特許第6099437号(P6099437)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京応化工業株式会社の特許一覧

特許6099437拡散剤組成物、及び不純物拡散層の形成方法
<>
  • 特許6099437-拡散剤組成物、及び不純物拡散層の形成方法 図000011
  • 特許6099437-拡散剤組成物、及び不純物拡散層の形成方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099437
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】拡散剤組成物、及び不純物拡散層の形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/225 20060101AFI20170313BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   H01L21/225 R
   H01L31/04 440
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-45618(P2013-45618)
(22)【出願日】2013年3月7日
(65)【公開番号】特開2014-175407(P2014-175407A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 元樹
(72)【発明者】
【氏名】神園 喬
【審査官】 柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−253127(JP,A)
【文献】 特開2011−243706(JP,A)
【文献】 特開2013−8953(JP,A)
【文献】 特開2010−62223(JP,A)
【文献】 特開2013−93563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/225
H01L 31/18
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板への不純物拡散剤層の形成に用いられる拡散剤組成物であって、
ホウ素化合物(A)と、
シリカとアルミナの少なくとも一方を含む微粒子(B)と、
シロキサン化合物(C)と、
有機溶媒(D)と、
下記一般式(11)で表される多価アルコール(E)と、を含有し、
前記微粒子(B)の含有量は、組成物全体に対して3質量%以上30質量%未満であることを特徴とする拡散剤組成物。
【化1】
[一般式(11)中、jは0〜3の整数である。kは1以上の整数である。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基である。R及びRが複数の場合は複数のR及びRはそれぞれ同じでも異なってもよい。またjが2以上である場合、複数のR及びRは必ず一つ以上の水酸基又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を含む。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。]
【請求項2】
スクリーン印刷法を用いた拡散材組成物の選択的な塗布による所定パターンの不純物拡散剤層の形成に用いられる請求項1に記載の拡散剤組成物。
【請求項3】
半導体基板に、請求項1又は2に記載の拡散剤組成物を選択的に塗布して所定パターンの不純物拡散剤層を形成するパターン形成工程と、
前記拡散剤組成物に含まれるホウ素化合物(A)のホウ素を前記半導体基板に拡散させる拡散工程と、
を含むことを特徴とする不純物拡散層の形成方法。
【請求項4】
前記パターン形成工程において、スクリーン印刷法により半導体基板に拡散剤組成物を印刷する請求項に記載の不純物拡散層の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散剤組成物、不純物拡散層の形成方法、及び太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トランジスタ、ダイオード、IC等の製造にはホウ素が拡散したP型領域を有するシリコン半導体デバイスが使用されている。従来、シリコン基板にホウ素を拡散する方法として、主に熱分解法、対向NB法、ドーパントホスト法、塗布法等が用いられてきた。これらの中でも塗布法は、高価な装置を必要とせず、均一な拡散が可能であり、量産性に優れているところから好適に採用されてきた。特にホウ素を含有する塗布液をスピンコーター等にて塗布する方法が好ましかった。
【0003】
近年、半導体製造関連分野、とりわけ太陽電池製造分野においては、低コスト化、高スループット化、環境負荷の低減が求められている。具体的には、例えばシリコン系太陽電池を製造する場合、拡散用塗布液の使用量をより少なくすること、また、より少ない工程数で同一シリコン基板内に部分的に拡散キャリア、拡散濃度の異なる領域を形成すること、すなわち部分拡散することが求められている。この場合、従来のスピンコート法では、基板あたりの塗布液の使用量が多く、高コストとなるとともに廃液量も多い。また部分拡散にあたって予めシリコン基板に拡散保護膜等を形成しておく必要が生じるため、工程数も多くなる。このような背景から、近年、スクリーン印刷法などの選択的塗布法によりシリコン基板に部分的に塗布液を印刷して、部分拡散を行う方法の開発がなされている。例えば、特許文献1には、スクリーン印刷用の不純物拡散用塗布液が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−8953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、上述した選択的塗布法で形成した拡散材組成物の印刷パターンの精度を向上させる上で、また不純物の拡散領域と非拡散領域との間の拡散コントラストを向上させる上で、従来の拡散材組成物には改善の余地があることを認識するに到った。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、拡散材組成物の印刷パターンの精度向上と拡散コントラストの向上とを図ることができる拡散剤組成物、当該拡散剤組成物を用いた不純物拡散層の形成方法、及び太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は拡散剤組成物である。この拡散材組成物は、半導体基板への不純物拡散剤層の形成に用いられる拡散剤組成物であって、ホウ素化合物(A)と、シリカとアルミナの少なくとも一方を含む微粒子(B)と、シロキサン化合物(C)と、有機溶媒(D)と、を含有する。微粒子(B)の含有量は、組成物全体に対して30質量%未満である。
【0008】
本発明の他の態様は不純物拡散層の形成方法である。この不純物拡散層の形成方法は、半導体基板に、上述した態様の拡散剤組成物を選択的に塗布して所定パターンの不純物拡散剤層を形成するパターン形成工程と、拡散剤組成物に含まれるホウ素化合物(A)のホウ素を半導体基板に拡散させる拡散工程と、を含む。
【0009】
本発明のさらに他の態様は太陽電池である。この太陽電池は、上述した態様の不純物拡散層の形成方法により不純物拡散層が形成された半導体基板を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、拡散材組成物の印刷パターンの精度向上と拡散コントラストの向上とを図ることができる拡散剤組成物、当該拡散剤組成物を用いた不純物拡散層の形成方法、及び太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(A)〜図1(C)は、実施の形態に係る不純物拡散層の形成方法を含む太陽電池の製造方法を説明するための工程断面図である。
