特許第6099507号(P6099507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099507
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】切削方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20170313BHJP
   B28D 5/02 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   H01L21/78 F
   B28D5/02 A
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-139407(P2013-139407)
(22)【出願日】2013年7月3日
(65)【公開番号】特開2015-15267(P2015-15267A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祝子
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−332515(JP,A)
【文献】 特開2011−104728(JP,A)
【文献】 特開平05−192922(JP,A)
【文献】 特開2012−111003(JP,A)
【文献】 特開2006−287111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B28D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する回転可能な保持手段と、該保持手段で保持された被加工物に設定された切削予定ラインを切削する切り刃を有した切削ブレードと、該切削ブレードが装着されるスピンドルと、を備えた切削装置で被加工物を該切削予定ラインに沿って切削する切削方法であって、
該スピンドルの軸心と平行な方向をY方向、該Y方向と直交する方向をX方向、該Y方向と該X方向とにそれぞれ直交する鉛直方向をZ方向とし、
該X方向に平行な第一の光を該Y方向に移動させつつ該切削ブレードの刃先に向かって投光し、該刃先で反射した該第一の光の第一反射光をもとに該切削ブレードの該刃先の該Y方向位置を検出するY方向位置検出ステップと、
該Y方向に平行な第二の光を該Z方向に移動させつつ該切削ブレードの該刃先に向かって投光し、該刃先で反射した該第二の光の第二反射光をもとに該切削ブレードの該刃先の該Z方向位置を検出するZ方向位置検出ステップと、
被加工物を保持手段で保持し、被加工物の該切削予定ラインを該X方向と平行にする保持ステップと、
該Y方向位置検出ステップで検出された該切削ブレードの該刃先の該Y方向位置に基づいて該切削ブレードを被加工物の該切削予定ラインに位置付けるとともに、該Z方向位置検出ステップで検出された該切削ブレードの該刃先の該Z方向位置に基づいて該切削ブレードを所定のZ方向位置に位置付ける切削ブレード位置付けステップと、
該切削ブレード位置付けステップを実施した後、回転する該切削ブレードと被加工物とを該X方向に相対移動させて該切削ブレードで被加工物を該切削予定ラインに沿って切削する切削ステップと、を備えたことを特徴とする切削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ等の被加工物を切削する切削方法に関し、特に、切削に使用される切削ブレードの加工位置や切り込み深さを、短時間に調整可能な切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面にデバイスが形成された半導体ウェーハ等の被加工物は、例えば、円環状の切削ブレードを備える切削装置で切削される。この切削ブレードの加工位置や切り込み深さは、切削ブレードの取り付け精度や摩耗等の影響を受けて、予定されている加工位置や切り込み深さからずれることがある。
【0003】
そのため、被加工物の切削前や切削途中において、切削ブレードの加工位置や切り込み深さが調整されている。調整方法としては、加工位置の制御に使用されるカメラの基準線(ヘアライン)を切削溝に合わせるヘアライン合わせや、切削ブレードをチャックテーブルに切り込ませて切り込み深さを調節するセットアップ等が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−99607号公報
