【実施例】
【0052】
以下、本発明の硫黄系活物質の製造方法、硫黄系活物質、および、リチウムイオン二次電池用正極を具体的に説明する。
【0053】
(実施例1)
〈硫黄系活物質の製造〉
〔1〕混合工程
[化1]式に示す4-アミノ安息香酸(キシダ化学製、99%)粉末に平均粒径50μmの硫黄粉末(キシダ化学製、99%)を混合し、混合原料を調製した。混合原料中における4-アミノ安息香酸と硫黄との配合比率は、重量比で硫黄が5質量部に対して4-アミノ安息香酸が1質量部となるようにした。
【化1】
【0054】
〔2〕装置
図1に示すように、反応装置1は、反応容器2、蓋3、熱電対4、アルミナ保護管40、2つのアルミナ管(ガス導入管5、ガス排出管6)、アルゴンガス配管50、アルゴンガスを収容したガスタンク51、トラップ配管60、水酸化ナトリウム水溶液61を収容したトラップ槽62、電気炉7、電気炉に接続されている温度コントローラ70を有する。
【0055】
反応容器2としては、有底筒状をなすガラス管(石英ガラス製)を用いた。後述する熱処理工程において、反応容器2には混合原料9を収容した。反応容器2の開口部は、3つの貫通孔を持つシリコーンゴム製の蓋3で閉じた。貫通孔の1つには、熱電対4を収容したアルミナ保護管40(アルミナSSA-S、株式会社ニッカトー製)を取り付けた。貫通孔の他の1つには、ガス導入管5(アルミナSSA-S、株式会社ニッカトー製)を取り付けた。貫通孔の残りの1つには、ガス排出管6(アルミナSSA-S、株式会社ニッカトー製)を取り付けた。なお、反応容器2は、外径60mm、内径50mm、長さ300mmであった。アルミナ保護管40は、外径4mm、内径2mm、長さ250mmであった。ガス導入管5およびガス排出管6は、外径6mm、内径4mm、長さ150mmであった。ガス導入管5およびガス排出管6の先端は、蓋3の外部(反応容器2内)に露出した。この露出した部分の長さは3mmであった。ガス導入管5およびガス排出管6の先端は、後述する熱処理工程においてほぼ100℃以下となる。このため、熱処理工程において生じる硫黄蒸気は、ガス導入管5およびガス排出管6から流出せず、反応容器2に戻される(還流する)。
【0056】
アルミナ保護管40に入れた熱電対4の先端は、間接的に反応容器2中の混合原料9の温度を測定した。熱電対4で測定した温度は、電気炉7の温度コントローラ70にフィードバックした。
【0057】
ガス導入管5にはアルゴンガス配管50を接続した。アルゴンガス配管50はアルゴンガスを収容したガスタンク51に接続した。ガス排出管6にはトラップ配管60の一端を接続した。トラップ配管60の他端は、トラップ槽62中の水酸化ナトリウム水溶液61に挿入した。なお、トラップ配管60およびトラップ槽62は、後述する熱処理工程で生じる硫化水素ガスのトラップである。
【0058】
〔3〕熱処理工程
混合原料9を収容した反応容器2を、電気炉7(ルツボ炉、開口幅φ80mm、加熱高さ100mm)に収容した。このとき、ガス導入管5を介して反応容器2の内部にアルゴンを導入した。このときのアルゴンガスの流速は100ml/分であった。アルゴンガスの導入開始10分後に、アルゴンガスの導入を継続しつつ反応容器2中の混合原料9の加熱を開始した。このときの昇温速度は5℃/分であった。混合原料9が100℃になった時点で、混合原料9の加熱を継続しつつアルゴンガスの導入を停止した。混合原料9が約200℃になるとガスが発生した。混合原料9が360℃になった時点で加熱を停止した。加熱停止後、混合原料9の温度は400℃にまで上昇し、その後低下した。したがって、この熱処理工程において、混合原料9は400℃にまで加熱された。その後、混合原料9を自然冷却し、混合原料9が室温(約25℃)にまで冷却された時点で反応容器2から生成物(すなわち、熱処理工程後の被処理体)を取り出した。なお、このときの加熱時間は400℃で約5分であり、硫黄は還流された。