図2図2(A)〜図2(D)は、実施の形態に係る不純物拡散層の形成方法を含む太陽電池の製造方法を説明するための工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
本実施の形態に係る拡散剤組成物は、半導体基板への不純物拡散剤層の形成に用いられる拡散剤組成物であって、特に、スクリーン印刷法を用いた選択的な塗布による所定パターンの不純物拡散剤層の形成に好適に用いられる拡散剤組成物である。本実施の形態に係る拡散剤組成物は、ホウ素化合物(A)と、微粒子(B)と、シロキサン化合物(C)と、有機溶媒(D)と、を含有する。また、拡散剤組成物は、任意成分として多価アルコール(E)をさらに含有する。以下、本実施の形態に係る拡散剤組成物の各成分について詳細に説明する。
【0014】
<ホウ素化合物(A)>
ホウ素化合物(A)は、ドーパントとして太陽電池の製造に用いられる化合物である。ホウ素化合物(A)は、III族(13族)元素の化合物であり、P型の不純物拡散成分であるホウ素を含有する。ホウ素化合物(A)は、ホウ素化合物(A)中のホウ素により半導体基板内にP型の不純物拡散層(不純物拡散領域)を形成することができる。より具体的には、ホウ素化合物(A)は、ホウ素化合物(A)中のホウ素によりN型の半導体基板内にP型の不純物拡散層を形成することができ、P型の半導体基板内にP型(高濃度P型)の不純物拡散層を形成することができる。
【0015】
ホウ素化合物(A)の濃度は、半導体基板に形成される不純物拡散層の層厚などに応じて適宜調整される。たとえば、ホウ素化合物(A)は、拡散剤組成物の全質量に対して0.1質量%以上含まれることが好ましく、1.0質量%以上含まれることがさらに好ましい。また、ホウ素化合物(A)は、拡散剤組成物の全質量に対して50質量%以下含まれることが好ましく、1〜20質量%の範囲がより好ましく、5〜15質量%の範囲がさらに好ましい。また、ホウ素化合物(A)中のホウ素原子が、拡散剤組成物の全質量に対して0.01〜10質量%の範囲で含まれることが好ましく、0.1〜3質量%の範囲で含まれることがより好ましい。
【0016】
ホウ素化合物(A)としては、例えば下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0017】
B(OR (1)
[一般式(1)中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基である。3つのRは同じでも異なってもよい。]
【0018】
がアルキル基の場合には、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましい。アリール基は、例えばフェニル基、ナフチル基等である。なお、アルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。
【0019】
ホウ素化合物(A)の具体例としては、例えばホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリペンチル、ホウ酸トリヘキシル、ホウ酸トリオクチル、ホウ酸トリフェニル等を挙げることができる。これらのホウ素化合物(A)の中でも、不純物拡散成分の凝集、析出の抑制という点から、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチルが好ましい。これらのホウ素化合物(A)は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
<微粒子(B)>
微粒子(B)は、シリカ(SiO)とアルミナの少なくとも一方を含む。拡散材組成物に微粒子(B)を含有させることで、基板上に印刷した拡散材組成物のパターンに滲みが生じることを抑制でき、印刷パターンの精度を向上させることができる。また、微粒子(B)としてシリカ微粒子及び/又はアルミナ微粒子を用いることで、微粒子(B)がコンタミネーションの原因となることを避けることができる。なお、アルミナと同様、価数がホウ素原子と等しい金属原子を含む化合物であれば、微粒子(B)として用いることができる。微粒子(B)は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
シリカ微粒子としては、公知の方法によって得られるシリカ微粒子を挙げることができる。公知の方法としては、真空中で金属シリコンを溶融、気化させ、酸化性雰囲気に導入して、シリカ微粒子を得る方法、金属シリコン粉末を、酸素を含む火炎の中で蒸発、酸化させて、シリカ微粒子を得る方法、テトラクロロシランを気化し、バーナー火炎中に噴出、酸化して、シリカ微粒子を得る方法(特公昭47−46274号公報等)、ケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ金属塩を原料とする水ガラス法、及びテトラエトキシシラン等のアルコキシシランを原料とするアルコキシシラン法等を挙げることができる。
【0022】
シリカ微粒子は、例えば、アエロジルシリーズ(日本アエロジル株式会社製、「アエロジル」は登録商標)、レオロシールシリーズ(株式会社トクヤマ製、「レオロシール」は登録商標)、WACKER HDKシリーズ(旭化成ワッカー株式会社製、「WACKER」は登録商標)、Cab−O−Silシリーズ(Cabot Corporation製、「Cab−O−Sil」は登録商標)、アデライトシリーズ(株式会社ADEKA製、「アデライト」は登録商標)、カタロイド−Sシリーズ(触媒化成工業株式会社製、「カタロイド」は登録商標)、クォートロンシリーズ(扶桑化学工業株式会社製、「クォートロン」は登録商標)、及びスノーテックスシリーズ(日産化学工業株式会社製)等の市販品を用いることができる。
【0023】
アルミナ微粒子としては、公知の気相法や液相法等によって得られるアルミナ微粒子を挙げることができる。公知の気相法としては、真空中で金属アルミニウムを溶融、気化させ、酸化性雰囲気に導入して、アルミナ微粒子を得る方法、金属アルミニウム粉末を、酸素を含む火炎の中で蒸発、酸化させて、アルミナ微粒子を得る方法、及び塩化アルミニウムを気化し、バーナー火炎中に噴出、酸化して、アルミナ微粒子を得る方法(特表2005−506269号公報等)等を挙げることができる。公知の液相法としては、アルキルアルミニウム又はアルコキシアルミニウムの加水分解法(化学総説No48,1985、超微粒子(日本化学会編)173頁〜175頁、株式会社学会出版センター、1985年発行)、アンモニウムミョウバン熱分解法、アンモニウムアルミニウム炭酸塩熱分解法、アルミニウム塩をアルカリ中和する方法、及びアルミン酸塩を加水分解する方法等を挙げることができる。
【0024】
アルミナ微粒子は、例えば、Aeroxideシリーズ(Alu−c及びAl−65等、デグサ社製、「Aeroxide」は登録商標)、SpctrAlシリーズ(51、81、100等、キャボット社製)、CAB−O−SPERSEシリーズ(SpctrAlシリーズの水分散体、キャボット社製)、AKPシリーズ(住友化学株式会社製、「AKP」は登録商標)、タイミクロンシリーズ(大明化学株式会社製)、DISPERALシリーズ(Sasol社製、「DISPERAL」は登録商標)、及びDISPALシリーズ(Sasol社製、「DISPAL」は登録商標)等の市販品を用いることができる。
【0025】
アルミナ微粒子は、酢酸、乳酸、ぎ酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散された分散液の形態(例えば、アルミナゾル)で使用することもできる。アルミナゾルは、例えば、カタロイド−Aシリーズ(触媒化成工業株式会社製)及びアルミナゾルシリーズ(日産化学工業株式会社製)等の市販品を用いることができる。