【特許文献2】特開2011−82402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のヘアライン合わせでは、実際に被加工物を切削して基準線を合わせるための切削溝を形成する必要がある。また、セットアップにおいては、切削ブレードを、チャックテーブルに切り込ませるためのセットアップ位置に移動させなくてはならない。
【0006】
そのため、上述のような方法では、加工位置や切り込み深さの調整に長時間を要してしまうという問題があった。特に、切削ブレードの加工位置や切り込み深さを切削の途中で調整しなくてはならない場合等には、加工に要する時間が長くなって生産性が低下してしまう。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、切削に使用される切削ブレードの加工位置や切り込み深さを、短時間に調整可能な切削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、被加工物を保持する回転可能な保持手段と、該保持手段で保持された被加工物に設定された切削予定ラインを切削する切り刃を有した切削ブレードと、該切削ブレードが装着されるスピンドルと、を備えた切削装置で被加工物を該切削予定ラインに沿って切削する切削方法であって、該スピンドルの軸心と平行な方向をY方向、該Y方向と直交する方向をX方向、該Y方向と該X方向とにそれぞれ直交する鉛直方向をZ方向とし、該X方向に平行な第一の光を該Y方向に移動させつつ該切削ブレードの刃先に向かって投光し、該刃先で反射した該第一の光の第一反射光をもとに該切削ブレードの該刃先の該Y方向位置を検出するY方向位置検出ステップと、該Y方向に平行な第二の光を該Z方向に移動させつつ該切削ブレードの該刃先に向かって投光し、該刃先で反射した該第二の光の第二反射光をもとに該切削ブレードの該刃先の該Z方向位置を検出するZ方向位置検出ステップと、被加工物を保持手段で保持し、被加工物の該切削予定ラインを該X方向と平行にする保持ステップと、該Y方向位置検出ステップで検出された該切削ブレードの該刃先の該Y方向位置に基づいて該切削ブレードを被加工物の該切削予定ラインに位置付けるとともに、該Z方向位置検出ステップで検出された該切削ブレードの該刃先の該Z方向位置に基づいて該切削ブレードを所定のZ方向位置に位置付ける切削ブレード位置付けステップと、該切削ブレード位置付けステップを実施した後、回転する該切削ブレードと被加工物とを該X方向に相対移動させて該切削ブレードで被加工物を該切削予定ラインに沿って切削する切削ステップと、を備えたことを特徴とする切削方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、切削ブレードで反射した第一反射光に基づいて刃先のY方向位置を検出すると共に、切削ブレードで反射した第二反射光に基づいて刃先のZ方向位置を検出する。
【0010】
これにより、従来のように被加工物やチャックテーブルを切削しなくても、切削ブレードの加工位置や切り込み深さを検出できる。すなわち、切削ブレードの加工位置や切り込み深さを短時間に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る切削方法が実施される切削装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
図2】切削ブレードの周辺構造を模式的に示す斜視図である。
図3】Y方向位置検出ステップを模式的に示す図である。
図4】Z方向位置検出ステップを模式的に示す図である。
図5】切削ステップを模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る切削方法は、Y方向位置検出ステップ(図3参照)、Z方向位置検出ステップ(図4参照)、保持ステップ、切削ブレード位置付けステップ、切削ステップ(図5参照)を含む。
【0013】
Y方向位置検出ステップでは、X方向(加工送り方向)に平行な光路に沿って伝播する第一の光を切削ブレードに向けて照射しながら、光の照射領域をY方向(割り出し送り方向)に移動させ、切削ブレードの刃先で反射した第一反射光に基づいて刃先のY方向位置を検出する。
【0014】
