金属濃度値に基づいて、評価対象のエピタキシャル成長装置1の汚染度(清浄度)を評価する(S17)。具体的には例えば、搬送チャンバ21、22の置換ガス流量が製品製造時と同じ流量で作製したサンプルウェーハ(第2ウェーハ)と製品製造時より増加させた条件で作製したサンプルウェーハ(第1ウェーハ)の金属濃度値を比較することで搬送チャンバ21、22から持ち込まれた汚染の影響度を評価する。そのために、例えば
図3のフローチャートに示す手順により、第2ウェーハを作製するとともに、その第2ウェーハの金属濃度値を測定する。この
図3のフローチャートは、
図2のフローチャートの実行前に予め実行されたとしても良いし、
図2のフローチャートにおけるS16の実行後に実行されたとしても良い。
【0042】
図3のフローチャートにおいて、S22以外の工程S21、S23〜S26は、
図2のS11、S13〜S16と同じである。すなわち、先ず、S11で準備するシリコンウェーハと同種(直径、面方位、導電型、抵抗率等)のシリコンウェーハを準備する(S21)。次に、搬送チャンバ21、22の置換ガス流量を製品製造時と同じ流量にすることで、搬送チャンバ21、22の圧力を製品製造時と同じ圧力に設定する(S22)。次に、ウェーハ搬送系統2を介してシリコンウェーハをエピ反応炉3に搬入し(S23)、エピ反応炉3にてシリコンウェーハの表面上にエピタキシャル層を成長させて、汚染評価用の半導体ウェーハ(サンプルウェーハ、第2ウェーハ)を作製する(S24)。このときの成長条件は、S14の成長条件と同じとする。その後、作製したサンプルウェーハを搬出して(S25)、このサンプルウェーハのICP−MS分析を行う(S26)。なお、S21〜S25の工程が本発明の「第2のサンプル製造工程」に相当する。S26の工程が本発明の「第2の取得工程」に相当する。
【0043】
図2のS17の工程においては、例えば、
図3のS26で得られた第2ウェーハの金属濃度値Bに対する
図2のS16で得られた第1ウェーハの金属濃度値Aの比(増加比=A/B)を、エピタキシャル成長装置1の汚染度として算出する。この増加比は、エピタキシャル成長装置1の中でもウェーハ搬送系統2に起因した金属不純物による汚染度である。そして、例えば、この増加比(汚染度)が、予め定められた基準値を超えている場合には、ウェーハ搬送系統2を洗浄するなどしてウェーハ搬送系統2からエピ反応炉3への酸素や他の汚染源の持ち込みを減らすことで、増加比が基準値を下まわるように管理する。なお、S17の工程が本発明の「評価工程」に相当する。
【0044】
以上が、本実施形態におけるエピタキシャル成長装置の汚染評価方法である。このように、本実施形態の汚染評価方法によれば、エピタキシャル層成長時に製品製造時より搬送チャンバからの雰囲気ガス混入量を多くしているので、チャンバ中の残留大気等の影響によって汚染を強調させることができ、その結果、汚染が増幅され、搬送チャンバの影響を強く受けた汚染度(清浄度)の評価を行うことができる。例えば、上記増加比が基準値を下まわるように管理したエピタキシャル成長装置を用いることで、汚染の少ない高品位なエピタキシャルウェーハを高歩留まりで製造することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0046】
先ず、直径が200mm、厚みが725μmのシリコンウェーハを多数準備した。次に、評価対象のエピタキシャル成長装置を準備し、搬送チャンバを大気開放していわゆるメンテナンス作業を行った。
【0047】
このようにメンテナンス作業を行ったエピタキシャル成長装置を準備した後、この装置を用いて上記のシリコンウェーハの表面上にエピタキシャル層を成長させ、汚染評価用のシリコンウェーハ(サンプルウェーハ)を作製した。ここでは、同装置を用いて
図2の手順に基づく汚染評価用シリコンウェーハ(第1ウェーハ)と
図3の手順に基づく比較例(従来法)の汚染評価用シリコンウェーハ(第2ウェーハ)を同タイミングで作製した。この際エピタキシャル層成膜時に原料ガスTCS10L/minとキャリアガス水素50L/minを流し、膜厚10μmのノンドープ層を作製した。
【0048】
(比較例)