【0026】
微粒子(B)の含有量は、組成物全体に対して30質量%未満である。微粒子(B)の含有量を30質量%未満とすることで、基板上に形成した不純物拡散剤層にクラックが発生することを抑制できる。また、これにより不純物の拡散領域と非拡散領域との間の拡散コントラストが低下することを抑制できる。また、微粒子(B)の含有量は、組成物全体に対して0.1質量%以上である。微粒子(B)の含有量は、組成物全体に対して3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。微粒子(B)の含有量を3質量%以上とすることで、印刷パターンの精度をより一層向上させることができる。
【0027】
微粒子(B)の平均粒径は、7nm〜30nmが好ましい。微粒子(B)の平均粒径を7nm以上とすることで、微粒子(B)の凝集を抑制することができる。一方、微粒子(B)の平均粒径を30nm以下とすることで、増粘性、チクソトロピー性の低下を抑制することができる。また、微粒子(B)は疎水性、親水性のいずれであってもよいが、疎水性であることが好ましい。ここでいう「親水性」とは、粒子表面に水酸基(OH基)を持つことをいい、「疎水性」とは粒子表面にメチル基やトリメチルシリル基等を持つことをいう。微粒子(B)が疎水性であることにより、シロキサン化合物(C)との相溶性が高まり、印刷精度を高めることができる。なお、前記「平均粒径」は、一次粒子の平均径である。
【0028】
<シロキサン化合物(C)>
シロキサン化合物(C)は、基板上に印刷した拡散材組成物中でネットワーク構造を形成する。そのため、拡散材組成物にシロキサン化合物(C)を含有させることで、基板上に塗布した拡散剤組成物の膜からホウ素が外部へ飛散し、拡散剤組成物の未塗布領域に付着して拡散する、いわゆるアウトディフュージョンの発生を抑制することができる。これにより、不純物の拡散領域と非拡散領域との間の拡散コントラストを向上させることができる。
【0029】
シロキサン化合物(C)は、下記一般式(2)で表されるアルコキシシランを加水分解し、脱水縮合して得られる反応生成物(C1)が挙げられる。
Si(OR4−n (2)
[一般式(2)中、Rは水素原子又は有機基である。Rは有機基である。nは1又は2の整数である。Rが複数の場合は複数のRは同じでも異なってもよく、(OR)が複数の場合は複数の(OR)は同じでも異なってもよい。]
【0030】
及びRの有機基としては、例えばアルキル基、アリール基、アリル基、グリシジル基等を挙げることができる。これらの中では、アルキル基及びアリール基が好ましい。また、Rは、拡散コントラスト向上の点から炭素数2以上の有機基がより好ましく、芳香環、複素環、橋かけ環等の環構造を有する、嵩高い構造であることがさらに好ましい。Rの有機基は、例えば炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、反応性の点から炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。R及びRのアリール基は、例えば炭素数6〜20のものが好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0031】
上記一般式(2)において、nが1の場合のアルコキシシラン(i)は、例えば下記一般式(3)で表される。
【0032】
31Si(OR32(OR33(OR34 (3)
[一般式(3)中、R31は、上記Rと同じ水素原子又は有機基を表す。R32、R33及びR34は、それぞれ独立に上記Rと同じ有機基を表す。e、f及びgは、0≦e≦3、0≦f≦3、0≦g≦3であって、かつe+f+g=3の条件を満たす整数である。]
【0033】
アルコキシシラン(i)の具体例としては、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリペンチルオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、エチルトリペンチルオキシシラン、エチルトリフェニルオキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、プロピルトリペンチルオキシシラン、プロピルトリフェニルオキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、ブチルトリペンチルオキシシラン、ブチルトリフェニルオキシシラン、メチルモノメトキシジエトキシシラン、エチルモノメトキシジエトキシシラン、プロピルモノメトキシジエトキシシラン、ブチルモノメトキシジエトキシシラン、メチルモノメトキシジプロポキシシラン、メチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、メチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、エチルモノメトキシジプロポキシシラン、エチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、エチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、プロピルモノメトキシジプロポキシシラン、プロピルモノメトキシジペンチルオキシシラン、プロピルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ブチルモノメトキシジプロポキシシラン、ブチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ブチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、メチルメトキシエトキシプロポキシシラン、プロピルメトキシエトキシプロポキシシラン、ブチルメトキシエトキシプロポキシシラン、メチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、エチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、プロピルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、ブチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリペンチルオキシシラン等が挙げられる。なお、上記具体例における炭素数3以上のアルキル基又はアルコキシ基については、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。ブチル(又はブトキシ)基について、好ましくはn−ブチル(n−ブトキシ)基である。以降の具体例についても同様である。
【0034】
上記一般式(2)において、nが2の場合のアルコキシシラン(ii)は、例えば下記一般式(4)で表される。
【0035】
4142Si(OR43(OR44 (4)
[一般式(4)中、R41及びR42は、上記Rと同じ水素原子又は有機基を表す。R43及びR44は、それぞれ独立に上記Rと同じ有機基を表す。h及びiは、0≦h≦2、0≦i≦2であって、かつh+i=2の条件を満たす整数である。]
【0036】