Z方向位置検出ステップでは、Y方向に平行な光路に沿って伝播する第二の光を切削ブレードに向けて照射しながら、光の照射領域をZ方向(鉛直方向)に移動させ、切削ブレードの刃先で反射した第二反射光に基づいて刃先のZ方向位置を検出する。
【0015】
保持ステップでは、被加工物を保持手段に保持させると共に、被加工物の切削予定ラインがX方向と平行になるように位置合わせする。切削ブレード位置付けステップでは、検出された刃先のY方向位置に基づいて、切削ブレードを被加工物の切削予定ラインに位置付けると共に、検出された刃先のZ方向位置に基づいて、切削ブレードを適切なZ方向位置に位置付ける。
【0016】
切削ステップでは、回転させた切削ブレードを被加工物の切削予定ラインに切り込ませると共に、切削ブレードと被加工物とをX方向に相対移動させて、被加工物を切削予定ラインに沿って切削する。以下、本実施の形態に係る切削方法について詳述する。
【0017】
はじめに、本実施の形態に係る切削方法が実施される切削装置について説明する。図1は、切削装置の構成例を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、切削装置2は、各構成を支持する基台4を備えている。
【0018】
基台4の上面には、ウェーハ(被加工物)11(図5参照)を保持するチャックテーブル(保持手段)6が設けられている。チャックテーブル6の上方には、ウェーハ11を切削するブレードユニット(切削手段)8が配置されている。
【0019】
ウェーハ11は、例えば、円盤状の半導体ウェーハであり、裏面側に貼着されるシート13(図5参照)を介して環状のフレーム15(図5参照)に支持されている。ただし、ウェーハ11の構成等は特に限定されない。
【0020】
チャックテーブル6の下方には、チャックテーブル6を加工送り方向(X方向)に移動させるX軸移動機構(加工送り手段)10が設けられている。X軸移動機構10は、基台4の上面に固定されX方向に平行な一対のX軸ガイドレール12を備える。
【0021】
X軸ガイドレール12には、X軸移動テーブル14がスライド可能に設置されている。X軸移動テーブル14の裏面側(下面側)には、ナット(不図示)が固定されており、このナットには、X軸ガイドレール12と平行なX軸ボールネジ16が螺合されている。
【0022】
X軸ボールネジ16の一端部には、X軸パルスモータ18が連結されている。X軸パルスモータ18でX軸ボールネジ16を回転させれば、X軸移動テーブル14は、X軸ガイドレール12に沿ってX方向に移動する。
【0023】
X軸移動テーブル14の表面側(上面側)には、支持台20が設けられている。支持台20の中央には、チャックテーブル6が配置されている。チャックテーブル6の周囲には、ウェーハ11を支持する環状のフレーム15を四方から挟持固定する4個のクランプ22が設けられている。
【0024】
チャックテーブル6は、支持台20の下方に設けられた回転機構(不図示)と連結されており、Z軸(鉛直軸)の周りに回転する。チャックテーブル6の表面は、ウェーハ11を吸引保持する保持面6aとなっている。この保持面6aには、チャックテーブル6の内部に形成された流路(不図示)を通じて吸引源(不図示)の負圧が作用し、ウェーハ11を吸引する吸引力が発生する。
【0025】
X軸移動機構10に隣接して、ブレードユニット8を割り出し送り方向(Y方向)に移動させるY軸移動機構(割り出し送り手段)24が設けられている。Y軸移動機構24は、基台4の上面に固定されY方向に平行な一対のY軸ガイドレール26を備える。
【0026】
Y軸ガイドレール26には、Y軸移動テーブル28がスライド可能に設置されている。Y軸移動テーブル28は、Y軸ガイドレール26に接する基部28aと、基部28aに対して立設された壁部28bとを備えている。
【0027】
Y軸移動テーブル28の基部28aの裏面側(下面側)には、ナット(不図示)が固定されており、このナットには、Y軸ガイドレール26と平行なY軸ボールネジ30が螺合されている。
【0028】
Y軸ボールネジ30の一端部には、Y軸パルスモータ32が連結されている。Y軸パルスモータ32でY軸ボールネジ30を回転させれば、Y軸移動テーブル28は、Y軸ガイドレール26に沿ってY方向に移動する。
【0029】
Y軸移動テーブル28の壁部28bには、ブレードユニット8を鉛直方向(Z方向)に移動させるZ軸移動機構34が設けられている。Z軸移動機構34は、壁部28bの側面に固定されZ方向に平行な一対のZ軸ガイドレール36を備える。
