(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記キャリアの前記極薄銅層と反対側の表面を、JIS B0601−1994に準拠してレーザー顕微鏡で測定したとき、前記表面の十点平均粗さRzが0.9μm以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
前記キャリアの前記極薄銅層と反対側の表面を、JIS B0601−1994に準拠してレーザー顕微鏡で測定したとき、前記表面の算術平均粗さRaが0.12μm以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
前記キャリアの前記極薄銅層と反対側の表面を、JIS B0601−2001に準拠してレーザー顕微鏡で測定したとき、前記表面の粗さ曲線の最大断面高さRtが1.1μm以上である請求項1〜6のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
前記キャリアの前記極薄銅層と反対側の表面に粗化処理層、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
前記粗化処理層が、銅、ニッケル、コバルト、リン、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層を有する、および/または、
硫酸アルキルエステル塩、タングステン及び砒素からなる群から選択された1種以上を含む硫酸・硫酸銅電解浴を用いて形成されている層を有する、
請求項8に記載のキャリア付銅箔。
前記粗化処理層が、銅、ニッケル、コバルト、リン、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層である請求項11に記載のキャリア付銅箔。
前記極薄銅層表面、又は、前記極薄銅層表面に形成された粗化処理層、前記耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層の上に樹脂層を備える請求項1〜13のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
キャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法として、上述のようにキャリア付銅箔を極薄銅層側から樹脂基板へ積層した後に極薄銅層からキャリアを剥離することが一般的であるが、キャリア付銅箔の極薄銅層側ではなく、キャリア側表面に樹脂基板を設けておき、極薄銅層側表面に回路めっきを形成し、当該形成した回路めっきを覆うように(回路めっきが埋没するように)極薄銅層上に埋め込み樹脂を設けて樹脂層を積層し、当該樹脂層上に更に銅層を設けて積層体を作製する工法(埋め込み・ビルドアップ法)がある(
図1)。また、キャリア付銅箔の極薄銅層側ではなく、キャリア側表面に樹脂基板を設けておき、極薄銅層側表面に樹脂層と回路とを少なくとも一回以上設けて積層体を作製する工法がある(ビルドアップ工法)。
【0008】
積層体の極薄銅層がキャリアから良好に剥離される必要があるが、このような工法で形成した積層体において、極薄銅層とキャリアとの間の剥離強度が著しく大きくなってしまい、極薄銅層をキャリアから良好に剥離することが困難となるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、キャリア付銅箔を樹脂基板に積層することで作製した積層体において、極薄銅層をキャリアから良好に剥離することが可能なキャリア付銅箔を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ねたところ、キャリア側に樹脂基板が設けられた構成を有する積層体は、当該キャリア表面に、樹脂基板と良好に貼り合わせるために粗化処理が行われていることに着目した。そして、当該キャリアの樹脂基板との貼り合わせ面側の粗化処理の程度によって、当該表面の粗さが大きくなってしまい、積層体における極薄銅層のキャリアからの剥離強度が著しく大きくなることを見出した。そして、キャリアの樹脂基板との貼り合わせ面側、すなわち、キャリアの極薄銅層が形成された表面とは反対側の表面粗さを制御することで、極薄銅層をキャリアから良好に剥離することが可能となることを見出した。
【0011】
本発明は上記知見を基礎として完成したものであり、一側面において、キャリア、中間層、極薄銅層をこの順に有するキャリア付銅箔であって、前記キャリアの前記極薄銅層と反対側の表面を、JIS B0601−1994に準拠してレーザー顕微鏡で測定したとき、前記表面の十点平均粗さRzが6.0μm以下であるキャリア付銅箔である。
【0012】
本発明は別の一側面において、キャリア、中間層、極薄銅層をこの順に有するキャリア付銅箔であって、前記キャリアの前記極薄銅層と反対側の表面を、JIS B0601−1994に準拠してレーザー顕微鏡で測定したとき、前記表面の算術平均粗さRaが1.0μm以下であるキャリア付銅箔である。
【0013】
本発明は更に別の一側面において、キャリア、中間層、極薄銅層をこの順に有するキャリア付銅箔であって、前記キャリアの前記極薄銅層と反対側の表面を、JIS B0601−2001に準拠してレーザー顕微鏡で測定したとき、前記表面の粗さ曲線の最大断面高さRtが7.0μm以下であるキャリア付銅箔である。
【0014】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記キャリアの前記極薄銅層と反対側の表面を、JIS B0601−1994に準拠してレーザー顕微鏡で測定したとき、前記表面の十点平均粗さRzが0.9μm以上である。
【0015】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記キャリアの前記極薄銅層と反対側の表面を、JIS B0601−1994に準拠してレーザー顕微鏡で測定したとき、前記表面の算術平均粗さRaが0.12μm以上である。
【0016】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記キャリアの前記極薄銅層と反対側の表面を、JIS B0601−2001に準拠してレーザー顕微鏡で測定したとき、前記表面の粗さ曲線の最大断面高さRtが1.1μm以上である。
【0017】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記キャリアの前記極薄銅層と反対側の表面に粗化処理層が形成されている。
【0018】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記キャリアの前記極薄銅層と反対側の表面に形成された粗化処理層上に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する。
【0019】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記キャリアの前記極薄銅層と反対側の表面に形成された粗化処理層が、銅、ニッケル、コバルト、リン、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層である。
【0020】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記キャリアの前記極薄銅層と反対側の表面に形成された粗化処理層が、硫酸アルキルエステル塩、タングステン及び砒素からなる群から選択された1種以上を含む硫酸・硫酸銅電解浴を用いて形成されている。
【0021】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記キャリアの前記極薄銅層と反対側の表面に粗化処理層が形成されていない。
【0022】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記キャリアの前記極薄銅層と反対側の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する。
【0023】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記極薄銅層表面に粗化処理層が形成されている。
【0024】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記極薄銅層表面に形成された粗化処理層が、銅、ニッケル、コバルト、リン、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層である。
【0025】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記極薄銅層表面に形成された粗化処理層の表面に、樹脂層を備える。
【0026】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記極薄銅層表面に形成された粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する。
【0027】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記極薄銅層表面に形成された粗化処理層の表面に設けられた、前記耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層の上に樹脂層を備える。
【0028】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記極薄銅層表面に樹脂層を備える。
【0029】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記樹脂層が接着用樹脂である。
【0030】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記樹脂層が半硬化状態の樹脂である。
【0031】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔を備えた積層体である。
【0032】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔と樹脂とを含む積層体であって、前記キャリア付銅箔の端面の一部または全部が前記樹脂により覆われている積層体である。
【0033】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔を有するプリント配線板である。
【0034】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔を用いてプリント配線板を製造するプリント配線板の製造方法である。
【0035】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層体を形成し、
その後、セミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって、回路を形成する工程を含むプリント配線板の製造方法である。
【0036】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に回路を形成する工程、
前記回路が埋没するように前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に樹脂層を形成する工程、
前記樹脂層を形成した後に、前記キャリアを剥離させる工程、及び、
前記キャリアを剥離させた後に、前記極薄銅層を除去することで、前記極薄銅層側表面に形成した、前記樹脂層に埋没している回路を露出させる工程
を含むプリント配線板の製造方法である。
【0037】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に回路を形成する工程、
前記回路が埋没するように前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に樹脂層を形成する工程、
前記樹脂層上に回路を形成する工程、
前記樹脂層上に回路を形成した後に、前記キャリアを剥離させる工程、及び、
前記キャリアを剥離させた後に、前記極薄銅層を除去することで、前記極薄銅層側表面に形成した、前記樹脂層に埋没している回路を露出させる工程
を含むプリント配線板の製造方法である。
【0038】
本発明は更に別の一側面において、
本発明のキャリア付銅箔を前記キャリア側から樹脂基板に積層する工程、
前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に回路を形成する工程、
前記回路が埋没するように前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に樹脂層を形成する工程、
前記樹脂層上に回路を形成する工程、
前記樹脂層上に回路を形成した後に、前記キャリアを剥離させる工程、及び、
前記キャリアを剥離させた後に、前記極薄銅層を除去することで、前記極薄銅層側表面に形成した、前記樹脂層に埋没している回路を露出させる工程