【0059】
〔4〕単体硫黄除去工程
熱処理工程後の被処理体に残存する単体硫黄(遊離の硫黄)を除去するために、以下の工程をおこなった。
【0060】
熱処理工程後の被処理体を乳鉢で粉砕した。粉砕物2gをガラスチューブオーブンに入れ、真空吸引しつつ200℃で3時間加熱した。このときの昇温温度は10℃/分であった。この工程により、熱処理工程後の被処理体に残存する単体硫黄が蒸発・除去され、単体硫黄を含まない(または、ほぼ含まない)実施例1の硫黄系活物質を得た。
【0061】
〈リチウムイオン二次電池の製作〉
〔1〕正極
実施例1の硫黄系活物質3mgとアセチレンブラック2.7mgとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)0.3mgとの混合物を、ヘキサンを適量加えつつ、メノウ製乳鉢でフィルム状になるまで混練し、フィルム状の正極材料を得た。この正極材料全量を、φ14mmの円形に打ち抜いたアルミニウムメッシュ(#100メッシュ)の上に置き、卓上プレス機で圧着し、100℃で3時間乾燥した。この工程で、実施例1のリチウムイオン二次電池用正極を得た。
【0062】
〔2〕負極
負極としては、厚さ0.5mmの金属リチウム箔(本城金属社製)をφ14mmに打ち抜いたものを用いた。
【0063】
〔3〕電解液
電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを混合した混合溶媒に、LiPF
6を溶解した非水電解質を用いた。エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとは体積比1:1で混合した。電解液中のLiPF
6の濃度は、1.0mol/lであった。
【0064】
〔4〕電池
〔1〕、〔2〕で得られた正極および負極を用いて、コイン電池を製作した。詳しくは、ドライルーム内で、厚さ25μmのポリプロピレン微孔質膜からなるセパレータ(「Celgard2400」Celgard社製)と、厚さ500μmのガラス不織布フィルタと、を正極と負極との間に挟装して、電極体電池とした。この電極体電池を、ステンレス容器からなる電池ケース(CR2032型コイン電池用部材、宝泉株式会社製)に収容した。電池ケースには〔3〕で得られた電解液を注入した。電池ケースをカシメ機で密閉して、実施例1のリチウムイオン二次電池を得た。
【0065】
(実施例2)
4-アミノ安息香酸に代えて、[化2]に示す3,4-ジアミノ安息香酸(東京化成製)を用いたこと以外は実施例1と同様の混合原料を調製した。この混合原料を用い、実施例1と同様の装置を用いて実施例1と同様に熱処理工程を行い、その後、実施例1と同様に単体硫黄除去工程を行って、実施例2の硫黄系活物質を得た。
【化2】
【0066】
そして実施例2の硫黄系活物質を用い、実施例1と同様にして実施例2のリチウムイオン二次電池用正極を形成し、実施例1と同様にして実施例2のリチウムイオン二次電池を得た。
【0067】
(実施例3)
4-アミノ安息香酸に代えて、[化3]に示す3,5-ジアミノ安息香酸(東京化成製)を用いたこと以外は実施例1と同様の混合原料を調製した。この混合原料を用い、実施例1と同様の装置を用いて実施例1と同様に熱処理工程を行い、その後、実施例1と同様に単体硫黄除去工程を行って、実施例3の硫黄系活物質を得た。
【化3】
【0068】
そして実施例3の硫黄系活物質を用い、実施例1と同様にして実施例3のリチウムイオン二次電池用正極を形成し、実施例1と同様にして実施例3のリチウムイオン二次電池を得た。
【0069】
(実施例4)