【0030】
Z軸ガイドレール36には、Z軸移動テーブル38がスライド可能に設置されている。Z軸移動テーブル38の裏面側(壁部28b側)には、ナット(不図示)が固定されており、このナットには、Z軸ガイドレール36と平行なZ軸ボールネジ(不図示)が螺合されている。
【0031】
Z軸ボールネジの一端部には、Z軸パルスモータ40が連結されている。Z軸パルスモータ40でZ軸ボールネジを回転させれば、Z軸移動テーブル38は、Z軸ガイドレール36に沿ってZ方向に移動する。
【0032】
Z軸移動テーブル38には、Y方向に平行な軸心を備えるスピンドル42(図3図4参照)を回転可能に収容するスピンドルハウジング44が支持されている。スピンドル42の一端側には、円環状の切削ブレード46が装着されており、スピンドルの他端側には、モータ(不図示)が連結されている。この切削ブレード46をモータで回転させ、チャックテーブル6に保持されたウェーハ11に切り込ませることで、ウェーハ11は切削される。
【0033】
チャックテーブル6、ブレードユニット8、X軸移動機構10、Y軸移動機構24、Z軸移動機構34等の各構成には、制御装置(不図示)が接続されている。この制御装置は、オペレータによって設定される各種の条件に基づいて、各構成の動作等を制御する。
【0034】
図2は、切削ブレード46の周辺構造を模式的に示す斜視図である。図2に示すように、スピンドルハウジング44の一端側には、切削ブレード46を収容するホイールカバー48が取り付けられている。切削ブレード46の外周は、下部を除いてホイールカバー48に覆われている。
【0035】
切削ブレード46は、スピンドル42の先端部分に取り付けられたフランジ50(図3図4参照)と、固定ナット52とで挟み込まれるように固定されている。この切削ブレード46は、ハブブレードであり、円環状の支持基台46aの外周に、ウェーハ11を切削する切り刃46bが設けられている。
【0036】
切り刃46bは、ダイヤモンド等の砥粒を結合材料で結合して円環状に形成されており、例えば、10μm〜500μm程度の厚みを有している。なお、本実施の形態では、切削ブレード46としてハブブレードを例示しているが、切削ブレード46の種類は特に限定されない。切削ブレード46として、ワッシャーブレード等を用いてもよい。
【0037】
ホイールカバー48の下方には、切削ブレード46の下部を前後に挟む略L字状の一対のノズル54が設けられている。ノズル54には、ホイールカバー48の上部に設けられた連結部56を通じて切削水が供給される。ノズル54の先端側には、切削ブレード46と対向するように複数のスリット(不図示)が形成されている。複数のスリットを通じて噴射される切削水によって、加工点が冷却、洗浄される。
【0038】
ノズル54の基端側には、一対のノズル54で挟まれるように第1のレーザー変位計(Y方向位置検出手段)58が配置されている。第1のレーザー変位計58は、切削ブレード46の切り刃46bに向けてレーザービーム(第一の光)を照射する第1の照射部(不図示)と、切り刃46bで反射したレーザービーム(第一反射光)を受光する第1の受光部(不図示)とを備えている。
【0039】
第1のレーザー変位計58の第1の照射部は、レーザービームをX方向に伝播させることができるように配置されている。つまり、第1のレーザー変位計58の第1の照射部から照射されるレーザービームの光路は、X方向に平行となる。
【0040】
この第1のレーザー変位計58は、パルスモータを含む第1の移動機構を介してホイールカバー48に取り付けられており、Y方向に移動する。これにより、切削ブレード46に向けてレーザービームを照射しながら、その照射領域をY方向に移動させることができる。
【0041】
ホイールカバー48に対する第1のレーザー変位計58のY方向位置は、切削装置2にとって既知である。そのため、切削ブレード46に向けてレーザービームを照射しながら照射領域をY方向に移動させ、切り刃46bで反射する反射光(第一反射光)を第1の受光部で受光することにより、第1の受光部の受光量の変化に基づいて刃先のY方向位置を検出できる。
【0042】