を含むプリント配線板の製造方法である。
【0039】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔を前記キャリア側から樹脂基板に積層する工程、
前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に回路を形成する工程、
前記回路が埋没するように前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に樹脂層を形成する工程、
前記樹脂層を形成した後に、前記キャリアを剥離させる工程、及び、
前記キャリアを剥離させた後に、前記極薄銅層を除去することで、前記極薄銅層側表面に形成した、前記樹脂層に埋没している回路を露出させる工程
を含むプリント配線板の製造方法である。
【0040】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面または前記キャリア側表面と樹脂基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔の樹脂基板と積層した側とは反対側の極薄銅層側表面または前記キャリア側表面に樹脂層と回路との2層を、少なくとも1回設ける工程、及び、
前記樹脂層及び回路の2層を形成した後に、前記キャリア付銅箔から前記キャリアまたは前記極薄銅層を剥離させる工程
を含むプリント配線板の製造方法である。
【0041】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔の前記キャリア側表面と樹脂基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔の樹脂基板と積層した側とは反対側の極薄銅層側表面に樹脂層と回路との2層を、少なくとも1回設ける工程、及び、
前記樹脂層及び回路の2層を形成した後に、前記キャリア付銅箔から前記キャリアを剥離させる工程
を含むプリント配線板の製造方法である。
【0042】
本発明は更に別の一側面において、本発明の積層体のいずれか一方または両方の面に樹脂層と回路との2層を、少なくとも1回設ける工程、及び、
前記樹脂層及び回路の2層を形成した後に、前記積層体を構成しているキャリア付銅箔から前記キャリアまたは前記極薄銅層を剥離させる工程
を含むプリント配線板の製造方法である。
【0043】
本発明は更に別の一側面において、本発明の方法で製造されたプリント配線板を用いて電子機器を製造する電子機器の製造方法である。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、キャリア付銅箔を樹脂基板に積層することで作製した積層体において、極薄銅層をキャリアから良好に剥離することが可能なキャリア付銅箔を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
<キャリア付銅箔>
本発明のキャリア付銅箔は、キャリア、中間層、極薄銅層をこの順に有する。キャリア付銅箔自体の使用方法は当業者に周知であるが、例えば極薄銅層の表面を紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がし、絶縁基板に接着した極薄銅層を目的とする導体パターンにエッチングし、最終的に積層体(銅張積層体等)、又は、プリント配線板等を製造することができる。
【0047】
<キャリア>
本発明に用いることのできるキャリアは典型的には金属箔または樹脂フィルムである。金属箔としては、例えば銅箔、銅合金箔、ニッケル箔、ニッケル合金箔、鉄箔、鉄合金箔、ステンレス箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、圧延金属箔、電解金属箔、圧延銅箔や電解銅箔の形態で提供される。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。圧延銅箔の材料としてはタフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100)や無酸素銅(JIS H3100 合金番号C1020またはJIS H3510 合金番号C1011)といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。キャリアは電気伝導率が高いことから電解銅箔または圧延銅箔であることが好ましく、更に製造コストが低いこと及びキャリア側表面の粗さをより制御しやすいことから電解銅箔であることがより好ましい。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。また、樹脂フィルムとしては絶縁樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、LCP(液晶ポリマー)フィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム等を用いることができる。
【0048】
本発明に用いることのできるキャリアの厚さについても特に制限はないが、キャリアとしての役目を果たす上で適した厚さに適宜調節すればよく、例えば12μm以上とすることができる。但し、厚すぎると生産コストが高くなるので一般には35μm以下とするのが好ましい。従って、キャリアの厚みは典型的には12〜300μmであり、より典型的には12〜150μmであり、より典型的には12〜70μmであり、より典型的には18〜35μmである。
【0049】
<キャリア表面の粗さ>
キャリア付銅箔のキャリア側表面に樹脂基板を設けて支持しながら、極薄銅層側に回路と回路埋め込み用等の樹脂層とを1回以上設けて積層体を形成していくビルドアップ工法等では、キャリアの極薄銅層と反対側の表面の粗さが、当該積層体における極薄銅層とキャリアとの剥離強度に影響を与える。これは、例えば、キャリアの極薄銅層と反対側の表面の粗さが所定値より大きいと、当該キャリアに中間層を介して極薄銅層を形成するときに何らかの影響を中間層に与えて剥離強度を大きくしてしまうためと考えられる。この理由は明らかではないが、キャリアの極薄銅層と反対側の表面の粗さが所定値より大きいことにより、キャリアの極薄銅層と反対側の表面の電流が流れる経路が長くなるため、当該表面に電流が流れにくくなり、それによって、キャリアの極薄銅層側表面、すなわち中間層、極薄銅層に従来よりも電流が多く流れやすくなることが影響している可能性が有る。また、キャリア付銅箔の作製中はキャリアの極薄銅層と反対側の表面の粗さが小さくても、キャリア付銅箔を形成した後に、例えば樹脂基板と良好に接着させるためにキャリアの極薄銅層と反対側の表面に粗さが所定値より大きくなるまで粗化処理をしたときも同様に剥離強度が大きくなる。これは、当該粗化処理工程で中間層に極薄銅層形成時の電流の向きとは反対向きの電流(逆電流)が流れることが原因であると考えられる。
【0050】
このような観点から、本発明のキャリア付銅箔において、キャリアの極薄銅層と反対側の表面を、JIS B0601−1994に準拠してレーザー顕微鏡で測定したとき、前記表面の十点平均粗さRzが6.0μm以下に制御されている。キャリアの極薄銅層と反対側の表面の十点平均粗さRzが6.0μm以下であると、極薄銅層のキャリアからの剥離強度が抑制され、極薄銅層をキャリアから良好に剥離させることが可能となる。Rzは好ましくは5.0μm以下であり、より好ましくは4.0μm以下であり、より好ましくは3.5μm以下である。但し、Rzは、小さくなりすぎると樹脂基板との密着力が低下することから、0.9μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることが好ましく、1.1μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であることがより好ましく、2.0μm以上が更により好ましい。
【0051】
また、本発明のキャリア付銅箔は別の一側面において、キャリアの極薄銅層と反対側の表面を、JIS B0601−1994に準拠してレーザー顕微鏡で測定したとき、前記表面の算術平均粗さRaが1.0μm以下に制御されている。キャリアの極薄銅層と反対側の表面の算術平均粗さRaが1.0μm以下であると、極薄銅層のキャリアからの剥離強度が抑制され、極薄銅層をキャリアから良好に剥離させることが可能となる。Raは好ましくは0.8μm以下であり、より好ましくは0.7μm以下であり、より好ましくは0.6μm以下である。但し、Raは、小さくなりすぎると樹脂基板との密着力が低下することから、0.12μm以上であることが好ましく、0.15μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、0.22μm以上であることがより好ましく、0.3μm以上が更により好ましい。
【0052】
また、本発明のキャリア付銅箔は更に別の一側面において、キャリアの極薄銅層と反対側の表面を、JIS B0601−2001に準拠してレーザー顕微鏡で測定したとき、前記表面の粗さ曲線の最大断面高さRtが7.0μm以下に制御されている。キャリアの極薄銅層と反対側の表面の最大断面高さRtが7.0μm以下であると、極薄銅層のキャリアからの剥離強度が抑制され、極薄銅層をキャリアから良好に剥離させることが可能となる。Rtは好ましくは6.0μm以下であり、より好ましくは5.0μm以下であり、より好ましくは4.0μm以下である。但し、Rtは、小さくなりすぎると樹脂基板との密着力が低下することから、1.1μm以上であることが好ましく、1.2μm以上であることが好ましく、1.3μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であることがより好ましく、2.0μm以上が更により好ましい。
なお、本発明において、上述のキャリアの極薄銅層と反対側の表面の粗さ(Rz、Ra、Rt)は、後述の粗化処理層が形成されているときは、当該粗化処理層表面の粗さを示し、当該粗化処理層表面にさらに後述の耐熱層、防錆層、クロメート処理層及び/又はシランカップリング処理層が形成されたときは、それらの中の最表層の表面の粗さを示す。また、キャリアに粗化処理層が形成されず、直接、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及び/又はシランカップリング処理層が形成されたときも、それらの中の最表層の表面の粗さを示す。
【0053】
<中間層>
キャリア上には中間層を設ける。キャリアと中間層との間に他の層を設けてもよい。本発明で用いる中間層は、キャリア付銅箔が絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅層が剥離し難い一方で、絶縁基板への積層工程後にはキャリアから極薄銅層が剥離可能となるような構成であれば特に限定されない。例えば、本発明のキャリア付銅箔の中間層はCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Zn、これらの合金、これらの水和物、これらの酸化物、有機物からなる群から選択される一種又は二種以上を含んでも良い。また、中間層は複数の層であっても良い。
また、例えば、中間層はキャリア側からCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種の元素からなる単一金属層、或いは、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種又は二種以上の元素からなる合金層を形成し、その上にCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種又は二種以上の元素の水和物または酸化物または有機物からなる層を形成することで構成することができる。
また、例えば中間層は、キャリア側からCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znの元素群の内何れか一種の元素からなる単一金属層、あるいはCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znの元素群から選択された一種以上の元素からなる合金層、あるいは有機物層を形成し、その次にCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znの元素群の内何れか一種の元素からなる単一金属層、あるいはCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znの元素群から選択された一種以上の元素からなる合金層で構成することができる。また、他の層には中間層として用いることができる層構成を用いてもよい。
【0054】
また、例えば、中間層は、キャリア上に、ニッケル層、ニッケル−リン合金層又はニッケル−コバルト合金層と、クロム含有層とがこの順で積層されて構成することができる。ニッケルと銅との接着力はクロムと銅の接着力よりも高いので、極薄銅層を剥離する際に、極薄銅層とクロムとの界面で剥離するようになる。また、中間層のニッケルにはキャリアから銅成分が極薄銅層へと拡散していくのを防ぐバリア効果が期待される。中間層におけるニッケルの付着量は好ましくは100μg/dm