4-アミノ安息香酸に代えて、[化4]に示すテレフタル酸(キシダ化学製、99%)と[化5]に示す1,6-ヘキサンジアミン(キシダ化学製、99%)とを同モル量となるように混合した粉末を用いたこと以外は実施例1と同様の混合原料を調製した。この混合原料を用い、実施例1と同様の装置を用いて実施例1と同様に熱処理工程を行い、その後、実施例1と同様に単体硫黄除去工程を行って、実施例4の硫黄系活物質を得た。
【化4】
【化5】
【0070】
そして実施例4の硫黄系活物質を用い、実施例1と同様にして実施例4のリチウムイオン二次電池用正極を形成し、実施例1と同様にして実施例2のリチウムイオン二次電池を得た。
【0071】
(実施例5)
4-アミノ安息香酸に代えて、テレフタル酸と[化6]に示すp-フェニレンジアミン(メルク製、99%)とを同モル量となるように混合した粉末を用いたこと以外は実施例1と同様の混合原料を調製した。この混合原料を用い、実施例1と同様の装置を用いて実施例1と同様に熱処理工程を行い、その後、実施例1と同様に単体硫黄除去工程を行って、実施例5の硫黄系活物質を得た。
【化6】
【0072】
そして実施例5の硫黄系活物質を用い、実施例1と同様にして実施例5のリチウムイオン二次電池用正極を形成し、実施例1と同様にして実施例5のリチウムイオン二次電池を得た。
【0073】
(実施例6)
3,4-ジアミノ安息香酸に加えて、テレフタル酸とp-フェニレンジアミンとをそれぞれ同モル量となるように混合した粉末を用いたこと以外は実施例1と同様の混合原料を調製した。この混合原料を用い、実施例1と同様の装置を用いて実施例1と同様に熱処理工程を行い、その後、実施例1と同様に単体硫黄除去工程を行って、実施例6の硫黄系活物質を得た。
【0074】
そして実施例6の硫黄系活物質を用い、実施例1と同様にして実施例6のリチウムイオン二次電池用正極を形成し、実施例1と同様にして実施例6のリチウムイオン二次電池を得た。
【0075】
(比較例1)
実施例1と同様の平均粒径50μmの硫黄粉末を25.008gと、平均粒径1μmのポリアクリロニトリル粉末(ポリサイエンス社製)を5.061gと、を乳鉢で混合し、混合原料を調製した。
【0076】
この混合原料を用い、実施例1と同様の装置を用いて実施例1と同様に熱処理工程を行い、その後、熱処理温度を250℃としたこと以外は実施例1と同様にして単体硫黄除去工程を行って、比較例1の硫黄系活物質を得た。
【0077】
そして比較例1の硫黄系活物質を用い、実施例1と同様にして比較例1のリチウムイオン二次電池用正極を形成し、実施例1と同様にして比較例1のリチウムイオン二次電池を得た。
【0078】
<元素分析>
実施例1,2,5及び比較例1の各硫黄系活物質について元素分析を行った。結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
<ラマンスペクトル分析による硫黄系正極活物質の分析>
実施例2、実施例5、比較例1の各硫黄系活物質についてラマンスペクトル分析を行った。分析装置には日本分光株式会社製の「RMP-320」(励起波長λ=532nm、グレーチング:1800gr/mm、分解能:3cm
-1)を用いた。得られたラマンスペクトルを
図2に示す。
図2における横軸はラマンシフト(cm
-1)であり、縦軸は相対強度である。
【0081】
実施例2,5の硫黄系活物質における1330cm
-1付近と1560cm
-1付近のピークは、比較例1と同様にそれぞれカーボンのDバンドとGバンドに対応する。但し、比較例1と比較してDバンドに対するGバンドの相対強度が小さいことから、比較例1に比べると黒鉛化が進んでいないと考えられる。
【0082】
単体硫黄(S
8硫黄)のピークは500〜550cm
-1付近に存在し、非常に強いピークであることが知られている。
図2には、このS
8硫黄のピークは認められなかった。この結果から、実施例2、実施例5、比較例1の各硫黄系活物質に硫黄はS
