特許第6099122号(P6099122)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6099122放射性廃棄物収容装置、およびそれを用いた土木構造物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099122
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】放射性廃棄物収容装置、およびそれを用いた土木構造物
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/36 20060101AFI20170313BHJP
   E02D 23/08 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   G21F9/36 541E
   G21F9/36 501H
   E02D23/08 E
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-245280(P2012-245280)
(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-95551(P2014-95551A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】奈良林 直
(72)【発明者】
【氏名】小櫻 義隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝信
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−028700(JP,A)
【文献】 特開2002−214393(JP,A)
【文献】 特許第4986092(JP,B1)
【文献】 特開昭62−068974(JP,A)
【文献】 特開昭57−127899(JP,A)
【文献】 実開昭58−114799(JP,U)
【文献】 特開2012−193986(JP,A)
【文献】 実開昭57−147797(JP,U)
【文献】 実開昭63−195299(JP,U)
【文献】 特開平11−038191(JP,A)
【文献】 特開2001−141882(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/153957(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/36
G21F 9/34
G21F 9/02
G21F 5/00−5/14
E02D 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁および内側壁を放射線遮蔽壁とした収容空間内に、放射性廃棄物を収容した複数の密閉容器を、互いに側方に離間させて並置し、前記密閉容器間に形成された空間に、放射線吸収材よりなる充填材を充填し、前記収容空間の上端開口部を、放射線遮蔽蓋材により閉塞し、さらに、前記密閉容器の外側面に、隣接する密閉容器との間に空間を形成させるためのスペーサを兼ねる吊り下げ片を設けたことを特徴とする放射性廃棄物収容装置。
【請求項2】
放射線遮蔽壁の一部または全ての表面を防食処理してなる請求項1記載の放射性廃棄物収容装置。
【請求項3】
充填材を、ゼオライト、粘土、コンクリートのいずれか一種、または複数種の組み合わせからなるものとした請求項1または2記載の放射性廃棄物収容装置。
【請求項4】
密閉容器を、コンクリート層の内面および/または外面を鋼板により覆った底壁および側壁を有し、かつ上面が開口する本体と、この本体の上端開口部を閉塞する蓋体とからなるものとした請求項1〜3のいずれかに記載の放射性廃棄物収容装置。
【請求項5】
コンクリート層内に、鋼板に突設したスタッドジベルを配設した請求項4記載の放射性廃棄物収容装置。
【請求項6】
互いに隣接する密閉容器に設けた吊り下げ片同士を、連結杆をもって互いに連結した請求項1〜5のいずれかに記載の放射性廃棄物収容装置。
【請求項7】
密閉容器の一部に、密閉容器内のガスを排出させるガス排出手段を設けた請求項1〜のいずれかに記載の放射性廃棄物収容装置。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の放射性廃棄物収容装置を、埋設型基礎材料として使用したことを特徴とする土木構造物。
【請求項9】
建造物の土台、堤防、橋脚、ケーソン、舗装道路のいずれかとした請求項記載の土木構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃棄物収容装置、およびそれを用いた土木構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済み核燃料を含む放射性廃棄物は毎年増加する一方であるのに対して、放射性廃棄物の処理および保管設備は十分でないのが現状である。