2以上40000μg/dm
2以下、より好ましくは100μg/dm
2以上4000μg/dm
2以下、より好ましくは100μg/dm
2以上2500μg/dm
2以下、より好ましくは100μg/dm
2以上1000μg/dm
2未満であり、中間層におけるクロムの付着量は5μg/dm
2以上500μg/dm
2以下であることが好ましく、5μg/dm
2以上100μg/dm
2以下であることがより好ましい。
【0055】
クロム含有層はクロムめっき層であってもよく、クロム合金めっき層であってもよく、クロメート処理層であってもよい。ここでクロメート処理層とは無水クロム酸、クロム酸、二クロム酸、クロム酸塩または二クロム酸塩を含む液で処理された層のことをいう。クロメート処理層はコバルト、鉄、ニッケル、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタン等の元素(金属、合金、酸化物、窒化物、硫化物等どのような形態でもよい)を含んでもよい。クロメート処理層の具体例としては、無水クロム酸または二クロム酸カリウム水溶液で処理したクロメート処理層や、無水クロム酸または二クロム酸カリウムおよび亜鉛を含む処理液で処理したクロメート処理層等が挙げられる。
【0056】
本発明のキャリア付銅箔の中間層は、キャリア上にニッケル層またはニッケルを含む合金層、及び、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層の順で積層されて構成されており、中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm
2であってもよい。
【0057】
また、例えば、中間層が含有する有機物としては、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸の中から選択される1種又は2種以上からなるものを用いることが好ましい。窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のうち、窒素含有有機化合物は、置換基を有する窒素含有有機化合物を含んでいる。具体的な窒素含有有機化合物としては、置換基を有するトリアゾール化合物である1,2,3−ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、N’,N’−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア、1H−1,2,4−トリアゾール及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール等を用いることが好ましい。
硫黄含有有機化合物には、メルカプトベンゾチアゾール、チオシアヌル酸及び2−ベンズイミダゾールチオール等を用いることが好ましい。
カルボン酸としては、特にモノカルボン酸を用いることが好ましく、中でもオレイン酸、リノール酸及びリノレイン酸等を用いることが好ましい。
前述の有機物は厚みで8nm以上80nm以下含有するのが好ましく、30nm以上70nm以下含有するのがより好ましい。中間層は前述の有機物を複数種類(一種以上)含んでもよい。
なお、有機物の厚みは以下のようにして測定することができる。
【0058】
<中間層の有機物厚み>
キャリア付銅箔の極薄銅層をキャリアから剥離した後に、露出した極薄銅層の中間層側の表面と、露出したキャリアの中間層側の表面をXPS測定し、デプスプロファイルを作成する。そして、極薄銅層の中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをA(nm)とし、キャリアの中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをB(nm)とし、AとBとの合計を中間層の有機物の厚み(nm)とすることができる。
XPSの稼働条件を以下に示す。
・装置:XPS測定装置(アルバックファイ社、型式5600MC)
・到達真空度:3.8×10
-7Pa
・X線:単色AlKαまたは非単色MgKα、エックス線出力300W、検出面積800μmφ、試料と検出器のなす角度45°
・イオン線:イオン種Ar
+、加速電圧3kV、掃引面積3mm×3mm、スパッタリングレート2.8nm/min(SiO
2換算)
【0059】
中間層が含有する有機物の使用方法について、以下に、キャリア箔上への中間層の形成方法についても述べつつ説明する。キャリア上への中間層の形成は、上述した有機物を溶媒に溶解させ、その溶媒中にキャリアを浸漬させるか、中間層を形成しようとする面に対するシャワーリング、噴霧法、滴下法及び電着法等を用いて行うことができ、特に限定した手法を採用する必要性はない。このときの溶媒中の有機系剤の濃度は、上述した有機物の全てにおいて、濃度0.01g/L〜30g/L、液温20〜60℃の範囲が好ましい。有機物の濃度は、特に限定されるものではなく、本来濃度が高くとも低くとも問題のないものである。なお、有機物の濃度が高いほど、また、上述した有機物を溶解させた溶媒へのキャリアの接触時間が長いほど、中間層の有機物厚みは大きくなる傾向にある。
【0060】
また、例えば、中間層は、キャリア上に、ニッケルと、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金とがこの順で積層されて構成することができる。ニッケルと銅との接着力は、モリブデンまたはコバルトと銅との接着力よりも高いので、極薄銅層を剥離する際に、極薄銅層とモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金との界面で剥離するようになる。また、中間層のニッケルにはキャリアから銅成分が極薄銅層へと拡散していくのを防ぐバリア効果が期待される。
中間層において、ニッケルの付着量は100〜40000μg/dm
2であり、モリブデンの付着量は10〜1000μg/dm
2であり、コバルトの付着量は10〜1000μg/dm
2である。上述のように、本発明のキャリア付銅箔は、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥離した後の極薄銅層の表面のNi量が制御されているが、このように剥離後の極薄銅層表面のNi量を制御するためには、中間層のNi付着量を少なくするとともに、Niが極薄銅層側へ拡散するのを抑制する金属種(Co、Mo)を中間層が含んでいることが好ましい。このような観点から、ニッケル付着量は100〜40000μg/dm
2とすることが好ましく、200〜20000μg/dm
2とすることが好ましく、300〜15000μg/dm
2とすることがより好ましく、300〜10000μg/dm
2とすることがより好ましい。中間層にモリブデンが含まれる場合には、モリブデン付着量は10〜1000μg/dm
2とすることが好ましく、モリブデン付着量は20〜600μg/dm
2とすることが好ましく、30〜400μg/dm
2とすることがより好ましい。中間層にコバルトが含まれる場合には、コバルト付着量は10〜1000μg/dm
2とすることが好ましく、コバルト付着量は20〜600μg/dm
2とすることが好ましく、30〜400μg/dm
2とすることがより好ましい。
なお、上述のように中間層は、キャリア上に、ニッケルと、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金とがこの順で積層した場合には、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層を設けるためのめっき処理での電流密度を低くし、キャリアの搬送速度を遅くするとモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層の密度が高くなる傾向にある。モリブデン及び/またはコバルトを含む層の密度が高くなると、ニッケル層のニッケルが拡散し難くなり、剥離後の極薄銅層表面のNi量を制御することができる。
なお、中間層はキャリアに対して電気めっき、無電解めっき及び浸漬めっきのような湿式めっき、または、スパッタリング、CVD、PVDのような乾式めっきをすることにより設けることができる。なお、キャリアに樹脂フィルムを用いて、湿式めっきで中間層を設ける場合には、中間層形成前に活性化処理等のキャリアに対して湿式めっきを行うための前処理を行う必要が有る。前述の前処理は、樹脂フィルムに湿式めっきを行うことが可能となる処理であればどのような処理を用いてもよく、公知の処理を用いることができる。
【0061】
<ストライクめっき>
中間層の上には極薄銅層を設ける。その前に極薄銅層のピンホールを低減させるために銅−リン合金によるストライクめっきを行ってもよい。ストライクめっきにはピロリン酸銅めっき液などが挙げられる。
【0062】
<極薄銅層>
中間層の上には極薄銅層を設ける。なお、中間層と極薄銅層との間には他の層を設けてもよい。極薄銅層は、硫酸銅、ピロリン酸銅、スルファミン酸銅、シアン化銅等の電解浴を利用した電気めっきにより形成することができ、一般的な電解銅箔で使用され、高電流密度での銅箔形成が可能であることから硫酸銅浴が好ましい。極薄銅層の厚みは特に制限はないが、一般的にはキャリアよりも薄く、例えば12μm以下である。典型的には0.05〜12μmであり、より典型的には0.1〜12μmであり、0.5〜12μmであり、より典型的には1.5〜5μmであり、より典型的には2〜5μmである。また、他の層には中間層として用いることができる構成の層を用いてもよい。
【0063】
<キャリア表面、極薄銅層表面の粗化処理>
キャリアの極薄銅層側とは反対側の表面には、例えば樹脂基板との密着性を良好にすること等のために粗化処理を施すことで粗化処理層を設けてもよい。このような構成によれば、本発明のキャリア付銅箔をキャリア側から樹脂基板に積層する処理を行うとき、キャリアと樹脂基板との密着性が向上し、プリント配線板の製造工程においてキャリアと樹脂基板とが剥離し難くなる。
また、キャリアの極薄銅層側と反対側の表面には、粗化処理層を形成しなくてもよい。キャリアの極薄銅層側と反対側の表面には、粗化処理層を形成しない場合、キャリアと極薄銅層との剥離強度を制御しやすくなるという利点がある。
また、極薄銅層の表面には、例えば絶縁基板との密着性を良好にすること等のために粗化処理を施すことで粗化処理層を設けてもよい。
【0064】
なお、本発明において、粗化処理層、耐熱層、防錆層、クロメート処理層、シランカップリング処理層等の表面処理層を形成する、或いは、粗化処理層が形成されていない「キャリアの極薄銅層と反対側の表面」は、キャリアに関して極薄銅層と反対側に位置している表面であれば、特に限定するものではなく、例えば、当該キャリアそのものの表面であってもよく、キャリアの極薄銅層と反対側に表面処理層が形成されている場合は、当該表面処理層におけるいずれかの層の表面(最表層の表面も含む)であってもよい。
【0065】
上記キャリアまたは極薄銅層に施す粗化処理は、例えば、銅又は銅合金で粗化粒子を形成することにより行うことができる。粗化処理は微細なものであっても良い。粗化処理層は、銅、ニッケル、コバルト、リン、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層などであってもよい。また、銅又は銅合金で粗化粒子を形成した後、更にニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で二次粒子や三次粒子を設ける粗化処理を行うこともできる。また、粗化処理層は、硫酸アルキルエステル塩、タングステン及び砒素からなる群から選択された1種以上を含む硫酸・硫酸銅電解浴を用いて形成してもよい。当該粗化処理は以下の電解浴および条件で行うことができる。また粗化処理の後に、粗化処理粒子の脱落を防止するため、かぶせめっきを行ってもよい。
・粗化処理
(液組成)
Cu:10〜30g/L
H
2SO
4:10〜150g/L
W:0〜50mg/L
ドデシル硫酸ナトリウム:0〜50mg/L
As:0〜200mg/L
(電気めっき条件)
温度:30〜70℃
電流密度:25〜110A/dm
2
粗化クーロン量:50〜500As/dm
2
めっき時間:0.5〜20秒
・かぶせめっき
(液組成)
Cu:20〜80g/L
H
2SO
4:50〜200g/L
(電気めっき条件)
温度:30〜70℃
電流密度:5〜50A/dm
2
粗化クーロン量:50〜300As/dm
2
めっき時間:1〜60秒
その後に、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層または防錆層を形成しても良く、更にその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。または粗化処理を行わずに、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層又は防錆層を形成し、さらにその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。すなわち、粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよく、キャリアまたは極薄銅層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよい。なお、上述の耐熱層、防錆層、クロメート処理層、シランカップリング処理層はそれぞれ複数の層で形成されてもよい(例えば2層以上、3層以上など)。なお、これらの表面処理はキャリア及び極薄銅層の表面粗さにほとんど影響を与えない。