アルコキシシラン(ii)の具体例としては、例えばメチルジメトキシシラン、メチルメトキシエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルメトキシプロポキシシラン、メチルメトキシペンチルオキシシラン、メチルメトキシフェニルオキシシラン、エチルジプロポキシシラン、エチルメトキシプロポキシシラン、エチルジペンチルオキシシラン、エチルジフェニルオキシシラン、プロピルジメトキシシラン、プロピルメトキシエトキシシラン、プロピルエトキシプロポキシシラン、プロピルジエトキシシラン、プロピルジペンチルオキシシラン、プロピルジフェニルオキシシラン、ブチルジメトキシシラン、ブチルメトキシエトキシシラン、ブチルジエトキシシラン、ブチルエトキシプロポキシシシラン、ブチルジプロポキシシラン、ブチルメチルジペンチルオキシシラン、ブチルメチルジフェニルオキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジペンチルオキシシラン、ジメチルジフェニルオキシシラン、ジメチルエトキシプロポキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルメトキシプロポキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルエトキシプロポキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジペンチルオキシシラン、ジプロピルジフェニルオキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジブチルジプロポキシシラン、ジブチルメトキシペンチルオキシシラン、ジブチルメトキシフェニルオキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルエチルジプロポキシシラン、メチルエチルジペンチルオキシシラン、メチルエチルジフェニルオキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、メチルブチルジメトキシシラン、メチルブチルジエトキシシラン、メチルブチルジプロポキシシラン、メチルエチルエトキシプロポキシシラン、エチルプロピルジメトキシシラン、エチルプロピルメトキシエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルメトキシエトキシシラン、プロピルブチルジメトキシシラン、プロピルブチルジエトキシシラン、ジブチルメトキシエトキシシラン、ジブチルメトキシプロポキシシラン、ジブチルエトキシプロポキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルメトキシエトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルメトキシプロポキシシラン、フェニルメトキシペンチルオキシシラン、フェニルメトキシフェニルオキシシラン等が挙げられる。
【0037】
また、シロキサン化合物(C)は、上記一般式(2)において、nが0であるアルコキシシランを出発原料として含むことが好ましい。上記一般式(2)において、nが0の場合のアルコキシシラン(iii)は、例えば下記一般式(5)で表される。
【0038】
Si(OR21(OR22(OR23(OR24 (5)
[一般式(5)中、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立に上記Rと同じ有機基を表す。a、b、c及びdは、0≦a≦4、0≦b≦4、0≦c≦4、0≦d≦4であって、かつa+b+c+d=4の条件を満たす整数である。]
【0039】
アルコキシシラン(iii)の具体例としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラペンチルオキシシラン、テトラフェニルオキシシラン、トリメトキシモノエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリエトキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシトリブトキシシラン、モノメトキシトリペンチルオキシシラン、モノメトキシトリフェニルオキシシラン、ジメトキシジプロポキシシラン、トリプロポキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノブトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン、トリエトキシモノプロポキシシラン、ジエトキシジプロポキシシラン、トリブトキシモノプロポキシシラン、ジメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジブトキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジブトキシモノエトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシモノエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン等のテトラアルコキシシランが挙げられ、中でも反応性の点からテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
【0040】
反応生成物(C1)は、例えば上記アルコキシシラン(i)〜(ii)の中から選ばれる1種又は2種以上と、任意成分としての上記アルコキシシラン(iii)とを、酸触媒、水、有機溶剤の存在下で加水分解し脱水縮合する方法で調製することができる。
【0041】
上記のように、アルコキシシランの加水分解反応には水を使用するが、本実施の形態に係る拡散剤組成物では、組成物全体を基準とする水の含有量は1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、実質的に水を含まないことがさらに好ましい。これによれば、拡散剤組成物の保存安定性をより高めることができる。
【0042】
酸触媒は有機酸、無機酸のいずれも使用することができる。無機酸としては、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等を使用することができ、中でも、リン酸、硝酸が好適である。有機酸としては、ギ酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、氷酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、n−酪酸等のカルボン酸、及び硫黄含有酸残基を有する有機酸を使用することができる。硫黄含有酸残基を有する有機酸としては、有機スルホン酸などが挙げられ、それらのエステル化物としては有機硫酸エステル、有機亜硫酸エステル等が挙げられる。これらの中で、特に有機スルホン酸、たとえば、下記一般式(6)で表される化合物が好ましい。
【0043】
13−X (6)
[一般式(6)中、R13は、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Xはスルホン酸基である。]
【0044】
上記一般式(6)において、R13としての炭化水素基は、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。この炭化水素基は、飽和のものでも不飽和のものでもよいし、直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよい。R13の炭化水素基が環状の場合、たとえばフェニル基、ナフチル基、アントリル基等の芳香族炭化水素基が好ましく、中でもフェニル基が好ましい。この芳香族炭化水素基における芳香環には、置換基として炭素数1〜20の炭化水素基が1個又は複数個結合していてもよい。当該芳香環上の置換基としての炭化水素基は、飽和のものでも不飽和のものでもよいし、直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよい。また、R13としての炭化水素基は、1個又は複数個の置換基を有していてもよく、この置換基としては、たとえばフッ素原子等のハロゲン原子、スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基等が挙げられる。