従来の放射性廃棄物収容装置には、発熱する放射性廃棄物に対して強制換気するようにしたものや(例えば特許文献1参照)、収容部の内圧を外圧より低くするようにしたもの(例えば特許文献2参照)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−175530号公報
【特許文献2】特開平9−68595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の装置は、換気装置や収容部内の空気を吸引する吸引装置、並びに吸引した空気を浄化するガス処理装置等の高価な付属装置を必要とし、装置全体が複雑かつ高価となっている。
【0005】
また、従来の放射性廃棄物収容装置が普及しない要因として、環境に対する配慮から、設置場所が確保しにくいということがある。
【0006】
しかし、放射性廃棄物には、例えば、原子力発電所の廃止処置に伴うコンクリートや切断した鋼材などの低レベル放射性物質、原子力発電所の事故に伴う汚染土壌や震災瓦礫の焼却灰、除染塵、汚染植物等の、発熱のおそれがない低レベルの放射能の瓦礫等が大量にあり、それらを、発熱対策や高レベルの放射能対策を施した放射性廃棄物収容装置に収容して保管することは経済的に不利である。
【0007】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、低レベルの放射性廃棄物を効率よく収容できるとともに、それらを有効に活用できるようにした放射性廃棄物収容装置、およびそれを用いた土木構造物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 放射性廃棄物収容装置を、底壁および内側壁を放射線遮蔽壁とした収容空間内に、放射性廃棄物を収容した複数の密閉容器を、互いに側方に離間させて並置し、前記密閉容器間に形成された空間に、放射線吸収材よりなる充填材を充填し、前記収容空間の上端開口部を、放射線遮蔽蓋材により閉塞し、さらに、前記密閉容器の外側面に、隣接する密閉容器との間に空間を形成させるためのスペーサを兼ねる吊り下げ片を設けたものとする。
【0009】
このような構成によると、互いに側方に隣接する密閉容器間に形成された空間内に、放射線吸収材よりなる充填材を充填してあるので、万一各密閉容器から放射線が放出したとしても、この充填材により吸収され、他に影響を与えることがなく、しかも、充填材の存在により、地震その他の振動時に、各密閉容器が移動したり、衝突したりするのを防止することができる。
また、低レベルの放射性廃棄物を、高価な付属装置を設けることなく、簡易に、効率よく収容して保管することができる。
さらに、クレーンのフック等を吊り下げ片に係止して、各密閉容器を簡単かつ迅速に移動させることができるだけでなく、複数の密閉容器を側方に並べる際に、吊り下げ片の外側面を、隣接する密閉容器の外側面、またはそこに設けた吊り下げ片の外側面に当接させることにより、互いに側方に隣接する密閉容器間の間隔を一定に保ち、充填材を充填する空間を均一にすることができる。
【0010】
(2) 上記(1)項において、放射線遮蔽壁の一部または全ての表面を防食処理する。
【0011】
このような構成によると、放射線遮蔽壁の耐食性が増し、耐久性が向上する。
防食処理には、防錆処理、水および酸素を断絶するための塗装、ライニング、亜鉛板の設置やメッキ処理による犠牲防食、耐食材料の使用、電気防食等が含まれる。
【0012】
(3) 上記(1)または(2)項において、充填材を、ゼオライト、粘土、コンクリートのいずれか一種、または複数種の組み合わせからなるものとする。
【0013】
このような構成によると、充填材により、放射線を効果的に吸収することができるとともに、装置全体の強度を高めることができ、しかも充填材を、安価にかつ容易に入手することができる。
【0014】
(4) 上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、密閉容器を、コンクリート層の内面および/または外面を鋼板により覆った底壁および側壁を有し、かつ上面が開口する本体と、この本体の上端開口部を閉塞する蓋体とからなるものとする。
【0015】
このような構成によると、密閉容器自体によって、内部に収容した放射性廃棄物から放出される放射線を効果的に遮蔽することができるとともに、密閉容器の強度を高めることができる。
【0016】
(5) 上記(4)項において、コンクリート層内に、鋼板に突設したスタッドジベルを配設する。
【0017】
このような構成によると、密閉容器の強度をさらに高めることができる。
【0018】
(6) 上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、互いに隣接する密閉容器に設けた吊り下げ片同士を、連結杆をもって互いに連結する。