【0066】
粗化処理は、例えば、銅又は銅合金で粗化粒子を形成することにより行うことができる。粗化処理層は、ファインピッチ形成の観点から微細な粒子で構成されるのが好ましい。粗化粒子を形成する際の電気めっき条件について、電流密度を高く、めっき液中の銅濃度を低く、又は、クーロン量を大きくすると粒子が微細化する傾向にある。
【0067】
耐熱層、防錆層としては公知の耐熱層、防錆層を用いることができる。例えば、耐熱層および/または防錆層はニッケル、亜鉛、錫、コバルト、モリブデン、銅、タングステン、リン、ヒ素、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、金、銀、白金族元素、鉄、タンタルの群から選ばれる1種以上の元素を含む層であってもよく、ニッケル、亜鉛、錫、コバルト、モリブデン、銅、タングステン、リン、ヒ素、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、金、銀、白金族元素、鉄、タンタルの群から選ばれる1種以上の元素からなる金属層または合金層であってもよい。また、耐熱層および/または防錆層はニッケル、亜鉛、錫、コバルト、モリブデン、銅、タングステン、リン、ヒ素、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、金、銀、白金族元素、鉄、タンタルの群から選ばれる1種以上の元素を含む酸化物、窒化物、珪化物を含んでもよい。また、耐熱層および/または防錆層はニッケル−亜鉛合金を含む層であってもよい。また、耐熱層および/または防錆層はニッケル−亜鉛合金層であってもよい。前記ニッケル−亜鉛合金層は、不可避不純物を除き、ニッケルを50wt%〜99wt%、亜鉛を50wt%〜1wt%含有するものであってもよい。前記ニッケル−亜鉛合金層の亜鉛及びニッケルの合計付着量が5〜1000mg/m
2、好ましくは10〜500mg/m
2、好ましくは20〜100mg/m
2であってもよい。また、前記ニッケル−亜鉛合金を含む層または前記ニッケル−亜鉛合金層のニッケルの付着量と亜鉛の付着量との比(=ニッケルの付着量/亜鉛の付着量)が1.5〜10であることが好ましい。また、前記ニッケル−亜鉛合金を含む層または前記ニッケル−亜鉛合金層のニッケルの付着量は0.5mg/m
2〜500mg/m
2であることが好ましく、1mg/m
2〜50mg/m
2であることがより好ましい。耐熱層および/または防錆層がニッケル−亜鉛合金を含む層である場合、スルーホールやビアホール等の内壁部がデスミア液と接触したときに銅箔と樹脂基板との界面がデスミア液に浸食されにくく、銅箔と樹脂基板との密着性が向上する。
【0068】
例えば耐熱層および/または防錆層は、付着量が1mg/m
2〜100mg/m
2、好ましくは5mg/m
2〜50mg/m
2のニッケルまたはニッケル合金層と、付着量が1mg/m
2〜80mg/m
2、好ましくは5mg/m
2〜40mg/m
2のスズ層とを順次積層したものであってもよく、前記ニッケル合金層はニッケル−モリブデン合金、ニッケル−亜鉛合金、ニッケル−モリブデン−コバルト合金、ニッケル−スズ合金のいずれか一種により構成されてもよい。また、耐熱層および/または防錆層は、ニッケルまたはニッケル合金とスズとの合計付着量が2mg/m
2〜150mg/m
2であることが好ましく、10mg/m
2〜70mg/m
2であることがより好ましい。また、耐熱層および/または防錆層は、[ニッケルまたはニッケル合金中のニッケル付着量]/[スズ付着量]=0.25〜10であることが好ましく、0.33〜3であることがより好ましい。当該耐熱層および/または防錆層を用いるとキャリア付銅箔をプリント配線板に加工して以降の回路の引き剥がし強さ、当該引き剥がし強さの耐薬品性劣化率等が良好になる。
【0069】
前記クロメート処理層とは無水クロム酸、クロム酸、二クロム酸、クロム酸塩または二クロム酸塩を含む液で処理された層のことをいう。クロメート処理層はコバルト、鉄、ニッケル、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタン等の元素(金属、合金、酸化物、窒化物、硫化物等どのような形態でもよい)を含んでもよい。クロメート処理層の具体例としては、無水クロム酸または二クロム酸カリウム水溶液で処理したクロメート処理層や、無水クロム酸または二クロム酸カリウムおよび亜鉛を含む処理液で処理したクロメート処理層等が挙げられる。
【0070】
前記シランカップリング処理層は、公知のシランカップリング剤を使用して形成してもよく、エポキシ系シラン、アミノ系シラン、メタクリロキシ系シラン、メルカプト系シラン、ビニル系シラン、イミダゾール系シラン、トリアジン系シランなどのシランカップリング剤などを使用して形成してもよい。なお、このようなシランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。中でも、アミノ系シランカップリング剤又はエポキシ系シランカップリング剤を用いて形成したものであることが好ましい。
また、シランカップリング剤にはビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシラン、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、4‐グリシジルブチルトリメトキシシラン、γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐β(アミノエチル)γ‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐3‐(4‐(3‐アミノプロポキシ)プトキシ)プロピル‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン、γ‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を用いてもよい。
【0071】
前述のアミノ系シランカップリング剤とは、N‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐(N‐スチリルメチル‐2‐アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N‐フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N‐(3‐アクリルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、4‐アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル‐3‐アミノプロピル)トリメトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル‐3‐アミノプロピル)トリス(2‐エチルヘキソキシ)シラン、6‐(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、3‐(1‐アミノプロポキシ)‐3,3‐ジメチル‐1‐プロペニルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、ω‐アミノウンデシルトリメトキシシラン、3‐(2‐N‐ベンジルアミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、(N,N‐ジエチル‐3‐アミノプロピル)トリメトキシシラン、(N,N‐ジメチル‐3‐アミノプロピル)トリメトキシシラン、N‐メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N‐フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3‐(N‐スチリルメチル‐2‐アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐β(アミノエチル)γ‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N−3−(4−(3−アミノプロポキシ)プトキシ)プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択されるものであってもよい。
【0072】
シランカップリング処理層は、ケイ素原子換算で、0.05mg/m
2〜200mg/m
2、好ましくは0.15mg/m
2〜20mg/m
2、好ましくは0.3mg/m
2〜2.0mg/m
2の範囲で設けられていることが望ましい。前述の範囲の場合、基材樹脂と表面処理銅箔との密着性をより向上させることができる。
【0073】
また、極薄銅層、粗化処理層、耐熱層、防錆層、シランカップリング処理層またはクロメート処理層の表面に、国際公開番号WO2008/053878、特開2008−111169号、特許第5024930号、国際公開番号WO2006/028207、特許第4828427号、国際公開番号WO2006/134868、特許第5046927号、国際公開番号WO2007/105635、特許第5180815号、特開2013−19056号に記載の表面処理を行うことができる。
【0074】
<プリント配線板及び積層体>
キャリア付銅箔を、例えば、極薄銅層側から絶縁樹脂板に貼り付けて熱圧着させ、キャリアを剥がすことで積層体(銅張積層体等)を作製することができる。また、その後、極薄銅層部分をエッチングすることにより、プリント配線板の銅回路を形成することができる。ここで用いる絶縁樹脂板はプリント配線板に適用可能な特性を有するものであれば特に制限を受けないが、例えば、リジッドPWB用に紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂等を使用し、FPC用にポリエステルフィルムやポリイミドフィルム等を使用する事ができる。このようにして作製したプリント配線板、積層体は、搭載部品の高密度実装が要求される各種電子部品に搭載することができる。
なお、本発明において、「プリント配線板」には部品が装着されたプリント配線板およびプリント回路板およびプリント基板も含まれることとする。このようなプリント配線板を用いて電子機器を製造することもできる。なお、本発明において、「銅回路」には銅配線も含まれることとする。
【0075】
また、キャリア付銅箔は、極薄銅層上に粗化処理層を備えても良く、前記粗化処理層上に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層、およびシランカップリング処理層からなる群のから選択された層を一つ以上備えても良い。
また、前記極薄銅層上に粗化処理層を備え、前記粗化処理層上に、耐熱層、防錆層を備えてもよく、前記耐熱層、防錆層上にクロメート処理層を備えてもよく、前記クロメート処理層上にシランカップリング処理層を備えても良い。
また、前記キャリア付銅箔は前記極薄銅層上、あるいは前記粗化処理層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいはクロメート処理層、あるいはシランカップリング処理層の上に樹脂層を備えても良い。
【0076】
前記樹脂層は接着剤であってもよく、接着用の半硬化状態(Bステージ状態)の絶縁樹脂層であってもよい。半硬化状態(Bステージ状態)とは、その表面に指で触れても粘着感はなく、該絶縁樹脂層を重ね合わせて保管することができ、更に加熱処理を受けると硬化反応が起こる状態のことを含む。
【0077】
また前記樹脂層は熱硬化性樹脂を含んでもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。また、前記樹脂層は熱可塑性樹脂を含んでもよい。前記樹脂層は公知の樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等を含んでよい。また、前記樹脂層は例えば国際公開番号WO2008/004399号、国際公開番号WO2008/053878、国際公開番号WO2009/084533、特開平11−5828号、特開平11−140281号、特許第3184485号、国際公開番号WO97/02728、特許第3676375号、特開2000−43188号、特許第3612594号、特開2002−179772号、特開2002−359444号、特開2003−304068号、特許第3992225、特開2003−249739号、特許第4136509号、特開2004−82687号、特許第4025177号、特開2004−349654号、特許第4286060号、特開2005−262506号、特許第4570070号、特開2005−53218号、特許第3949676号、特許第4178415号、国際公開番号WO2004/005588、特開2006−257153号、特開2007−326923号、特開2008−111169号、特許第5024930号、国際公開番号WO2006/028207、特許第4828427号、特開2009−67029号、国際公開番号WO2006/134868、特許第5046927号、特開2009−173017号、国際公開番号WO2007/105635、特許第5180815号、国際公開番号WO2008/114858、国際公開番号WO2009/008471、特開2011−14727号、国際公開番号WO2009/001850、国際公開番号WO2009/145179、国際公開番号WO2011/068157、特開2013−19056号に記載されている物質(樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等)および/または樹脂層の形成方法、形成装置を用いて形成してもよい。