8硫黄としては存在していないと考えられる。このため、本発明の硫黄系活物質の硫黄は、-C-S結合等の結合をした状態で存在するか、または、ラマンスペクトルで検出できない非晶質の状態で存在するか、あるいはポリマー内に物理的に閉じこめられた状態と考えられる。
【0083】
<FT−IRスペクトル分析>
実施例2、実施例5、比較例1の各硫黄系活物質についてFT−IRスペクトル分析を行った。分析装置には島津社製の「IRAffinity-1」を用い、測定条件は、拡散反射法を用いて、分解能:4cm
-1、積算回数:100回、測定範囲:400cm
-1〜4000cm
-1とした。得られたスペクトルを
図3にそれぞれ示す。
【0084】
実施例2と実施例5の硫黄系活物質では、3360cm
-1、1730cm
-1、1500cm
-1付近のピークが第二アミド基由来のピークと考えられる。また実施例2の硫黄系活物質では、3640cm
-1、1600cm
-1、1300cm
-1、680cm
-1付近に、原料である3,4-ジアミノ安息香酸の中で反応に使われなかったメタ位の-NH
2に由来する芳香族第一アミンと考えられるピークが現れている。
【0085】
500cm
-1、1100cm
-1、2600cm
-1付近に-C-S、=C=S、S-Hに由来するピークが存在する可能性があるが、判別は困難である。いずれにしても、各実施例の硫黄系活物質は多量のSを含むことが元素分析によって確認されている。
【0086】
<充放電容量・サイクル特性測定試験>
実施例1〜6の各リチウムイオン二次電池の充放電容量とサイクル特性を測定した。正極活物質の1gあたり50mAに相当する電流値で充放電を行った。このときの放電終止電圧は1.0V、充電終止電圧は3.0Vとした。充放電を複数回繰り返したときの充放電曲線を
図4,6,8,10,12,14にそれぞれ示す。また0.1Cで1.0VまでCC放電(低電流放電)を行い、それ以降のサイクルは0.1Cで3.0VまでCC充電を行った後に0.1Cで1.0VまでCC放電を行う充放電を30℃で繰り返すサイクル試験を行った。結果を
図5,7,9,11,13,15にそれぞれ示す。
【0087】
実施例1のリチウムイオン二次電池は、実施例2に比べて初期容量が低くサイクル劣化も著しい。一方、実施例2のリチウムイオン二次電池は、高い容量を発現し、サイクル特性も優れている。しかし実施例3では、サイクル特性は比較的良好な性能であるものの、初期容量が低い。したがって化合物(ハ)としてアミノ安息香酸系の化合物を原料として用いる場合には、アミノ基を二つもち、カルボキシル基に対してパラ位にアミノ基をもつ3,4-ジアミノ安息香酸が特に好ましいことがわかる。
【0088】
また、化合物(ロ)としてテレフタル酸を用いた場合には、実施例4より実施例5が好ましいことから、化合物(イ)としてはp-フェニレンジアミンが好ましいことがわかる。
【0089】
(実施例7)
〈リチウムイオン二次電池の製作〉
〔1〕正極
LiNi
0.5Mn
1.5O
4を90質量部と、ケッチェンブラック5質量部と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量部との混合物と、NMPとを混合したスラリーを調製した。このスラリーをAl箔集電体に塗布し、大気中80℃で20分間乾燥した後、減圧下150℃で3時間乾燥させた。これをφ11mmの電極サイズに打ち抜いて、試作電池に適用した。この電極の容量は、140mAh/g換算で1.66mAhであった。
【0090】
〔2〕負極