切削ブレード46の上端近傍には、第2のレーザー変位計(Z方向位置検出手段)60(図4参照)が配置されている。この第2のレーザー変位計60も、切削ブレード46の切り刃46bに向けてレーザービーム(第二の光)を照射する第2の照射部と、切り刃46bで反射したレーザービーム(第二反射光)を受光する第2の受光部とを備えている。
【0043】
第2のレーザー変位計60の第2の照射部は、レーザービームをY方向に伝播させることができるように配置されている。つまり、第2のレーザー変位計60の第2の照射部から照射されるレーザービームの光路は、Y方向に平行となる。
【0044】
第2のレーザー変位計60は、パルスモータを含む第2の移動機構を介してホイールカバー48に取り付けられており、Z方向に移動する。これにより、切削ブレード46に向けてレーザービームを照射しながら、その照射領域をZ方向に移動させることができる。
【0045】
ホイールカバー48に対する第2のレーザー変位計60のZ方向位置は、切削装置2にとって既知である。そのため、切削ブレード46に向けてレーザービームを照射しながら照射領域をZ方向に移動させ、切り刃46bで反射する反射光(第二反射光)を第2の受光部で受光することにより、第2の受光部の受光量の変化に基づいて刃先のZ方向位置を検出できる。
【0046】
本実施の形態に係る切削方法では、まず、上述した切削装置2において、切削ブレード46の刃先のY方向位置を検出するY方向位置検出ステップを実施する。図3は、Y方向位置検出ステップを模式的に示す図である。
【0047】
図3に示すように、Y方向位置検出ステップでは、第1のレーザー変位計58をY方向に移動させながら、切削ブレード46の切り刃46bに向けてレーザービーム(第一の光)を照射する。これにより、レーザービームは、Y方向に移動しながら切り刃46bに照射される。
【0048】
同時に、反射されたレーザービーム(第一反射光)を第1のレーザー変位計58で受光する。これにより、Y方向における受光量の変化を検出できる。ここで、レーザービームの反射率は、切削ブレード46のY方向の端部において急激に変化する。
【0049】
つまり、第1のレーザー変位計58の受光量は、切削ブレード46のY方向の端部に相当する領域において急激に変化する。切削装置2の制御装置は、この受光量の急激な変化に基づいて刃先のY方向位置を検出する。
【0050】
Y方向位置検出ステップの後には、切削ブレード46の刃先のZ方向位置を検出するZ方向位置検出ステップを実施する。図4は、Z方向位置検出ステップを模式的に示す図である。
【0051】
図4に示すように、Z方向位置検出ステップでは、第2のレーザー変位計60をZ方向に移動させながら、切削ブレード46の切り刃46bに向けてレーザービーム(第二の光)を照射する。これにより、レーザービームは、Z方向に移動しながら切り刃46bに照射される。
【0052】
同時に、反射されたレーザービーム(第二反射光)を第2のレーザー変位計60で受光する。これにより、Z方向における受光量の変化を検出できる。第2のレーザー変位計60の受光量は、切削ブレード46のZ方向の端部に相当する領域において急激に変化する。切削装置2の制御装置は、この受光量の急激な変化に基づいて刃先のZ方向位置を検出する。
【0053】
Y方向位置検出ステップ及びZ方向位置検出ステップの後には、ウェーハ11を切削装置2のチャックテーブル6に吸引保持させる保持ステップを実施する。まず、ウェーハ11の裏面側に貼着されたシート13を、チャックテーブル6の保持面6aに接触させて吸引源の負圧を作用させる。
【0054】
ウェーハ11の表面側は、格子状に配列されたストリート(切削予定ライン)17(図5参照)で複数の領域に区画されており、各領域には、IC等のデバイス19(図5参照)が形成されている。上述のように、シート13を介してウェーハ11をチャックテーブル6に吸引保持させた後には、ストリート17とX方向とが平行になるように、チャックテーブル6をZ軸の周りに回転させる。
【0055】
保持ステップの後には、検出されたY方向位置に基づいて切削ブレード46のY方向位置を調整すると共に、検出されたZ方向位置に基づいて切削ブレード46のZ方向位置を調整する切削ブレード位置付けステップを実施する。
【0056】
まず、上述したY方向位置検出ステップで検出された刃先のY方向位置に基づいて、切削装置2の制御装置が、適切なY方向位置からのずれ量を算出する。そして、算出されたずれ量に基づいて、ウェーハ11のストリート17と切削ブレード46の切削位置とが一致するように切削ブレード46のY方向位置を調整する。