比較例では、搬送チャンバ21、22(
図1参照)に導入する窒素ガス流量をともに従来(製品製造時)と同じ窒素ガス流量である4.5L/minに設定して汚染評価用のシリコンウェーハ(第2ウェーハ)の作製を行った。
【0049】
(実施例)
実施例では、エピ反応炉に混入するガス量が高くなるように搬送チャンバ21、22に導入する窒素ガス流量をともに6.5L/minと9.6L/minに設定して、2水準の汚染評価用のシリコンウェーハ(第1ウェーハ)の作製を行った。
【0050】
このようにして作製した汚染評価用のシリコンウェーハについて、ICP−MS法を用いて、表面Mo濃度を測定した。
図4はその測定結果を示した図であり、具体的には、比較例の表面Mo濃度を1とした時の実施例におけるシリコンウェーハの表面Mo濃度の増加比を示している。
【0051】
比較例と実施例のメンテナンス直後のシリコンウェーハの表面Mo濃度比較から、搬送チャンバの置換ガス流量の増加に従って、Mo濃度比が大きくなっていくことが分かる。つまり、窒素ガス流量が6.5L/minのときのMo濃度比は比較例の濃度比(=1)よりも大きくなっている。また、9.6L/minのときのMo濃度比は、6.5L/minのときのMo濃度比よりも大きくなっている。このことから、ウェーハ搬送系統(搬送チャンバ)に汚染源が残留していると言える。
【0052】
このように、本発明を用いることで、メンテナンス後の搬送チャンバの汚染源残留を確認することができた。これは、比較例だけでは感知できなかったものが、実施例を用いて他チャンバの微量な汚染源を増加させることで高感度に汚染検出が可能になったことを示している。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。例えば、汚染度の評価対象とするエピタキシャル成長装置は枚葉式に限られず、エピ反応炉以外に補助チャンバを持つ各種エピタキシャル成長装置の汚染評価に本発明を適用できる。また、汚染度の評価方法としては、ICP−MS(ICP質量分析法)以外の方法、具体的には例えば全反射蛍光X線分析法(TXRF)で、汚染評価用の半導体ウェーハの金属汚染度(金属不純物の濃度)を測定しても良い。
【0054】
また、上記実施形態では、搬送チャンバの圧力(置換ガス流量)を製品製造時よりも高くすることで、搬送チャンバからエピ反応炉への雰囲気ガスの混入を促進させていたが、搬送チャンバからエピ反応炉への搬送時に隔離弁の開放時間を製品製造時よりも長くし、又は搬送チャンバへの不活性ガスの導入時間を長くしても良い。これによっても、エピ反応炉への雰囲気ガスの混入を促進できる。
【0055】
また、上記実施形態では、2つの搬送チャンバを備えるエピタキシャル成長装置に本発明を適用した例を説明したが、搬送チャンバは何個備えられたとしても良い。また、上記実施形態では、エピ反応炉にウェーハを搬入するためのウェーハ搬送系統(搬入用のウェーハ搬送系統)からの雰囲気ガスの混入を促進させていたが、エピ反応炉からウェーハを搬出するためのウェーハ搬送系統(搬出用のウェーハ搬送系統)からの雰囲気ガスの混入を促進させても良い。これによれば、搬出用のウェーハ搬送系統に起因した汚染度を評価できる。
【0056】
また、上記実施形態では、シリコンエピタキシャルウェーハの製造装置に本発明を適用した例を説明したが、他の種類のエピタキシャルウェーハの製造装置に本発明を適用しても良い。
【0057】
また、
図2のS17の工程では、第1ウェーハの金属濃度値と第2ウェーハの金属濃度値の比較(増加比)に基づいてエピタキシャル成長装置の汚染度を評価したが、第1ウェーハの金属濃度値のみでその汚染度を評価しても良い。具体的には、第1ウェーハの金属濃度値が大きいほど、エピタキシャル成長装置の汚染レベルが悪いと評価する。これによれば、
図3の工程を省略できるので、エピタキシャル成長装置の汚染をより簡便に評価できる。
【0058】
また、上記実施形態では、第1ウェーハの金属濃度値と第2ウェーハの金属濃度値の増加比に基づいてエピタキシャル成長装置の汚染度を評価したが、第1ウェーハの金属濃度値と第2ウェーハの金属濃度値の差分に基づいてエピタキシャル成長装置の汚染度を評価しても良い。