【0078】
また、前記樹脂層は、その種類は格別限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、多官能性シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、ポリマレイミド化合物、マレイミド系樹脂、芳香族マレイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテルスルホン(ポリエーテルサルホン、ポリエーテルサルフォンともいう)、ポリエーテルスルホン(ポリエーテルサルホン、ポリエーテルサルフォンともいう)樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂ポリマー、ゴム性樹脂、ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミドイミド樹脂、ゴム変成エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、カルボキシル基変性アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、熱硬化性ポリフェニレンオキサイド樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボン酸の無水物、多価カルボン酸の無水物、架橋可能な官能基を有する線状ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、リン含有フェノール化合物、ナフテン酸マンガン、2,2−ビス(4−グリシジルフェニル)プロパン、ポリフェニレンエーテル−シアネート系樹脂、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂、シアノエステル樹脂、フォスファゼン系樹脂、ゴム変成ポリアミドイミド樹脂、イソプレン、水素添加型ポリブタジエン、ポリビニルブチラール、フェノキシ、高分子エポキシ、芳香族ポリアミド、フッ素樹脂、ビスフェノール、ブロック共重合ポリイミド樹脂およびシアノエステル樹脂の群から選択される一種以上を含む樹脂を好適なものとして挙げることができる。
【0079】
また前記エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであって、電気・電子材料用途に用いることのできるものであれば、特に問題なく使用できる。また、前記エポキシ樹脂は分子内に2個以上のグリシジル基を有する化合物を用いてエポキシ化したエポキシ樹脂が好ましい。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ブロム化(臭素化)エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ゴム変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N-ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミン化合物、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル化合物、リン含有エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、の群から選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることができ、又は前記エポキシ樹脂の水素添加体やハロゲン化体を用いることができる。
前記リン含有エポキシ樹脂として公知のリンを含有するエポキシ樹脂を用いることができる。また、前記リン含有エポキシ樹脂は例えば、分子内に2以上のエポキシ基を備える9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドからの誘導体として得られるエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0080】
(樹脂層が誘電体(誘電体フィラー)を含む場合)
前記樹脂層は誘電体(誘電体フィラー)を含んでもよい。
上記いずれかの樹脂層または樹脂組成物に誘電体(誘電体フィラー)を含ませる場合には、キャパシタ層を形成する用途に用い、キャパシタ回路の電気容量を増大させることができるのである。この誘電体(誘電体フィラー)には、BaTiO
3、SrTiO
3、Pb(Zr−Ti)O
3(通称PZT)、PbLaTiO
3・PbLaZrO(通称PLZT)、SrBi
2Ta
2O
9(通称SBT)等のペブロスカイト構造を持つ複合酸化物の誘電体粉を用いる。
【0081】
前述の樹脂層に含まれる樹脂および/または樹脂組成物および/または化合物を例えばメチルエチルケトン(MEK)、シクロペンタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、トルエン、メタノール、エタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの溶剤に溶解して樹脂液(樹脂ワニス)とし、これを前記キャリア付銅箔の極薄銅層側の表面に、例えばロールコータ法などによって塗布し、ついで必要に応じて加熱乾燥して溶剤を除去しBステージ状態にする。乾燥には例えば熱風乾燥炉を用いればよく、乾燥温度は100〜250℃、好ましくは130〜200℃であればよい。前記樹脂層の組成物を、溶剤を用いて溶解し、樹脂固形分3wt%〜70wt%、好ましくは、3wt%〜60wt%、好ましくは10wt%〜40wt%、より好ましくは25wt%〜40wt%の樹脂液としてもよい。なお、メチルエチルケトンとシクロペンタノンとの混合溶剤を用いて溶解することが、環境的な見地より現段階では最も好ましい。なお、溶剤には沸点が50℃〜200℃の範囲である溶剤を用いることが好ましい。
また、前記樹脂層はMIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して測定したときのレジンフローが5%〜35%の範囲にある半硬化樹脂膜であることが好ましい。
本件明細書において、レジンフローとは、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して、樹脂厚さを55μmとした樹脂付表面処理銅箔から10cm角試料を4枚サンプリングし、この4枚の試料を重ねた状態(積層体)でプレス温度171℃、プレス圧14kgf/cm
2、プレス時間10分の条件で貼り合わせ、そのときの樹脂流出重量を測定した結果から下記式に基づいて算出した値である。
【0083】
前記樹脂層を備えた表面処理銅箔(樹脂付き表面処理銅箔)は、その樹脂層を基材に重ね合わせたのち全体を熱圧着して該樹脂層を熱硬化せしめ、ついで表面処理銅箔がキャリア付銅箔の極薄銅層である場合にはキャリアを剥離して極薄銅層を表出せしめ(当然に表出するのは該極薄銅層の中間層側の表面である)、表面処理銅箔の粗化処理されている側とは反対側の表面から所定の配線パターンを形成するという態様で使用される。
【0084】
この樹脂付き表面処理銅箔を使用すると、多層プリント配線基板の製造時におけるプリプレグ材の使用枚数を減らすことができる。しかも、樹脂層の厚みを層間絶縁が確保できるような厚みにしたり、プリプレグ材を全く使用していなくても銅張積層体を製造することができる。またこのとき、基材の表面に絶縁樹脂をアンダーコートして表面の平滑性を更に改善することもできる。
【0085】
なお、プリプレグ材を使用しない場合には、プリプレグ材の材料コストが節約され、また積層工程も簡略になるので経済的に有利となり、しかも、プリプレグ材の厚み分だけ製造される多層プリント配線基板の厚みは薄くなり、1層の厚みが100μm以下である極薄の多層プリント配線基板を製造することができるという利点がある。
この樹脂層の厚みは0.1〜500μmであることが好ましく、0.1〜300μmであることがより好ましく、0.1〜200μmであることがより好ましく、0.1〜120μmであることがより好ましい。
【0086】
樹脂層の厚みが0.1μmより薄くなると、接着力が低下し、プリプレグ材を介在させることなくこの樹脂付きキャリア付銅箔を内層材を備えた基材に積層したときに、内層材の回路との間の層間絶縁を確保することが困難になる場合がある。一方、樹脂層の厚みを120μmより厚くすると、1回の塗布工程で目的厚みの樹脂層を形成することが困難となり、余分な材料費と工数がかかるため経済的に不利となる場合がある。
なお、樹脂層を有するキャリア付銅箔が極薄の多層プリント配線板を製造することに用いられる場合には、前記樹脂層の厚みを0.1μm〜5μm、より好ましくは0.5μm〜5μm、より好ましくは1μm〜5μmとすることが、多層プリント配線板の厚みを小さくするために好ましい。
【0087】
なお、前記樹脂層の厚みを0.1μm〜5μmとする場合には、樹脂層とキャリア付銅箔との密着性を向上させるため、極薄銅層の上に耐熱層および/または防錆層および/またはクロメート処理層および/またはシランカップリング処理層を設けた後に、当該耐熱層または防錆層またはクロメート処理層またはシランカップリング処理層の上に樹脂層を形成することが好ましい。
なお、前述の樹脂層の厚みは、任意の10点において断面観察により測定した厚みの平均値をいう。
【0088】
更に、この樹脂付きキャリア付銅箔のもう一つの製品形態としては、前記極薄銅層上、あるいは前記粗化処理層、前記耐熱層、前記防錆層、あるいは前記クロメート処理層、あるいは前記シランカップリング処理層の上に樹脂層で被覆し、半硬化状態とした後、ついでキャリアを剥離して、キャリアが存在しない樹脂付き銅箔の形で製造することも可能である。
【0089】
<プリント配線板の製造方法>
本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを極薄銅層側が絶縁基板と対向するように積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層体を形成し、その後、セミアディティブ法、モディファイドセミアディティブ法、パートリーアディティブ法及びサブトラクティブ法のいずれかの方法によって、回路を形成する工程を含む。絶縁基板は内層回路入りのものとすることも可能である。
【0090】
本発明において、セミアディティブ法とは、絶縁基板又は銅箔シード層上に薄い無電解めっきを行い、パターンを形成後、電気めっき及びエッチングを用いて導体パターンを形成する方法を指す。
【0091】
従って、セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0092】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂の表面について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0093】
本発明において、モディファイドセミアディティブ法とは、絶縁層上に金属箔を積層し、めっきレジストにより非回路形成部を保護し、電解めっきにより回路形成部の銅厚付けを行った後、レジストを除去し、前記回路形成部以外の金属箔を(フラッシュ)エッチングで除去することにより、絶縁層上に回路を形成する方法を指す。
【0094】
従って、モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストを設けた後に、電解めっきにより回路を形成する工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストを除去することにより露出した極薄銅層をフラッシュエッチングにより除去する工程、
を含む。
【0095】
モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0096】
本発明において、パートリーアディティブ法とは、導体層を設けてなる基板、必要に応じてスルーホールやバイアホール用の孔を穿けてなる基板上に触媒核を付与し、エッチングして導体回路を形成し、必要に応じてソルダレジストまたはメッキレジストを設けた後に、前記導体回路上、スルーホールやバイアホールなどに無電解めっき処理によって厚付けを行うことにより、プリント配線板を製造する方法を指す。