【0057】
次に、Z方向位置検出ステップで検出された刃先のZ方向位置に基づいて、切削装置2の制御装置が、適切なZ方向位置からのずれ量を算出する。そして、算出されたずれ量に基づいて、切削ブレード46の切り込み量が適切になるように切削ブレード46のZ方向位置を調整する。
【0058】
この切削ブレード位置付けステップにより、切削ブレード46は、ウェーハ11のストリート17に位置付けられると共に、適切なZ方向位置に位置付けられる。なお、本実施の形態では、切削ブレード位置付けステップを、制御装置の自動制御で実施しているが、オペレータのマニュアル操作で実施しても良い。
【0059】
切削ブレード位置付けステップの後には、ウェーハ11をストリート17に沿って切削する切削ステップを実施する。図5は、切削ステップを模式的に示す斜視図である。
【0060】
切削ステップでは、まず、開始位置として指定されたストリート17に切削ブレード46を位置付ける。そして、回転する切削ブレード46を、チャックテーブル6に保持させたウェーハ11に切り込ませると共に、チャックテーブル6をX方向に移動(加工送り)させる。
【0061】
これにより、ウェーハ11は、対象のストリート17に沿って切削される。続いて、切削ブレード46を上昇させた後にY方向に移動(割り出し送り)させて、隣接するストリート17に位置合わせする。そして、切削ブレード46をウェーハ11に切り込ませると共に、チャックテーブル6をX方向に移動させる。
【0062】
このように、加工送りと割り出し送りとを繰り返して、第1の方向に延びる全てのストリート17に沿ってウェーハ11を切削した後には、ウェーハ11を90°回転させて、第2の方向に延びるストリート17に沿ってウェーハ11を切削する。全てのストリート17に沿ってウェーハ11が切削されると、切削ステップは終了する。
【0063】
以上のように、本実施の形態の切削方法では、切削ブレード46の刃先で反射したレーザービーム(第一反射光)に基づいて刃先のY方向位置を検出すると共に、切削ブレード46の刃先で反射したレーザービーム(第二反射光)に基づいて刃先のZ方向位置を検出する。
【0064】
これにより、従来のようにウェーハ(被加工物)11やチャックテーブル6を切削しなくても、切削ブレード46の加工位置や切り込み深さを検出できる。すなわち、切削ブレード46の加工位置や切り込み深さを短時間に調整できる。
【0065】
なお、本発明は上記実施の形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施の形態では、Y方向位置検出ステップの後にZ方向位置検出ステップを実施しているが、Z方向位置検出ステップを先に実施しても良い。また、Y方向位置検出ステップとZ方向位置検出ステップとを同時に実施しても良い。
【0066】
また、上記実施の形態では、切削ブレード位置付けステップにおいて、Y方向位置を調整した後にZ方向位置を調整しているが、Z方向位置を先に調整しても良い。また、Y方向位置の調整とZ方向位置の調整とを同時に実施しても良い。
【0067】
その他、上記実施の形態に係る構成、方法などは、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0068】
2 切削装置
4 基台
6 チャックテーブル(保持手段)
6a 保持面
8 ブレードユニット(切削手段)
10 X軸移動機構(加工送り手段)
12 X軸ガイドレール
14 X軸移動テーブル
16 X軸ボールネジ
18 X軸パルスモータ
20 支持台
22 クランプ
24 Y軸移動機構(割り出し送り手段)
26 Y軸ガイドレール
28 Y軸移動テーブル
28a 基部
28b 壁部
30 Y軸ボールネジ
32 Y軸パルスモータ
34 Z軸移動機構
36 Z軸ガイドレール
38 Z軸移動テーブル
40 Z軸パルスモータ
42 スピンドル
44 スピンドルハウジング
46 切削ブレード
46a 支持基台
46b 切り刃
48 ホイールカバー
50 フランジ
52 固定ナット
54 ノズル
56 連結部
58 第1のレーザー変位計(Y方向位置検出手段)
60 第2のレーザー変位計(Z方向位置検出手段)
11 ウェーハ(被加工物)
13 シート
15 フレーム
17 ストリート(切削予定ライン)
19 デバイス
図1
図2
図3
図4
図5