【0045】
上記酸触媒は、水の存在下でアルコキシシランを加水分解する際の触媒として作用するが、使用する酸触媒の量は、加水分解反応の反応系中の濃度が1〜1000ppm、特に5〜800ppmの範囲になるように調製することが好ましい。水の添加量は、これによってシロキサンポリマーの加水分解率が変わるので、得ようとする加水分解率に応じて決められる。
【0046】
加水分解反応の反応系における有機溶剤は、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール(IPA)、n−ブタノールのような一価アルコール、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネートのようなアルキルカルボン酸エステル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのモノエーテル類あるいはこれらのモノアセテート類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトンのようなケトン類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルのような多価アルコールの水酸基をすべてアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
このような反応系でアルコキシシランを加水分解、脱水縮合反応させることにより、反応生成物(C1)が得られる。当該加水分解、脱水縮合反応は、通常1〜100時間程度行うが、反応時間を短縮させるには、80℃を超えない温度範囲で加熱することが好ましい。
【0048】
反応終了後、合成された反応生成物(C1)と、反応に用いた有機溶剤を含む反応溶液が得られる。反応生成物(C1)は、従来公知の方法により有機溶媒と分離し、乾燥した固体状態で、または必要なら溶媒を置換した溶液状態で、上記の方法により得ることができる。
【0049】
また、シロキサン化合物(C)としては、下記一般式(7)で表されるシロキサンポリマー(C2)が挙げられる。
【0050】
【化1】
【0051】
一般式(7)中、R01は、エチレン性不飽和二重結合を含有する基であり、Rは炭素数1〜9のアルキレン基であり、異なるRを有する場合があってもよく、R02はアルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は水素原子であり、異なるR02を有する場合があってもよく、m:pは1:99〜100:0の範囲であり、好ましくは10:90〜90:10の範囲である。m:pはSi含有率や膜厚調整等を考慮して適宜設定することができる。
【0052】
一般式(7)中、R01におけるエチレン性不飽和二重結合を含有する基としては、末端にエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましく、特に、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましい。
【0053】
一般式(7)中、Rにおける炭素数1〜9のアルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜7、さらに好ましくは炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基であり、特に好ましくは、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基である。
【0054】
一般式(7)中、R02におけるアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基;1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基等の分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基等の環状のアルキル基;が挙げられる。好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0055】
一般式(7)中、R02におけるアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が挙げられ、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基であり、より好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。
【0056】
一般式(7)中、R02におけるアリール基としては、たとえば、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等が挙げられる。好ましくはフェニル基である。また、R02のアリール基はアルキル基等の置換基を有していてもよい。
【0057】
一般式(7)で表されるシロキサンポリマーとして、特に好ましくは下記式(8)で表されるシロキサンポリマー(C2−1)、下記式(9)で示されるシロキサンポリマー(C2−2)、あるいは下記式(10)で示されるシロキサンポリマー(C2−3)が挙げられる。式中、m及びpは前記と同様である。またs+t=p、u+v=pである。シロキサン化合物(C)の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、好ましくは500〜30000であり、より好ましくは1000〜10000である。
【0058】
【化2】
【0059】
【化3】
【0060】
【化4】
【0061】
シロキサン化合物(C)の含有量は、組成物全体に対して10質量%以上50質量%以下の範囲であることが好ましく、15質量%以上35質量%以下の範囲であることがより好ましい。シロキサン化合物(C)の含有量を10質量%以上とすることで、拡散剤組成物の拡散選択性がより良好となり、当該含有量を50質量%以下とすることで、拡散剤組成物に含まれる他成分との含有量バランスを良好にすることができる。
【0062】
<有機溶媒(D)>
有機溶媒(D)の含有量は、組成物全体を基準として、15〜70質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましい。また、有機溶媒(D)は、沸点が190℃以上の有機溶媒(D1)を含むことが好ましい。有機溶媒(D1)の具体例としては、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、グリセリン、ベンジルアルコール、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、ジヘキシルエーテル、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、テルピネオールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
実施の形態に係る拡散剤組成物は、上述した有機溶媒(D1)以外の溶剤を含んでもよい。ただし、有機溶媒(D)全体に対する有機溶媒(D1)の含有量は70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0064】