【0097】
従って、パートリーアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について触媒核を付与する工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して露出した前記絶縁基板表面に、ソルダレジストまたはメッキレジストを設ける工程、
前記ソルダレジストまたはメッキレジストが設けられていない領域に無電解めっき層を設ける工程、
を含む。
【0098】
本発明において、サブトラクティブ法とは、銅張積層体上の銅箔の不要部分を、エッチングなどによって、選択的に除去して、導体パターンを形成する方法を指す。
【0099】
従って、サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面に、電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層および前記電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0100】
サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面にマスクを形成する工程、
マスクが形成されていない前記無電解めっき層の表面に電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0101】
スルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、及びその後のデスミア工程は行わなくてもよい。
【0102】
ここで、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例を図面を用いて詳細に説明する。
まず、
図2−Aに示すように、表面に粗化処理層が形成された極薄銅層を有するキャリア付銅箔(1層目)を準備する。
次に、
図2−Bに示すように、極薄銅層の粗化処理層上にレジストを塗布し、露光・現像を行い、レジストを所定の形状にエッチングする。
次に、
図2−Cに示すように、回路用のめっきを形成した後、レジストを除去することで、所定の形状の回路めっきを形成する。
次に、
図3−Dに示すように、回路めっきを覆うように(回路めっきが埋没するように)極薄銅層上に埋め込み樹脂を設けて樹脂層を積層し、続いて別のキャリア付銅箔(2層目)を極薄銅層側から接着させる。
次に、
図3−Eに示すように、2層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、
図3−Fに示すように、樹脂層の所定位置にレーザー穴あけを行い、回路めっきを露出させてブラインドビアを形成する。
次に、
図4−Gに示すように、ブラインドビアに銅を埋め込みビアフィルを形成する。
次に、
図4−Hに示すように、ビアフィル上に、上記
図2−B及び
図2−Cのようにして回路めっきを形成する。
次に、
図4−Iに示すように、1層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、
図5−Jに示すように、フラッシュエッチングにより両表面の極薄銅層を除去し、樹脂層内の回路めっきの表面を露出させる。
次に、
図5−Kに示すように、樹脂層内の回路めっき上にバンプを形成し、当該はんだ上に銅ピラーを形成する。このようにして本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板を作製する。
なお、上述のプリント配線板の製造方法で、「極薄銅層」をキャリアに、「キャリア」を極薄銅層に読み替えて、キャリア付銅箔のキャリア側の表面に回路を形成して、樹脂で回路を埋め込み、プリント配線板を製造することも可能である。
【0103】
上記別のキャリア付銅箔(2層目)は、本発明のキャリア付銅箔を用いてもよく、従来のキャリア付銅箔を用いてもよく、さらに通常の銅箔を用いてもよい。また、
図4−Hに示される2層目の回路上に、さらに回路を1層或いは複数層形成してもよく、それらの回路形成をセミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって行ってもよい。
【0104】
また、前記1層目に用いられるキャリア付銅箔は、当該キャリア付銅箔のキャリア側表面に基板を有してもよい。当該基板または樹脂層を有することで1層目に用いられるキャリア付銅箔は支持され、しわが入りにくくなるため、生産性が向上するという利点がある。なお、前記基板には、前記1層目に用いられるキャリア付銅箔を支持する効果するものであれば、全ての基板を用いることが出来る。例えば前記基板として本願明細書に記載のキャリア、プリプレグ、樹脂層や公知のキャリア、プリプレグ、樹脂層、金属板、金属箔、無機化合物の板、無機化合物の箔、有機化合物の板、有機化合物の箔を用いることができる。
【0105】
キャリア側表面に基板を形成するタイミングについては特に制限はないが、キャリアを剥離する前に形成することが必要である。特に、前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に樹脂層を形成する工程の前に形成することが好ましく、キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に回路を形成する工程の前に形成することがより好ましい。
【0106】
なお、埋め込み樹脂(レジン)には公知の樹脂、プリプレグを用いることができる。例えば、BT(ビスマレイミドトリアジン)レジンやBTレジンを含浸させたガラス布であるプリプレグ、味の素ファインテクノ株式会社製ABFフィルムやABFを用いることができる。また、前記埋め込み樹脂(レジン)には本明細書に記載の樹脂層および/または樹脂および/またはプリプレグを使用することができる。
【0107】
上述のようなプリント配線板の製造方法によれば、回路めっきが樹脂層に埋め込まれた構成となっているため、例えば
図5−Jに示すようなフラッシュエッチングによる極薄銅層の除去の際に、回路めっきが樹脂層によって保護され、その形状が保たれ、これにより微細回路の形成が容易となる。また、回路めっきが樹脂層によって保護されるため、耐マイグレーション性が向上し、回路の配線の導通が良好に抑制される。このため、微細回路の形成が容易となる。また、
図5−J及び
図5−Kに示すようにフラッシュエッチングによって極薄銅層を除去したとき、回路めっきの露出面が樹脂層から凹んだ形状となるため、当該回路めっき上にバンプが、さらにその上に銅ピラーがそれぞれ形成しやすくなり、製造効率が向上する。
【0108】
本発明に係るキャリア付銅箔は、極薄銅層表面の白色板(光源をD65とし、10度視野としたときに、当該白色板のX
10Y
10Z
10表色系(JIS Z8701 1999)の三刺激値はX
10=80.7、Y
10=85.6、Z
10=91.5であり、L
*a
*b
*表色系での、当該白色板の物体色はL
*=94.14、a
*=-0.90、b
*=0.24である)の物体色を基準とする色とした場合の色差であってJISZ8730に基づく色差ΔE
*abが45以上を満たすように制御されていることが好ましい。前述の色差ΔE
*abは好ましくは50以上であり、より好ましくは55以上であり、更により好ましくは60以上である。前述の極薄銅層表面のJIS Z8730に基づく色差ΔE
*abが45以上であると、例えば、キャリア付銅箔の極薄銅層表面に回路を形成する際に、極薄銅層と回路とのコントラストが鮮明となり、その結果、視認性が良好となり回路の位置合わせを精度良く行うことができる。本発明において「極薄銅層表面の色差」とは、極薄銅層の表面の色差、又は、粗化処理層、耐熱層、防錆層、クロメート処理層またはシランカップリング処理層等の各種表面処理層が設けられている場合はその表面処理層表面(最表面)の色差を示す。
【0109】
ここで、前述の色差ΔE
*abは下記式で表される。ここで、下記式中の色差ΔL、Δa、Δbは、それぞれ色差計で測定され、黒/白/赤/緑/黄/青を加味し、JIS Z8730(2009)に基づくL
*a
*b
*表色系を用いて示される総合指標であり、ΔL:白黒、Δa:赤緑、Δb:黄青として表される。当該色差(ΔL、Δa、Δb)は、例えばHunterLab社製色差計MiniScan XE Plusを使用して測定することができる。なお、色差ΔL、Δa、Δbはそれぞれ、前述の白色板の物体色を基準とする色とした場合の極薄銅層表面のJISZ8730(2009)に基づく色差であって、ΔLはJIS Z8729(2004)に規定するL
*a
*b
*表色系における二つの物体色のCIE明度L
*の差であり、Δa、ΔbはJIS Z8729(2004)に規定するL
*a
*b
*表色系における二つの物体色の色座標a
*あるいはb
*の差である。
【0111】
上述の色差は、極薄銅層形成時の電流密度を高くし、メッキ液中の銅濃度を低くし、メッキ液の線流速を高くすることで調整することができる。
また上述の色差は、極薄銅層の表面に粗化処理を施して粗化処理層を設けることで調整することもできる。粗化処理層を設ける場合には銅およびニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンからなる群から選択される一種以上の元素とを含む電解液を用いて、従来よりも電流密度を高く(例えば40〜60A/dm
2)し、処理時間を短く(例えば0.1〜1.3秒)することで調整することができる。極薄銅層の表面に粗化処理層を設けない場合には、Niの濃度をその他の元素の2倍以上としたメッキ浴を用いて、極薄銅層または耐熱層または防錆層またはクロメート処理層またはシランカップリング処理層の表面にNi合金メッキ(例えばNi−W合金メッキ、Ni−Co−P合金メッキ、Ni−Zn合金めっき)を従来よりも低電流密度(0.1〜1.3A/dm
2)で処理時間を長く(20秒〜40秒)設定して処理することで達成できる。
【0112】
また、本発明のプリント配線板の製造方法は、本発明のキャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面または前記キャリア側表面と樹脂基板とを積層する工程、前記樹脂基板と積層した極薄銅層側表面または前記キャリア側表面とは反対側のキャリア付銅箔の表面に、樹脂層と回路との2層を、少なくとも1回設ける工程、及び、前記樹脂層及び回路の2層を形成した後に、前記キャリア付銅箔から前記キャリアまたは前記極薄銅層を剥離させる工程を含むプリント配線板の製造方法(コアレス工法)であってもよい。当該コアレス工法について、具体的な例としては、まず、本発明のキャリア付銅箔の極薄銅層側表面またはキャリア側表面と樹脂基板とを積層して積層体(銅張積層板、銅張積層体ともいう)を製造する。その後、樹脂基板と積層した極薄銅層側表面または前記キャリア側表面とは反対側のキャリア付銅箔の表面に樹脂層を形成する。キャリア側表面又は極薄銅層側表面に形成した樹脂層には、さらに別のキャリア付銅箔をキャリア側又は極薄銅層側から積層してもよい。また、樹脂基板を中心として当該樹脂基板の両表面側に、キャリア/中間層/極薄銅層の順あるいは極薄銅層/中間層/キャリアの順でキャリア付銅箔が積層された構成を有する積層体あるいは「キャリア/中間層/極薄銅層/樹脂基板/極薄銅層/中間層/キャリア」の順に積層された構成を有する積層体あるいは「キャリア/中間層/極薄銅層/樹脂基板/キャリア/中間層/極薄銅層」の順に積層された構成を有する積層体あるいは「極薄銅層/中間層/キャリア/樹脂基板/キャリア/中間層/極薄銅層」の順に積層された構成を有する積層体を上述のプリント配線板の製造方法(コアレス工法)に用いてもよい。そして、当該積層体の両端の極薄銅層あるいはキャリアの露出した表面には、別の樹脂層を設け、さらに銅層又は金属層を設けた後、当該銅層又は金属層を加工することで回路を形成してもよい。さらに、別の樹脂層を当該回路上に、当該回路を埋め込むように設けても良い。また、このような回路及び樹脂層の形成を1回以上行ってもよい(ビルドアップ工法)。そして、このようにして形成した積層体(以下、積層体Bとも言う)について、それぞれのキャリア付銅箔の極薄銅層またはキャリアをキャリアまたは極薄銅層から剥離させてコアレス基板を作製することができる。なお、前述のコアレス基板の作製には、2つのキャリア付銅箔を用いて、後述する極薄銅層/中間層/キャリア/キャリア/中間層/極薄銅層の構成を有する積層体や、キャリア/中間層/極薄銅層/極薄銅層/中間層/キャリアの構成を有する積層体や、キャリア/中間層/極薄銅層/キャリア/中間層/極薄銅層の構成を有する積層体を作製し、当該積層体を中心に用いることもできる。これら積層体(以下、積層体Aとも言う)の両側の極薄銅層またはキャリアの表面に樹脂層及び回路の2層を1回以上設け、樹脂層及び回路の2層を1回以上設けた後に、それぞれのキャリア付銅箔の極薄銅層またはキャリアをキャリアまたは極薄銅層から剥離させてコアレス基板を作製することができる。前述の積層体は、極薄銅層の表面、キャリアの表面、キャリアとキャリアとの間、極薄銅層と極薄銅層との間、極薄銅層とキャリアとの間には他の層を有してもよい。他の層は樹脂層や樹脂基板であってもよい。なお、本明細書において「極薄銅層の表面」、「極薄銅層側表面」、「極薄銅層表面」、「キャリアの表面」、「キャリア側表面」、「キャリア表面」、「積層体の表面」、「積層体表面」は、極薄銅層、キャリア、積層体が、極薄銅層表面、キャリア表面、積層体表面に他の層を有する場合には、当該他の層の表面(最表面)を含む概念とする。また、積層体は極薄銅層/中間層/キャリア/キャリア/中間層/極薄銅層の構成を有することが好ましい。当該積層体を用いてコアレス基板を作製した際、コアレス基板側に極薄銅層が配置されるため、モディファイドセミアディティブ法を用いてコアレス基板上に回路を形成しやすくなるためである。また、極薄銅層の厚みは薄いため、当該極薄銅層の除去がしやすく、極薄銅層の除去後にセミアディティブ法を用いて、コアレス基板上に回路を形成しやすくなるためである。