【0019】
このような構成によると、互いに隣接する密閉容器同士が、連結杆により互いに強固に連結され、密閉容器の互いの結合強度を高めることができるだけでなく、放射性廃棄物収容装置全体の強度を高めることができる。
【0020】
(7) 上記(1)〜(6)項のいずれかにおいて、密閉容器の一部に、密閉容器内のガスを排出させるガス排出手段を設ける。
【0021】
このような構成によると、長期に渡る放射性廃棄物の保管時に、密閉容器内において、放射線分解により、放射性廃棄物から水素や酸素等のガスが発生したり、または有機物の腐敗により、炭酸ガス、アンモニア、メタン、硫化水素等のガスが発生したとしても、そのガスを、ガス排出手段を通して密閉容器外に排出することができるので、密閉容器が内部のガス圧によって破損するのを未然に防止することができる。
密閉容器外に排出されたガスから発生する放射線は、放射線吸収材よりなる充填材によって吸収されるので、環境に悪影響与えることはない。
【0022】
(8) 土木構造物において、上記(1)〜(7)項のいずれかに記載の放射性廃棄物収容装置を、埋設型基礎材料として使用する。
【0023】
このような構成によると、放射能が低レベルの放射性廃棄物を、土木構造物の一部として、有効に活用することができ、現存する大量の低レベルの放射性廃棄物の処理に寄与することができ、有意義である。
【0024】
(9) 上記(8)項において、土木構造物を、建造物の土台、堤防、橋脚、ケーソン、舗装道路のいずれかとする。
【0025】
このような構成によると、上記(1)〜(7)項のいずれかに記載の放射性廃棄物収容装置を、具体的に、建造物の土台、堤防、橋脚、ケーソン、舗装道路のいずれかの埋設型基礎材料として、有効に活用することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、低レベルの放射性廃棄物を効率よく収容できるとともに、それらを有効に活用できるようにした放射性廃棄物収容装置、およびそれを用いた土木構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の放射性廃棄物収容装置に使用する密閉容器の一実施形態の斜視図である。
図2図1のII−II線断面図である。
図3】本発明の放射性廃棄物収容装置を、長期保管設備として使用したときの概略縦断正面図である。
図4】本発明の放射性廃棄物収容装置を、防潮堤の埋設型基礎材料として使用したときの概略縦断正面図である。
図5】本発明の放射性廃棄物収容装置を、橋脚等の埋設型基礎材料として使用したときの概略縦断正面図である。
図6】本発明の放射性廃棄物収容装置を、道路の埋設型基礎材料として使用したときの概略縦断正面図である。
図7】本発明の放射性廃棄物収容装置を、建造物の土台の埋設型基礎材料として使用したときの概略縦断正面図である。
図8】本発明の放射性廃棄物収容装置に使用する密閉容器の第1の変形例の斜視図である。
図9図8のIX−IX線拡大断面図である。
図10図8のX−X線拡大断面図である。
図11】本発明の放射性廃棄物収容装置に使用する密閉容器の第2の変形例の斜視図である。
図12図11のXII−XII線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の放射性廃棄物収容装置に使用する密閉容器の一実施形態を、図1および図2を参照して説明した後、その密閉容器を用いた本発明の放射性廃棄物収容装置の使用例を、図3図6を参照して説明する。
【0029】
図1および図2に示すように、この密閉容器1は、上面が開口する箱状の本体2と、この本体2の上端開口部を閉塞する蓋体3とからなっている。
本体2は、コンクリート層4の内面および外面を鋼板5、6により覆うことにより、放射線遮蔽壁とした底壁7および前後左右の側壁8を有し、内部を、放射性廃棄物(図示略)の収容空間9とされている。
【0030】
コンクリート層4内には、内面の鋼板5および外面の鋼板6に突設した複数のスタッドジベル10が、互いに干渉しないレイアウトで配設され、本体2の強度を高めるようにしてある。
なお、内面の鋼板5とこれに突設したスタッドジベル10、および外面の鋼板6とこれに突設したスタッドジベル10のいずれか一方を省略して実施することもある。
【0031】
底壁7の下面には、角管状をなす左右1対のベース脚11、11が、溶接により固着されている。各ベース脚11に、フォークリフトのフォーク(図示略)を挿入することにより、フォークリフトによっても密閉容器1を搬送しうるようにしてある。
【0032】
左右の側壁8、8の外側面には、前後1対の吊り下げ片12、12が突設されている。各吊り下げ片12は、側壁8の外側面に溶接により固着された基部12aと、側壁8の外側面から離間するようにして、基部12aの上端に連設され、かつ左右方向を向く吊り孔13が設けられた上向き突片12bとを有している。