実施例2の硫黄系活物質75質量部と、ケッチェンブラック5質量部と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量部との混合物と、NMPとを混合したスラリーを調製した。このスラリーをAl箔集電体に塗布し、大気中80℃で20分間乾燥した後、減圧下150℃で3時間乾燥させた。これをφ11mmの電極サイズに打ち抜いて、試作電池に適用した。この電極の容量は、500mAh/g換算で2.50mAhであった。
【0091】
プリドーピング用対極として、厚さ0.5mmの金属リチウム箔(本城金属社製)をφ14mmに打ち抜いたものを用いた。このプリドーピング用対極および負極を用いて、半電池を製作した。詳しくは、ドライルーム内で、セパレータ(「GA100」ADVANTEC社製)をプリドーピング用正極と負極との間に挟装して、電極体電池とした。この電極体電池を、ステンレス容器からなる電池ケース(CR2032型コイン電池用部材、宝泉株式会社製)に収容し、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを1:1体積比で混合した混合溶媒にLiPF
6を1mol/Lの濃度で溶解した非水電解質を注入した。
【0092】
この半電池を用い、開放電圧(約3V)から0.2C率定電流(100mA/g、0.50mA)で負極にLiを吸蔵させ、1Vに達したところで5分間電流を休止した後、同じく0.2C率定電流でLiを放出させる。その際、本実施例に用いる正極の容量(1.66mAh)を考慮して、1.7mAh分のLiを放出させたところで電流を休止した。
【0093】
〔3〕電池
この状態で半電池を解体し、プリドーピング用対極に代えて上記のLiNi
0.5Mn
1.5O
4を含む正極を用い、上記半電池と同様にしてコイン電池を作製した。
【0094】
<充放電容量・サイクル特性測定試験>
実施例7のリチウムイオン二次電池を、上限電圧3.8V、下限電圧1.5Vの間で充放電させた。電流値は0.2C率定電流(28mA/g、0.332mA)とした。7サイクル目までの充放電曲線を
図16に示す。
【0095】
初回放電容量は112mAh/g(正極重量当たり)、2nd放電容量は114mAh/gであり、サイクル特性の劣化も見られなかった。すなわち本発明の硫黄系活物質は、リチウムイオン二次電池の正極活物質ばかりでなく負極活物質としても有用であることがわかる。
【0096】
ところで単体の無機硫黄を活物質とした電極をもつリチウムイオン二次電池は、初期は大容量が得られるが、繰り返し充放電中に電解液に可溶なLi
2S
xが生成し、電解液に溶出して性能が急激に劣化するという問題がある。
【0097】
そこで-C-S結合によって硫黄を固定化した有機スルフィドを活物質としても、結合が切断されるとLi
2S
xが生成して電解液に溶出したり、一旦切断された-C-S結合は元に戻り難いなどの理由によって、サイクル特性の劣化が避けられない。
【0098】
またカーボン材料の細孔中に硫黄を固定した硫黄系活物質を用いても、硫黄と電解液とは容易に接触するために、Li
2S
xが電解液中に溶出してしまう。
【0099】
ところが実施例1を除く各実施例のリチウムイオン二次電池は、いずれもサイクル特性に優れ、繰り返し充放電後も高い容量が得られている。これは、正極又は負極からの硫黄の離脱が抑制されていることによる効果であり、硫黄と電解液との接触が抑制されているためと考えられる。
【0100】
すなわち本発明では、アミノ基とカルボキシル基との縮合反応によるポリマー生成と同時に硫黄が共存しているので、硫黄がポリマー中に取り込まれ、
図17に示すように、出口のない細孔中に硫黄が閉じこめられていると考えられる。そのため電解液と硫黄との直接接触が抑制され、Li
2S
xの溶出が防止されているため、サイクル特性に優れていると考えられる。なお一部の硫黄が電解液と直接接触可能であっても、その硫黄が初回の充放電時にLi
2S
xとして電解液に溶出した後は、安定した充放電容量が維持される。