なお、本明細書において、「積層体A」または「積層体B」と特に記載していない「積層体」は、少なくとも積層体A及び積層体Bを含む積層体を示す。
【0113】
なお、上述のコアレス基板の製造方法において、キャリア付銅箔または積層体(積層体A)の端面の一部または全部を樹脂で覆うことにより、ビルドアップ工法でプリント配線板を製造する際に、中間層または積層体を構成する1つのキャリア付銅箔ともう1つのキャリア付銅箔の間のへの薬液の染み込みを防止することができ、薬液の染み込みによる極薄銅層とキャリアの分離やキャリア付銅箔の腐食を防止することができ、歩留りを向上させることができる。ここで用いる「キャリア付銅箔の端面の一部または全部を覆う樹脂」または「積層体の端面の一部または全部を覆う樹脂」としては、樹脂層に用いることができる樹脂を使用することができる。また、上述のコアレス基板の製造方法において、キャリア付銅箔または積層体において平面視したときにキャリア付銅箔または積層体の積層部分(キャリアと極薄銅層との積層部分、または、1つのキャリア付銅箔ともう1つのキャリア付銅箔との積層部分)の外周の少なくとも一部が樹脂又はプリプレグで覆ってもよい。また、上述のコアレス基板の製造方法で形成する積層体(積層体A)は、一対のキャリア付銅箔を互いに分離可能に接触させて構成されていてもよい。また、当該キャリア付銅箔において平面視したときにキャリア付銅箔または積層体の積層部分(キャリアと極薄銅層との積層部分、または、1つのキャリア付銅箔ともう1つのキャリア付銅箔との積層部分)の外周の全体にわたって樹脂又はプリプレグで覆われてなるものであってもよい。また、平面視した場合に樹脂又はプリプレグはキャリア付銅箔または積層体または積層体の積層部分よりも大きい方が好ましく、当該樹脂又はプリプレグをキャリア付銅箔または積層体の両面に積層し、キャリア付銅箔または積層体が樹脂又はプリプレグにより袋とじ(包まれている)されている構成を有する積層体とすることが好ましい。このような構成とすることにより、キャリア付銅箔または積層体を平面視したときに、キャリア付銅箔または積層体の積層部分が樹脂又はプリプレグにより覆われ、他の部材がこの部分の側方向、すなわち積層方向に対して横からの方向から当たることを防ぐことができるようになり、結果としてハンドリング中のキャリアと極薄銅層またはキャリア付銅箔同士の剥がれを少なくすることができる。また、キャリア付銅箔または積層体の積層部分の外周を露出しないように樹脂又はプリプレグで覆うことにより、前述したような薬液処理工程におけるこの積層部分の界面への薬液の浸入を防ぐことができ、キャリア付銅箔の腐食や侵食を防ぐことができる。なお、積層体の一対のキャリア付銅箔から一つのキャリア付銅箔を分離する際、またはキャリア付銅箔のキャリアと銅箔(極薄銅層)を分離する際には、樹脂又はプリプレグで覆われているキャリア付銅箔又は積層体の積層部分(キャリアと極薄銅層との積層部分、または、1つのキャリア付銅箔ともう1つのキャリア付銅箔との積層部分)が樹脂又はプリプレグ等により強固に密着している場合には、当該積層部分等を切断等により除去する必要が生じる場合がある。
【0114】
本発明のキャリア付銅箔をキャリア側又は極薄銅層側から、もう一つの本発明のキャリア付銅箔のキャリア側または極薄銅層側に積層して積層体を構成してもよい。また、前記一つのキャリア付銅箔の前記キャリア側表面又は前記極薄銅層側表面と前記もう一つのキャリア付銅箔の前記キャリア側表面又は前記極薄銅層側表面とが、必要に応じて接着剤を介して、直接積層させて得られた積層体であってもよい。また、前記一つのキャリア付銅箔のキャリア又は極薄銅層と、前記もう一つのキャリア付銅箔のキャリア又は極薄銅層とが接合されていてもよい。ここで、当該「接合」は、キャリア又は極薄銅層が表面処理層を有する場合は、当該表面処理層を介して互いに接合されている態様も含む。また、当該積層体の端面の一部または全部が樹脂により覆われていてもよい。
【0115】
キャリア同士、極薄銅層同士、キャリアと極薄銅層、キャリア付銅箔同士の積層は、単に重ね合わせる他、例えば以下の方法で行うことができる。
(a)冶金的接合方法:融接(アーク溶接、TIG(タングステン・イナート・ガス)溶接、MIG(メタル・イナート・ガス)溶接、抵抗溶接、シーム溶接、スポット溶接)、圧接(超音波溶接、摩擦撹拌溶接)、ろう接;
(b)機械的接合方法:かしめ、リベットによる接合(セルフピアッシングリベットによる接合、リベットによる接合)、ステッチャー;
(c)物理的接合方法:接着剤、(両面)粘着テープ
【0116】
一方のキャリアの一部若しくは全部と他方のキャリアの一部若しくは全部若しくは極薄銅層の一部若しくは全部とを、上記接合方法を用いて接合することにより、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層を積層し、キャリア同士またはキャリアと極薄銅層を分離可能に接触させて構成される積層体を製造することができる。一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層とが弱く接合されて、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層とが積層されている場合には、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層との接合部を除去しないでも、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層とは分離可能である。また、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層とが強く接合されている場合には、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層とが接合されている箇所を切断や化学研磨(エッチング等)、機械研磨等により除去することにより、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層を分離することができる。
【0117】
また、このように構成した積層体に樹脂層と回路との2層を、少なくとも1回設ける工程、及び、前記樹脂層及び回路の2層を少なくとも1回形成した後に、前記積層体のキャリア付銅箔から前記極薄銅層又はキャリアを剥離させる工程を実施することでプリント配線板を作製することができる。なお、当該積層体の一方または両方の表面に、樹脂層と回路との2層を設けてもよい。
【0118】
前述した積層体に用いる樹脂基板、樹脂層、樹脂、プリプレグは、本明細書に記載した樹脂層であってもよく、本明細書に記載した樹脂層に用いる樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等を含んでもよい。なお、キャリア付銅箔は平面視したときに樹脂基板、樹脂層、樹脂又はプリプレグより小さくてもよい。
【実施例】
【0119】
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0120】
1.キャリア付銅箔の製造
実施例1〜23及び比較例1として、以下の方法により、厚み12〜70μmの電解銅箔または圧延銅箔(タフピッチ銅箔 JIS H3100 合金番号:C1100)をキャリアとし、当該キャリア上に中間層及び極薄銅層をこの順で形成し、厚み1〜5μmのキャリア付銅箔を得た。
なお、圧延時に使用する圧延ロールの表面粗さを制御することで、圧延銅箔の表面粗さを制御することができる。圧延時に使用する圧延ロールの表面粗さを大きくすることで、圧延銅箔の表面粗さを大きくすることができる。また、圧延時に使用する圧延ロールの表面粗さを小さくすることで、圧延銅箔の表面粗さを小さくすることができる。圧延ロールの表面粗さは例えばRa=0.1μm以上2.0μm以下とするとよい。
また、電解銅箔製造時に使用する電解ドラムの表面粗さを制御することで、電解銅箔のシャイニー面(光沢面)の表面粗さを制御することができる。電解ドラムの表面粗さを大きくすることで、電解銅箔のシャイニー面(光沢面)の表面粗さを大きくすることができる。また、電解ドラムの表面粗さを小さくすることで、電解銅箔のシャイニー面(光沢面)の表面粗さを小さくすることができる。電解ドラムの粗さは例えば、Rz=1.0μm以上6.0μm以下とするとよい。
また、電解銅箔製造時の電解液の銅濃度、電流密度、電解液温度を制御することで、電解銅箔のマット面(析出面)の表面粗さを制御することができる。電解銅箔製造時の電解液の銅濃度を低くし、電流密度を高くし、電解液温度を低くすることで、電解銅箔のマット面(析出面)の表面粗さを大きくすることができる。また、電解銅箔製造時の電解液の銅濃度を高くし、電流密度を低くし、電解液温度を高くすることで、電解銅箔のマット面(析出面)の表面粗さを小さくすることができる。例えば、電解銅箔製造時の電解液の銅濃度を50〜130g/L、電流密度を50〜120A/dm
2、電解液温度を40〜90℃とするとよい。なお、電解銅箔製造時の電解液として、硫酸と硫酸銅との水溶液を用いた。また、電解銅箔のマット面(析出面)の表面粗さをより小さくしたい場合には(例えばRzが1.5μm以下またはRz=1.0〜1.5μm)、電解液に光沢剤を添加するとよい。光沢剤には公知の光沢剤を用いることができる。なお、実施例6については光沢剤としてCl
-:20〜50質量ppm、ポリエチレングリコール:10〜100質量ppm、ビス(3スルホプロピル)ジスルフィド:10〜30質量ppm、チオ尿素:10〜50質量ppmを添加した。また、実施例23については光沢剤としてCl
-:30〜80質量ppm、ビス(3スルホプロピル)ジスルフィド:10〜50質量ppm、チオ尿素:10〜50質量ppmを添加した。下記構造式で示されるアミン化合物:10〜50ppmを添加した。(R
1及びR
2はヒドロキシアルキル基、エーテル基、芳香族基、芳香族置換アルキル基、不飽和炭化水素基、アルキル基からなる一群から選ばれるものである。)
【0121】
・中間層形成
表の「中間層」欄に記載のように、キャリアに中間層を形成した。当該処理条件を以下に示す。なお、例えば「Ni/有機物」は、ニッケルめっき処理を行った後に、有機物処理を行ったことを意味する。
上記電解銅箔の光沢面(シャイニー面)または圧延銅箔に対して、以下の条件でロール・トウ・ロール型の連続めっきラインにおいて中間層を設けた。
(1)「Ni」:Ni処理(Niめっき)
液組成:硫酸ニッケル濃度200〜300g/L、クエン酸三ナトリウム濃度2〜10g/L
pH:2〜4
液温:40〜70℃
電流密度:1〜15A/dm
2
Ni付着量:8000μg/dm
2
なお、本発明に用いられる電解、表面処理又はめっき等に用いられる処理液の残部は特に明記しない限り水である。
【0122】
(2)「クロメート」:電解クロメート処理
10μg/dm
2の付着量のCr層を以下の条件で電解クロメート処理することにより付着させた。
液組成:重クロム酸カリウム濃度1〜10g/L、亜鉛濃度0〜5g/L
pH:3〜4
液温:50〜60℃
電流密度:0.1〜3.0A/dm
2
【0123】
・「有機物」:有機物層形成処理
濃度1〜30g/Lのカルボキシベンゾトリアゾール(CBTA)を含む、液温40℃、pH5の水溶液を、20〜120秒間シャワーリングして噴霧することにより行った。
上述の方法で有機物層の厚みを測定した結果、有機物層の厚みは13nmであった。
【0124】
・「Ni−Mo」:ニッケルモリブデン合金めっき
(液組成)硫酸Ni六水和物:50g/dm
3、モリブデン酸ナトリウム二水和物:60g/dm
3、クエン酸ナトリウム:90g/dm
3
(液温)30℃
(電流密度)1〜4A/dm
2
(通電時間)3〜25秒
Ni付着量:3250μg/dm
2
Mo付着量:420μg/dm
2
【0125】
・「Cr」:クロムめっき
(液組成)CrO
3:200〜400g/L、H
2SO
4:1.5〜4g/L
(pH)1〜4
(液温)45〜60℃
(電流密度)10〜40A/dm
2
(通電時間)1〜20秒
Cr付着量:350μg/dm
2
【0126】
・「Co−Mo」:コバルトモリブデン合金めっき
(液組成)硫酸Co:50g/dm
3、モリブデン酸ナトリウム二水和物:60g/dm
3、クエン酸ナトリウム:90g/dm