【0033】
この吊り下げ片12は、吊り孔13に、クレーン等からワイヤ等により吊支されたフック(いずれも図示略)を係止することにより、クレーン等によって、密閉容器1全体を簡単かつ迅速に吊り上げて、移動することができるとともに、複数の密閉容器1を側方に並べて配設する際に、吊り下げ片12の外側面を、隣接する密閉容器1の外側面、またはそこに設けた吊り下げ片12の外側面に当接させることにより、互いに側方に隣接する密閉容器1、1間の間隔を一定に保つこともできる。
すなわち、吊り下げ片12は、スペーサとしての機能を兼ね備えている。
【0034】
蓋体3は、水平板状のコンクリート層14の下面および上面、並びに外周面を鋼板15、16、17により覆うことにより、放射線遮蔽壁としてある。
コンクリート層14内には、鋼板15、16に突設された、スタッドジベル10と同様のスタッドジベル18が配設され、蓋体3の強度を高めるようにしてある。
【0035】
この密閉容器1における本体2の収容空間9に、放射性廃棄物を収容した後、蓋体3を本体2上に載置して、蓋体3の外周部を本体2の外周部に溶接することにより、放射性廃棄物が収容された収容空間9は気密に密閉される。
【0036】
蓋体3を本体2の外周部に溶接する際の妨げとならないように、各吊り下げ片12の上端は、本体2の上端より低く設定しておくのが望ましい。
【0037】
図3は、本発明の放射性廃棄物収容装置を、長期保管設備として使用したときの概略縦断正面図である。
この実施形態においては、地面19に掘削した直方形の空間20に、コンクリート層21の内面を鋼板22により覆うことにより、放射線遮蔽壁とした底壁23および前後左右の内側壁24を形成し、その内部を気密の収容空間25としてある。
【0038】
この収容空間25内には、図1および図2に示す複数の密閉容器1が、そのベース脚11、11を、底壁23上または下段の密閉容器1の蓋体3上に載置し、かつ左右の吊り下げ片12を、内側壁24の鋼板22、または隣接する密閉容器1の側壁8の鋼板6、もしくはそこに固着された吊り下げ片12の外側面に当接させることにより、上下および左右に互いに離間させて、所要の空間Sが形成されるようにして、並置され、かつ多段状に積み重ねられている。
【0039】
また、密閉容器1は、収容空間25内において、前後方向にも所要の空間(図示略)が形成されるようにして、並置され、かつ多段状に積み重ねられている。
この前後方向の空間を形成するため、各密閉容器1の前後面に、吊り下げ片12と同様のものを固着するか、または吊り下げ機能のない、単なるスペーサ(図示略)を固着し、このスペーサの先端を、前後の内側壁24の鋼板22、または前後に隣接する密閉容器1の側壁8の鋼板6、もしくはそこに固着されたスペーサの先端面に当接させるようにするのが好ましい。
【0040】
このようなスペーサを設ける代わりに、前方の密閉容器1の両側面における後部の吊り下げ片12と、後方の密閉容器1の両側面における前部の吊り下げ片12とを、前後方向を向く所要長さの連結杆(図示略)をもって互いに連結し、前後の密閉容器1、1間に、所要の空間を形成するようにしてもよい。
【0041】
また、こうすることによって、互いに隣接する密閉容器1、1同士が、連結杆をもって互いに強固に連結され、密閉容器1、1同士の互いの結合強度を高めることができるだけでなく、放射性廃棄物収容装置全体の強度を高めることができる。
【0042】
さらに、左右に対向する吊り下げ片12、12同士を、互いに係合するようにしたり、またはボルト・ナット等の結合手段(図示略)をもって互いに結合したりすることにより、左右に隣接する密閉容器1、1同士の互いの結合強度を高めることができるだけでなく、放射性廃棄物収容装置全体の強度を高めることができる。
【0043】
収容空間25内における上記空間S内には、放射線吸収材よりなる充填材26が充填されている。
この充填材26は、ゼオライト、粘土、コンクリートのいずれか一種、または複数種の組み合わせからなるものとするのが好ましい。
【0044】
収容空間25の上端開口部は、放射線遮蔽蓋材(以下、単に蓋材という)27をもって閉塞されている。
蓋材27は、例えば、水平板状のコンクリー層28の下面を鋼板29により覆ったものとするのが好ましい。
この鋼板29の外周縁を、各内側壁24の内面における鋼板22の上端を外側に折曲し、かつコンクリート層21の上端面を覆うようにした外向きフランジ22aの外周縁に溶接することにより、収容空間25内は、気密に密閉され、それによって、収容空間25内への水または酸素の進入を防止でき、鋼板22、29の腐食を防止することができる。
なお、鋼板22、29の表面は、重防食塗装を施しておくのが好ましい。
【0045】
蓋材27の上方は、覆土30をもって覆われており、この覆土30の周囲には、放射線計測センサ31や、下端が地下水脈に達するようにした、地下水質および放射線濃度監視管32等が設けられている。
【0046】