有機溶媒(D1)以外の溶剤、すなわち沸点190℃未満の有機溶媒(D2)としては、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等の多価アルコール類の誘導体;その他酢酸ブチル、アセト酢酸エチル、乳酸ブチル、シュウ酸ジエチル等のエステル類が挙げられる。これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−ヘプタノン、酢酸ブチルが好ましい。
【0065】
<多価アルコール(E)>
多価アルコール(E)は、下記一般式(11)で表される。
【0066】
【化5】
[一般式(11)中、jは0〜3の整数である。kは1以上の整数である。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基である。R及びRが複数の場合は複数のR及びRはそれぞれ同じでも異なってもよい。またjが2以上である場合、複数のR及びRは必ず一つ以上の水酸基又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を含む。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。]
【0067】
多価アルコール(E)の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、マンニトール等を挙げることができる。これらの多価アルコールは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
P型の不純物拡散成分であるホウ素化合物(A)をホウ酸エステルの形で拡散剤組成物に含有させるとともに、特定構造の多価アルコール(E)を拡散剤組成物に含有させることで、拡散剤組成物中で多価アルコール(E)とホウ素化合物(A)が効率的に錯体を形成し、これによりホウ素化合物(A)の加水分解が抑制され、ホウ素化合物(A)の凝集及び析出を抑制できると考えられる。また、ホウ素化合物(A)の凝集及び析出を抑制できるため、アウトディフュージョンの発生を抑制することができる。
【0069】
拡散剤組成物中のホウ素化合物(A)及び多価アルコール(E)の含有比は、ホウ素化合物(A)の含有量が多価アルコール(E)の含有量の5倍モル以下であることが好ましく、2倍モル以下であることがより好ましく、2〜1倍モルの範囲がさらに好ましい。また、ホウ素化合物(A)が効果的に錯体を形成できるという点から、多価アルコール(E)の含有量がホウ素化合物(A)の含有量より多いことが好ましい。多価アルコール(E)の含有量は、組成物全体に対して60質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下の範囲であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0070】
本実施の形態に係る拡散剤組成物は、その他の成分として一般的な界面活性剤や消泡剤等を含有してもよい。例えば、界面活性剤を含むことによって、塗布性、平坦化性、展開性を向上させることができ、塗布後に形成される拡散剤組成物層の塗りムラの発生を減少させることができる。このような界面活性剤として、従来公知のものを用いることができるが、シリコーン系の界面活性剤が好ましい。また、界面活性剤は、拡散剤組成物全体に対し、500〜3000質量ppm、特に600〜2500質量ppmの範囲で含まれることが好ましい。さらに2000質量ppm以下であると、拡散処理後の拡散剤組成物層の剥離性に優れるため、より好ましい。界面活性剤は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0071】
拡散剤組成物中に含まれる金属不純物(上述したホウ素化合物(A)、微粒子(B)、及びシロキサン化合物(C)に含まれる金属成分以外)の濃度は、500ppb以下であることが好ましい。これにより、金属不純物の含有によって生じる光起電力効果の効率の低下を抑えることができる。
【0072】
<拡散剤組成物の調製方法>
本実施の形態に係る拡散剤組成物は、上述した各成分を従来公知の方法により、任意の順番で、均一な溶液となるよう混合することにより調製することができる。
【0073】
<不純物拡散層の形成方法及び太陽電池の製造方法>
図1(A)〜図1(C)及び図2(A)〜図2(D)を参照して、半導体基板に不純物拡散層を形成する方法と、当該方法により不純物拡散層が形成された半導体基板を備える太陽電池の製造方法について説明する。図1(A)〜図1(C)及び図2(A)〜図2(D)は、実施の形態に係る不純物拡散層の形成方法を含む太陽電池の製造方法を説明するための工程断面図である。
【0074】
<P型不純物拡散剤層の形成:パターン形成工程>
図1(A)に示すように、半導体基板1として、例えばN型シリコンウエハを用意する。半導体基板1は、一方の表面にテクスチャ部1aを有する太陽電池用基板である。なお、半導体基板1の他方の表面には、テクスチャ部が設けられてもよいし、設けられなくてもよい。テクスチャ部1aは、微細な凹凸が連続的に並ぶ構造を有し、この構造にはピッチや高さが同程度の凹凸が規則性を持って並んだものや、ピッチや高さが様々な凹凸がランダムに並んでいるものが含まれる。凹凸のピッチ(凸部の頂点かる凹部の最深部までの面方向の距離)は、例えば1〜10μmである。凹凸の高さ(凹部の最深部から凸部の頂点までの高さ)は、例えば1〜10μmである。テクスチャ部1aにより、半導体基板1の表面における光の反射を防止することができる。テクスチャ構造は、周知のウェットエッチング法等を用いて形成することができる。
【0075】
そして、テクスチャ部1aが設けられた側とは反対側の半導体基板1の表面上に、P型の不純物拡散成分であるホウ素を含有する、本実施の形態に係る拡散剤組成物(P型拡散剤組成物)を選択的に塗布して所定パターンのP型不純物拡散剤層2を形成する。半導体基板1へのP型拡散剤組成物の選択的塗布(印刷)は、スクリーン印刷法により実施されることが好ましい。なお、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法、ロールコート印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法等により実施することもできる。所定パターンのP型不純物拡散剤層2を形成した後、半導体基板1をホットプレート上に載置し、例えば150℃で3分間のベーク処理を施してP型不純物拡散剤層2を乾燥させる。
【0076】
<P型不純物拡散剤層の焼成>
次に、図1(B)に示すように、P型不純物拡散剤層2が設けられた半導体基板1を加熱炉200に投入する。加熱炉200は、例えば従来公知の縦型拡散炉であり、ベース部201と、外筒202と、載置台204と、支持部材206と、ガス供給路208と、ガス排出路210と、ヒータ212とを備える。
【0077】
外筒202は、軸方向が鉛直方向に平行となるようにベース部201に組み付けられ、ベース部201と外筒202とで炉室203が形成される。載置台204は、平面視円形で炉室203の中央に配置される。支持部材206は、柱状で載置台204の外縁部に周方向に間隔をあけて複数立設されている。各支持部材206の側面には軸方向に間隔をあけて複数の溝が設けられている。半導体基板1は、外縁部が支持部材206の溝に係合することで、支持部材206によって支持される。ガス供給路208は、炉室203に雰囲気ガスを供給する管路であり、一端が雰囲気ガスタンク(図示せず)に、他端が外筒202の開口202aに連結される。ガス排出路210は、炉室203内のガスを排出する管路であり、一端が外筒202の開口202bに連結される。ヒータ212は、外筒202の外周に設けられ、炉室203内を加熱する。
【0078】