3
(液温)30〜80℃
(電流密度)1〜4A/dm
2
(通電時間)3〜25秒
Co付着量:420μg/dm
2
Mo付着量:560μg/dm
2
【0127】
・「Ni−P」:ニッケルリン合金めっき
(液組成)Ni:30〜70g/L、P:0.2〜1.2g/L
(pH)1.5〜2.5
(液温)30〜40℃
(電流密度)1.0〜10.0A/dm
2
(通電時間)0.5〜30秒
Ni付着量:5320μg/dm
2
P付着量:390μg/dm
2
【0128】
・極薄銅層形成
引き続き、ロール・トウ・ロール型の連続めっきライン上で、中間層の上に厚み1〜5μmの極薄銅層を、以下に示す条件で電気めっきすることにより形成して、キャリア付銅箔を製造した。
液組成:銅濃度30〜120g/L、硫酸濃度20〜120g/L、Cl
-:20〜50質量ppm、ポリエチレングリコール:10〜100質量ppm、ビス(3スルホプロピル)ジスルフィド:10〜30質量ppm、チオ尿素:10〜50質量ppm
液温:20〜80℃
電流密度:10〜100A/dm
2
【0129】
次に、キャリア付銅箔のキャリア側表面、及び/又は、極薄銅層側表面に粗化処理(1)〜(3)のいずれか、耐熱処理、防錆処理、シランカップリング剤塗布の各表面処理を施した。なお、実施例1、8〜14、23は、キャリア側粗化処理及び極薄銅層側粗化処理をいずれも行わなかった。各処理条件を以下に示す。
【0130】
〔粗化処理〕
・粗化処理(1)(粗大粗化):
電解液組成:Cu10〜30g/L(硫酸銅5水和物で添加、以下同様)、硫酸80〜120g/L
液温:20〜40℃
電流密度:120〜140A/dm
2
上記粗化処理(1)を施したキャリア付銅箔のキャリア側表面又は極薄銅層側表面に、粗化粒子の脱落防止とピール強度向上のため、硫酸・硫酸銅からなる銅電解浴で被せメッキを行った。被せメッキ条件を以下に記す。
液組成:銅濃度20〜40g/L、硫酸濃度80〜120g/L
液温:40〜50℃
電流密度:10〜50A/dm
2
【0131】
・粗化処理(2)(中程度の粗化):
液組成:銅濃度10〜30g/L(硫酸銅5水和物で添加、以下同様)、硫酸濃度80〜120g/L
液温:20〜40℃
電流密度:80〜100A/dm
2
【0132】
上記粗化処理(2)を施したキャリア付銅箔のキャリア側表面又は極薄銅層側表面に、粗化粒子の脱落防止とピール強度向上のため、硫酸・硫酸銅からなる銅電解浴で被せメッキを行った。被せメッキ条件を以下に記す。
液組成:銅濃度20〜40g/L、硫酸濃度80〜120g/L
液温:40〜50℃
電流密度:10〜50A/dm
2
【0133】
・粗化処理(2)−2(中程度の粗化):
液組成:銅濃度10〜30g/L(硫酸銅5水和物で添加、以下同様)、硫酸濃度80〜120g/L
液温:20〜40℃
電流密度:105〜115A/dm
2
【0134】
上記粗化処理(2)を施したキャリア付銅箔のキャリア側表面又は極薄銅層側表面に、粗化粒子の脱落防止とピール強度向上のため、硫酸・硫酸銅からなる銅電解浴で被せメッキを行った。被せメッキ条件を以下に記す。
液組成:銅濃度20〜40g/L、硫酸濃度80〜120g/L
液温:40〜50℃
電流密度:10〜50A/dm
2
【0135】
・粗化処理(3)(微細粗化):
液組成:銅濃度10〜20g/L、コバルト濃度1〜10g/L、ニッケル濃度1〜10g/L
pH:1〜4
液温:30〜50℃
電流密度:20〜30A/dm
2
【0136】
上記条件で粗化処理(3)を施したキャリア付銅箔の極薄銅層側表面に、Co−Niのメッキを行い耐熱層を形成した。メッキ条件を以下に記す。
液組成:コバルト濃度1〜30g/L、ニッケル濃度1〜30g/L
pH:1.0〜3.5
液温:30〜80℃
電流密度1〜10A/dm
2
【0137】
〔耐熱処理〕
・耐熱層(亜鉛・ニッケルメッキ)形成処理:
液組成:ニッケル濃度10〜30g/L、亜鉛濃度1〜15g/L
液温:30〜50℃
電流密度1〜10A/dm
2
【0138】
〔防錆処理〕
・クロメート処理:
液組成:重クロム酸カリウム濃度3〜5g/L、亜鉛濃度0.1〜1g/L
液温:30〜50℃
電流密度0.1〜3.0A/dm
2
【0139】
〔シランカップリング処理〕
0.2〜2重量%のアルコキシシランを含有するpH7〜8の溶液を噴霧することで、シランカップリング剤を塗布し処理を実施した。
【0140】
(実施例1、8〜14、23)
上述の方法で表に記載の厚みのキャリア付銅箔を作製し、そのキャリア側表面および極薄銅層側表面に粗化処理を施さず、キャリア側表面および極薄銅層側表面に耐熱処理、防錆処理、シランカップリング処理のみを施した銅箔を作製した。
【0141】
(実施例2、15、22)
上述の方法で表に記載の厚みのキャリア付銅箔を作製し、その極薄銅層側表面に粗化処理(2)(中程度の粗化)を施し、更に耐熱処理、防錆処理、シランカップリング処理を施した銅箔を作製した。
【0142】
(実施例3、4、6、7、16〜19)
上述の方法で表に記載の厚みのキャリア付銅箔を作製し、そのキャリア側表面に粗化処理(2)(中程度の粗化)を施し、更に耐熱処理、防錆処理、シランカップリング処理を施した銅箔を作製した。
【0143】
(実施例5)
上述の方法で表に記載の厚みのキャリア付銅箔を作製し、そのキャリア側表面に粗化処理(3)(微細粗化)を施し、更に耐熱処理、防錆処理、シランカップリング処理を施した銅箔を作製した。
【0144】
(実施例20)
上述の方法で表に記載の厚みのキャリア付銅箔を作製し、そのキャリア側表面に粗化処理(2)−2(中程度の粗化)を施し、更に耐熱処理、防錆処理、シランカップリング処理を施した銅箔を作製した。
【0145】
(実施例21)
上述の方法で表に記載の厚みのキャリア付銅箔を作製し、そのキャリア側表面および極薄銅層側表面に粗化処理(2)−2(中程度の粗化)を施し、更に耐熱処理、防錆処理、シランカップリング処理を施した銅箔を作製した。
【0146】
(比較例1)
上述の方法で表に記載の厚みのキャリア付銅箔を作製し、そのキャリア側表面に粗化処理(1)(粗大粗化)を施し、更に耐熱処理、防錆処理、シランカップリング処理を施した銅箔を作製した。
【0147】
2.キャリア付銅箔の評価
上記のようにして得られたキャリア付銅箔について、以下の方法で各評価を実施した。
<表面粗さ>
キャリア付銅箔のキャリアの極薄銅層側とは反対側の表面の十点平均表面粗さRzを、JIS B0601−1994に準拠して、オリンパス社製レーザー顕微鏡LEXT OLS4000にて測定した。Rzを任意に10箇所測定し、そのRzの10箇所の平均値をRzの値とした。また、キャリアの極薄銅層側表面の十点平均表面粗さRzも同様に測定した。さらに、極薄銅層の中間層とは反対側の表面の十点平均表面粗さRzも同様に測定した。
【0148】
また、キャリア付銅箔のキャリアの極薄銅層側とは反対側の表面の粗さ曲線の最大断面高さRtを、JIS B0601−2001に準拠して、オリンパス社製レーザー顕微鏡LEXT OLS4000にて測定した。Rtを任意に10箇所測定し、そのRtの10箇所の平均値をRtの値とした。
【0149】
また、キャリア付銅箔のキャリアの極薄銅層と反対側表面の算術平均粗さRaを、JIS B0601−1994に準拠して、オリンパス社製レーザー顕微鏡LEXT OLS4000にて測定した。Raを任意に10箇所測定し、そのRaの10箇所の平均値をRaの値とした。
なお、上記Rz、Ra及びRtについて、極薄銅層及びキャリア表面の倍率50倍の対物レンズを使用して、評価長さ258μm、カットオフ値ゼロの条件で、キャリアとして用いた電解銅箔の製造装置における電解銅箔の進行方向と垂直な方向または圧延銅箔の製造装置における圧延銅箔の進行方向と垂直な方向(TD)の測定で、それぞれ値を求めた。レーザー顕微鏡による表面のRz、Ra及びRtの測定環境温度は23〜25℃とした。
【0150】
<常態剥離強度>
作製したキャリア付銅箔について、ロードセルにてキャリア側を引っ張り、キャリアと極薄銅層間の剥離強度を90°剥離法(JIS C 6471 8.1)に準拠して測定した。
【0151】
<通常プレス後剥離強度>
作製したキャリア付銅箔の極薄銅層側を樹脂基板上に貼り合わせて、大気中、15kgf/cm
2、220℃で90分間の条件下で加熱プレスした後、ロードセルにてキャリア側を引っ張り、キャリアと極薄銅層間の剥離強度を90°剥離法(JIS C 6471 8.1)に準拠して測定した。
【0152】
<リバースプレス後剥離強度>
作製したキャリア付銅箔について、さらに極薄銅層側表面を銅めっきでめっきアップすることで銅めっき層を形成した。このとき、極薄銅層及び銅めっき層の合計厚みが18μmとなるように銅めっき層を形成した。次に、キャリア付銅箔のキャリア側を樹脂基板上に貼り合わせて、大気中、15kgf/cm
2、220℃で90分間の条件下で加熱プレスした後、ロードセルにて極薄銅層側を引っ張り、キャリアと極薄銅層間の剥離強度を90°剥離法(JIS C 6471 8.1)に準拠して測定した。なお、比較例1ではキャリアから極薄銅層を剥離することができなかった。また、比較例2は、キャリアと樹脂基板とを積層することができず、測定ができなかった。
【0153】
<剥がれ性及び生産性>
・コアレス基板の製造
実施例、比較例に係るキャリア付銅箔をそれぞれ、キャリア側から、当該キャリア付銅箔よりも大きなFR−4プリプレグの両面に大気中、15kgf/cm
2、220℃で90分間の条件下で加熱プレスすることにより積層し、積層体を得た。なお、キャリア付銅箔よりも大きなプリプレグを用いて積層体を製造したため、得られた積層体においてキャリア付銅箔の端面は樹脂(プリプレグ)により覆われている。
【0154】
このようにして作製した積層体の、板状キャリアが露出している部分4か所に、直径1mmの孔を空け、後に続くビルドアップ工程時の位置決め用のガイドホールとした。当該積層体の両側に、FR−4プリプレグ、銅箔(JX日鉱日石金属株式会社製、JTC12μm(製品名))を順に重ね、3MPaの圧力で170℃・100分間ホットプレスを行い、4層銅張積層板を作製した。
【0155】
次に、前記4層銅張積層板表面の銅箔とその下の絶縁層(硬化したプリプレグ)を貫通する直径100μmの孔を、レーザー加工機を用いて空けた。続いて、前記孔の底部に露出した積層体上の銅箔表面と、前記孔の側面、前記4層銅張積層板表面の銅箔上に無電解銅めっき、電気銅めっきにより銅めっきを行い、積層体上の銅箔と、4層銅張積層板表面の銅箔との間に電気的接続を形成した。次に、4層銅張積層板表面の銅箔の一部を塩化第二鉄系のエッチング液を用いてエッチングし、回路を形成した。このようにして、4層ビルドアップ基板を作製した。
【0156】
続いて、前記4層ビルドアップ基板を、前記積層体を平面視したときにキャリア付銅箔の端面がプリプレグにより接着されている部分よりも内側で切断した後、前記積層体のキャリア付銅箔のキャリアと極薄銅層を機械的に剥離して分離することにより、2組の2層ビルドアップ配線板を得た。
【0157】
続いて、前記の2組の2層ビルドアップ配線板上の、板状キャリアと密着していた方の銅箔をエッチングし配線を形成して、2組の2層ビルドアップ配線板を得た。
【0158】
上記2組の2層ビルドアップ配線板を作製した際の、樹脂基板(FR−4プリプレグ)とキャリアとの剥がれの有無(剥がれ性)を評価した。当該剥がれ性の評価基準を以下に示す。
◎:「10回中、剥がれ無し」、〇〇:「10回中、1回剥がれた」、〇:「10回中、2〜3回剥がれた」、△:「10回中、4回剥がれた」、×:「10回中、5回以上剥がれた」
【0159】
また、上記2組の2層ビルドアップ配線板を作製した際の、極薄銅層とキャリアとの剥離強度は、プリント配線板の生産性に影響を与える。具体的には、極薄銅層とキャリアとの剥離強度が50N/m以上の場合、剥離にかなり時間がかかり、生産性が悪い(剥離に10分/枚以上かかる)。また、20N/m以上の場合、剥離に時間がかかり生産性が悪い(剥離に2分/枚以上かかる)。このような観点から、生産性の評価基準を以下とした。
◎:「10回中、全て剥離強度20N/m以下」、「〇〇:10回中、1回以上5回未満が剥離強度20N/m以上」、〇:「10回中、5回以上が剥離強度20N/m以上」、△:「10回中、1回以上が剥離強度50N/m以上」、×:「10回中、1回以上が剥離不可有」
試験条件及び結果を表1に示す。
【0160】
【表1】
【0161】
(評価結果)
実施例1〜23は、キャリア付銅箔を樹脂基板に積層することで作製した積層体において、極薄銅層をキャリアから良好に剥離することが可能であり、キャリア付銅箔を用いてビルドアップ配線板を作製したときの剥がれ性及び生産性が良好であった。
一方、比較例1は、キャリア付銅箔を樹脂基板に積層することで作製した積層体において、極薄銅層をキャリアから良好に剥離することができなかった。また、キャリア付銅箔を用いてビルドアップ配線板を作製したときの生産性が不良であった。
【解決手段】キャリア、中間層、極薄銅層をこの順に有するキャリア付銅箔であって、キャリアの極薄銅層と反対側の表面を、JIS B0601−1994に準拠してレーザー顕微鏡で測定したとき、表面の十点平均粗さRzが6.0μm以下であるキャリア付銅箔。