このような構成とした放射性廃棄物収容装置は、互いに側方に隣接する密閉容器1、1間に形成された空間S内に、放射線吸収材よりなる充填材26が充填されているので、万一各密閉容器1から放射線が放出したとしても、この充填材26により吸収され、他に影響を与えることがなく、しかも、充填材26の存在により、地震その他の振動時に、各密閉容器1が移動したり、衝突したりするのを防止することができる。
また、低レベルの放射性廃棄物を、高価な付属装置を設けることなく、簡易に、効率よく収容して保管することができる。
【0047】
本発明の放射性廃棄物収容装置は、図4に示すように、防潮堤等の堤防33の埋設型基礎材料34として使用したり、図5に示すように、橋梁35における橋台36の埋設型基礎材料37、橋脚38の埋設型基礎材料39、ケーソン40の埋設型基礎材料41として使用したり、図6に示すように、高速道路等の道路42のプレロード盛土43内に埋設する埋設型基礎材料44として使用したりすることができる。
また、図7に示すように、建造物45の土台46における埋設型基礎材料47等としても使用することができる。この建造物45は、海岸付近に設ける避難施設等とすることができる。
【0048】
本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱することなく、例えば、次のような変形した態様での実施が可能である。
(1) 図8および図9に示すように、本体2の上端開口部と蓋体3との接合部の一部に、ストリーミング放射線を低減させるラビリンス構造48を備えて、密閉容器1の内外を連通させ、密閉容器1内のガスを外部に排出させるガス排出手段をなすスリット49を設ける。
このように、スリット49をラビリンス構造48とすることにより、密閉容器1内の放射線や液体の外部への流出を抑制しつつ、容器内のガスを外部に排出することができる。
【0049】
(2) 図8および図10に示すように、本体2の側壁に、水平のガス抜き孔50を設けるとともに、本体2の側壁に固着した吊り下げ片12の基部12aに、上記ガス抜き孔50の外端と連通する水平孔51aと、その外端より垂下する下向き孔51bとからなる連通孔51を設け、このガス抜き孔50と連通孔51とによって、密閉容器1内のガスを外部に排出させるガス排出手段を設ける。
【0050】
(3) 図11および図12に示すように、本体2の側壁に、内端部に拡径段部52aを有する水平のガス抜き孔52を設け、かつ上記拡径段部52aに、密閉容器1内のガスの圧力が予め定めた値を超えることにより、内部のガスをガス抜き孔52を通して排出させる逃がし弁53を設け、このガス抜き孔52と逃がし弁53とをもって、密閉容器1内のガスを外部に排出させるガス排出手段54を構成する。
このような逃がし弁付きガス排出手段54を設けると、長期に渡る放射性廃棄物の保管時に、放射線分解により、放射性廃棄物から水素や酸素等のガスが発生したり、または有機物の腐敗により、炭酸ガス、アンモニア、メタン、硫化水素等のガスが発生したとしても、密閉容器内の圧力が予め定めた値を超えると、内部のガスが、逃がし弁付きガス排出手段54を通して密閉容器1外に排出されるので、密閉容器1が内部のガス圧によって破損するのを未然に防止することができる。
【0051】
上記(1)〜(3)の変形例によると、密閉容器1外に排出されたガスから発生する放射線は、放射線吸収材よりなる充填材26によって吸収されるので、環境に悪影響を与えることはない。
【0052】
(4) 密閉容器1を、公知の放射性廃棄物保管容器とする。
【0053】
(5) ベース脚11や吊り下げ片12を省略して実施する。
【符号の説明】
【0054】
1 密閉容器
2 本体
3 蓋体
4 コンクリート層
5、6 鋼板
7 底壁
8 側壁
9 収容空間
10 スタッドジベル
11 ベース脚
12 吊り下げ片
12a基部
12b上向き突片
13 吊り孔
14 コンクリート層
15、16、17 鋼板
18 スタッドジベル
19 地面
20 空間
21 コンクリート層
22 鋼板
22a外向きフランジ
23 底壁
24 内側壁
25 収容空間
26 充填材
27 放射線遮蔽蓋材
28 コンクリー層
29 鋼板
30 覆土
31 放射線計測センサ
32 放射線濃度監視管
33 堤防
34 埋設型基礎材料
35 橋梁
36 橋台
37 埋設型基礎材料
38 橋脚
39 埋設型基礎材料
40 ケーソン
41 埋設型基礎材料
42 道路
43 プレロード盛土
44 埋設型基礎材料
45 建造物
46 土台
47 埋設型基礎材料
48 ラビリンス構造
49 スリット(ガス排出手段)
50 ガス抜き孔(ガス排出手段)
51 連通孔(ガス排出手段)
51a水平孔
51b下向き孔
52 ガス抜き孔
52a拡径段部
53 逃がし弁
54 逃がし弁付きガス排出手段
S 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12