複数の半導体基板1を炉室203内に配置して、ガス供給路208から炉室203内に、雰囲気ガスとして例えば酸素(O)ガスを供給する。そして、Oガス雰囲気下で半導体基板1を加熱し、P型不純物拡散剤層2を焼成して、P型の不純物拡散成分を含むシリカ系被膜を形成する。前記雰囲気ガスとしては、Oガスの他に、窒素(N)ガスや、NとOの混合ガスなどを使用することができる。焼成により、P型不純物拡散剤層2が焼き締められる。焼成におけるP型不純物拡散剤層2の加熱温度、すなわち焼成温度は、好ましくは400℃以上900℃以下である。焼成温度を400℃以上とすることで、P型不純物拡散剤層2をより確実に焼成することができる。また、焼成温度を900℃以下とすることで、P型不純物拡散剤層2からホウ素が外部拡散してしまうことをより確実に抑制することができる。焼成時間は、好ましくは10分以上60分以下である。
【0079】
なお、P型不純物拡散剤層2の焼成は加湿条件下で行われてもよい。例えば、90℃に加熱された水に通してバブリングした後、120℃に加熱されたチューブを通過させた雰囲気ガス(約37.8%RH)を炉室203内に供給することで加湿することができる。
【0080】
<P型不純物拡散成分の拡散:拡散工程>
次に、ガス供給路208から炉室203内に、雰囲気ガスとして例えばNとOの混合ガスを供給する。混合ガスにおけるNとOの混合比は、例えば95:5である。そして、混合ガス雰囲気下で半導体基板1を焼成温度より高い温度で加熱して、拡散剤組成物に含まれるホウ素化合物(A)のホウ素を半導体基板1に拡散させて、半導体基板1の表面にP型不純物拡散層4(第1不純物拡散層)を形成する(図1(C)参照)。半導体基板1の加熱温度、すなわち熱拡散温度は、好ましくは950℃以上1100℃以下である。熱拡散温度を950℃以上とすることで、不純物拡散成分をより確実に熱拡散させることができる。また、熱拡散温度を1100℃以下とすることで、所望の拡散領域を越えて不純物拡散成分が半導体基板1内に拡散してしまうこと、及び半導体基板1が熱によりダメージを受けることをより確実に防ぐことができる。拡散時間は、好ましくは10分以上60分以下である。なお、拡散炉に代えて、慣用のレーザーの照射により半導体基板1を加熱してもよい。
【0081】
拡散工程の後、P型不純物拡散層4の上に残存したP型不純物拡散剤層2を除去する。P型不純物拡散剤層2の除去工程において、半導体基板1は、例えば20%フッ酸水溶液中に10分間浸漬された後、水洗いされ、乾燥される。
【0082】
<N型不純物拡散剤層の形成>
次に、図2(A)に示すように、半導体基板1を加熱炉200から取り出して放冷した後、P型不純物拡散層4が形成された領域を除く半導体基板1の表面上に、N型の不純物拡散成分を含有するN型拡散剤組成物を選択的に塗布し、N型不純物拡散剤層3を形成する。N型拡散剤組成物は、従来公知のものを使用することができる。半導体基板1へのN型拡散剤組成物の選択的塗布は、例えばインクジェット印刷法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法、ロールコート印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法等により実施することができる。所定パターンのN型不純物拡散剤層3を形成した後、半導体基板1をホットプレート上に載置し、例えば150℃で3分間のベーク処理を施し、N型不純物拡散剤層3を乾燥させる。
【0083】
<N型不純物拡散剤層の焼成及びN型不純物拡散成分の拡散>
次に、N型不純物拡散剤層3が設けられた半導体基板1を図1(B)に示した加熱炉200に投入する。複数の半導体基板1を炉室203内に配置して、P型不純物拡散剤層2の焼成条件と同様な条件下にて、N型不純物拡散剤層3を焼成する。その後、P型不純物拡散成分の拡散条件と同様な条件下にて、N型不純物拡散成分を拡散させて、半導体基板1の表面にN型不純物拡散層5(第2不純物拡散層)を形成する(図2(B)参照)。その後、加熱炉200から取り出した半導体基板1をフッ酸等の剥離液に浸漬させて、N型不純物拡散層5の上に残存したN型不純物拡散剤層3を除去する。以上の工程により、図2(B)に示すように、P型不純物拡散層4及びN型不純物拡散層5が表面に形成された半導体基板1を得ることができる。
【0084】
<太陽電池の形成>
次に、図2(C)に示すように、周知の化学気相成長法(CVD法)、例えばプラズマCVD法等を用いて、半導体基板1のP型不純物拡散層4及びN型不純物拡散層5が形成された側の表面に、シリコン窒化膜(SiN膜)からなるパッシベーション層6を形成する。このパッシベーション層6は、反射防止膜としても機能する。また、テクスチャ部1aの表面上に、シリコン窒化膜からなる反射防止膜7を形成する。
【0085】
次に、図2(D)に示すように、周知のフォトリソグラフィ法及びエッチング法により、パッシベーション層6を選択的に除去して、P型不純物拡散層4及びN型不純物拡散層5の所定領域が露出するようにコンタクトホール6aを形成する。そして、例えば電解めっき法及び無電解めっき法や、金属ペーストを用いたスクリーン印刷等により、P型不純物拡散層4上に設けられたコンタクトホール6aに金属を充填して、P型不純物拡散層4と電気的に接続された電極8(第1電極)を形成する。また、同様にして、N型不純物拡散層5上に設けられたコンタクトホール6aに、N型不純物拡散層5と電気的に接続された電極9(第2電極)を形成する。以上の工程により、本実施の形態に係る太陽電池10を製造することができる。なお、本実施の形態に係る不純物拡散成分の拡散方法は、太陽電池以外の用途に用いられる半導体基板を形成する際にも採用することができる。なお、P型不純物拡散層4の形成とN型不純物拡散層5の形成の順序は特に限定されず、N型不純物拡散層5を先に形成してもよいし、製造スループット向上の点でP型不純物拡散層4とN型不純物拡散層5を同時に形成してもよい。P型不純物拡散層4及びN型不純物拡散層5を同時に形成する場合、一方の不純物拡散剤層のパターン形成工程を行った後、他方の不純物拡散剤層のパターン形成工程を行う前に、前記一方の不純物拡散剤層の焼成工程を経ることが好ましい。当該焼成工程の後、他方の不純物拡散剤層のパターン形成工程及び両方の不純物拡散剤層の拡散工程を同時に行い、P型不純物拡散層4とN型不純物拡散層5を同時に形成することができる。また、先に形成される不純物拡散剤層のパターンに用いられる拡散剤組成物は、後述する特性の点で、本実施の形態に係るP型の拡散剤組成物であることが好ましい。
【0086】
以上説明したように、本実施の形態に係る拡散剤組成物は、ホウ素化合物(A)と、シリカとアルミナの少なくとも一方を含む微粒子(B)と、シロキサン化合物(C)と、有機溶媒(D)と、を含有する。そして、微粒子(B)の含有量は、組成物全体に対して30質量%未満である。これにより、基板上に印刷した拡散材組成物のパターンに滲みが生じることを抑制できるため、印刷パターンの精度を向上させることができる。また、基板上に塗布した拡散剤組成物層からのホウ素のアウトディフュージョンを抑制することができるため、不純物の拡散領域と非拡散領域との間の拡散コントラストを向上させることができる。さらに、基板上に形成した不純物拡散剤層にクラックが発生することを抑制することができるため、拡散コントラストの低下を抑制することができる。また、微粒子(B)により拡散剤組成物の粘度をスクリーン印刷に適した粘度とすることができるため、スクリーン印刷法による拡散剤組成物の選択的塗布に好適に採用することができる。
【0087】
また、本実施の形態に係る不純物拡散層の形成方法では、印刷パターンの滲みやアウトディフュージョンの発生を抑制することができる上述した拡散剤組成物を用いるため、より高精度に不純物拡散層を形成することができる。また、本実施の形態に係る太陽電池は、より高精度な不純物拡散層を形成することができる上述した不純物拡散層の形成方法を用いて形成されるため、より高性能で信頼性の高い太陽電池となる。
【0088】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれるものである。
【実施例】
【0089】
以下、本発明の実施例を説明するが、これら実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
【0090】
<拡散剤組成物の調製>
実施例1〜5、参考例6、比較例1〜3に係る拡散剤組成物の成分組成及び含有比を表1に示す。表中の各数値の単位は質量%であり、各成分の割合は拡散剤組成物の全質量に対する割合である。
【0091】
【表1】
【0092】
表1中の記号、略語は以下の化合物を示す。
PPSQ(SR−23):下記式(12)で表される構造(wは1以上の整数)を有するポリフェニルシルセスキオキサン(小西化学製、製品名「SR−23」)
X−40−9272B:上記式(9)においてm=22、s=21、t=57である構造を有するシロキサン化合物(信越化学社製、製品名「X−40−9272B」)
KR−401N:上記式(10)においてm=8、u=42、v=50である構造を有するシロキサン化合物(信越化学社製、製品名「KR−401N」)
EDGAC:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
PVA:ポリビニルアルコール
【0093】
【化6】
【0094】
各実施例、参考例及び各比較例では、ホウ素化合物(A)としてホウ酸トリメチル(トリメチルボレート)を、微粒子(B)としてシリカ微粒子(日本アエロジル製、製品名「AEROSIL R812」)を、有機溶媒(D)としてEDGACを、多価アルコール(E)としてトリメチロールプロパン(CHCHC(CHOH))を、それぞれ使用した。使用したシリカ微粒子は、疎水性の微粒子であり、平均粒径が7nmであった。また、シロキサン化合物(C)については、実施例1,2,5、参考例6及び比較例1,2ではPPSQ(SR−23)を、実施例3ではX−40−9272Bを、実施例4ではKR−410Nを、それぞれ使用した。比較例3では、シロキサン化合物(C)に代えて、アクリル樹脂として下記式(13)で表される構造を有するイソブチルメタクリレートとヒドロキシエチルメタクリレートの共重合ポリマーを使用した。比較例4では、シロキサン化合物(C)に代えて、PVAを使用した。なお、PVAはEDGACに溶解しないため、比較例4では溶媒としてグリセリンと水を使用した。
【0095】
【化7】
【0096】
実施例1の拡散材組成物を、以下のようにして調製した。すなわち、まずトリメチロールプロパンと、トリメチルボレートとからなるドーパント液を作製した。次に、シロキサン樹脂PPSQ(SR−23)をEDGACに溶解させ、シロキサン樹脂の50%溶液(以下、樹脂溶液という)を作製した。その後、プラネタリーミキサーにシリカ微粒子28g、ドーパント液56g、樹脂溶液84g、EDGAC42gを加えた。そして、攪拌して混合することで、ペースト状の拡散剤組成物を得た。他の実施例、参考例及び比較例の拡散材組成物についても、表1の成分組成及び含有量にしたがって、実施例1と同様の手順で拡散材組成物を調製した。
【0097】
<印刷パターン精度の評価>
各実施例、参考例及び各比較例の拡散材組成物を、スクリーン印刷機(MT−27444、 マイクロテック株式会社製)を用いて、シリコンウェハの表面にスクリーン印刷した。スクリーン印刷には、500マイクロメートル(μm)幅のラインパターンを有するスクリーン版を用いた。また、印刷速度を300mm/s、基板温度を23℃、乳剤厚を5マイクロメートルとした。その後、シリコンウェハをホットプレート上に載置し、150℃で3分間加熱して印刷パターンを乾燥させた。各実施例、参考例及び各比較例の印刷パターンを光学顕微鏡を用いて観察し、印刷パターンのクラックの有無を確認するとともに印刷パターンのライン幅の平均値を計測して、印刷パターン精度(印刷特性)を評価した。クラックが確認されない場合を良好(A)とし、クラックが確認された場合を不適当(B)とした。結果を表1に示す。
【0098】
<拡散コントラストの評価>
各実施例、参考例及び各比較例の拡散材組成物を、スクリーン印刷機(MT−27444、 マイクロテック株式会社製)を用いて、N型のシリコンウェハの表面にスクリーン印刷した。スクリーン印刷には、10mm幅のラインパターンを有するスクリーン版を用いた。また、印刷速度を300mm/s、基板温度を23℃、乳剤厚を5マイクロメートルとした。その後、シリコンウェハをホットプレート上に載置し、150℃で3分間加熱して印刷パターンを乾燥させた。そして、シリコンウェハを加熱炉に投入し、Oガス雰囲気下、650℃で15分間加熱して印刷パターンを焼成した。続いて所定速度で昇温し、NとOの混合ガス(N/O=95/5)雰囲気下、980℃で15分間シリコンウェハを加熱し、印刷パターン中のホウ素をシリコンウェハ中に熱拡散させた。拡散処理後、シリコンウェハを20%フッ酸水溶液に10分間浸漬し、基板表面に生成したBSF(ボロンシリケートグラス)を剥離した。
【0099】
各実施例、参考例及び各比較例の拡散材組成物を印刷したシリコンウェハにおける、拡散材組成物の印刷部及び非印刷部のシート抵抗値を測定するとともにP/N判定を実施して、拡散コントラスト(拡散特性)を評価した。シート抵抗値は、シート抵抗測定器(VR−70、国際電気社製)を用いて四探針法により測定した。P/N判定は、P/N判定機(PN/12α、ナプソン社製)を用いて印刷部及び非印刷部の導電型を測定することにより実施した。結果を表1に示す。
【0100】
表1に示すように、微粒子(B)を含まない比較例1では、スクリーン版のライン幅に対して50%を上回る誤差が印刷パターンに生じたが、微粒子(B)を含む実施例1〜5、参考例6では、誤差50%以下の印刷パターンを形成することができた。このことから、拡散材組成物が微粒子(B)を含有することで、印刷パターン精度が向上することが確認された。また、微粒子(B)を3質量%以上含有する実施例1〜5では、誤差15%以下の印刷パターンを形成することができた。このことから、拡散材組成物が微粒子(B)を3質量%以上含有することで、より精度の高い印刷パターンを形成できることが確認された。
【0101】
また、微粒子(B)を30質量%含有する比較例2では、印刷パターンにクラックが見られたのに対し、微粒子(B)を30質量%未満含有する実施例1〜5、参考例6では、印刷パターンにクラックが見られなかった。そして、比較例2では、印刷部と非印刷部の導電型がともにP型であり、シート抵抗値の差が極めて小さかった。これは、印刷パターンに発生したクラック部から印刷パターン中のホウ素が外部に拡散したためであると考えられる。このことから、微粒子(B)の含有量を30質量%未満とすることで、クラックの発生が抑えられて、良好な拡散コントラストが得られることが確認された。
【0102】
また、シロキサン化合物(C)を含まない比較例3及び4では、印刷部と非印刷部の導電型がともにP型であり、シート抵抗値の差が極めて小さかったのに対し、シロキサン化合物(C)を含む実施例1〜5、参考例6では、非印刷部の導電型がN型、印刷部の導電型がP型であり、シート抵抗値の差が大きかった。このことから、拡散材組成物がシロキサン化合物(C)を含有することで、拡散コントラストが向上することが確認された。
【符号の説明】
【0103】
1 半導体基板、 2 P型不純物拡散剤層、 3 N型不純物拡散剤層、 4 P型不純物拡散層、 5 N型不純物拡散層、 8,9 電極、 10 太陽電池。
図1
図2